【文献】
Xi Wen Zhao et al.,PNAS,2011年11月 8日,Vol.108, No.45,p.18342-18347
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
本開示は、異なる機能プロフィールを有する抗CD47mAbを記載する。これらの抗体は、以下から選択される特性の異なる組合せを有する:1)CD47の1種若しくは複数種のホモログと交差反応性を示す;2)CD47とそのリガンドSIRPα同士の相互作用を阻止する;3)ヒト腫瘍細胞の食作用を増大する、4)感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導する;5)ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導しない;6)ヒト赤血球(hRBC)に対し低い結合を有する;7)hRBCとの検出可能な結合がない;8)hRBCの少ない凝集を有する;9)hRBCの検出可能な凝集を引き起こさない;10)一酸化窒素(NO)経路のTSP1阻害を逆転させる;及び/又は11)NO経路のTSP1阻害を逆転させない。本開示の抗体は、固形癌及び血液癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、IRI、及び心血管疾患の予防及び治療をはじめとする、ヒト及び動物におけるCD47と関連する疾患及び病状を治療するための様々な治療方法に有用である。本開示の抗体はまた、組織サンプル中のCD47発現のレベルを決定するための診断薬としても有用である。本開示の実施形態は、単離された抗体及びその免疫学的に活性な結合断片;1つ又は複数の抗CD47モノクローナル抗体を含む医薬組成物、好ましくは、前記抗体のキメラ若しくはヒト化形態;そうした抗CD47モノクローナル抗体の治療での使用方法;並びにこれらの抗CD47モノクローナル抗体を産生する細胞株を含む。
【0005】
本開示の実施形態は、mAb、又はその抗原結合断片を含み、これらは、特定の構造的特徴、すなわちCDR又は全重鎖若しくは軽鎖可変領域の何れかの規定アミノ酸配列に準拠して定義される。これらの抗体の全てが、CD47に結合する。
【0006】
モノクローナル抗体、又はその抗原結合断片は、本明細書に記載するように、少なくとも1つ、通常3つのCDR配列を、通常、ヒト可変領域又は単離されたCDRペプチド由来のフレームワーク配列と組み合わせて含んでもよい。1部の実施形態では、抗体は、可変領域フレームワーク(限定はしないが、マウス又はヒト可変領域フレームワークであってもよい)に位置する本明細書に記載の3つの軽鎖CDR配列を含む少なくとも1つの軽鎖と、可変領域フレームワーク(限定はしないが、ヒト又はマウス可変領域フレームワークであってもよい)に位置する本明細書に記載の3つの重鎖CDR配列を含む少なくとも1つの重鎖とを含む。
【0007】
好ましい実施形態は、可変重鎖CDR1、可変重鎖CDR2、及び可変重鎖CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む、抗CD47mAb、又はその抗原結合断片であり、ここで、前記可変重鎖CDR1は、配列番号1、配列番号2、配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;前記可変重鎖CDR2は、配列番号4、配列番号5、配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;前記可変重鎖CDR3は、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0008】
重鎖可変ドメインは、可変重鎖CDR2配列(HCDR2)の何れか1つ及び可変重鎖CDR3配列(HCDR3)の何れか1つと組み合わせて、列記される可変重鎖CDR1配列(HCDR1)の何れか1つを含んでもよい。しかし、単一共通V
Hドメインに由来する、HCDR1及びHCDR2及びHCDR3の特定の実施形態が特に好ましく、その例は本明細書に記載する。
【0009】
抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖可変ドメイン(V
L)をさらに含み得、これは、V
Hドメインと対合して、抗原結合ドメインを形成する。好ましい軽鎖可変ドメインは、可変軽鎖CDR1、可変軽鎖CDR2、及び可変軽鎖CDR3を含むものであり、ここで、前記可変軽鎖CDR1は、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;前記可変軽鎖CDR2は、配列番号15、配列番号16、配列番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み:前記可変軽鎖CDR3は、任意選択で、配列番号18、配列番号19、配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
軽鎖可変ドメインは、可変軽鎖CDR2配列(LCDR2)の何れか1つ及び可変軽鎖CDR3配列(LCDR3)の何れか1つと組み合わせて、列記される可変軽鎖CDR1配列(LCDR1)の何れか1つを含んでもよい。しかし、単一共通V
Lドメインに由来する、LCDR1及びLCDR2及びLCDR3の特定の実施形態が特に好ましく、その例は本明細書に記載する。
【0011】
VLドメインと対合したVHドメインを含む何れか所与のCD47抗体又はその抗原結合断片は、6つのCDR:可変重鎖CDR1(HCDR1)、可変重鎖CDR2(HCDR2)、可変重鎖CDR3(HCDR3)、可変軽鎖CDR1(LCDR1)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)、及び可変軽鎖CDR1(LCDR1)の組合せを含むであろう。上に挙げたCDR配列群から選択される6つのCDRのあらゆる組合せが可能であり、本開示の範囲に含まれるが、6つのCDRの特定の組合せが特に好ましい。
【0012】
6つのCDRの好ましい組合せとしては、限定されないが、以下:
(i)配列番号1を含むHCDR1、配列番号4を含むHCDR2、配列番号7を含むHCDR3、配列番号11を含むLCDR1、配列番号15を含むLCDR2、配列番号18を含むLCDR3;
(ii)配列番号1を含むHCDR1、配列番号4を含むHCDR2、配列番号8を含むHCDR3、配列番号11を含むLCDR1、配列番号15を含むLCDR2、配列番号18を含むLCDR3;
(iii)配列番号2を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、配列番号9を含むHCDR3、配列番号12を含むLCDR1、配列番号16を含むLCDR2、配列番号19を含むLCDR3;
(iv)配列番号2を含むHCDR1、配列番号5を含むHCDR2、配列番号9を含むHCDR3、配列番号13を含むLCDR1、配列番号16を含むLCDR2、配列番号19を含むLCDR3;
(v)配列番号3を含むHCDR1、配列番号6を含むHCDR2、配列番号10を含むHCDR3、配列番号14を含むLCDR1、配列番号17を含むLCDR2、配列番号20を含むLCDR3;
からなる群から選択される可変重鎖CDR1(HCDR1)、可変重鎖CDR2(HCDR2)、可変重鎖CDR3(HCDR3)、可変軽鎖CDR1(LCDR1)、可変軽鎖CDR2(LCDR2)、及び可変軽鎖CDR3(LCDR3)の組合せが挙げられる。
【0013】
さらに好ましい抗CD47抗体は、以下:配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40のアミノ酸配列、並びに列挙した配列の1つと少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを含む、抗体又はその抗原結合断片を含む。これに代わり、又はこれに加えて、抗体又はその抗原結合断片をはじめとする好ましい抗CD47抗体は、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、及び配列番号52のアミノ酸配列、並びに列挙した配列の1つと少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を示すアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを含んでもよい。
【0014】
上に挙げたV
H及びV
Lドメイン配列群から選択されるV
Hドメイン及びV
Lドメインの考えられる全ての対合は許容され、且つ本開示の範囲内であるが、V
H及びV
Lドメインの特定の組合せが特に好ましい。従って、好ましいCD47抗体、又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメイン(V
H)と軽鎖可変ドメイン(V
L)の組合せを含むものであり、この組合せは、以下のものからなる群から選択される:
(i)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号41を含む軽鎖可変ドメイン;
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号43を含む軽鎖可変ドメイン;
(iii)配列番号34のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号49を含む軽鎖可変ドメイン;
(iv)配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号52を含む軽鎖可変ドメイン;
(v)配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号52を含む軽鎖可変ドメイン;
(vi)配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号52を含む軽鎖可変ドメイン;
(vii)配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号43を含む軽鎖可変ドメイン;
(viii)配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号52を含む軽鎖可変ドメイン;
(ix)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号48を含む軽鎖可変ドメイン;
(x)配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号44を含む軽鎖可変ドメイン;
(xi)配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号44を含む軽鎖可変ドメイン;
(xii)配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号51を含む軽鎖可変ドメイン;
(xiii)配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号51を含む軽鎖可変ドメイン;
(xiv)配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号52を含む軽鎖可変ドメイン;
(xv)配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号51を含む軽鎖可変ドメイン;
(xvi)配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号47を含む軽鎖可変ドメイン;
(xvii)配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号47を含む軽鎖可変ドメイン;
(xviii)配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号47を含む軽鎖可変ドメイン;
(xix)配列番号32のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号47を含む軽鎖可変ドメイン;
(xx)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号47を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxi)配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号48を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxii)配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号48を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxiii)配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号48を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxiv)配列番号32のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号48を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxv)配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号43を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxvi)配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号43を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxvii)配列番号28のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号46を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxviii)配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号50を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxix)配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号48を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxx)配列番号30のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号48を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxxi)配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号48を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxxii)配列番号32のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号48を含む軽鎖可変ドメイン;
(xxxiii)配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号51を含む軽鎖可変ドメイン;及び
(xxxiv)配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列配列番号51を含む軽鎖可変ドメイン。
【0015】
好ましい抗CD47抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変ドメインが、上の(i)〜(xxxiv)に示される重鎖アミノ酸配列と、少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するVH配列を含み、並びに/又は軽鎖可変ドメインが、上の(i)〜(xxxiv)に示される軽鎖アミノ酸配列と、少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%の配列同一性、又は少なくとも97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するVL配列を含む、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインの組合せを含んでもよい。(i)〜(xxxiv)の特定のVH及びVL対合又は部分的組合せを、これらの基準配列に対して特定のパーセンテージの配列同一性を有するVH及びVLドメイン配列を有する抗CD47抗体のために維持してもよい。
【0016】
抗体又はその抗原結合断片の重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインが、基準配列に対する具体的な配列同一性パーセンテージによって定義される全ての実施形態について、VH及び/又はVLドメインは、相違がフレームワーク領域内にのみ存在するように、基準配列内に存在するCDR配列と同一のCDR配列を保持してもよい。
【0017】
別の実施形態では、好ましいCD47抗体、又はその抗原結合断片は、重鎖(HC)と軽鎖(LC)の組合せを含むものであり、この組合せは、以下:
(i)配列番号76のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号66を含む軽鎖;
(ii)配列番号77のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号68を含む軽鎖;
(iii)配列番号78のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号69を含む軽鎖;
(iv)配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号70を含む軽鎖;
(v)配列番号80のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号70を含む軽鎖;
(vi)配列番号81のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号70を含む軽鎖;
(vii)配列番号82のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号68を含む軽鎖;
(viii)配列番号83のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号70を含む軽鎖;
(ix)配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号71を含む軽鎖;
(x)配列番号85のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号72を含む軽鎖;
(xi)配列番号86のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号72を含む軽鎖;
(xii)配列番号80のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号73を含む軽鎖;
(xiii)配列番号81のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号73を含む軽鎖;
(xiv)配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号70を含む軽鎖;
(xv)配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号73を含む軽鎖;
(xvi)配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖;
(xvii)配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖;
(xviii)配列番号90のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖;
(xix)配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖;
(xx)配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号74を含む軽鎖;
(xxi)配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号71を含む軽鎖;
(xxii)配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号71を含む軽鎖;
(xxiii)配列番号90のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号31を含む軽鎖;
(xxiv)配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号71を含む軽鎖;
(xxv)配列番号85のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号68を含む軽鎖;
(xxvi)配列番号86のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号68を含む軽鎖;
(xxvii)配列番号93のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号100を含む軽鎖;
(xxviii)配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号75を含む軽鎖;
(xxix)配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号71を含む軽鎖;
(xxx)配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号71を含む軽鎖;
(xxxi)配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号71を含む軽鎖;
(xxxii)配列番号98のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号71を含む軽鎖;
(xxxiii)配列番号83のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号73を含む軽鎖;
(xxxiv)配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号73を含む軽鎖;
(xxxv)配列番号102のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号101を含む軽鎖;
(xxxvi)配列番号104のアミノ酸配列を含む重鎖と、アミノ酸配列配列番号103を含む軽鎖
からなる群から選択され;
ここで、VHアミノ酸配列は、それらと少なくとも90%、95%、97%、98%若しくは99%同一であり、VLアミノ酸配列は、それらと少なくとも90%、95%、97%、98%若しくは99%同一である。
【0018】
本明細書に記載される抗CD47抗体の好ましい実施形態はまた、ヒトの治療に使用するために提案される、従来技術の抗CD47抗体では呈示されない特性の組合せも特徴とする。従って、本明細書に記載される好ましい抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大すると共に;
d.感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導すること
を特徴とする。
【0019】
本明細書に記載される別の好ましい実施形態では、抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大し、
d.感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導すると共に;
e.ヒト赤血球(hRBC)の凝集を引き起こさないこと
を特徴とする。
【0020】
本明細書に記載されるさらに別の好ましい実施形態では、抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大し、
d.感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導すると共に;
e.ヒト赤血球(hRBC)の少ない凝集を引き起こすこと
を特徴とする。
【0021】
本明細書に記載される別の好ましい実施形態では、抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に特異的に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大し、
d.感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導すると共に;
e.低いhRBC結合を有すること
を特徴とする。
【0022】
本明細書に記載される別の好ましい実施形態では、抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大し、
d.ヒト赤血球(hRBC)の凝集を引き起こさないと共に;
e.hRBCと結合しないこと
を特徴とする。
【0023】
本明細書に記載される別の好ましい実施形態では、抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に特異的に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大し、
d.ヒト赤血球(hRBC)の凝集を引き起こさないと共に;
e.低いhRBC結合を有すること
を特徴とする。
【0024】
本明細書に記載される別の好ましい実施形態では、モノクローナル抗体、又はその抗原結合断片は、非ヒト霊長類CD47にも特異的に結合し、ここで、非ヒト霊長類は、限定されないが、カニクイザル、ミドリザル、アカゲザル及びリスザルを含み得る。
【0025】
本明細書に記載されるさらに別の好ましい実施形態では、モノクローナル抗体、又はその抗原結合断片は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、及びラットCD47に結合する。
【0026】
開示される抗CD47mAbの様々な形態が本明細書で考慮される。例えば、抗CD47mAbは、本明細書に開示されるように、ヒトフレームワークと、アイソタイプ、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、より具体的には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4の定常領域を有し、場合によっては、Fc受容体機能を改変する、若しくはFabアーム交換を防止する様々な突然変異を有する完全長ヒト化抗体、又は抗体断片、例えば、F(ab’)
2断片、F(ab)断片、一本鎖Fv断片(scFv)などであってよい。
【0027】
本開示の好ましい実施形態は、本明細書に開示される1つ若しくは複数の抗CD47mAb又は断片、任意選択でキメラ若しくはヒト化形態、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、若しくは賦形剤を含む、医薬組成物又は動物用医薬組成物を提供する。
【0028】
本開示以前から、本明細書に記載するような機能プロフィールを有する抗CD47mAbを同定することが求められていた。本開示の抗CD47mAbは、異なる特性の組合せ、特に、ヒトの療法、とりわけ固形癌及び血液癌、虚血再灌流傷害、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患の予防及び/又は治療での使用に、mAbを特に有利若しくは好適にする特性の組合せを呈示する。
【0029】
本開示の適用可能性のさらなる範囲は、以下に記載する詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明及び具体的な例は、本開示の好ましい実施形態を示してはいるが、本開示の精神及び範囲内の様々な変更及び修正は、詳細な説明から当業者に対して明らかになることから、あくまで例示として賦与されるに過ぎないことは理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本開示の上記及びその他の態様、特徴、及び利点は、添付の図面と共に考慮される以下の詳細な説明からよりよく理解されよう。尚、これらの図面は全て、例示として賦与されるに過ぎず、本開示を限定するものではない。
【0031】
【
図1A】
図1Aは、ヒトCD47を発現するヒトOV10細胞に対するVLX4ヒト化mAbの結合を示す。ヒトCD47を発現するOV10細胞株(OV10hCD47)セルベースELISAを用いて、ヒトCD47に対するVLX4ヒト化mAb(VLX4hum_01 IgG1、VLX4hum_02 IgG1、VLX4hum_01 IgG4 PE、及びVLX4hum_02 IgG4 PE)の結合を決定した。OV10hCD47細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、アッセイの時点で密集とした。様々な濃度のmAbを細胞に1時間かけて添加した。細胞を洗浄してから、HRP標識二次抗体と一緒に1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ基質を添加した。
【
図1B】
図1Bは、ヒトCD47を発現するヒトOV10細胞に対するVLX4ヒト化mAbの結合を示す。OV10 CD47セルベースELISAを用いて、ヒトCD47に対するVLX4ヒト化mAb(VLX4hum_06 IgG4 PE、VLX4hum_07 IgG4 PE、VLX4hum_12 IgG4 PE、及びVLX4hum_13 IgG4 PE)の結合を決定した。OV10hCD47細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、アッセイの時点で密集とした。様々な濃度のVLX4の代表的mAbを1時間かけて細胞に添加した。細胞を洗浄してから、HRP標識二次抗体と一緒に1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ基質を添加した。
【
図2A】
図2Aは、ヒトRBC(hRBC)に対するVLX4ヒト化mAbの結合を示す。新しく単離したhRBCを用いて、ヒトCD47に対するVLX4ヒト化mAb(VLX4hum_01 IgG1、VLX4hum_02 IgG1、VLX4hum_01 IgG4 PE、及びVLX4hum_02 IgG4 PE)の結合を決定した。様々な濃度のVLX4mAbと一緒にhRBCを37℃で60分間インキュベートし、洗浄した後、FITC標識ロバ抗ヒト抗体と一緒に1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを用いて抗体結合を測定した。
【
図2B】
図2Bは、ヒトRBCに対するVLX4ヒト化mAbの結合を示す。新しく単離したhRBCを用いて、ヒトCD47に対するVLX4ヒト化mAb(VLX4hum_07 IgG4 PE、VLX4hum_12 IgG4 PE、及びVLX4hum_13 IgG4 PE)の結合を決定した。様々な濃度のVLX4mAbと一緒にhRBCを37℃で60分間インキュベートし、洗浄した後、FITC標識ロバ抗ヒト抗体と一緒に1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを用いて抗体結合を測定した。
【
図3A】
図3Aは、ヒトOV10hCD47細胞に対するVLX8ヒト化mAbの結合を示す。OV10hCD47セルベースELISAを用いて、ヒトCD47に対するVLX8 IgG4 PEキメラ(xi)又はヒト化mAb(VLX8hum_01 IgG4 PE、VLX8hum_04 IgG4 PE、VLX8hum_07 IgG4 PE、及びVLX8hum_09 IgG4 PE)の結合を決定した。OV10hCD47細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、アッセイの時点で密集とした。様々な濃度のVLX8の代表的mAbを1時間かけて細胞に添加した。細胞を洗浄してから、HRP標識二次抗体と一緒に1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ基質を添加した。
【
図3B】
図3Bは、ヒトOV10hCD47細胞に対するVLX8ヒト化mAbの結合を示す。OV10hCD47セルベースELISAを用いて、ヒトCD47に対するVLX8キメラ又はヒト化mAb(VLX8hum_06 IgG2、VLX8hum_07 IgG2、VLX8hum_08 IgG2、及びVLX8hum_09 IgG2)の結合を決定した。OV10hCD47細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、アッセイの時点で密集とした。様々な濃度のVLX8の代表的mAbを1時間かけて細胞に添加した。細胞を洗浄してから、HRP標識二次抗体と一緒に1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ基質を添加した。
【
図4A】
図4Aは、ヒトRBCに対するVLX8ヒト化mAbの結合を示す。新しく単離したヒトRBCを用いて、ヒトCD47に対するVLX8 IgG4 PExi又はヒト化mAb(VLX8hum_01 IgG4 PE、VLX8hum_03 IgG4 PE、VLX8hum_07 IgG4 PE、及びVLX8hum_10 IgG4 PE)の結合を決定した。様々な濃度のVLX8mAbと一緒にRBCを37℃で1時間インキュベートし、洗浄した後、FITC標識ロバ抗ヒト抗体と一緒に1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを用いて抗体結合を測定した。
【
図4B】
図4Bは、ヒトRBCに対するVLX8ヒト化mAbの結合を示す。新しく単離したヒトRBCを用いて、ヒトCD47に対するVLX8 IgG4 PExi又はヒト化mAb(VLX8hum_06 IgG2、VLX8hum_07 IgG2、VLX8hum_08 IgG2及びVLX8hum_09 IgG2)の結合を決定した。様々な濃度のVLX8mAbと一緒にRBCを37℃で1時間インキュベートし、洗浄した後、FITC標識ロバ抗ヒト抗体と一緒に1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを用いて抗体結合を測定した。
【
図5A】
図5Aは、ヒトOV10hCD47細胞に対するVLX9ヒト化mAbの結合を示す。OV10ヒトCD47セルベースELISAを用いて、ヒトCD47に対するVLX9 IgG2xi又はヒト化mAb(VLX9hum_01 IgG2、VLX9hum_02 IgG2、VLX9hum_03 IgG2、VLX9hum_04 IgG2及びVLX9hum_05 IgG2)の結合を決定した。OV10hCD47細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、アッセイの時点で密集とした。様々な濃度のmAbを1時間かけて細胞に添加した。細胞を洗浄してから、HRP標識二次抗体と一緒に1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ基質を添加した。
【
図5B】
図5Bは、ヒトOV10hCD47細胞に対するVLX9ヒト化mAbの結合を示す。OV10hCD47セルベースELISAを用いて、ヒトCD47に対するVLX9 IgG2xi又はヒト化mAb(VLX9hum_06 IgG2、VLX9hum_07 IgG2、VLX9hum_08 IgG2、VLX9hum_09 IgG2及びVLX9hum_10 IgG2)の結合を決定した。OV10hCD47細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、アッセイの時点で密集とした。様々な濃度のmAbを1時間かけて細胞に添加した。細胞を洗浄してから、HRP標識二次抗体と一緒に1時間インキュベートした後、ペルオキシダーゼ基質を添加した。
【
図6】
図6は、ヒトRBCに対するVLX9ヒト化mAbの結合を示す。新しく単離したヒトhRBCを用いて、ヒトCD47に対するVLX9 IgG2xi又はヒト化mAbの結合を決定した。様々な濃度のVLX9mAbと一緒にRBCを37℃で60分間インキュベートし、洗浄した後、FITC標識ロバ抗ヒト抗体と一緒に1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを用いて抗体結合を測定した。
【
図7】
図7は、VLX4、VLX8及びVLX9ヒト化mAbは、Jurkat細胞のCD47に対するSIRPαの結合を阻止することを示す。10%培地を含むRPMI中で、1.5×10
6個のJurkat細胞を5μg/mlのVLX4、VLX8及びVLX9 CD47ヒト化mAb(VLX4hum_01 IgG4 PE、VLX4hum_07 IgG4 PE、VLX8hum_10 IgG4 PE、VLX4hum_11 IgG4 PE、 VLX9hum_03 IgG2、VLX9hum_06 IgG2、及びVLX9hum_08 IgG2)又は対照抗体と一緒に37℃で30分間インキュベートした。等量の蛍光標識SIRPα−Fc融合タンパク質を添加し、37℃でさらに30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを用いて結合を評価した。
【
図8】
図8は、VLX4 CD47キメラmAbは、ヒトマクロファージによるJurkat T細胞の食作用を増大することを示す。ヒトマクロファージを96ウェルプレートにおいてウェル当たり1×10
4細胞の濃度でプレーティングし、24時間かけて付着させた。5×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T細胞と1μg/mlのVLX4キメラmAbをマクロファージ培養物に添加し、37℃で2時間インキュベートした。貪食されていないJurkat細胞を除去し、マクロファージ培養物を入念に洗浄した。マクロファージをトリプシン処理してから、CD14について洗浄した。フローサイトメトリーを用いて、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞のパーセンテージを決定した。
【
図9A】
図9Aは、VLX4ヒト化mAbは、ヒトマクロファージによるJurkat T細胞の食作用を増大することを示す。ヒトマクロファージを96ウェルプレートにおいてウェル当たり1×10
4細胞の濃度でプレーティングし、24時間かけて付着させた。5×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T細胞と1μg/mlの抗体をマクロファージ培養物に添加し、37℃で2時間インキュベートした。貪食されていないJurkat T細胞を除去し、マクロファージ培養物を入念に洗浄した。マクロファージをトリプシン処理してから、CD14について洗浄した。フローサイトメトリーを用いて、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞のパーセンテージを決定した。
【
図9B】
図9Bは、VLX4ヒト化mAbは、ヒトマクロファージによるJurkat T細胞の食作用を増大することを示す。ヒトマクロファージを96ウェルプレートにおいてウェル当たり1×10
4細胞の濃度でプレーティングし、24時間かけて付着させた。5×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T細胞と1μg/mlの抗体をマクロファージ培養物に添加し、37℃で2時間インキュベートした。貪食されていないJurkat T細胞を除去し、マクロファージ培養物を入念に洗浄した。マクロファージをトリプシン処理してから、CD14について洗浄した。フローサイトメトリーを用いて、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞のパーセンテージを決定した。
【
図10A】
図10Aは、VLX8 CD47キメラmAbは、ヒトマクロファージによるJurkat T細胞の食作用を増大することを示す。ヒトマクロファージを96ウェルプレートにおいてウェル当たり1×10
4細胞の濃度でプレーティングし、24時間かけて付着させた。5×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T細胞と1μg/mlのVLX8キメラmAbをマクロファージ培養物に添加し、37℃で2時間インキュベートした。貪食されていないJurkat細胞を除去し、マクロファージ培養物を入念に洗浄した。マクロファージをトリプシン処理してから、CD14について洗浄した。フローサイトメトリーを用いて、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞のパーセンテージを決定した。
【
図10B】
図10Bは、VLX8ヒト化mAbは、ヒトマクロファージによるJurkat細胞の食作用を増大することを示す。ヒトマクロファージを96ウェルプレートにおいてウェル当たり1×10
4細胞の濃度でプレーティングし、24時間かけて付着させた。5×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T細胞と1μg/mlの抗体をマクロファージ培養物に添加し、37℃で2時間インキュベートした。貪食されていないJurkat T細胞を除去し、マクロファージ培養物を入念に洗浄した。マクロファージをトリプシン処理してから、CD14について洗浄した。フローサイトメトリーを用いて、全CD14
+集団中のCD14
+/CFSE
+細胞のパーセンテージを決定した。
【
図11A】
図11Aは、VLX9 CD47キメラmAbは、ヒトマクロファージによるJurkat T細胞の食作用を増大することを示す。ヒトマクロファージを96ウェルプレートにおいてウェル当たり1×10
4細胞の濃度でプレーティングし、24時間かけて付着させた。5×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T細胞と1μg/mlのVLX9キメラmAbをマクロファージ培養物に添加し、37℃で2時間インキュベートした。貪食されていないJurkat細胞を除去し、マクロファージ培養物を入念に洗浄した。マクロファージをトリプシン処理してから、CD14について洗浄した。フローサイトメトリーを用いて、全CD14+集団中のCD14+/CFSE+細胞のパーセンテージを決定した。
【
図11B】
図11Bは、VLX9ヒト化mAbは、ヒトマクロファージによるJurkat T細胞の食作用を増大することを示す。ヒトマクロファージを96ウェルプレートにおいてウェル当たり1×10
4細胞の濃度でプレーティングし、24時間かけて付着させた。5×10
4個のCFSE(1μM)標識ヒトJurkat T細胞と1μg/mlの抗体をマクロファージ培養物に添加し、37℃で2時間インキュベートした。貪食されていないJurkat 細胞を除去し、マクロファージ培養物を入念に洗浄した。マクロファージをトリプシン処理してから、CD14について洗浄した。フローサイトメトリーを用いて、全CD14+集団中のCD14+/CFSE+細胞のパーセンテージを決定した。
【
図12A】
図12Aは、可溶性VLX4ヒト化mAbによるヒトJurkat T細胞での細胞死の誘導を示す。1mlのRPMI培地中で、Jurkat T細胞(1×10
4)を1μg/mlのVLX4ヒト化mAbと一緒に37℃で24時間インキュベートした。次に、細胞をアネキシンVについて染色し、フローサイトメトリーによりシグナルを検出した。
【
図12B】
図12Bは、可溶性VLX4ヒト化mAbによるヒトJurkat T細胞での細胞死の誘導を示す。1mlのRPMI培地中で、Jurkat T細胞(1×10
4)を1μg/mlのVLX4ヒト化mAbと一緒に37℃で24時間インキュベートした。次に、細胞をアネキシンVについて染色し、フローサイトメトリーによりシグナルを検出した。
【
図13A】
図13Aは、可溶性VLX8 CD47キメラmAbによるヒトJurkat細胞での細胞死の誘導を示す。1mlのRPMI培地中で、Jurkat T ALL細胞(1×10
4)を1μg/mlのVLX8ヒト化mAbと一緒に37℃で24時間インキュベートした。次に、細胞をアネキシンVについて染色し、フローサイトメトリーによりシグナルを検出した。
【
図13B】
図13Bは、可溶性VLX8ヒト化mAbによるヒトJurkat細胞での細胞死の誘導を示す。1mlのRPMI培地中で、Jurkat T ALL細胞(1×10
4)を1μg/mlのVLX8ヒト化mAbと一緒に37℃で24時間インキュベートした。次に、細胞をアネキシンVについて染色し、フローサイトメトリーによりシグナルを検出した。
【
図14A】
図14Aは、可溶性VLX9マウス/ヒトキメラmAbによるヒトJurkat細胞の細胞死の誘導を示す。0.1mlのRPMI培地中で、1×10
4個のJurkat細胞を1μg/mlのVLX9 CD47キメラmAbと一緒に37℃で24時間インキュベートした。次に、細胞をアネキシンVについて染色し、フローサイトメトリーによりシグナルを検出した。
【
図14B】
図14Bは、可溶性VLX9ヒト化mAbによるヒトJurkat細胞での細胞死の誘導を示す。1mlのRPMI培地中で、Jurkat T ALL細胞(1×10
4)を1μg/mlのVLX9ヒト化mAbと一緒に37℃で24時間インキュベートした。次に、細胞をアネキシンVについて染色し、フローサイトメトリーによりシグナルを検出した。VLX9 IgG2(xi)は、マウス/ヒトキメラである。
【
図15A】
図15Aは、VLX4ヒト化mAbによるhRBCの凝集を示す。様々な濃度のヒト化VLX4mAb(25μg/mL〜0.4ng/mL)とhRBCのインキュベーション後に、血球凝集を評価した。血液を希釈(1:50)し、PBS/EDTA/BSAで3回洗浄した。等量の抗体(75μl)と一緒にhRBCをU底96ウェルプレートに添加し、37℃で3時間、次に4℃で一晩インキュベートした。
【
図15B】
図15Bは、VLX8キメラ及びヒト化mAbによるhRBCの凝集を示す。様々な濃度のヒト化VLX4mAb(25μg/mL〜0.4ng/mL)とhRBCのインキュベーション後に、血球凝集を評価した。血液を希釈(1:50)し、PBS/EDTA/BSAで3回洗浄した。等量の抗体(75μl)と一緒にhRBCをU底96ウェルプレートに添加し、37℃で3時間、次に4℃で一晩インキュベートした。
【
図16】
図16は、VLX9ヒト化mAbによるヒトRBCの凝集を示す。様々な濃度のVLX9 IgG2キメラ(xi)及びヒト化VLX9mAbとヒトRBCのインキュベーション後に、血球凝集を評価した。血液を希釈(1:50)し、PBS/EDTA/BSAで3回洗浄した。等量の抗体(75μl)と一緒にRBCをU底96ウェルプレートに添加し、37℃で3時間、次に4℃で一晩インキュベートした。
【
図17】
図17は、VLX4ヒト化mAbは、ラージ(Raji)異種移植片モデルにおいて腫瘍成長を抑制することを示す。5×10
6個のラージ(Raji)腫瘍細胞の懸濁液を含有する0.1mLの30%RPMI/70%Matrigel(商標)(BD Biosciences;Bedford,MA)混合物を雌NSGマウスの右脇腹に皮下接種した。接種から5日後、腫瘍体積を測定し、31〜74mm
3の触知可能な腫瘍体積を有するマウスをランダムに8〜10匹/グループに分けた。この時点でVLX4hum_07又はPBS(対照)の投与を開始した。マウスは、抗体5X/週の腹腔内注射により4週間にわたって5mg/kgの抗体で処置した。腫瘍体積及び体重を週2回記録した。
【
図18】
図18は、VLX8ヒト化mAbは、ラージ(Raji)異種移植片モデルにおいて腫瘍成長を抑制することを示す。5×10
6個のラージ(Raji)腫瘍細胞の懸濁液を含有する0.1mLの30%RPMI/70%Matrigel(商標)(BD Biosciences;Bedford,MA)混合物を雌NSGマウスの右脇腹に皮下接種した。接種から5日後、腫瘍体積を測定し、31〜74mm
3の触知可能な腫瘍体積を有するマウスをランダムに8〜10匹/グループに分けた。この時点でVLX8hum_10又はPBS(対照)の投与を開始した。マウスは、抗体5X/週の腹腔内注射により4週間にわたって5mg/kgの抗体で処置した。腫瘍体積及び体重を週2回記録した。
【
図19】
図19は、VLX9ヒト化mAbは、ラージ(Raji)異種移植片モデルにおいて腫瘍成長を抑制することを示す。5×10
6個のラージ(Raji)腫瘍細胞の懸濁液を含有する0.1mLの30%RPMI/70%Matrigel(商標)(BD Biosciences;Bedford,MA)混合物を雌NSGマウスの右脇腹に皮下接種した。接種から5日後、腫瘍体積を測定し、31〜74mm
3の触知可能な腫瘍体積を有するマウスをランダムに8〜10匹/グループに分けた。この時点でVLX9hum_08 IgG2又はPBS(対照)の投与を開始した。マウスは、抗体5X/週の腹腔内注射により4週間にわたって5mg/kgの抗体で処置した。腫瘍体積及び体重を週2回記録した。
【
図20A】
図20Aは、カニクイザルにヒト化VLX9mAbを静脈内注入により投与した後の血中ヘモグロビンレベルを示す。VLX9hum_08 IgG2又はビヒクルを、1日目に5mg/kgの用量及び18日目に15mg/kgの用量で1時間の静脈内注入として投与した。全試験期間を通してヘモグロビンレベルをモニターし、対照値に対して正規化した。
【
図20B】
図20Bは、カニクイザルにヒト化VLX9mAbを静脈内注入により投与した後の血中RBCレベルを示す。VLX9hum_08 IgG2又はビヒクルを、1日目に5mg/kgの用量及び18日目に15mg/kgの用量で1時間の静脈内注入として投与した。全試験期間を通してRBCレベルをモニターし、対照値に対して正規化した。
【
図21】
図21は、抗マウス/ウサギキメラmAbを用いたヒト腫瘍組織中のCD47の免疫組織化学染色を示す。VLX4マウス/ウサギキメラmAbを用いて、CD47をヒト乳癌組織中に局在化した。パラフィン包埋組織を切片にし、4ug/mlの精製抗体で染色した後、抗ウサギHRP二次抗体で局在化した。矢印は、CD47染色の陽性領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
別に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学及び技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈から別のことが要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。概して、細胞及び組織培養、分子生物学、並びにタンパク質及びオリゴ又はポリヌクレオチド化学に関して使用される命名法、並びにそれらの技術は、当技術分野で公知であり、一般に使用されている。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「CD47」、「インテグリン関連タンパク質(IAP)」、「卵巣癌抗原OA3」、「Rh関連抗原」及び「MERG」は、同意語であり、置き換え可能に使用され得る。
【0034】
用語「抗CD47抗体」は、治療又は診断薬としての使用を目的とし、従って、典型的には、治療及び/又は診断薬として有用である上で必要な結合親和性を有する本開示の抗体を指す。
【0035】
本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン(Ig)分子、すなわち抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を指す。〜と、若しくは〜に対して「特異的に結合する」又は「免疫反応する」とは、抗体が、所望の抗原の1つ又は複数の抗原決定基と反応するが、他のポリペプチドとは反応しないか、又ははるかに低い親和性(K
d>10
−6)で結合することを意味する。抗体としては、限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)
2断片、一本鎖Fv断片、及び単一アーム(one−armed)抗体が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用されるとき、用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、本開示の抗体化合物に適用される場合、例えば、任意の真核、原核、若しくはファージクローンをはじめとする単一コピー若しくはクローンから得られる抗体を指すものであり、それらを生成する方法ではない。本開示のmAbは、均一又はほぼ均一の集団に存在するのが好ましい。完全なmAbは、2つの重鎖と2つの軽鎖を含む。
【0037】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の1部分を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0038】
本明細書に開示されるように、「抗体化合物」は、mAb及びその抗原結合断片を指す。本開示に従う類似の機能的特性を呈示する別の抗体化合物は、従来の方法により作製することができる。例えば、マウスをヒトCD47又はその断片で免疫し、得られた抗体を回収し、精製することができ、それらが本明細書に開示される抗体化合物と類似の、若しくは同じ結合及び機能的特性を有するか否かの決定は、以下の実施例3〜11に開示される方法によって評価することができる。また、抗原結合断片も、従来の方法により調製することができる。抗体及び抗原結合断片を生成及び精製する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、以下:Harlow and Lane (1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,第5〜8章及び第15章に見出すことができる。
【0039】
モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の1部分が、マウス抗体の対応する配列、特にマウスCDRと同一、又は相同的であるが、鎖の残りは、ヒト抗体の対応する配列と同一、又は相同的である抗体を包含する。本開示の他の実施形態は、モノクローナル抗体と類似若しくは同一の結合及び生物学的特性を呈示するこれらのモノクローナル抗体の抗原結合断片を含む。本開示の抗体は、κ又はλ軽鎖定常領域、及び重鎖IgA、IgD、IgE、IgG、若しくはIgM定常領域を含んでよく、そうしたものとして、IgGサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のものがあり、これらは、場合によっては、Fc受容体機能を改変するための様々な突然変異を含む。
【0040】
本明細書に開示されるマウスCDRを含有するモノクローナル抗体は、組換えDNA方法をはじめとする、当業者には周知の様々な方法の何れかによって調製することができる。
【0041】
抗体改変及び改善のための最新の方法についての論評は、例えば、以下:P.Chames,Ed.,(2012)Antibody Engineering:Methods and Protocols,Second Edition(Methods in Molecular Biology,Book 907),Humana Press,ISBN−10:1617799734;C.R.Wood,Ed.,(2011)Antibody Drug Discovery(Molecular Medicine and Medicinal Chemistry,Book 4),Imperial College Press;R.Kontermann and S.Dubel,Eds.,(2010)Antibody Engineering Volumes 1 and 2(Springer Protocols),Second Edition;並びにW.Strohl and L.Strohl(2012)Therapeutic antibody engineering:Current and future advances driving the strongest growth area in the pharmaceutical industry,Woodhead Publishingに見出すことができる。
【0042】
抗体及び抗原結合断片を生成及び精製する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、以下:Harlow and Lane (1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York,第5〜8章及び第15章に見出すことができる。
【0043】
天然に存在する完全長抗体は、4つのポリペプチド鎖:ジスルフィド結合により互いに連結された2つの同じ重(H)鎖と2つの同じ軽(L)鎖を含む、「Y」型の免疫グロブリン(Ig)分子である。フラグメント抗原結合領域(FAB)と呼ばれる各鎖のアミノ酸末端部分は、主として、そこに含まれる相補性決定領域(CDR)を介した抗原認識を担う約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域(「Fc」領域)を画定する。
【0044】
CDRには、フレームワーク(「FR」)と呼ばれる、より保存された領域が散在する。多くのFRのアミノ酸配列が当技術分野で公知である。各軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)は、3つのCDRと4つのFRから構成され、次の順にアミノ末端からカルボキシ末端まで配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。軽鎖の3つのCDRは、「LCDR1、LCDR2、及びLCDR3」と呼ばれ、重鎖の3つのCDRは、「HCDR1、HCDR2、及びHCDR3」と呼ばれる。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基のほとんどを含有する。LCVR及びHCVR領域内のCDRアミノ酸残基の番号付け及び配置は、公知のKabatナンバーリング則(Kabat numbering convention)Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.NIH Publication No.91−3242に従う。
【0045】
本明細書に記載するように、「抗原結合部位」は、「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」として定義することができ、Chothia及びLesk(Chothia and Lesk,Mol.Biol.196:901−917,1987)により定義される通りの抗体可変ドメインの構造的に超可変領域を指す。6つのHVRがあり、そのうち、3つがVH(H1、H2、H3)に、3つがVL(L1、L2、L3)に存在する。本明細書では、延長されてH1を含むH−CDR1を除き、Kabatにより定義されるCDRを使用した。
【0046】
ギリシャ文字α(アルファ)、δ(デルタ)、ε(イプシロン)、γ(ガンマ)、及びμ(ミュー)と称される5つのタイプの哺乳類免疫グロブリン(Ig)重鎖があり、これらは、それぞれ、IgA、IgD、IgE、IgG、若しくはIgMとして抗体のクラス又はアイソタイプを定義する。IgG抗体は、サブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4にさらに区分され得る。
【0047】
各重鎖タイプは、当技術分野で公知である配列を含み特定の定常領域を特徴とする。定常領域は、同じアイソタイプのあらゆる抗体で同一であるが、別のアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、及びδは、3つのタンデム免疫グロブリン(Ig)ドメインから構成される定常領域と、柔軟性追加のためのヒンジ領域とを含む。重鎖μ及びεは、4つのIgドメインから構成される定常領域を有する。
【0048】
ヒンジ領域は、抗体のFc及びFab部分を連結させる柔軟なアミノ酸区間がある。この領域は、2つの重鎖を連結するジスルフィド結合を形成することができるシステイン残基を含有する。
【0049】
重鎖の可変領域は、別のB細胞により産生される抗体では異なるが、単一B細胞又はB細胞クローンにより産生されるあらゆる抗体については同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長さであり、単一Igドメインから構成される。
【0050】
哺乳類の場合、軽鎖は、カッパ(κ)又はラムダ(λ)として分類され、当技術分野において公知の特定の定常領域を特徴とする。軽鎖は、2つの連続的ドメイン:アミノ酸末端に1つの可変ドメインと、カルボキシ末端に1つの定常ドメインを有する。各抗体は、常に同一である2つの軽鎖を含み;哺乳類において、1抗体につき軽鎖κ又はλの1タイプしか存在しない。
【0051】
抗体のクラスに応じて3つ又は4つの定常ドメインを提供する2つの重鎖から構成されるFc領域は、免疫細胞の活性をモジュレートする上で役割を果たす。特定のタンパク質に結合することにより、Fc領域は、各抗体が所与の抗原に対して適切な免疫応答を生み出すことを確実にする。Fc領域はまた、Fc受容体などの様々な細胞受容体、並びに補体タンパク質などの他の免疫分子にも結合する。これによって、Fc領域は、オプソニン化、細胞溶解、並びに肥満細胞、好塩基球及び好酸球の脱顆粒を媒介する。
【0052】
本明細書で使用されるとき、用語「エピトープ」は、抗体又は抗体断片が結合するペプチド若しくはタンパク質に位置するアミノ酸の具体的な配列を指す。エピトープは、多くの場合、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面集団からなり、特定の三次元構造特徴、並びに特定の電荷特徴を備える。エピトープは、線状、すなわち、アミノ酸の単一配列への結合を含むか、又は立体配座、すなわち、抗原(線状配列では必ずしも連続的ではなくてもよい)の様々な領域内のアミノ酸の2つ以上の配列への結合を含むかのいずれであってもよい。
【0053】
本明細書で使用されるとき、用語「特異的に結合する」、「特異的に結合する」、「特異的結合」、及び本発明の抗体化合物に適用される同等の用語は、特定の結合物質(抗体など)が、特定の結合物質及び標的分子種が混合されている他の分子種との結合に優先して、標的分子種に結合する能力を指す。特定の結合物質は、標的と特異的に結合することができるとき、標的分子種を特異的に認識すると言える。
【0054】
本明細書で使用されるとき、用語「結合親和性」は、当該分子上の1部位における1つの分子と別の分子の結合の強度を指す。特定の分子が別の特定の分子と特異的に結合するか、又は会合する場合、これらの2つの分子は、互いに結合親和性を呈示すると言える。結合親和性は、1対の分子の会合定数及び解離定数に関するが、これらの定数を測定又は決定することは、本明細書に記載の方法には重要ではない。それよりも、記載される方法の分子同士の相互作用を説明するために本明細書で用いられる親和性は、一般に、実験的試験で観測される見かけ上の親和性(別に明示されない限り)であり、これを用いて、1つの分子(例えば、抗体又は他の特異的結合相手)が、2つの他の分子(例えば、ペプチドの2つのバージョン又は変異体)に結合する相対強度を比較することができる。結合親和性、会合定数、及び解離定数の概念は、公知である。
【0055】
本明細書で使用されるとき、用語「配列同一性」は、配列マッチングを最大にするように、すなわち、ギャップと挿入を計算に入れて、配列をアラインメントしたときの2つ以上の配列の対応する位置における同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。同一性は、公知の方法によって容易に計算することができ、そうした方法として、限定されないが、以下のものが挙げられる:Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991;並びにCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J.Applied Math.,48:1073(1988)。同一性を決定する方法は、試験される配列同士の最大マッチを与えるように設計されている。さらに、同一性を決定する方法は、一般に入手可能なコンピュータプログラムにコード化されている。
【0056】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Watermanの局所相同性アルゴリズムにより、相同性アラインメントアルゴリズムにより、類似性の検索方法により、又はこれらアルゴリズムのコンピュータ用実装(GCG Wisconsin PackageのGAP、BESTFIT、PASTA、及びTFASTA、Accelrys,Inc.,San Diego,California,United States of Americaから入手可能)、又は肉眼検査により実施することができる。概要は、Altschul,S.F.et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)及びAltschul et al.Nucl.Acids Res.25:3389−3402(1997)を参照されたい。
【0057】
配列同一性及び配列類似性の割合(%)を決定するのに好適なアルゴリズムの一例は、BLASTアルゴリズムであり、これは、(Altschul,S.,et al.,NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894;及びAltschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationから一般に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合にいくつかの正の数の閾値スコアTに一致するか、又はそれを満たすクエリー配列中の長さWの短いワードの同定によって高スコアリング配列対(HSP)を最初に同定するステップを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と呼ばれる。
【0058】
これらの最初の隣接ワードヒットは、これらを含む、より長いHSPを見出すための検索開始のシード(seed)として作用する。次に、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、ワードヒットを各配列に沿って両方向に伸長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメータM(1対のマッチする残基についての報酬スコア;常に;0)及びN(ミスマッチ残基のペナルティスコア;常に;0)を用いて計算する。アミノ酸配列の場合には、スコアリング行列を用いて累積スコアを計算する。各方向へのワードヒットの伸長は、以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアが、その達成された最大値から量Xだけ低下した場合、1つ又は複数の負のスコアの残基アラインメントの累積によって累積スコアが0以下になる場合、又は何れかの配列の末端に到達する場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定付ける。BLASTNプログラムは(ヌクレオチド配列の場合)、デフォルトとして、ワード長(W):11、期待値(E):10、カットオフ:100、M=5、N=−4、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W):3、期待値(E):10、及びBLOSUM62スコアリング行列を使用する。
【0059】
同一性の割合(%)の計算に加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列同士の類似性の統計解析を行う。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の1つの尺度は、最小和確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これによって、2つのヌクレオチド同士又はアミノ酸配列同士のマッチが偶然に起こる確率の指標が得られる。例えば、試験核酸配列と基準核酸配列を比較した最小和確率が、一実施形態で約0.1未満、別の実施形態で約0.01未満、また別の実施形態で約0.001未満である場合、試験核酸配列は基準配列に類似するとみなされる。
【0060】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒト化(された)」、「ヒト化」などは、ヒトFR及び定常領域に、本明細書に開示されるマウスモノクローナル抗体CDRを移植することを指す。これらの用語には、以下に説明するように、様々な抗体特性を改善する目的で、例えば、Kashmiri et al.(2005)Methods 36(1):25−34及びHou et al.(2008)J.Biochem.144(1):115−120に開示される方法によりそれぞれマウスCDR、及びヒトFRに対して可能なさらなる修飾も含まれる。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒト化抗体」は、本明細書に開示される抗体化合物をはじめとする、本明細書に開示されるものと類似する開示に従う結合及び機能的特性を有し、且つFRと、非ヒト抗体由来の実質的にヒト又は完全にヒトの周囲CDRである定常領域とを有するmAb及び抗原結合断片を指す。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「FR」又は「フレームワーク配列」は、FR1〜4の何れか1つを指す。本開示により包含されるヒト化抗体及び抗原結合断片は、FR1〜4の何れか1つ又は複数が、実質的又は完全にヒト由来である、すなわち、実質的又は完全にヒトのFR1〜4の考えられる組合せの何れかが存在する、分子を含む。例えば、これは、FR1とFR2、FR1とFR3、FR1、FR2、及びFR3などが実質的又は完全にヒト由来である分子を含む。実質的にヒトのフレームワークは、既知のヒト生殖細胞系フレームワーク配列と少なくとも80%の配列同一性を有するものである。好ましくは、実質的にヒトのフレームワークは、本明細書に開示されるフレームワーク配列、又は既知のヒト生殖細胞系フレームワーク配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0063】
完全にヒトのフレームワークは、既知のヒト生殖細胞系フレームワーク配列と同じものである。ヒトFR生殖細胞系配列は、国際ImMunoGeneTics(IMGT)データベース及びMarie−Paule Lefranc and Gerard Lefranc,Academic Press,2001によるThe Immunoglobulin FactsBookから取得することができ、その内容は、全体として参照により本明細書に開示組み込む。
【0064】
The Immunoglobulin Facts Bookは、ヒト抗体レパトアを作製するために使用されるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子の概要であり、203の遺伝子と459の対立遺伝子のエントリーを含み、総計837の配列が展示されている。個々のエントリーは、全て、少なくとも1つの機能性又はオープンリーディングフレーム対立遺伝子を有し、且つ3つの主要遺伝子座に位置する、ヒト免疫グロブリン定常遺伝子、並びに生殖細胞系可変、多様性、及びジョイニング遺伝子を含む。例えば、生殖細胞系軽鎖FRは、以下:IGKV3D−20、IGKV2−30、IGKV2−29、IGKV2−28、IGKV1−27、IGKV3−20、IGKV1−17、IGKV1−16、1−6、IGKV1−5、IGKV1−12、IGKV1D−16、IGKV2D−28、IGKV2D−29、IGKV3−11、IGKV1−9、IGKV1−39、IGKV1D−39及びIGKV1D−33並びにIGKJ1−5からなる群から選択することができ、また、生殖細胞系重鎖FRは、以下:IGHV1−2、IGHV1−18、IGHV1−46、IGHV1−69、IGHV2−5、IGHV2−26、IGHV2−70、IGHV1−3、IGHV1−8、IGHV3−9、IGHV3−11、IGHV3−15、IGHV3−20、IGHV3−66、IGHV3−72、IGHV3−74、IGHV4−31、IGHV3−21、IGHV3−23、IGHV3−30、IGHV3−48、IGHV4−39、IGHV4−59及びIGHV5−51並びにIGHJ1−6からなる群から選択することができる。
【0065】
実質的にヒトのFRは、既知のヒト生殖細胞系FR配列と少なくとも80%の配列同一性を有するものである。好ましくは、実質的にヒトのフレームワークは、本明細書に開示されるフレームワーク配列、又は既知のヒト生殖細胞系フレームワーク配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0066】
本開示に含まれるCDRは、本明細書に具体的に開示されるものだけではなく、本明細書に開示されるCDR配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列も含む。あるいは、本開示に含まれるCDRは、本明細書に具体的に開示されるものだけではなく、本明細書に開示されるCDR配列と比較して、対応する位置に1、2、3、4、又は5個のアミノ酸変更を有するCDR配列も含む。このような配列が同一、又はアミノ酸が修飾されたCDRは、好ましくは、インタクトな抗体によって認識される抗原に結合する。
【0067】
本明細書に開示されるもの以外に、本開示に従う類似の機能的特性を呈示するヒト化抗体は、いくつかの異なる方法:Almagro et al.Frontiers in Biosciences.Humanization of antibodies.(2008)Jan 1;13:1619−33を用いて作製することができる。一アプローチでは、親抗体化合物CDRは、親抗体化合物フレームワークと高い配列同一性を有するヒトフレームワークに移植される。新規フレームワークの配列同一性は、一般に、親抗体化合物中の対応するフレームワークの配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。100アミノ酸残基未満を有するフレームワークの場合、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸残基を変更することができる。この移植によって、親抗体のそれと比較して結合親和性の低下が起こり得る。その場合には、Queen et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2869により開示される具体的な基準に基づいて、いくつかの位置でフレームワークを親フレームワークに復帰突然変異させることができる。相同性及び復帰突然変異に基づいてヒト化変異体を作製する上で有用な方法を記載する別の参照文献としては、以下に記載されるものなどが挙げられる:Olimpieri et al.Bioinformatics.2015 Feb 1;31(3):434−435及び米国特許第4,816,397号明細書、同第5,225,539号明細書、及び同第5,693,761号明細書;及びWinter and co−workersの方法(Jones et al.(1986)Nature 321:522−525;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323−327;並びにVerhoeyen et al.(1988)Science 239:1534−1536。
【0068】
ヒト化は、1980年代前半に開発された方法であるキメラ化(Morrison,S.L.,M.J.Johnson,L.A.Herzenberg & V.T Oi:Chimeric human antibody molecules:mouse antigen−binding domains with human constant region domains.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,81,6851−5(1984))から開始するが、これは、マウス抗体の可変(V)ドメインをヒト定常(C)ドメインと組み合わせることによって、ヒト内容物の約70%を含む分子を作製することから成る。
【0069】
いくつかの異なる方法を用いて、ヒト化抗体を作製することができ、これは本明細書に記載されている。一アプローチでは、親抗体化合物CDRは、親抗体化合物フレームワークと高い配列同一性を有するヒトFRに移植される。新たなFRの配列同一性は、一般に、親抗体化合物中の対応するFRの配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を有する。100アミノ酸残基未満を有するFRの場合、1、2、3、4、5個以上のアミノ酸残基を変更することができる。この移植によって、親抗体のそれと比較して結合親和性の低下が起こり得る。その場合には、Queen et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2869により開示される具体的な基準に基づき、いくつかの位置で、FRを親フレームワークに復帰突然変異させることができる。相同性及び復帰突然変異に基づいてヒト化変異体を作製する上で有用な方法を記載する別の参照文献としては、以下に記載されるものなどが挙げられる:Olimpieri et al.Bioinformatics.2015 Feb 1;31(3):434−435及び米国特許第4,816,397号明細書、同第5,225,539号明細書、及び同第5,693,761号明細書;並びにWinter and co−workersの方法(Jones et al.(1986)Nature 321:522−525;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323−327;並びにVerhoeyen et al.(1988)Science 239:1534−1536。
【0070】
復帰突然変異のために考慮すべき残基の同定は、以下に記載するように実施することができる。アミノ酸が下記のカテゴリーに入るとき、使用されているヒト生殖細胞系配列のフレームワークアミノ酸(「アクセプターFR」)は、親抗体化合物のフレームワーク由来のフレームワークアミノ酸(「ドナーFR」)により置換される:
(a)アクセプターフレームワークのヒトFR内のアミノ酸が、その位置のヒトフレームワークでは稀であるが、ドナー免疫グロブリン内の対応するアミノ酸は、その位置のヒトフレームワークでは典型的である;
(b)アミノ酸の位置が、CDRの1つに隣接している;又は
(c)フレームワークアミノ酸の何れかの側鎖原子が、三次元免疫グロブリンモデル中のCDRアミノ酸の何れかの原子から約5〜6オングストローム(中心間)以内にある。
【0071】
アクセプターフレームワークのヒトFR内のアミノ酸の各々及びドナーフレームワーク内の対応するアミノ酸が、概して、その位置のヒトフレームワークでは稀であるとき、そのようなアミノ酸は、その位置のヒトフレームワークに典型的なアミノ酸により置換することができる。この復帰突然変異の基準によって親抗体化合物の活動を復帰させることが可能になる。
【0072】
本明細書に開示される抗体化合物と類似の機能的特性を提示するヒト化抗体を作製する別のアプローチは、フレームワークを変更することなく、移植CDR内でアミノ酸をランダムに突然変異させるステップ、次に、親抗体化合物のそれと同等又はより優れた結合親和性及びその他の機能的特性について、得られた分子をスクリーニングするステップを含む。さらに、単一の突然変異を各CDR内の各アミノ酸位置に導入した後、結合親和性及びその他の機能的特性に対するそうした突然変異の作用を評価することもできる。改善された特性をもたらす単一突然変異を組み合わせて、相互の組合せの作用を評価することができる。
【0073】
さらに、以上のアプローチの両方の組合せも可能である。CDR移植後、CDRにアミノ酸変更を導入する以外に、特定のFRを復帰突然変異させることができる。この方法は、Wu et al.(1999)J.Mol.Biol.294:151−162に記載されている。
【0074】
本開示の教示を適用して、当業者は、例えば、部位指定突然変異誘発などの一般的技術を使用して、本明細書に開示されるCDR及びFR配列内のアミノ酸を置換することにより、この配列に由来する別の可変領域アミノ酸配列を作製することができる。最大全部の天然に存在するアミノ酸を特定の置換部位に導入することができる。本明細書に開示される方法を用いて、これらの追加可変領域アミノ酸配列をスクリーニングすることにより、表示されるインビボ機能を有する配列を同定することができる。このようにして、本開示に従ってヒト化抗体及びその抗原結合部分を作製するのに好適なさらなる配列を同定することができる。フレームワーク内のアミノ酸置換は、本明細書に開示される4つの軽鎖及び/又は重鎖FRの何れか1つ又は複数において1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つの位置に制限するのが好ましい。CDR内のアミノ酸置換は、3つの軽鎖及び/又は重鎖CDRの何れか1つ又は複数において1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つの位置に制限するのが好ましい。前述したこれらのFR及びCDR内の様々な変更の組合せも可能である。
【0075】
上述のアミノ酸修飾を導入することにより作製した抗体化合物の機能的特性が、本明細書に開示される特定の分子により呈示されるものと一致することは、以下に開示する実施例の方法により確認することができる。
【0076】
上に記載したように、患者にヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を誘発する問題を回避するために、マウス抗体を遺伝子操作し、ヒト免疫グロブリン分子の可変軽鎖(V
L)及び可変重鎖(V
H)フレームワーク上に、相補性決定領域(CDR)を移植することによって、抗原結合部位の完全性に必須とみなされるこれらのマウスフレームワーク残基は維持しながら、そのマウス内容物をそのヒト対応部分に存在するアミノ酸残基で段階的に置換した。しかし、ヒト化抗体の異種CDRは、患者に抗イディオタイプ(抗Id)応答を引き起こし得る。
【0077】
抗Id応答を最小限にするために、ヒトフレームワークに、抗体−リガンド相互作用に最も重要なCDR残基だけを移植する(「SDR移植」と呼ばれる)ことによって、異種抗体をヒト化する方法が開発されており、この方法では、CDRの必須特異性決定残基(SDR)だけがヒトフレームワークに移植される。この方法は、Kashmiri et al.(2005)Methods 36(1):25−34に記載されており、既知構造の抗原−抗体複合体の三次元構造のデータベースを用いた、又は抗体結合部位の突然変異分析によるSDRの同定を含む。より多くのCDR残基の保持を含むヒト化のための別のアプローチは、「短縮」CDR、すなわち、全てのSDRを含むCDR残基の区間の移植に基づくものである。Kashmiriらは、マウス抗体を投与された患者からの血清に対するヒト化抗体の反応性を評価する方法も開示している。
【0078】
改善された免疫原性を有するヒト抗体変異体を構築する別の戦略は、Hou et al.(2008) J.Biochem.144(1):115−120に開示されている。これらの著者らは、コンピュータ支援相同性モデル化により構築された4C8の分子モデルを用いるCDR移植により、4C8からのヒト化抗体、すなわち、マウス抗ヒトCD34モノクローナル抗体を開発した。この分子モデルを用いて、上記の著者らは、抗原結合に潜在的に重要なFR残基を同定した。4C8のヒト化バージョンは、マウス抗体FRに対する相同性に基づいて選択されたヒト抗体フレームワークにこれらの重要なマウスFR残基を、マウスCDR残基と一緒に移植することによって作製された。得られたヒト化抗体は、本来のマウス抗体のそれと類似した抗原結合親和性及び特異性を有することが判明したが、これは、臨床的に常用されているマウス抗CD34抗体の代替物となり得ることを示唆している。
【0079】
本開示の実施形態は、考慮されるmAbが、本明細書に開示される単一マウスmAb由来のCDRのセット、又は開示されるマウスmAbの2つ若しくは3つに由来する個別のCDRを含むCDRのセットを含有する軽鎖及び重鎖を含むことができるように、任意の組合せ形態で本明細書に開示されるCDRを含むヒト免疫系による認識を回避するように作製された抗体を包含する。こうしたmAbは、分子生物学の標準的技術により作製し、本明細書に記載されるアッセイを用いて、所望の活性についてスクリーニングすることができる。このようにして、本開示は、新たな、又は改善された治療活性を達成するために、開示されるマウスmAb由来のCDRの混合物を含む新規のmAbを作製する「ミックス及びマッチ(mix and match)」アプローチを提供する。
【0080】
本明細書に開示される分子と「競合する」本開示により包含されるモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、本開示の分子が結合する部位と同一であるか、又はそれとオーバーラップする部位でヒトCD47に結合するものである。競合するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、例えば、抗体競合アッセイによって同定することができる。例えば、精製した、又は部分的に精製したヒトCD47細胞外ドメインのサンプルを固体支持体に結合することができる。次に、本開示の抗体化合物、又はその抗原結合断片並びにそのような開示抗体化合物と競合することができると思われるモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を添加する。2つの分子のうちの一方を標識する。標識化合物及び非標識化合物が結合して、CD47上の個別且つ独立の部位に結合すれば、標識化合物は、推定競合化合物が存在するか否かにかかわらず、同じレベルで結合するであろう。しかし、相互作用の部位が同一又はオーバーラップする場合には、非標識化合物は競合し、抗原に結合する標識化合物の量は低下するであろう。非標識化合物が過剰に存在する場合には、もしあるとしても、ごくわずかの標識化合物が結合するであろう。本開示の目的のために、競合モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、CD47に対する本発明の抗体化合物の結合を約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%低減するものである。こうした競合アッセイを実施する方法の詳細は当技術分野で公知であり、例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, N.Yに見出すことができる。こうしたアッセイは、精製抗体を用いることによって、定量的にすることができる。標準曲線は、1つの抗体をそれ自体に対して力価測定することによって作成し、言い換えれば、同じ抗体を標識及び競合者の両方に使用する。非標識競合モノクローナル抗体又はその抗原結合断片が、プレートに対する標識分子の結合を阻害する能力を滴定する。結果をプロットして、所望の程度の結合阻害を達成するのに必要な濃度を比較する。
【0081】
こうした競合アッセイで本開示の抗体化合物と競合するmAb又はその抗原結合断片が、本開示の抗体化合物と同じ若しくは類似の機能的特性を有するか否かは、これらの方法を、以下の実施例3〜5に記載する方法と組み合わせて、決定することができる。様々な実施形態では、本明細書に包含される治療方法に使用するための競合抗体は、本明細書に開示される抗体化合物のそれと比較して、約50%〜約100%又は約125%、若しくはそれ以上の範囲の本明細書に記載するような生物学的活性を有する。一部の実施形態では、競合抗体は、以下に記載する実施例に開示の方法により決定される通り、本明細書に開示される抗体化合物のそれと比較して、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は同一の生物学的活性を有する。
【0082】
本組成物及び方法において有用なmAb若しくはその抗原結合断片、又は競合抗体は、本明細書に記載されるアイソタイプのいずれであってもよい。さらに、これらのアイソタイプのいずれも、後述する通り、さらなるアミノ酸修飾を含んでもよい。
【0083】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、又は競合抗体は、ヒトIgG1アイソタイプであってよい。
【0084】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG1定常領域を修飾して、抗体半減期を改変することができる。抗体半減期は、大部分が、新生児Fc受容体とのFc依存性相互作用により調節される(Roopenian and Alikesh,2007)。モノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG1定常領域を修飾して、半減期を延長することができ、そのようなものとして、限定されないが、アミノ酸修飾:N434A、T307A/E380A/N434A(Petkova et al.,2006,Yeung et al.,2009);M252Y/S254T/T256E(Dall’Acqua et al.,2006);T250Q/M428L(Hinton et al.,2006);及びM428L/N434S(Zalevsky et al.,2010)が挙げられる。
【0085】
半減期の延長とは反対に、例えば、高い抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)抗体に関連する有害事象の可能性を低減するために、短い半減期が所望されるいくつかの状況がある(Presta 2008)。本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG1定常領域を修飾して、半減期を短縮する、及び/又は内在性IgGを低減することもでき、そのようなものとして、限定されないが、アミノ酸修飾:I253A(Petkova et al.,2006);P257I/N434H、D376V/N434H(Datta−Mannan et al.,2007);及びM252Y/S254T/T256E/H433K/N434F(Vaccaro et al.,2005)が挙げられる。
【0086】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG1定常領域を修飾して、抗体エフェクター機能を増大又は低減することができる。こうした抗体エフェクター機能として、限定されないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、C1q結合、及びFc受容体に対する結合の改変が挙げられる。
【0087】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG1定常領域を修飾して、抗体エフェクター機能を増大することができ、そのようなものとして、限定されないが、アミノ酸修飾:S298A/E333A/K334(Shields et al.,2001);S239D/I332E及びS239D/A330L/I332E(Lazar et al.,2006);F234L/R292P/Y300L、F234L/R292P/Y300L/P393L、及びF243L/R292P/Y300L/V305I/P396L(Stevenhagen et al.,2007);G236A,G236A/S239D/I332E、及びG236A/S239D/A330L/I332E(Richards et al.,2008);K326A/E333A、K326A/E333S及びK326W/E333S(Idusogie et al.,2001);S267E及びS267E/L328F(Smith et al.,2012);H268F/S324T、S267E/H268F、S267E/S234T、及びS267E/H268F/S324T(Moore et al.,2010);S298G/T299A(Sazinsky et al.,2008);E382V/M428I(Jung et al.,2010)が挙げられる。
【0088】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG1定常領域を修飾して、抗体エフェクター機能を低減することができ、そのようなものとして、限定されないが、アミノ酸修飾N297A及びN297Q(Bolt et al.,1993,Walker et al.,1989);L234A/L235A(Xu et al.,2000);K214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D356E/L358M(Ghevaert et al.,2008);C226S/C229S/E233P/L234V/L235A(McEarchern et al.,2007);S267E/L328F (Chu et al.,2008)が挙げられる。
【0089】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG1定常領域を修飾して、抗体エフェクター機能を低減することができ、そのようなものとして、限定されないが、アミノ酸修飾:V234A/G237A(Cole et al.,1999);E233D、G237D、P238D、H268Q、H268D、P271G、V309L、A330S、A330R、P331S、H268Q/A330S/V309L/P331S、H268D/A330S/V309L/P331S、H268Q/A330R/V309L/P331S、H268D/A330R/V309L/P331S、E233D/A330R、E233D/A330S、E233D/P271G/A330R、E233D/P271G/A330S、G237D/H268D/P271G、G237D/H268Q/P271G、G237D/P271G/A330R、G237D/P271G/A330S、E233D/H268D/P271G/A330R、E233D/H268Q/P271G/A330R、E233D/H268D/P271G/A330S、E233D/H268Q/P271G/A330S、G237D/H268D/P271G/A330R、G237D/H268Q/P271G/A330R、G237D/H268D/P271G/A330S、G237D/H268Q/P271G/A330S、E233D/G237D/H268D/P271G/A330R、E233D/G237D/H268Q/P271G/A330R、E233D/G237D/H268D/P271G/A330S、E233D/G237D/H268Q/P271G/A330S、P238D/E233D/A330R、P238D/E233D/A330S、P238D/E233D/P271G/A330R、P238D/E233D/P271G/A330S、P238D/G237D/H268D/P271G、P238D/G237D/H268Q/P271G、P238D/G237D/P271G/A330R、P238D/G237D/P271G/A330S、P238D/E233D/H268D/P271G/A330R、P238D/E233D/H268Q/P271G/A330R、P238D/E233D/H268D/P271G/A330S、P238D/E233D/H268Q/P271G/A330S、P238D/G237D/H268D/P271G/A330R、P238D/G237D/H268Q/P271G/A330R、P238D/G237D/H268D/P271G/A330S、P238D/G237D/H268Q/P271G/A330S、P238D/E233D/G237D/H268D/P271G/A330R、P238D/E233D/G237D/H268Q/P271G/A330R、P238D/E233D/G237D/H268D/P271G/A330S、P238D/E233D/G237D/H268Q/P271G/A330S(An et al.,2009,Mimoto,2013)が挙げられる。
【0090】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、又は競合抗体は、ヒトIgG2アイソタイプであってもよい。
【0091】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG2定常領域を修飾して、抗体エフェクター機能を増大又は低減することができる。こうした抗体エフェクター機能として、限定されないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、及びC1q結合、並びにFc受容体に対する結合の改変が挙げられる。
【0092】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG2定常領域を修飾して、抗体エフェクター機能を増大することができ、そのようなものとして、限定されないが、アミノ酸修飾:K326A/E333S(Idusogie et al.,2001)が挙げられる。
【0093】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG2定常領域を修飾して、抗体エフェクター機能を低減することができ、そのようなものとして、限定されないが、アミノ酸修飾:V234A/G237A (Cole et al., 1999);E233D、G237D、P238D、H268Q、H268D、P271G、V309L、A330S、A330R、P331S、H268Q/A330S/V309L/P331S、H268D/A330S/V309L/P331S、H268Q/A330R/V309L/P331S、H268D/A330R/V309L/P331S、E233D/A330R、E233D/A330S、E233D/P271G/A330R、E233D/P271G/A330S、G237D/H268D/P271G、G237D/H268Q/P271G、G237D/P271G/A330R、G237D/P271G/A330S、E233D/H268D/P271G/A330R、E233D/H268Q/P271G/A330R、E233D/H268D/P271G/A330S、E233D/H268Q/P271G/A330S、G237D/H268D/P271G/A330R、G237D/H268Q/P271G/A330R、G237D/H268D/P271G/A330S、G237D/H268Q/P271G/A330S、E233D/G237D/H268D/P271G/A330R、E233D/G237D/H268Q/P271G/A330R、E233D/G237D/H268D/P271G/A330S、E233D/G237D/H268Q/P271G/A330S、P238D/E233D/A330R、P238D/E233D/A330S、P238D/E233D/P271G/A330R、P238D/E233D/P271G/A330S、P238D/G237D/H268D/P271G、P238D/G237D/H268Q/P271G、P238D/G237D/P271G/A330R、P238D/G237D/P271G/A330S、P238D/E233D/H268D/P271G/A330R、P238D/E233D/H268Q/P271G/A330R、P238D/E233D/H268D/P271G/A330S、P238D/E233D/H268Q/P271G/A330S、P238D/G237D/H268D/P271G/A330R、P238D/G237D/H268Q/P271G/A330R、P238D/G237D/H268D/P271G/A330S、P238D/G237D/H268Q/P271G/A330S、P238D/E233D/G237D/H268D/P271G/A330R、P238D/E233D/G237D/H268Q/P271G/A330R、P238D/E233D/G237D/H268D/P271G/A330S、P238D/E233D/G237D/H268Q/P271G/A330S(An et al.,2009,Mimoto,2013)が挙げられる。
【0094】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG2Fc領域を修飾して、アイソフォーム及び/又はアゴニスト活性を改変することができ、そのようなものとして、限定されないが、アミノ酸修飾:C127S(C
H1ドメイン)、C232S、C233S、C232S/C233S、C236S、及びC239S(White et al.,2015,Lightle et al.,2010)が挙げられる。
【0095】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、若しくはその抗原結合断片、又は競合抗体は、ヒトIgG3アイソタイプであってもよい。
【0096】
モノクローナル抗体、若しくはその抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG3定常領域であって、モノクローナル抗体、又はその抗原結合断片の前記ヒトIgG3定常領域を1つ又は複数のアミノ酸にて修飾して、抗体半減期、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、又はアポトーシス活性を増大することができる。
【0097】
モノクローナル抗体、若しくはその抗原結合断片のヒトIgG3定常領域であって、モノクローナル抗体、又はその抗原結合断片の前記ヒトIgG3定常領域をアミノ酸R435Hにて修飾して、抗体半減期を延長することができる。
【0098】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、又は競合抗体は、ヒトIgG4アイソタイプであってもよい。
【0099】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG4定常領域を修飾して、抗体エフェクター機能を低減することができる。こうした抗体エフェクター機能として、限定されないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)が挙げられる。
【0100】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体、その抗原結合断片、又は競合抗体のヒトIgG4定常領域を修飾して、Fabアーム交換を防止する、及び/又は抗体エフェクター機能を低減することができ、そのようなものとして、限定されないが、アミノ酸修飾:F234A/L235A(Alegre et al.,1994);S228P,L235E及びS228P/L235E(Reddy et al.,2000)が挙げられる。
【0101】
本明細書で使用されるとき、用語「腫瘍」は、悪性又は良性にかかわらず、あらゆる腫瘍細胞成長及び増殖、並びにあらゆる前癌及び癌性細胞と前癌及び癌性組織を指す。
【0102】
用語「癌」、「癌性」、及び「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、互いに限定的ではない。用語「癌」及び「癌性」は、典型的には異常細胞成長/増殖を特徴とする、哺乳類における生理学的状態を指すか、又は記述する。癌の例として、限定されないが、癌腫、リンパ腫(すなわち、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられる。こうした癌の具体的な例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸の癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌(liver cancer)、乳癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜若しくは子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)、白血病及びその他のリンパ増殖性障害、並びに多様なタイプの頭部及び頚部癌が挙げられる。
【0103】
用語「感受性癌」は、本明細書で使用されるとき、その細胞が、CD47を発現し、且つ本開示の抗体若しくはその抗原結合断片、又は競合抗体若しくはその抗原結合断片による治療に対して応答性である癌を指す。
【0104】
用語「自己免疫疾患」は、本明細書で使用されるとき、身体の免疫系が自身に向かい、誤って健全な細胞を攻撃する場合を指す。
【0105】
用語「炎症性疾患」は、本明細書で使用されるとき、局所反応及びその結果生じる形態学的変化をはじめとする、物理的、化学的若しくは生物学的因子に起因する傷害又は異常刺激に応答して患部血管及び隣接組織に起こる組織学的に明らかな細胞学的変化、細胞浸潤、及びメディエータ放出の動的複合体を含む基本的病理過程である炎症;傷害性物質の破壊又は除去;並びに修復及び治癒をもたらす応答を特徴とする疾患を指す。
【0106】
用語「自己炎症性疾患」は、本明細書で使用されるとき、自然免疫系が、原因不明の炎症を引き起こす場合に起こる疾患を指す。
【0107】
本明細書で使用されるとき、用語「虚血」は、例えば、1つ若しくは複数の血管の収縮又は閉塞によって、身体の器官、組織、若しくは部分への血液供給の減少が起こる血管現象を指す。虚血は、場合によっては、血管収縮又は血栓症若しくは塞栓症によって起こる。虚血は、酸素供給の減少によって起こる細胞死のために、直接虚血性傷害、組織損傷を招き得る。虚血は、例えば、手術中、又は事故で受けた組織への外傷、傷害及び戦争状況によって、又は後の移植を目的とする臓器摘出後、急性に起こり得る。これは、血管の漸進的狭窄によって組織及び器官への不適切な血流が起こる、アテローム性動脈硬化性末梢血管疾患に認められるように、亜急性でも起こり得る。組織が虚血を被ると、最終的に細胞不全及び壊死を招き得る一連の化学事象が起こる。血流の回復によって虚血が停止すれば、第2の連続的傷害事象が続き、さらなる傷害を引き起こす。このように、被験者に血流の一時的減少又は中断がいつ起きても、その結果生じる傷害は、2つの構成要素、すなわち、虚血時間の間に起こる直接傷害と、それに続く間接的傷害又は再灌流傷害を伴う。
【0108】
「虚血性脳卒中」は、いくつかの異なる種類の疾患によって起こり得る。最も一般的な障害は、頸部及び頭部の動脈の狭窄である。これは、最も高頻度で、動脈硬化、又は漸次的コレステロール沈着によって起こる。動脈が狭くなりすぎると、血液細胞は、凝集し、血餅(血栓)を形成する可能性がある。これらの血餅は、それらが形成される動脈を閉塞する(血栓症)か、又は脳近傍の動脈内に移動し、そこに閉じ込められ得る(閉塞症)。脳卒中は、アテローム性動脈硬化性プラークが血管壁から部分的に分離し、血管を通る血液の流れを塞ぐとき起こり得る。
【0109】
本明細書で使用されるとき、用語「再灌流」は、血流の減少により虚血である組織に対する血流の回復を指す。再灌流は、生存可能な虚血組織を回復させて、それ以上の壊死を制限することによって、梗塞又はその他の虚血を治療する方法である。しかし、再灌流は、それ自体が虚血組織をさらに損傷させて、再灌流傷害を引き起こし得る。血流の不足の間に起こる即時傷害に加えて、「虚血/灌流傷害」は、血流が回復された後に起こる組織傷害も伴う。この傷害の多くは、虚血組織により放出される化学物質、遊離基、及び生理活性物質によって引き起こされると現時点では理解されている。
【0110】
「一酸化窒素(NO)供与体、前駆体、又は一酸化窒素生成局所薬」は、NOを送達するか、又は酵素若しくは非酵素プロセスを介してNOに変換することができる化合物又は薬剤を指す。例として、限定されないが、NOガス、二硝酸イソソルビド、亜硝酸塩、ニトロプルシド、ニトログリセリン、3−モルホリノシドノニミン(SIN−1)、S−ニトロソ−N−アセチル−ペニシラミン(SNAP)、ジエチレントリアミン/NO(DETA/NO)、S−ニトロソチオール、Bidil(登録商標)、及びアルギニンが挙げられる。
【0111】
「可溶性グアニリルシクラーゼ(sGC)」は、血管平滑筋中の一酸化窒素の受容体である。心血管系では、一酸化窒素は、L−アルギニンから内皮一酸化窒素シンターゼにより内在的に生成され、隣接する血管平滑筋細胞中の可溶性グアニリルシクラーゼを活性化してcGMPレベルを増大し、血管弛緩を誘導する。一酸化窒素は、可溶性グアニリルシクラーゼの通常減少したヘム部分に結合して、GTPからのcGMPの形成を増大し、これによって、細胞内カルシウムの減少、血管拡張、及び抗炎症作用をもたらす。sGC上のヘム鉄の酸化によって、一酸化窒素に対する酵素の応答性が低減し、血管収縮を促進する。一酸化窒素−sGC−cGMP経路は従って、心血管疾患において重要な役割を果たす。アジ化ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、ヒドロキシルアミン、ニトログリセリン、及びニトロプルシドナトリウムなどの窒素含有化合物は、sGCを刺激して、cGMPの増加、及び血管弛緩を引き起こすことがわかっている。還元sGCに結合するsGCの刺激因子とは対照的に、sGCの活性化因子は、一酸化窒素に対して応答性ではない酸化又はヘム欠損sGC酵素を活性化する、すなわち、これらの因子は、酸化還元状態とは独立にsGCを刺激する。sGCの刺激因子は、一酸化窒素に対する還元sGCの感受性を増大することができるのに対し、sGCの活性化因子は、酵素が酸化されても、従って、一酸化窒素に対して低応答性又は不応答性であっても、sGC酵素活性を増大することができる。このように、sGC活性化因子は、非一酸化窒素を基材とする。Nossaman et al.(2012)Critical Care Research and Practice,Volume 2012,article 290805,及びDerbyshire and Marletta(2012)Ann.Rev.Biochem.81:533−559の論評に留意されたい。
【0112】
「可溶性グアニリルシクラーゼを活性化する薬剤」は、例えば、有機硝酸塩(Artz et al.(2002)J.Biol.Chem.277:18253−18256);プロトポルフィリンIX(Ignarro et al.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:2870−2873);YC−1(Ko et al.(1994)Blood 84:4226−4233);BAY 41−2272及びBAY 41−8543(Stasch et al.(2001 Nature 410(6825):212−5)、CMF−1571、並びにA−350619(Evgenov et al.(2006)Nat.Rev.Drug.Discov.5:755−768に論評) ;BAY 58−2667(Cinaciguat; Frey et al.(2008)Journal of Clinical Pharmacology 48(12):1400−10);BAY 63−2521(Riociguat; Mittendorf et al. (2009) Chemmedchem 4 (5):853−65)を指す。それ以外の可溶性グアニリルシクラーゼ活性化因子は、Stasch et al.(2011)Circulation 123:2263−2273;Derbyshire and Marletta (2012)Ann.Rev.Biochem.81:533−559、及びNossaman et al.(2012)Critical Care Research and Practice,Volume 2012,Article ID 290805,pages 1−12に開示されている。
【0113】
cGMPは、ホスホジエステラーゼ阻害剤を用いて、分解を阻害することによっても増加し得る。「環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼを阻害する薬剤」の例としては、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル、及びシルデナフィルアバナフィルが挙げられる。
【0114】
本明細書で使用されるとき、用語「治療すること」又は「治療する」又は「治療」とは、徴候、症状、障害、病状、若しくは疾患の進行又は重症度を遅延、阻止、停止、制御、停止、低減、若しくは逆転させることを意味するが、必ずしも全ての疾患関連の徴候、症状、病状、若しくは障害の排除を意味するわけではない。用語「治療する(こと)」などは、発症開始後の疾患又は病状の徴候若しくは症状を改善する治療介入を指す。
【0115】
本明細書で使用されるとき、用語「有効量」は、患者又は臓器に対する1若しくは複数用量の投与時に、所望される治療若しくは予防をもたらす本開示の抗体化合物の量又は用量を指す。
【0116】
任意の特定の被験者に対する正確な有効量は、その大きさ及び健康状態、その病状の性質及び程度、並びに投与するために選択された治療薬又は治療薬の組合せに応じて変動する。所与の患者の有効量は、常用の実験により決定され、これは、臨床医の判断で行われる。本開示の抗体化合物の治療有効量はまた、摘出された臓器又は患者に投与される1用量当たり約0.1mg/kg〜約150mg/kg、約0.1mg/kg〜約100mg/kg、約0.1mg/kg〜約50mg/kg、又は約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲の量を含み得る。公知の抗体系薬剤は、これに関してガイダンスを提供する。例えば、Herceptin(商標)は、21mg/ml溶液の静脈内注入により投与され、その場合、初期負荷投与が4mg/kg体重、毎週の維持投与が2mg/kg体重であり;Rituxan(商標)は、例えば、毎週375mg/m
2で投与される。
【0117】
任意の個別患者に対する治療有効量は、腫瘍退縮、循環腫瘍細胞、腫瘍幹細胞又は抗腫瘍応答に対する抗体化合物の作用をモニターすることによって、医療提供者が決定することができる。これらの方法で得られたデータの解析によって、療法中の治療レジメンの変更が可能になり、その結果、単独で若しくは互いに組み合わせて、又は別の治療薬と組み合わせて、あるいはその両方で使用されるかにかかわらず、本開示の抗体化合物の最適量が投与され、しかも、同様に治療期間も決定することができる。このようにして、投薬/治療レジメンを療法の過程で変更することでき、その結果、満足な効果を示す、単独で若しくは組み合わせて使用される最も低い量の抗体化合物が投与され、しかも、そうした化合物の投与は、患者の治療に成功するのに必要な期間だけ継続される。公知の抗体系薬剤は、例えば、薬剤が、毎日、毎週、毎月などで投与されるべきかにかかわらず、投与頻度に関するガイダンスを提供している。頻度及び投与量は、症状の重症度に応じても変動し得る。
【0118】
一部の実施形態では、本開示の抗体化合物は、ヒト及び動物医療における薬剤として使用することができ、限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、腹腔内、髄腔内、心室内、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)、局所、皮下、腫瘍内、鼻内、腸内、舌下、膣内、小胞内又は直腸経路を含む様々な経路により投与される。組成物はまた、腫瘍などの病変に直接投与することもできる。投薬治療は、単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールのいずれであってもよい。さらに、医薬組成物を投与するために、Hypoスプレーを使用してもよい。典型的には、治療組成物は、溶液又は懸濁液の何れかの形態で、注射液として調製することができる。また、注射前の液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に好適な固体形態を調製することもできる。獣医学適用には、ネコ及びイヌなどのコンパニオン/ペット動物;盲導犬若しくは介助犬、及びウマなどの使役動物;ウマ及びイヌなどの競技動物;霊長類、ライオン及びトラなどのネコ科動物、クマなどを含む動物園動物;並びに飼育されている他の有用な動物の治療が含まれる。
【0119】
こうした医薬組成物は、当技術分野において公知の方法により調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21
stEdition(2005),Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PAを参照されたい。また、医薬組成物は、本明細書に開示される1つ又は複数の抗体化合物、及び薬学的若しくは獣医学的に許容される、例えば、生理学的に許容される、担体、希釈剤、又は賦形剤を含む。
【0120】
本開示は、異なる機能プロフィールを有する抗CD47mAbを記載する。これらの抗体は、以下から選択される特性の異なる組合せを有する:1)1種若しくは複数種のCD47のホモログと交差反応性を示す;2)CD47とそのリガンドSIRPα同士の相互作用を阻止する;3)ヒト腫瘍細胞の食作用を増大する、4)感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導する;5)ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導しない;6)ヒト赤血球(hRBC)との結合が少ない;7)hRBCとの検出可能な結合がない;8)hRBCの凝集が少ない;9)hRBCの検出可能な凝集を引き起こさない;10)一酸化窒素(NO)経路のTSP1阻害を逆転する;及び/又は11)NO経路のTSP1阻害を逆転しない。
【0121】
本開示の抗CD47抗体及びその抗原結合断片は、従来技術の抗CD47抗体とは異なる特性の組合せを有する。これらの特性及び特徴について以下にさらに詳しく説明していく。
【0122】
様々な種のCD47への結合
本開示の抗CD47抗体、及びその抗原結合断片は、ヒトCD47に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、1種又は複数種のCD47のホモログ、例えば、非ヒト霊長類由来のCD47ホモログと交差反応性を示す。いくつかの実施形態では、本開示の抗CD47抗体、及びその抗原結合断片は、ヒトCD47、並びに非ヒト霊長類、マウス、ラット、及び/又はウサギ由来のCD47に結合する。他の種のホモログとの交差反応性は、治療用抗体の開発及び試験に特に有用となり得る。例えば、治療用抗体の前臨床毒性試験は、限定されないが、カニクイザル、ミドリザル、アカゲザル及びリスザルをはじめとする、非ヒト霊長類種で実施されることが多い。従って、これらの種のホモログとの交差反応性は、臨床候補としての抗体の開発にとって特に有用となり得る。
【0123】
CD47とSIRPα同士の相互作用の阻止及び食作用の促進
インテグリン関連タンパク質(IAP)としても知られるCD47は、細胞外N末端IgVドメイン、5膜通過貫膜ドメイン、及び代替的にスプライシングされている短いC末端細胞内テールから構成される50kDaの細胞表面受容体である。
【0124】
2つのリガンドが、CD47:シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)及びトロンボスポンジン1(TSP1)に結合する。TSP1は、血漿中に存在し、血小板をはじめとする多くの細胞により合成される。SIRPαは、造血細胞上に発現され、こうした細胞として、マクロファージ及び樹状細胞がある。
【0125】
食細胞上のSIRPαが標的細胞上のCD47に結合すると、この相互作用は、標的細胞の食作用を防止する。CD47とSIRPαの相互作用は、実際に「don’t eat me」シグナルを食細胞に送る(Oldenborg et al.Science 288:2051−2054,2000)。治療に際して、抗CD47mAbによりSIRPαとCD47の相互作用を阻止すれば、宿主の免疫系による癌細胞の取り込み及びクリアランスを促進することによって、有効な抗癌治療を提供することができる。従って、いくつかの抗CD47mAbの重要な機能的特性は、CD47とSIRPαの相互作用を阻止して、マクロファージによるCD47発現腫瘍細胞の食作用を達成する能力である。いくつかの抗CD47mAbが、CD47とSIRPαの相互作用を阻止することがわかっており、例えば、以下のものが挙げられる:B6H12(Seiffert et al.Blood 94:3633−3643,1999;Latour et al.J.Immunol.167:2547−2554,2001;Subramanian et al.Blood 107:2548−2556,2006;Liu et al.J Biol.Chem. 277:10028−10036,2002;Rebres et al et al.J.Cellular Physiol.205:182−193,2005)、BRIC126(Vernon−Wilson et al.Eur J Immunol.30:2130−2137,2000;Subramanian et al.Blood 107:2548−2556,2006)、CC2C6(Seiffert et al.Blood 94:3633−3643,1999)、及び1F7(Rebres et al.J.Cellular Physiol.205:182−193,2005)。また、B6H12及びBRIC126も、ヒト及びマウスマクロファージによるヒト腫瘍細胞の食作用を引き起こすことが明らかにされている(Willingham et al.Proc Natl Acad Sci USA 109(17):6662−6667,2012;Chao et al.Cell 142:699−713,2012;欧州特許第2 242 512 B1号明細書)。2D3などの他の既存の抗CD47mAbは、CD47とSIRPαの相互作用を阻止せず(Seiffert et al.Blood 94:3633−3643,1999;Latour et al.J.Immunol.167:2547−2554,2001;Rebres et al. J. Cellular Physiol.205:182−193,2005)、腫瘍細胞の食作用を引き起こさない(Willingham et al.Proc Natl Acad Sci USA 109(17):6662−6667,2012;Chao et al.Cell 142:699−713,2012;欧州特許第2 242 512 B1号明細書)。
【0126】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止する」は、抗CD47mAbによる、Jurkat細胞上のCD47に対するSIRPα−Fc結合の50%超の低減を指す。
【0127】
本明細書に記載される開示の抗CD47mAbは、CD47とSIRPαの相互作用を阻止して、ヒト腫瘍細胞の食作用を増大する。
【0128】
癌細胞の「食作用」は、マクロファージによるこうした細胞の貪食及び消化、並びにこれらの癌細胞の最終的な消化又は分解、並びにさらなるプロセシングに付すための消化又は分解細胞成分の細胞外、若しくは細胞内への放出を指す。CD47に対するSIRPαの結合を阻止する抗CD47モノクローナル抗体は、癌細胞のマクロファージ食作用を増大する。そうでなければ、癌細胞上のCD47に対するSIRPαの結合は、これらの細胞が、マクロファージ食作用を免れることを可能にするであろう。癌細胞は、生存能を有するか、又は生存癌細胞であり得る。
【0129】
腫瘍細胞の細胞死の誘導
いくつかの可溶性抗CD47mAbは、腫瘍細胞上のCD47に結合すると細胞死プログラムを開始し、その結果、ミトコンドリア膜電位崩壊、ATP生成能力の喪失、ホスホファチジルセリンの細胞表面発現の増大(アネキシンVについての染色増加により検出される)及びカスパーゼの参加若しくはDNAの断片化なしでの細胞死を引き起こす。このような可溶性抗CD47mAbは、様々な固形及び血液癌を治療する可能性がある。いくつかの可溶性抗CD47mAbが、腫瘍細胞死を誘導することがわかっており、例えば、MABL−1,MABL−2及びその断片(米国特許第8,101,719号明細書;Uno et al.Oncol Rep.17:1189−94,2007;Kikuchi et al.Biochem Biophys Res.Commun.315:912−8,2004),Ad22(Pettersen et al.J.Immuno.166:4931−4942,2001;Lamy et al.J.Biol.Chem.278:23915−23921,2003)、並びに1F7(Manna et al.J.Immunol.170:3544−3553,2003;Manna et al.Cancer Research,64:1026−1036,2004)が挙げられる。本明細書に記載される開示の抗CD47mAbの一部は、ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導する。
【0130】
用語「細胞死を誘導する(こと)」又は「殺傷する」などは、本明細書では置き換え可能に使用されて、培養した癌細胞に本開示の抗体化合物を添加することによって、これらの細胞に、細胞死に関連する定量化可能な特徴を呈示させることを意味し、こうした特徴は、以下に挙げる何れか1つ又は複数を含む:
1.フローサイトメトリー又は共焦点蛍光顕微鏡検査によって検出される、腫瘍細胞に対するアネキシンVの結合の増加(カルシウムイオンの存在下で);
2.腫瘍細胞による蛍光化合物ヨウ化プロピジウム(フローサイトメトリーにより検定)又は7−アミノアクチノマイシンD(フローサイトメトリーにより検定される7−AAD)又はトリパンブルー(光学顕微鏡検査で評点)の取り込みの増加
3.いくつかの入手可能な尺度(DiO−C6若しくはJC1などの電位差滴定蛍光染料又はMTT若しくはWST−1などのホルマザンベースのアッセイ)の1つによって検定される腫瘍細胞によるミトコンドリア機能及び膜電位の喪失。
【0131】
細胞死の誘導とは、本明細書に開示される可溶性抗CD47抗体、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はその抗原結合断片(並びに競合抗体及びその抗原結合断片)のいくつかが、補体又は他の細胞、例えば、限定されないが、T細胞、好中球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、若しくは樹状細胞の参加なしに、細胞自律機構を介して癌細胞を殺傷する能力を指す。量的に、細胞死の誘導は、限定されないが、負の対照抗体(ヒト化、アイソタイプ適合抗体)で得られたバックグラウンドと比較して、可溶性抗CD47mAbによりもたらされるヒト腫瘍細胞のアネキシンV染色の2倍超の増加を含む。
【0132】
本開示のヒト化又はキメラmAbのうち、ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導するものは、抗CD47mAbAd22(Pettersen et al.J.Immuno.166:4931−4942,2001;Lamy et al.J.Biol.Chem.278:23915−23921,2003);1F7(Manna and Frazier J.Immunol.170:3544−3553,2003;Manna and Frazier Cancer Res.64:1026−1036,2004);並びにMABL−1及び2(米国特許第7,531,643B2号明細書;米国特許第7,696,325B2号明細書;米国特許第8,101719B2号明細書)について報告されている知見と同様に、アネキシンV結合の増加をもたらす。
【0133】
細胞生存能アッセイは、NCI/NIHガイダンスマニュアルに記載されており、これは、CD47抗体によって引き起こされる細胞死の誘導を評価するために使用することができる多様な細胞ベースのアッセイを記載している:“Cell Viability Assays”,Terry L Riss,PhD,Richard A Moravec,BS,Andrew L Niles,MS,Helene A Benink,PhD,Tracy J Worzella,MS,and Lisa Minor,PhD. Contributor Information、2013年3月1日出版。
【0134】
hRBCとの結合
CD47は、ヒト赤血球(hRBC)に発現される(Brown.J CellBiol.111:2785−2794,1990;Avent.Biochem J.,(1988)251:499−505;Knapp.Blood,(1989)Vol.74,No.4,1448−1450;Oliveira et al.Biochimica et Biophysica Acta 1818:481−490,2012;Petrova P.et al.Cancer Res 2015;75(15 Suppl):Abstract nr 4271)。抗CD47mAbは、RBCに結合することがわかっており、そうしたものとして、以下:B6H12(Brown et al.J.Cell Biol.,1990,Oliveira et al.Biochimica et Biophysica Acta 1818:481−490,2012,Petrova P.et al.Cancer Res 2015;75(15 Suppl):Abstract nr 4271)、BRIC125(Avent.Biochem J.,(1988)251:499−505)、BRIC126(Avent.Biochem J.,(1988)251:499−505;Petrova P. et al. Cancer Res 2015;75(15 Suppl):Abstract nr 4271)、5F9(Uger R.et al.Cancer Res 2014;74(19 Suppl):Abstract nr 5011,Liu et al.PLoS One.2015 Sep 21;10(9):e0137345;Sikic B.et al.J Clin Oncol 2016;34(suppl; abstract 3019))、米国特許出願公開第2014/0161799号明細書、国際公開第2014/093678号パンフレット、米国特許出願公開第2014/0363442号明細書に開示される抗CD47抗体、並びにCC2C6(Petrova P.et al.Cancer Res 2015;75(15 Suppl):Abstract nr 4271,Uger R.et al.Cancer Res 2014;74(19 Suppl):Abstract nr 5011)が挙げられる。また、ヒトCD47に結合するSIRPα−Fc融合タンパク質は、他のヒト細胞と比較して、ヒトRBCには低い結合を有することもわかっている(Uger R.et al.Cancer Res 2014;74(19 Suppl):Abstract nr 5011)。RBCとの結合は、ただ1つのCD47結合アームを有する二重特異性抗体の作製によって低減することができる(Masternak et al.Cancer Res 2015;75(15 Suppl):Abstract nr 2482)。
【0135】
一部の抗CD47mAbは、カニクイザルに投与すると、RBCの減少を引き起こすことが判明したため(Mounho−Zamora B. et al.The Toxicologist, Supplement to Toxicological Sciences,2015;144(1):Abstract 596:127,Liu et al.PLoS One.2015 Sep 21;10(9):e0137345;Pietsch et al.Cancer Res 2015;75(15 Suppl):Abstract nr 2470)、CD47発現RBCに結合しない抗CD47mAbを同定することが極めて望ましい。
【0136】
本明細書で使用されるとき、用語「赤血球(red blood cell(s))」及び「赤血球(erythrocyte(s))」は同意語であり、本明細書では置き換え可能に使用される。
【0137】
本明細書で使用されるとき、用語「hRBCへの低い結合」は、ヒト腫瘍細胞に関するKdに比して10倍以上の、hRBCに対する抗CD47mAb結合のK
dを指し、ここで腫瘍細胞はOV10hCD47細胞である。
【0138】
本明細書で使用されるとき、用語「結合がない」又は「NB」は、100μg/ml以下の抗CD47mAb濃度でhRBCに対する測定可能な結合がないことを指す。
【0139】
本明細書に記載される開示以前に、CD47を発現するヒトRBCに結合しない抗CD47mAbは、報告されていない。
【0140】
本明細書に開示される抗CD47mAbの中には、ヒトRBCへの結合が低いか、又は検出可能な結合がないものもある。
【0141】
RBCの凝集
赤血球(RBC)凝集又は血球凝集は、RBCが、RBC抗原に対する抗体及びCD47などの細胞表面タンパク質をはじめとする様々な物質とのインキュベーション後に、凝集する、又は互いに凝集するとき起こる同型相互作用である。多くの抗CD47抗体は、濃度依存的に、単離されたヒトRBCの血球凝集をインビトロで引き起こすことが報告されており、例えば、B6H12、BRIC126、MABL−1、MABL−2、CC2C6、及び5F9(Uger R.et al.Cancer Res 2014;74(19 Suppl):Abstract nr 5011、米国特許第9,045,541号明細書、Uno et al.Oncol Rep.17:1189−94,2007;Kikuchi et al.Biochem Biophys Res.Commun.315:912−8,2004;Sikic B.et al.J Clin Oncol 2016;34(suppl;abstract 3019))が含まれる。この機能的効果は、インタクトな二価抗体によるRBCへの結合を必要とし、抗体断片、すなわち、F(ab’)又はsvFvの何れか(Uno et al.Oncol Rep.17:1189−94,2007;Kikuchi et al.Biochem Biophys Res.Commun.315:912−8,2004)又はただ1つのCD47結合アームを有する二重特異性抗体(Masternak et al.Cancer Res 2015; 75(15 Suppl):Abstract nr 2482)を作製することにより低減若しくは排除することができる。細胞殺傷をはじめとするこれらの断片の他の機能的特性は、これらの断片において低下するか、又は保持されるかの何れかであることがわかっている(Uno et al.Oncol Rep.17:1189−94,2007;Kikuchi et al.Biochem Biophys Res.Commun.315:912−8,2004)。マウス抗体2D3は、赤血球上のCD47に結合する抗CD47抗体の一例であるが、血球凝集を引き起こさない(米国特許第9,045,541号明細書、Petrova et al.Cancer Res 2015;75(15 Suppl):Abstract nr 4271)。
【0142】
血球凝集は、SIRPα−Fc融合タンパク質を用いて、他の細胞ではなく、選択的にヒトRBCとの結合を低減することにより、低減/排除されることが立証されている(Uger R. et al.Blood 2013;122(21):3935)。さらに、マウス抗CD47mAb2A1及び2A1のヒト化バージョンは、CD47/SIRPαを阻止することが報告されているが、血球凝集活性を呈示しない(米国特許第9,045,541号明細書)。マウス抗ヒトCD47抗体の集団のうち少数(23のうち3つ)は、ヒトRBCの血球凝集を引き起こさないことが報告された(Pietsch E et al.Cancer Res 2015;75(15 Suppl):Abstract nr 2470)。従って、本明細書に記載される開示以前に、SIRPα/CD47結合を阻止し、RBCに対する検出可能な結合がないか、若しくは低く、且つ/又は血球凝集を引き起こさないCD47mAbを同定する必要があった。用語「凝集」は、細胞の凝集を指すが、用語「血球凝集」は、特定の細胞のサブセット、すなわち、RBCの凝集を指す。このように、血球凝集は、1タイプの凝集である。
【0143】
本明細書で使用されるとき、用語「少ない血球凝集」は、1.85μg/ml超の抗CD47mAb濃度での測定可能なhRBCの凝集活性、及び1.85μg/ml以下の濃度で測定可能な活性がないことを意味する。
【0144】
本明細書で使用されるとき、用語「検出可能な血球凝集がない」は、0.3pg/mL以上で、50μg/mL以下の抗CD47mAb濃度でhRBCの測定可能な凝集活性がないことを指す。
【0145】
本明細書に記載される抗CD47の一部は、ヒトRBCの少ない血球凝集を引き起こすか、又は検出可能な血球凝集を引き起こさない。
【0146】
NO経路のモジュレーション
前述したように、TSP1は、CD47のリガンドでもある。TSP1/CD47経路は、限定されないが、血管細胞をはじめとする多くの細胞型におけるNO経路の有益な作用を妨害する。NO経路は、基質としてアルギニンを用いて生物活性ガスNOを生成する3種の酵素(一酸化窒素シンターゼ、NOSI、NOSII及びNOSIII)の何れかから構成される。NOは、それが生成される細胞内、又は隣接細胞中で作用して、メッセンジャー分子環状GMP(cGMP)を生成する酵素可溶性グアニリルシクラーゼを活性化することができる。NO/cGMP経路の適正な機能状態は、限定されないが、創傷、炎症、高血圧、代謝症候群、虚血、及びIRIから生じるものをはじめとするストレスから心血管系を保護する上で必須である。これらの細胞ストレスに関連して、TSP1/CD47によるNO/cGMP経路の阻害は、ストレスの作用を増悪させる。これは、cGMP及びcAMPの両方が、重要な保護の役割を果たす心血管系においてとりわけ問題である。虚血及び再灌流傷害が、疾患、外傷、及び手術の予後不良をもたらすか、又はそれらに寄与する多くの事例がある。
【0147】
本明細書に開示するように、キメラ又はヒト化抗CD47抗体の1つ若しくは複数は、cGMP生成のTSP1阻害を逆転する。逆転は、完全な(>80%)又は中程度(20%〜80%)となり得る。cGMP生成のTSP1阻害のこの逆転は、抗CD47mAbが、NOシグナル伝達を高める能力を有することを証明するものであり、創傷、炎症、高血圧、代謝症候群、虚血、及び虚血再灌流傷害(IRI)から生じるものをはじめとするがこれらに限定されないストレスから心血管系を保護する上での有用性を示唆するであろう。別のアッセイ系、例えば、平滑筋細胞収縮も、キメラ又はヒト化抗体の一部が、NOシグナル伝達の活性化によって起こる下流作用に対するTSP1の阻害作用を逆転することを示すと予想される。
【0148】
本明細書で開示されるように、「NO経路阻害の完全な逆転」は、負の対照であるヒト化アイソタイプ適合抗体と比較して、抗CD47mAbによるNOシグナル伝達のTSP1阻害の80%超の逆転を指す。
【0149】
本明細書で開示されるように、「NO経路阻害の中程度逆転」は、負の対照であるヒト化アイソタイプ適合抗体と比較して、抗CD47mAbによるNOシグナル伝達のTSP1阻害の20〜80%の逆転を指す。
【0150】
本明細書で開示されるように、「NO経路阻害の逆転なし」は、負の対照であるヒト化アイソタイプ適合抗体と比較して、抗CD47mAbによるNOシグナル伝達のTSP1阻害の20%未満の逆転を指す。
【0151】
機能的特性の好ましい組合せ
抗CD47mAbは、従来の技術では、本明細書に記載される機能的特徴の全部ではなく、一部の組合せと共に存在する。これまでに、AB6.12 IgG1、AB6.12−IgG4P、及びAB6.12−IgG4PE(米国特許第9,045,541号明細書、米国特許出願公開第2014/0161799号明細書、国際公開第2014/093678号パンフレット、米国特許出願公開第2014/0363442号明細書)並びに5F9(Mounho−Zamora B. et al.The Toxicologist,Supplement to Toxicological Sciences,2015;144(1):Abstract 596:127,Liu et al.PLoS One.2015 Sep 21;10(9):e0137345)などのヒト化抗CD47mAbは、ヒトCD47に結合し、CD47とSIRPαの相互作用を阻止して、ヒト腫瘍細胞の食作用を引き起こすことがわかっている。ヒト化CD47mAb AB6.12IgG1、AB6.12−IgG4P、及びAB6.12−IgG4PEもまた、ヒトRBCの血球凝集を引き起こさない(米国特許第9,045,541号明細書)。5F9ヒト化抗CD47mAbは、ヒトRBCに結合して、その血球凝集を引き起こす(Uger R.et al.Cancer Res 2014;74(19 Suppl):Abstract nr 5011,Sikic B.et al.J Clin Oncol 2016;34(suppl;abstract 3019)。マウス抗CD47mAb B6H12、BRIC126、及びCC2C6は、CD47とSIRPαの相互作用を阻止し、食作用を引き起こすと共に、ヒトRBCに結合して、その血球凝集を引き起こす(Petrova P.et al.Cancer Res 2015;75(15 Suppl):Abstract nr 4271,Seiffert et al.Blood 94:3633−3643,1999;Vernon−Wilson et al.Eur J Immunol.30:2130−2137,2000;Latour et al.J.Immunol.167:2547−2554,2001;Subramanian et al.Blood 107:2548−2556,2006;Liu et al.J Biol.Chem.277:10028−10036,2002)。マウス抗CD47mAb MABL−1及びMABL−2は、ヒトCD47に結合し、腫瘍細胞死を誘導して、RBC血球凝集を引き起こし(米国特許第8,101,719号明細書);マウスmAb Ad22は、ヒトCD47に結合して、腫瘍細胞死を誘導し(Pettersen et al.J. Immunol.166:4931−4942,2001;Lamy et al.J Biol Chem.278:23915−23921,2003);マウスmAb 1F7は、ヒトCD47に結合し、CD47とSIRPαの相互作用を阻止して、腫瘍細胞死を誘導する(Rebres et al.J.Cellular Physiol.205:182−193,2005;Manna et al.J.Immunol. 170:3544−3553,2003;Manna et al.Cancer Research,64:1026−1036, 2004)。
【0152】
本明細書に記載される抗CD47抗体の好ましい実施形態は、さらに、ヒトの治療での使用に提案される従来技術の抗CD47抗体により呈示されない特性の組合せも特徴とする。従って、本明細書に記載される好ましい抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大すると共に;
d.感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導すること
を特徴とする。
【0153】
本明細書に記載される別の好ましい実施形態では、抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大し、
d.感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導すると共に;
e.ヒト赤血球(hRBC)の凝集を引き起こさないこと
を特徴とする。
【0154】
本明細書に記載されるさらに別の好ましい実施形態では、抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大し、
d.感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導すると共に;
e.ヒト赤血球(hRBC)の少ない凝集を引き起こすこと
を特徴とする。
【0155】
本明細書に記載される別の好ましい実施形態では、抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に特異的に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大し、
d.感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導すると共に;
e.低いhRBC結合を有すること
を特徴とする。
【0156】
本明細書に記載される別の好ましい実施形態では、抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大し、
d.ヒト赤血球(hRBC)の凝集を引き起こさないと共に;
e.hRBCと結合しないこと
を特徴とする。
【0157】
本明細書に記載される別の好ましい実施形態では、抗CD47抗体は、以下:
a.ヒトCD47に特異的に結合し、
b.ヒトCD47に対するSIRPαの結合を阻止し、
c.ヒト腫瘍細胞の食作用を増大し、
d.ヒト赤血球(hRBC)の凝集を引き起こさないと共に;
e.低いhRBC結合を有すること
を特徴とする。
【0158】
本明細書に記載される別の好ましい実施形態では、モノクローナル抗体、又はその抗原結合断片は、非ヒト霊長類CD47にも特異的に結合し、ここで、非ヒト霊長類としては、限定されないが、カニクイザル、ミドリザル、アカゲザル及びリスザルが挙げられる。
【0159】
本明細書に記載されるさらに別の好ましい実施形態では、モノクローナル抗体、又はその抗原結合断片は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、及びラットCD47に結合する。
【0160】
本明細書には、異なる機能プロフィールを有する抗CD47抗体が記載される。これらの抗体は、以下から選択される特性の異なる組合せを有する:1)1種若しくは複数種のCD47のホモログと交差反応性を示す;2)CD47とそのリガンドSIRPα同士の相互作用を阻止する;3)ヒト腫瘍細胞の食作用を増大する、4)感受性ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導する;5)ヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導しない;6)ヒト赤血球(hRBC)に対し低い結合を有する;7)hRBCとの検出可能な結合がない;8)hRBCの少ない凝集を引き起こす;9)hRBCの検出可能な凝集を引き起こさない;10)一酸化窒素(NO)経路のTSP1阻害を逆転する;及び/又は11)NO経路のTSP1阻害を逆転しない。
【0161】
CD47抗体
多くのヒトの癌は、CD47の細胞表面発現を上方調節するため、最も高いレベルのCD47を発現する癌が、最も攻撃的で、患者の致死率が最も高いと思われる。増大したCD47発現は、CD47担持細胞の食作用を妨げる阻害受容体であるSIRPαを介してマクロファージに「don’t eat me」シグナルを送ることにより、食作用によるクリアランスから癌細胞を保護すると考えられる(Oldenborg et al. Science 288:2051−2054,2000;Jaiswal et al.(2009)Cell 138(2):271−85l;Chao et al.(2010)Science Translational Medicine 2(63):63ra94)。従って、多くの癌によるCD47発現の増大は、癌に「利己主義」の口実を与え、これが、マクロファージ及び樹状細胞による食作用によるそれらのクリアランスを遅らせる。
【0162】
CD47を阻止し、SIRPαへの結合を妨げる抗体は、マウス(異種移植片)腫瘍モデル中のヒト腫瘍において効果を示している。この特性を呈示する抗CD47mAbをこのように阻止すると、マクロファージによる癌細胞の食作用が増大し、これによって、腫瘍負荷を減じることができ(Majeti et al.(2009)Cell 138(2):286−99;米国特許第9,045,541号明細書;Willingham et al.(2012)Proc Natl Acad.Sci.USA 109(17):6662−6667;Xiao et al.(2015)Cancer Letters 360:302−309;Chao et al.(2012)Cell 142:699−713;Kim et al.(2012)Leukemia 26:2538−2545)、最終的に、腫瘍に対する適応免疫応答の発生をもたらし得る(Tseng et al.(2013)PNAS 110 (27):11103−11108;Soto−Pantoja et al.(2014)Cancer Res.74 (23):6771−6783;Liu et al.(2015)Nat. Med.21 (10):1209−1215)。
【0163】
しかしながら、抗CD47mAbが形質転換細胞を攻撃することができる機構があり、それらは、癌の治療にまだ利用されていない。多くのグループが、特定の抗ヒトCD47mAbがヒト腫瘍細胞の細胞死を誘導することを明らかにしている。抗CD47mAb Ad22は、複数のヒト腫瘍細胞株の細胞死を誘導する(Pettersen et al.J.Immuno.166:4931−4942,2001;Lamy et al.J.Biol.Chem.278:23915−23921,2003)。AD22は、早期のホスファチジルセリン曝露及びミトコンドリア膜電位の降下によって、急速なミトコンドリア不全及び急速な細胞死を誘導することがわかっている(Lamy et al.J.Biol.Chem.278:23915−23921,2003)。抗CD47mAb MABL−2及びその断片は、インビトロで、ヒト白血病細胞株の細胞死を誘導するが、正常細胞の細胞死は誘導せず、インビボ異種移植片モデルでは、抗腫瘍効果を有した(Uno et al. (2007)Oncol.Rep.17 (5):1189−94)。抗ヒトCD47mAb 1F7は、ヒトT細胞白血病(Manna and Frazier(2003)J.Immunol.170:3544−53)及び複数の乳癌(Manna and Frazier(2004)Cancer Research 64(3):1026−36)の細胞死を誘導する。1F7は、補体の作用、又はNK細胞、T細胞、若しくはマクロファージによる細胞媒介性殺傷なしで、CD47担持腫瘍細胞を殺傷する。その代わり、抗CD47mAb 1F7は、ミトコンドリアへの直接のCD47依存的攻撃を伴う非アポトーシス機構を介して作用し、その膜電位を放出させ、細胞のATP生成能力を破壊することにより、急速な細胞死を引き起こす。抗CD47mAb 1F7が、やはりCD47を発現する静止白血球を殺傷せず、形質転換により「活性化」される細胞だけを殺傷することは注目に値する。このように、正常な循環細胞(その多くが、CD47を発現する)は、殺傷を免れるが、癌細胞は、腫瘍傷害性CD47mAbにより選択的に殺傷される(Manna and Frazier(2003)J.Immunol.170:3544−53)。この機構は、単にCD47/SIRPα結合を阻止することによって食作用を起こす受動的機構とは対照的に、腫瘍細胞に対する率先した、選択的且つ直接的攻撃として考えることができる。重要なことには、mAb 1F7は、SIRPαとCD47の結合も阻止する(Rebres et al et al.J.Cellular Physiol.205:182−193,2005)ことから、2つの機構:(1)直接の腫瘍毒性、及び(2)癌細胞の食作用の発生によって作用することができる。両方の機能を達成することができる単一mAbは、CD47/SIRPα結合だけを阻止するものより優れていると考えられる。
【0164】
組織虚血期間の後、血流の開始は、「虚血再灌流傷害」若しくは「IRI」と呼ばれる損傷を引き起こす。IRIは、一定の時間にわたり血流を停止する必要があったためにIRIが起こる様々な外科的処置において、治療介入により血流が止められ、後に回復される外傷の様々な形態/原因において、並びに臓器移植、心臓/肺バイパス手術、切断身体部分の再付着、再建及び美容手術、並びに血流の停止及び再開を伴う他の状況などに必要な処置において、予後不良に寄与する。虚血自体は、様々な生理学的変化を引き起こし、それ自体で、最終的には細胞及び組織壊死、ひいては死を招く。再灌流は、活性酸素種の発生、血栓症、炎症及びサイトカイン媒介性損傷をはじめとする、それ自体の一連の損傷事象を引き起こす。TSP1−CD47系により制限される経路は、NO経路をはじめとする、IRIの損傷に取り組む上でまさに最も有益なものである。このように、本明細書に開示される抗体を用いるなどしてTSP1−CD47経路を阻止すれば、これらの内在性保護経路のより頑健な機能状態がもたらされるであろう。抗CD47mAbは、腎温虚血(Rogers et al.J Am Soc Nephrol.23:1538−1550,2012)、肝虚血再灌流傷害(Isenberg et al.Surgery.144:752−761,2008)、腎移植(Lin et al.Transplantation.98:394−401,2014;Rogers et al.Kidney Interantional.90:334−347,2016))及び脂肪肝をはじめとする肝移植(Xiao et al.Liver Transpl.21:468−477,2015;Xiao et al.Transplantation.100:1480−1489,2016)のげっ歯類モデルにおいて臓器損傷を軽減することが立証されている。さらに、抗CD47mAbは、肺動脈高血圧のモノクロタリンモデルにおいて、右心室収縮期圧及び右心室肥大の有意な軽減をもたらした(Bauer et al.Cardiovasc Res.93:682−693,2012)。皮膚弁モデルの研究は、抗CD47mAbを用いるなどしたCD47のモジュレーションが、TSP1媒介性CD47シグナル伝達を阻害することを証明した。これによって、NO経路の活性が増大し、IRIの軽減をもたらした(Maxhimer et al.Plast Reconstr Surg.124:1880−1889,2009;Isenberg et al.Arterioscler Throm Vasc Biol.27:2582−2588,2007;Isenberg et al. Curr Drug Targets.9:833−841,2008;Isenberg et al.Ann Surg.247:180−190,2008)
【0165】
また、抗CD47mAbは、他の心血管疾患のモデルにおいて効果的であることもわかっている。圧負荷左心室心不全のマウス大動脈縮窄モデルにおいて、抗CD47mAbは、心筋肥大を軽減し、左心室線維症を低減し、左心室重量の増加を予防し、心室硬度を低下させると共に、圧容積ループプロフィールの変化を正常化した(Sharifi−Sanjani et al.J Am Heart Assoc.,2014)。抗CD47mAbは、複数のマウスモデルにおいて動脈硬化を改善した(Kojima et al.Nature.,2016)。
【0166】
癌適用
限定されないが、下記を含む感受性血液癌及び固形腫瘍を有する患者に好ましくは非経口的に投与することができる癌治療薬として有効な抗CD47mAb及びその抗原結合断片が本明細書に開示される:全身性肥満細胞症、急性リンパ性(リンパ芽球性)白血病(ALL)、T細胞ALL、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患/腫瘍、単球性白血病、及びプラズマ細胞白血病をはじめとする白血病;多発性骨髄腫(MM);ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症(Waldenstrom’s Macroglobulinemia);ホジキンリンパ腫、並びに例えば、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、細胞リンパ腫(FCC)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞リンパ腫(DLCL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大病変(bulky diseases)NHLなどの非ホジキンリンパ腫をはじめとする、組織球性リンパ腫及びT細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫を含むリンパ腫;卵巣癌、乳癌、子宮内膜癌、結腸癌(大腸癌)、直腸癌、膀胱癌、尿路上皮癌、肺癌(非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌)、気管支癌、骨癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、肝細胞癌(肝臓癌、肝癌)、胆嚢癌、胆管癌、食道癌、腎細胞癌、甲状腺癌、頭部及び頚部の扁平上皮癌(頭部及び頚部癌)、精巣癌、内分泌腺癌、副腎腺癌、脳下垂体癌、皮膚癌、軟組織の癌、血管の癌、脳腫瘍、神経癌、眼の癌、髄膜癌、中咽頭癌、下咽頭癌、子宮頸癌、及び子宮癌、膠芽腫、髄芽腫、星細胞腫、神経膠腫、髄膜腫、ガストリノーマ、神経芽細胞腫、骨髄異形成症候群などの固形腫瘍、並びに限定されないが、骨肉腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫、胞巣状軟部肉腫、血管肉腫、脂肪肉腫、繊維肉腫、横紋筋肉腫、及び軟骨肉腫などの肉腫;並びに黒色腫。
【0167】
癌の治療
当業者には公知のように、単剤療法又は処置が、疾患若しくは病状を治療する、又は治癒させる上で十分でない場合もあることから、癌治療には往々にして併用療法が使用される。従来の癌治療は、多くの場合、相加若しくは相乗効果を達成するための手術、放射線治療、細胞傷害性薬物の組合せの投与、並びにこれらのアプローチの何れか若しくは全部の組合せを含む。特に有用な化学療法及び生物学的療法の併用では、様々な作用機構を介して機能する薬物を使用して、癌細胞の制御若しくは殺傷を増大し、癌細胞の成長を制御する免疫系の能力を増大し、療法中の薬物耐性の可能性を低減すると共に、個々の薬物の低用量の使用を可能にすることによって、考えられる毒性の重複を最小限にする。
【0168】
本開示の方法に包含される併用療法に有用な従来の抗腫瘍/抗悪性腫瘍薬のクラスは、例えば、以下:Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Twelfth Edition(2010)L.L.Brunton,B.A.Chabner,and B.C.Knollmann Eds.,Section VIII,“Chemotherapy of Neoplastic Diseases”,Chapters 60−63,pp.1665−1770,McGraw−Hill,NYに開示されており、例えば、アルキル化剤、抗代謝薬、天然産物、様々な薬剤、ホルモン及びアンタゴニスト、標的薬、モノクローナル抗体並びに他のタンパク質治療薬が挙げられる。
【0169】
上記に加えて、本開示の方法は、癌適用の治療に関し、手術、放射線により、及び/又は限定されないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸治療薬をはじめとする、腫瘍状態を治療するために通常使用されているか、若しくは現在開発中の化学小分子又は生物学的製剤を有効量で、そうした治療が必要な患者に投与することによって、患者を治療することをさらに含む。これは、本明細書に開示されるもの以外に、抗体及び抗原結合断片、サイトカイン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA及びmiRNAが挙げられる。
【0170】
本明細書に開示され、請求される治療法は、本明細書に開示される抗体を単独で、及び/又は互いに組み合わせて、及び/又はCD47に結合する本開示のその抗原結合断片と一緒に、及び/又は適切な生物/治療活性を呈示する競合抗体と一緒に使用すること、並びに例えば最大の治療効果を達成するためのこれらの抗体化合物のあらゆる組合せの使用を含む。
【0171】
さらに、本開示の治療方法は、これらの抗体、その抗原結合断片、競合抗体及びそれらの組合せと、具体的な適用について所望の治療効果を達成するために適切に組み合わせた(1)手術、放射線、抗腫瘍薬、抗悪性腫瘍薬、及びこれらの何れかの組合せから選択される何れか1種若しくは複数種の抗腫瘍薬治療、又は(2)何れか1種若しくは複数種の抗腫瘍生物剤、又は(3)当業者には明らかな(1)若しくは(2)の何れかの同等物との併用も包含する。
【0172】
腫瘍抗原に対するT細胞応答に影響を与える共刺激若しくは阻害相互作用をモジュレートすることによって癌への免疫応答を増大する抗体及び小分子薬物(免疫チェックポイントの阻害剤及び共刺激分子のモジュレータなど)もまた、本開示に包含される併用療法に関して特に有利であり、このようなものとして、限定されないが、他の抗CD47抗体がある。CD47タンパク質に結合する治療薬、例えば、CD47に結合して、CD47及びSIRPα同士の相互作用を防止する抗体又は小分子の投与を患者に投与すると、食作用による癌細胞のクリアランスが起こる。CD47タンパク質に結合する治療薬は、以下:CD70(クラスター分類70)、CD200(OX−2膜糖タンパク質、クラスター分類200)、CD154(クラスター分類154、CD40L、CD40リガンド、クラスター分類40リガンド)、CD223(リンパ球活性化遺伝子3、LAG3、クラスター分類223)、KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)、GITR(TNFRSF18、グルココルチコイド誘導TNFR関連タンパク質、活性化誘導性TNFRファミリー受容体、AITR、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18)、CD28(クラスター分類28)、CD40(クラスター分類40、Bp50、CDW40、TNFRSF5、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5、p50)、CD86(B7−2、クラスター分類86)、CD160(クラスター分類160、BY55、NK1、NK28)、CD258(LIGHT、クラスター分類258、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、TNFSF14、HVEML、HVEMリガンド、ヘルペスウイルスエントリーメディエータリガンド、LTg)、CD270(HVEM、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14、ヘルペスウイルスエントリーメディエータ、クラスター分類270、LIGHTR、HVEA)、CD275(ICOSL、ICOSリガンド、誘導性T細胞共刺激リガンド、クラスター分類275)、CD276(B7−H3、B7ホモログ3、クラスター分類276)、OX40L(OX40リガンド)、B7−H4(B7ホモログ4、VTCN1、Vセットドメイン含有T細胞活性化阻害剤1)、GITRL(グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体−リガンド、グルココルチコイド誘導TNFRリガンド)、4−1BBL(4−1BBリガンド)、CD3(クラスター分類3、T3D)、CD25(IL2Rα、クラスター分類25、インターロイキン−2受容体α鎖、IL−2受容体α鎖)、CD48(クラスター分類48、Bリンパ球活性化マーカ、BLAST−1、シグナル伝達リンパ球活性化分子2、SLAMF2)、CD66a(Ceacam−1、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1、胆汁糖タンパク質、BGP、BGP1、BGPI、クラスター分類66a)、CD80(B7−1、クラスター分類80)、CD94(クラスター分類94)、NKG2A(ナチュラルキラー群2A、キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーDメンバー1、KLRD1)、CD96(クラスター分類96、TActILE、T細胞活性化増大後期発現)、CD112(PVRL2、ネクチン、ポリオウイルス受容体関連2、ヘルペスウイルスエントリーメディエータB、HVEB、ネクチン−2、クラスター分類112)、CD115(CSF1R、コロニー刺激因子1受容体、マクロファージコロニー刺激因子受容体、M−CSFR、クラスター分類115)、CD205(DEC−205、LY75、リンパ球抗原75、クラスター分類205)、CD226(DNAM1、クラスター分類226、DNAX補助分子−1、PTA1、血小板及びT細胞活性化抗原1)、CD244(クラスター分類244、ナチュラルキラー細胞受容体2B4)、CD262(DR5、TrailR2、TRAIL−R2、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b、TNFRSF10B、クラスター分類262、KILLER、TRICK2、TRICKB、ZTNFR9、TRICK2A、TRICK2B)、CD284(トール様受容体−4、TLR4、クラスター分類284)、CD288(トール様受容体−8、TLR8、クラスター分類288)、TNFSF15(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー15、血管内皮細胞増殖因子、VEGI、TL1A)、TDO2(トリプトファン2,3−ジオキシゲナーゼ、TPH2、TRPO)、IGF−1R(1型インスリン様増殖因子)、GD2(ジシアロガングリオシド2)、TMIGD2(貫膜及び免疫グロブリンドメイン含有タンパク質2)、RGMB(RGMドメインファミリー、メンバーB)、VISTA(T細胞活性化のV−ドメイン免疫グロブリン含有抑制物質、B7−H5、B7ホモログ5)、BTNL2(ブチロフィリン様タンパク質2)、Btn(ブチロフィリンファミリー)、TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体、Vstm3、WUCAM)、シグレック(Siglec)(シアル酸結合Ig様レクチン)、ニューロフィリン(Neurophilin)、VEGFR(血管内皮細胞増殖因子受容体)、ILTファミリー(LIR、免疫グロブリン様転写物ファミリー、白血球免疫グロブリン様受容体)、NKGファミリー(ナチュラルキラー群ファミリー、C型レクチン貫膜受容体)、MICA(MHCクラスIポリペプチド関連配列A)、TGFβ(トランスフォーミング増殖因子β)、STING経路(インターフェロン遺伝子経路の刺激因子)、アルギナーゼ(Arginase)(アルギニンアミジナーゼ、カナバナーゼ、L−アルギナーゼ、アルギニントランスアミジナーゼ)、EGFRvIII(上皮成長因子受容体変異体III)、及びHHLA2(B7−H7、B7y、HERV−H LTR結合タンパク質2、B7ホモログ7)のうち1つ又は複数の別の細胞標的に対する本明細書に開示の抗体、化学小分子若しくは生物学的製剤などの治療薬と併用され、また、以下:PD−1(プログラム細胞死タンパク質1、PD−1、CD279、クラスター分類279)、PD−L1(B7−H1、B7ホモログ1、プログラム細胞死リガンド1、CD274、クラスター分類274)、PD−L2(B7−DC、プログラム細胞死1リガンド2、PDCD1LG2、CD273、クラスター分類273)、CTLA−4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4、CD152、クラスター分類152)、BTLA(B及びTリンパ球アテニュエータ、CD272、クラスター分類272)、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO、IDO1)、TIM3(HAVCR2、A型肝炎ウイルス細胞受容体2、T細胞免疫グロブリンムチン−3、KIM−3、肝障害分子3、TIMD−3、T細胞免疫グロブリンムチン−ドメイン3)、A2Aアデノシン受容体(ADO受容体)、CD39(細胞外ヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1、クラスター分類39、ENTPD1)、並びにCD73(細胞外5’−ヌクレオチダーゼ、5’−ヌクレオチダーゼ、5’−NT、クラスター分類73)、CD27(クラスター分類27)、ICOS(CD278、クラスター分類278、誘導性T細胞共刺激因子)、CD137(4−1BB、クラスター分類137、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9、TNFRSF9)、OX40(CD134、クラスター分類134)、並びにTNFSF25(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー25)の阻害剤も、抗体、小分子、及びアゴニストを含め、本発明で特に考慮される。さらに別の薬剤として、IL−10(インターロイキン−10、ヒトサイトカイン合成阻害因子、CSIF)及びガレクチンがある。
【0173】
YERVOY(登録商標)(イピリムマブ;Bristol−Meyers Squibb)は、承認された抗CTLA−4抗体の一例である。
【0174】
KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ;Merck)及びOPDIVO(登録商標)(ニボルマブ;Bristol−Meyers Squibb Company)は、承認された抗PD−1抗体の一例である。
【0175】
TECENTRIQ(商標)(アテゾリズマブ;Roche)は、承認された抗PD−L1抗体の一例である。
【0176】
虚血再灌流傷害(IRI)関連、自己免疫、自己炎症性、炎症性、心血管状態及び疾患
本明細書に開示されるCD47mAb又はその抗原結合断片の投与を用いて、IRIが寄与する特徴であるいくつかの疾患及び病状を治療し、様々な自己免疫、自己炎症性、炎症性及び心血管疾患を治療することができる。これらには、以下のものが含まれる:臓器摘出前に本発明のmAb若しくはその抗原結合断片がドナー、臓器保存液中の摘出ドナー臓器、レシピエント患者、又はそれらの任意の組合せに投与される臓器移植;皮膚移植;mAb若しくは断片が、患部組織に注射により局所的に、又は患者に非経口的に投与される、外科的切除又は組織再建;身体部分の再付着;外傷の治療;肺高血圧;肺動脈高血圧;鎌状赤血球症(発症);心筋梗塞;脳血管疾患;卒中;手術により誘導された虚血;急性腎臓疾患/腎不全;IRIが発生し、疾患の病因に寄与する他の状態;関節炎、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、乾癬性関節炎、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、狼瘡、全身性エリテマトーデス、若年性関節リウマチ、若年性突発性関節炎、グレーブス病、橋本病、アジソン病、セリアック病、皮膚筋炎、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、シェーグレン症候群、I型糖尿病、脈管炎、ブドウ膜炎及び強直性脊椎炎などの自己免疫及び炎症性疾患;家族性地中海熱、新生児発症多臓器性炎症性疾患、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性発熱症候群、インターロイキン1受容体アンタゴニストの欠損、ベーチェット病などの自己免疫疾患;冠状動脈性心疾患、冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、心不全、及び左心室心不全などの心血管疾患。
【0177】
本発明の抗CD47mAb及びその抗原結合断片はまた、治療を必要とする被験者における組織灌流を増大するために使用することもできる。こうした被験者は、増大した組織灌流の必要性を示す診断方法によって特定することができる。さらに、組織灌流の必要性は、皮膚手術、軟組織手術、複合組織手術、皮膚移植手術、固形臓器の切除、臓器移植手術、又は再付着又は付属器若しくは他の身体部分から選択される手術を被験者が受けた、受けている、受ける予定がある理由によっても生じ得る。
【0178】
虚血再灌流傷害(IRI)関連適用治療
本開示の方法、例えば、IRI関連適用の治療に関する方法は、CD47タンパク質に結合する有効量の治療薬と一酸化窒素供与体、前駆体、若しくはその両方;一酸化窒素生成局所薬;可溶性グアニリルシクラーゼを活性化する薬剤;環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼを阻害する薬剤;又は上記の何れかの任意の組合せを、治療が必要な患者に投与することをさらに含んでもよい。
【0179】
これらの方法では、一酸化窒素供与体又は前駆体は、NOガス、二硝酸イソソルビド、亜硝酸塩、ニトロプルシド、ニトログリセリン、3−モルホリノシドノニミン(SIN−1)、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)、ジエチレントリアミン/NO(DETA/NO)、S−ニトロソチオール、Bidil(登録商標)、及びアルギニンから選択することができる。
【0180】
可溶性グアニリルシクラーゼを活性化する薬剤は、血管細胞中のcGMPレベルを高める非NO(一酸化窒素)ベースの可溶性グアニリルシクラーゼ化学活性化物質であってよい。このような薬剤は、NO結合モチーフ以外の領域内の可溶性グアニリルシクラーゼと結合して、局所NO又は活性酸素ストレス(ROS)とは関係なく酵素を活性化する。可溶性グアニリルシクラーゼの化学活性化物質の非限定的例としては、有機硝酸塩(Artz et al.(2002)J.Biol.Chem.277:18253−18256);プロトポルフィリンIX(Ignarro et al.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:2870−2873);YC−1(Ko et al.(1994)Blood 84:4226−4233);BAY 41−2272及びBAY 41−8543(Stasch et al.(2001 Nature 410(6825):212−5)、CMF−1571、及びA−350619(Evgenov et al.(2006)Nat.Rev.Drug.Discov.5:755−768に論評);BAY 58−2667(Cinaciguat;Frey et al.(2008)Journal of Clinical Pharmacology 48(12):1400–10);BAY 63−2521(Riociguat;Mittendorf et al.(2009)Chemmedchem 4(5):853–65)が挙げられる。さらに別の可溶性グアニリルシクラーゼ活性化物質は、Stasch et al.(2011)Circulation 123:2263−2273;Derbyshire and Marletta(2012)Ann.Rev.Biochem.81:533−559、及びNossaman et al.(2012)Critical Care Research and Practice,Volume 2012,Article ID290805,pages 1−12に開示されている。
【0181】
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼを阻害する薬剤は、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル、シルデナフィル及びアバナフィルから選択することができる。
【0182】
自己免疫、自己炎症性、炎症性疾患及び心血管疾患の治療
自己免疫、自己炎症性、炎症性疾患及び/又は心血管疾患の治療のためのCD47タンパク質に結合する治療薬は、抗体、化学小分子などの1種又は複数種の治療薬、又は生物学的若しくは医療若しくは外科的処置と組み合わせることができ、そうしたものとして、限定されないが、下記のものが挙げられる。自己免疫、自己炎症性及び炎症性疾患の治療の場合、併用療法薬は、以下の通りである:ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、ミノシクリン、スルファサラジン、アバタセプト、リツキシマブ、トシリズマブ、抗TNF阻害剤若しくは遮断薬(アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ)、非ステロイド性抗炎症薬、グルココルチコイド、コルチコステロイド、静注用免疫グロブリン、アナキンラ、カナキヌマブ、リロナセプト、シクロホスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、ベリムマブ、βインターフェロン、グラチラマー酢酸塩、フマル酸ジメチル、フィンゴリモド、テリフルノミド、ナタリズマブ、5−アミノサリチル酸、メサラミン、シクロスポリン、タクロリムス、ピメクロリムス、ベドリズマブ、ウステキヌマブ、セクキヌマブ、イキセキズマブ、アプレミラスト、ブデソニド及びトファシチニブ。アテローム性動脈硬化症の治療の場合には、併用療法薬又は処置は、次の通りである:経皮的冠動脈インターベンション(冠動脈形成術及びステント挿入)、冠動脈バイパス移植術、及び頸動脈血管内膜切除術をはじめとする医療処置及び/又は手術;アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(ラミプリル、キナプリル、カプロプリル、及びエナラプリルなど)、カルシウムチャネル遮断薬(アミオジピン、ニフェジピン、ベラパミル、フェロジピン及びジルチアゼムなど)、アンギオテンシン受容体遮断薬(エポサルタン、オルメサルテン、アジルサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、ロサルタン、カンデサルタン、及びイルベサルタンなど)、エゼチミブとシムバスタチンの組合せ、PCSK9阻害剤(アリロクマブ及びエボロクマブなど)、アナセトラピブ、及びHMG−CoA阻害剤(アトルバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、ロバスタチン及びフルバスタチンなど)をはじめとする、治療薬。心不全の治療の場合、併用療法薬は次の通りである:ACE阻害剤、アンギオテンシン受容体阻害剤、アンギオテンシン受容体ネプリルシン阻害剤(サクビトリルとバルサルタンの組合せなど)、利尿薬、ジゴキシン、循環作動薬、β遮断薬及びアルドステロンアンタゴニスト。肺高血圧の治療の場合には、併用療法薬は次の通りである:シルデナフィル、タダラフィル、アンブリセンタン、ボセンタン、マシテンタン、リオシグアト、トレプロスチニル、エポプロステノール、イロプロスト、及びセレキシパグ。
【0183】
本明細書に開示される通り、抗CD47mAbは、併用療法薬又は医療若しくは外科的処置の前、それと同時、又はその後に投与する。
【0184】
本発明で考慮される併用療法のための別の有用なクラスの化合物としては、SIRPαとCD47の結合を阻害、若しくは妨害する、SIRPαに対する抗体などのSIRPα/CD47結合のモジュレータ、並びにこのリガンドの可溶性タンパク質断片、又はCD47自体が挙げられる。本発明に包含される治療方法が、本明細書に開示される抗体単独での使用、互いに組み合わせた使用、及び/又はその抗体結合断片と組み合わせた使用、例えば、これらの抗体化合物の考えられるあらゆる組合せを含むことに留意すべきである。
【0185】
これらの事例は、本開示の様々な実施形態を示すが、これらの具体的に開示される実施形態のみに本開示を限定するものとみなすべきではない。
【0186】
CD47発現の診断薬
診断薬(補完的及びコンパニオンを含む)は、腫瘍学の分野における重点分野であった。Herceptin(Genentech)、Tarceva(OSI Pharmaceuticals/Genentech)、Iressa(Astra Zeneca)、及び(Erbitux Imclone/Bristol Myers Squibb)などの標的治療薬のために、多数の診断アッセイが開発されている。本開示の抗CD47mAb抗体は、診断薬用途での使用に特に適している。従って、本開示は、本開示の抗CD47mAbを用いた腫瘍及び/又は免疫細胞におけるCD47発現を測定する方法を提供する。
【0187】
本開示の抗CD47mAbは、患者の腫瘍サンプル中に存在する腫瘍及び/又は免疫細胞中のCD47発現を測定するための診断アッセイ及び/又はインビトロ方法で使用してもよい。特に、本開示の抗CD47mAbは、基準レベルと比較して、患者のサンプル中に存在する腫瘍及び/又は免疫細胞の約1%以上のCD47に結合し得る。別の実施形態では、抗CD47mAbは、例えば、基準レベルと比較して、患者のサンプル中に存在する腫瘍及び/又は免疫細胞の約5%以上のCD47を結合し得るか、あるいは、基準レベルと比較して、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は10〜100%に結合する。また別の実施形態では、抗CD47mAbは、患者のサンプル中に存在する腫瘍及び/又は免疫細胞のCD47に、基準レベルと比較して少なくとも約2倍まで、あるいは基準レベルと比較して、少なくとも約3倍、又は少なくとも約4倍、又は少なくとも約5倍又は少なくとも約10倍増加まで、又は2倍〜10倍以上結合し得る。本明細書に記載されるように、患者のサンプル中のCD47発現の測定は、候補薬療法の開発及び使用、特にCD47受容体が特定の役割を果たす固形及び血液癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、心不全を治療するための抗CD47抗体の使用に関する意思決定を可能にする生物学的及び/又は臨床的情報を提供する。
【0188】
一実施形態では、インビトロ方法は、患者のサンプルを取得するステップ、配列番号65の配列内のエピトープと特異的に結合するモノクローナル抗体、又はその抗原結合断片を患者のサンプルと接触させるステップ、及び患者のサンプルに対する抗体の結合についてアッセイするステップを含み、ここで、患者のサンプルに対する抗体の結合が、患者のサンプル中のCD47発現を示している。
【0189】
別の実施形態では、インビトロ方法のための好ましいCD47抗体、又はその抗原結合断片は、以下の組合せから挙げられる重鎖(HC)及び軽鎖(LC)の組合せ:
(i)配列番号102のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号101のアミノ酸配列を含む軽鎖;
(ii)配列番号104のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号103のアミノ酸配列を含む軽鎖;
を含むものであり、ここで、V
Hアミノ酸配列は、それと少なくとも90%、95%、97%、98%若しくは99%同一であり、V
Lアミノ酸配列は、それと少なくとも90%、95%、97%、98%若しくは99%同一である。
【0190】
従って、本開示の診断アッセイは、患者のサンプル中の腫瘍及び/又は免疫細胞を抗CD47mAb、又はその抗原結合断片と接触させるステップ、並びに患者の腫瘍サンプルに対する抗CD47mAbの結合をアッセイするステップを含んでもよく、ここで、患者の腫瘍サンプルに対する抗CD47mAbの結合が、CD47発現を示している。好ましくは、患者のサンプルは、腫瘍細胞を含むサンプルである。この場合、腫瘍細胞に対する本開示の抗CD47mAb、又はその抗原結合断片の結合をCD47発現について評価することができる。患者の腫瘍サンプルの腫瘍細胞及び/又は免疫細胞によるCD47発現のレベルから、患者の臨床転帰を予測し得る。
【0191】
患者のサンプル中の細胞に対する抗CD47mAbの結合増加は、CD47発現の増大と関連している。一実施形態では、本開示の抗CD47mAbは、患者のサンプル中の腫瘍細胞の約5%以上に結合し得るが、これは、患者が、固形及び血液癌に対する迅速な介入から利益を受け得ることを示すと考えられる。この種の診断アッセイは、本開示の抗CD47mAbとの比較的高い結合、すなわち、CD47発現の増大を有する固形及び血液癌のために好適な治療レジメンを決定するために使用してもよい。
【0192】
本明細書に開示される診断アッセイは、多数の利点を有することが理解されよう。これらの利点の最も重要なものは、本開示の診断アッセイが、腫瘍及び/又は免疫細胞中のCD47発現のより大きな信頼度をユーザに賦与し得ることである。本開示の診断アッセイの感度が向上したことにより、これまでよりも低いレベルで患者のサンプル中のCD47の検出が可能となる。
【0193】
本開示の抗CD47mAbは、様々な形態の癌に関する診断アッセイとして使用することができる。CD47発現について有利に調べることができる具体的な形態の癌としては、限定されないが、白血病、リンパ腫、及び固形腫瘍をはじめとする、感受性血液癌及び固形腫瘍が挙げられる。
【0194】
本開示の診断アッセイでは、CD47発現を測定するために、抗CD47mAbの結合を検出する任意の好適な手段を使用してもよい。好適な方法は、本開示の抗CD47mAbを標識するために使用される任意のリポータ部分の性質に基づいて選択してもよい。好適な技術としては、何ら限定されないが、フローサイトメトリー、及び酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)並びにナノ粒子を使用するアッセイが挙げられる。本発明の診断アッセイは、腫瘍サンプルを本開示の抗CD47mAbに曝露した後、免疫組織化学によって細胞標識のレベルを評価する免疫組織化学を含むものであるのが特に好ましい。
【実施例】
【0195】
実施例1
アミノ酸配列
軽鎖CDR
【0196】
重鎖CDR
【0197】
マウス軽鎖可変ドメイン
【0198】
マウス重鎖可変ドメイン
【0199】
ヒト軽鎖可変ドメイン
【0200】
ヒト重鎖可変ドメイン
【0201】
ヒトIgG−Fc
【0202】
ウサギIgG−Fc
【0203】
キメラ及びヒト軽鎖
【0204】
キメラ及びヒト重鎖
【0205】
実施例2
CD47抗体の生成
本明細書に開示されるキメラ抗体は、ヒトκ又はヒトFcIgG1、IgG1−N297Q、IgG2、IgG4、IgG4 S228P、及びIgG4 PE定常ドメインとそれぞれ組み合わせた、マウス重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。これらは、分泌シグナルを組み込むように設計し、哺乳類発現系にクローニングした後、キメラ(マウス−ヒト)抗体を産生するようにCHO細胞にトランスフェクトした。キメラ変異体は、完全長IgG分子として発現させ、培地に分泌させた後、プロテインAを用いて精製した。
【0206】
このように、本明細書に開示されるヒト化抗体は、ヒトゲノムに由来するフレームワークを含む。この集団は、ヒト生殖細胞系配列に見出される多様性を含み、インビボで機能的に発現される抗体を産生する。マウス及びキメラ(マウス−ヒト)の軽鎖及び重鎖可変領域における相補性決定領域(CDR)が本明細書に記載されており、これらは、“Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains”,In:Antibody Engineering Lab Manual,eds.S.Duebel and R.Kontermann,Springer−Verlag,Heidelberg(2001))に開示されている一般に認められた法則により決定した。次に、ヒト軽鎖可変ドメインを設計した。続いて、ヒト化可変ドメインを分泌シグナル並びにヒトκ及びヒトFcIgG1、IgG1−N297Q、IgG2、IgG3、IgG4 S228P及びIgG4 PE定常ドメインと組み合わせて、哺乳類発現系にクローニングした後、ヒト化mAbを産生するようにCHO細胞にトランスフェクトした。ヒト化変異体は、完全長IgG分子として発現させ、培地に分泌させた後、プロテインAを用いて精製した。
【0207】
アスパラギンをグルタミンに変更する重鎖297位の部位指定突然変異誘発によって、非グリコシル化バージョン(IgG1−N297Q)を作出した(ヒトFcIgG1−N297Q、配列番号54)。セリンをプロリンに変更し、これによりインビボFabアーム交換を防止するように、228位での部位指定突然変異誘発によって、IgG4変異体を作出した。Fabアーム交換を妨げると共に、Fcエフェクター機能をさらに低減するように、228位(セリンからプロリン)及び235位(ロイシンからグルタミン)での部位指定突然変異誘発によってIgG4二重突然変異体を作出した。ヒトIgG2、IgG3、IgG4 S228P、及びIgG4PE定常ドメインと同じフレーム内で重鎖可変ドメインをクローニングすることによって、IgG2、IgG3、IgG4 S228P、及びIgG4PEアイソタイプを構築した(ヒトFc−IgG2、配列番号55;ヒトFc−IgG3、配列番号56;ヒトFc−IgG4 S228P、配列番号58;ヒトFc−IgG4PE、配列番号59)。
【0208】
実施例3
CD47モノクローナル抗体(mAb)の結合
本開示のキメラ(マウス−ヒト)及びヒト化抗体の結合は、ヒトCD47でトランスフェクトしたOV10細胞(OV10hCD47)又は新しく単離したヒト赤血球(hRBC)(その表面にCD47を展示する)を用いたELISAにより決定した(Kamel et al.(2010)Blood.Transfus.8(4):260−266)。
【0209】
細胞表面ヒトCD47を発現するヒトOV10hCD47細胞によるセルベースELISAアッセイを用いて、VLX4、VLX8、及びVLX9キメラ(マウス−ヒト)並びにヒト化mAbの結合活性を決定した。10%熱不活性化ウシ胎仔血清(BioWest;S01520)を含有するIMDM培地中で、OV10hCD47細胞を増殖させた。アッセイの1日前に、3×10
4個の細胞を96ウェルセルバインドプレート(Corning ♯3300,VWR ♯66025−626)にプレーティングして、アッセイ時に95〜100%密集とした。細胞を洗浄し、様々な濃度の精製抗体を95%O
2/5%CO
2下、37℃で1時間IMDM中に添加した。次に、細胞を培地で洗浄し、培地で1/2500倍希釈したHRP標識二次抗ヒト抗体(Promega)と一緒に37℃でさらに1時間インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄してから、ペルオキシダーゼ基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを添加した(Sigma;カタログ#T4444)。0.7NまでのHClの添加によって反応を停止させた後、TecanモデルInfinite M200プレートリーダを用いて、450nMでの吸光度を決定する。ヒトOV10hCD47細胞に対するこれらのクローンの見かけ結合親和性を、非線形フィット(Prism GraphPadソフトウェア)によって決定した。
【0210】
また、hRBCのヒトCD47に対するキメラ(マウス−ヒト)及びヒト化VLX4、VLX8、及びVLX9mAbの結合活性も、フローサイトメトリーを用いて決定した。リン酸緩衝食塩水、pH7.2、2.5mM EDTA(PBS+E)の溶液中様々な濃度のキメラ又はヒト化抗体と一緒に、hRBCを37℃で60分間インキュベートした。次に、細胞を常温PBS+Eで洗浄してから、PBS+E中のFITC標識ロバ抗ヒト抗体(Jackson Immuno Research Labs,West Grove,PA;Catalogue♯709−096−149)と一緒に氷上でさらに1時間インキュベートした。細胞をPBS+Eで洗浄し、C6 Accuri Flow Cytometer(Becton Dickinson)を用いて抗体結合を分析し、様々な抗体濃度で、蛍光強度中央値の非線形フィット(Prism GraphPadソフトウェア)によって見かけ結合親和性を決定した。
【0211】
VLX4キメラ(マウス−ヒト)mAbは全て、ヒトOV10hCD47腫瘍細胞と、ピコモル(pM)範囲の見かけ親和性で結合した(表1)。
【0212】
同様に、ヒト化VLX4mAbは、濃度依存的様式で(
図1A及び
図1B)ヒトOV10hCD47腫瘍細胞と、ピコモルから低ナノモル範囲の見かけ親和性で結合した(表2)。
【0213】
キメラVLX4mAbは全て、ヒトRBCと、ピコモル範囲の見かけKd値で結合し、これらは、ELISAによりOV10hCD47腫瘍細胞について得られたK
d値と類似していた(表1)。
【0214】
ヒト化VLX4mAb:VLX4hum_01 IgG1 N297Q、VLX4hum_02 IgG1 N297Q、VLX4hum_01 IgG4 PE、VLX4hum_02 IgG4 PE、VLX4hum_12 IgG4 PE、及びVLX4hum_13 IgG4は、OV10hCD47腫瘍細胞について得られた値と類似するKd値で、ヒトRBCと結合したが、VLX4hum_06 IgG4 PE及びVLX4hum_07 IgG4 PEは、hRBCに対して低い結合を示した(
図2A、
図2B、及び表2)。VLX4 IgG4PEキメラmAbは、腫瘍及びRBC CD47の両方と、同様の見かけKd値で結合した(表1)ため、腫瘍細胞及びRBCに対するヒト化mAbのこの結合の差は予想外であった。
【0215】
表1に示すように、VLX8キメラ(マウス−ヒト)mAbは全て、濃度依存的様式でヒトOV10hCD47腫瘍細胞と、ピコモル(pM)範囲の見かけ親和性で結合した。
【0216】
同様に、ヒト化VLX8mAbは、濃度依存的様式で(
図3A及び
図3B)ヒトOV10hCD47腫瘍細胞と、ピコモル範囲の見かけ親和性で結合した(表2)。
【0217】
VLX8キメラmAbは全て、hRBCと、ピコモル範囲の見かけK
d値で結合し、これらは、ELISAによりOV10hCD47腫瘍細胞について得られたK
d値と類似していた(表1)。
【0218】
VLX8ヒト化mAb:VLX8hum_01 IgG4 PE、VLX8hum_02 IgG4 PE、VLX8hum_03 IgG4 PE、VLX8hum_04 IgG4 PE、VLX8hum_05 IgG4 PE、及びVLX8hum_06 IgG4 PE、VLX8hum_07 IgG4 PE、VLX8hum_08 IgG4 PE、VLX8hum_09 IgG4 PE、VLX8hum_11 IgG4 PE、VLX8hum_06 IgG2、VLX8hum_07 IgG2、VLX8hum_08並びにVLX8hum_09 IgG2 IgG2は、OV10hCD47腫瘍細胞について得られた値と類似するKd値で、ヒトRBCと結合したが、VLX8hum_10 IgG4 PEは、hRBCに対し、より低い、しかし測定可能な結合を示した(
図4A、
図4B、及び表2)。VLX8 IgG4PEキメラmAbは、腫瘍及びRBC CD47の両方と、同様の見かけKd値で結合した(表1)ため、腫瘍細胞及びRBCに対するヒト化mAbのこの結合の差は予想外であった。
【0219】
表1は、ヒトOV10hCD47細胞及びヒトRBCに対するVLX9マウス−ヒトキメラmAbの見かけ結合親和性を示す。キメラmAbは全て、OV10hCD47腫瘍細胞と、ピコモル範囲の見かけKd値で結合した。同様に、ヒト化VLX9mAbは、濃度依存的様式で(
図5A及び
図5B)ヒトOV10hCD47腫瘍細胞と、ピコモルからナノモル範囲の見かけ親和性で結合した(表2)。
【0220】
VLX9キメラmAbは全て、hRBCと、ピコモル範囲の見かけK
d値で結合し、これらは、ELISAによりOV10hCD47腫瘍細胞について得られたK
d値と類似していた(表1)。キメラmAbとは対照的に、VLX9ヒト化mAb:VLX9hum_01 IgG2、VLX9hum_02 IgG2及びVLX9hum_07 IgG2は、ヒトRBCに対して低いが、測定可能な結合を示した(
図6、表2)。ヒト化mAbVLX9hum_03、04、05、06、08、09及び10IgG2は、RBCに対して測定可能な結合を全く示さなかった(表2)。VLX9 IgG2キメラmAbは全て、腫瘍及びRBC CD47の両方と、同様の見かけKd値で結合した(表1)ため、腫瘍細胞及びRBCに対するヒト化mAbのこの結合の差は予想外であった。
【0221】
フローサイトメトリーを用いて、ヒト化VLX4、VLX8、及びVLX9mAbの異種間結合を決定した。リン酸緩衝食塩水、pH7.2、2.5mM EDTA(PBS+E)の溶液中の様々な濃度のヒト化抗体と一緒に、マウス、ラット、ウサギ又はカニクイザルRBCを37℃で60分間インキュベートした。次に、細胞を常温PBS+Eで洗浄してから、PBS+E中のFITC標識ロバ抗ヒト抗体(Jackson Immuno Research Labs,West Grove,PA;カタログ#709−096−149)と一緒に氷上でさらに1時間インキュベートした。細胞をPBS+Eで洗浄し、C6 Accuri Flow Cytometer(Becton Dickinson)を用いて抗体結合を分析した。
【0222】
表3は、様々な抗体濃度で、蛍光強度中央値の非線形フィット(Prism GraphPadソフトウェア)によって決定したマウス、ラット、及びカニクイザル由来のRBCに対するヒト化VLX4及びVLX8mAbの見かけ結合親和性を示す。このデータは、ヒト化VLX4及びVLX8mAbが、マウス、ラット、ウサギ(データを示していない)又はカニクイザルRBCと、ピコモルからナノモル範囲の見かけKd値で結合することを明らかにしている(表4)。
【0223】
実施例4
CD47抗体は、CD47/SIRPα結合を阻止する
インビトロでCD47とSIRPαの結合に対するヒト化CD47mAbの作用を評価するために、CD47を発現するJurkatT細胞への蛍光標識SIRPα−Fc融合タンパク質の結合を用いて、次の方法を使用した。
【0224】
Alexa Fluor(登録商標)抗体標識キット(Invitrogen Cat No.A20186)を用いて製造者の明細書に従い、SIRPα−Fc融合タンパク質(R&D Systems,cat#4546−SA)を標識した。1.5×10
6個のJurkat T細胞を、10%培地を含有するRPMI中のヒト化mAb(5μg/ml)、ヒト対照抗体、又は培地のみと一緒に37℃で30分インキュベートした。等量の蛍光標識SIRPα−Fc融合タンパク質を添加し、37℃でさらに30分間インキュベートした。細胞をPBSで1回洗浄し、Jurkat T細胞に結合した標識SIRPα−Fcの量をフローサイトメトリーにより分析した。
【0225】
図7に示すように、ヒト化VLX4、VLX8及びVLX9mAbは、Jurkat T細胞に発現されたCD47とSIRPαの相互作用を阻止したが、ヒト対照抗体(CD47と結合しない)又は培地のみは、CD47/SIRPα相互作用を阻止しなかった。
【0226】
実施例5
CD47抗体は、食作用を増大する
インビトロでマクロファージによる腫瘍細胞の食作用に対するキメラ(マウス−ヒト)及びヒト化VLX4、VLX8、及びVLX9CD47mAbの作用を評価するために、フローサイトメトリーを用いて、次の方法を使用した(Willingham et al.(2012)Proc Natl Acad Sci USA 109(17):6662−7及びTseng et al.(2013)Proc Natl Acad Sci USA 110(27):11103−8)。
【0227】
ヒト由来のマクロファージを健常なヒト末梢血の白血球除去から取得し、AIM−V培地(Life Technologies)中に7〜10日にわたってインキュベートした。インビトロ食作用アッセイの場合、96ウェルプレート内の100ulのAIM−V培地中にウェル当たり1×10
4細胞の濃度でマクロファージを再プレーティングし、24時間にわたって付着させた。一旦エフェクターマクロファージが培養皿に付着したら、標的ヒト癌細胞(Jurkat)を1μMの5(6)−カルボキシフルオレセイン二酢酸N−サクシニミジルエステル(CFSE;Sigma Aldrich)で標識してから、1mlのAIM−V培地中に5×10
4細胞の濃度で(5:1の標的:エフェクター比)マクロファージ培養物に添加した。標的とエフェクター細胞の混合直後に、VLX4、VLX8、及びVLX9CD47mAb(1μg/ml)を添加して、37℃で2〜3時間インキュベートさせた。2〜3時間後、全ての貪食されていない細胞を除去し、残った細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS;Sigma Aldrich)で3回洗浄した。次に、細胞をトリプシン処理し、微小遠心管中に収集して、100ngのアロフィコシアニン(APC)標識CD14抗体(BD Biosciences)中で30分間インキュベートし、1回洗浄してから、完全な食作用を示すCFSE
+でもあるCD14
+細胞のパーセンテージについてフローサイトメトリー(Accuri C6;BD Biosciences)により分析した。
【0228】
図8に示すように、VLX4キメラ(マウス−ヒト)mAb:VLX4 IgG1、VLX4 IgG1 N297Q、VLX4 IgG4 PE、及びVLX4 IgG4 S228Pは、CD47/SIRPα相互作用を阻止することによってヒトマクロファージによるJurkat細胞の食作用を増大したが、この増大した食作用は、Fc機能とは独立している。
【0229】
同様に、
図9A及び
図9Bに示すように、VLX4hum_01 IgG1、VLX4hum_01 IgG4 PE、VLX4hum_06 IgG4 PE、VLX4hum_07 IgG4 PE、VLX4hum_12 IgG4 PE、及びVLX4hum_13 IgG4 PEは、CD47/SIRPα相互作用を阻止することによってヒトマクロファージによるJurkat細胞の食作用を増大した。
【0230】
図10Aに示すように、VLX8キメラ(マウス−ヒト)mAb:VLX8 IgG1 N297Q及びVLX8 IgG4 PEは、CD47/SIRPα相互作用を阻止することによってヒトマクロファージによるJurkat細胞の食作用を増大するが、この増大した食作用は、Fc機能とは独立している。
【0231】
同様に、
図10Bに示すように、VLX8hum_01 IgG4 PE、VLX8hum_03 IgG4 PE、VLX8hum_07 IgG4 PE、VLX8hum_08 IgG4 PE、及びVLX8hum_09 IgG4 PEは、CD47/SIRPα相互作用を阻止することによってヒトマクロファージによるJurkat細胞の食作用を増大したが、この増大した食作用は、Fc機能とは独立している。
【0232】
図11Aに示すように、VLX9 IgG1 N297Q、VLX9 IgG2及びVLX9 IgG4 PEキメラmAbは全て、CD47/SIRPα相互作用を阻止することによってヒトマクロファージによるJurkat T細胞の食作用を増大したが、この増大した食作用は、Fc機能とは独立している。同様に、
図11Bに示すように、ヒト化VLX9 IgG2mAbは全て、Jurkat T細胞の食作用を増大した。
【0233】
実施例6
可溶性CD47抗体による細胞死の誘導
一部の可溶性CD47抗体は、腫瘍細胞の選択的細胞死を誘導することがわかっている。この癌細胞に対する選択的毒性という追加的特性は、CD47へのSIRPαの結合を阻止するだけのmAbと比較して、利点を有することが期待される。
【0234】
可溶性抗CD47mAbによる細胞死の誘導は、インビトロで測定される(Manna et al.(2003)J.Immunol.107(7):3544−53)。インビトロでの細胞死アッセイの場合、1×10
5個の形質転換ヒトT細胞(Jurkat T細胞)を可溶性ヒト化VLX4、VLX8、及びVLX9CD47mAb(1μg/ml)と一緒に37℃で24時間インキュベートした。細胞死が起こると、ミトコンドリア膜電位が低下し、細胞膜の内葉が反転して、ホスファチジルセリン(PS)が曝露され、ヨウ化プロピジウム(PI)が核DNAに組み込まれることが可能になる。これらの細胞の変化を検出するために、続いて、細胞を蛍光標識アネキシンV及びPI又は7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD)(BD Biosciences)で染色した後、Accuri C6フローサイトメータ(BD Biosciences)を用いて、シグナルを検出した。PS曝露の増加は、アネキシンVシグナルの増加率(%)を測定することにより決定し、細胞死率(%)は、PI又は7−AADシグナルの増加率(%)を測定することにより決定する。治療目的のために重要なことには、これらのmAbが、腫瘍細胞の細胞死を直接誘導し、殺傷のために補体又は他の細胞(例えば、NK細胞、T細胞、若しくはマクロファージ)の介入を必要としないことである。このように、この機構は、他の細胞及びFcエフェクター機能とは独立している。従って、これらのmAbから作製される治療用抗体は、ADCC及びCDCなどのFcエフェクター機能を低減し、それによって、インタクトなFcエフェクター機能を有するヒト化mAbに共通する副作用の可能性を制限するように改変することができる。
【0235】
図12A及び
図12Bに示すように、可溶性VLX4ヒト化mAbは、アネキシンV染色及び7−AAD染色(図示していない)の増加により測定して、Jurkat T ALL細胞の細胞死を誘導した。ヒト化mAb:VLX4hum_01 IgG1、VLX4hum_01 IgG4 PE、VLX4hum_02 IgG1、VLX4hum_02 IgG4 PE、VLX4hum_06 IgG4 PE、VLX4hum_07 IgG4 PE、VLX4hum_12 IgG4 PE、及びVLX4hum_13 IgG4 PEは、細胞死を引き起こした。対照的に、ヒト化mAb:VLX4hum_08 IgG4 PE及びVLX4hum_11 IgG4 PEは、Jurkat T細胞の細胞死を引き起こさなかった。細胞死の誘導及び感受性癌細胞の食作用の促進は、癌の治療において付加的な望ましい抗体特性及び治療利益をもたらす。
【0236】
図13A及び
図13Bに示すように、可溶性VLX8キメラ及びヒト化mAbは、アネキシンV染色及び7−AAD染色(図示していない)の増加により測定して、Jurkat T ALL細胞の細胞死を誘導した。キメラmAbであるVLX8 IgG1 N297Q(xi)及びVLX8 IgG4 PE、並びにヒト化mAbであるVLX8hum_07 IgG4 PE及びVLX8hum_08 IgG4 PEは、Jurkat T ALL細胞の細胞死を引き起こした。対照的に、ヒト化mAb:VLX8hum_02 IgG4 PE及びVLX8hum_04 IgG4 PEは、Jurkat T細胞の細胞死を引き起こさなかった。細胞死の誘導及び感受性癌細胞の食作用の促進は、癌の治療において追加的な望ましい抗体特性及び治療利益をもたらす。
【0237】
図14Aに示すように、可溶性VLX9キメラ抗体は、アネキシンV染色及び7−AAD染色(図示していない)の増加により測定して、Jurkat細胞の細胞死を誘導した。さらに、
図14Bに示すように、キメラVLX9 IgG2ximAb並びにヒト化mAb:VLX9hum_06 IgG2、VLX9hum_07 IgG2、VLX9hum_08 IgG2、及びVLX9hum_09 IgG2は、Jurkat細胞の細胞死を誘導した(アネキシンV染色の2倍超の増加)。対照的に、ヒト化mAb:VLX9hum_01 IgG2、VLX9hum_02 IgG2、VLX9hum_03 IgG2、VLX9hum_04 IgG2、VLX9hum_05 IgG2及びVLX9hum_010 IgG2は、Jurkat細胞の細胞死を引き起こさなかった。細胞死の誘導及び感受性癌細胞の食作用の促進は、癌の治療において付加的な望ましい抗体特性及び治療利益をもたらす。
【0238】
実施例7
ヒト赤血球(hRBC)の血球凝集
B6H12、BRIC126、MABL1、MABL2、CC2C6、5F9をはじめとする、多くのCD47抗体は、インビトロ又はインビボで洗浄済RBCの血球凝集(HA)を引き起こすことがわかっている(Petrova P.et al.Cancer Res 2015;75(15 Suppl):Abstract nr 4271;米国特許第9,045,541号明細書;Uno et al.Oncol Rep.17:1189−94,2007;Kikuchi et al.Biochem Biophys Res.Commun.315:912−8,2004;Sikic B.et al.J Clin Oncol 2016;34(suppl;abstract 3019))。原則的にKikuchi et al.Biochem Biophys Res.Commun(2004)315:912−918により記載されるように、様々な濃度のキメラ及びヒト化VLX4、VLX8、及びVLX9mAbと一緒にhRBCをインキュベートした後、hRBCの血球凝集を評価した。健常なドナーから血液を採取し、PBS/1mM EDTA/BSAで希釈(1:50)した後、PBS/EDTA/BSAで3回洗浄した。等量の抗体(各75μl)と一緒にU底96ウェルプレートにhRBCを添加し、37℃で3時間、次に4℃で一晩インキュベートした。
【0239】
図15A並びに表1及び2に示すように、VLX4hum_01 IgG1 N297Qは、hRBCの血球凝集を引き起こしたが、ヒト化VLX4hum_01 IgG4 PEmAbは起こさなかった(mAb濃度:50μg/ml〜0.3ng/ml)。VLX4hum_01 IgG4 PEによる血球凝集の欠如は、癌の治療において付加的な望ましい抗体特性及び治療利益をもたらす。
【0240】
図15B並びに表1及び2に示すように、キメラ抗体VLX8 IgG4 PE(xi)及びヒト化抗体VLX8hum_08 IgG4 PE、VLX8hum_09 IgG4 PE、及びVLX8hum_010 IgG4 PEは、hRBCの血球凝集を引き起こしたが、VLX8ヒト化mAb:VLX8hum_01 IgG4 PE、VLX8hum_02 IgG4 PE、VLX8hum_03 IgG4 PE及びVLX8hum_11 IgG4 PEは、起こさなかった(mAb濃度:50μg/ml〜0.3ng/ml)。
【0241】
ヒト化抗体:VLX4hum_01 IgG4 PE、VLX8hum_01 IgG4 PE、VLX8hum_02 IgG4 PE、VLX8hum_03 IgG4 PE及びVLX8hum_11 IgG4 PEによる血球凝集の欠如は、癌の治療において付加的な望ましい抗体特性及び治療利益をもたらす。
【0242】
図16A及び
図16Bに示すように、キメラ抗体VLX9 IgG2は、hRBCの血球凝集を引き起こしたが、ヒト化VLX9mAbは全て、VLX9hum_07 IgG2を除いて、引き起こさなかった(mAb濃度:50ug/ml〜0.3pg/ml)。しかし、VLX9hum_07によって引き起こされた血球凝集の量は、VLX9 IgG2キメラmAbと比較して低かった。ここでも、VLX9ヒト化mAbによる血球凝集の欠如は、癌の治療において付加的な望ましい抗体特性及び治療利益をもたらす。
【0243】
実施例8
インビボでの抗腫瘍活性
この実験の目的は、VLX4_07 IgG4 PE、VLX8_10 IgG4 PE及びVLX9hum_08 IgG2により例示されるVLX4、VLX8及びVLX9ヒト化抗体が、リンパ腫のマウス移植片モデルにおける腫瘍負荷をインビボで低減することを証明することであった。
【0244】
5%CO2雰囲気内の10%ウシ胎仔血清(FBS;Omega Scientific;Tarzana,CA)を添加したRPMI−1640(Lonza;Walkersville,MD)中でラージ(Raji)ヒトバーキットリンパ腫細胞(ATCC ♯CCL−86,Manassas,VA)を維持した。培養物を組織培養フラスコ中で拡大した。
【0245】
5〜6週齢の雌NSG(NOD−Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Wjl/SzJ)をJackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から取得した。処置前に、マウスを順化させてから、特定の病原体フリー条件下でマイクロアイソレータケージ(Lab Products,Seaford,DE)内に収容した。マウスにはTeklad Global Diet(登録商標)2920x照射済実験動物試料(Envigo,Formerly Harlan;Indianapolis,IN)を給餌し、オートクレーブ処理済の水を無制限に供給した。手順は全て、動物実験ガイドライン(Institutional Animal Care and Use guidelines)に従って実施した。
【0246】
5×10
6個のラージ(Raji)腫瘍細胞の懸濁液を含有する0.1mLの30%RPMI/70%Matrigel(商標)(BD Biosciences;Bedford,MA)混合物を雌NSGマウスの右脇腹に皮下接種した。接種から5日後、デジタルカリバーを用いて、腫瘍の短径及び長径を測定した。式:腫瘍体積(mm
3)=(a×b
2/2)(式中、「b」は、最小直径であり、「a」は、最大直径である)を使用して、腫瘍体積を計算した。31〜74mm
3の触知可能な腫瘍体積を有するマウスをランダムに8〜10匹/グループに分け、この時点でVLX9hum_08又はPBS(対照)の投与を開始した。マウスは、5mg/kgの抗体5×/週の腹腔内注射により4週間にわたって処置した。腫瘍体積及び体重を週2回記録した。
【0247】
図17に示すように、ヒト化VLX4hum_07 IgG4 PEによる処置は、ラージ(Raji)腫瘍の腫瘍成長を有意に抑制し(p<0.05、二元ANOVA)、インビボでの抗腫瘍効果を示している。
【0248】
図18に示すように、ヒト化抗CD47mAb、VLX8hum_10 IgG4 PEによる処置は、ラージ(Raji)腫瘍の腫瘍成長を有意に抑制し(p<0.0001、二元ANOVA)、インビボでの抗腫瘍効果を示している。
【0249】
図19に示すように、ヒト化抗CD47mAb、VLX9hum_08 IgG2による処置は、ラージ(Raji)腫瘍の腫瘍成長を有意に抑制し(p<0.05、ANOVA)、インビボでの抗腫瘍効果を示している。
【0250】
実施例9
循環赤血球パラメータに対する作用
この実験の目的は、ヒトRBCにインビトロで結合しないVLX9ヒト化抗体(表2)(hum1017_08IgG2により例示)が、カニクイザルへの投与後、ヘモグロビン(Hg)又は循環RBCのいずれにも減少を引き起こさないことを立証することである。
【0251】
雌チャイニーズカニクイザル(Charles River Laboratories,Houston,TX)2.5〜3kgを動物実験ガイドライン(Institutional Animal Care and Use guidelines)に従って使用した。VLX9hum_08 IgG2又はビヒクル(PBS)を1日目に5mg/kgの用量で、18日目に15mg/kgの用量で、1時間の静脈内注入として投与した(3匹/グループ)。試験全体を通して、−7、−3、3、8、12、18日目(投与前)、20、25、29、35及び41日目に血液パラメータを測定し、対照動物の平均値と比較/正規化した。VLX9hum_08 IgG2グループにおける0日目の処置前RBS及びHg値は対照グループより低かった。何れかの用量のVLX9hum_08 IgG2での処置後、対照と比較して、Hg(
図20A)又はRBC数(
図20B)にわずかな変化(<10%)があったが、これは、インビトロでヒトRBCに結合しない抗体が、カニクイザルに投与されたとき、RBC血液パラメータの減少を引き起こさないことを示している。
【0252】
実施例10
CD47の免疫組織化学染色
マウス/ウサギキメラ抗CD47mAbを用いて、いくつかの種類の癌を有する患者由来のホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)ブロック(市販の供給源から取得)において、CD47発現の局在化を決定した。3〜4ミクロンの切片をFFPEブロックから切断し、抗原賦活化溶液で処理した。次に、切片を4μg/mlの一次抗CD47マウス/ウサギキメラmAbと一緒に1時間、続いて、抗ウサギHRP標識二次抗体と一緒に20分間インキュベートした。ヒトCD47に結合した抗CD47抗体は、ペルオキシダーゼ基質、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを用いて視覚化した。切片をヘマトキシリンで対比染色してから、標準的な光学顕微鏡法を用いて評価した。
図21からわかるように、VLX4マウス/ウサギキメラmAbにより例示されるCD47マウス/ウサギキメラmAbを用いて、ヒト乳癌組織に高いCD47発現が検出された(矢印で示す暗い箇所により表示される通り)。これは、診断アッセイにおいてFFPEブロックから得られる腫瘍組織切片中でのヒトCD47の免疫組織化学局在化のために、これらのmAbを用いることができることを明らかにしている。
【0253】
実施例11
CD47に対する抗体は、一酸化窒素シグナル伝達を調節する
CD47へのTSP1結合は、ヘテロ三量体Gタンパク質Giを活性化し、これは、細胞内環状AMP(cAMP)レベルの抑制をもたらす。さらに、TPS1/CD47経路は、あらゆる血管細胞中の一酸化窒素(NO)経路の有益な作用を妨害する。NO経路は、基質としてアルギニンを用いて生物活性ガスNOを生成する3つの一酸化窒素シンターゼ酵素(NOSI、NOSII及びNOSIII)の何れかから構成される。NOは、それが生成される細胞内又は隣接細胞中で作用して、メッセンジャー分子環状GMP(cGMP)を生成する酵素可溶性グアニリルシクラーゼを活性化することができる。NO/cGMP経路の適正な機能状態は、限定されないが、創傷、炎症、高血圧、代謝症候群、虚血、及び虚血再灌流傷害(IRI)から起こるストレスをはじめとするストレスから心血管系を保護する上で不可欠である。これらの細胞ストレスに関して、TPS1/CD47系によるNO/cGMP経路の阻害は、ストレスの作用を悪化させる。これは、cGMP及びcAMPの両方が、重要な保護の役割を果たす心血管系に特有の問題である。虚血及び再灌流傷害が、疾患、外傷、及び外科的処置の予後不良を引き起こすか、又はそれに寄与する多くの事例がある。
【0254】
これらの実験の目的は、本開示のヒト化抗CD47mAbが、例えば、Isenberg et al.(2006)J.Biol.Chem.281:26069−80により開示されるようにCD47に対するマウスモノクローナル抗体を用いて以前記載されている通り、NO刺激cGMP合成のTSP1媒介性阻害、あるいは、NOシグナル伝達の他の下流マーカ又はNOシグナル伝達によって生じる作用、例えば、Miller et al.(2010)Br J.Pharmacol.159:1542−1547により以前記載されているように平滑筋細胞弛緩若しくは血小板凝集を逆転させる能力を示すことを証明することであろう。
【0255】
使用される方法は、製造者により記載される(CatchPoint Cyclic−GMP Fluorescent Assay Kit,Molecular Devices,Sunnyvale,CA)ようにcGMPを測定するものであろう。Jurkat JE6.1細胞(ATCC、Manassas,VA;カタログ#TIB−152)又は培養して増殖させるとNO/cGMPシグナル伝達経路を保持し、しかもCD47のTSP1連結に対する頑健且つ再生可能な阻害応答を呈示する他の細胞型が使用される。細胞は、5%(v/v)熱不活性化ウシ胎仔血清(BioWest;カタログ#S01520)、100単位/mLペニシリン、100μgmLのストレプトマイシン(Sigma;カタログ#P4222)を含有するイスコフ改変ダルベッコ培地中で細胞を1×10
6細胞/mL未満の密度で増殖させる。cGMPアッセイの場合、96ウェル組織培養プレートにおいて、5%(v/v)熱不活性化ウシ胎仔血清(BioWest;カタログ#S01520)、100単位/mLペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(Sigma;#P4222)を含有するイスコフ改変ダルベッコ培地中で細胞を1×10
5細胞/mLの密度で24時間にわたり増殖させた後、無血清培地に一晩移す。
【0256】
実施例3に記載したCHO細胞への一過性トランスフェクションから精製した本明細書に開示のヒト化抗体、並びに対象キメラ抗体は、20ng/mlの最終濃度で添加し、その15分後に、0又は1μg/mlのヒトTSP1(Athens Research and Technology,Athens,GA,カタログ#16−20−201319)を添加する。さらに15分後、NO供与体であるジエチルアミン(DEA)NONOate(Cayman Chemical,Ann Arbor,MI,Catalog♯82100)を1μMの最終濃度でウェルの半分に添加する。5分後、cGMPキットに供給された緩衝液で細胞を溶解させ、各ウェルのアリコートをcGMP含量についてアッセイする。
【0257】
キメラ又はヒト化抗体の一部は、cGMPのTSP1阻害を逆転することが予想される。逆転は、完全(>80%)又は中程度(20%〜80%)であり得る。cGMPのTSP1阻害のこの逆転は、それらがNOシグナル伝達を増大する能力を有することを示し、限定されないが、創傷、炎症、高血圧、代謝症候群、虚血、及び虚血再灌流傷害(IRI)に起因するものをはじめとするストレスから心血管系を保護する上での有用性を示唆する。また、別のアッセイ系、例えば、平滑筋細胞収縮も、キメラ又はヒト化抗体クローンの一部が、NOシグナル伝達の活性化によって生じる下流効果に対するTSPの阻害作用を逆転することを明らかにすると予想される。