特許第6885609号(P6885609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイトの特許一覧

<>
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000006
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000007
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000008
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000009
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000010
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000011
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000012
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000013
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000014
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000015
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000016
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000017
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000018
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000019
  • 特許6885609-薬物送達のための涙器システム 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885609
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】薬物送達のための涙器システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   A61F9/007 170
   A61F9/007 150
【請求項の数】14
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-526782(P2018-526782)
(86)(22)【出願日】2016年11月16日
(65)【公表番号】特表2018-535021(P2018-535021A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】US2016062201
(87)【国際公開番号】WO2017091404
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2019年11月15日
(31)【優先権主張番号】62/258,914
(32)【優先日】2015年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】カフック, マリク ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】シーバー, アンドリュー
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/113384(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0364891(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0023837(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0086101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)出口ポートを有するリザーバーバルーン、前記リザーバーバルーンが所定体積の液体を封入するよう構成され、
b)前記出口ポートに流体連結された少なくとも1つの管腔、第一末端、及び第二末端を含むチューブ、前記チューブの第一末端が、前記リザーバーバルーンの出口ポートに流体連結され;
c)前記チューブの第二末端に流体連結され、そして使用の間に前記リザーバーバルーンから目へと液体の送達を促すように構成されたポートを含むエンドキャップ、および
d)前記チューブの前記管腔内に少なくとも部分的にある流量制限プラグであって、前記流量制限プラグが、前記リザーバーからの液体を吸収し、そして使用の間にリザーバーからエンドキャップへの流量を制御するように構成されるハイドロゲルを含む、涙器系への薬物送達のための薬剤送達システム。
【請求項2】
前記薬剤送達システムが、前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含む、請求項1に記載の薬剤送達システム。
【請求項3】
記リザーバーバルーンが、活性成分を有する組成物を含む流体をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の薬剤送達システム。
【請求項4】
薬剤送達システムが、前記エンドキャップを前記リザーバーバルーンの外側に接続する少なくとも1つの排出トラックをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項5】
前記流量制限プラグが前記管腔を塞ぐ、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項6】
流量制限プラグがシリコーンヒドロゲル含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項7】
前記流量制限プラグが、前記エンドキャップの表面を越えて延びる、請求項1〜のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項8】
前記チューブが医療グレードのシリコーンを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項9】
前記チューブが柔軟性である、請求項1〜のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項10】
前記流量制限プラグが、少なくとも1種の蛍光化合物を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項11】
前記少なくとも1種の蛍光化合物が、特定の波長の光に曝露された後に蛍光を発する、請求項1に記載の薬剤送達システム。
【請求項12】
前記リザーバーバルーンが解剖学的固定を可能にする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項13】
前記薬剤送達システムが、潤滑剤をさらに含む、請求項1〜1のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項14】
前記薬剤送達システムが、使用の間に対象の涙系内への前記薬物送達システムの送達を可能にするガイドワイヤーをさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、本明細書に参照として援用される2015年11月23日に出願された米国仮特許出願62/258,914の利益を主張する。
【0002】
本発明は、涙器システムに関する医療介入の分野にある。本発明は、眼、洞、および/または眼周囲組織への薬物送達のための、涙器システムデバイスおよびそのデバイスを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
眼または鼻道への適度な薬物送達、およびドライアイの処置を含む、眼および呼吸の疾患または障害の管理の領域では、様々な難題が患者および医師に降りかかる。例えば、眼の管理において、多くの現行の眼薬送達システムは、反復手作業薬物投与を必要とし、患者のコンプライアンスの欠如または眼に到達する不適切な薬物濃度に起因してしばしば有効ではない。多くの現行の涙流遮断技法には、本質的に不可逆的であるという欠点もある。
【0004】
これまで使用されてきた眼または眼周囲組織に薬物送達する手法は、除去可能な薬物放出涙点インプラントを涙点に配置することとすることができる。1種または複数の薬物の持続放出を可能にすることにより、本発明の涙点インプラントは、不十分な患者のコンプライアンス、廃棄物、タイミングの悪い施用、または非局在化送達など、現行の薬物投与(即ち、手作業による点眼)に関連する欠点のいくつかを克服することができると考えられる。眼からの涙流を遮断する1つの手法は、涙点プラグと一般に呼ばれる、除去可能であるが保持可能な涙点インプラントを、涙点に配置することである。そのような涙点プラグは、延長放出薬物送達のための道を提供することが示唆されてきたが、薬剤の分散は、眼の涙膜上で利用可能な涙での希釈を介した分布に依存するので、涙の生成が不十分な患者では、外れ、および変位(特に、患者が眼または眼瞼を非常に激しく擦ったときまたはくしゃみをしたとき)、限られた医薬リザーバー容量、および治療剤の不均等な送達を含むいくつかの欠点に悩まされている。眼および/または眼周囲組織に活性剤を送達することを必要とする対象を処置する治療剤の、長期にわたる定常放出を供給することができるデバイスが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、涙器システムに関する医療介入の分野にある。本発明は、眼、洞、および/または眼周囲組織への薬物送達のための、涙器システム、デバイス、およびそのデバイスを使用する方法に関する。
【0006】
一実施形態では、本発明は、a)出口ポートを有するリザーバーバルーン;b)前記出口ポートに流体連結された少なくとも1つの管腔を含むチューブ;c)前記チューブに流体連結されたポートを含むエンドキャップ;およびd)前記チューブの管腔内にあるプラグを含む、薬物送達のための涙器システムに関する。一実施形態では、前記システムは、潤滑剤をさらに含む。一実施形態では、前記システムは、前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、前記システムは、涙器システム内への前記システムの送達を可能にするガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、前記ガイドワイヤーは、管腔内を縫って進む。一実施形態では、前記システムは、前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、活性成分を有する組成物を含む流体をさらに含む。一実施形態では、前記システムは、前記エンドキャップを前記リザーバーバルーンの外側に接続する少なくとも1つの排出トラックをさらに含む。一実施形態では、前記排出トラックは、涙を眼の表面から涙嚢内に、それを越えて流すように設計される。一実施形態では、前記プラグは、管腔を塞ぐ。一実施形態では、前記プラグは、シリコーンヒドロゲルを含む。一実施形態では、プラグは、非シリコーンヒドロゲルプラグである。一実施形態では、プラグは、ナノ球体、微小球、フィルター膜、多孔質膜、フォームなどの多孔質材料、および流体を周囲に流すテクスチャ付き外面を備えたポリマーなどの固体材料などを含む群から選択されてもよい。一実施形態では、プラグは、溝を備えた材料を含む。一実施形態では、前記溝は、流れに関する流量制限蛇行経路である。一実施形態では、前記プラグは、ウィッキング材料を含む。一実施形態では、前記プラグは、前記リザーバーバルーンから前記エンドキャップへの流体の流量を制御する。一実施形態では、前記プラグは前記エンドキャップの表面を越えて延びる。一実施形態では、前記プラグは前記エンドキャップの表面を越えて1〜200ミクロン延びる。一実施形態では、前記チューブは柔軟性である。一実施形態では、プラグは、エンドキャップをちょうど越えた箇所からリザーバーバルーンまでの距離にわたる。一実施形態では、プラグは、エンドキャップからリザーバーバルーンまでの、1/32の距離から全距離の間のどこを占有していてもよい。一実施形態では、チューブは、医療グレードのシリコーンを含む。一実施形態では、システムはチューブを持たず、むしろエンドキャップからリザーバーバルーンまでの距離にわたるプラグのみを含む。一実施形態では、プラグは、流量制限棒を含む。一実施形態では、前記プラグは無色である。一実施形態では、前記プラグは着色されている。一実施形態では、前記プラグは少なくとも1種の蛍光化合物を含む。一実施形態では、前記少なくとも1種の蛍光化合物は、特定の波長の光に曝露された後に蛍光を発する。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、解剖学的に固定することが可能である。一実施形態では、固定は、近位総涙小管の直径を越えて膨張するバルーンによって実現され、したがって元の近位涙液流出システム内への押出しが防止される。一実施形態では、前記解剖学的固定は、システム保持フィーチャーである。一実施形態では、システムは、前記システムの外部長さを延びる2次ガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、システムは、リザーバーバルーンに押さえ構造を与える、剛性であるが柔軟性のある「アンダーワイヤー」をさらに含む。一実施形態では、膨張システムは、エンドキャップの近位に接続する。一実施形態では、リザーバーバルーンは実質的に弾性である。一実施形態では、リザーバーバルーンは半弾性である。一実施形態では、リザーバーバルーンは実質的に非弾性である。一実施形態では、前記システムは、医療グレード材料で作製される。一実施形態では、前記チューブは、プラグ(ヒドロゲル)、ガイドワイヤー、または膨張管腔がそれぞれ別の管腔になるように、多数の管腔を含む。好ましい実施形態では、3種(ヒドロゲルプラグ、ガイドワイヤー、およびリザーバーバルーン膨張管腔)全てが、同じ管腔を利用する。一実施形態では、ヒドロゲル/プラグは膨張管腔を経て送達される。一実施形態では、前記ヒドロゲルプラグは、バルーンの拡張が長いアクセスにおいて制限され、代わりにバルーンの拡張が側面に推進されるように、リザーバーバルーンの底部(遠位部)に繋ぎ止められる。
【0007】
一実施形態では、本発明は、a)出口ポートを有するリザーバーバルーン;b)前記出口ポートに流体連結されたプラグ;およびc)前記プラグに流体連結されたポートを含むエンドキャップを含む、薬物送達のための涙器システムに関する。一実施形態では、前記システムは、前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、活性成分を有する組成物を含む流体をさらに含む。一実施形態では、前記システムは、前記エンドキャップを前記リザーバーバルーンの外側に接続する少なくとも1つの排出トラックをさらに含む。一実施形態では、前記プラグはシリコーンヒドロゲルを含む。一実施形態では、前記プラグはウィッキング材料を含む。一実施形態では、前記プラグは、前記リザーバーバルーンから前記エンドキャップへの流体の流量を制御する。一実施形態では、前記プラグは前記エンドキャップの表面を越えて延びる。一実施形態では、前記プラグは前記エンドキャップの表面を1〜200ミクロン越えて延びる。一実施形態では、前記プラグは柔軟性である。一実施形態では、前記プラグは無色である。一実施形態では、前記プラグは着色されている。一実施形態では、前記プラグは少なくとも1種の蛍光化合物を含む。一実施形態では、前記少なくとも1種の蛍光化合物は、特定の波長の光に曝露された後に蛍光を発する。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、解剖学的に固定することが可能である。一実施形態では、前記解剖学的固定は、システム保持フィーチャーである。一実施形態では、前記システムは医療グレード材料で作製される。一実施形態では、前記システムは、潤滑剤をさらに含む。一実施形態では、前記システムは、涙器システム内への前記システムの送達を可能にするガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、充填は、少なくとも1種の活性成分を有する前記組成物を前記チューブを通して導入することを含む。一実施形態では、前記システムは、前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含み、前記プラグは、前記システムの前記エンドキャップから前記リザーバーバルーンまでの距離にわたる最終位置を得る。一実施形態では、前記システムは、前記エンドキャップを前記リザーバーバルーンの外側に接続する少なくとも1つの排出トラックをさらに含む。一実施形態では、前記排出トラックは、涙を眼の表面から涙嚢内に、それを越えて流すように設計される。一実施形態では、前記プラグは、前記システムからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、前記管腔内での前記プラグの位置決めは、前記システムからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、解剖学的固定を可能にする。一実施形態では、固定は、近位総涙小管の直径を越えて膨張するバルーンによって実現され、したがって元の近位涙液流出システム内への押出しが防止される。一実施形態では、前記解剖学的固定は、システム保持フィーチャーである。一実施形態では、システムは、前記システムの外部長さを延びる2次ガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、システムは、リザーバーバルーンに押さえ構造を与える、剛性であるが柔軟性のある「アンダーワイヤー」をさらに含む。一実施形態では、膨張システムは、エンドキャップの近位に接続する。一実施形態では、リザーバーバルーンが実質的に弾性である。一実施形態では、リザーバーバルーンが半弾性である。一実施形態では、リザーバーバルーンが実質的に非弾性である。一実施形態では、前記システムは医療グレード材料で作製される。一実施形態では、ヒドロゲル/プラグは、前記ガイドワイヤーに取着される。一実施形態では、前記ヒドロゲルプラグは、バルーンの拡張が長いアクセスにおいて制限され、代わりにバルーンの拡張が側面に推進されるように、リザーバーバルーンの底部(遠位部)に繋ぎ止められる。
【0008】
一実施形態では、本発明は、a)i)涙点、涙管、および涙嚢を含む対象、ii)涙液薬物送達システムであって、A)出口ポートを有するリザーバーバルーンであって、前記涙嚢内に挿入することができるリザーバーバルーン、B)前記出口ポートに流体連結された少なくとも1つの管腔を含むチューブであって、涙管の少なくとも1つを通って前記弾性リザーバーから延びるチューブ、C)前記チューブの末端に流体連結されたポートを含むエンドキャップであって、眼の涙膜に接触して前記涙点とのインターフェースをとるエンドキャップ、およびD)システムの前記チューブの管腔内にあるプラグを含む涙液薬物送達システムを用意するステップと、b)涙器システムに前記薬物送達システムを挿入するステップと;c)前記リザーバーバルーンに、少なくとも1種の活性成分を有する組成物を充填するステップと;d)前記涙器システム薬物送達システムを使用して前記対象に前記組成物を投与するステップとを含む、処置の方法に関する。一実施形態では、前記システムは、前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、少なくとも1種の活性成分を有する前記組成物は、治療剤をさらに含む。一実施形態では、充填は、少なくとも1種の活性成分を有する前記組成物を前記チューブを通して導入することを含む。一実施形態では、ステップc)は、前記プラグに取着された前記ガイドワイヤーを除去することをさらに含み、前記プラグは、前記システムのエンドキャップに至るまで前記システムの管腔内に最終位置を得る。一実施形態では前記システムは、前記エンドキャップを前記リザーバーバルーンの外側に接続する少なくとも1つの排出トラックをさらに含む。一実施形態では、前記排出トラックは、涙を眼の表面から涙嚢内に、それを越えて流すように設計される。一実施形態では、前記プラグは、前記システムからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、前記管腔内での前記プラグの位置決めは、前記システムからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、プラグは、エンドキャップをちょうど越えた箇所からリザーバーバルーンまでの距離に及ぶ。一実施形態では、プラグは、エンドキャップからリザーバーバルーンまでの、1/32の距離から全距離の間のどこを占有していてもよい。一実施形態では、チューブは、医療グレードシリコーンを含む。一実施形態では、システムはチューブを持たず、むしろエンドキャップからリザーバーバルーンまでの距離にわたるプラグのみ含む。一実施形態では、プラグは流量制限棒を含む。一実施形態では、前記ガイドワイヤーは、中心開放管腔を含む。一実施形態では、前記ガイドワイヤーは、前記システムを所定位置に送達する前記システムの管腔を占有する。一実施形態では、前記中心開放管腔は柔軟性である。一実施形態では、前記中心開放管腔は、バルーンリザーバー内の遠位に直接流体を注入することが可能である。別の実施形態では、送達システムは、システムの内部特性によって強化される。一実施形態では、システムは、前記システムの外部長さを延びる2次ガイドワイヤーを含む。一実施形態では、システムは、リザーバーバルーンに押さえ構造を与える、剛性であるが柔軟性のある「アンダーワイヤー」をさらに含む。一実施形態では、膨張システムはエンドキャップの近位に接続する。一実施形態では、リザーバーバルーンは、実質的に弾性である。一実施形態では、リザーバーバルーンは半弾性である。一実施形態では、リザーバーバルーンは実質的に非弾性である。一部の実施形態では、システムは、前記リザーバーバルーン上に配置される保護スリーブを含む。一実施形態では、前記スリーブは、漏れが鼻管またはその他の組織区画に進入するのを防止する。一実施形態では、前記システムは、使用者(医師または患者)による検出および位置の確認が可能になるように、蛍光材料または着色剤を含有する。一実施形態では、方法は、前記リザーバーバルーンに、治療剤または医薬を充填することをさらに含む。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、眼の周囲の洞内に埋め込まれる。一実施形態では、涙点部分またはエンドキャップは、リザーバーバルーンへの医薬の充填を可能にするが、リザーバーバルーンは洞内に在り、薬物を、プラグを通して眼の涙膜に送達することが可能になる。一実施形態では、前記バルーンリザーバーの拡張が少なくとも500%である。一実施形態では、前記バルーンリザーバーの拡張が少なくとも700%である。一実施形態では、前記膨張したバルーンリザーバーのそのような体積は、少なくとも100マイクロリットルである。このようにすることができるバルーンに多くのタイプはない。一実施形態では、前記バルーンリザーバーはシリコーンを含む。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、解剖学的固定を可能にする。一実施形態では、固定は、近位総涙小管の直径を越えて膨張するバルーンによって実現され、したがって、元の近位涙液流出システム内への押出しが防止される。一実施形態では、前記解剖学的固定は、システム保持フィーチャーである。一実施形態では、前記プラグは、前記システムからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、前記管腔内での前記プラグの位置決めは、前記システムからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、前記活性成分は、人工涙液、緑内障点眼液、抗炎症剤、非ステロイド剤、抗生剤、生物学的製剤、タンパク質、アプタマー、核酸、サイトカイン、血漿、交感神経様作用薬(sympahtomemetics)、副交感神経様作用薬(parasympathomemetics)、プロスタグランジン類似体、ベータ遮断薬、アルファ−アゴニスト、および抗VEGF剤からなる。一実施形態では、前記システムから出る前記流体の流れは、処置が必要とされないと考えられる(例えば睡眠中)、1日の所与の時間での流れが減少するように、操作者(患者または医師)が前記プラグを調整することによって制御される。一実施形態では、リザーバーバルーンは、最短でも1週間にわたり、1日当たり0.1マイクロリットルから30.0マイクロリットルの間の固定速度で、流体+/−活性成分を眼の表面に送達することになる。別の実施形態では、送達は、最短で60日間実現される。
【0009】
一実施形態では、本発明は、a)i)涙点、涙管、および涙嚢を含む対象、ii)A)少なくとも1種の活性成分を有する組成物を含む、出口ポートを有するリザーバーバルーンであって、前記涙嚢内に挿入することができるリザーバーバルーン、B)涙管の少なくとも1つを経て前記弾性リザーバーから延びる、前記出口ポートに接続された管腔を含むチューブ、C)前記チューブの末端に連結されたポートを含むエンドキャップであって、眼の涙膜に接触して前記涙点とのインターフェースをとるエンドキャップ、およびD)システムの前記チューブの管腔内にあるプラグを含む涙液薬物送達システムを用意するステップと、b)涙器システムに前記薬物送達システムを挿入するステップと;c)前記涙器システム薬物送達システムを使用して前記対象に前記組成物を投与するステップとを含む、処置の方法に関する。一実施形態では、前記システムは、潤滑剤をさらに含む。一実施形態では、前記システムは、涙器システム内への前記システムの送達を可能にするガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、前記システムは、前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、前記ガイドワイヤーは、中心開放管腔を含む。一実施形態では、前記中心開放管腔は柔軟性である。一実施形態では、前記中心開放管腔は、バルーンリザーバー内の遠位に直接流体を注入させる。別の実施形態では、送達システムは、システムの内部特性によって強化される。プラグにいくらかのプッシュ能力を与える、剛性であるが柔軟性の「アンダーワイヤー」があるので、長さを移動するのに2次ガイドワイヤーを必要としない。この実施形態では、膨張システムはエンドキャップの近位に接続する。一実施形態では、前記システムは、前記エンドキャップを前記リザーバーバルーンの外側に接続する少なくとも1つの排出トラックをさらに含む。一実施形態では、前記排出トラックは、涙を眼の表面から涙嚢内に、それを越えて流すように設計される。一実施形態では、リザーバーバルーンは、実質的に弾性である。一実施形態では、リザーバーバルーンは半弾性である。一実施形態では、リザーバーバルーンは実質的に非弾性である。一部の実施形態では、システムは、前記リザーバーバルーン上に配置された保護スリーブを含む。一実施形態では、前記スリーブは、漏れが鼻管またはその他の組織区画に進入するのを防止する。一実施形態では、前記システムは、使用者(医師または患者)による検出および位置の確認を可能にする、蛍光材料または着色剤を含有する。一実施形態では、方法は、前記リザーバーバルーンに治療剤または医薬を充填することをさらに含む。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、眼の周囲の洞内に埋め込まれる。一実施形態では、涙点部分またはエンドキャップは、医薬によるリザーバーバルーンの充填を可能にするが、リザーバーバルーンは洞内にあり、プラグを経て眼の涙膜まで薬物を送達させる。一実施形態では、前記バルーンリザーバーの拡張が少なくとも500%である。一実施形態では、前記バルーンリザーバーの拡張が少なくとも700%である。一実施形態では、前記膨張したバルーンリザーバーのそのような体積は、少なくとも100マイクロリットルである。一実施形態では、前記バルーンリザーバーはシリコーンを含む。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、解剖学的固定を可能にする。一実施形態では、固定は、近位総涙小管の直径を越えて膨張するバルーンによって実現され、したがって元の近位涙液流出システムへの押出しを防止する。一実施形態では、前記解剖学的固定は、システム保持フィーチャーである。一実施形態では、前記プラグは、前記システムからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、前記管腔内の前記プラグの位置は、前記システムからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、前記活性成分は、人工涙液、緑内障点眼液、抗炎症剤、非ステロイド剤、抗生剤、生物学的製剤、タンパク質、アプタマー、核酸、サイトカイン、血漿、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、プロスタグランジン類似体、ベータ遮断薬、アルファ−アゴニスト、および抗VEGF剤からなる。一実施形態では、前記システムから出る前記流体の流れは、処置が必要とされないと考えられる(例えば睡眠中)、1日の所与の時間での流れが減少するように、操作者(患者または医師)が前記プラグを調整することによって制御される。一実施形態では、リザーバーバルーンは、最短でも1週間にわたり、1日当たり0.1マイクロリットルから30.0マイクロリットルの間の固定速度で、流体+/−活性成分を眼の表面に送達することになる。別の実施形態では、送達は、最短で60日間実現される。
【0010】
(定義)
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語について以下に定義する。本明細書に定義される用語は、本発明に関連する当業者に一般に理解される意味を有する。「a」、「an」、および「the」などの用語は、単数の実体のみを指すのではなく、全体的なクラスを含むものとし、その特定の例を例示に使用することができる。本明細書の術語は、本発明の特定の実施形態について記述するのに使用されるが、それらの用法は、特許請求の範囲で概略的に述べたものを除いて本発明を限定しない。
【0011】
本明細書で使用される「患者」または「対象」という用語は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、またはそれらのトランスジェニック種など、任意の生きている哺乳類生物を指す。ある特定の実施形態では、患者または対象は、霊長類である。ヒト対象の非限定的な例は、成年、若年、乳児、および胎児である。
【0012】
本明細書で使用される「予防(Prevention)」または「予防する(preventing)」は:(1)疾患のリスクがありかつ/または疾患になる素因があると考えられる対象または患者において疾患の発症を阻害することであって、そのような阻害は部分的であっても完全であってもよいが、疾患の病理学または症候学のいずれかまたは全てを未だ経験せずまたは示していないこと、および/または(2)疾患のリスクがありかつ/または疾患になる素因があると考えられるが、疾患の病理学または症候学のいずれかまたは全てを未だ経験せずまたは示していない、対象または患者における疾患の病理学または症候学の発症を遅らせることを含むが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書で使用される「医薬(medication)」または「治療剤(therapeutic agent)」という用語は、薬物または医薬組成物を含むがこれらに限定することのない、疾患または状態の症状を処置または予防または緩和する任意の化合物および/または分子を指す。医薬は、治療有効量でまたは薬学的有効量で送達されまたは存在すると見なされる。
【0014】
本明細書で使用される「治療有効量(therapeutically effective amounts)」または「薬学的有効量(pharmaceutically effective amounts)」は、疾患を処置するために対象または患者に投与したときに、疾患のそのような処置を有効にするのにまたは疾患もしくは状態の1つもしくは複数の症状を寛解するのに(例えば、疼痛を寛解する)十分な量を意味する。
【0015】
本明細書で使用される「処置する(treat)」および「処置する(treating)」という用語は、対象(例えば、患者)が治癒し疾患が根治した場合に限定されない。むしろ処置は、症状を低減させるだけでもよく、数ある効果の中でも疾患の進行を改善し(ある程度まで)かつ/または遅延させる。処置は、疾患または苦痛が治癒する場合に限定するものではない。症状が低減することで十分である。
【0016】
本明細書で使用される「医療デバイス」、「インプラント」、「デバイス」、「医療デバイス」、「医療用インプラント」、「インプラント/デバイス」、および「薬物送達システム」などの用語は、組織増大、輪郭形成、生理学的機能の回復、疾患もしくは外傷により損傷を受けた組織の修復もしくは回復、および/または正常な、損傷を受けた、もしくは疾患状態にある器官および組織への治療剤の送達など、1つまたは複数の療法上のまたは予防的な目的のために、患者の体内に部分的にまたは全体的に配置されるように設計された任意の物体を指すのに、同義で使用される。医療用デバイスは通常、生物学的に適合性ある合成材料(例えば、医療グレードのステンレス鋼、ニチノール、チタン、およびその他の金属;外因性ポリマー、例えばポリウレタン、シリコーン、PLA、PLGA、PGA、PCL)から構成されるが、医療用インプラントの構築にその他の材料を使用してもよい。本発明を任意の特定のデバイスに限定するものではないが、本発明に特に関連ある特定の医療デバイスおよびインプラントには、ステント、涙点プラグ、Crawfordチューブ、カテーテル、涙管、眼またはその他のシャント、および薬物送達システムが含まれる。一部の実施形態では、デバイスは、標準の撮像デバイスで視覚化が可能な造影剤または不透明な材料(例えば、x線視覚化を可能にするバリウム)を組み込む。
【0017】
本明細書で使用される「医薬リザーバー(medication reservoir)」という用語は、医薬または治療剤を含有する任意の構造体を指す。一部の実施形態では、リザーバーは、延伸性プラスチックまたはシリコーンで作製される。一部の実施形態では、リザーバーは実質的に弾性である。一部の実施形態では、リザーバーバルーンは少なくとも500%拡張し得る。一部の実施形態では、リザーバーは実質的に非弾性である。
【0018】
本明細書で使用される「近位」という用語は、起点に向かって位置付けられた場所を指す(例えば、医師と、涙液インプラントデバイスまたはシステムとの間)。
【0019】
本明細書で使用される「遠位」という用語は、起点から離れて位置付けられた場所を指す(例えば、医師に対して涙液インプラントデバイスの背後)。
【0020】
本明細書で使用される「医薬品(medicament)」という用語は、医療用化合物または薬物など、医学的処置で使用するのに適した任意の活性剤を指す。
【0021】
本明細書で使用される「活性剤」という用語は、生きている生物に影響を及ぼす、任意の分子の実体を指す。
【0022】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、当技術分野で周知の1つまたは複数の反復単位を含有する任意の有機高分子を指す。
【0023】
本明細書で使用される「コポリマー」は、少なくとも2つのタイプの反復単位が含まれる任意のポリマーを指す。コポリマーは、1つのタイプの多数の反復単位を含有するセグメントが、第2のタイプの多数の反復単位を含有するセグメントに結合された、ブロックコポリマーとすることができる。
【0024】
本明細書で使用される「親水性ポリマー」という用語は、水に濡れる、即ち撥水表面を持たない任意のポリマーを指す。親水性ポリマーは、僅かな程度まで水を吸収することができ、例えば約0〜100wtパーセンテージの水を吸収することができるが、その体積は、ヒドロゲル形成ポリマーのように大きく膨潤しない。
【0025】
本明細書で使用される「埋め込まれた」という用語は、完全にまたは部分的に配置されたデバイスまたはシステムを宿主内に有することを指す。デバイスまたはシステムは、デバイスまたはシステムの一部が宿主の外側に到達しまたは延びたときに、部分的に埋め込まれる。
【0026】
本明細書で使用される「ステロイド」という用語は、4個の縮合環:3個のシクロヘキサン環(右の図中、環A、B、およびCと示される)および1個のシクロペンタン環(D環)の形をとる、一緒に結合される20個の炭素原子から構成されたコアを含有する、任意の有機化合物を指す。
【化1】
ステロイドは、この4環コアに取着された官能基によって、および環の酸化状態によって、様々に変化する。ステロイドの例には、食物脂肪コレステロール、性ホルモンエストラジオールおよびテストステロン、および抗炎症薬デキサメタゾンが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0027】
本明細書で使用される、通常はNSAIDまたはNAIDと省略されるが非ステロイド抗炎症剤/鎮痛薬(NSAIA)または非ステロイド抗炎症薬(NSAIM)とも呼ばれる、「非ステロイド抗炎症剤」、「非ステロイド抗炎症薬」という用語は、鎮痛および解熱(熱低減)効果のある、より高い用量で高炎症効果を発揮する、任意の薬物を指す。
【0028】
本明細書で使用される「抗生剤」という用語は、細菌、真菌、またはその他の微生物を死滅させまたは増殖を阻害する、任意の化合物または物質を指す。
【0029】
本明細書で使用される「抗炎症剤」という用語は、炎症を低減させる任意の物質または処置物質を指す。
【0030】
本明細書で使用される「免疫抑制剤」という用語は、免疫系の活性を阻害しまたは防止する全ての薬物を指す。
【0031】
本明細書で使用される「抗新生物剤」という用語は、新生細胞の発生、成熟、拡散を防止しまたは阻害する全ての薬物を指す。
【0032】
本明細書で使用される「プロスタグランジン類似体」という用語は、プロスタグランジン受容体に結合する全ての分子を指す。
【0033】
本明細書で使用される「酸化窒素」または「一酸化窒素」という用語は、化学式NOを持つ、任意の2成分2原子分子を指す。
【0034】
本明細書で使用される、「エンドセリン」という用語は、様々な細胞および組織で生成され、血管運動活性、細胞増殖、およびホルモンの生成を調節する役割を演じ、ならびに血管疾患の発症に結び付けられた、21個のアミノ酸残基からなる任意のタンパク質を指す。例えば、エンドセリン生物活性は、血管の狭窄、血圧の上昇、眼圧の減少、および神経組織の変性の防止を含み得るが、これらに限定するものではない。
【0035】
本明細書で使用される「コルチコステロイド」という用語は、任意の天然に生成されたステロイドホルモンまたは合成ステロイドホルモン類似体を含む化学物質の種類を指す。コルチコステロイドは、ストレス応答と、免疫応答と、炎症、炭水化物代謝、タンパク質異化、血中電解質レベル、および挙動の調節とを含むがこれらに限定することのない広範な生理学的プロセスに関与する。
【0036】
本明細書に使用される「抗体ベースの免疫抑制剤」という用語は、免疫抑制活性を有する任意の抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、Fabなど)を指す。
【0037】
本明細書で使用される「薬剤の放出」という用語は、インプラントデバイスまたはシステムから発せられる薬剤またはその副成分の任意の存在を指す。
【0038】
本明細書で使用される「類似体(analogueまたはanalog)」という用語は、親化合物に構造的に類似しているがその組成が僅かに異なる(例えば、1個の原子または官能基が異なり、付加され、または除去されている)、任意の化合物を指す。類似体は、当初の化合物とは異なる化学的または物理的特性を有していてもいなくてもよく、改善された生物学的および/または化学的活性を有していてもいなくてもよい。例えば、類似体はより親水性であってもよく、または親化合物に比べて変化した反応性を有していてもよい。類似体は、親化合物の化学的および/または生物学的活性を模倣していてもよく(即ち、類似のまたは同一の活性を有していてもよい)、または場合によっては、増大したもしくは減少した活性を有していてもよい。類似体は、当初の化合物の、天然にまたは非天然に生じる(例えば、組換え)変種であってもよい。類似体の例は、ムテイン(即ち、少なくとも1つのアミノ酸が欠失し、付加され、または別のアミノ酸で置換されている、タンパク質類似体)である。その他のタイプの類似体には、化合物の異性体(鏡像異性体、およびジアステレオマーなど)およびその他のタイプのキラル変種、ならびに構造異性体が含まれる。類似体は、直鎖状化合物の、分岐したまたは環状の変種であってもよい。例えば、直鎖状化合物は、ある特定の所望の特性を得るために(例えば、親水性またはバイオアベイラビリティを改善する)、分岐したまたはその他の手法で置換された類似体を有していてもよい。
【0039】
本明細書で使用される「誘導体」という用語は、親化合物に構造的に類似しておりかつ(実際にまたは理論的に)その親化合物から誘導可能な、任意の化学的にまたは生物学的に修飾された型の化合物を指す。「誘導体」は、親化合物が、「誘導体」を発生させる出発材料であってもよいのに対し、親化合物は、「類似体」を発生させるのに出発材料として必ずしも使用されなくてよいという点で、「類似体」とは異なる。類似体は、親化合物の異なる化学的または物理的特性を有していてもよい。例えば誘導体は、親化合物に比べ、より親水性であってもよくまたは変化した反応性を有していてもよい。誘導体化(即ち、修飾)では、分子内の1つまたは複数の部分の置換(例えば、官能基の変更)が行われてもよい。例えば、水素は、フッ素もしくは塩素などのハロゲンで置換されてもよく、またはヒドロキシル基(−OH)をカルボン酸部分(−COOH)に置き換えてもよい。「誘導体」という用語は、コンジュゲート、および親化合物のプロドラッグも含む(即ち、生理学的条件下で当初の化合物に変換することができる、化学修飾された誘導体)。例えば、プロドラッグは、活性剤の不活性形態であってもよい。生理学的条件下、プロドラッグは、化合物の活性形態に変換されてもよい。プロドラッグは、例えば窒素原子上の1個または2個の水素原子をアシル基で置き換えることによって(アシルプロドラッグ)またはカルバメート基で置き換えることによって(カルバメートプロドラッグ)形成されてもよい。プロドラッグに関するより詳細な情報は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるFleisherら、Advanced Drug Delivery Reviews 19巻(1996年)115頁[1]に見出される。「誘導体」という用語は、全ての溶媒和物、例えば水和物または付加物(例えば、アルコールとの付加物)、活性代謝産物、および親化合物の塩を記述するのにも使用される。調製され得る塩のタイプは、化合物内の部分の性質に依存する。例えば、酸性基、例えばカルボン酸基は、例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩、また同様に、生理学的に許容される第4級アンモニウムイオンとの塩、ならびにアンモニアおよび生理学的に許容される有機アミン、例えばトリエチルアミン、エタノールアミン、またはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどとの酸付加塩)を形成することができる。塩基性基は、例えば、塩酸、硫酸、もしくはリン酸などの無機酸との酸付加塩、または有機カルボン酸およびスルホン酸、例えば酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、もしくはp−トルエンスルホン酸との酸付加塩を形成することができる。塩基性基および酸性基を同時に含有する化合物、例えば塩基性窒素原子に加えてカルボキシル基を含有する化合物は、双性イオンとして存在することができる。塩は、当業者に公知の通常の方法によって、例えば化合物を、溶媒または希釈剤中で無機もしくは有機酸または塩基と組み合せることによって、あるいは陽イオン交換または陰イオン交換によってその他の塩から、得ることができる。
【0040】
本明細書で使用される「阻害剤」または「アンタゴニスト」という用語は、生物学的プロセスが生じるのを防止し、かつ/または生物学的プロセスの出現の速度を遅くしかつ/または生物学的プロセスの出現の程度を遅くする、任意の薬剤を指す。プロセスは、瘢痕化などの一般的なものであってもよく、例えばサイトカインの放出をもたらす分子プロセスなどの特定の生物学的動作を指してもよい。
【0041】
本明細書で使用される「アゴニスト」という用語は、生物学的プロセス、または生物学的プロセスの出現の速度もしくは程度を刺激する任意の薬剤を指す。プロセスは、瘢痕化などの一般的なものであってもよく、例えばサイトカインの放出をもたらす分子プロセスなどの特定の生物学的動作を指してもよい。
【0042】
本明細書で使用される「抗微小管剤」という用語は、例えば重合の防止または安定化を通して微小管の機能を損なう、任意のタンパク質、ペプチド、化学物質、またはその他の分子を含むと理解すべきである。微小管の重合を安定化させる化合物を、本明細書では「微小管安定化剤」と呼ぶ。例えば、共に参照により本明細書に組み込まれる、Smithら(Cancer Lett. 79巻(2号):213〜219頁、1994年)[2]およびMooberryら、(Cancer Lett. 96巻(2号):261〜266頁、1995年)[3]により記述されるアッセイを含む、広く様々な方法を利用して、特定の化合物の抗微小管活性を決定してもよい。
【0043】
本明細書に列挙される任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、または比の範囲は、他に指示されない限り、その範囲内の任意の整数およびその分数、例えば整数の10分の1および100分の1の、濃度、パーセンテージ、または比を含むと理解されたい。さらに、ポリマーサブユニット、サイズ、または厚さなどの任意の物理的特徴に関する本明細書に列挙される任意の数値範囲は、他に指示しない限り、列挙された範囲内の任意の整数を含むと理解されたい。上記使用された、および本明細書の他の箇所で使用される、「a」および「an」という用語は、列挙される成分の「1つまたは複数」を指すことを理解すべきである。例えば、「a」ポリマーは、1種のポリマー、または2種もしくはそれよりも多くのポリマーを含む混合物の、両方を指す。本明細書で使用される「約」という用語は、±15%を意味する。
【0044】
本明細書で使用される「生体材料」という用語は、合成のまたは起源が天然の任意の物質(薬物以外)または物質の組合せであって、身体の任意の組織、器官、もしくは機能を処置し、増強し、もしくは置き換えるシステムの全体としてまたは一部として、任意の期間にわたり使用することができるものを指す。
【0045】
本明細書で使用される「生体適合性」という用語は、特定の適用例での適切な宿主応答により実行する材料の能力を指す。
【0046】
本明細書で使用される「弾性限界」または「降伏強さ」という用語は、材料が可塑的に変形し始める応力を指す。降伏点の前に、材料は、弾性的に変形することになり、加えられた応力が除去されるとその当初の形状に戻ることになる。降伏点を通過すると、変形のいくらかの部分は永続的になりかつ不可逆的になる。
【0047】
本明細書で使用される「弾性」という用語は、完全な回復可能性と共にそこに力が加えられると非常に大きい変形能を持つ材料を指し、これらの力が除去されると物体がその初期形状およびサイズに戻ることになることを意味する。そのような特徴は、ゴム弾性とも呼ばれてきた。そのような「弾性」材料の分子要件:材料はポリマー鎖からならなくてはならず、応力下で立体構造および延伸を変化させる必要がある。ポリマー鎖は、高度に柔軟性でなければならない。立体構造の変化にアクセスする必要がある(ガラス様、結晶質、剛性材料ではない)。ポリマー鎖は、網状構造で接合しなければならない。不可逆的な鎖のずれ(永久歪み)を回避する必要がある。100のモノマーのうち1つは、2つの異なる鎖を接続しなければならない。弾性ポリマーの接続(ブロックコポリマー中の共有結合、結晶質、ガラス様ドメイン)例には、ゴム、ラテックス、合成ゴム、ネオプレン、およびシリコーンなどが含まれる。
【0048】
本明細書で使用される「非弾性(non−elasticまたはnonelastic)」という用語は、力がそこに加えられたときに変形性が低いまたはない材料を指す。歪み限界を超えると、非弾性材料は不可逆的変形を経験することになる。ポリマー鎖は、柔軟性ではなく、立体構造の変化に容易にアクセスしない。これらは不可逆的な鎖のずれ(永久歪み)を受ける可能性がある。例には、ガラス、硬質プラスチック、および非晶質ガラス様ポリマーなどが含まれる。
【0049】
本明細書で使用される「半弾性」という用語は、完全な回復可能性により、力がそこに加えられたときに中程度の変形性を供えた材料を指し、これらの力が除去されたときに物体がその初期形状およびサイズに戻ることになることを意味する。いくつかの半弾性ポリマーがある。半結晶質ポリマーの例は、直鎖状ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはイソタクチックポリプロピレン(PP)である。
【0050】
本明細書で使用される「ステント」という用語は、疾患により誘発された、局在化流動狭窄を防止しまたは打ち消すために、体内の自然の通路/コンジット内に挿入される任意の人工「チューブ」を指す。この用語は、手術を目的としたアクセスが可能になるように、そのような自然のコンジットを開放させて一時的に保持するのに使用される、チューブを指してもよい。
【0051】
本明細書で使用される「シャント」という用語は、2つの領域の間で流体を移動させるための穴または通路を創出するように体内に挿入される、任意の人工「チューブ」を指す。前記チューブは、一時的に埋め込まれてもよくまたは永続的であってもよい。
【0052】
本明細書で使用される「Foleyカテーテル」という用語は、しばしば尿道を通過し膀胱に入る、柔軟性のあるチューブを指す。チューブは、その長さに沿って下向きに走る2つの個別のチャネル、または管腔を有する。一方の管腔は、その両端が開放しており、尿が排出されて収集バッグに入る。他方の管腔は、外側に弁を有し、先端がバルーンに接続される;バルーンは、滑り落ちるのを止めるために、膀胱内にあるときに滅菌水またはその他の流体/気体で膨張される。
【0053】
本明細書で使用される「カテーテル」という用語は、体腔、導管、または血管内に挿入することができる任意のチューブを指す。それによってカテーテルは、流体もしくは気体の排出、投与、または手術器具によるアクセスを可能にする。カテーテルを挿入するプロセスは、カテーテル法である。ほとんどの使用において、カテーテルは、細く柔軟性のあるチューブ(「軟質」カテーテル)であるが、いくつかの使用では、カテーテルはより太い、固体(「硬質」)カテーテルである。体内に一時的にまたは永続的に残されたカテーテルを、留置カテーテルと呼んでもよい。永続的に挿入されるカテーテルは、パームキャスと呼んでもよい。
【0054】
本明細書で使用される「PLGAまたはポリ(乳−co−グリコール酸)」という用語はコポリマーを指し、その生分解性および生体適合性により、米国食品医薬品局(FDA)により療法用デバイスとして認可されている。PLGAは、低速薬物放出に関して研究されてきた[4]。
【0055】
本明細書で使用される「ポリエチレングリコール」(PEGと省略される)という用語は、任意のポリエーテル化合物を指す。例えばPEGは、その分子量に応じてポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)として市販されている(Carbowax(登録商標))。
【0056】
本明細書に組み込まれかつ一部を形成する添付図は、本発明のいくつかの実施形態を示し、その記述と一緒に本発明の原理を説明するように働く。図は、本発明の好ましい実施形態を単に例示することを目的とし、本発明を限定すると解釈するものではない。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
a)出口ポートを有するリザーバーバルーン、
b)前記出口ポートに流体連結された少なくとも1つの管腔を含むチューブ、
c)前記チューブに流体連結されたポートを含むエンドキャップ、および
d)前記チューブの前記管腔内にあるプラグ
を含む、薬物送達のための涙器システム。
(項目2)
前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含む、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記リザーバーバルーンが、活性成分を有する組成物を含む流体をさらに含む、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記エンドキャップを前記リザーバーバルーンの外側に接続する少なくとも1つの排出トラックをさらに含む、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記プラグが前記管腔を塞ぐ、項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記プラグがシリコーンヒドロゲルを含む、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記プラグがウィッキング材料を含む、項目1に記載のシステム。
(項目8)
前記プラグが、前記リザーバーバルーンから前記エンドキャップへの流体の流量を制御する、項目3に記載のシステム。
(項目9)
前記プラグが、前記エンドキャップの表面を越えて延びる、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記プラグが、前記エンドキャップの表面を越えて1〜200ミクロン延びる、項目9に記載のシステム。
(項目11)
前記プラグが、前記エンドキャップをちょうど越えた場所から前記リザーバーバルーンまでの距離にわたる、項目1に記載のシステム。
(項目12)
前記プラグが、前記エンドキャップから前記リザーバーバルーンまでの、1/32の距離から全距離の間のどこを占有してもよい、項目1に記載のシステム。
(項目13)
前記チューブが医療グレードのシリコーンを含む、項目1に記載のシステム。
(項目14)
前記チューブが柔軟性である、項目1に記載のシステム。
(項目15)
前記プラグが無色である、項目1に記載のシステム。
(項目16)
前記プラグが着色されている、項目1に記載のシステム。
(項目17)
前記プラグが、少なくとも1種の蛍光化合物を含む、項目1に記載のシステム。
(項目18)
前記少なくとも1種の蛍光化合物が、特定の波長の光に曝露された後に蛍光を発する、項目17に記載のシステム。
(項目19)
前記リザーバーバルーンが解剖学的固定を可能にする、項目1に記載のシステム。
(項目20)
前記解剖学的固定が、システム保持フィーチャーである、項目19に記載のシステム。
(項目21)
医療グレードの材料で作製される、項目1に記載のシステム。
(項目22)
潤滑剤をさらに含む、項目1に記載のシステム。
(項目23)
前記涙器システム内への前記システムの送達を可能にするガイドワイヤーをさらに含む、項目1に記載のシステム。
(項目24)
a)出口ポートを有するリザーバーバルーン、
b)前記出口ポートに流体連結されたプラグ、および
c)前記プラグに流体連結されたポートを含むエンドキャップ
を含む、薬物送達のための涙器システム。
(項目25)
前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含む、項目24に記載のシステム。
(項目26)
前記リザーバーバルーンが、活性成分を有する組成物を含む流体をさらに含む、項目24に記載のシステム。
(項目27)
前記エンドキャップを前記リザーバーバルーンの外側に接続する少なくとも1つの排出トラックをさらに含む、項目24に記載のシステム。
(項目28)
前記プラグがシリコーンヒドロゲルを含む、項目24に記載のシステム。
(項目29)
前記プラグがウィッキング材料を含む、項目24に記載のシステム。
(項目30)
前記プラグが、前記リザーバーバルーンから前記エンドキャップまでの流体の流量を制御する、項目26に記載のシステム。
(項目31)
前記プラグが、前記エンドキャップの表面を越えて延びる、項目24に記載のシステム。
(項目32)
前記プラグが、前記エンドキャップの表面を越えて1〜200ミクロン延びる、項目31に記載のシステム。
(項目33)
前記プラグが柔軟性である、項目24に記載のシステム。
(項目34)
前記プラグが無色である、項目24に記載のシステム。
(項目35)
前記プラグが着色されている、項目24に記載のシステム。
(項目36)
前記プラグが、少なくとも1種の蛍光化合物を含む、項目24に記載のシステム。
(項目37)
前記少なくとも1種の蛍光化合物が、特定の波長の光に曝露された後に蛍光を発する、項目36に記載のシステム。
(項目38)
前記リザーバーバルーンが解剖学的固定を可能にする、項目24に記載のシステム。
(項目39)
前記解剖学的固定がシステム保持フィーチャーである、項目38に記載のシステム。
(項目40)
医療グレードの材料で作製される、項目24に記載のシステム。
(項目41)
潤滑剤をさらに含む、項目24に記載のシステム。
(項目42)
前記涙器システム内への前記システムの送達を可能にするガイドワイヤーをさらに含む、項目24に記載のシステム。
(項目43)
a)
i)涙点、涙管、および涙嚢を含む対象、
ii)薬物送達のための涙器システムであって、
A)出口ポートを有するリザーバーバルーンであって、前記涙嚢内に挿入することができるリザーバーバルーン、
B)前記出口ポートに流体連結された少なくとも1つの管腔を含むチューブであって、前記涙管の少なくとも1つを通って前記弾性リザーバーから延びるチューブ、および
C)前記チューブの末端に流体連結されたポートを含むエンドキャップであって、眼の涙膜に接触して前記涙点とのインターフェースをとるエンドキャップ、および
D)前記システムの前記チューブの前記管腔内にあるプラグ
を含む、薬物送達のための涙器システム
を提供するステップと、
b)涙器システムに薬物送達のための前記涙器システムを挿入するステップと、
c)前記リザーバーバルーンに、少なくとも1種の活性成分を有する組成物を充填するステップと、
d)薬物送達のための前記涙器システムを使用して前記対象に前記組成物を投与するステップと
を含む、処置の方法。
(項目44)
前記システムが、前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
少なくとも1種の活性成分を有する前記組成物が、治療剤をさらに含む、項目43に記載の方法。
(項目46)
充填するステップが、少なくとも1種の活性成分を有する前記組成物を前記チューブを通して導入することを含む、項目43に記載の方法。
(項目47)
ステップc)が、前記プラグに取着された前記ガイドワイヤーを除去することをさらに含み、前記プラグは、前記システムの前記エンドキャップに至るまで前記システムの前記管腔内に最終位置を得る、項目44に記載の方法。
(項目48)
前記プラグが、前記システムからの前記組成物の流れを調節する、項目43に記載の方法。
(項目49)
前記管腔内での前記プラグの位置決めが、前記システムからの前記組成物の流れを調節する、項目43に記載の方法。
(項目50)
前記活性成分が、人工涙液、緑内障点眼液、抗炎症剤、非ステロイド剤、抗生剤、生物学的製剤、タンパク質、アプタマー、核酸、サイトカイン、血漿、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、プロスタグランジン類似体、ベータ遮断薬、アルファ−アゴニスト、および抗VEGF剤からなる、項目43に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、下位涙点に挿入される、従来技術の涙点プラグの例を示す。いくつかの涙点プラグは、医薬放出プラットフォームとして使用されるが、非常に限定されたリザーバーを含有し、涙膜との自然の相互作用と、治療剤の分散のための涙の分布とに依存する。
【0058】
図2図2は、本発明の設計の実施例を示す。プラグピーク9は、1から200ミクロンでのエンドキャップ6の表面からのものである。このため、プラグ8と眼の涙膜との間の直接的な接触が可能になる。チューブ10の管腔11は、シリコーンヒドロゲルプラグ8によって占有される。プラグ8は、かなりの長さにわたり管腔11を塞ぎ、リザーバーバルーン2から眼の涙膜への医薬の移動を支援する吸上げデバイスとして作用してもよい。プラグ8は流量も制御する。
【0059】
図3図3は、排出トラック13を備えた本発明の設計の一実施例を示す。排出トラック13
【0060】
図4図4は、プラグのない、本発明の設計の実施例を示す。チューブ10の管腔11は、ポート7を経てエンドキャップ6に接続され、出口ポート3を経てリザーバーバルーン2に接続される。
【0061】
図5図5は、チューブ10の管腔11内にはプラグがなく、むしろデバイス/システム内を縫って進むガイドワイヤー16を有し、このガイドワイヤー16は、挿入プロセス中、およびリザーバーバルーン2が医薬20により膨張しかつプラグ8が設置される前に、デバイス/システムを案内するものである、本発明の設計の実施例を示す。チューブ10の管腔11は、ポート7を経てエンドキャップ6に接続され、出口ポート3を経てリザーバーバルーン2に接続する。
【0062】
図6図6は、リザーバーバルーン2が医薬20により膨張し、プラグ8が設置された、本発明の設計の実施例を示す。
【0063】
図7図7は、涙器システムの図を示す。この図において、上方および下方涙管は、鼻涙管内に集束する。デバイス/システムは、涙嚢内に位置付けられたリザーバーから延び、チューブ10またはプラグ8を介してリザーバー2から上方または下方涙管に延びて、涙器点(涙点)とのインターフェースをとるエンドキャップ6で終わり、プラグはエンドキャップ6を越えて延びてもよくかつ眼の涙膜とのインターフェースをとってもよいものが考えられる。
【0064】
図8図8A〜Dは、デバイス/システムが、涙器システム、涙器システムの部分、および膨張したデバイス/システムそのものに適正に挿入された、充填済みリザーバーバルーン2の実施例を示す。図8Aは、各涙点ごとに任意選択の2つのチューブ10を備えた、膨張したデバイス/システムそのものを示す。図8Bは、デバイス/システムが相互作用する涙器システムの主要部分を示す。図8Cは、充填されたリザーバーバルーン2と共に所定位置にあるデバイス/システムの実施形態を示し、チューブ10は、下方涙管を経て下方涙点に延びている。図8Dは、ひと組のチューブ10が、上方(上位)涙点内のエンドキャップ6で終わる、充填済みリザーバーバルーン2と共に所定位置にあるデバイス/システムを示す。
【0065】
図9図9は、本発明の一実施形態に関するリザーバーバルーン2の膨張/膨張曲線の実施例を示す。
【0066】
図10図10は、涙点に進行したデバイスを示す。
【0067】
図11図11は、下方涙管を経て涙嚢内に進行したデバイスを示す。
【0068】
図12図12は、涙嚢内で膨張したデバイスリザーバーを示す。
【0069】
図13図13は、デバイスの遠位端から引き込まれた流量制限プラグを示す。
【0070】
図14図14は、所定位置に流量制限プラグを残して完全に引き込まれた挿入カテーテルを示す。
【0071】
図15図15は、所定位置に流量制限プラグ8を残して完全に引き込まれた挿入カテーテルであって、プラグ8が、エンドキャップ6からリザーバーバルーン2の間の全長を占有している挿入カテーテルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
(参照符号のリスト)
1 デバイス/システム
2 リザーバーバルーン
3 出口ポート
4 保護スリーブ
5 柔軟性「アンダーワイヤー」または押さえ構造
6 エンドキャップ
7 ポート
8 プラグ/流量制限棒
9 プラグピーク
10 チューブ
11 チューブの管腔
12 2次チューブ
13 排出トラック/チューブ
14 排出トラック/チューブのエンドキャップ開口
15 排出トラック/チューブの涙嚢開口
16 ガイドワイヤー
17 ガイドワイヤー中心開口管腔
18 2次ガイドワイヤー
19 挿入カテーテル
20 活性成分を有する医薬/流体組成物
【0073】
(発明の詳細な説明)
眼の感染、炎症、緑内障、およびその他の眼疾患または障害を処置するために、眼に薬物を投与することがしばしば必要とされる。薬物送達の従来の方法は、眼の表面への局所滴下施用による。局所点眼液は有効であるが、非効率的である可能性がある。一例として、点眼液を眼に滴下した場合、結膜嚢(即ち、眼と瞼の間のポケット)からしばしば溢れ、眼瞼縁からの流出に起因して液滴のかなりの部分が失われ、頬にこぼれる。加えて、眼の表面に留まる液滴の大部分は、涙小管の内部にかつ涙小管を経て洗い落とされ、それによって、眼を処置することができる前に薬物の濃度が希釈される。さらに、局所的に施用された薬物はしばしば、施用後約2時間にわたりピーク眼球作用を発揮し、その後、それほどあることではないが、所望の薬物療法上の利益を維持するために追加の薬物施用が投与されるべきである。
【0074】
眼の管理の難しさを悪化させることに、患者は、自分の点眼液を処方通りに使用しないことが多い。この不十分なコンプライアンスは、例えば、点眼液によって引き起こされる初期の刺すようなまたは焼けるような感覚と、患者による経験とに起因する可能性がある。自身の目に点眼液を点眼することは、部分的には眼を保護するための正常反射により難しくなる可能性がある。したがって、1つまたは複数の液滴を眼に点せない可能性がある。高齢の患者は、関節炎、不安定性、および視力の低下に起因して、液滴を点眼する際に追加の課題を有する可能性がある。小児および精神医学的集団も同様に難題を課す。
【0075】
ドライアイの状態は、眼から涙小管の内部へのおよび涙小管を通る涙の流れを遮断することによって処置されてきた。この処置では、涙点開口を封止させるため、涙点開口が閉じるように縫うことによってまたは電気もしくはレーザー焼灼を使用することによって、小管道を閉鎖した。そのような処置は、ドライアイを処置するために涙の流れを遮断するという望ましい結果をもたらすことができるが、残念ながら、再建手術なしで可逆的にすることができない。
【0076】
眼の管理とは異なる分野において、呼吸関連(例えば、アレルギー)疾患または障害の制御は、医薬の反復手動消化またはその他の摂取をしばしば必要とし、したがって患者のコンプライアンスの欠如または非局在化薬物送達に起因して、効果的ではない可能性がある。
【0077】
(療法上のデバイス)
眼および涙器システムに関連ある状態に対処するように設計された、様々な療法上のデバイスがある。それらの中で主要なものは、涙液涙点プラグである。有用な特徴を有するがそれでも本発明の利点を有していない、いくつかのデバイスがある。
【0078】
一参考文献において、2009年4月29日に出願されたSim, S.らの「Composite Lacrimal Insert and Related Methods」、米国特許出願第20100034870号出願第12/432,553号[5]は、QLTにより所有される、除去可能な薬物放出涙液インプラントを開示する。プラグは、対象の涙液涙点に埋め込まれる。そのような涙点プラグは、薬物コアの溶解のための涙の移動に応じて、涙膜への送達により浸食する薬物コアを含む。薬物コアは定住的であり、涙は、薬物分布のためにリザーバーの中および外に流れる必要がある。参考文献は、本発明の涙嚢内に位置付けられたリザーバーに接続される延長プラグについて、記述していない。
【0079】
別の参考文献では、1993年3月1日に出願されたHubbell, J. A.らの「Photopolymerizable Biodegradable Hydrogels as Tissue Contacting Materials and Controlled−Release Carriers」、米国特許第5,410,016号[6]は、Ocular Therapeutixにより所有される、涙点プラグ送達にも使用される生分解性PEGをベースにしたシステムについて開示する。参考文献は、本発明の涙嚢内に位置付けられたリザーバーに接続される延長プラグについて、記述していない。
【0080】
別の参考文献では、2008年1月30日に出願された、Rodstrom, T. R.らの「Punctal Plugs and Methods of Delivering Therapeutic Agents」、米国特許出願第20080181930号[7]は、シリコーンと、外面の一部にパリレンポリマーがコーティングされた眼科用薬物とのマトリックスを含む、別の涙点プラグ薬物送達システムについて開示する。薬物送達の方法は、眼の涙膜への薬物の溶解を利用して、受動的である。しかしプラグおよび延長部分には、本発明のリザーバーがない。
【0081】
別の参考文献では、2007年6月7日に出願されたBorgia, M. J.らの「Punctal Plugs for the Delivery of Active Agents」、米国特許出願第20070298075号[8]は、低速放出薬物送達の、涙点プラグの別の例を開示する。参考文献は、本発明のリザーバーについて記述していない。
【0082】
別の参考文献では、2002年7月25日に出願されたBrubaker, M. J.らの「Sustained Release Drug Delivery Devices」、WIPO特許出願WO/2002/056863出願PCT/US2001/048804[9]は、医薬の分布のための別のプラグデバイスを開示する。参考文献は、本発明の涙嚢内に位置付けられたリザーバーに接続された、延長プラグについて記述していない。
【0083】
別の参考文献では、2010年2月23日に出願されたRapacki, A. R.らの「Lacrimal Implants and Related Methods」、米国特許出願US 2010−0274204 Al[10]は、挿入したときに涙管を下向きに延びる追加の固着アームを供えた涙点プラグを延長した型の、別の涙液薬物送達デバイスを開示する。参考文献は、薬物含有リザーバーとしてではなくデバイスを位置決めする構造要素として、「バルーン」を使用することについて記述する。参考文献は、本発明の涙嚢内に位置付けられたリザーバーについて記述していない。
【0084】
別の参考文献では、2000年4月7日に出願されたCohan, B. E.の「Opthalmic Insert and Method for Sustained Release of Medication to the Eye」、欧州特許EP1891942B1出願EP1178779A1[11]は、涙管閉塞の処置のために涙管(涙液排出経路)を挿管するための装置を開示する。さらに、デバイスの内部は、デバイスの特定の幾何形状に基づいて制御された様式で、デバイス上の細孔を通して放出され得る医薬のリザーバーとして作用してもよい。この制御された速度は、医薬の涙による溶解と、涙膜によるリザーバーの浸透とに依然として基づく。参考文献は、本発明の涙嚢内に位置付けられたバルーンリザーバーまたはリザーバーについて記述していない。
【0085】
別の参考文献では、Murube, J.ら(2003年)のSubcutaneous Abdominal Artificial Tears Pump−Reservoir for Severe Dry Eyes、Orbit 22巻(1号)、29頁[12]は、人工涙液を、深刻なドライアイの患者の眼の表面に提供するために、腹部の皮下組織下に配置された、埋め込み型ポンプ−リザーバーユニットの研究を開示する。このシステムはリザーバーを設けているが、システムは電気ポンプを使用し、リザーバーの場所は涙嚢から離れている。参考文献は、本発明の涙嚢内に位置付けられたバルーンリザーバーまたはリザーバーについて記述していない。
【0086】
別の参考文献、Freilichによる米国特許出願第11/641,903号[13]には、下記の内容を含むがそれらに限定することのない、使用不可能になる多くの制約がある:
【0087】
1. 面板は、流出に抵抗するための制御部位である。これは実際面で作用しないと考えられる。流れを制限するために、上述のような本発明のデバイスにおけるもののように、流れに対してのより大きい(より長い)障壁が必要になると考えられる。従来技術は、何が流れを推進しているかに関して非常に曖昧である。流体を押し出す活性圧力があるシステムでは、抵抗が、システム内の圧力降下に依存する。例えば圧力降下が低下するほど、必要とされる抵抗が低下する。事実上、長い「低」抵抗プラグと短い「高」抵抗プラグの両方が、働くと考えられる。両方の手法には利点がある。第1に、長い低抵抗プラグは、バルーンの推進圧力に依存しないと考えられる。このことは、プラグを通る流量がバルーンから出る別の推進物を有する場合(例えば、毛管など)、良好になる可能性がある。第2に、短い高抵抗プラグは、抵抗を上回る単純な圧力降下により潜在的に推進される。抵抗の長さは、流れ抵抗における重要な因子であるが、等しく重要なのは圧力降下(圧力が流れを推進する場合)および拡散速度(圧力に無関係な流れ)である。Freilich[13]は、これら2つのタイプの圧力を区別していない。本発明は、代替例として、長く、より低い抵抗のプラグと、小さい高抵抗プラグとの両方を企図し、または一実施形態では、組合せを企図する。
【0088】
2. Freilichデバイスは、チューブに接続され次いで流量制限板に接続された、拡張性リザーバーを含む。Freilich出願に記述されるチューブは、信頼性ある埋め込みおよび信頼性ある流れが可能ではなくなる。このことは、本発明との、極めて重要な相違である。本発明のデバイスは、面板にリザーバーを接続するチューブを単に含むだけではない。一実施形態では、本発明のデバイスは、プラグ(一実施形態では、シリコーンヒドロゲル)を、リザーバーから、面板であってもよいエンドキャップに至るまで(またはそこに至るほとんど)延ばすことが必要になる。したがって本発明は、エンドキャップにリザーバーを接続するチューブを単に有するだけではなく、流量制限プラグまたは棒を有することになる。このことは、バルーンから涙の表面までの吸上げ材としてもヒドロゲルを作用させることになり、埋込み後のいかなる捩じれも防止することになる。Freilich出願[13]は、「デバイス300の構造の結果、捲縮輪200の開口202からステント310の全長を経て延びる開放チャネルまたは経路が提供される」と述べていることにも留意すべきである。このことは、Freilichデバイスの焦点である。本発明は、上述のこの制限を回避する。
【0089】
3. Freilichは、涙点および眼に対して存在する捲縮輪について教示する。本発明のデバイスは、エンドキャップの境界の実質的に後ろにあるヒドロゲルプラグを有することになり(ドームアウト)、したがって眼の表面に直接接触するようになりかつ涙膜への直接的な薬物の交換が可能になる。したがって、本発明の送達のメカニズムは、バルーンからエンドキャップへの薬物の移動と、それだけではなくヒドロゲルから涙への薬物の浸透圧推進との、両方からなる。Freilich[13]には、穴の使用が一貫して作用しなくなる状態で、眼との医薬連絡を可能にする穴および開口に関する有意な考察がある。本発明は、上記記述によりそれを回避する。
【0090】
4. Freilich特許は、拡張性リザーバーについて論じている[13]。(Cohanらの米国特許第6,196,993号[14])のようなバルーン様メカニズムについては教示していない。本発明は、低圧力として働くバルーン様リザーバーについて教示する(Freilichは、ポンプ様メカニズムを開示し、「拡張性パウチが医薬で満たされ、その後、医薬は、患者により加えられた指圧を通して、および/または小型ポンプの支援により、鼻涙嚢に自然に流される(例えば、毛管作用を経て)」)。さらに、Freilich特許は、バルーンからの圧力推進流について記述しておらず、「ポンピングメカニズム」について明示する。本発明のバルーンリザーバーは、流体の推進力が最小限になるように弾性である。
【0091】
5. Freilich[13]がデバイスの充填を用いる方法は、実用的応用を有することが明らかではないが、それは、内部に到達し次いで半分ほど進んだ後に充填を行う軟質先端を備えた注射器の使用が、バルーン内に形成される泡をもたらすことになるからである。本発明は、下から上に充填することが重要である方法を企図する。泡は、排除することができる。このシステム内に泡を有することにより、信頼性が不十分になり、流れることさえできなくなる。
【0092】
(例示的な実施形態の詳細な説明)
本発明は、薬物送達のための涙器システムとして設計された、埋め込み型医療デバイスに関わる。
【0093】
一実施形態では、本発明は、シリコーンヒドロゲルプラグ8を備えた「プランジャー」タイプのデバイスを含む。デバイス1は、涙管を経て涙点に延びるチューブ10に連結された、リザーバーバルーン2を含んでいてもよい。チューブ10は、涙点に接しておりかつチューブ10が涙管内に引き込まれるのを防止する、エンドキャップ6または面板を含んでいてもよい。ガイドワイヤー16が、デバイス1の挿入のために設けられていてもよい。一実施形態では、デバイス1は、挿入カテーテル19を使用して涙器システム内に前進する。デバイス1が挿入されたら、リザーバーバルーン2に流体20を充填し、シリコーンヒドロゲル8または類似の材料をデバイス1から引き込んで、エンドキャップ6に繋がるチューブ10の管腔11を塞いでもよく、したがって涙膜への流体20の排出が制御される。一実施形態では、デバイス1は、下から上にリザーバーバルーン2を充填し次いでプラグ8を後に残すための方法を可能にする。プラグ8は、エンドキャップ6内に全体的にではなく、デバイスのチューブ10内に実質的に在ってもよい。プラグ8の長さは、送達を制御するのに使用されてもよいが、それはちょうどエンドキャップ6にある何かが外傷に開放される可能性がありかつ複雑であるために空間がほとんど残らないからである。一実施形態では、プラグ8は、エンドキャップ6をちょうど越えた場所からリザーバーバルーン2までの距離にわたる。一実施形態では、プラグ8は、エンドキャップ6からリザーバーバルーン2までの、1/32の距離から全距離の間のどこを占有していてもよい。一実施形態では、チューブ10は、医療グレードシリコーンを含む。一実施形態では、デバイス1はチューブ10を持たず、むしろエンドキャップ6からリザーバーバルーン2までの距離にわたるプラグ8のみ含む。
【0094】
一実施形態では、プラグ8の長さは変わってもよい。一実施形態では、プラグ8の長さは、リザーバーバルーン2に至るまでおよびそれらの間のいずれかの場所で、面板などのエンドキャップ6とは異なっていてもよい。一部の実施形態では、プラグ8は、エンドキャップ6とほぼ同一平面にある。一部の実施形態では、プラグ8は、プラグピーク9を含むように約1〜200ミクロン、エンドキャップ6を過ぎて遠位方向に延びる。エンドキャップ6は、チューブ10に一体的に接続されてもよい。他の実施形態では、エンドキャップ6は、接着剤または1つもしくは複数の固定具によりチューブ10に連結される。一部の実施形態では、エンドキャップ6は1〜2.5mmの直径を有していてもよい。長い寸法が2mmであり短い寸法が1mmである楕円であってもよい。円形または楕円または四角形であってもよい。エンドキャップ6の高さは、20ミクロンから300ミクロンに及んでもよい。一部の実施形態では、エンドキャップ6は、その端部が、頂点の300μmから縁部の10ミクロンまで先細りになっていてもよい。流量制限プラグ8は、プラグピーク9を含むように、エンドキャップ6の頂点を過ぎて1μmから50μm突出していてもよい。一部の実施形態では、涙膜との接触を強化するために、プラグの突出部分がエンドキャップ6の頂点からエンドキャップ6の縁部の1つに向かって変位していてもよい。一実施形態では、プラグ8がシリコーンヒドロゲルプラグである。一実施形態では、プラグ8が非シリコーンヒドロゲルプラグである。一実施形態では、プラグ材料は、ナノ球体、微小球、フィルター膜、多孔質膜、フォームなどの多孔質材料、および流体を周囲に流すことになるテクスチャ付き外面を備えたポリマーなどの固体材料などを含む群から選択されてもよい。一実施形態では、プラグ8は、溝を備えた材料を含む。一実施形態では、前記溝は、流れに関する流量制限蛇行経路である。一実施形態では、プラグ8は閉塞メカニズムを提供する。一実施形態では、プラグ8は、無色であってもよく、または青、赤、もしくは黄色であってもよい。一実施形態では、プラグ8は、周囲の材料および組織との区別を行うために蛍光体を含有する。一実施形態では、シリコーンヒドロゲルプラグ8は、特定の波長の光に曝露された後で蛍光を発することが可能な材料を含有していてもよい。一実施形態では、プラグ8は、エンドキャップ6をちょうど越えた場所からリザーバーバルーン2までの距離にわたる。一実施形態では、プラグ8は、エンドキャップ6からリザーバーバルーン2までの、1/32の距離から全距離の間のどこを占有していてもよい。一実施形態では、チューブ10は、医療グレードのシリコーンを含む。一実施形態では、デバイス1にはチューブ10がなく、むしろエンドキャップ6からリザーバーバルーン2までの距離にわたるプラグ8を含むだけである。一実施形態では、プラグ8は流量制限棒を含む。
【0095】
(デバイスの埋め込み)
涙器システム内に効果的に配置されかつ治療剤を眼の涙膜に適正に送達するように、デバイスは、蛇行性の狭い解剖学的構造を追跡することによって送達可能であってもよい。このようにするには、寸法を非常に小さくしかつ非膨張状態にしなければならない(例えば、直径<1mm)。一実施形態では、本発明は、膨張デバイスと組み合わされたガイドワイヤー16を含む、送達システムをさらに含む。一実施形態では、本発明は、挿入カテーテル19をさらに含む。一実施形態では、前記ガイドワイヤー16は、中心開放管腔17を含む。一実施形態では、前記中心開放管腔17は柔軟性である。一実施形態では、前記中心開放管腔17によって、流体をバルーンリザーバー2内の遠位に直接注入することが可能になる。別の実施形態では、送達システムは、デバイスの内部特性によって強化される。一実施形態では、デバイスは、前記デバイスの外部長さを延びる2次ガイドワイヤー18を含む。一実施形態では、デバイスは、リザーバーバルーン2に押さえ構造5を与える、剛性であるが柔軟性のある「アンダーワイヤー」をさらに含む。一実施形態では、デバイスにいくらかのプッシュ能力を与える、剛性であるが柔軟性のある「アンダーワイヤー」があるので、長さを移動するのに2次ガイドワイヤー18を必要としない。この実施形態では、膨張デバイスが近位でエンドキャップに接続する。
【0096】
デバイスは、図10図15に示されるように、挿入カテーテルを使用して挿入されてもよい。図10は、涙点内に前進したデバイス1を示す。図11は、下方涙管を経て涙嚢内に前進するデバイス1を示す。図12は、涙嚢内で膨張したデバイス1のリザーバーバルーン2を示す。デバイス1のリザーバーバルーン2は、ガイドワイヤー16またはデバイス管腔11のいずれかの管腔を通して膨張する。図13は、デバイス1の遠位端から引き込まれる流量制限プラグ8を示す。図14は、挿入カテーテル19、およびガイドワイヤー16であって、完全に引き込まれて流量制限プラグ8を所定位置に残すものを示す。図15は、挿入カテーテル19およびガイドワイヤー16が完全に引き込まれて所定位置に流量制限プラグ8を残す型のデバイスを示し、プラグ8は、エンドキャップ6からリザーバーバルーン2までの全長を占有する。
【0097】
本発明の涙液薬物送達システムは、in situの間に膨張性であってもよく、適正量の薬物を含有することが可能である。このようにするには、かつ初期低プロファイルサイズを維持するには、バルーンリザーバーをその非膨張状態から拡張させて、含有される連続送達をもたらすのに十分な薬物を充填してもよい。一実施形態では、前記バルーンリザーバーの拡張が少なくとも500%である。一実施形態では、前記膨張済みバルーンリザーバーの、そのような体積は、少なくとも100マイクロリットルである。一実施形態では、前記バルーンリザーバーがシリコーンを含む。シリコーンは、非常に低い圧力で高い延び膨張を有するので、本出願において特に良好である。初期試験は、6psi未満のピーク膨張圧力を示した(例えば、図9参照)。必要とされる低速流量と比較した場合、バルーン圧力を提供することが推進力を含むことは、重要な考慮事項である。推進圧力が低下するにつれ、その流量に達するのに必要なプラグによって提供される抵抗を創出することが、より容易になると考えられる。
【0098】
一実施形態では、本発明は、a)i)涙点、涙管、および涙嚢を含む対象、ii)涙器システム薬物送達デバイスであって、A)出口ポートを有するリザーバーバルーンであって、前記涙嚢内に挿入することができるリザーバーバルーン、B)前記出口ポートに流体連結された少なくとも1つの管腔を含むチューブであって、涙管の少なくとも1つを通って前記弾性リザーバーから延びるチューブ、C)前記チューブの末端に流体連結されたポートを含むエンドキャップであって、眼の涙膜に接触して前記涙点とのインターフェースをとるエンドキャップ、およびD)デバイスの前記チューブの管腔内にあるプラグを含む涙器システム薬物送達デバイスを用意するステップと、b)涙器システムに前記薬物送達デバイスを挿入するステップと;c)前記リザーバーバルーンに、少なくとも1種の活性成分を有する組成物を充填するステップと;d)前記涙器システム薬物送達デバイスを使用して前記対象に前記組成物を投与するステップとを含む、処置の方法に関する。一実施形態では、前記デバイスは、前記プラグに取着されたガイドワイヤーをさらに含む。一実施形態では、少なくとも1種の活性成分を有する前記組成物は、治療剤をさらに含む。一実施形態では、充填は、少なくとも1種の活性成分を有する前記組成物を前記チューブを通して導入することを含む。一実施形態では、ステップc)は、前記プラグに取着された前記ガイドワイヤーの除去をさらに含み、前記プラグは、前記デバイスのエンドキャップに至るまで前記デバイスの管腔内に最終位置を得る。一実施形態では、前記デバイスは、前記エンドキャップを前記リザーバーバルーンの外側に接続する少なくとも1つの排出トラックをさらに含む。一実施形態では、前記排出トラックは、涙を眼の表面から涙嚢内に、それを越えて流すように設計される。一実施形態では、前記プラグは、前記デバイスからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、前記管腔内での前記プラグの位置決めは、前記デバイスからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、プラグは、エンドキャップをちょうど越えた場所からリザーバーバルーンまでの距離にわたる。一実施形態では、プラグは、エンドキャップからリザーバーバルーンまでの、1/32の距離から全距離の間のどこを占有していてもよい。一実施形態では、チューブは、医療グレードのシリコーンを含む。一実施形態では、デバイスにはチューブがなく、むしろエンドキャップからリザーバーバルーンまでの距離にわたるプラグのみ含む。一実施形態では、プラグは流量制限棒を含む。一実施形態では、前記ガイドワイヤーは、中心開放管腔を含む。一実施形態では、前記ガイドワイヤーは、前記デバイスを所定位置に送達するために、前記デバイスの管腔を占有する。一実施形態では、前記中心開放管腔は柔軟性である。一実施形態では、前記中心開放管腔により、バルーンリザーバーの遠位に直接流体を注入することが可能になる。別の実施形態では、送達システムは、デバイスの内部特性によって強化される。一実施形態では、デバイスは、前記デバイスの外部長さを延びる2次ガイドワイヤー18を含む。一実施形態では、デバイスは、リザーバーバルーンに押さえ構造を与える、剛性であるが柔軟性の「アンダーワイヤー」をさらに含む。一実施形態では、膨張デバイスは、エンドキャップの近位に接続する。一実施形態では、リザーバーバルーンが実質的に弾性である。一実施形態では、リザーバーバルーンが半弾性である。一実施形態では、リザーバーバルーンが実質的に非弾性である。一部の実施形態では、デバイスは、前記リザーバーバルーン上に配置された保護スリーブを含む。一実施形態では、前記スリーブは、漏れが鼻管またはその他の組織区画に進入するのを防止する。一実施形態では、前記デバイスは、使用者(医師または患者)による検出および位置の確認が可能になるように、蛍光材料または着色剤を含有する。一実施形態では、方法は、前記リザーバーバルーンに、治療剤または医薬を充填することをさらに含む。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、眼の周囲の洞内に埋め込まれる。一実施形態では、涙点部分またはエンドキャップは、リザーバーバルーンへの医薬の充填を可能にするが、リザーバーバルーンは洞内に在り、薬物を、プラグを通して眼の涙膜に送達することが可能になる。一実施形態では、前記バルーンリザーバーの拡張が少なくとも500%である。一実施形態では、前記バルーンリザーバーの拡張が少なくとも700%である。一実施形態では、前記膨張したバルーンリザーバーのそのような体積は、少なくとも100マイクロリットルである。このようにすることができるバルーンに多くのタイプはない。一実施形態では、前記バルーンリザーバーはシリコーンを含む。一実施形態では、前記リザーバーバルーンは、解剖学的固定を可能にする。一実施形態では、固定は、近位総涙小管の直径を越えて膨張するバルーンによって実現され、したがって、元の近位涙液流出システム内への押出しが防止される。一実施形態では、前記解剖学的固定は、デバイス保持フィーチャーである。一実施形態では、前記プラグは、前記デバイスからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、前記管腔内での前記プラグの位置決めは、前記デバイスからの前記組成物の流れを調節する。一実施形態では、前記活性成分は、人工涙液、緑内障点眼液、抗炎症剤、非ステロイド剤、抗生剤、生物学的製剤、タンパク質、アプタマー、核酸、サイトカイン、血漿、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、プロスタグランジン類似体、ベータ遮断薬、アルファ−アゴニスト、および抗VEGF剤からなる。一実施形態では、前記デバイスから出る前記流体の流れは、処置が必要とされないと考えられる(例えば睡眠中)、1日の所与の時間での流れが減少するように、操作者(患者または医師)が前記プラグを調整することによって制御される。一実施形態では、リザーバーバルーンは、最短でも1週間にわたり、1日当たり0.1マイクロリットルから30.0マイクロリットルの間の固定速度で、流体+/−活性成分を眼の表面に送達することになる。別の実施形態では、送達は、最短で60日間実現される。
【0099】
一実施形態では、チューブは、ヒドロゲル、ガイドワイヤー、または膨張管腔が全てそれぞれ個別の管腔になるように、多数の管腔を有する。好ましい実施形態では、3つ(ヒドロゲルプラグ、ガイドワイヤー、およびリザーバーバルーン膨張管腔)全ては同じ管腔を利用する。一実施形態では、ヒドロゲル/プラグ材料は膨張管腔を経て送達される。一実施形態では、プラグは、長いアクセスにおいてバルーンの拡張が制限されるようにかつ代わりにバルーンの拡張を側面に推進するように、リザーバーバルーンの底部(遠位部)に繋ぎ止められる。
【0100】
デバイスが送達され充填されると、バルーンリザーバーは、治療剤を含有する流体を低速で送達する。治療剤の送達に影響を及ぼす、いくつかの実現可能な方法がある。第1に、圧力推進流に関し、圧力降下が低くなるほど、正しい流量を創出するのに必要な抵抗が低下する。第2の方法は、圧力を完全に無視する。これらの場合での、流れを推進させる方法は、流体が充填されたヒドロゲルまたはいくつかのタイプの膜フィルターで生ずる吸上げまたは輸送現象を含む。これらの手法に対する利益とは、バルーン内の圧力がもはや流量の変数ではなく、収縮中に圧力が変化する場合には一定の薬物送達をもたらすことである。一実施形態では、プラグは、リザーバーバルーンから管腔を通してデバイスのエンドキャップに至りかつ眼の涙膜を越える治療剤の送達を容易にする、流体ヒドロゲルを提供する。
【0101】
図2および図8を参照すると、一実施形態では、リザーバーバルーン2が、眼の周りの洞内に埋め込まれる。一実施形態では、涙点エンドキャップ6または遠位エンドキャップ6は、プラグ8が除去される場合、医薬によるリザーバーバルーン2に充填を可能にする。一実施形態では、リザーバーバルーン2は洞内に在り、前記リザーバーバルーン2から前記プラグ8を通して、接続されたチューブ10を通る薬物の送達が可能になる。一実施形態では、涙点部分は、涙丘を通してまたは結膜を通して埋め込まれ(ジョーンズチューブの埋め込みに類似している)、リザーバーバルーン2をプラグ8に通して薬物を眼の涙膜に直接送達することを可能にする。
【0102】
関連あるリザーバーバルーン2を備えたデバイスは、上方または下方涙点に接する涙膜に近接したエンドキャップ6のポート7からプラグピーク9が延びる状態で、遠位エンドキャップ6がプラグ8を有するように、かつ反対側の端部が、薬物またはその他の療法溶液などの活性成分で充填することができるリザーバーバルーン2(涙嚢内に位置決めされる)から構成されるように、埋め込むことができる。充填後、活性成分は、管腔11を持つ接続されたチューブ10を通して、およびプラグ8を通して、出口ポート3から、涙膜に近接するエンドキャップ6内の遠位開口ポート7まで、リザーバーバルーン2から「吸い上げられる」ことになる。一実施形態では、前記プラグ8は流量制限棒を含む。次いで薬物は、涙膜に進入してもよく、眼の組織により吸収されて様々な眼疾患を処置してもよい。デバイスは、涙管システムの末端を通して鼻腔に接続されても接続されていなくてもよい。デバイスは、眼から離れて自然の涙液流出システムに向かって涙を排出できるように、エンドキャップ6を涙嚢に接続する1つまたは複数の排出トラック13を含有していてもよい。一実施形態では、エンドキャップは、少なくとも1つの排出トラック13をデバイスのリザーバーバルーン端部に向かって接続する、少なくとも1つの追加のポートを含有する。一実施形態では、前記排出トラック13は、前記リザーバーバルーン2から外側に向かって終端して、眼の涙膜から涙嚢におよびそれを越えて排出することが可能になる。デバイスのリザーバーバルーン2からの薬物20の排出は、プラグ8の性質および位置決めに、全体として依存し得る。一実施形態では、能動ポンプを必要としない。一部の実施形態では、薬物20は、規則的かつ一貫した様式で、眼の表面に長期にわたり送達される。涙点プラグまたは涙液プラグを使用して涙膜に薬物を送達するその他のデバイスは、涙膜に接触した後に分解する薬物コアによって、そのようになされる。
【0103】
本発明を限定するものではないが、デバイス1を挿入する1つの方法は、Crawfordチューブの導入と同様に、挿入方法において涙点側に潰れたデバイスを導入することと考えられる。一実施形態では、潰れたデバイスを、挿入カテーテル19で涙器システムに導入する。デバイスの、潰れたリザーバーバルーン2は、涙点および小管を通り抜けることが考えられ、デバイスのリザーバーバルーン2は涙嚢内にあり、治療剤が充填されたときに拡張可能になる。一実施形態では、潤滑剤をシステムに連結して、より滑らかな非侵襲的挿入を可能にする。一実施形態では、デバイスは、涙器システム内への前記デバイスの送達を可能にするガイドワイヤー16をさらに含む。実施形態では、デバイスは、リザーバー2からの他のチューブ10を含有し、フラッシングおよび補充のために鼻涙管からリザーバー2へのアクセスを可能にする。一実施形態では、他のチューブには、チューブ上の小クリップ、溝の中に溝があるロックシステム、キスロック/小銭入れシステムのクロージャー、またはチューブの端部の完全閉鎖もしくは圧着を含むがこれらに限定されない様々な手段を通して、アクセスすることができる。デバイスを限定するものではないが、デバイスは、標準の解剖学的サイズの変動に順応すると考えられる。一実施形態では、デバイスは、様々なサイズおよび年齢範囲の対象に使用することができる。一実施形態では、デバイスは、鼻涙器システムに外傷のある対象、慢性鼻炎の対象、または涙嚢炎を含むがこれらに限定されないある特定の対象には、適切でない可能性がある。涙嚢炎は、鼻涙管閉塞または感染によって頻繁に引き起こされる、鼻涙嚢の炎症である。一実施形態では、デバイスは、少なくとも2カ月間または60日よりも長く機能し働く。ドライアイまたは緑内障を処置する特定の場合には、デバイス療法を少なくとも2ヵ月間続けると考えられる。白内障などの状態の術後処置の場合には、2から6週間に及ぶ、おそらくはより長い処置が行われると考えられる。
【0104】
上記にて論じたように、本発明は、涙液、眼、洞、および/または眼周囲組織系インプラントデバイスに関する組成物、方法、およびデバイスであって、単純で素直な設計と矛盾することがなくかつ現在利用可能であるよりも大量に治療剤を送達するそれらの能力を大幅に増大させるものを提供する。一態様では、本発明は、医療介入、継続医学療法、および/または審美的もしくは再建手術に使用される、様々な治療剤と、涙液、眼、洞、および/または眼周囲組織系インプラントとの組合せを提供する。一態様では、本発明は、医療介入、継続医学療法、および/または審美的もしくは再建手術に使用される、涙液、眼、洞、および/または眼周囲組織系治療剤送達デバイスである。
【0105】
一部の実施例では、抗菌性コーティングを、インプラント本体の外面の少なくとも一部の上に配置しまたは含浸させて、インプラント本体上での微生物増殖をさらに防止することができる。実施例では、抗菌性コーティングは、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、7−エチルビシクロオキサゾリジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ホウ酸、ブロノポール、塩化セチルピリジニウム、ジグルコン酸クロルヘキシジン、クロロアセトアミド、クロロブタノール、クロロメチルイソチアゾリノンおよびメチルイソチアゾリン、ジメトキサン、ジメチルオキサゾリジン、ジメチルヒドロキシメチルピラゾール、クロロキシレノール、デヒドロ酢酸、ジアゾリジニル尿素、ジクロロベンジルアルコール、DMDMヒダントイン、エチルアルコール、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサクロロフェン、ヘキセチジン、ヘキサメチレントラミン、イミダゾリジニル尿素、ブチルカルバミン酸ヨードプロピニル、イソチアゾリノン、塩化メテンアンモニウム、メチルジブロモグルタロニトリル、MDMヒダントイン、ミノサイクリン、オルトフェニルフェノール、p−クロロ−m−クレゾール、パラベン(ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン)、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール、ピロクタンオラミン、ポリアミノプロピルビグアニド、ポリメトキシ二環式オキサゾリジン、ポリオキシメチレン、ポリクオタニウム−42、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、クオタニウム−15、リファムピン、サリチル酸、二硫化セレン、ホウ酸ナトリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヒドロキシメチルグリシン酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ナトリウムピリチオン、ソルビン酸、チメロサール、トリクロサン、トリクロカルバン、ウンデシレン酸、フェノスルホン酸亜鉛、および亜鉛ピリチオンを含む群から選択される薬剤を含むことができる。実施例では、抗菌性コーティングは、乳酸銀、リン酸銀、クエン酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、ヨウ化銀、ヨウ素酸銀、硝酸銀、スルファジアジン銀、パルミチン酸銀、またはこれらの1種もしくは複数の混合物を含む群から選択される材料を含むことができる。実施例では、抗菌性コーティングは、抗生剤または防腐剤の少なくとも1種を含むことができる。例えば、抗菌性コーティングは、平均して数時間から1日の間継続する一時麻酔薬を含むことができる。さらに他の実施例では、抗菌性コーティングは、即効用ボーラスなど、基礎疾患を処置するための薬物使用を含むことができる。
【0106】
治療剤(または単に「薬剤」)は、数ある中でも下記、即ち抗緑内障医薬(例えば、アドレナリン作用アゴニスト、アドレナリン作用アンタゴニスト(ベータ遮断薬)、炭酸脱水酵素阻害剤(CAI、全身性および局所)、副交感神経刺激剤、プロスタグランジンおよび血圧降下脂質、およびこれらの組合せ)、抗菌剤(例えば、抗生剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫薬(antiparacytic)、抗真菌剤など)、コルチコステロイドまたはその他の抗炎症剤(例えば、NSAIDまたはその他の鎮痛剤および疼痛管理化合物)、充血除去剤(例えば、血管収縮剤)、アレルギー応答を予防または変更する薬剤(例えば、抗ヒスタミン、サイトカイン阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、IgE阻害剤、免疫調節剤)、肥満細胞安定化剤、毛様筋調節剤、散瞳薬などの1種またはいずれかの組合せ、あるいはそれらの均等物、誘導体、または類似体から作製された薬物を含むことができる含むことができる。
【0107】
例示的な利用可能な薬剤には、トロンビン阻害剤;抗血栓剤;血栓溶解剤;線維素溶解剤;血管痙攣阻害剤;血管拡張剤;抗高血圧剤;抗菌剤、例えば抗生剤(テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファムピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウムなど)、抗真菌剤(アムホテリシンBおよびミコナゾールなど)、および抗ウイルス剤(イドクスウリジントリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロンなど);表面糖タンパク質受容体の阻害剤;抗血小板剤;抗有糸分裂剤;微小管阻害剤;抗分泌剤;活性阻害剤;リモデリング阻害剤;アンチセンスヌクレオチド;抗代謝産物;抗増殖剤(抗血管新生剤を含む);抗がん化学療法剤;抗炎症剤(ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン21−ホスフェート、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21−ホスフェート、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドなど);非ステロイド抗炎症薬(NSAID)(サリチレート、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカムインドメタシン、イブプロフェン、ナキソプレン、ピロキシカム、およびナブメトンなど)が含まれるがこれらに限定するものではない。本発明の涙液インプラントと共に使用することが企図される、そのような抗炎症ステロイドの例には、トリアムシノロンアセトニド(一般名)、およびコルチコステロイドであって、例えばトリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、フルメトロン、およびこれらの誘導体を含めたもの);抗アレルギー薬(ナトリウムクロモグリケート、アンタゾリン、メタピリリン、クロルフェニラミン、セトリジン、ピリラミン、プロフェンピリダミンなど);抗増殖剤(1,3−cisレチノイン酸、5−フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、ミトマイシンC、およびシスプラチンなど);充血除去薬(フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドラゾリンなど);縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ(ピロカプリン、サリチレート、カルバコール、塩化アセチルコリン、フィソスチグミン、エセリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、ホスホリンヨウ素、臭化デメカリウムなど);抗新生薬(カルムスチン、シスプラチン、フルオロウラシルなど);免疫学的薬物(ワクチンおよび免疫刺激物など);ホルモン剤(エストロゲン、−エストラジオール、黄体、プロゲステロン、インスリン、カルシトシン、副甲状腺ホルモン、ペプチド、およびバソプレッシン視床下部放出因子など);免疫抑制剤、成長ホルモンアンタゴニスト、増殖因子(上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板誘導型増殖因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ、ソマトトラピン、フィブロネクチンなど);血管新生の阻害剤(アンギオスタチン、酢酸アネコルタブ、トロンボスポンジン、抗−VEGF抗体など);ドーパミンアゴニスト;放射線治療剤;ペプチド;タンパク質;酵素;細胞外マトリックス;成分;ACE阻害剤;フリーラジカルスカベンジャー;キレート剤;抗酸化剤;抗ポリメラーゼ;光線力学療法剤;遺伝子治療剤;およびその他の治療剤、例えばプロスタグランジン、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体であって、抗緑内障薬を含めたものであり、ベータ遮断薬、例えばチモロール、ベタキソロール、レボブノロール、アテノロール、およびプロスタグランジ類似体、例えばビマトプロスト、トラボプロスト、ラタノプロストなどを含めたもの;炭酸脱水酵素阻害剤、例えばアセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ジクロルフェナミド、ダイアモックス;および神経保護物質、例えばルベゾール、ニモジピン、および関連ある化合物;および副交感神経刺激薬、例えばピロカルピン、カルバコール、およびフィソスチグミンなどが含まれる。
【0108】
本発明の涙液インプラントと共に使用することができる追加の薬剤には、米国食品米国連邦食品・医薬品・化粧品法のセクション505の下で、または公衆衛生法の下で認可された薬物が含まれるがこれらに限定するものではない。本発明の涙液インプラントは、この特許文書の出願日と同日、前記出願日より以前の日付、または前記出願日よりも後の日付で有するまたは記録される、FDA Orange Bookに列挙された薬物と共に使用することもできる。例えばこれらの薬物は、とりわけドルゾラミド、オロパタジン、トラボプロスト、ビマトプロスト、シクロスポリン、ブリモニジン、モキシフロキサシン、トブラマイシン、ブリンゾラミド、アシクロビルチモロールマレエート、ケトロラクトロメタミン、酢酸プレドニゾロン、ヒアルロン酸ナトリウム、ネパフェナク、ブロムフェナク、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、スプロフェナク、ビノキサン、パタノール、デキサメタゾン/トブラマイシンの組合せ、ミキシフロキサシン、またはアシクロビルを含むことができるが、これらに限定するものではない。
【0109】
上記列挙された薬剤で処置することができる疾患または障害の例には、緑内障、術前および術後の眼の処置、ドライアイ、抗眼科アレルギー、抗感染性、術後炎症もしくは疼痛、またはアレルギーなどの呼吸関連障害が含まれるがこれらに限定するものではない。一部の実施例では、治療剤は、潤滑剤または界面活性剤、例えばドライアイを処置する潤滑剤を含むことができる。その他の実施例では、治療剤は、眼から涙を吸収することが可能な吸収剤を含むことができる。
【0110】
治療剤の形は、リザーバー2に接続された出口ポート3を通して流量制限放出がなされる流体20であることが考えられるが、薬物供給は、1種または複数の薬剤の持続放出を提供することが可能な1種または複数の生体適合性材料を含むことができることも可能である。例えば、生分解性マトリックス、多孔質薬物供給、または液体薬物供給。薬剤を含むマトリックスは、生分解性または非生分解性のいずれかのポリマーから形成することができる。一部の実施例では、非生分解性薬物供給は、シリコーン、アクリレート、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリウレタン、ヒドロゲル、ポリエステル(例えば、DACRON(登録商標)、E.I.Du Pont de Nemours and Company製、Wilmington、Del.)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(ePTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、押し出されたコラーゲン、ポリマーフォーム、シリコーンゴム、ポリエチレテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン、ポリイミド、ステンレス鋼、ニッケル−チタン合金(例えば、Nitinol)、チタン、ステンレス鋼、コバルト−クロム合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、Elgin Specialty Metals製、Elgin、Ill.;CONICHROME(登録商標)、Carpenter Metals Corp.製、Wyomissing、Pa.)を含むことができるがこれらに限定するものではない。一部の実施例では、生分解性薬物供給は、1種または複数の生分解性ポリマー、例えばタンパク質、ヒドロゲル、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(L−グリコール酸)(PLGA)、ポリグリコリド、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリ(アミノ)酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコネート、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマー、変性セルロース、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリ無水物、ポリホスホエステル、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)、およびこれらの組合せを含むことができる。一部の実施例では、薬物供給は、ヒドロゲルポリマーを含むことができる。任意の薬物供給マトリックスは、既に述べたポートを通して、圧縮制御された放出を可能にしなければならない。
【0111】
このように、薬物送達のための涙器システムの特定の組成物および方法を開示してきた。しかし、既に記述されたものの他に、本明細書の本発明の概念から逸脱することなく、より多くの修正例が可能であることを、当業者に明らかにすべきである。さらに、開示を解釈するに際し、全ての用語は、文脈と矛盾することなく、最も広範な可能性ある様式で解釈されるべきである。特に、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」という用語は、非排他的様式で、要素、成分、またはステップを指すと解釈されるべきであり、言及される要素、成分、またはステップが存在していてもよく、または利用されてもよく、あるいは明示的に言及されていないその他の要素、成分、またはステップと組み合わされてもよいことが示される。
【0112】
本明細書で述べた全ての刊行物は、刊行物が引用したものに関連した方法および/または材料を開示し記述するために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で論じられる刊行物は、それらの開示だけのために、本出願の出願日以前に提供されるものである。本明細書では、従来の発明のおかげでそのような刊行物に先行して本発明に権利が与えられることを、本発明が認めると解釈されるものは何もない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行物の日付と異なる可能性もあり、独立して確認されることが必要となり得る。
(参考文献)
【化2】
【化3】
【化4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15