特許第6885611号(P6885611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885611
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】分離媒体
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/291 20060101AFI20210603BHJP
   B01J 20/285 20060101ALI20210603BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20210603BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B01J20/291
   B01J20/285 N
   B01J20/285 T
   B01J20/281 X
   G01N30/88 J
   B01J20/281 G
【請求項の数】18
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2018-531418(P2018-531418)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2018-537283(P2018-537283A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】IB2016057694
(87)【国際公開番号】WO2017103863
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年7月5日
(31)【優先権主張番号】715087
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】514036704
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ カンタベリー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】コナン ジェフリー フィー
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ ディマルティーノ
(72)【発明者】
【氏名】ティム フーバー
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第90/007545(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0102674(US,A1)
【文献】 特表2008−503754(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034644(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0196858(US,A1)
【文献】 NYKANEN Antti et al.,Phase Behavior and Temperature-Responsive Molecular Filters Based on Self-Assembly of Polystyrene-block-poly(N-isopropylacrylamide)-block-polystyrene,MACROMOLECULES,2007年,40巻、16号,p5827〜5834
【文献】 JOSE GUILLERMO TORRES-RENDON et al.,Bioactive Gyroid Scaffolds Formed by Sacrificial Templating of Nanocellulose and Nanochitin Hydrogels as Instructive Platforms for Biomimetic Tissue Engineering ,ADVANCED MATERIALS,2015年,27巻、19号,p2989〜2995
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 −30/96
B01J 20/281−20/292
B01J 20/00 −20/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部チャンネルを有するヒドロゲルを含むモノリスカラムの形態の分離媒体であって、前記ヒドロゲルの前記内部チャンネルは、その表面が三重周期的最小表面によって定義される構造あって、前記ヒドロゲルが少なくとも1つの標的分析物を結合する少なくとも1つのリガンドを含前記ヒドロゲルが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、マルチモーダルクロマトグラフィーまたはゲル浸透クロマトグラフィーにおける使用のためのリガンドで官能化される、分離媒体。
【請求項2】
前記ヒドロゲルの前記内部チャンネルは、シェーンジャイロイド(Schoen gyroid)構造、シュワルツ(Schwarz)ダイヤモンド構造、シュワルツプリミティブ(Schwartz Primitive)構造及びシェーンIWP構造からなる群から選択される構造である、請求項1に記載の分離媒体。
【請求項3】
前記ヒドロゲルの前記内部チャンネルは、ジャイロイド構造である、請求項1に記載の分離媒体。
【請求項4】
前記ヒドロゲルが熱応答性ヒドロゲルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離媒体。
【請求項5】
前記ヒドロゲルが、多糖類ヒドロゲルある、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分離媒体。
【請求項6】
前記ヒドロゲルが、アガロースヒドロゲルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分離媒体。
【請求項7】
前記ヒドロゲルが、セルロースヒドロゲルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分離媒体。
【請求項8】
前記ヒドロゲルが、イオン交換クロマトグラフィー又は陰イオン交換クロマトグラフィーにおける使用のためのリガンドで官能化される、請求項1〜のいずれか一項に記載の分離媒体。
【請求項9】
陰イオン交換クロマトグラフィーにおける使用のための前記リガンドは、アミン、第4級アミン及びジエチルアミン(DEAE)から選択される官能基を有し、陽イオン交換クロマトグラフィーにおける使用のための前記リガンドは、カルボキシル及びスルホン酸から選択される官能基を有する、請求項8に記載の分離媒体。
【請求項10】
疎水性相互作用クロマトグラフィーにおける使用のための前記リガンドは、アルキル鎖(ブチル、オクチル)、フェニル及びベンジルアミン基から選択される官能基を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分離媒体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の分離媒体を含む、クロマトグラフィー装置。
【請求項12】
フィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離する方法であって、離媒体を、前記フィードストリームと接触させて、少なくとも1つの標的分析物を前記分離媒体に結合させることを含
前記方法が、前記分離媒体からの、又は前記分離媒体に結合された少なくとも1つの標的分析物を回収することをさらに含み、
ここで前記分離媒体が、内部チャンネルを有するヒドロゲルを含むモノリスカラムの形態であって、前記ヒドロゲルの前記内部チャンネルは、その表面が三重周期的最小表面によって定義される構造であって、前記ヒドロゲルが少なくとも1つの標的分析物を結合する少なくとも1つのリガンドを含む、方法。
【請求項13】
前記フィードストリームは、前記分離媒体、前記少なくとも1つの分析標的物が前記分離媒体に結合することを可能にする条件下でする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フィードストリームが、懸濁固形物を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
記懸濁固形物は、組織、組織破片、細胞、細胞破片、生体分子、及び脂質、タンパク質、炭水化物及び/又は核酸の凝集体を含む生体分子の凝集体からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フィードストリームを回収することをさらに含み、回収された前記フィードストリーム中の前記少なくとも1つの標的分析物の濃度が減少する、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの標的分析物が、抗体、抗体の抗原結合断片、及びンパク質からなる群から選択される、請求項1216のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質が、シトクロムC及びα−ラクトアルブミンから選択される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本発明は、一般的に、表面が三重周期的最小表面(triply periodic minimal surface)によって定義される構造を有するヒドロゲルを含む分離媒体であって、標的分析物、例えば、好ましい生体分子をフィードストリームから分離するのに使用され得る分離媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術
生体分子は、タンパク質、多糖類、脂質及び核酸などの大きな巨大分子だけでなく、1次代謝産物、2次代謝産物及び天然産物などの小さな分子を含む生物体内に存在する分子である。
【0003】
現在、産業及び医学業界全般にかけて生体分子(生物医薬品又は生物製剤を含む)の使用における多大な関心が払われている。生物医薬品(biopharmaceuticals)とは、生物学的原料から製造されるか、これから抽出されるか、これから半合成された医薬品である。
【0004】
医薬品の対象となる生体分子には、抗体(組換え、天然、ヒト化、ポリクローナル及びモノクローナル)、治療用タンパク質(例えば、インシュリン、成長因子、及び貧血、関節リウマチ及び癌に対処する治療剤)、成長因子、ワクチン、ウイルス、ウイルス様粒子、DNA(プラスミド及びその他のもの)及びRNAを含む。
【0005】
関心対象の他の生体分子には、乳製品栄養補助食品及び他の高価値タンパク質、例えば、ラクトフェリンが含まれる。
【0006】
好ましい生体分子は、これらの分子を含有するフィードストリームからクロマトグラフィー分離によって得られることが多い。だが、クロマトグラフィー分離を利用して、複合フィードストリームから好ましくない生体分子を除去することもできる。例えば、牛乳からベータ−ラクトグロブリンを除去するか、組換え製造された治療用タンパク質を含有する発酵ブロスからタンパク質分解タンパク質を除去することができる。
【0007】
標準クロマトグラフィー分離技術の1つの欠点は、標的分析物を分離可能になる以前に、たとえ低濃度の懸濁固形物でもフィードストリームから除去する必要があるということである。
【0008】
例えば、生体分子含有フィードストリームは、細胞破片及び他の固形物を含有する発酵ブロス又は細胞培養物を含むことが多い。これらの懸濁固形物(suspended solid)は、フィードストリームが通過するクロマトグラフィー媒体の閉塞を防止するために、遠心分離及び/又は濾過工程によって最初に除去されなければならない。
【0009】
これらの追加的な処理工程は、製造時間とコストの両方を大幅に増加させる。
【0010】
なお、遠心分離及び/又は濾過工程は、標的分析物の総収率の損失をもたらす。標的分析物が不安定化合物である場合、処理量を増大すると、変性条件(高せん断応力及び高温)及びプロセスストリーム中に存在するプロテアーゼに対する露出が増加する。結果的に、分析物の活性及び生成物の総収率の両方が減少する。
【0011】
従って、フィードストリーム、懸濁固形物を含有した特定のフィードストリームから標的分析物、特に生体分子を分離するのに使用され得る追加的な分離媒体及び方法が必要である。
【0012】
本発明の目的は、かかる必要性を満たすことにおいて少なくともある程度を果すこと、及び/又は公衆に有用な選択肢を、少なくとも提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
3.発明の要約
本発明は、一般的に、懸濁固形物を含有するフィードストリームから分析物の分離に使用するためのヒドロゲル、及び分離方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、本発明は、表面が三重周期的最小表面によって定義される構造を有するヒドロゲルを含む分離媒体であって、上記ヒドロゲルが、少なくとも1つの標的分析物を結合する少なくとも1つのリガンドを含む、分離媒体を提供する。
【0015】
一実施形態において、ヒドロゲルの構造は、シェーンジャイロイド(Schoen gyroid)(ジャイロイド)構造、シュワルツ(Schwarz)ダイヤモンド構造、シュワルツプリミティブ(Schwartz Primitive)構造及びシェーンIWP構造を含む群から選択される。
【0016】
一実施形態において、ヒドロゲルの構造は、ジャイロイド構造又はシュワルツダイヤモンド構造である。
【0017】
一態様において、本発明は、ジャイロイド構造のヒドロゲルを含む分離媒体であって、上記ヒドロゲルが少なくとも1つの標的分析物を結合する少なくとも1つのリガンドを含む、分離媒体を提供する。
【0018】
上記態様において:
一実施形態において、リガンドは、少なくとも1つの標的分析物に特異的に及び/又は優先的に結合する。
【0019】
一実施形態において、ヒドロゲルは、多糖類ヒドロゲルである。一実施形態において、ヒドロゲルは、熱応答性である。好ましくは、ヒドロゲルは、アガロース又はセルロースを含む。
【0020】
別の態様において、本発明は、本発明の分離媒体を含むクロマトグラフィー装置に関する。一実施形態において、クロマトグラフィー装置は、クロマトグラフィーカラムである。
【0021】
別の態様において、本発明は、分離媒体をフィードストリームと接触させることによって、フィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離するための本発明の分離媒体の使用に関する。
【0022】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの標的分析物が分離媒体に結合することを可能にする条件下で、上記分離媒体をフィードストリームと接触させることによって、フィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離するための本発明の分離媒体の使用に関する。
【0023】
別態様において、本発明は、分離媒体をフィードストリームと接触させて、少なくとも1つの標的分析物を分離媒体に結合させることによって、フィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離するための本発明の分離媒体の使用に関する。
【0024】
別の態様において、本発明は、本発明の分離媒体をフィードストリームと接触させる段階を含むフィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離する方法に関する。
【0025】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの標的分析物が分離媒体に結合することを可能にする条件下で、本発明の分離媒体をフィードストリームと接触させる段階を含む、フィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離する方法に関する。
【0026】
別の態様において、本発明は、本発明の分離媒体をフィードストリームと接触させて、少なくとも1つの標的分析物を上記分離媒体に結合させる段階を含む、フィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離する方法に関する。
【0027】
一実施形態において、本使用又は方法はまた、分離媒体からの、又は分離媒体に結合された少なくとも1つの標的分析物を回収する段階を含む。
【0028】
別の態様において、本発明は、フィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度を減少させる方法であって、
(a)本発明の分離媒体をフィードストリームと接触させる段階、及び
(b)上記フィードストリームを回収する段階、を含む方法に関する。
【0029】
別の態様において、本発明は、フィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度を減少させる方法であって、
(a)少なくとも1つの標的分析物が分離媒体を結合することを可能にする条件下で本発明の分離媒体をフィードストリームと接触させる段階、及び
(b)上記フィードストリームを回収する段階、を含む方法に関する。
【0030】
別の態様において、本発明は、フィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度を減少させる方法であって、
(a)本発明の分離媒体をフィードストリームと接触させて、上記少なくとも1つの標的分析物を上記分離媒体に結合させる段階、及び
(b)上記フィードストリームを回収する段階、を含む方法に関する。
【0031】
別の態様において、本発明は、本発明の方法によって製造された生成物に関する。別の態様において、本発明は、本発明の方法によって得られた生成物に関する。
【0032】
上記態様において:
一実施形態において、上記生成物は、標的分析物を含有する組成物である。別の実施形態において、上記生成物は、フィードストリームが本発明の分離媒体と接触する前に、フィードストリームに比べて減少した濃度の標的分析物を含有するフィードストリームである。
【0033】
一実施形態において、フィードストリームは、懸濁固形物を含有する。
【0034】
本明細書において、特許明細書、その他の外部文書又はその他の情報源が参照されている場合、これは一般的に、本発明の特徴を論ずるための前後関係を提供することを目的とする。他に具体的に明示しない限り、そのような外部文書に対する参照は、いかなる管轄においても、そのような文書又は情報源が先行技術であるとか、又は当該技術分野において普及されている一般的な知識の一部を構成するということを認めるものと解釈されるべきではない。
【0035】
本明細書に開示された範囲(例えば、1〜10)の範囲に対する言及は、なおその範囲内のすべての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10)及びその範囲内の任意の範囲の有理数(例えば、2〜8、1.5〜5.5及び3.1〜4.7)に対する言及を含むことを意図し、従って、本明細書において明示的に記載されているすべての範囲のすべての下位範囲が明示的に開示される。これらは、具体的に意図されたものの例に過ぎず、列挙された最低値と最高値との間のすべての数値の可能な組合わせは、本出願において同様の方式で明示的に記述されると見なされるべきである。
【0036】
本発明に関連する当業者には、添付された特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の構造及び異なる実施形態及び用途における多くの変化が連想されるであろう。本明細書における開示及び説明は、純粋に例示的なものであり、いかなる意味でも限定しようとするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
4.図面の簡単な説明
図1図1は、(a)及び(b)2つの異なるジャイロイド構造の例;(c)流路の分岐に起因する多孔性の変化を有するジャイロイド構造;(d)2つの独立した流動チャンネル及び単一固相を含むこの中ジャイロイド構造;(e)均一な直径を有する2つの独立した流動チャンネル及び3つの独立した固相材料を含むジャイロイド構造を示す一連の写真である。
図2図2は、sin(x)・cos(y)+sin(y)・cos(z)+sin(z)・cos(x)<Gで定義されるジャイロイド構造の多孔性と定数Gとの関係を示すグラフである。
図3図3は、sin(x)・cos(y)+sin(y)・cos(z)+sin(z)・cos(x)<0で定義される3Dプリントジャイロイドモノリスの写真である。
図4図4は、50%セルロース粉末が添加され、様々なレベルの化学的架橋結合を有するセルロース及びアガロースベースのゲルの一連のSEM顕微鏡写真である。このゲルは、アセトン中に保存した後、水に保存し、続いて凍結乾燥したものを示している。顕微鏡写真は、ジャイロイド構造のチャンネルではなく、ヒドロゲルの内部多孔性を示す。
図5図5は、本発明の分離媒体を製造するプロセスを示す図である。
図6図6は、ジャイロイド構造のチャンネルを示す本発明の分離媒体の2つの光学顕微鏡写真である。
図7図7は、SNAPカラムにアガロースジャイロイド構造を含み、結合されたシトクロムCが赤色を呈する、クロマトグラフィー装置(SNAPカラム)の写真である。Snapは、「essential Life Solutions Ltd」、308 Tosca Drive、Stoughton、MA 02072の登録商標である。
図8図8は、BSA及び酵母細胞からのシトクロムCの分離を示すクロマトグラムである。
図9図9は、クロマトグラフィー分析から収集された画分のSDSPAGEゲルを示す。1:ロードサンプル。2−10:フロースルーピーク(flowthrough peak)。11−17:溶出ピーク。L:Novex Sharpタンパク質標準のラダー。
図10図10は、レーン2〜17からのゲルに対するBSA及びシトクロムCバンドの相対バンド強度を示すグラフである。
図11図11は、実施例4に記載されたように、本発明のDEAEアガロースカラムにロードされた2.5mg/ml BSAの分離を示すクロマトグラムである。
図12図12は、実施例4に記載されたように、DEAEアガロースカラムにロードされた2.5mg/ml BSAと1.0mg/mlシトクロムCとの分離を示すクロマトグラムである。
図13図13は、BSA及びシトクロムC画分のSDSPAGEゲルであり、ここで、ON=サンプル上(on sample):L=ラダー(ladder):1−2=フロースルーピーク;3〜7=結合されていないサンプルを洗浄:8〜14=溶出。
図14図14は、アガロースDEAEカラムにロードされたBSA、酵母、酵母+BSAサンプルの600nmの吸光度におけるクロマトグラムである。
図15図15は、ベンジルアミンアガロースカラムにおいてα−ラクトアルブミンのクロマトグラムである。単一段階で100%溶出緩衝液を添加して280nm及び600nmにおける吸光度を分析した。
図16図16は、酵母の存在下でα−ラクトアルブミン、酵母のみ、及びα−ラクトアルブミンを捕捉するためのベンジルアミンアガロースカラムについての試験の280nmでの吸光度を示すクロマトグラムである。
図17図17は、酵母の存在下でα−ラクトアルブミン、酵母のみ、及びα−ラクトアルブミンを捕捉するためのベンジルアミンアガロースカラムについての試験の600nmでの吸光度を示すクロマトグラムである。
図18図18は、シュワルツD陽イオン交換体上のシトクロムC結合のクロマトグラムである。
図19図19は、シュワルツDアガロース陽イオン交換体上のシトクロムC、酵母、及びシトクロムC+酵母についての280nmでのUV吸光度のクロマトグラムである。
図20図20は、シュワルツDアガロース陽イオン交換体上のシトクロムC、酵母、及びシトクロムC+酵母についての600nmでのUV吸光度のクロマトグラムである。
図21図21は、シェーンジャイロイドセルロース陽イオン交換体のシトクロムC結合のクロマトグラムである。
図22図22は、シェーンジャイロイドセルロース陽イオン交換体上のシトクロムC、酵母、及びシトクロムC+酵母についての280nmでのUV吸光度のクロマトグラムである。
図23図23は、シェーンジャイロイドセルロース陽イオン交換体のシトクロムC、酵母、及びシトクロムC+酵母についての600nmでのUV吸光度のクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
5.発明の詳細な説明
5.1定義
本明細書で使用される「〜を含む(comprising)」という用語は、「少なくとも部分的に〜から構成された」ということを意味する。用語「含む」を含む本明細書及び特許請求の範囲における説明を解釈するとき、それぞれの説明においてこの用語で前書きされる特徴以外に他の特徴も存在することができる。「含む(comprise)」及び「含んだ(comprised)」のような関連用語も同様に解釈されるべきである。
【0039】
本明細書で使用される「多孔性(porosity)」という用語は、ボイド率又はボイドスペースを意味し、パーセンテージとして表される全体積に対する全ボイドの体積の百分率である。
【0040】
「分析物」という用語は、当業者に知られ理解されるように、本明細書で使用され、関心のある化合物、物質又は化学的成分を指す。好ましくは、分析物は生体分子である。
【0041】
「非標的分析物」という用語は、当業者に知られ理解されるように、本明細書で使用され、関心の対象ではない化合物、物質又は化学的成分を指す。例えば、非標的分析物は、細胞培養物又は細胞溶解物中のタンパク質、核酸、脂質又は他の細胞成分であり得る。非標的分析物は、分離媒体に結合せずに本発明の分離媒体を通過するか、標的分析物よりも低い特異性又は低い結合親和力で分離媒体を結合させ、非標的分析物が当業者によって容易に決定される溶出又は洗浄条件を使用して分離媒体から除去することができることを意図するが、これに限定されるのではない。
【0042】
本明細書で使用される用語「結合」は、2つの物質間の付着を意味し、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、極性又は静電気力及びイオン結合を含む。2つの物質は、一般的に、溶液中に存在する分子(移動相)及びクロマトグラフィーマトリックス上に存在するリガンド(固相)に存在するリガンドと呼ばれる。
【0043】
リガンド及び標的分析物に関連して本明細書で使用される用語「優先的に結合する」は、標的分析物が非標的分析物よりも高い効率でリガンドに結合することを意味する。
【0044】
リガンド及び標的分析物に関連して使用される用語「特異的に結合する」は、標的分析物のみがリガンドに結合することを意味する。
【0045】
本明細書で使用される用語「標的分析物が結合することを可能にする条件下で」は、分析物とリガンドとの間の相互作用を可能にするpH、イオン強度、組成、温度、粘度及び密度の観点から移動相の条件を意味する。
【0046】
本明細書で使用される用語「結合親和性」は、リガンドに結合するための分析物の親和性を意味する。所定の分析物−リガンド対の結合親和性を検出する様々な手段が当業界に知られている。当業者は、通常的な物質としてリガンドに対する分析物の結合親和性を決定するために、そのような手段を使用することができると考えられる。
【0047】
本明細書で使用される用語「三重周期的最小表面」は、表面の小さな部分を使用して基本的な部分を取り、空間内の3つの独立した方向に写本を翻訳することによって、全表面を組立てるのに使用され得ることを意味する。
【0048】
5.2本発明の分離媒体
懸濁固形物を含有したフィードストリームから標的分析物を直接分離するためには、懸濁固形物を自由に通過させながら、分析物結合のための適切な表面積を提供する分離媒体が必要である。
【0049】
公知された分離技術の主な欠点は、関心のある多くの分析物が現在利用可能な方法を使用して回収され得る前に、フィードストリームを前処理又は前濾過する必要があることである。
【0050】
本発明者らは、驚くべきことに、標的分析物を依然として保有しながら移動相の最上の流動パターンを達成する分離媒体が、表面が三重周期的最小表面、特にシェーンジャイロイド構造によって定義される構造を有するヒドロゲルであることを見出した。
【0051】
シェーンジャイロイド構造の表面は、次の方程式で近似できる複雑な数学式によって定義される:
【数1】
ここで、x、y及びzはデカルト座標系における媒体内の点などの位置であり、Gは任意の定数である。「=」記号が「<」記号に置換される場合、方程式は空間内の2つの個別領域を識別し、その境界面は上記の元の方程式で定義される。次に、2つの領域は、多孔性固形物及びボイド(流動チャンネル)として同定される。任意定数Gは、媒体の幾何学的構造内の固体及び空間(流動チャンネル)部分の相対的な体積分率を決定する任意の定数である。ジャイロイド構造の範囲は、この式の定数及び関数を変更して準備することができる。非限定的な例が図1に提示されている。
【0052】
従って、本発明の分離媒体は、ジャイロイド構造のヒドロゲルを含み、上記ヒドロゲルは、標的分析物に結合する少なくとも1つのリガンドを含む。
【0053】
ジャイロイド構造のヒドロゲルは、固相のリガンドと移動相の分析物との間に十分な接触を提供して結合を引き起こし、懸濁固形物の通過を可能にする。
【0054】
一実施形態において、ジャイロイド構造は、下記方程式で定義される。
【数2】
ここで、x、y及びzはデカルト座標系における媒体内の点の位置であり、Gは−1.413〜1.413、好ましくは約−1.4〜約1.4、より好ましくは約−0.5〜約0.5である。不等式は方程式の左辺がGよりも小さく、定義された体積内の座標x、y及びzに固相がプリントされ、上記左辺がGである離れた位置は、流動チャンネル(移動相)を含むということを示す。
【0055】
一実施形態において、Gは0である。
【0056】
一実施形態において、ジャイロイド構造を限定するヒドロゲルを通る相互連結チャンネルは、直径が約5〜約500mm、好ましくは直径が約10〜約250μmである。
【0057】
三重周期的最小表面の他のタイプは、本発明における幾何形状に定義されて使用することができる。三重周期的最小表面の他のタイプは、下記の方程式で定義されるシュワルツプリミティブ幾何構造である。
【数3】
ここで、x、y、z及びGは上記で定義した通りである。
【0058】
三重周期的最小表面の別のタイプは、以下の2つの方程式のうちのいずれかで定義されるシュワルツダイヤモンド幾何構造である。
【数4】
又は
【数5】
ここで、x、y、z及びGは上記で定義した通りである。
【0059】
三重周期的最小表面の別のタイプは、下記の方程式で定義されるシェーンIWP幾何構造である。
【数6】
ここで、x、y、z及びGは上記で定義した通りである。
【0060】
ジャイロイド構造は自然的に生じるが(例えば、バタフライウィング、ミトコンドリア膜、ブロック共重合体及び水−脂質相)、ナノスケール及び非常に特異的な条件下でのみ自然的に形成される。本発明は、マイクロスケールでジャイロイド又は他の三重周期的構造を有するヒドロゲルに関する。
【0061】
ヒドロゲルは、ナノメートル範囲(<1μm)の細孔サイズを有する内部多孔性を特徴とする。これらの内部細孔は、マイクロメートル範囲、すなわちマイクロスケールにおいて細孔及び/又はチャンネルサイズを有するジャイロイド構造の幾何学的特徴よりもはるかに小さいサイズである。
【0062】
一実施形態において、本発明のクロマトグラフィー媒体は、表面が約10〜約90%、好ましくは約50〜約90%、より好ましくは約30〜約70%の多孔性を有する三重周期的最小表面によって定義される構造を有するヒドロゲルを含む。
【0063】
一実施形態において、本発明のクロマトグラフィー媒体は、約10〜約90%、好ましくは約50〜約90%、より好ましくは約30〜約70%の多孔性を有するジャイロイド構造のヒドロゲルを含む。
【0064】
「ジャイロイド構造」又は「シェーンジャイロイド」という用語は、2つの独立したジャイロイド形状チャンネルのネットワークが固相に分離されるか又はその逆の構造を含む。
【0065】
本発明の分離媒体は、粒子幾何構造又はランダムパッキング手順に従って制限されない完全に制御された流れ部分を提供する。表面が三重周期的最小表面によって定義される構造を有するヒドロゲルを含む分離媒体は、前処理の必要なしに、懸濁固形物粒子を含有する大量のフィードストリームの迅速なクロマトグラフィー処理を可能にする。一実施形態において、ヒドロゲルは、ジャイロイド構造である。
【0066】
これは、(a)固体含有供給物を通過させるためのチャンネルにおける高い自由体積、(b)固相の高い表面積(すなわち、標的分析物に対する高い吸着能力)、(c)媒体の全長にわたって移動相及び固相における拡散のための均一な経路長さ、及び(d)汚染危険を最小化してCIP洗浄(cleaning in place)要求量を減少させるデッドエンドゾーン(dead end zone)及び最小再循環領域がないことを含む特徴の組合わせに起因する。
【0067】
これらの特性は、圧力降下が減少し、構造が高いせん断条件下で機械的に安定であり、固体/液体接触が改善されることを意味する。
【0068】
一態様において、本発明は、表面が三重周期的表面によって定義される構造を有するセルロース又はアガロースヒドロゲルを含む分離媒体であって、上記構造のチャンネルが約5〜約500μm直径であり、上記ヒドロゲルが約50〜約90%の多孔性を有し、上記ヒドロゲルが、少なくとも1つの標的分析物を結合する少なくとも1つのリガンドを含む、分離媒体を提供する。
【0069】
一態様において、本発明は、ジャイロイド構造のセルロース又はアガロースヒドロゲルを含む分離媒体であって、上記ジャイロイドのチャンネルが約5〜約500μm直径であり、上記ジャイロイド構造が約50〜約90%の多孔性を有し、上記ヒドロゲルが、少なくとも1つの標的分析物を結合する少なくとも1つのリガンドを含む、分離媒体を提供する。
【0070】
5.3本発明の分離媒体の製造
本発明の分離媒体は、ヒドロゲル形成溶液をジャイロイド構造のヒドロゲルにセッティングすることによって製造される。ヒドロゲルの選択は、一部のヒドロゲルが特定の成形技術により適しているので、ジャイロイド構造が達成される方法に依存する。
【0071】
一実施形態において、分離媒体は、従来の3Dプリンターがプラスチック又は他の適切な材料を使用して所望のジャイロイド構造のネガティブの鋳型を作るネガティブテンプレートを使用して準備される。アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)が好ましい。その後、鋳型は、ヒドロゲル形成溶液で注入した後、ゲル化され固体ヒドロゲルを形成する。その後、鋳型は、所望の3D構造を有するヒドロゲル媒体を残して(ABS用)、アセトンで容易に溶解する。この物質は、クロマトグラフィーカラムに挿入して懸濁固形物を含有したフィードストリームから標的分析物を分離するのに使用することができる。
【0072】
この技術の解像度(resolution)は、鋳型製作に使用される3Dプリンターで達成できる解像度にのみ制限される。従って、壁及びチャンネルのサイズ、ねじれ(tortuosity)及び厚さは、すべて自由に変更することができる。なお、複数の独立した流動チャンネルを含むヒドロゲルが製造されることができ、多孔性は同一の分離媒体内で変化され得る。
【0073】
チャンネル内の流れの主軸に対するジャイロイド幾何構造の相対的な配向は、細孔を通って優先的な軸方向(又はほぼ軸方向)の流れを提供するようなものであり得るか、異なる流路の相互連結を助けるために軸に対して一定角度を成すことができるか、又は任意の他の中間相対的な配向を有することができる。
【0074】
例えば、最も簡単なジャイロイド構造の場合(Gを除いたすべての定数は1である):
【数7】
多孔性は、定数Gを変更して簡単に調整することができる(図2参照)。
【0075】
このようなジャイロイド構造の場合、ボイド率と定数Gとの間の関係は、ほぼ線形関係(−1.413<G<1.413の範囲内)を有することができるが、他の関係は、他のパラメーター(例えば、表面積、細孔サイズなど)に対しても有効である。なお、これらの関係は、ジャイロイド構造が基本方程式の異なる形態で定義される場合に異なるであろう。
【0076】
ネガティブテンプレート方法は、特に熱応答性ヒドロゲルの製造に適している。熱応答性ヒドロゲルは、単純に温度を変化させることによってゲル化することができるヒドロゲル形成溶液から作られる。
【0077】
例えば、セルロースベースヒドロゲルは、低温(4℃未満)でネガティブテンプレートにセルロース溶液を注入した後、温度を(約60℃以上)上昇させて材料を熱的にゲル化して製造することができる。セルロース溶液は、尿素、チオ尿素又はポリエチレングリコール(PEG)とNaOH又はLiOHの組合わせ、特にNaOH/尿素の中にセルロース(5〜7重量%)を溶解させることによって製造され得る。感熱ゲル化後、NaOH及び尿素は洗浄してセルロースヒドロゲルを再生することができる。
【0078】
アガロースヒドロゲルは、アガロース溶液を高温(約80℃)でネガティブテンプレートに注入した後、温度を45℃未満に下げてゲル化することによって製造することができる。
【0079】
図3は、ネガティブテンプレート技術を使用して製造されたセルロースヒドロゲルジャイロイド構造を示す。
【0080】
ヒドロゲルの物理的構造は、物理的架橋剤の添加によって特定の所望の特性(例えば、平均細孔サイズ、細孔壁の厚さ、多孔性など)を達成するように変形され得る。物理的架橋結合に使用される添加剤には、微晶質セルロース、ナノセルロース、バクテリアセルロース、キチン、キトサン及びその他の非水溶性炭水化物が含まれるが、これらに限定されない。例えば、セルロースヒドロゲルの製造において、追加のセルロースを飽和されたセルロース溶液に添加することができる。ゲル化/再生時、この物質はヒドロゲルに改善された強度及び剛性を提供する強化相として作用する。
【0081】
ヒドロゲルの物理的構造は、化学的架橋剤を添加してより硬いゲルを生成することによって変形することができる。化学的架橋結合に使用される添加剤は、エピクロロヒドリン(ECH)、グルタルアルデヒドなどを含むが、これらに限定されない。当業者は、架橋結合の程度を操作して、これらに限定されないが、破断時の伸び、破断時の最大圧縮荷重、弾性係数、耐クリープ性、平均ナノポア寸法、微細孔サイズ分布及び総表面積を含むゲルの物理的性質に影響を及ぼすことができる。
【0082】
図4は、異なる架橋剤及び異なる濃度を含む本発明のヒドロゲル範囲のSEM顕微鏡写真を示す。
【0083】
ヒドロゲル(例えば、アルコール、アセトン、硫酸)の再生に使用される媒体を変化させることはまた、例えば、ヒドロゲルを収縮又は膨潤させることによってその特性に影響を及ぼし得る。
【0084】
分離媒体として使用するためには、ヒドロゲルは、標的分析物に結合する少なくとも1つのリガンドの導入によって官能化されるべきである。
【0085】
一実施形態において、ヒドロゲルを生成するために反応される重合体は、形成の前にリガンドで官能化される。別の実施形態において、ヒドロゲルは、形成後にリガンドで官能化される。ヒドロゲルのリガンド官能化のための技術は、当業界によく知られている。
【0086】
リガンドは、標的分析物に結合するのに適した官能基を含む。必要とする官能基は、使用されるクロマトグラフィーのタイプに依存する。
【0087】
標的分析物に結合するリガンドは、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、マルチモーダルクロマトグラフィー又はゲル浸透クロマトグラフィーに使用するためのリガンドを含むが、これらに限定されない。
【0088】
陰イオン交換クロマトグラフィー(負に荷電された生体分子を可逆的に吸着するための)の場合、リガンドの官能基は、アミン、第4級アミン、ジエチルアミン(DEAE)及びその他から選択され得る。陽イオン交換クロマトグラフィー(正に荷電された生体分子を捕捉するための)の場合、リガンドの官能基は、カルボキシル、スルホン酸及びその他から選択され得る。
【0089】
親和性クロマトグラフィーの場合、リガンドは、免疫グロブリンを捕捉するために、タンパク質A、タンパク質L、タンパク質G及びその他を含み得る。官能基イミノ二酢酸(IDA)は、IDAにニッケル又は銅などの多価金属イオンを最初にロードすることによってHis−タグタンパク質を捕捉するための金属親和性クロマトグラフィーに使用されるリガンドに存在する。他の特定の親和性リガンドは、他の標的分析物の特異的結合に使用され得る。
【0090】
疎水性相互作用クロマトグラフィーの場合、リガンドには、アルキル鎖(ブチル、オクチル)、フェニル及びベンジルアミン基などの官能基を含むが、これらに限定されない。
【0091】
一実施形態において、リガンドは、小分子、陽イオン、陰イオン、荷電又は非荷電ポリマー、疎水性部分、生体模倣リガンド、マルチモーダルリガンド、タンパク質、ペプチド、核酸、抗体又はその抗原結合断片からなる群から選択される。
【0092】
リガンドがヒドロゲルに結合する前に、ヒドロゲルは、反応性基の導入によって活性化されるべきである。一実施形態において、ヒドロゲルは、1、1′−カルボニルジイミダゾール(CDI)活性化によって活性化される。他のカルボニル化試薬、例えば、1、1′−カルボニルジ−1、2、4−ビアゾール(CD5)、1、1′−カルボニル−1、2、3−ベンゾトリアゾール(CDB)も使用され得る。
【0093】
CDI活性化において、ヒドロゲル重合体内のヒドロキシ基は、1、1′−カルボニルジイミダゾールと反応して、N−アルキルカルバメートを形成し、次いで、リガンド中に存在するN−親核試薬と反応して反応性基を含むリガンドを提供する。
【0094】
ヒドロゲルの内部チャンネルは、表面が三重周期的最小表面によって定義される構造であるが、本発明の分離媒体の外部形状は、これに限定されないが、シート又はメンブレン、ストランド、プラグ、ディスク、モノリス、シリンダー、円筒状環又はビーズを含むクロマトグラフィーにおける使用に適した任意の形状であり得る。所望の形状は、媒体が使用されるクロマトグラフィー装置のタイプに依存する。
【0095】
別の態様において、本発明は、本発明の分離媒体を含むクロマトグラフィー装置を提供する。一実施形態において、クロマトグラフィー装置は、クロマトグラフィーカラムである。一実施形態において、カラムは、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)装置又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置などのクロマトグラフィー装置への連結を可能にする関連カートリッジを含む。
【0096】
図5は、使用のためにクロマトグラフィーカラムに挿入されるジャイロイド構造の円筒状ヒドロゲルを含む分離媒体を生成するためのネガティブテンプレートの工程を示す。図6は、本発明の分離媒体のジャイロイド構造のチャンネルを示す。
【0097】
5.4本発明の分離方法
本発明者らは、本明細書に記載された分離媒体を使用することによって、標的分析物をフィードストリームから効果的に分離又は除去できることを見出した。本発明者らは、本発明の分離媒体が、フィードストリームの前処理が高コスト及び/又は時間消耗的であり得るフィードストリームから、及び特に懸濁固形物を含むフィードストリームから、様々な分析物の分離又は除去のための多くの産業分野において、幅広い用途を有すると考えられる。
【0098】
従って、一態様において、本発明は、分離媒体をフィードストリームと接触させる段階を含む、フィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離するための本発明の分離媒体の使用に関する。
【0099】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの標的分析物が分離媒体に結合することを可能にする条件下で分離媒体をフィードストリームと接触させることを含むフィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離するための本発明の分離媒体の使用に関する。
【0100】
別の態様において、本発明は、上記分離媒体をフィードストリームと接触させて少なくとも1つの標的分析物を分離媒体に結合させることを含むフィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離するための本発明の分離媒体の使用に関する。
【0101】
別の態様において、本発明は、本発明の分離媒体をフィードストリームと接触させることを含むフィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離する方法に関する。
【0102】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの標的分析物が分離媒体に結合することを可能にする条件下で本発明の分離媒体をフィードストリームと接触させることを含むフィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離する方法に関する。
【0103】
別の態様において、本発明は、本発明の分離媒体をフィードストリームと接触させて少なくとも1つの標的分析物を分離媒体に結合させることを含むフィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離する方法に関する。
【0104】
上記態様において:
1つの実施形態において、上記使用又は方法は、上記分離媒体からの、少なくとも1つの標的分析物を回収することを選択的に含む。
【0105】
本使用又は方法の一実施形態において、分析物の分離又は除去は、懸濁固形物を除去するためにフィードストリームを前処理せずに行われる。
【0106】
本使用又は方法の一実施形態において、接触させる段階は、フィードストリームを分離媒体に通過させるか、少なくとも部分的に通過させることを含む。
【0107】
本使用又は方法の一実施形態において、フィードストリームは、懸濁固形物を含有する。
【0108】
本使用又は方法の一実施形態において、分離媒体は、少なくとも1つの標的分析物を分離媒体に結合させる条件下でフィードストリームと接触される。一実施形態において、少なくとも1つの標的分析物は、分離媒体に含まれたリガンドに特異的に結合する。
【0109】
少なくとも1つの標的分析物が分離媒体に結合することを可能にする条件は、フィードストリームのpH、塩度、伝導度又は温度を調節することを含むが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、フィードストリームは、少なくとも1つの標的分析物が分離媒体に結合することを可能にする条件下にある。
【0110】
他の実施形態では、少なくとも1つの標的分析物が分離媒体に結合することを可能にする条件を調整して、結合相互作用を調節することができる。例えば、フィードストリームの条件を変更して、少なくとも1つの標的分析物の分離媒体への結合を増加又は減少させることができる。
【0111】
本使用又は方法の一実施形態において、接触させる段階は、分離媒体をフィードストリームと接触させて、少なくとも1つの標的分析物を分離媒体に結合させることを含む。
【0112】
本使用又は方法の一実施形態において、少なくとも1つの標的分析物は、分離媒体に優先的に結合する。本使用又は方法の一実施形態において、少なくとも1つの標的分析物は、分離媒体に特異的に結合する。好ましくは、標的分析物は、分離媒体に結合されたリガンドに優先的に結合するか、特異的に結合する。
【0113】
本使用又は方法の一実施形態において、分離媒体に結合されたリガンドは、分離媒体のヒドロゲルに含まれる。
【0114】
本使用又は方法の一実施形態において、リガンドは、イオン交換リガンド、好ましくは陽イオン交換リガンドである。一実施形態において、リガンドは、6−アミノへキサン酸、7−アミノへキサン酸及び8−アミノへキサン酸を含む郡から選択される。
【0115】
別の実施形態において、リガンドは、疎水性相互作用リガンドである。本使用又は方法の一実施形態において、リガンドは、ヒドロゲルのジャイロイド構造を限定する表面を形成するヒドロゲルの細孔及び/又はチャンネル表面に露出される。
【0116】
本使用又は方法の一実施形態において、フィードストリームは、懸濁固形物を含有する。本使用又は方法の一実施形態において、フィードストリームは、少なくとも1つの非標的分析物を含有する。本使用又は方法の一実施形態において、フィードストリームは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ以上の非標的分析物を含有する。本使用又は方法の一実施形態において、フィードストリームは、非標的分析物を除去するために前処理されなかった。
【0117】
本使用又は方法の一実施形態において、少なくとも1つの標的分析物は、クロマトグラフィー分離によってフィードストリームから分離される。本使用又は方法の一実施形態において、クロマトグラフィー分離は、親和性、イオン交換、疎水性相互作用、マルチモーダル又はゲル浸透クロマトグラフィーを含む。好ましくは、クロマトグラフィー分離は、イオン交換、親和性又はマルチモーダルクロマトグラフィーを含む。
【0118】
本使用又は方法の一実施形態において、少なくとも1つの標的分析物は、生体分子を含む。
【0119】
本使用又は方法の一実施形態において、少なくとも1つの標的分析物は、生体分子、タンパク質;タンパク質断片;オリゴペプチド及びオリゴペプチド断片を含むペプチド;ポリペプチド;ポリペプチド断片;抗体結合ドメイン;抗原;抗原断片;抗原決定基;エピトープ;ハブテン;免疫原;免疫原断片;抑制剤;補助因子;基質;酵素;受容体;受容体断片;受容体サブユニット;受容体サブユニット断片;リガンド;受容体リガンド;受容体作用剤;受容体きっ抗剤;シグナリング分子;シグナリングタンパク質;シグナリングタンパク質断片;単糖類;オリゴ糖;多糖類;糖タンパク質;脂質;細胞;細胞表面タンパク質;細胞表面脂質;細胞表面炭水化物;細胞表面糖タンパク質;細胞抽出物;ウイルス;ウイルスコートタンパク質;ステロイド;ホルモン;ステロイドホルモン;血清タンパク質、小分子及び巨大分子;及びこれらの任意の組合せからなる群から選択された分析物を含む。
【0120】
本使用又は方法の一実施形態において、標的分析物は、シトクロム、好ましくはシトクロムC又はα−ラクトアルブミンである。
【0121】
本使用又は方法の一実施形態において、フィードストリームは、生物学的流体又は非生物学的流体である。
【0122】
本使用又は方法の一実施形態において、生物学的流体は、血液、尿、血清、唾液、牛乳、乳清及び精液からなる群から選択される。
【0123】
本使用又は方法の一実施形態において、非生物学的流体は、生体分子を含む。一実施形態において、非生物学的流体は、細胞懸濁液、細胞スラリー、細胞溶解物、細胞培養培地、細胞成長培地、又はこれらの組合わせ、又はこれらの濾過水又は上清からなる群から選択される。
【0124】
本使用又は方法の一実施形態において、使用又は方法は、分離媒体をフィードストリームと接触させる段階と少なくとも1つの標的分析物を回収する段階との間で分離媒体を洗浄するさらなる段階を含む。一実施形態において、洗浄する段階は、分離媒体に洗浄緩衝液を通過させるか、又は少なくとも部分的に通過させて、分離媒体に結合された標的分析物を除去せずに、非結合標的分析物、フィードストリームの他の非結合成分及び/又は分離媒体からの残留懸濁物質を除去することを含む。一実施形態において、洗浄緩衝液は、標的分析物が分離媒体に結合しているフィードストリームの条件を維持する。一実施形態において、条件は、pH、塩度、伝導度、又は温度のうちの少なくとも1つである。
【0125】
当業者は、他の条件も、分離媒体への標的分析物の結合に関与し得ることを理解するであろう。追加の洗浄段階中に標的分析物と分離媒体との間の結合を維持するための適切な条件を維持することは、当業者の技術範囲内であると考えられる。
【0126】
回収段階は、フィードストリームを分離媒体に通過させた後に行われる。好ましくは、フィードストリームは、懸濁固形物及び/又は非標的分析物を除去するために、フィードストリームを前処理せずに、分離媒体を通過する。
【0127】
例えば、フィードストリーム中に存在し得る懸濁固形物は、細胞培養培地、細胞製剤を又は細胞溶解物に存在し得る細胞又は細胞破片を含むが、これに限定されない。さらなる例として、細胞又は細胞破片は、大腸菌(Escherichia coli)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)及び/又はシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)などのバクテリア、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)及びミセリオフィオーラ(Myceliophtyora)などの糸状菌、リーシユマニア(Leishmania)などの原生生物、Sf9、Sf21及びHigh Fiveなどのバキュロウイルス(Baculovirus)感染された昆虫細胞、ニコチアナ(Nicotiana)又はアラビドプシス(Arabidopsis)などの植物及びハツカネズミ(Mus musculus)の細胞、オーロックス(Bos primigenius)の細胞、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、ヒト胎児腎臓細胞及びヒト癌細胞(HeLa)などの哺乳類細胞から由来することができるが、これらに限定されない。
【0128】
回収は、当業界に公知された標準方法を使用して行われることができ、分離媒体中に含まれるリガンドと標的分析物との間の結合相互作用の性質に依存して、回収条件は当業者が容易に決定することができる。
【0129】
本使用又は方法の一実施形態において、回収する段階は、少なくとも1つの標的分析物を分離媒体から溶出することを含む。一実施形態において、溶出は分離媒体を緩衝液と接触させることを含む。一実施形態において、接触させる段階は、緩衝液を分離媒体に通過させるか、又は少なくとも部分的に通過させることを含む。
【0130】
本使用又は方法の別の実施形態において、分析物は分離媒体からリガンドを切断することによって回収する。
【0131】
本使用又は方法の別の実施形態において、分離媒体に接触する前にフィードストリーム中に存在する少なくとも1つの標的分析物の少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%が回収される。好ましくは、少なくとも1つの標的分析物の40%〜60%、好ましくは約50%が回収される。
【0132】
本使用又は方法の別の実施形態において、分離媒体に接触する前にフィードストリーム中に存在する少なくとも1つの標的分析物の実質的に全てが回収される。
【0133】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの標的分析物をフィードストリームから分離する方法であって、
a)少なくとも1つの標的分析物を特異的に及び/又は優先的に結合するリガンドを含む分離媒体をフィードストリームと接触させて、上記少なくとも1つの標的分析物を分離媒体に結合させる段階、
上記フィードストリームは、組織、組織破片、細胞、細胞破片、生体分子、及び脂質、タンパク質、炭水化物及び/又は核酸の凝集体を含む生体分子の凝集体からなる群から選択された懸濁固形物を含み、
上記分離媒体は、表面が三重周期的最小表面によって定義される構造を有するヒドロゲルであり、
上記ヒドロゲルの構造は、シェーンジャイロイド構造、シュワルツダイヤモンド構造、シュワルツプリミティブ構造及びシェーンIWP構造、好ましくはジャイロイド構造を含む群から選択され、
上記ヒドロゲルは、熱応答性ヒドロゲル、好ましくは多糖類ヒドロゲル、好ましくはアガロース又はセルロースヒドロゲルであり、なお
上記ヒドロゲルは、化イオン交換クロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィーにおける使用のためのリガンドで官能化される;及び
b)上記分離媒体からの、又は上記分離媒体に結合された少なくとも1つの標的分析物を回収する段階をさらに含む段階、を含む方法に関する。
【0134】
別の態様において、本発明は、フィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度を減少させる方法であって、
(a)分離媒体をフィードストリームと接触させる段階、及び
(b)フィードストリームを回収する段階、を含む方法に関する。
【0135】
別の態様において、本発明は、フィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度を減少させる方法であって、
(a)少なくとも1つの標的分析物が分離媒体に結合することを可能にする条件下で分離媒体をフィードストリームと接触させる段階;及び
(b)フィードストリームを回収する段階、を含む方法に関する。
【0136】
別の態様において、本発明は、フィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度を減少させる方法であって、
(a)上記分離媒体を上記フィードストリームと接触させて、上記少なくとも1つの標的分析物を分離媒体に結合させる段階、及び
(b)上記フィードストリームを回収する段階、を含む方法に関する。
【0137】
少なくとも1つの標的分析物が分離媒体に結合することを可能にする条件は、本発明の分離態様の使用及び方法を参照して本明細書に記載されており、当業者が理解することができるように、本発明による減少させる方法に同一に適用可能である。
【0138】
当業者は、標的分析物をフィードストリームから分離するための分離媒体の使用又はフィードストリームから少なくとも1つの標的分析物を分離する方法に関連して本明細書で考慮される本発明の特定の実施形態は、また、フィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度を減少させる方法である本発明の方法の実施形態として適用可能である。したがって、このような実施形態の全ては、フィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度を減少させる方法である本発明の一部として本明細書で具体的に考慮される。
【0139】
本発明によるフィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度を減少させる方法のさらなる実施形態は、本明細書において「本発明の減少させる方法」の実施形態として記述される。
【0140】
本発明の減少させる方法の一実施形態において、回収段階は、フィードストリームを分離媒体に通過させた後にフィードストリームを収集することによって行われる。一実施形態において、フィードストリームは、懸濁固形物を含む。好ましくは、フィードストリームは、懸濁固形物及び/又は非標的分析物を除去するためにフィードストリームの任意の前処理なしに分離媒体を通過する。
【0141】
回収は、当業界に公知された標準方法を使用して行うことができる。
【0142】
減少させる方法の一実施形態において、回収は、分離媒体をフィードストリームと接触させた後、好ましくはフィードストリームを分離媒体に通過させた後、又は少なくとも部分的に通過させた後にフィードストリームを収集することを含む。
【0143】
減少させる方法の一実施形態において、フィードストリームは、分離媒体と接触する前にフィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度と比較して、減少した濃度の少なくとも1つの標的分析物を有する。
【0144】
減少させる方法の一実施形態において、フィードストリーム中の少なくとも1つの標的分析物の濃度は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%に減少する。
【0145】
減少させる方法の一実施形態において、接触させる段階は、実質的にすべての標的分析物を分離媒体に結合させることを含む。
【0146】
別の態様において、本発明は、本発明の方法によって製造された製品に関する。一実施形態において、生成物は、標的分析物を含む組成物である。
【0147】
別の実施形態において、生成物は、フィードストリームが本発明の分離媒体と接触する前に、フィードストリームに比べて減少した濃度の標的分析物を含有するフィードストリームである。
【0148】
本発明の様々な態様は、以下の実施例を参照して非限定的な方式で説明されるであろう。
【実施例】
【0149】
6.実施例
6.1一般的なプロセス及び材料
材料
使用したセルロースは、シグマ アルドリッチ(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)から購入したSigmacellセルロースパウダー、タイプ20(平均粒径20μm)であった。水酸化ナトリウム(NaOH)(純度97%)をThermo Fisher Scientific(Waltham,MA,USA)からペレット形態で購入した。尿素(ACSグレード)、及びエピクロロヒドリン(ECH)(純度98%)もシグマ アルドリッチから購入した。Certified Molecular Biology Agaroseタイプのアガロースは、Bio−Rad(Berkeley,CA,USA)から購入した。工業グレードのアセトン(純度95%)は、ASCC(Auckland,New Zealand)から購入した。すべての化学約品は受け取ったままで使用した。
【0150】
実施例1〜3の3Dジャイロイド鋳型プリント
鋳型のCAD(Computer Aided Design)モデルは、Solid works 2012(Dessault systems,Paris,France)を使用して製作した。鋳型は、可溶性支持材料と共にABSplusを使用してStratasys Dimension Elite機械(Stratasys Ltd.,Rehovot,Israel)上でプリントし、プリント後、Stratasys SCA−1200サポート除去システムを使用して除去し。次いで、鋳型をMilli−Q水ですすぎ、周囲条件で放置して少なくとも7日間乾燥させた。
【0151】
実施例4−6の3D鋳型プリント
鋳型のCAD(コンピューターサポート設計)モデルは、Solid works 2012(Dessault systems,Paris,France)を使用して製作した。ABSplusからの鋳型は、可溶性支持材料と共にStratasys Dimension Elite機械(Stratasys Ltd.,Rehovot,Israel)上でプリントし、プリント後、Stratasys SCA−1200サポート除去システムを使用して除去した。次いで、鋳型をMilli−Q水ですすぎ、周囲条件で放置して少なくとも7日間乾燥させた。
【0152】
Solidscape 3ZModel材質の鋳型は、Solidscape 3ZTM支持材料と組合わせさせて、Solidscape 3Z PRO装置((Stratasys Ltd.,Rehovot,Israel)上でプリントし、プリント後、50℃まで加熱されたBioact VSO(Vantage Specialty Chemicals,Gurnee,IL,USA)の浴を使用して除去した。次いで、鋳型は、45℃のオーブンに入れて、少なくとも48時間残留VSOを蒸発させた。
【0153】
セルロース溶液の製造
本発明のクロマトグラフィー媒体に使用されるセルロースヒドロゲルを製造するために、Milli−Q水中の12重量%尿素及び7重量%NaOHの水溶液を製造し、12℃に冷却させた。
【0154】
セルロース粉末(5重量%)を溶液に添加し、約60秒間撹拌した。混合物を−12℃で一晩放置した後、セルロースが完全に溶解するまで約5分間激しく撹拌した。その後、溶液を遠心分離して任意のセルロース凝集体を除去した。溶液はさらに使用するまで約1℃で保存した。
【0155】
すべてのセルロース複合ヒドロゲルを製造するために、初期に溶解したセルロース部分のセルロース粉末の質量分率(10、50、100等%)を約800rpmのL4RT Silverson機械的混合機を使用してセルロース溶液中に溶解させて、最終ヒドロゲルにおける補強として作用するだけでなく、ゲル化過程における物理的架橋剤として作用する。
【0156】
溶液の温度は、溶液のゲル化を避けるために、混合工程の間に、3〜5℃に維持させた。添加された粉末が元の溶液に均一に分散するまで懸濁液を約5分間撹拌した。
【0157】
化学的に架橋結合されたヒドロゲルを生成するために、化学的架橋剤ECHは、使用されたセルロース(溶解されて最終的に溶液に混合した余分なセルロース)の質量分率(1、5、10等%)として溶液に添加した。架橋剤を含有する溶液を約1000rpmの回転速度でオーバーヘッドスターラーを使用して5分間撹拌し、ECHの良好な分散を達成した。溶液のゲル化を避けるために、混合工程の間に、溶液の温度を3〜5℃に維持した。
【0158】
アガロース溶液の製造
アガロースヒドロゲルを製造するために、アガロース粉末を約800rpmで設定されたSilverson L4RT メカニカルミキサー(Silverson Machines,Inc.,East Longmeadow,MA,USA)を使用して6:94の質量比でMilli−Q水と約60秒混合してアガロース粉末を完全に分散させた。
【0159】
より強いヒドロゲルが要求される場合、セルロース粉末は、アガロース−水混合物に添加し、分散したアガロース粉末の質量画分(10、50、100等%)として秤量し、アガロース−水混合物に添加した。次いで、この混合物を、Silversonミキサーを使用して100rpmでさらに120秒間撹拌した。
【0160】
アガロース混合物をガラスビーカーに保管し、Parafilmで覆った後、Samsung Timesaver 1000W電子レンジ(Samsung,Daegu,South Korea)に入れた。マイクロ波を1000ワットで30秒間作動させて混合物を約75℃に加熱した。次いで、混合物をスパチュラで撹拌し、同一の設定で再び加熱した。アガロース粉末の全てが溶解するまでこれを繰り返して粘性溶液を形成した。添加されたセルロース粉末はすべて溶解しないまま残っている。
【0161】
本発明の分離媒体の製造:実施例1〜3に対するジャイロイド構造のアガロースヒドロゲル
アガロース溶液を、使い捨てプラスチックシリンジを使用して3Dプリントジャイロイド鋳型に注入した。充填された鋳型を電子レンジに入れ、10秒間100ワットで加熱した。鋳型を、長軸を中心に回転させ、再び加熱した。これを4〜5回繰り返して鋳型の完全な充填を達成した。次いで、上記鋳型を−20℃で30分間冷凍器に入れてアガロース溶液を完全にゲル化させた。
【0162】
充填された鋳型をSchottボトル中のアセトンに沈めた。密閉されたボトルを室温で、30分間隔で100W Digitech超音波洗浄器(Digitech,South Jordan,UT,USA)に入れてABS鋳型を溶解させた。すべてのABSが溶解するまでアセトンを8〜10回の超音波処理間隔の後にアセトンを交換した。次いで、アセトンは、Milli−Q水を使用して洗浄して、ジャイロイド構造のアガロースヒドロゲルを得た。
【0163】
本発明の分離媒体の製造:実施例1〜3のジャイロイド構造のセルロースヒドロゲル
セルロース溶液を、使い捨てプラスチックシリンジを使用して3Dプリントジャイロイド鋳型に注入した。充填された鋳型を85℃のオーブンに5〜6時間放置して溶液をゲル化させた。鋳型をオーブンから取り出して室温で冷却させた。ABSは上述したように除去した。
【0164】
6.2実施例1:ジャイロイド構造のセルロース系ヒドロゲル
ジャイロイド構造のセルロース系ヒドロゲルを含む本発明の分離媒体を、上述した手順に従って製造した。いくつかのヒドロゲルは、ECH架橋結合(1及び10%)に製造された。ヒドロゲルはまた、セルロース粒子を添加して製造した。セルロース粉末(溶液を製造するのに使用されたセルロース対比10、40、50及び100重量%)を添加した。ECHで架橋されセルロース粉末で支持されるヒドロゲルを製造した。図4は、製造されたヒドロゲルのいくつかのSEM顕微鏡写真を示す。
【0165】
6.3実施例2:ジャイロイド構造のアガロースベースヒドロゲル
ジャイロイド構造のアガロースベースヒドロゲルを含む本発明の分離媒体は、上述した手順に従って製造した。いくつかのヒドロゲルは、ECH架橋結合(1及び10%)で製造した。
【0166】
ヒドロゲルはまた、セルロース粒子を添加して製造した。セルロース粉末(溶液を製造するのに使用されるセルロース対比10、40、50及び100重量%)を添加した。
【0167】
ECHに架橋されセルロース粉末で支持されるヒドロゲルも製造した。図4は、製造されたヒドロゲルのSEM顕微鏡写真を示す。
【0168】
6.4実施例3:分離媒体がジャイロイド構造のヒドロゲルである陽イオン交換クロマトグラフィーを使用して懸濁固形物を含有するフィードストリームから標的シトクロムCの回収
ジャイロイド構造のアガロースヒドロゲルは、上述した技術を使用して3Dプリントテンプレートからネガティブテンプレート方法を介して製作した。これは、酵母細胞を維持せずに、懸濁した酵母細胞の存在下で2つのタンパク質を分離するのに使用した。
【0169】
この実験に使用された分離媒体は、1.2mmのチャンネルサイズ及び1.2mmの壁厚さを有するジャイロイド構造のアガロースヒドロゲルの長さ25mm、直径10mmのモノリスであった。モノリスの多孔性は、50%であり、単純なジャイロイドの場合、Gは0であった。
【数8】
ここで、x、y及びzは、デカルト座標系におけるカラム内の点の位置であり、Gは、カラム幾何形状内の固体(吸着剤)及びボイド(流動チャンネル)部分の相対体積分率を決定する任意の定数である。
【0170】
ジャイロイドアガロースモノリスは、ジャイロイドモノリスのABSプラスチックプリントネガティブテンプレートをアガロースの高温溶液で充填し、これを室温で冷却してゲル化させて製造した。次いで、ABSをアセトンで溶解させて除去した。
【0171】
カルボニルジイミダゾール活性化
アセトンを使用してABSを除去した後、ヒドロゲルモノリスを6カラム体積のアセトンで洗浄して、残留ABSがシステム内に残らないようにした。
【0172】
アガロースモノリスを1、1−カルボニルジイミダゾール(CDI)を使用して活性化させて、アガロースマトリックスの重合体主鎖に活性イミダゾール中間体を提供した。0.2gのCDIをアガロースモノリスに添加し、これを10mlのアセトンに懸濁させた。混合物を一定に撹拌しながら2時間反応させた。
【0173】
反応混合物を除去し、モノリスを6モノリス容積のアセトンで素早く洗浄して、未反応CDIを除去した。活性化されたアガロース材料の加水分解を避けるために、洗浄段階が迅速に完了するのが必須であった。
【0174】
リガンド結合
リガンド6−アミノへキサン酸をアガロースヒドロゲルに結合させて陽イオン交換作用基、すなわち−COOH基を導入した。モノリスは、NaOHを使用してpH10以下に製造した5M6−アミノへキサン酸及び1M重炭酸ナトリウムの6ml溶液に添加した。6−アミノへキサン酸は、陽イオン交換のためのリガンド末端に遊離カルボキシル基を有する、アミン結合を介してアガロースの表面に共有結合する。溶液を48時間一定に撹拌しながら反応させた後、pH7のリン酸ナトリウム緩衝液(リガンドカップルリング直後のタンパク質分離に使用しない場合)に入れた。
【0175】
分離
ジャイロイド構造の結合された官能化ヒドロゲルを反応容器から除去し、直径10mmのSNAPガラスカラム(Sorbent Technologies Inc.,Norcross,GA)に入れ、AKTA Start液体クロマトグラフィーシステム(GE Healthcare Technologies,Uppsala,Sweden)に連結した。カラムを上向き流動構成を使用してシステムに連結した。
【0176】
上記システムをヒドロゲルが緩衝液中で完全に飽和するまでpH7のリン酸ナトリウム緩衝液(結合緩衝液)で洗浄した後、pH7でリン酸ナトリウム緩衝液及び1M NaCl(溶出緩衝液)で洗浄して、イオン交換マトリックスに対イオンを添加した。平衡に到逹した後、カラムを結合緩衝液中に再平衡化させた。
【0177】
5mg/mlサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、2mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)及びpH7.4の結合緩衝液中の2mg/mlシトクロムCの2ml溶液をカラムに入れた。シトクロムC(等電点、pI、9.6)はカラムに結合すると予想され、一方、BSA(pI4.7)及び酵母細胞(pIは、典型的に5.2〜6.4)は、通過すると予想された。
【0178】
図7は、サンプルローディング及び洗浄段階を完了した後のカラムを示し、これはシトクロムCがカラムに結合されている赤い色で明確に示す。(結合されていないすべてのタンパク質が除去されるまで)約25mlの結合緩衝液で洗浄した後、溶出緩衝液(1MのNaCl)は、すべての結合タンパク質が除去されたことが(カラムを出る流体でUV吸光度の減少を観察することによって)明らかになるまでカラムに適用した。
【0179】
収集されたピーク画分を、ゲル電気泳動を使用して分析した。画分を室温で5分間遠心分離して、ゲルに適用する前に酵母固形物を溶液から除去した。クーマシーブリリアントブルー染色を12時間ゲルに適用した後、酢酸溶液で脱染色してタンパク質ラダーを示した。
【0180】
ゲル上のバンドの密度は、オープンソースのImageJソフトウェアを使用して測定し、これは、試料サンプルレーンのバンドと比較して、クロマトグラムの各ピークに存在するBSA及びシトクロムCの比例濃度を示すことができる相対強度を示す。
【0181】
結果
本発明の分離方法は、固形物を含有するフィードストリームからシトクロムCを成功的に回収した。
【0182】
クロマトグラフィー分析(図8に示すように)は、酵母、BSA及びいくつかのシトクロムCがカラムと相互作用せずに、システムから溶出される約5mlを中心とする高い流出ピークを示す。
【0183】
図9から分かるように、約35mlでの伝導度の急激な増加に伴う溶出ピークはシトクロムCのみを含有した。
【0184】
ゲル電気泳動でBSA及び酵母からのシトクロムCの分離が確認された(図9)。供給サンプル及びフロースルーピーク(レーン2〜10)に該当するレーンは、66.5kDaのBSA及び12.3kDaのシトクロムCを示す。レーン2〜6のゲルであまり明確でないバンドは、オンサンプル及びフロースルーピークに存在する損傷されないか、又は破壊された酵母細胞から排出されたタンパク質から生じる可能性がある。レーン7〜10は、結合されない材料の漸進的除去を示し、図8のクロマトグラムと一致する。しかし、酵母はタンパク質よりもはるかに速くカラムから除去されたように見え、これは酵母細胞流れに支障を与えないことを示す。
【0185】
溶出緩衝液を適用すると、図8のUVピークが溶出サンプルに純粋なシトクロムCの証拠と共に、タンパク質の溶出を示した。これは、レーン11〜17(図9参照)のゲルにおいて明らかであり、これは、溶出ピークに示され、次いで、アガロースジャイロイドカラムからのシトクロムCの除去を示す。これは、3Dプリント方法を使用して製造された陽イオン交換クロマトグラフィーカラムを使用して、母細胞、シトクロムC及びBSAの混合物からシトクロムCの分離を検証する。
【0186】
ゲルに結合し、続いて溶出されるシトクロムCの量は、ゲル上の各レーンの相対バンド強度から推測される、カラムにロードされた総量の約50%であった(図10)。
【0187】
クロマトグラムのピーク下の領域は、プロースルーピークについては1632mAU ml及び溶出ピークでは521mAU mlを示す。より大きなフロースルーピーク領域は、溶出ピークにおいて溶出されたシトクロムCと比較して、BSA、非結合シトクロムC及び酵母細胞の存在によって生じるであろう。
【0188】
無視できる背圧が、クロマトグラフィーが進行される間に観察された。正常作動の間、0MPaが記録され、これは、酵母の適用時に0.01MPaに増加した。これは、フロースルーピークがシステムを通過すると、0MPaに戻る。背圧がないことは、酵母がカラムに捕捉されなかったが、サンプル適用及び洗浄段階で流入したことを示す。
【0189】
結論
ジャイロイド構造のアガロースヒドロゲルは、懸濁固形物を含み、BSA、シトクロムC及び酵母細胞の混合物を含む、フィードストリームから陽イオン交換によるシトクロムCのクロマトグラフィー分離を成功的に行った。酵母細胞は、予想通りカラムを通過した。
【0190】
BSAは、ヒドロゲルカラムによって維持されず、サンプル中のシトクロムCの約50%がヒドロゲルカラムに結合し、続いて1MのNaClの適用によって溶出された。
【0191】
6.5実施例4:陰イオン−分離媒体がジャイロイド構造のヒドロゲルである陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して懸濁固形物を含有するフィードストリームから3DプリントアガロースDEAEカラムの製造及び標的シトクロムCの回収。
この研究は、簡単なタンパク質精製システムとして使用される最初の3Dプリント陰イオン交換クロマトグラフィー及び発酵ブロスをシミュレートするタンパク質及び固形物の溶液(S.cerevisiae)に対するより複雑なタンパク質捕捉段階を証明する。
【0192】
方法
DEAE機能化
上記の方法で詳細に記述されたように、Solidscape 3ZTMモデル材料からプリントテンプレートを使用して製造された3Dプリントアガロースカラム(6%w/wアガロース、50mm長さ、10mm直径、400μmチャンネルサイズ、50%空隙率)は、Toufik and Labarre(Toufik,J.,&Labarre,D.(1995),ジエチルアミノエチル基を有する多糖類表面による補体活性化の減少と置換度との間の関係Relationship between reduction of complement activation by polysaccharide surfaces bearing diethylaminoethyl groups and their degree of substitution.Biomaterials,16(14),1081−1088.doi:10.1016/0142−9612(95)98904−s)によって開発された方法を使用してDEAEリガンド2−クロロ−N、N−ジエチルエチルアミンヒドロクロリドで官能化した。アガロースを1gのアガロース:27mlのDEAE:20mlのNaOHの比率で4MのNaOH及び3MのDEAEに入れ、30℃の水浴中で90分間撹拌した。活性化の後、カラムを1MのNaCl15mlで洗浄した後、1MのNaOH15mlで洗浄し、次いで、1MのHCl15mlで3回洗浄した。カラムを使用するまで20%イソプロパノール中に保存した。
【0193】
平衡化
AKTA開始ユニットを使用して、アガロースカラムをSNAPケーシングに入れ、AKTAに取り付けた。70%IPAを5.0ml/分でカラムを通過させて、SNAPケーシングに伝達しながらカラムに流入した空気を除去した。カラムを20mMのリン酸ナトリウム緩衝液+1MのNaClpH7.0(マトリックスに対イオンを添加するために)の3カラム体積の20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0で平衡化させた。
【0194】
動的テスト
2.5mg/mlのBSAを、2.0ml注入ルーフを介してカラムにロードした。結合されていないサンプルを結合緩衝液で洗い流し、4カラム体積後、塩緩衝液をカラムに加えてタンパク質溶出を促進させた。
【0195】
タンパク質分離
牛心臓から来由された2.5mg/mlBSA及び1mg/mlシトクロムCの2.0ml溶液を、注入ルーフを介してカラムにロードした。上記と同様の洗浄及び溶出の手順に従った。この実験に対して2.0ml画分を収集し、SDS−PAGEを使用してクーマシーブルー(Coomassie Blue)染色で分析した。
【0196】
固体通過
この分析のために3回の試験を完了した:0.5w/w%酵母;2.0mg/mlBSA;及び2.0mg/mlBSA及び0.5w/w%酵母。酵母サンプルは、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に必要な量の乾燥パン酵母を添加し、すべての顆粒がスラリーに分解されるまで1時間混合することによって製造した。DEAEアガロースを含むSNAPカラムをAKTA10 Explorerに連結して平衡化した。各試験について、以前と動揺に緩衝液(結合及び溶出)を加えてサンプルをカラムにロードした。各試験から4ml画分を収集した;各サンプルの600nmでの光学密度を分光光度計で測定し、酵母通過を定量化した。各試験の後、カラムを1MのNaOHで洗浄して、ハードウェア又はカラムに付着した酵母を除去した。
【0197】
結果及び考察
DEAEアガロースカラムが成功的な陰イオン交換カラムであることは明らかである。BSAサンプルを適用し、その後の塩緩衝液中での溶出により、約51.6%のBSAがカラムに結合され、続いて溶出される(図11、表1)。
【0198】
【表1】
【0199】
シトクロムCとBSAとの混合物からシトクロムCの分離が成功すること(図12)は、作業で生成されたカラムの陰イオン交換能力をさらに立証する。緩衝液pH7.0において、BSAは負に荷電し(pI=4.7)、シトクロムCは正に荷電する(pI範囲10〜10.5)。したがって、BSAはカラムに結合し、一方、カラムに同様の荷電を有するシトクロムCは通過するであろう。
【0200】
クロマトグラムから、BSAのみを適用したときよりも多くのタンパク質がカラムを通過することが明らかである(図11図12)。フロースルーピークは、結合されたタンパク質分析においてはるかに大きい一方、溶出ピークは同様の強度であり、これは、同量のBSAがカラムに結合されていることを示す。
【0201】
BSA/シトクロムC試験から収集した画分のゲル電気泳動は、図12においてフロースルー及び溶出ピークに何があるかどうかを確認する。BSA(MW=66.5kDa)及びシトクロムC(Mw=12.3kDa)は、サンプル(ON)のゲル上で明らかである(図13)。両方のタンパク質の二量体も明らかである。フロースルーピークを示すレーンは、BSA及びシトクロムCを示し、続いて結合されていないサンプルを洗浄してタンパク質の残量を示す。溶出時(レーン8〜14)、BSAのみがゲルに存在し、これはカラムに結合されたBSAのみが確認される。
【0202】
3DプリントアガロースDEAEカラムは、固体通過を可能にする。しかし、溶出するカラムに結合された一定量の酵母が存在する。600nmでの光学密度の分析は、試験全般にわたって固体通過を示す、BSAのみでは、結合、洗浄及び溶出中に600nmでOD変化がなく、これは、試験中に固体がないことを示し、これは、600nmで検出されたあらゆる吸光度が酵母を示すことを意味する(図14)。酵母及び酵母/BSAでは、カラムに酵母の結合を示し、次いで、塩条件下で溶出されることを示す明確なフロースルーピーク及び溶出ピークが存在する。酵母の約83.4%がカラムを介して流れ、残りは塩濃度が増加して溶出する。
【0203】
当業者は、条件を適切に変更することができ、これによって、例えば、結合緩衝液に塩を添加して、溶液のイオン強度を減少し、酵母がカラムに結合することを防止することにより、この効果が減少する。
【0204】
結論
3DプリントアガロースDEAEカラムが生成された。カラムは、タンパク質精製のための陰イオン交換体として作動し、BSAとシトクロムCの混合物を分離すると、酵母の存在下で陰イオン交換体が確認される。予想した通り、酵母は陰イオン交換基と相互作用するが、緩衝制条件を操作すると、これを制御することができる。
【0205】
6.6実施例5:3Dプリントアガロース疎水性相互作用カラムの製造及び分離媒体がジャイロイド構造のヒドロゲルである懸濁固形物を含有するフィードストリームからα−ラクトアルブミンの回収
この研究は、簡単なタンパク質精製システムとして使用される最初の3Dプリント疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム、及び発酵ブロスをシミュレートしたタンパク質固体(S.cerevisiae)の溶液に対するより複雑なタンパク質捕捉段階を立証する。
【0206】
アガロースジャイロイドマトリックスをCDIで活性化させた後、ベンジルアミンに結合させて、表面に固定化された極めて疎水性のベンジル基を介して疎水性マトリックスを製造した。カラム上のα−ラクトアルブミンの捕捉のみでなく、溶液中の2つのタンパク質捕捉(タンパク質の分離は成功しなかったが)が立証された。カラムに適用されたタンパク質の約65%が捕捉され、これは効率が改善すべきであることを意味する。最後に、酵母細胞の溶液からのα−ラクトアルブミンの捕捉も立証されるが、酵母とカラムとの間の相互作用のため、酵母の73%のみがカラムを通過する。これは文献ではほとんど報告されていない。
【0207】
方法
CDI活性化及びベンジルアミン官能化
Solidscape 3ZModel材料から鋳型を使用して製造された3Dプリントアガロースカラム(6%w/wアガロース、50mm長さ、10mm直径、400μmチャンネルサイズ、50%空隙率)を1、1′−カルボニルジイミダゾール(CDI)で活性化し、続いて文献(Bethal,G.S,.Ayers,J.S.,Hearn,M.T.W.,&Hancock,W.S.(1987))から採択された方法を使用してベンジルアミンリガンドに結合させた。1、1′−カルボニルジイミダゾールによる様々な不溶性多糖類の活性化、及び活性化されたマトリックスの性質に対する調査。Journal of Chromatography A,219(3),361−371.doi:http://dx.doi.org/10.1016/S0021-9673(00)80379-9),and Hermanson,Millia&Smith,1992(Hermanson,G.T.,Mallia,A.K.,&Smith,P.K.(1992)Immobilized affinity ligand techniques:Academic Press)。
【0208】
アガロースカラムを50mLのファルコンチューブに入れ、アセトン(30/70、50/50、70/30の比率で、次いで100/0%アセトン/%水の比率で)に順次に洗浄し、活性化のために、100%アセトン中に放置した。0.084gCDI/gアガロースをアガロース及びアセトンに添加し、一定の混合を保障するためにスピンホイール上で、室温で1時間放置した。1時間後、液体をアガロースから除去し、次いでアセトンを使用してカラムチャンネルに捕捉された未反応液体を洗浄した。新鮮なアセトンをファルコンチューブ中のカラムに入れ、一定容積のベンジルアミンをアセトン:ベンジルアミン1:0.11の比率で加えた。これは、24時間スピンホイールで反応するように放置した。リガンド結合が完了すると、液体はファルコンチューブからデカントした。2カラム容積のアセトンをカラムに加えて任意の米反応ベンジルアミンを除去した。使用する前までカラムを20%イソプロピルアルコール(IPA)に貯蔵した。
【0209】
平衡化
AKTA10 Explorer装置を使用して、アガロースカラムをSNAPケーシングに入れ、AKTAに取り付けた。70%IPAを5.0ml/分でカラムに通過させて、SNAPケーシングに伝達しながらカラムに流入した空気を除去した。次いでカラムを20mMリン酸ナトリウム緩衝液+2M(NH4)2SO4pH6.0(結合緩衝液)の3カラム体積で平衡化させた。20mMリン酸ナトリウムpH6.0の溶出緩衝液も製造した。
【0210】
動的テスト
2.0mg/mlのα−ラクトアルブミンを2.0mlの注入ルーフを介して1ml/分でカラムにロードした。結合されていないサンプルを結合緩衝液で洗浄し、4カラム体積後に溶出緩衝液をカラムに加え、疎水性相互作用を減少させてタンパク質溶出を促進させた。試験の終了時に、70%IPA2カラム体積でカラムをフラッシュして、溶出緩衝液で除去されていないα−ラクトアルブミンを除去した。
【0211】
二重タンパク質溶出
2.0mg/mlのα−ラクトアルブミン及び2mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)の2.0ml溶液を、1ml/分で注入ルーフを介してカラムにロードした。洗浄及び溶出及び洗浄のための上記と同様の手順が行われた。この試験に対して2.0ml画分を収集し、SDS−PAGEを使用してクーマシーブルー(Coomassie Blue)染色で分析した。
【0212】
固体通過
この分析のために3回の試験を完了した:酵母0.5w/w%;α−ラクトアルブミン2.0mg/ml;及びα−ラクトアルブミン2.0mg/ml及び酵母0.5w/w%。酵母サンプルは、20mMリン酸ナトリウム緩衝液、2M(NH4)2SO4、pH6.0に必要な量の乾燥パン酵母を添加し、すべての顆粒がスラリーに分解されるまで1時間混合することによって製造した。挿入されたベンジルアミンカラムを有するSNAPケーシングをAKTA10 Explorerに連結し、平衡化させた。各試験について、以前と同様に1ml/分で緩衝液(結合及び溶出)を添加して、サンプルをカラムにロードした。各試験から4mlの画分を収集し;各サンプルの600nmでの光学密度を分光光度計で測定し、酵母通過を定量化した。各試験の後、カラムを2カラム体積の70%IPA及び1MのNaOHで洗浄して、ハードウェア又はカラムに付着され得るタンパク質又は酵母を除去した。
【0213】
結果及び考察
ベンジルアミンアガロース疎水性マトリックス上のタンパク質捕捉は、クロマトグラムから証明される(図15)。280nm軸における吸光度のピークは、タンパク質がカラムから溶出する位置を立証する。添加された1.5〜10mlの間の最初のピークは、結合されていないα−ラクトアルブミンのフロースルーである。タンパク質がカラムから約24mlの緩衝液を加えて洗浄されなかったことは明らかであり、これは緩衝液が変更され、伝導率が減少すると、ここで溶出されるタンパク質は、疎水性相互作用を減少させるために(塩濃度を減少させる)、溶出されるタンパク質に対応することを意味する。従って、疎水性に基づいたタンパク質捕捉が成功的であることを証明する。ピークサイズの分析は、65%のタンパク質が捕捉され、続いて溶出緩衝液で溶出されることを示す。当業者によるクロマトグラフィー条件のさらなる最適化を行って、所望の標的分析物の捕捉率を増加させることができる。
【0214】
酵母の存在下で、α−ラクトアルブミンはベンジルアミンアガロースカラムに結合され、続いて溶出緩衝液の存在下で溶出される(図16)。これは、α−ラクトアルブミン、酵母、及びα−ラクトアルブミン+酵母の3つの試験について、280nmで結合された吸光度クロマトグラムに基づいて結論される。α−ラクトアルブミンラインは、ほぼ等量のタンパク質フロースルー及び溶出を示す。酵母のみについて、280nmで大きなフロースルーピーク及び小さな溶出ピークが観察される。これは、カラムとの相互作用をする酵母に関連したいくつかの細胞外タンパク質によって、少量の酵母がカラムに結合されることを示す。酵母を含有するα−ラクトアルブミンの場合、α−ラクトアルブミン試験において溶出ピークのサイズと同様の溶出ピークと共に、大きなフロースルーピーク(おおよそ、α−ラクトアルブミンフロースルーと酵母フロースルーとの組合わせのサイズ)を記録する。これは、供給ブロスに存在する固形物の有無にかかわらず、カラムの同様の性能を示し、これは、酵母がベンジルアミンアガロースカラムの性能を阻害しないことを示す。
【0215】
カラムを通る酵母通過は、クロマトグラム上の600nmでのUV吸光度をモニタリングすることによって観察される。以前のように、α−ラクトアルブミン、酵母、及びα−ラクトアルブミン+酵母の3つの試験を行った。α−ラクトアルブミン試験は、α−ラクトアルブミンが600nmで非常に小さな吸光度を有することを示す。酵母のみの試験は、大きなフロースルーピーク及び小さな溶出ピークを有し、これはまた、吸着剤と吸着質の相互作用の証拠になる。酵母及び酵母とα−ラクトアルブミンは、2つ試験の両方で本質的に同じトラックを有し、これは、酵母の継代が両方の試験で同じであることを示す。ピーク強度の比較は、酵母の73%がカラムを介して流れることを示す。最適化は、酵母細胞とタンパク質とカラムとの間の相互作用を減らすために必要である。これは塩濃度及びpHを変化させることによって行われる。
【0216】
図17において、溶出ピーク以後の各試験に対する長い尾部は、緩衝液の変化のために25mAuの新しいベースラインを示し;溶出緩衝液は結合緩衝液よりも600nmでより高いUV吸光度を有することを留意しなければならない。
【0217】
結論
3Dプリントアガロースベンジルアミンカラムが製造された。カラムは、タンパク質精製のための疎水性相互作用クロマトグラフィーマトリックスとして作動する;α−ラクトアルブミン及びBSAの捕捉は、これを証明する。タンパク質の捕捉効率(現在65%)は、活性化及びリガンド結合プロトコールを最適化することにより、改善することができる。
【0218】
6.7実施例6:(a)3Dプリントシュワルツダイヤモンドアガロース陽イオン交換(CM)クロマトグラフィーカラム及び(b)シェーンジャイロイドセルロース陽イオン交換(CM)クロマトグラフィーカラムの製造及び使用
この研究は、カルボキシメチル陽イオン交換体を生成するために、陽イオン交換リガンドで官能化された2つの3Dプリントクロマトグラフィーカラムの生成に対して詳細に説明する。第1のカラムは、3%プリント法を使用して50%のボイド率を有するシュワルツダイヤモンド構造に製造された6%アガロースカラムであった。第2のカラムは、50%のボイド率を有するシェーンジャイロイド構造に製造された5%セルロースカラムであった。アガロース及びセルロースヒドロゲルは、Solidscape 3ZModel材料から製造された鋳型を使用して上記記述した方法を使用して製造した。
【0219】
2つのカラム上にシトクロムCの捕捉が示され、アガロースシュワルツダイヤモンドに対して37%の捕捉効率、及びセルロースシェーンジャイロイドに対して89.2%の捕捉効率が示される。セルロースジャイロイドの酵母通過が、アガロースシュワルツダイヤモンドでよりも高かったにもかかわらず、2つのカラム両方の固形物(サッカロマイセス・セレビシエ)の存在下で同様の捕捉効率を有することと立証された。
【0220】
方法
カラムの仕様
シュワルツダイヤモンドカラムは、6%アガロースヒドロゲルで製造された、長さ50mm、直径10mm、チャンネル500μm、ボイド率50%のカラムであった。シェーンジャイロイドカラムは、5%エピクロロヒドリンで架橋されたセルロースを50%添加した5%セルロースヒドロゲルで製造された長さ50mm、直径10mm、チャンネル500μm、ボイド率50%のカラムであった。
【0221】
CDI活性化及びリガンド結合
2つのカラムについて同じ官能化方法を行った。Methods from Bethell et al(Bethell,G.S.,Ayers,J.S.,Hearn,M.T.W.,&Hancock,W.S.(1987).1、1′−カルボニルジイミダゾールによる様々な不溶性多糖類の活性化、及び活性化されたマトリックスの性質に対する調査。Journal of Chromatography A,219(3),361−371.doi:http://dx.doi.org/10.1016/S0021-9673(00)80379-9)and Hermanson,Millia&Smith,1992(Hermanson,G.T.,Mallia,A.K.,&Smith,P.K.(1992)Immobilized affinity ligand techniques:Academic Press)は、アガロース及びセルロース活性化及びその後のリガンド結合に適合させ:1、1′−カルボニルジイミダゾール(CDI)を使用して、多糖類ゲル中のヒドロキシル基を活性化させ、6−アミノへキサン酸を活性化されたマトリックスに結合させて、リガンド中に存在するカルボキシル基を介して表面に陽イオン交換基を生成させた。カラムを%アセトン/%水が30/70、50/50、70/30、100/0で添加された混合物の3カラム体積で、アセトンで、水性で順次に洗浄した。続いて、カラムを3カラム体積の新鮮なアセトンに入れ、0.2gCDIを添加した。各混合物をスピンホイールの上に1時間放置した。活性化以後に、反応混合物をカラムからデカントし、続いてカラムを2カラム体積のアセトンで洗浄して米反応CDI基を除去した。リガンド6−アミノへキサン酸をアガロースカラムに結合させるために、カラムを、NaOHを使用してpH10以下に製造した5M6−アミノへキサン酸及び1M重炭酸ナトリウムの6ml溶液に添加した。6−アミノへキサン酸は、陽イオン交換のためのリガンドの末端に遊離カルボキシル基を有する、アミン結合を介してアガロースの表面に共有結合を形成する。上記溶液を48時間一定に撹拌しながら反応させた後、pH7のリン酸ナトリウム緩衝液に入れた(リガンド結合直後のタンパク質分離に使用しない場合)。
【0222】
平衡化
すべての動的テストは、AKTA10 Explorerで行ったし、ここで活性化された3DプリントカラムをガラスSNAPカラムケーシングに入れ、AKTAに取り付けた。カラムを5カラム体積の70%イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄してチャンネルからすべての空気を除去した。3カラム体積の溶出緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム+1MのNaCl、pH7.0)をカラム上で洗浄して陽イオン交換基に対イオンを添加した。次いで、カラムを3カラム体積の結合緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0)で平衡化させてタンパク質サンプル適用のためのカラムを製造した。
【0223】
タンパク質結合
2.0mlの2.0mg/mlシトクロムCを1ml/分でカラムにロードした。次いで、カラムを4.5カラム体積の結合緩衝液で洗浄して未結合サンプルを除去した。最後に、4カラム体積の溶出緩衝液をカラムに加えて、結合されたシトクロムCをカラムから溶出させた。次いで、カラムを次の試験の準備のために結合緩衝液で再平衡化した。
【0224】
酵母の存在下でタンパク質結合
0.25%w/wパン酵母を2.0mlの結合緩衝液に混合した。次いで、これを新たに平衡化されたカラムに入れ、洗浄及び溶出過程を上記と同様に行った。次いで、カラムを3カラム体積の1MのNaOHで洗浄して、カラム又はAKTAハードウェアに付着された酵母細胞を除去した。次いで、カラムを上記のような結合緩衝液で再平衡化した。別の0.25%wt/wtの酵母溶液を製造した後、2.0mg/mlシトクロムCを添加した。これは以前と同じ過程に従ってカラムに適用した。
【0225】
結果及び考察
(a)シュワルツダイヤモンドアガロース
試験過程中に280nmでUV吸光度をモニタリングすると(図18)、カラムにロードされたシトクロムCの37%が結合され、続いて塩溶出緩衝液を添加して溶出されることを示す。これは、衝溶液pH7.0におけるように、陽イオン交換体としてのカラムの能力を証明するのに、シトクロムC(pI10.0〜10.5を有する)が正に荷電しており、これは、アガロースマトリックスに結合された負に荷電された陽イオン交換リガンドに結合することを意味する。しかし、結合効率は非常に低く;これは、緩衝液タイプ及び塩濃度を変化させることによって最適化することができる。
【0226】
シトクロムC、酵母及びシトクロムC及び酵母試験から280nmでのUV吸光度を分析した結果、シトクロムC及び酵母は両方ともこの波長で吸光度を有することを示す(図19)。これは、細胞及びタンパク質が分離されることができないが、シトクロムC及び酵母試験に対するピークの強度は、シトクロムCのみ及び酵母のみの試験におけるピークの合計であることを示す。これは、酵母の存在下でシトクロムC捕捉がほとんど影響を受けないことを示し、これは、固体の存在下でタンパク質捕捉メカニズムとしてシュワルツDアガロース陽イオン交換体の能力を確認する。
【0227】
600nmでのUV吸光度は固形物の通過を示すが、550nmでのシトクロムCに対する吸光度スペクトルのピークによって600nmでわずかなシトクロムC検出があることが明らかである(値の間の近接は、600nmでシトクロムCの非ゼロを引き起こす)。再び、シトクロムC及び酵母試験で検出されたピークは、シトクロムCのみ及び酵母のみの試験の合計に等しい(図20)。
【0228】
結果は、シュワルツDアガロース陽イオン交換体の酵母通過が94.2%であることを示す。少量のタンパク質がカラムに結合する理由は、陽イオン交換体と酵母細胞ブロスのいくつかの部分との間の相互作用のためである。Tariらは、この伝導度で0.095の相互作用係数を報告している(Tari,C.,Vennapusa,R.R.,Cabrera,R.B.,&Fernandez−Lahore,M.(2008)、バイオプロダクト吸着剤表面へのバイオマス付着のための診断道具としてのコロイド沈着実験(Colloid deposition experiments as a diagnostic tool for biomass attachment onto bioproduct adsorbent surfaces)。Journal of Chemical Technology and Biotechnology,83(2),183−191.doi:10.1002/jctb.1852)(樹脂への細胞親和性は塩濃度と共に増加する)ので、酵母のいくつかの結合が期待され、おおよそ10%のタンパク質結合が起こるであろう。
【0229】
(b)シェーンジャイロイドセルロース
シュワルツDアガロース陽イオン交換体からの同じ分析がここで適用される。捕捉効率及び酵母通過が報告されるであろう。考察の残り部分は本質的に同一に維持される。
【0230】
シェーンジャイロイドアガロースカラムでのタンパク質捕捉は、クロマトグラムで証明される(図21)。89.2%のシトクロムC捕捉に等しい溶出ピークと比較して、小さなフロースルーピークが観察される。
【0231】
280nmにおけるUV吸光度の合計は、緩衝液のみのカラムでのシトクロムCの捕捉と、酵母混合物中のシトクロムCの捕捉との間の挙動にほとんど変化がないことを示し、これは、固形物の存在がタンパク質結合能力を撹乱させないことを意味する。酵母通過は、600nmでのUV吸光度から計算される(図23)。酵母のみの曲線に対する相対ピーク強度の分析は、94.5%の酵母通過を提供する。
【0232】
結論
この研究は、独特の幾何学的構造であるシュワルツダイヤモンドが堅固な耐久性クロマトグラフィー用3Dプリント陽イオン交換クロマトグラフィーカラムの構造として使用できることを確認する。37%のタンパク質捕捉効率が達成され、懸濁固体ブロスの一部の場合減少しない。ブロスの細胞通過は94.2%であり、これは、タンパク質と細胞の両方を処理することができるカラムの能力を示す。
【0233】
なお、堅固な耐久性クロマトグラフィーのための3Dプリント陽イオン交換クロマトグラフィーカラムとしてセルロースを使用する可能性が立証される。ここで、タンパク質捕捉効率は、はるかに高かったし(89%)、固体通過は94.5%である。
【産業上の利用可能性】
【0234】
7.産業上の利用可能性
本発明の分離媒体を使用して、フィードストリームから標的分析物を得ることができる。フィードストリームに懸濁固形物が含まれている場合、最初に固形物を除去する必要なく、分離媒体を直接使用することができる。
図1
図2
図3
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