(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885625
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】ネジ及びネジの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16B 39/284 20060101AFI20210603BHJP
F16B 35/04 20060101ALI20210603BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
F16B39/284 E
F16B35/04 M
F16B35/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-167993(P2019-167993)
(22)【出願日】2019年9月17日
(65)【公開番号】特開2021-46868(P2021-46868A)
(43)【公開日】2021年3月25日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】太田 直登
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−091618(JP,U)
【文献】
実公昭37−028821(JP,Y1)
【文献】
実開平02−030516(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ頭と、
前記ネジ頭と連続するネジ軸と、
前記ネジ軸の側の端部を軸に傾動可能なバネ部と、
を備え、被締結部材のネジ穴に締結されるネジであって、
前記ネジは皿ネジであり、
前記バネ部は、前記被締結部材のネジ穴に前記ネジが締結されていない状態で、前記バネ部における前記ネジ軸に対して逆側の端部が前記ネジ頭の周面から外側に突出するように前記ネジの外側に傾き、
前記バネ部は、前記被締結部材のネジ穴に前記ネジが締結された状態で、前記ネジ穴の皿モミ部の周面と面接触する湾曲面を備え、
前記ネジ頭には、前記バネ部を囲むように、前記ネジ軸の軸方向から見てコの字状の溝部が形成され、
前記溝部の両端部は、前記ネジ頭の周面に到達している、ネジ。
【請求項2】
前記バネ部は、前記ネジ頭の中心軸を中心に向かい合うように配置されている、請求項1に記載のネジ。
【請求項3】
前記ネジ頭の周面で成すテーパー角度は、90°であり、
前記バネ部が前記ネジ頭の中心軸を中心に向かい合うように配置されている場合、向かい合うバネ部の周面で成すテーパー角度は、90°以上である、請求項1又は2に記載のネジ。
【請求項4】
被締結部材のネジ穴に締結される皿ネジを製造するためのネジの製造方法であって、
ネジ頭とネジ軸とが一体化されたネジ本体を形成する工程と、
前記ネジ頭に溝部を形成し、前記ネジ軸の側の端部を軸に傾動可能であり、前記被締結部材のネジ穴に前記ネジが締結されていない状態で前記ネジ軸の側に対して逆側の端部が前記ネジ頭の周面から突出するように前記ネジの外側に傾き、前記被締結部材のネジ穴に前記ネジが締結された状態で前記ネジ穴の皿モミ部の周面と面接触する湾曲面を備えるバネ部を形成する工程と、
を備え、
前記ネジ頭における予め設定された前記バネ部が形成される領域を囲むように前記ネジ軸の軸方向から見てコの字状の溝部を形成することで、前記バネ部を形成し、前記バネ部を前記ネジ頭に対して外側に傾ける、ネジの製造方法。
【請求項5】
前記ネジ軸の軸方向から見て工具が挿入される十字状の凹部を前記ネジ頭に形成する工程を備え、
前記溝部の一部は、前記凹部の端部を前記溝部に到達させることで形成する、請求項4に記載のネジの製造方法。
【請求項6】
前記バネ部は、前記ネジ頭の中心軸を中心に向かい合うように配置する、請求項4又は5に記載のネジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネジ及びネジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被締結部材に締結したネジが緩まないように、ネジの締結力の向上が求められている。例えば、特許文献1には、緩止めテーパリングを用いて皿ネジを被締結部材に締結する締結構造が開示されている。
【0003】
詳細には、緩止めテーパリングは、緩止めテーパリングの下端部に設けられた係止突部、及び緩止めテーパリングの上端部に設けられた係止爪を備えている。このような緩止めテーパリングを被締結部材のザグリテーパ穴に嵌め込みつつ、緩止めテーパリングの係止突部をザグリテーパ穴に形成された係止溝に係合することで、緩止めテーパリングにおける被締結部材に対する回転が防がれる。
【0004】
そして、緩止めテーパーリングの内部に挿入された皿ネジをねじ込むことで、皿ネジのネジ頭に形成された切り欠き溝に緩止めテーパリングの係止爪が係合し、皿ネジの緩みが防がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−336809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の締結構造は、皿ネジの他に緩止めテーパリングを用いる必要があり、皿ネジを被締結部材に締結する際に作業が繁雑である。
【0007】
本明細書に開示される実施形態が達成しようとする目的の1つは、当該課題の解決に寄与するネジ及びネジの製造方法を提供することである。なお、この目的は、本明細書に開示される複数の実施形態が達成しようとする複数の目的の1つに過ぎないことに留意されるべきである。その他の目的又は課題と新規な特徴は、本明細書の記述又は添付図面から明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様のネジは、
ネジ頭と、
前記ネジ頭と連続するネジ軸と、
前記ネジ軸の側の端部を軸に傾動可能であり、前記ネジ軸の側に対して逆側の端部が前記ネジ頭の周面から突出するバネ部と、
を備える。
【0009】
第2の態様のネジの製造方法は、
ネジ頭とネジ軸とが一体化されたネジ本体を形成する工程と、
前記ネジ頭に溝部を形成し、前記ネジ軸の側の端部を軸に傾動可能であり、前記ネジ軸の側に対して逆側の端部が前記ネジ頭の周面から突出するバネ部を形成する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様によれば、被締結部材への締結作業の負担が増加することなく、被締結部材への締結力の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態のネジを模式的に示す斜視図である。
【
図2】実施の形態のネジが被締結部材に締結される前の状態を示す断面図である。
【
図3】実施の形態のネジが被締結部材に締結された後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0013】
先ず、本実施の形態のネジの構成を説明する。
図1は、本実施の形態のネジを模式的に示す斜視図である。
図2は、本実施の形態のネジが被締結部材に締結される前の状態を示す断面図である。
【0014】
ネジ1は、例えば、
図1に示すように、皿ネジであり、ネジ本体2及びバネ部3を備えている。ネジ本体2は、ネジ頭4及びネジ軸5を備えている。ネジ頭4は、円錐台形状を基本形態としており、大径側の面にドライバーなどの工具が挿入される凹部4aが形成されている。このとき、詳細な機能は後述するが、例えば、ネジ頭4の周面4bで成すテーパー角度は約90°であるとよい。
【0015】
ネジ軸5は、円柱形状を基本形態としており、図示を省略するが、ネジ軸5の周面5aに雄ねじ部が形成されている。ネジ軸5の根元側の端部は、ネジ頭4の小径側の面に固定されている。このとき、ネジ頭4の中心軸とネジ軸5の中心軸とは、略同軸に配置されている。
【0016】
バネ部3は、例えば、ネジ頭4に形成された溝部4cで囲まれた当該ネジ頭4の一部と略等しい形状とされている。溝部4cは、例えば、ネジ1の軸方向から見て、ネジ頭4の周縁部にコの字状に形成されており、溝部4cの両端部がネジ頭4の周面に到達している。そして、バネ部3の周面3aは、ネジ頭4の周面4bの一部と略等しい湾曲面とされており、バネ部3におけるネジ軸5の側の端部が当該ネジ軸5の小径側の端部に固定されている。
【0017】
ここで、バネ部3におけるネジ軸5に対して逆側の端部がネジ頭4の周面4bから外側に突出するように、バネ部3が外側に傾動している。そして、バネ部3は、バネ部3におけるネジ軸5の側の端部を軸に傾動可能である。このとき、バネ部3は、弾性変形して反発力を発現する。
【0018】
このようなバネ部3は、ネジ頭4の中心軸を中心に向かいように配置されているとよい。このとき、向かい合うバネ部3の周面3aで成すテーパー角度θは、
図2に示すように、90°以上であるとよい。
【0019】
次に、本実施の形態のネジ1を製造する流れを説明する。先ず、ネジ頭4とネジ軸5とが一体化されたネジ本体2を形成する。次に、ネジ頭4における予め設定されたバネ部3が形成される領域を囲むように溝部4cを形成し、バネ部3を形成する。そして、バネ部3をネジ頭4に対して外側に傾動させると、ネジ1を製造することができる。
【0020】
このとき、凹部4aが十字溝の場合、凹部4aと共に溝部4cの一部を形成すると、溝部4cの形成工程を簡略化することができ、ネジ1を簡単に製造することができる。但し、凹部4aの形状を問わず、凹部4aと共に溝部4cの一部を形成することができればよい。
【0021】
次に、本実施の形態のネジ1が被締結部材に締結された際のバネ部3の状態を説明する。
図3は、本実施の形態のネジが被締結部材に締結された後の状態を示す断面図である。ここで、被締結部材には、予めネジ穴の開口部の側の端部に皿モミ部が形成されているものとする。
【0022】
上述の構成のネジ1を被締結部材のネジ穴にねじ込むと、ネジ1のバネ部3がネジ穴の皿モミ部の周面に接触しつつ、ネジ頭4の内側に傾動する。そして、さらにネジ1を被締結部材のネジ穴にねじ込むと、ネジ1のバネ部3がネジ頭4の内側に傾動した状態で、バネ部3の周面が被締結部材におけるネジ穴の皿モミ部の周面と略面接触する。
【0023】
このとき、バネ部3は、ネジ頭4の外側に向かって反発力を発現し、当該反発力の鉛直成分が被締結部材におけるネジ穴の皿モミ部の周面を押し込むように作用する。これにより、バネ部3の周面3aと被締結部材におけるネジ穴の皿モミ部の周面との摩擦力が高くなり、ネジ1における被締結部材への締結力を向上させることができる。
【0024】
ここで、本実施の形態のバネ部3の周面3aは、ネジ頭4の周面4bの一部と略等しい湾曲面とされているため、上述のように、バネ部3の周面3aを被締結部材におけるネジ穴の皿モミ部の周面と略面接触させることができる。そのため、バネ部3の周面3aと被締結部材におけるネジ穴の皿モミ部の周面との摩擦力をさらに向上させることができ、ネジ1における被締結部材への締結力を向上させることができる。
【0025】
また、上述のようにバネ部3を向かい合うように配置している場合、バネ部3の反発力の水平成分を相殺することができる。そのため、ネジ1を真っ直ぐに被締結部材にねじ込むことができる。特に、本実施の形態のネジ頭4の周面4bで成すテーパー角度は約90°であり、ネジ1が被締結部材に締結された状態で、バネ部3の周面3aで成すテーパー角度θは約90°となるので、精度良く水平成分を相殺することができる。そして、バネ部3の反発力の鉛直成分を最大化することができる。
【0026】
このような本実施の形態のネジ1は、ネジ1が被締結部材に締結された際に、バネ部3がネジ頭4の外側に向かって反発力を発現し、当該反発力の鉛直成分が被締結部材におけるネジ穴の皿モミ部の周面を押し込むように作用する。これにより、バネ部3の周面3aと被締結部材におけるネジ穴の皿モミ部の周面との摩擦力が高くなり、ネジ1を被締結部材にねじ込むだけで、ネジ1における被締結部材への締結力を向上させることができる。そのため、ネジ1における被締結部材への締結作業の負担が増加することなく、被締結部材への締結力の向上を実現することができる。
【0027】
例えば、ネジ1を用いた場合、ネジ1における被締結部材への締結力を向上させるための緩み止め剤の使用を抑制できる。そのため、ネジへの緩め止め剤の塗布量のばらつきによる品質精度の低下を抑制できる。
【0028】
また、例えば、ネジ1を用いた場合、ネジ1における被締結部材への締結力を向上させるための皿ネジ用ワッシャの使用を抑制できる。そのため、皿ネジ用ワッシャの使用によってコストが上昇したり、ネジ頭が被締結部材から突出したり、することを抑制できる。
【0029】
しかも、本実施の形態のネジ1の製造方法は、ネジ頭4に溝部4cを形成し、バネ部3をネジ頭4の外側に傾動させるだけで、被締結部材への締結力の向上を実現できるネジ1を簡単に製造することができる。
【0030】
上述した実施の形態は本件発明者により得られた技術思想の適用に関する例に過ぎない。すなわち、当該技術思想は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは勿論である。
【0031】
例えば、上述した実施の形態では、ネジ頭4に溝部4cを形成することでバネ部3を形成したが、ネジ頭4の周面4bにバネ部3として板バネを設けてもよい。要するに、ネジ頭4の周面4bからバネ部3におけるネジ軸5に対して逆側の端部が突出し、ネジが被締結部材に締結された際にバネ部3の反発力の鉛直成分を当該被締結部材におけるネジ穴の皿モミ部の周面を押し込むように作用させることができればよい。
【0032】
例えば、上述した実施の形態では、凹部4aとして十字溝を例示しているが、凹部4aの形状は限定されず、例えば、六角穴でもよい。
【0033】
例えば、上述した実施の形態では、皿ネジとしてネジ1を構成しているが、ネジ1の形状は限定されない。
【符号の説明】
【0034】
1 ネジ
2 ネジ本体
3 バネ部、3a 周面
4 ネジ頭、4a 凹部、4b 周面、4c 溝部
5 ネジ軸、5a 周面