(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
グリースは、その基油や増ちょう剤によって分類されることが多い。その中でも、パーフルオロポリエーテル油をポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマーや無機増ちょう剤により増ちょうさせたグリースをフッ素グリースと呼ぶ。
【0003】
フッ素グリースは、その基油に由来する優れた性能により、潤滑性、耐熱性、酸化安定性、対樹脂性、対ゴム性、低発塵性、耐薬品性といった非常に多機能を誇るグリースである。このフッ素グリースは、特に、家電製品等の精密でデリケートな部分に使用されることが多い。家電製品は、製品によっては10年以上をメンテナンスすることなく取り扱うため、フッ素グリースの多機能性は要求仕様を十分満足させ得る。
【0004】
このように、フッ素系グリースはその性能に優れる一方で、高価なものである。そこで、フッ素グリースをフッ素系の溶剤であるハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボン等の溶剤に溶解又は分散した液状潤滑剤である溶剤希釈型フッ素系潤滑剤が用いられている(例えば、特許文献1)。このような溶剤希釈型フッ素系潤滑剤は、フッ素グリースを薄膜で塗布し得るため、フッ素グリースの使用量を減らすことができ、コストを低減することができる。また、溶剤希釈型フッ素系潤滑剤は、液状潤滑剤であるため、ディッピングや刷毛塗りといった塗布方法により作業効率・生産性を向上させることが可能になり、また、有効成分量をコントロールすることで溶剤の塗布量を調整可能となって、結果として生産コストを低減することができる。
【0005】
さて、上述したように、溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物は、部材に塗布されるものであるが、薄膜であるがゆえに、塗布状態の確認が困難となる。例えば、塗布対象が黒色や無色の部材である場合には視認することも可能であるが、塗布対象が白色の部材である場合に塗布状態を視認できないこともある。
【0006】
溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物の塗布状態の視認性を改善するためには、例えば、二硫化モリブデン等の白色以外の固体潤滑剤を配合することも考えられる。しかしながら、このような固体潤滑剤では、フッ素系溶剤との比重差により固体潤滑剤成分が沈降しやすくなり、塗布時に固体潤滑剤成分が不均一になり易いという不具合がある。
【0007】
その他、視認性改善のために顔料着色剤を組成物に添加した場合には、その組成物の潤滑性が失われ、潤滑剤として有効に使用することができない。また、組成物に染料着色剤を添加した場合には、殆どの染料着色剤がフッ素系溶剤に不溶であるため、着色は困難となる。さらに、上述したいずれの着色成分も、それぞれ特定の色の部材にしか視認性を有さないため、部材に応じて着色成分を選択する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で変更が可能である。
【0018】
≪1.溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物≫
本実施の形態に係る溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物(以下、単に「潤滑剤組成物」ともいう)は、フッ素グリースが溶剤に分散してなるものであって、パーフルオロポリエーテル油と、固体潤滑剤と、発光性化合物とを含有することを特徴としている。
【0019】
このような潤滑剤組成物では、発光性化合物を含有させてなることにより、塗布対象である部材の色にかかわらず、塗布した箇所を例えばブラックライト等で照射することによって視認可能に発光させることができる。また、このような発光性化合物を含有した潤滑剤組成物によれば、フッ素系潤滑剤の潤滑性を損ねることがなく、またハンドリング性に優れる。
【0020】
(1)パーフルオロポリエーテル油(基油)
ここで、パーフルオロポリエーテル油としては、基油として用いることができるものであれば特に限定されず、例えば下記一般式(i)〜(iv)で表される構造を有するものを挙げることができる。
【0021】
F−(CFCF
3−CF
2−O−)
n−CF
2−CF
3・・(i)
(なお、式(i)中のnは、0又は正の整数である。)
CF
3−(O−CFCF
3−CF
2)
p−(O−CF
2−)
q−O−CF
3・・(ii)
(なお、式(ii)中のp及びqは、それぞれ独立に、0又は正の整数である。)
F−(CF
2−CF
2−CF
2−O−)
r−CF
2−CF
3・・(iii)
(なお、式(iii)中のrは、0又は正の整数である。)
CF
3−(O−CF
2−CF
2−)
s−(O−CF
2−)
t−O−CF
3・・(iv)
(なお、式(iv)中のs及びtは、それぞれ独立に、0又は正の整数である。)
【0022】
具体的には、例えば、Krytoxシリーズ(デュポン株式会社製)、Fomblin Yシリーズ(ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン製)、Fomblin Mシリーズ(ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン製)、Fomblin Wシリーズ(ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン製)、Fomblin Zシリーズ(ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン製)、デムナムSシリーズ(ダイキン工業製)等の市販品を使用することができる。
【0023】
パーフルオロポリエーテル油としては、上述したような構造を有するものを挙げることができるが、その中でも、粘度が40℃で15mm
2/s〜600mm
2/sの範囲であるものを用いることが好ましい。
【0024】
(2)固体潤滑剤
固体潤滑剤としては、後述する溶剤であるフッ素系溶剤の比重よりも大きいものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、メラミンシアヌレート、窒化ホウ素、グラファイト、二硫化モリブデン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等が挙げられる。その中でも特に、白色で低摩擦係数を有するポリテトラルオロエチレンを用いることが好ましい。
【0025】
例えば、固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンを用いる場合、平均粒径が10.0μm以下のものを用いることが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンの粒径が細かいほど、基油のパーフルオロポリエーテル油との接触面積が大きくなるため、パーフルオロポリエーテル油の油分離を小さくする効果が得られる。
【0026】
一方で、ポリテトラフルオロエチレンとして平均粒径が10.0μmより大きい粒径のものを用いた場合、基油のパーフルオロポリエーテル油との接触面積が小さくなり、すなわち親和力が小さくなる。そのため、同量を配合した場合でも、平均粒径が10.0μm以下のものに比べて油分離が多くなり、また、ちょう度が大きくなって流動性が増すために適用部からの流出が起こり易くなる。ここで、ポリテトラフルオロエチレンの配合量を増やすことで、グリースのちょう度及び油分離量を低減させることは可能であるが、グリース中の固体成分比が大きくなってしまうため、グリースの粘性が増大し、ハンドリング及び低温下でのトルクが増大する。
【0027】
このように、固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンを用いる場合、その粒径が細かいものほどパーフルオロポリエーテル油との親和力が大きくなるため好ましい。具体的には、上述したように平均粒径が10.0μm以下のものを用いることが好ましく、0.1μm〜5.0μmのものを用いることがより好ましい。
【0028】
固体潤滑剤の配合量は、基油であるパーフルオロポリエーテル油との配合比に基づいて決定する。具体的には、パーフルオロポリエーテル油:固体潤滑剤の比率が、97:3〜50:50の範囲となるように配合させることが好ましい。固体潤滑剤の配合比率が3質量%以上であることにより潤滑性を高めることができる。一方で、固体潤滑剤の配合比率が50質量%以下であることにより、乾燥後の状態において、ハンドリング性を高めることができ、例えばトルクが高くなる等の弊害が生じることを防止できる。
【0029】
上述した固体潤滑剤と、基油であるパーフルオロポリエーテル油とが、当該溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物の実質的な有効成分となる。この有効成分の組成物中における割合としては、1質量%〜50質量%であることが好ましく、3質量%〜25質量%であることがより好ましい。組成物中における有効成分量が1%以上であることにより、潤滑性を高めることができる。一方で、有効成分量が50%以下であることにより、溶剤希釈型フッ素系潤滑剤の流動性を高め、ハンドリング性や均一薄膜塗布性を高めることができる。
【0030】
(3)発光性化合物
本実施の形態に係る溶剤希釈型フッ素潤滑剤組成物においては、上述した潤滑剤組成物としての有効成分である固体潤滑剤とパーフルオロポリエーテル油に対して、発光性化合物が含有されていることを特徴としている。
【0031】
発光性化合物としては、りん光又は蛍光を発する有機化合物群であれば特に限定されるものではない。このような発光性化合物としては、例えば、クマリン系化合物、ピラジン系化合物、キナクリドン系化合物、ナフタルイミド系化合物、ピロメテン系化合物、オキサジアゾール系化合物、フルオレン系化合物、スチリルベンゼン系化合物、シアニン系化合物、メロシアニン系化合物、ペリレン系化合物、スクアリリウム系化合物等が挙げられる。その中でも、例えばハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶剤に対し溶解度が高いという観点から、クマリン系化合物を用いることが好ましい。
【0032】
ここで、「クマリン系化合物」とは、その分子構造にクマリン骨格を有するものをいい、クマリン及びその誘導体を含む包括的な概念である。なお、クマリン系化合物は、蛍光増白剤として用いられている。
【0033】
クマリン系化合物は、ラクトン骨格を有する芳香族化合物であり、2H−クロメン−2−オン又は1−ベンゾピラン−2−オンとも呼ばれる。このようなクマリン骨格の7位に電子供与基が存在することで、特に強い光吸収や発光を示すようになる。また、この化合物は、3位又は4位に置換基を導入することで、吸収・発光波長を大きく変化させることができる。
【0034】
具体的に、クマリン系化合物としては、例えば、東京化成工業株式会社から、3−(2−Benzothiazolyl)−7−(diethylamino)coumarin,3−(2−Benzimidazolyl)−7−(diethylamino)coumarin,Coumarin 545T,Coumarin 102,Coumarin 314,Coumarin 6H,7−(Diethylamino)−3−(1−methyl−2−benzimidazolyl)coumarin,Coumarin 153,Coumarin 478,Coumarin 498,Coumarin 504T,Coumarin 521T,Coumarin 525,Coumarin 337,Coumarin 510,3,3’−Carbonylbis(7−diethylaminocoumarin),Coumarin−3−carboxylic Acid,7−(Diethylamino)coumarin,7−(Dimethylamino)−4−methylcoumarin,7−(Dimethylamino)−4−(trifluoromethyl)coumarin,7−(Diethylamino)coumarin−3−carboxylic Acid,7−(Diethylamino)coumarin−3−carbonitrile,7−(Diethylamino)−4−(trifluoromethyl)coumarin,7−(Diethylamino)−4−(hydroxymethyl)coumarin,7−(Diethylamino)−3−(2−thienyl)coumarin,7−(Diethylamino)−3−phenylcoumarin,Ethyl 7−(Diethylamino)coumarin−3−carboxylate,Ethyl 6−[4−(Diphenylamino)phenyl]coumarin−3−carboxylate,7−(Ethylamino)−4−methylcoumarin,7−(Ethylamino)−4,6−dimethylcoumarin,Hexyl 7−(Diethylamino)coumarin−3−carboxylate,7−Diethylamino−4−methylcoumarin,Solvent Red 197等が市販されている。また、日本化薬株式会社からKayalight Bとしても市販されている。
【0035】
その他、クマリン系化合物としては、例えば、住友化学株式会社製Whitex、日本化薬株式会社製Kayaphor,Mikawhite、昭和化工株式会社製Illuminarl、昭和化学工業株式会社製Hakkol、日本曹達株式会社製KayColl、株式会社日本化学工業所製Nikkabright、三井BASF株式会社製Mikephor,Ultraphor、Ciba社製Uvitex、Clariant社製Leucophor,Hostalux、Clariant社製Leucophor,Hostalux、Bayer社製Blankophor,Tasphor等を用いることもできる。
【0036】
上述したように、このようなクマリン系化合物は、例えばハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶剤に対し溶解度が高い。したがって、部材への塗布時にクマリン系化合物をフッ素系溶剤に十分に溶解させることができ、部材への塗布に際し、例えばブラックライトの照射に起因する発光により、塗布部を判断することができる。
【0037】
発光性化合物の含有量としては、特に限定されるものではないが、例えば、溶剤と発光性化合物の総量100質量部に対して0.0001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.005質量%〜5質量%であることがより好ましく、0.001質量%〜3質量%であることがさらに好ましく、0.001質量%〜2質量%であることが特に好ましい。なお、発光性化合物がクマリン系化合物である場合、その含有量が2質量%以下であれば、例えば−25度以下の低温下でも高い溶解性を維持することができる。
【0038】
(4)フッ素系溶剤
本実施の形態に係る溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物は、パーフルオロポリエーテル油を含有するグリースをフッ素系溶剤に分散(又は溶解)させた潤滑剤組成物である。フッ素系溶剤としては、特に限定されるものではないが、ハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボンを用いることが好ましい。
【0039】
ハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロカーボンは、パーフルオロポリエーテル油との溶解性が高く、また、他のハロゲン系溶剤に比べて地球温暖化係数が低いため、近年の環境意識の高まりを考慮して特に好ましい。具体的には、NOVECシリーズ(スリーエムジャパン製)、アサヒクリンシリーズ(旭硝子株式会社製)、バートレルシリーズ(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等の市販品を用いることができる。
【0040】
また、フッ素系溶剤としては、近年環境対応型として普及し始めている、ハイドロフルオロオレフィンを用いることもできる。例えば、スープリオン(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)等の製品が市販されており、好適に用いることができる。
【0041】
さらに、フッ素系溶剤としては、1,3−トリフルオロメチルベンゼンを用いることが好ましい。1,3−トリフルオロメチルベンゼンは、上述したクマリン系化合物の溶解性が特に高い。1,3−トリフルオロメチルベンゼンは、例えば、セントラル硝子株式会社製のものが市販されている。1,3−トリフルオロメチルベンゼンを用いる場合、さらにハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン等の溶剤と併用することが好ましい。このような溶剤と1,3−トリフルオロメチルベンゼンとを併用することにより、パーフルオロポリエーテル油の分散性や溶解性を高めることができる。
【0042】
併用する溶剤の含有量としては、グリースの基油の含有量により適宜調整することができ特に制限されないが、溶剤の全量を100質量%としたとき1質量%以上であることが好ましい。併用する溶剤の含有量が1質量%以上であることにより、パーフルオロポリエーテル油の分散又は溶解性を高め、潤滑性をより高めることができる。なお、併用する溶剤の含有量の上限値としては、特に限定されないが、溶剤の全量を100質量%としたとき60質量%以下とすることが好ましく、50質量%以下とすることがより好ましく、40質量%以下とすることがさらに好ましく、30質量%以下とすることが特に好ましい。
【0043】
(5)その他
なお、溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物には、上述した成分の他、その効果を阻害しない範囲において種々の添加剤を含有することができる。例えば、摩擦調整剤、金属腐食防止剤、防錆剤といった種々の添加剤を含有することができる。
【0044】
≪2.溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物の製造方法≫
本実施の形態に係る溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物は、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、フッ素系溶剤であるハイドロフルオロエーテル等を容器に秤量し、公知の撹拌方法にて撹拌しながら、必要に応じて分散性向上剤を添加し、そこにフッ素グリースを投入して分散させる。また、必要に応じて各種の添加剤を加えて分散させることができる。これにより、フッ素グリースを溶剤に分散させてなる溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物を得ることができる。
【0045】
フッ素系溶剤へのフッ素グリースの分散処理に際しては、例えば、プロペラ撹拌機、ディゾルバー、ディスパーマット、スターミル、ダイノーミル、アジテーターミル、クレアミックス、フィルミックス等の湿式撹拌・分散処理装置を用いて行うことができる。なお、上述したような順序で各成分を順に添加することに限られず、各成分を同時に添加して撹拌することもできる。
【0046】
フッ素系溶剤に分散させるフッ素グリースの製造方法についても、特に限定されるものではなく、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、基油であるパーフルオロポリエーテル油に、固体潤滑剤と、発光性化合物と、さらに必要に応じて各種の添加剤とを混合した後、100℃〜150℃程度の温度にて混練する。これにより、発光性化合物を含有するフッ素グリースを得ることができる。
【0047】
フッ素グリースの製造に際しての混練処理や分散処理についても、例えば、3本ロールミル、万能撹拌機、ホモジナイザー、コロイドミル等の周知の撹拌・分散処理装置を用いて行うことができる。
【0048】
なお、溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物の製造方法としては、これに限られず、例えば、予めフッ素系溶剤に発光性化合物を分散させて用意しておき、その発光性化合物を含むフッ素系溶剤と、パーフルオロポリエーテル油と固体潤滑剤とを含むフッ素グリースとを混合して撹拌するようにしてもよい。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の具体的な実施例を示してより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
<成分材料>
以下の溶解性試験、目視認性試験及び潤滑性試験においては、成分材料としてそれぞれ以下のものを用いた。
(基油)
パーフルオロポリエーテル油 :デムナムS−65(ダイキン工業株式会社製)
(固体潤滑剤)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) :ZONYL TLP 10F−1
(ケマーズ社製)
(フッ素系溶剤)
フッ素系溶剤A :NOVEC7100(スリーエムジャパン社製)
フッ素系溶剤B :メタキシレンヘキサフロライド(セントラル硝子株式会社製)
(発光性化合物)
クマリン系化合物 :Kayalight B(日本化薬株式会社製)
(着色剤)
染料着色剤A :Clormate Blue 8A(株式会社シラド化学製)
染料着色剤B :Clormate Red(株式会社シラド化学製)
染料着色剤C :OIL Green FF new(株式会社シラド化学製)
【0051】
<溶解性試験>
[試料の作製]
フッ素系溶剤A(NOVEC7100)又はフッ素系溶剤B(メタキシレンヘキサフロライド)に対し、表1に示す量の発光性化合物(クマリン系化合物)又は着色剤(染料着色剤A〜C)を添加し、プロペラ撹拌機で10分撹拌し、試料を作製した。
【0052】
[溶解性の評価方法]
得られたそれぞれの試料を、白色のPOM板にディッピングし、5分間静置した後、25℃又は−25℃の環境下で1時間静置した液を、目視にて確認し、発光性化合物又は着色剤の溶解性を評価した。具体的に、液自身は着色するが透明であり堆積物が無い状態を、溶解性を有するとして『○』と、不定形または針状結晶が底部に堆積した状態を、溶解性を有さないとして『×』と評価した。
【0053】
[評価結果]
表1は、実施例1〜8及び比較例1〜3の試料の組成及び溶解性試験の結果である。
【0054】
【表1】
【0055】
<視認性試験>
[試料の作製]
パーフルオロポリエーテル油とポリテトラフルオロエチレンとを混練し、3本ロールミルで分散処理を施して、グリース組成物を作製した。
一方で、フッ素系溶剤A(NOVEC7100)単独又はフッ素系溶剤Aとフッ素系溶剤B(メタキシレンヘキサフロライド)の混合溶剤に対し、表2に示す量の発光性化合物(クマリン系化合物)又は着色剤(染料着色剤A〜C)を添加し、プロペラ撹拌機で10分撹拌し、発光性化合物又は着色剤を含有するフッ素溶液を得た。
その後、発光性化合物又は着色剤を含有するフッ素溶液に、作製したグリース組成物を表2に示す割合で投入して撹拌混合した。これにより、溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物を作製した。
【0056】
[視認性の評価方法]
得られた溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物を、白色のPOM樹脂(ジュラコンM−25S、ポリプラスチックス株式会社製)に塗布し、潤滑剤組成物による着色度合を、自然光下又はブラックライトのUV照射下で、目視により評価した。ここで、ブラックライトの波長は365nmとした。
【0057】
<潤滑性試験>
[潤滑性の評価方法]
溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物の潤滑性について、視認性試験で作製したものと同じを用いて評価した。具体的には、試料試験機として株式会社レスカ製のフリクションプレイヤーを用い、以下に示す試験条件で、5000回摺動させたときの平均摩擦係数を測定することによって評価した。
(試験条件)
評価試験機 :フリクションプレイヤー
テストピース :上 球(ABS樹脂)、下 板(PC)
ボールオンディスク
荷重 :200gf
摺動形態 :円弧往復運動
回転半径 :25mm
回転速度 :9.5rpm
回転角度 :46度
振幅の幅(弧の長さ) :20mm
摺速 :24.9mm/s
温度 :室温
往復回数 :5000回
【0058】
[評価結果]
表2は、実施例9〜16比較例4〜7における溶剤希釈型フッ素系潤滑剤組成物の組成を示すとともに、上述した目視認性、潤滑性評価の結果をまとめて示す。
【0059】
【表2】