【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)水路の堆積物を除去する水路堆積物除去装置であって、操向ハンドルを介して使用者により操向され、少なくとも1つの前輪及び少なくとも2つの後輪を有する走行部と、該走行部に搭載され、該走行部の前後方向に基づいた基準方向で、前記走行部の下部と該下部の上斜め後方とに位置する、側方向と平行な2つの回転軸の周囲を通る無端軌道に沿って回転する長尺環状体を有し、該長尺環状体の外周部に、堆積物を掘削するための複数のバケットが、前記長尺環状体の回転方向に互いに間隔を空けて、着脱可能に取り付けられた掘削揚土部と、前記走行部に搭載され、前記基準方向での側方向の一方へ堆積物を搬送する搬送機構を有し、前記掘削揚土部により揚土された堆積物を、投入口を介して受けた後、前記搬送機構により搬送して排出する搬送部と、を含み、前記掘削揚土部の前記複数のバケットは、前記長尺環状体の回転方向と平行な側面を有する平板状の複数の移動刃が、前記側方向に互いに間隔を空けて設けられて成るフォーク型バケットである水路堆積物除去装置(請求項1)。
【0007】
本項に記載の水路堆積物除去装置は、走行部、掘削揚土部、及び搬送部を含んでいる。走行部は、操向ハンドル、少なくとも1つの前輪、及び少なくとも2つの後輪を有し、そのような走行部に掘削揚土部及び搬送部が搭載されている。このため、装置全体が前輪及び後輪によって支持された状態で、操向ハンドルを介して使用者により操向されながら、意図した位置で作業が行われるものとなる。又、前輪と後輪とを合わせて、少なくとも3つの車輪で装置全体が支持されるため、作業時や停止時においても安定して自立するものである。
【0008】
掘削揚土部は、無端軌道に沿って回転する長尺環状体と、この長尺環状体の外周部に、長尺環状体の回転方向に互いに間隔を空けて着脱可能に取り付けられた複数のバケットとを有している。長尺環状体が回転する無端軌道は、走行部の前後方向に基づいた基準方向で、走行部の下部とこの下部の上斜め後方とに位置する、側方向と平行な2つの回転軸の周囲を通るものである。このため、長尺環状体がそのような無端軌道で回転すると、複数のバケットは、走行部の前方下部とそこから上斜め後方の位置との間を、繰り返し斜めに移動するような動作を行う。そして、走行部の前方下部において堆積物を掘削し、そのまま上斜め後方へと揚土するものである。
【0009】
搬送部は搬送機構を有し、この搬送機構によって、掘削揚土部により揚土されて投入口を介して受けた堆積物を、走行部の前後方向に基づいた基準方向での側方向の一方へ搬送して排出する。すなわち、掘削揚土部によって堆積物の掘削及び揚土が行われ、そこから搬送部によって堆積物が搬送されるため、堆積物の除去に必要な掘削、揚土、搬送という一連の工程が同時に行われるものとなる。しかも、それらの工程を行う掘削揚土部及び搬送部は、使用者により操向ハンドルを介して操向される走行部に搭載可能な大きさであり、装置全体の小型化が図られている。このため、進入路の大きさや作業用通路の有無といった現場条件の如何に関わらず、水路の堆積物が除去されるものである。
【0010】
更に、本項に記載の水路堆積物除去装置は、掘削揚土部で使用される複数のバケットがフォーク型バケットであり、これらフォーク型バケットの各々は、長尺環状体の回転方向と平行な側面を有する平板状の複数の移動刃が、側方向に互いに間隔を空けて設けられている。これにより、長尺環状体が回転すると、フォーク型バケットの移動刃は、平板状の幅の小さい細面が進行方向に向けられた状態で回転移動し、堆積土砂へと貫入されるため、堆積土砂面への進入時の抵抗が小さく抑えられる。しかも、移動刃の細面が堆積土砂中を移動することで、土砂に生えた雑草の根などが切断されるものとなる。従って、フォーク型バケットを移動させるための、長尺環状体の回転に必要な駆動力が抑制されながら、効率的に堆積物が掘削されるものである。
【0011】
又、フォーク型バケットの移動刃は、その側面が堆積土砂への貫入方向や移動方向と直交する方向へ向けられている。ここで、特に農業用水路の堆積土砂は、一般的に粘性が高いため、面積が大きい移動刃の側面に付着し易く、複数の移動刃の間に多くの堆積土砂が付着する。従って、移動刃の側面が移動方向と直交する方向へ向けられていても、複数のフォーク型バケットの連続的な回転移動により、主に移動刃の細面で掘削しながら、堆積土砂の粘着力を利用して移動刃の側面間で多くの堆積土砂が揚土されることになる。これにより、掘削から揚土のための堆積土砂の移載が必要なく、掘削と揚土とが連続して行われ、堆積物の除去が効率的に行われるものとなる。
【0012】
(2)上記(1)項において、前記投入口の上方に着脱可能に取り付けられた複数の固定刃を含み、該複数の固定刃は、前記フォーク型バケットの前記複数の移動刃の各々が、隣接する固定刃の間を通り抜けるような位置に、前記側方向に互いに間隔を空けて取り付けられている水路堆積物除去装置(請求項2)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、掘削揚土部から搬送部へ堆積物を移載するための投入口の上方に、着脱可能に取り付けられた複数の固定刃を含んでいる。これら複数の固定刃は、回転移動する各フォーク型バケットの複数の移動刃の各々が、隣接する固定刃の間を通り抜けるような位置に、側方向に互いに間隔を空けて取り付けられている。すなわち、複数の固定刃が設けられた位置を複数の移動刃が通るとき、固定刃と移動刃とが側方向に交互に配置される態様となる。これにより、複数の移動刃の側面間に付着して揚土された堆積土砂が、固定刃の各々によって削ぎ落とされ、投入口を通って搬送部へと落下する。従って、揚土された堆積土砂の粘性が高くても、移動刃に付着した堆積土砂が確実に剥がされるものとなり、掘削揚土部から搬送部への堆積物の移載が効率よく行われることとなる。
【0013】
(3)上記(2)項において、前記複数の固定刃の各々は、前記基準方向での上斜め前方へ延びると共に、前記無端軌道の頂上を通って下降に転じた前記フォーク型バケットの移動方向と対向する凸条部を有する水路堆積物除去装置(請求項3)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、複数の固定刃の各々が、走行部の前後方向に基づいた基準方向での上斜め前方へ延びているものである。すなわち、複数の移動刃とのすれ違いを実現するために、複数の固定刃は、その先端側が掘削揚土部の長尺環状体の方へ向けられ、基端側が投入口へ向けられることになる。又、複数の固定刃の各々は、長尺環状体が回転する無端軌道の頂上を通って下降に転じたときの、フォーク型バケットの移動方向と対向する凸条部を有している。すなわち、各固定刃は、その延在方向に沿った凸条部を有し、その凸条部の延在方向についての断面の頂点(峰)側が、フォーク型バケットの移動刃の移動方向と対向する方向に向けられている。
【0014】
これにより、固定刃とすれ違う際に、フォーク型バケットの移動刃に付着した堆積土砂は、固定刃の凸条部の峰で左右に削ぎ分けられ、それらが凸条部の麓や固定刃の基端側で集積し、自重で投入口へと落下する。従って、掘削揚土部から搬送部への堆積物の移載が、上記のような固定刃を介して、より効率的に行われるものである。しかも、固定刃の凸条部の峰が、移動刃の移動方向と対向していることで、移動してくる移動刃が固定刃に対して突き合わさることはない。すなわち、移動してくる移動刃が仮に固定刃に接触したとしても、固定刃の凸条部の峰から麓までの面に沿って移動刃が滑りながら移動するため、移動刃と固定刃との突き合わせ衝突が防止されるものである。
【0015】
(4)上記(1)から(3)項において、前記複数の移動刃の各々は、前記側方向視で、前記長尺環状体の外周部から、該外周部と直交する方向に突出した矩形をなす水路堆積物除去装置(請求項4)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、複数の移動刃の各々が、走行部の前後方向に基づいた側方向視で、長尺環状体の外周部から、その外周部と直交する方向に突出した矩形をなすものである。これにより、長尺環状体の無端軌道に沿って斜めに移動する複数の移動刃は、掘削時に矩形の角部分から堆積土砂へ貫入されることになるため、貫入抵抗がより抑制されるものとなる。
【0016】
(5)上記(1)から(4)項において、前記投入口の前記側方向の幅が、前記フォーク型バケットの、前記複数の移動刃が設けられている前記側方向についての幅よりも大きい水路堆積物除去装置(請求項5)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、掘削揚土部から搬送部へ堆積物を移載するための投入口の側方向の幅が、フォーク型バケットの、複数の移動刃が設けられている側方向についての幅よりも大きいものである。これにより、固定刃によって複数の移動刃から剥がされた堆積土砂が、投入口の周りの壁部に接触することなく落下するため、そのような壁部への堆積土砂の付着が防止され、投入口の周辺が堆積土砂により閉塞してしまうリスクが避けられるものとなる。
【0017】
(6)上記(1)から(5)項において、前記搬送機構は、前記側方向の両端にのみ軸部を有すると共に、前記側方向と平行な軸を中心軸とした螺旋状の羽根を有する形式のスクリューコンベアである水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、側方向の一方へ堆積物を搬送する搬送部の搬送機構が、スクリューコンベアにより構成されたものである。このスクリューコンベアは、側方向の両端にのみ軸部を有し、その軸部間に、側方向と平行な軸を中心軸とした螺旋状の羽根が設けられた、所謂リボン型のスクリューコンベアである。このような構成により、投入口を介して搬送部に落下した堆積土砂が、端部に設けられた軸部を介して回転されるスクリューコンベアの、軸部を有さない螺旋状の羽根によって側方向の一方へ搬送される。このため、軸部を有する羽根によって堆積土砂を搬送する場合と比較して、堆積土砂が付着することなくスムーズに搬送されるものとなり、堆積土砂によって搬送部が閉塞してしまうリスクが大幅に低減されるものである。
【0018】
(7)上記(6)項において、前記螺旋状の羽根の前記側方向についての間隔が、前記フォーク型バケットの、前記複数の移動刃が設けられている前記側方向についての幅よりも大きい水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、スクリューコンベアの螺旋状の羽根の側方向についての間隔、換言すれば、螺旋状の羽根の軸方向視で同じ回転位相に位置している、側方向に隣接する羽根同士の間隔が、フォーク型バケットの、複数の移動刃が設けられている側方向についての幅よりも大きいものである。これにより、固定刃によって複数の移動刃から剥がされた堆積土砂が、想定される堆積土砂の落下範囲よりも大きな間隔を有する羽根に向かって落下するため、搬送部によって円滑に取り込まれるものとなる。
【0019】
(8)上記(6)(7)項において、前記搬送部は、前記側方向視で円弧状の底部と、該底部と対向する開閉可能な蓋部とを有し、内部に前記スクリューコンベアが設置されるケース体を含む水路堆積物除去装置(請求項6)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、内部にスクリューコンベアが設置されるケース体を搬送部が含むものであり、このケース体は、側方向視で円弧状の底部を有している。すなわち、ケース体の底部は、スクリューコンベアの側方向視形状に倣った形状を有していることで、堆積土砂が停滞するような隙間の形成を防止するものである。更に、ケース体は、側方向視で底部と対向する開閉可能な蓋部を有しており、この蓋部が閉じられた状態でスクリューコンベアが回転されることで、搬送される堆積土砂の上方への逸脱が防止され、強制的に堆積土砂が側方向の一方へ移動されるものである。又、蓋部が開かれると、上方からケース体の内部が確認される状態になるため、搬送部のメンテナンス性が高められるものとなる。
【0020】
(9)上記(8)項において、前記搬送部は、前記ケース体の、前記側方向の前記一方側の一部と、前記スクリューコンベアとが取り外し可能に構成されている水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、搬送部において、ケース体の側方向の一方側(走行部を中心とした側方向外側)の一部と、ケース体の内部に設置されるスクリューコンベアとが、取り外し可能に構成されたものである。ここで、搬送部は、側方向の一方へと堆積土砂を搬送するものであるため、その一方側へと張り出ており、作業を伴わない移動時や運搬車などによる運搬時に、水路堆積物除去装置の姿勢の安定性が保たれない虞がある。そこで、上述したような取り外しが可能であることで、移動時や運搬時にケース体の一部及びスクリューコンベアが取り外されて、側方向の一方側へと張り出た部分が無くなる或いは少なくなり、装置の姿勢の安定性が保たれるものである。しかも、そのような状態では装置の大きさがよりコンパクトになるため、装置の収容時の省スペース化が図られるものである。
【0021】
(10)上記(8)(9)項において、前記ケース体は、前記側方向の前記一方側の端部の下方に、開口部が設けられている水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、搬送部のケース体の、側方向の一方側の端部の下方に開口部が設けられていることで、ケース体の内部でスクリューコンベアにより一方側の端部まで搬送された堆積土砂が、開口部から自由落下して排出されるものである。このような単純な構造にも関わらず、ケース体の内部から堆積土砂が円滑に排出されるものとなる。
【0022】
(11)上記(1)から(10)項において、前記走行部は、前記後輪を駆動するためのエンジンを有し、該エンジンにより、前記掘削揚土部の前記長尺環状体を回転させる駆動力と、前記搬送部の前記搬送機構を駆動する駆動力とが供給される水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、走行部が後輪を駆動するためのエンジンを有し、更にこのエンジンによって、掘削揚土部及び搬送部にも駆動力が供給されるものである。すなわち、エンジンは、掘削揚土部の長尺環状体を無端軌道に沿って回転させるための駆動力と、搬送部の搬送機構を駆動するための駆動力(上記(6)項に記載したスクリューコンベアを回転させるための駆動力)とを供給する。これにより、走行部に搭載される1つのエンジンから、装置の移動、堆積物の掘削、揚土、及び搬送のための駆動力が得られるため、装置の小型化が維持されたまま、堆積物の除去作業の省力化が図られるものである。
【0023】
(12)上記(11)項において、前記エンジンから前記長尺環状体及び前記搬送機構に対して、チェーン及びスプロケットを介して駆動力が伝達されるように構成されている水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、チェーン及びスプロケットを介して、エンジンから長尺環状体及び搬送機構へ駆動力が伝達されるように構成されたものである。すなわち、1つのエンジンから供給される駆動力によって、装置の移動と堆積物の除去作業とが行われるため、長尺環状体の回転速度や搬送機構の駆動速度は、装置の移動速度に比例することになる。そこで、エンジンと長尺環状体及び搬送機構との間に、スプロケットにより実現される固定減速機が介在していることで、装置の移動量と堆積物の除去作業量との均衡化が図られるものである。又、介在するスプロケットの歯数が変更されることで、減速比の調整が行われるものとなる。更に、上記のような構成により、エンジンと長尺環状体及び搬送機構との間には変速機が具備されないため、装置の軽量化や低廉化に貢献するものである。
【0024】
(13)上記(11)(12)項において、前記後輪は、前記エンジンから受ける駆動力が、切断可能及び/又は低減可能に構成されている水路堆積物除去装置(請求項7)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、エンジンによって後輪に供給される駆動力が、切断可能及び/又は低減可能に構成されているものである。ここで、掘削揚土部の掘削能力は、硬さ、粘性、含水量、根の入り具合、堆積土厚といった堆積土の状態によって変化するため、装置の移動速度に掘削能力が追い付かなくなる場合が想定される。そこで、必要に応じて後輪への駆動力が切断されることで、使用者によって手押しで装置が移動されるものとなるため、必要な場所で装置が前後に移動されながら、堆積土砂が取り残されずに確実に掘削揚土されるものである。又、後輪への駆動力が低減可能に構成されている場合は、掘削能力と均衡がとれるように装置の移動速度が低減されながらも、エンジンからの駆動アシストを受けながら走行することになるため、堆積土砂の除去作業の効率化及び省力化の双方が図られるものとなる。
【0025】
(14)上記(1)から(13)項において、前記前輪は、地面に接触する高さ位置が、前記走行部に対して相対的に調整可能に構成されている水路堆積物除去装置(請求項8)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、前輪の地面に接触する高さ位置が、走行部に対して相対的に調整可能に構成されているものである。すなわち、他の構成要素を搭載している走行部に対して、走行部を支える前輪の地面に接触する高さ位置が調整されることで、走行部の前側の高さが調整されることになる。このため、走行部の前側の高さが比較的低く調整されている場合は、走行部の前方下部を通って回転移動するバケットが、堆積土砂面に達して貫入されるようになるため、この状態では堆積土砂の掘削作業が行われるものとなる。更にこの状態では、走行部の前側の高さが、堆積土の深さに応じた掘削に適した高さに調整されてもよい。これに対し、走行部の前側の高さが比較的高く調整されている場合は、走行部の前方下部を通るバケットが、堆積土砂面や地面に届かない高さに位置するため、この状態では作業時以外の装置の移動が円滑に行われるものとなる。
【0026】
(15)上記(1)から(14)項において、前記走行部は、前記前輪と前記後輪との間に、着脱可能に補助輪が取り付けられ、該補助輪は、少なくとも前記複数のバケットが地面に接触しない高さまで前記走行部を持ち上げた状態で、前記後輪と共に前記走行部を支持するように構成されている水路堆積物除去装置(請求項9)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、走行部の前後方向についての前輪と後輪との間に、着脱可能に補助輪が取り付けられるものである。この補助輪が取り付けられると、補助輪と後輪とで走行部が支持され、走行部の前方下部を通るバケットが地面に届かなくなるように、走行部が持ち上げられる。又、それと同時に、前輪と後輪とで走行部が支持されていた状態と比較して、ホイールベース(前輪又は補助輪と後輪との間の距離)が短くなる。これにより、水路への移動時や運搬車への積み下ろし時などに、傾斜面を移動する必要が生じても、装置の底面が傾斜面の頂上近傍などに接触することなく、装置が円滑に移動されるものとなり、例えば吊り具などで装置を移動させる必要がないものである。
【0027】
(16)上記(1)から(15)項において、前記後輪は、前記側方向の位置が、前記掘削揚土部を中心として外側に変更可能に構成されている水路堆積物除去装置(請求項10)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、後輪の側方向の位置が、掘削揚土部を中心として外側に変更可能に構成されたものである。すなわち、装置の正面視で、少なくとも2つの後輪のうち、右側に位置する後輪は、より右側へと位置が変更され、左側に位置する後輪は、より左側へと位置が変更されるようになっている。ここで、幅が大きい水路などでは、水路に沿って移動しながらの除去作業が、水路の幅方向に位置を変えながら繰り返し行われ、そのとき、これから除去作業が行われる経路の隣に、既に堆積物が除去されていることで生じた轍が形成されている場合がある。そのような場合に、後輪の側方向の位置が轍などを避ける位置に調整されることで、安定した姿勢で堆積物の除去作業が行われるものとなる。
【0028】
(17)上記(1)から(16)項において、前記前輪は、地面において360度旋回可能な状態と旋回不可の状態とが、切り替え可能に構成されている水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、前輪が、地面において360度旋回可能な状態と旋回不可の状態とが切り替え可能に構成されているものである。これにより、作業中の装置の方向転換の要否や、装置が移動される路面状態などに応じて、前輪の旋回の可不可が切り替えられるため、装置の操向性が高められるものである。
【0029】
(18)上記(1)から(17)項において、前記側方向の前記一方側の後輪は、前記一方側と反対側の後輪と比較して、車輪幅が大きい或いは車輪の数が多い水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、側方向の一方へ堆積物を搬送する搬送機構を具備した搬送部が張り出ている方向である、側方向の一方側に位置する後輪が、その一方側と反対側に位置する後輪と比較して、車輪幅が大きい或いは車輪の数が多いものである。これにより、搬送部が張り出ていることで装置重量の負担が大きくなる一方側の後輪の、接地面積が大きくなるため、装置全体が安定して支えられるものとなる。
【0030】
(19)上記(1)から(18)項において、前記走行部は、市販の小型耕運機が流用されて構成されている水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、走行部が流用された市販の小型耕運機により構成されたものであり、特に小型耕運機の中で、操向ハンドル、少なくとも1つの前輪、少なくとも2つの後輪、エンジンなどを具備したものが利用される。これにより、本装置専用に走行部を製作する場合と比較して、コストが大幅に抑えられながらも、必要な機能が問題なく実現されるものである。
【0031】
(20)水路堆積物除去装置を利用して水路の堆積物を除去する方法であって、前記水路堆積物除去装置として、操向ハンドルを介して使用者により操向され、少なくとも1つの前輪及び少なくとも2つの後輪を有する走行部と、該走行部に搭載され、該走行部の前後方向に基づいた基準方向で、前記走行部の下部と該下部の上斜め後方とに位置する、側方向と平行な2つの回転軸の周囲を通る無端軌道に沿って回転する長尺環状体を有し、該長尺環状体の外周部に、堆積物を掘削するための複数のバケットが、前記長尺環状体の回転方向に互いに間隔を空けて、着脱可能に取り付けられた掘削揚土部と、前記走行部に搭載され、前記基準方向での側方向の一方へ堆積物を搬送する搬送機構を有し、前記掘削揚土部により揚土された堆積物を、投入口を介して受けた後、前記搬送機構により搬送して排出する搬送部と、を含む水路堆積物除去装置を用い、前記掘削揚土部の前記複数のバケットとして、前記長尺環状体の回転方向と平行な側面を有する平板状の複数の移動刃が、前記側方向に互いに間隔を空けて設けられて成るフォーク型バケットを使用し、前記水路堆積物除去装置を移動させながら、前記長尺環状体を回転させることで、前記フォーク型バケットの前記複数の移動刃によって堆積物を掘削しつつ、隣接する移動刃の間に堆積物を付着させて揚土すると共に、前記搬送機構を駆動させることで、堆積物を前記一方側へと搬送する水路堆積物除去方法(請求項11)。
【0032】
(21)上記(20)項において、前記水路堆積物除去装置は、前記投入口の上方に着脱可能に取り付けられた複数の固定刃を含み、該複数の固定刃を、前記フォーク型バケットの前記複数の移動刃の各々が、隣接する固定刃の間を通り抜けるような位置に、前記側方向に互いに間隔を空けて取り付けることで、前記複数の固定刃が設けられた位置を前記複数の移動刃が通るときに、隣接する移動刃の間に付着している堆積物を、固定刃の各々によって削ぎ落とす水路堆積物除去方法(請求項12)。
(22)上記(20)(21)項において、前記搬送機構として、前記側方向の両端にのみ軸部を有すると共に、前記側方向と平行な軸を中心軸とした螺旋状の羽根を有する形式のスクリューコンベアを使用し、該スクリューコンベアを回転させることで、堆積物を前記一方側へと搬送する水路堆積物除去方法。
【0033】
(23)上記(22)項において、前記搬送部は、前記側方向視で円弧状の底部と、該底部と対向する開閉可能な蓋部とを有し、内部に前記スクリューコンベアが設置されるケース体を含み、前記蓋部を閉じた状態で前記スクリューコンベアを回転させることで、前記ケース体の内部で堆積物を搬送する水路堆積物除去方法(請求項13)。
(24)上記(20)から(23)項において、前記走行部は、前記後輪を駆動するためのエンジンを有し、該エンジンから前記長尺環状体を回転させる駆動力と前記搬送機構を駆動する駆動力とを供給して、前記掘削揚土部による堆積物の掘削及び揚土と、前記搬送部による堆積物の搬送とを行う水路堆積物除去方法。
(25)上記(24)項において、前記後輪が前記エンジンから受ける駆動力を切断可能に構成することで、使用者によって前記水路堆積物除去装置を手押しで移動しながら堆積物を除去する、及び/又は、前記後輪が前記エンジンから受ける駆動力を低減可能に構成することで、前記水路堆積物除去装置の移動速度を掘削能力と均衡がとれるように低減する水路堆積物除去方法(請求項14)。
【0034】
(26)上記(20)から(25)項において、前記前輪が地面に接触する高さ位置を、前記走行部に対して相対的に調整可能に構成し、堆積物の除去作業を行うか否かに応じて、前記前輪の前記高さ位置を調整する水路堆積物除去方法(請求項15)。
(27)上記(20)から(26)項において、前記前輪と前記後輪との間に、少なくとも前記複数のバケットが地面に接触しない高さまで前記走行部を持ち上げた状態で、前記後輪と共に前記走行部を支持するように構成した補助輪を着脱可能に取り付け、該補助輪を利用して、堆積物の除去作業時以外の前記水路堆積物除去装置を移動させる水路堆積物除去方法(請求項16)。
【0035】
(28)上記(20)から(27)項において、前記後輪の前記側方向の位置を、前記掘削揚土部を中心として外側に変更可能に構成し、堆積物が除去されることで地面に形成された轍を避けるように、前記後輪の前記側方向の位置を調整した状態で、堆積物の除去作業を行う水路堆積物除去方法(請求項17)。
そして、(20)〜(28)項に記載の水路堆積物除去方法は、各々、上記(1)、(2)、(6)、(8)、(11)、及び(13)〜(16)項の水路堆積物除去装置を利用して実行されることで、上記(1)、(2)、(6)、(8)、(11)、及び(13)〜(16)項の水路堆積物除去装置と同等の作用を奏するものである。