特許第6885661号(P6885661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6885661水路堆積物除去装置及び水路堆積物除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6885661
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】水路堆積物除去装置及び水路堆積物除去方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 9/00 20060101AFI20210603BHJP
   E02B 5/00 20060101ALI20210603BHJP
   E02B 13/00 20060101ALI20210603BHJP
   B08B 1/04 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   E03F9/00
   E02B5/00 Z
   E02B13/00 301
   B08B1/04
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2021-65904(P2021-65904)
(22)【出願日】2021年4月8日
【審査請求日】2021年4月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓之
(72)【発明者】
【氏名】宮原 和仁
(72)【発明者】
【氏名】森田 研志
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2020−84448(JP,A)
【文献】 特開2017−184990(JP,A)
【文献】 特開2018−76748(JP,A)
【文献】 特開平11−33511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 9/00
B08B 1/04
E02B 5/00
E02B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路の堆積物を除去する水路堆積物除去装置であって、
操向ハンドルを介して使用者により操向され、少なくとも1つの前輪及び少なくとも2つの後輪を有する走行部と、
該走行部に搭載され、該走行部の前後方向に基づいた基準方向で、前記走行部の下部と該下部の上斜め後方とに位置する、側方向と平行な2つの回転軸の周囲を通る無端軌道に沿って回転する長尺環状体を有し、該長尺環状体の外周部に、堆積物を掘削するための複数のバケットが、前記長尺環状体の回転方向に互いに間隔を空けて、着脱可能に取り付けられた掘削揚土部と、
前記走行部に搭載され、前記基準方向での側方向の一方へ堆積物を搬送する搬送機構を有し、前記掘削揚土部により揚土された堆積物を、投入口を介して受けた後、前記搬送機構により搬送して排出する搬送部と、を含み、
前記掘削揚土部の前記複数のバケットは、前記長尺環状体の回転方向と平行な側面を有する平板状の複数の移動刃が、前記側方向に互いに間隔を空けて設けられて成るフォーク型バケットであることを特徴とする水路堆積物除去装置。
【請求項2】
前記投入口の上方に着脱可能に取り付けられた複数の固定刃を含み、
該複数の固定刃は、前記フォーク型バケットの前記複数の移動刃の各々が、隣接する固定刃の間を通り抜けるような位置に、前記側方向に互いに間隔を空けて取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の水路堆積物除去装置。
【請求項3】
前記複数の固定刃の各々は、前記基準方向での上斜め前方へ延びると共に、前記無端軌道の頂上を通って下降に転じた前記フォーク型バケットの移動方向と対向する凸条部を有することを特徴とする請求項2記載の水路堆積物除去装置。
【請求項4】
前記複数の移動刃の各々は、前記側方向視で、前記長尺環状体の外周部から、該外周部と直交する方向に突出した矩形をなすことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の水路堆積物除去装置。
【請求項5】
前記投入口の前記側方向の幅が、前記フォーク型バケットの、前記複数の移動刃が設けられている前記側方向についての幅よりも大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の水路堆積物除去装置。
【請求項6】
前記搬送機構は、前記側方向の両端にのみ軸部を有すると共に、前記側方向と平行な軸を中心軸とした螺旋状の羽根を有する形式のスクリューコンベアであり、
前記螺旋状の羽根の前記側方向についての間隔が、前記フォーク型バケットの、前記複数の移動刃が設けられている前記側方向についての幅よりも大きく、
前記搬送部は、前記側方向視で円弧状の底部と、該底部と対向する開閉可能な蓋部とを有し、内部に前記スクリューコンベアが設置されるケース体を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の水路堆積物除去装置。
【請求項7】
前記走行部は、前記後輪を駆動するためのエンジンを有し、
該エンジンにより、前記掘削揚土部の前記長尺環状体を回転させる駆動力と、前記搬送部の前記搬送機構を駆動する駆動力とが供給され、
前記エンジンから前記長尺環状体及び前記搬送機構に対して、チェーン及びスプロケットを介して駆動力が伝達されるように構成され、
前記後輪は、前記エンジンから受ける駆動力が、切断可能及び/又は低減可能に構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の水路堆積物除去装置。
【請求項8】
前記前輪は、地面に接触する高さ位置が、前記走行部に対して相対的に調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の水路堆積物除去装置。
【請求項9】
前記走行部は、前記前輪と前記後輪との間に、着脱可能に補助輪が取り付けられ、
該補助輪は、少なくとも前記複数のバケットが地面に接触しない高さまで前記走行部を持ち上げた状態で、前記後輪と共に前記走行部を支持するように構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の水路堆積物除去装置。
【請求項10】
前記後輪は、前記側方向の位置が、前記掘削揚土部を中心として外側に変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の水路堆積物除去装置。
【請求項11】
水路堆積物除去装置を利用して水路の堆積物を除去する方法であって、
前記水路堆積物除去装置として、
操向ハンドルを介して使用者により操向され、少なくとも1つの前輪及び少なくとも2つの後輪を有する走行部と、
該走行部に搭載され、該走行部の前後方向に基づいた基準方向で、前記走行部の下部と該下部の上斜め後方とに位置する、側方向と平行な2つの回転軸の周囲を通る無端軌道に沿って回転する長尺環状体を有し、該長尺環状体の外周部に、堆積物を掘削するための複数のバケットが、前記長尺環状体の回転方向に互いに間隔を空けて、着脱可能に取り付けられた掘削揚土部と、
前記走行部に搭載され、前記基準方向での側方向の一方へ堆積物を搬送する搬送機構を有し、前記掘削揚土部により揚土された堆積物を、投入口を介して受けた後、前記搬送機構により搬送して排出する搬送部と、を含む水路堆積物除去装置を用い、
前記掘削揚土部の前記複数のバケットとして、前記長尺環状体の回転方向と平行な側面を有する平板状の複数の移動刃が、前記側方向に互いに間隔を空けて設けられて成るフォーク型バケットを使用し、
前記水路堆積物除去装置を移動させながら、前記長尺環状体を回転させることで、前記フォーク型バケットの前記複数の移動刃によって堆積物を掘削しつつ、隣接する移動刃の間に堆積物を付着させて揚土すると共に、前記搬送機構を駆動させることで、堆積物を前記一方側へと搬送することを特徴とする水路堆積物除去方法。
【請求項12】
前記水路堆積物除去装置は、前記投入口の上方に着脱可能に取り付けられた複数の固定刃を含み、
該複数の固定刃を、前記フォーク型バケットの前記複数の移動刃の各々が、隣接する固定刃の間を通り抜けるような位置に、前記側方向に互いに間隔を空けて取り付けることで、前記複数の固定刃が設けられた位置を前記複数の移動刃が通るときに、隣接する移動刃の間に付着している堆積物を、固定刃の各々によって削ぎ落とすことを特徴とする請求項11記載の水路堆積物除去方法。
【請求項13】
前記搬送機構として、前記側方向の両端にのみ軸部を有すると共に、前記側方向と平行な軸を中心軸とした螺旋状の羽根を有する形式のスクリューコンベアを使用し、該スクリューコンベアを回転させることで、堆積物を前記一方側へと搬送し、
前記搬送部は、前記側方向視で円弧状の底部と、該底部と対向する開閉可能な蓋部とを有し、内部に前記スクリューコンベアが設置されるケース体を含み、
前記蓋部を閉じた状態で前記スクリューコンベアを回転させることで、前記ケース体の内部で堆積物を搬送することを特徴とする請求項11又は12記載の水路堆積物除去方法。
【請求項14】
前記走行部は、前記後輪を駆動するためのエンジンを有し、
該エンジンから前記長尺環状体を回転させる駆動力と前記搬送機構を駆動する駆動力とを供給して、前記掘削揚土部による堆積物の掘削及び揚土と、前記搬送部による堆積物の搬送とを行い、
前記後輪が前記エンジンから受ける駆動力を切断可能に構成することで、使用者によって前記水路堆積物除去装置を手押しで移動しながら堆積物を除去する、及び/又は、前記後輪が前記エンジンから受ける駆動力を低減可能に構成することで、前記水路堆積物除去装置の移動速度を掘削能力と均衡がとれるように低減することを特徴とする請求項11から13のいずれか1項記載の水路堆積物除去方法。
【請求項15】
前記前輪が地面に接触する高さ位置を、前記走行部に対して相対的に調整可能に構成し、堆積物の除去作業を行うか否かに応じて、前記前輪の前記高さ位置を調整することを特徴とする請求項11から14のいずれか1項記載の水路堆積物除去方法。
【請求項16】
前記前輪と前記後輪との間に、少なくとも前記複数のバケットが地面に接触しない高さまで前記走行部を持ち上げた状態で、前記後輪と共に前記走行部を支持するように構成した補助輪を着脱可能に取り付け、該補助輪を利用して、堆積物の除去作業時以外の前記水路堆積物除去装置を移動させることを特徴とする請求項11から15のいずれか1項記載の水路堆積物除去方法。
【請求項17】
前記後輪の前記側方向の位置を、前記掘削揚土部を中心として外側に変更可能に構成し、堆積物が除去されることで地面に形成された轍を避けるように、前記後輪の前記側方向の位置を調整した状態で、堆積物の除去作業を行うことを特徴とする請求項11から16のいずれか1項記載の水路堆積物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路に堆積した土砂等の堆積物を除去する水路堆積物除去装置及び水路堆積物除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業用水路は、全国で約37万kmあるが、農業従事者の高齢化や労働力不足に伴い、水路機能維持作業(堆積物除去等)の省力化が強く求められている。農業用水路の中でも、比較的大規模な水路や作業用通路が併設された水路については、バックホウ等の機械装置を利用して堆積物の除去ができる。例えば特許文献1には、作業用通路が併設された水路において、筒先に水路走行車が装着されたバキューム車を利用して、堆積物を収集して除去する方法が開示されている。しかしながら、農業用水路は、そこに至るまでの進入路の幅が狭いといった現場条件によって、機械装置の持ち込みが困難である場合が多く、又、水路幅の狭い素掘り側溝などでは、水路内に大型の機械装置が直接進入することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−4048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者らは、現場条件の如何に関わらず水路の堆積物を除去できるように、堆積物の掘削、揚土、及び搬送を同時に行う小型装置の開発を進めているが、そのために解決すべき幾つかの課題が見出された。そのような課題として、通常のバケットでは、土砂面への貫入抵抗や掻き起こし時の土圧抵抗が大きく、より強力な駆動力が必要となることや、堆積土砂に雑草の根などが生えている場合に、それが掘削時の抵抗となり、この場合も大きな駆動力などが必要となることが挙げられる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大きな駆動力を要することなく、堆積物を効率的に掘削して除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)水路の堆積物を除去する水路堆積物除去装置であって、操向ハンドルを介して使用者により操向され、少なくとも1つの前輪及び少なくとも2つの後輪を有する走行部と、該走行部に搭載され、該走行部の前後方向に基づいた基準方向で、前記走行部の下部と該下部の上斜め後方とに位置する、側方向と平行な2つの回転軸の周囲を通る無端軌道に沿って回転する長尺環状体を有し、該長尺環状体の外周部に、堆積物を掘削するための複数のバケットが、前記長尺環状体の回転方向に互いに間隔を空けて、着脱可能に取り付けられた掘削揚土部と、前記走行部に搭載され、前記基準方向での側方向の一方へ堆積物を搬送する搬送機構を有し、前記掘削揚土部により揚土された堆積物を、投入口を介して受けた後、前記搬送機構により搬送して排出する搬送部と、を含み、前記掘削揚土部の前記複数のバケットは、前記長尺環状体の回転方向と平行な側面を有する平板状の複数の移動刃が、前記側方向に互いに間隔を空けて設けられて成るフォーク型バケットである水路堆積物除去装置(請求項1)。
【0007】
本項に記載の水路堆積物除去装置は、走行部、掘削揚土部、及び搬送部を含んでいる。走行部は、操向ハンドル、少なくとも1つの前輪、及び少なくとも2つの後輪を有し、そのような走行部に掘削揚土部及び搬送部が搭載されている。このため、装置全体が前輪及び後輪によって支持された状態で、操向ハンドルを介して使用者により操向されながら、意図した位置で作業が行われるものとなる。又、前輪と後輪とを合わせて、少なくとも3つの車輪で装置全体が支持されるため、作業時や停止時においても安定して自立するものである。
【0008】
掘削揚土部は、無端軌道に沿って回転する長尺環状体と、この長尺環状体の外周部に、長尺環状体の回転方向に互いに間隔を空けて着脱可能に取り付けられた複数のバケットとを有している。長尺環状体が回転する無端軌道は、走行部の前後方向に基づいた基準方向で、走行部の下部とこの下部の上斜め後方とに位置する、側方向と平行な2つの回転軸の周囲を通るものである。このため、長尺環状体がそのような無端軌道で回転すると、複数のバケットは、走行部の前方下部とそこから上斜め後方の位置との間を、繰り返し斜めに移動するような動作を行う。そして、走行部の前方下部において堆積物を掘削し、そのまま上斜め後方へと揚土するものである。
【0009】
搬送部は搬送機構を有し、この搬送機構によって、掘削揚土部により揚土されて投入口を介して受けた堆積物を、走行部の前後方向に基づいた基準方向での側方向の一方へ搬送して排出する。すなわち、掘削揚土部によって堆積物の掘削及び揚土が行われ、そこから搬送部によって堆積物が搬送されるため、堆積物の除去に必要な掘削、揚土、搬送という一連の工程が同時に行われるものとなる。しかも、それらの工程を行う掘削揚土部及び搬送部は、使用者により操向ハンドルを介して操向される走行部に搭載可能な大きさであり、装置全体の小型化が図られている。このため、進入路の大きさや作業用通路の有無といった現場条件の如何に関わらず、水路の堆積物が除去されるものである。
【0010】
更に、本項に記載の水路堆積物除去装置は、掘削揚土部で使用される複数のバケットがフォーク型バケットであり、これらフォーク型バケットの各々は、長尺環状体の回転方向と平行な側面を有する平板状の複数の移動刃が、側方向に互いに間隔を空けて設けられている。これにより、長尺環状体が回転すると、フォーク型バケットの移動刃は、平板状の幅の小さい細面が進行方向に向けられた状態で回転移動し、堆積土砂へと貫入されるため、堆積土砂面への進入時の抵抗が小さく抑えられる。しかも、移動刃の細面が堆積土砂中を移動することで、土砂に生えた雑草の根などが切断されるものとなる。従って、フォーク型バケットを移動させるための、長尺環状体の回転に必要な駆動力が抑制されながら、効率的に堆積物が掘削されるものである。
【0011】
又、フォーク型バケットの移動刃は、その側面が堆積土砂への貫入方向や移動方向と直交する方向へ向けられている。ここで、特に農業用水路の堆積土砂は、一般的に粘性が高いため、面積が大きい移動刃の側面に付着し易く、複数の移動刃の間に多くの堆積土砂が付着する。従って、移動刃の側面が移動方向と直交する方向へ向けられていても、複数のフォーク型バケットの連続的な回転移動により、主に移動刃の細面で掘削しながら、堆積土砂の粘着力を利用して移動刃の側面間で多くの堆積土砂が揚土されることになる。これにより、掘削から揚土のための堆積土砂の移載が必要なく、掘削と揚土とが連続して行われ、堆積物の除去が効率的に行われるものとなる。
【0012】
(2)上記(1)項において、前記投入口の上方に着脱可能に取り付けられた複数の固定刃を含み、該複数の固定刃は、前記フォーク型バケットの前記複数の移動刃の各々が、隣接する固定刃の間を通り抜けるような位置に、前記側方向に互いに間隔を空けて取り付けられている水路堆積物除去装置(請求項2)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、掘削揚土部から搬送部へ堆積物を移載するための投入口の上方に、着脱可能に取り付けられた複数の固定刃を含んでいる。これら複数の固定刃は、回転移動する各フォーク型バケットの複数の移動刃の各々が、隣接する固定刃の間を通り抜けるような位置に、側方向に互いに間隔を空けて取り付けられている。すなわち、複数の固定刃が設けられた位置を複数の移動刃が通るとき、固定刃と移動刃とが側方向に交互に配置される態様となる。これにより、複数の移動刃の側面間に付着して揚土された堆積土砂が、固定刃の各々によって削ぎ落とされ、投入口を通って搬送部へと落下する。従って、揚土された堆積土砂の粘性が高くても、移動刃に付着した堆積土砂が確実に剥がされるものとなり、掘削揚土部から搬送部への堆積物の移載が効率よく行われることとなる。
【0013】
(3)上記(2)項において、前記複数の固定刃の各々は、前記基準方向での上斜め前方へ延びると共に、前記無端軌道の頂上を通って下降に転じた前記フォーク型バケットの移動方向と対向する凸条部を有する水路堆積物除去装置(請求項3)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、複数の固定刃の各々が、走行部の前後方向に基づいた基準方向での上斜め前方へ延びているものである。すなわち、複数の移動刃とのすれ違いを実現するために、複数の固定刃は、その先端側が掘削揚土部の長尺環状体の方へ向けられ、基端側が投入口へ向けられることになる。又、複数の固定刃の各々は、長尺環状体が回転する無端軌道の頂上を通って下降に転じたときの、フォーク型バケットの移動方向と対向する凸条部を有している。すなわち、各固定刃は、その延在方向に沿った凸条部を有し、その凸条部の延在方向についての断面の頂点(峰)側が、フォーク型バケットの移動刃の移動方向と対向する方向に向けられている。
【0014】
これにより、固定刃とすれ違う際に、フォーク型バケットの移動刃に付着した堆積土砂は、固定刃の凸条部の峰で左右に削ぎ分けられ、それらが凸条部の麓や固定刃の基端側で集積し、自重で投入口へと落下する。従って、掘削揚土部から搬送部への堆積物の移載が、上記のような固定刃を介して、より効率的に行われるものである。しかも、固定刃の凸条部の峰が、移動刃の移動方向と対向していることで、移動してくる移動刃が固定刃に対して突き合わさることはない。すなわち、移動してくる移動刃が仮に固定刃に接触したとしても、固定刃の凸条部の峰から麓までの面に沿って移動刃が滑りながら移動するため、移動刃と固定刃との突き合わせ衝突が防止されるものである。
【0015】
(4)上記(1)から(3)項において、前記複数の移動刃の各々は、前記側方向視で、前記長尺環状体の外周部から、該外周部と直交する方向に突出した矩形をなす水路堆積物除去装置(請求項4)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、複数の移動刃の各々が、走行部の前後方向に基づいた側方向視で、長尺環状体の外周部から、その外周部と直交する方向に突出した矩形をなすものである。これにより、長尺環状体の無端軌道に沿って斜めに移動する複数の移動刃は、掘削時に矩形の角部分から堆積土砂へ貫入されることになるため、貫入抵抗がより抑制されるものとなる。
【0016】
(5)上記(1)から(4)項において、前記投入口の前記側方向の幅が、前記フォーク型バケットの、前記複数の移動刃が設けられている前記側方向についての幅よりも大きい水路堆積物除去装置(請求項5)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、掘削揚土部から搬送部へ堆積物を移載するための投入口の側方向の幅が、フォーク型バケットの、複数の移動刃が設けられている側方向についての幅よりも大きいものである。これにより、固定刃によって複数の移動刃から剥がされた堆積土砂が、投入口の周りの壁部に接触することなく落下するため、そのような壁部への堆積土砂の付着が防止され、投入口の周辺が堆積土砂により閉塞してしまうリスクが避けられるものとなる。
【0017】
(6)上記(1)から(5)項において、前記搬送機構は、前記側方向の両端にのみ軸部を有すると共に、前記側方向と平行な軸を中心軸とした螺旋状の羽根を有する形式のスクリューコンベアである水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、側方向の一方へ堆積物を搬送する搬送部の搬送機構が、スクリューコンベアにより構成されたものである。このスクリューコンベアは、側方向の両端にのみ軸部を有し、その軸部間に、側方向と平行な軸を中心軸とした螺旋状の羽根が設けられた、所謂リボン型のスクリューコンベアである。このような構成により、投入口を介して搬送部に落下した堆積土砂が、端部に設けられた軸部を介して回転されるスクリューコンベアの、軸部を有さない螺旋状の羽根によって側方向の一方へ搬送される。このため、軸部を有する羽根によって堆積土砂を搬送する場合と比較して、堆積土砂が付着することなくスムーズに搬送されるものとなり、堆積土砂によって搬送部が閉塞してしまうリスクが大幅に低減されるものである。
【0018】
(7)上記(6)項において、前記螺旋状の羽根の前記側方向についての間隔が、前記フォーク型バケットの、前記複数の移動刃が設けられている前記側方向についての幅よりも大きい水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、スクリューコンベアの螺旋状の羽根の側方向についての間隔、換言すれば、螺旋状の羽根の軸方向視で同じ回転位相に位置している、側方向に隣接する羽根同士の間隔が、フォーク型バケットの、複数の移動刃が設けられている側方向についての幅よりも大きいものである。これにより、固定刃によって複数の移動刃から剥がされた堆積土砂が、想定される堆積土砂の落下範囲よりも大きな間隔を有する羽根に向かって落下するため、搬送部によって円滑に取り込まれるものとなる。
【0019】
(8)上記(6)(7)項において、前記搬送部は、前記側方向視で円弧状の底部と、該底部と対向する開閉可能な蓋部とを有し、内部に前記スクリューコンベアが設置されるケース体を含む水路堆積物除去装置(請求項6)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、内部にスクリューコンベアが設置されるケース体を搬送部が含むものであり、このケース体は、側方向視で円弧状の底部を有している。すなわち、ケース体の底部は、スクリューコンベアの側方向視形状に倣った形状を有していることで、堆積土砂が停滞するような隙間の形成を防止するものである。更に、ケース体は、側方向視で底部と対向する開閉可能な蓋部を有しており、この蓋部が閉じられた状態でスクリューコンベアが回転されることで、搬送される堆積土砂の上方への逸脱が防止され、強制的に堆積土砂が側方向の一方へ移動されるものである。又、蓋部が開かれると、上方からケース体の内部が確認される状態になるため、搬送部のメンテナンス性が高められるものとなる。
【0020】
(9)上記(8)項において、前記搬送部は、前記ケース体の、前記側方向の前記一方側の一部と、前記スクリューコンベアとが取り外し可能に構成されている水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、搬送部において、ケース体の側方向の一方側(走行部を中心とした側方向外側)の一部と、ケース体の内部に設置されるスクリューコンベアとが、取り外し可能に構成されたものである。ここで、搬送部は、側方向の一方へと堆積土砂を搬送するものであるため、その一方側へと張り出ており、作業を伴わない移動時や運搬車などによる運搬時に、水路堆積物除去装置の姿勢の安定性が保たれない虞がある。そこで、上述したような取り外しが可能であることで、移動時や運搬時にケース体の一部及びスクリューコンベアが取り外されて、側方向の一方側へと張り出た部分が無くなる或いは少なくなり、装置の姿勢の安定性が保たれるものである。しかも、そのような状態では装置の大きさがよりコンパクトになるため、装置の収容時の省スペース化が図られるものである。
【0021】
(10)上記(8)(9)項において、前記ケース体は、前記側方向の前記一方側の端部の下方に、開口部が設けられている水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、搬送部のケース体の、側方向の一方側の端部の下方に開口部が設けられていることで、ケース体の内部でスクリューコンベアにより一方側の端部まで搬送された堆積土砂が、開口部から自由落下して排出されるものである。このような単純な構造にも関わらず、ケース体の内部から堆積土砂が円滑に排出されるものとなる。
【0022】
(11)上記(1)から(10)項において、前記走行部は、前記後輪を駆動するためのエンジンを有し、該エンジンにより、前記掘削揚土部の前記長尺環状体を回転させる駆動力と、前記搬送部の前記搬送機構を駆動する駆動力とが供給される水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、走行部が後輪を駆動するためのエンジンを有し、更にこのエンジンによって、掘削揚土部及び搬送部にも駆動力が供給されるものである。すなわち、エンジンは、掘削揚土部の長尺環状体を無端軌道に沿って回転させるための駆動力と、搬送部の搬送機構を駆動するための駆動力(上記(6)項に記載したスクリューコンベアを回転させるための駆動力)とを供給する。これにより、走行部に搭載される1つのエンジンから、装置の移動、堆積物の掘削、揚土、及び搬送のための駆動力が得られるため、装置の小型化が維持されたまま、堆積物の除去作業の省力化が図られるものである。
【0023】
(12)上記(11)項において、前記エンジンから前記長尺環状体及び前記搬送機構に対して、チェーン及びスプロケットを介して駆動力が伝達されるように構成されている水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、チェーン及びスプロケットを介して、エンジンから長尺環状体及び搬送機構へ駆動力が伝達されるように構成されたものである。すなわち、1つのエンジンから供給される駆動力によって、装置の移動と堆積物の除去作業とが行われるため、長尺環状体の回転速度や搬送機構の駆動速度は、装置の移動速度に比例することになる。そこで、エンジンと長尺環状体及び搬送機構との間に、スプロケットにより実現される固定減速機が介在していることで、装置の移動量と堆積物の除去作業量との均衡化が図られるものである。又、介在するスプロケットの歯数が変更されることで、減速比の調整が行われるものとなる。更に、上記のような構成により、エンジンと長尺環状体及び搬送機構との間には変速機が具備されないため、装置の軽量化や低廉化に貢献するものである。
【0024】
(13)上記(11)(12)項において、前記後輪は、前記エンジンから受ける駆動力が、切断可能及び/又は低減可能に構成されている水路堆積物除去装置(請求項7)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、エンジンによって後輪に供給される駆動力が、切断可能及び/又は低減可能に構成されているものである。ここで、掘削揚土部の掘削能力は、硬さ、粘性、含水量、根の入り具合、堆積土厚といった堆積土の状態によって変化するため、装置の移動速度に掘削能力が追い付かなくなる場合が想定される。そこで、必要に応じて後輪への駆動力が切断されることで、使用者によって手押しで装置が移動されるものとなるため、必要な場所で装置が前後に移動されながら、堆積土砂が取り残されずに確実に掘削揚土されるものである。又、後輪への駆動力が低減可能に構成されている場合は、掘削能力と均衡がとれるように装置の移動速度が低減されながらも、エンジンからの駆動アシストを受けながら走行することになるため、堆積土砂の除去作業の効率化及び省力化の双方が図られるものとなる。
【0025】
(14)上記(1)から(13)項において、前記前輪は、地面に接触する高さ位置が、前記走行部に対して相対的に調整可能に構成されている水路堆積物除去装置(請求項8)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、前輪の地面に接触する高さ位置が、走行部に対して相対的に調整可能に構成されているものである。すなわち、他の構成要素を搭載している走行部に対して、走行部を支える前輪の地面に接触する高さ位置が調整されることで、走行部の前側の高さが調整されることになる。このため、走行部の前側の高さが比較的低く調整されている場合は、走行部の前方下部を通って回転移動するバケットが、堆積土砂面に達して貫入されるようになるため、この状態では堆積土砂の掘削作業が行われるものとなる。更にこの状態では、走行部の前側の高さが、堆積土の深さに応じた掘削に適した高さに調整されてもよい。これに対し、走行部の前側の高さが比較的高く調整されている場合は、走行部の前方下部を通るバケットが、堆積土砂面や地面に届かない高さに位置するため、この状態では作業時以外の装置の移動が円滑に行われるものとなる。
【0026】
(15)上記(1)から(14)項において、前記走行部は、前記前輪と前記後輪との間に、着脱可能に補助輪が取り付けられ、該補助輪は、少なくとも前記複数のバケットが地面に接触しない高さまで前記走行部を持ち上げた状態で、前記後輪と共に前記走行部を支持するように構成されている水路堆積物除去装置(請求項9)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、走行部の前後方向についての前輪と後輪との間に、着脱可能に補助輪が取り付けられるものである。この補助輪が取り付けられると、補助輪と後輪とで走行部が支持され、走行部の前方下部を通るバケットが地面に届かなくなるように、走行部が持ち上げられる。又、それと同時に、前輪と後輪とで走行部が支持されていた状態と比較して、ホイールベース(前輪又は補助輪と後輪との間の距離)が短くなる。これにより、水路への移動時や運搬車への積み下ろし時などに、傾斜面を移動する必要が生じても、装置の底面が傾斜面の頂上近傍などに接触することなく、装置が円滑に移動されるものとなり、例えば吊り具などで装置を移動させる必要がないものである。
【0027】
(16)上記(1)から(15)項において、前記後輪は、前記側方向の位置が、前記掘削揚土部を中心として外側に変更可能に構成されている水路堆積物除去装置(請求項10)。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、後輪の側方向の位置が、掘削揚土部を中心として外側に変更可能に構成されたものである。すなわち、装置の正面視で、少なくとも2つの後輪のうち、右側に位置する後輪は、より右側へと位置が変更され、左側に位置する後輪は、より左側へと位置が変更されるようになっている。ここで、幅が大きい水路などでは、水路に沿って移動しながらの除去作業が、水路の幅方向に位置を変えながら繰り返し行われ、そのとき、これから除去作業が行われる経路の隣に、既に堆積物が除去されていることで生じた轍が形成されている場合がある。そのような場合に、後輪の側方向の位置が轍などを避ける位置に調整されることで、安定した姿勢で堆積物の除去作業が行われるものとなる。
【0028】
(17)上記(1)から(16)項において、前記前輪は、地面において360度旋回可能な状態と旋回不可の状態とが、切り替え可能に構成されている水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、前輪が、地面において360度旋回可能な状態と旋回不可の状態とが切り替え可能に構成されているものである。これにより、作業中の装置の方向転換の要否や、装置が移動される路面状態などに応じて、前輪の旋回の可不可が切り替えられるため、装置の操向性が高められるものである。
【0029】
(18)上記(1)から(17)項において、前記側方向の前記一方側の後輪は、前記一方側と反対側の後輪と比較して、車輪幅が大きい或いは車輪の数が多い水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、側方向の一方へ堆積物を搬送する搬送機構を具備した搬送部が張り出ている方向である、側方向の一方側に位置する後輪が、その一方側と反対側に位置する後輪と比較して、車輪幅が大きい或いは車輪の数が多いものである。これにより、搬送部が張り出ていることで装置重量の負担が大きくなる一方側の後輪の、接地面積が大きくなるため、装置全体が安定して支えられるものとなる。
【0030】
(19)上記(1)から(18)項において、前記走行部は、市販の小型耕運機が流用されて構成されている水路堆積物除去装置。
本項に記載の水路堆積物除去装置は、走行部が流用された市販の小型耕運機により構成されたものであり、特に小型耕運機の中で、操向ハンドル、少なくとも1つの前輪、少なくとも2つの後輪、エンジンなどを具備したものが利用される。これにより、本装置専用に走行部を製作する場合と比較して、コストが大幅に抑えられながらも、必要な機能が問題なく実現されるものである。
【0031】
(20)水路堆積物除去装置を利用して水路の堆積物を除去する方法であって、前記水路堆積物除去装置として、操向ハンドルを介して使用者により操向され、少なくとも1つの前輪及び少なくとも2つの後輪を有する走行部と、該走行部に搭載され、該走行部の前後方向に基づいた基準方向で、前記走行部の下部と該下部の上斜め後方とに位置する、側方向と平行な2つの回転軸の周囲を通る無端軌道に沿って回転する長尺環状体を有し、該長尺環状体の外周部に、堆積物を掘削するための複数のバケットが、前記長尺環状体の回転方向に互いに間隔を空けて、着脱可能に取り付けられた掘削揚土部と、前記走行部に搭載され、前記基準方向での側方向の一方へ堆積物を搬送する搬送機構を有し、前記掘削揚土部により揚土された堆積物を、投入口を介して受けた後、前記搬送機構により搬送して排出する搬送部と、を含む水路堆積物除去装置を用い、前記掘削揚土部の前記複数のバケットとして、前記長尺環状体の回転方向と平行な側面を有する平板状の複数の移動刃が、前記側方向に互いに間隔を空けて設けられて成るフォーク型バケットを使用し、前記水路堆積物除去装置を移動させながら、前記長尺環状体を回転させることで、前記フォーク型バケットの前記複数の移動刃によって堆積物を掘削しつつ、隣接する移動刃の間に堆積物を付着させて揚土すると共に、前記搬送機構を駆動させることで、堆積物を前記一方側へと搬送する水路堆積物除去方法(請求項11)。
【0032】
(21)上記(20)項において、前記水路堆積物除去装置は、前記投入口の上方に着脱可能に取り付けられた複数の固定刃を含み、該複数の固定刃を、前記フォーク型バケットの前記複数の移動刃の各々が、隣接する固定刃の間を通り抜けるような位置に、前記側方向に互いに間隔を空けて取り付けることで、前記複数の固定刃が設けられた位置を前記複数の移動刃が通るときに、隣接する移動刃の間に付着している堆積物を、固定刃の各々によって削ぎ落とす水路堆積物除去方法(請求項12)。
(22)上記(20)(21)項において、前記搬送機構として、前記側方向の両端にのみ軸部を有すると共に、前記側方向と平行な軸を中心軸とした螺旋状の羽根を有する形式のスクリューコンベアを使用し、該スクリューコンベアを回転させることで、堆積物を前記一方側へと搬送する水路堆積物除去方法。
【0033】
(23)上記(22)項において、前記搬送部は、前記側方向視で円弧状の底部と、該底部と対向する開閉可能な蓋部とを有し、内部に前記スクリューコンベアが設置されるケース体を含み、前記蓋部を閉じた状態で前記スクリューコンベアを回転させることで、前記ケース体の内部で堆積物を搬送する水路堆積物除去方法(請求項13)。
(24)上記(20)から(23)項において、前記走行部は、前記後輪を駆動するためのエンジンを有し、該エンジンから前記長尺環状体を回転させる駆動力と前記搬送機構を駆動する駆動力とを供給して、前記掘削揚土部による堆積物の掘削及び揚土と、前記搬送部による堆積物の搬送とを行う水路堆積物除去方法。
(25)上記(24)項において、前記後輪が前記エンジンから受ける駆動力を切断可能に構成することで、使用者によって前記水路堆積物除去装置を手押しで移動しながら堆積物を除去する、及び/又は、前記後輪が前記エンジンから受ける駆動力を低減可能に構成することで、前記水路堆積物除去装置の移動速度を掘削能力と均衡がとれるように低減する水路堆積物除去方法(請求項14)。
【0034】
(26)上記(20)から(25)項において、前記前輪が地面に接触する高さ位置を、前記走行部に対して相対的に調整可能に構成し、堆積物の除去作業を行うか否かに応じて、前記前輪の前記高さ位置を調整する水路堆積物除去方法(請求項15)。
(27)上記(20)から(26)項において、前記前輪と前記後輪との間に、少なくとも前記複数のバケットが地面に接触しない高さまで前記走行部を持ち上げた状態で、前記後輪と共に前記走行部を支持するように構成した補助輪を着脱可能に取り付け、該補助輪を利用して、堆積物の除去作業時以外の前記水路堆積物除去装置を移動させる水路堆積物除去方法(請求項16)。
【0035】
(28)上記(20)から(27)項において、前記後輪の前記側方向の位置を、前記掘削揚土部を中心として外側に変更可能に構成し、堆積物が除去されることで地面に形成された轍を避けるように、前記後輪の前記側方向の位置を調整した状態で、堆積物の除去作業を行う水路堆積物除去方法(請求項17)。
そして、(20)〜(28)項に記載の水路堆積物除去方法は、各々、上記(1)、(2)、(6)、(8)、(11)、及び(13)〜(16)項の水路堆積物除去装置を利用して実行されることで、上記(1)、(2)、(6)、(8)、(11)、及び(13)〜(16)項の水路堆積物除去装置と同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明は上記のような構成であるため、大きな駆動力を要することなく、堆積物を効率的に掘削して除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置の構成の一例を示す三面図であり、(a)が側面図、(b)が正面図、(c)が平面図である。
図2】掘削揚土部から搬送部への堆積物の投入口の近傍を示す斜視図である。
図3】移動刃と固定刃との位置関係を示すイメージ図である。
図4】(a)が掘削揚土部の上部及び搬送部を示す背面図、(b)が搬送部の側面図、(c)がスクリューコンベア単体のイメージ図である。
図5】(a)がエンジンから掘削揚土部へ駆動力が伝達される様子を示すイメージ図、(b)が掘削揚土部から搬送部へ駆動力が伝達される様子を示す側面図である。
図6】後輪の走行車軸への接続箇所近傍を示す斜視図である。
図7】後輪の側方向位置の変更機能を説明するためのイメージ図であり、(a)が変更前の状態、(b)が変更後の状態である。
図8】水路堆積物除去装置に補助輪が取り付けられた様子を示す側面図である。
図9】固定刃の別の実施形態を示すイメージ図である。
図10】掘削揚土部で使用可能な平型バケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。なお、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10の構成を示している。図示のように、水路堆積物除去装置10は、走行部12、掘削揚土部36、及び搬送部50で大略構成されており、掘削揚土部36と搬送部50とが走行部12に搭載された状態で移動可能になっている。走行部12は、操向ハンドル14、前輪16、2つの後輪18(18A及び18B)、エンジン26などを備え、前輪16及び後輪18によって水路堆積物除去装置10全体を支えながら、操向ハンドル14を介して使用者Wにより操向されるようになっている。なお、以降の説明では、特に断り書きがない限り、走行部12の前後方向に基づいた基準方向を用いて方向を示すこととし、平面視で前後方向と直交する方向を側方向、前後方向及び側方向の双方と直交する方向を上下方向とする。
【0039】
又、本実施形態の走行部12は、改造が施された市販の小型耕運機により構成されており、操向ハンドル14、後輪18A及び18B、エンジン26などは耕運機が具備していたものが使用されている。利用された耕運機は、エンジン26から後輪18と回転爪とに駆動力を供給するようになっており、前進及び後進が可能で、前進駆動には変速機が具備されている。そのような耕運機が利用された走行部12では、回転爪が取り外されて、詳しくは後述するが、そこから回転駆動力が取り出されて他の部位へ分配されるようになっている。又、走行部12に固定された複数のフレームや他の部材を介して、掘削揚土部36及び搬送部50が走行部12に取り付けられている。
【0040】
掘削揚土部36は、堆積物(堆積土や堆積土砂ともいう)Sの掘削及び揚土を担うものであり、長尺環状体38と複数のバケット44とを備え、本実施形態では、長尺環状体38として一対のチェーン38A、38Bを具備し、複数のバケット44としてフォーク型バケット44Aを具備している。チェーン38A、38Bの各々は、図1(a)に示されるような、側方向(図1(b)における左右方向)に延びる2つの回転軸40、42の周囲を通る無端軌道に沿って回転するものである。チェーン38A、38Bの回転方向は、図1(a)のような側面視で、反時計回りの方向である。
【0041】
一方の回転軸40は、走行部12の前方下部に位置するものであって、後述する図5(a)にも図示されており、この回転軸40に固定された2つのスプロケット80Eに、チェーン38A、38Bが係合している。もう一方の回転軸42は、回転軸40から上斜め後方に離れた位置に設置され、後述する図2図4(a)、及び図5(b)にも図示されており、この回転軸42に固定された2つのスプロケット80Fに、チェーン38A、38Bが係合している。すなわち、一対のチェーン38A、38Bは、互いに側方向に離れた位置で、回転軸40、42の周囲を通る無端軌道に沿って回転する。
【0042】
複数のフォーク型バケット44Aは、図1に示すように、一対のチェーン38A、38Bの外周部に、チェーン38A、38Bの回転方向について等間隔で、着脱可能に取り付けられている。フォーク型バケット44Aの各々は、図2及び図3に示すように、例えば金属製の平板状の複数(本実施形態では5つ)の移動刃46を備えており、これら複数の移動刃46が、側方向に互いに間隔を空けて設けられている。本実施形態の移動刃46の各々は、図1(a)及び図5(b)にも図示されているように、チェーン38A、38Bの回転方向と平行な矩形の側面46aを有しており、チェーン38A、38Bの外周部から、その外周部と直交する方向に突出している。又、平板状の移動刃46は、側面46a間を接続する細面46bを有しており、それらの細面46bが、チェーン38A、38Bの回転に伴って回転移動する移動刃46の移動方向、及びその反対方向に向けられている。
【0043】
又、図2に示すように、掘削揚土部36から搬送部50へ堆積物Sを移載するための投入口68の上方には、複数の固定刃70が着脱可能に固定されている。これら複数の固定刃70は、図3及び図4(a)にも図示されているように、一対のチェーン38A、38Bの回転に伴って回転移動するフォーク型バケット44Aの各移動刃46が、隣接する固定刃70の間を通るように、側方向に互いに間隔を空けて設けられている。このため、本実施形態では、5つの移動刃46に対応して、それよりも1つ多い6つの固定刃70が設けられている。更に、固定刃70の各々は、本実施形態では金属製であって断面菱形をなし、その延在方向に沿った凸条部72を有している。そして、固定刃70の各々は、凸条部72の峰72aが、図2に示されるように、上回転軸42の周囲を通って下降に転じたフォーク型バケット44Aの移動方向と対向するように、上斜め前方へ向かって延びている。
【0044】
ここで、これらに限定されるものではないが、複数の移動刃46及び複数の固定刃70の大きさの一例について言及する。例えば図3に示すように、移動刃46の肉厚(細面46bの幅)は4.5mm、隣接する移動刃46の遊間は23.5mmである。又、固定刃70は、12.7mm×12.7mmの正方形が45度軸回転された断面菱形であって、図中左右方向の大きさが約18mm、隣接する固定刃70の遊間は10mmである。このため、移動刃46が固定刃70の間を通るときの移動刃46と固定刃70との遊間は、5.5mmである。
又、本実施形態の水路堆積物除去装置10は、図2に示した投入口68の側方向の幅68wが、図2図3に示すフォーク型バケット44Aの、複数の移動刃46が設けられた側方向の幅44wよりも大きくなっている。
【0045】
次に、図4を参照して、搬送部50は、掘削揚土部36によって揚土された堆積物Sの搬送を担うものであって、搬送機構52としてのスクリューコンベア52Aと、このスクリューコンベア52Aを内蔵するケース体58とを有している。本実施形態のスクリューコンベア52Aは、所謂リボン型のスクリューコンベアであって、両端の軸部54の間に、特に図4(c)で確認できるように、軸部を有さない螺旋状の羽根56が設けられていており、その螺旋状の羽根56の中心軸が軸部54と同軸になっている。螺旋状の羽根56の、中心軸と平行な方向についての間隔56wは、図2及び図3に示したようなフォーク型バケット44Aの、複数の移動刃46が設けられた側方向の幅44wよりも大きくなっている。
【0046】
本実施形態のケース体58は、図5(b)で確認できるように、掘削揚土部36の上端近傍の下斜め後方に位置し、図4(a)に示すように、掘削揚土部36から、水路堆積物除去装置10の進行方向を基準とした右側へ延在して張り出ている。ケース体58は、図4(b)のような側方向視で、円弧状の底部60と、この底部60と対向する蓋部62とを有している。蓋部62は、図1(a)及び(b)に実線及び仮想線で示したように、後方側の端部を軸として開閉可能になっている。又、ケース体58の掘削揚土部36との接続箇所近傍は、図2にも示したように、投入口68として掘削揚土部36へ向かって開口している。更に、ケース体58の投入口68と反対側の端部には、下方へ向かって開口した開口部64が設けられている。
【0047】
そして、スクリューコンベア52Aは、その両端の軸部54が回転可能に軸支された状態で、ケース体58の内部に設置されている。この状態で、スクリューコンベア52Aの螺旋状の羽根56は、ケース体58の投入口68から開口部64までの、ケース体58の内部空間の略全長にわたっている。又、本実施形態の搬送部50は、ケース体58の図4(a)における右側に突出している一部が、残りの部位から取り外し可能になっており、更に、その状態からスクリューコンベア52Aも取り外し可能になっている。なお、図4(a)では、ケース体58の内部を一部透過して図示している。
【0048】
続いて、図5を参照すると、本実施形態の水路堆積物除去装置10において、掘削揚土部36や搬送部50に駆動力が供給される様子が示されている。すなわち、図5(a)に示される駆動軸30は、図1に示した走行部12のエンジン26によって回転され、走行部12に流用された耕運機の回転爪が取り付けられていたものであって、ギアボックス28に接続されている。駆動軸30の両側には、スプロケット80Aが固定されており、これらのスプロケット80Aの各々に、チェーン78Aが掛け回されている。更に、チェーン78Aの各々は、中間軸76の両側に固定されたスプロケット80Bにも掛け回されており、中間軸76はフレームなどに取り付けられている。なお、このような様子は、後述する図8にも示されている。
【0049】
又、中間軸76は、その長さ方向の中心近傍にスプロケット80Cが固定されており、このスプロケット80Cにチェーン78Bが掛け回されている。更に、チェーン78Bは、一対のチェーン38A、38B(長尺環状体38)が回転する無端軌道を規定する、下回転軸40に固定されたスプロケット80Dにも掛け回されている。そして、下回転軸40のスプロケット80Dの両隣には、スプロケット80Eが固定されており、これらのスプロケット80Eに、一対のチェーン38A、38Bが掛け回されている。又、図2及び図4(a)を参照して、一対のチェーン38A、38Bが回転する無端軌道を規定するもう一方の上回転軸42には、2つのスプロケット80Fが固定され、それらに一対のチェーン38A、38Bが掛け回されている。
【0050】
図5(b)及び図4(a)を参照して、上回転軸42の、搬送部50が張り出ている側と反対側の端部には、スプロケット80Gが固定されており、このスプロケット80Gにチェーン78Cが掛け回されている。そして、チェーン78Cは、搬送部50のスクリューコンベア52Aの一方の軸部54に、軸部54と同軸で回転するように間接的に取り付けられた、スプロケット80Hにも掛け回されている。なお、チェーン78Cは、アイドラーギアとしてのスプロケット80Iに掛け回されてもよい。
【0051】
上記のような構成により、エンジン26によって駆動軸30が回転されると、スプロケット80A、80B及びチェーン78Aを介して、それが中間軸76へ伝達される。更に、中間軸76の回転は、スプロケット80C、80D及びチェーン78Bを介して、下回転軸40へと伝達される。この下回転軸40の回転により、一対のチェーン38A、38Bが回転され、それに伴ってチェーン38A、38Bの外周部に取り付けられた複数のフォーク型バケット44Aが回転移動し、堆積物Sの掘削及び揚土が行われる。更に、一対のチェーン38A、38Bの回転によって上回転軸42が回転し、それがスプロケット80G、80H及びチェーン78Cを介して、スクリューコンベア52Aの軸部54に伝達される。これによって、搬送部50のスクリューコンベア52Aが回転し、堆積物Sの搬送が行われる。
【0052】
次に、図1に戻り、水路堆積物除去装置10の他の構成について説明する。前輪16は、走行部12に固定された前輪取付部32に対して、取付部材34を介して着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、前輪取付部32に設けられた複数の取付溝32a(図8参照)のうち、2つの取付溝32aが利用されて、前輪16が接続された取付部材34が取り付けられる。このため、前輪取付部32に対する取付部材34の取り付け位置が変更されることで、前輪16が地面Gに接触する高さ位置が、走行部12に対して相対的に調整されるようになっている。更に、前輪16は、取付部材34に対して360度旋回可能になっており、換言すれば、地面Gにおいて360度旋回可能になっている。又、必要に応じて、前輪16の旋回位置は、例えば図1のような正面を向いた状態で固定できるようにもなっている。
【0053】
後輪18は、上述したようにエンジン26から供給される駆動力によって回転され、これにより水路堆積物除去装置10に移動力が付加される。しかしながら、本実施形態の後輪18は、エンジン26から受ける駆動力が切断できるようになっており、具体的には、図6に示すように、後輪18と走行車軸24との間に、メタルベアリング(滑り軸受)20が介在している。すなわち、走行車軸24の回転を後輪18へ伝達させるときは、図6のようにメタルベアリング20に対して固定ピン22が差し込まれた状態として、後輪18と走行車軸24とを固定する。これに対し、走行車軸24の回転を後輪18へ伝達させないときは、メタルベアリング20から固定ピン22が抜かれることで、後輪18に対して走行車軸24が空回りするようにしている。なお、例えばメタルベアリング20に滑り抵抗を加えることなどによって、通常よりも低減された任意の駆動力が、走行車軸24から後輪18へ伝達されるようにしてもよい。
【0054】
又、図7に示すように、後輪18A、18Bは、例えば走行車軸24の延長などによって、側方向(図中左右方向)の位置が変更できるようになっている。このような位置変更は、後輪18A、18Bの何れか一方のみ行われてもよく、図7(b)のように後輪18A、18Bの双方の位置が同時に変更されてもよい。なお、この後輪18の位置変更機能の用途については後述する。
更に、後輪18A、18Bは、図1図7で確認できるような、搬送部50が張り出ている側方向の一方側に位置する後輪18Aが、その反対側の後輪18Bと比較して、車輪の幅が大きく形成されていてもよく、或いは、車輪の数が多くてもよい。例えば、後輪18Aが2つ取り付けられる場合は、所謂ダブルタイヤのような状態になる。
【0055】
走行部12には、図8に示すように、必要に応じて補助輪90が取り付けられる。この補助輪90は、側方向視で前輪16と後輪18との間で、フレームなどに着脱可能に取り付けられ、後輪18と共に走行部12を支持する。このため、図8では、前輪16が前輪取付部32から取り外されている。このとき、補助輪90は、少なくとも、仮想線で示されるような軌道で回転移動する複数のバケット44が地面Gに接触しない高さまで、走行部12を持ち上げた状態となる。
【0056】
ここで、本実施形態の水路堆積物除去装置10を利用した、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去方法の基本的な流れについて説明する。まず、水路堆積物除去装置10を搬送する搬送車に対する積み下ろし時に使用する歩み板などの、斜面が含まれる経路を移動させる場合には、図8のように補助輪90を取り付けた状態で移動させる。又、斜面が含まれない経路の移動時には、補助輪90ではなく、前輪16を前輪取付部32の下方寄りに取り付けることで、複数のバケット44が地面Gに接触しない高さまで走行部12を持ち上げた状態で、水路堆積物除去装置10を移動させてもよい。これらの移動は、エンジン26によって後輪18を駆動しながら行ってもよく、手押しで行ってもよい。
【0057】
堆積物Sを除去する作業対象の水路まで水路堆積物除去装置10を移動させたら、図1(a)に示すように、バケット44(フォーク型バケット44A)が堆積土S中に食い込むように、前輪16を前輪取付部32の上方寄りに移設する。この状態で、使用者Wによって操向ハンドル14を介して操向しながら、堆積物Sの除去作業を開始する。堆積物Sの除去作業は、エンジン26から掘削揚土部36及び搬送部50へ駆動力を供給して行う。すなわち、図5(a)に示したような機構を介して、掘削揚土部36の長尺環状体38(一対のチェーン38A、38B)を回転させ、それによって複数のフォーク型バケット44Aを回転移動させる。
【0058】
回転移動されたフォーク型バケット44Aは、図1(a)のような側方向視で、下回転軸40の周囲を反時計回りに回転移動しながら、堆積土S中に貫入される。このとき、フォーク型バケット44Aの複数の移動刃46は、図3などを参照して、その細面46bから堆積土S中へ貫入され、そのまま回転移動されると、隣接する移動刃46の側面46aの間に堆積土Sが付着した状態で、堆積土S中から引き揚げられる。その状態で、フォーク型バケット44Aは、図1(a)のような側方向視で、上回転軸42の周囲を反時計回りに回転移動するまで、一対のチェーン38A、38Bの無端軌道に沿って斜め上方に移動される。
【0059】
その後、上回転軸42の周囲を通って下降に転じたフォーク型バケット44Aは、図2に示すように、複数の固定刃70とすれ違う。このとき、複数の移動刃46の側面46a間に付着していた堆積土Sが、固定刃70によって削ぎ落とされ、投入口68を通って搬送部50のケース体58内に落下する。すると、図5(b)に示したような機構を介して、一対のチェーン38A、38Bの回転に伴って回転されるスクリューコンベア52Aにより、図4(a)に示すような投入口68から開口部64まで、堆積土Sが搬送される。そして、開口部64まで達した堆積土Sは、開口部64から自重によって落下して排出される。
【0060】
上記のような堆積土Sの除去作業は、使用者Wにより操向しつつ、図6に示すような構成を介して、エンジン26によって後輪18を駆動しながら或いは使用者Wによって手押しで、水路堆積物除去装置10を水路に沿って移動させながら行う。このため、堆積土Sを除去した堆積土砂面Gには、図7(b)に示すような水路に沿った轍Rが形成される。ここで、比較的幅の広い水路で作業を行う場合は、水路の幅方向に作業位置をシフトさせながら、水路に沿った移動を繰り返し行う。このとき、既に形成された轍Rの隣の堆積土Sを除去する場合は、後輪18が轍Rの中を通ることが考えられる。このため、上述した後輪18の位置変更機能を利用して、後輪18の側方向の位置を変更することで、後輪18が轍Rを通らないようにする。
【0061】
ここで、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、図1図8に示したような構成に限定されるものではない。例えば、フォーク型バケット44Aの各々が備える移動刃46は、5つ以外の数量であってもよく、側面46aが矩形でなくてもよい。又、固定刃70の数量も移動刃46の数量に応じて増減させてよく、その形状も任意である。一例として、図9には、異なるハッチングなどで分けて図示された、4種の部位70a〜70dを有する固定刃70の例を示している。すなわち、図9の固定刃70は、母材刃としての部位70aと、緩衝刃としての部位70bと、先端保護刃70cとしての部位70cと、根元補強刃としての部位70dとを備えており、各々の素材などが異なっていてもよい。又、長尺環状体38に取り付けるフォーク型バケット44Aの数は、必要に応じて任意に増減させてよい。
【0062】
更に、着脱可能に取り付けられる複数のバケット44として、フォーク型バケット44Aに替えて、例えば図10に示すような平型バケット44Bを取り付けてもよい。例えば、堆積土Sの粘性が比較的高い場合はフォーク型バケット44Aを使用し、堆積土Sが砂質土などでバケット面からの剥離性が高い場合は平型バケット44Bを使用するなど、堆積土Sの土質性状に応じて使い分けてよい。なお、平型バケット44Bを使用する場合は、固定刃70を取り外すことになる。又、走行部12の前輪16の数が2つ以上でもよく、後輪18の数が3つ以上でもよい。更に、長尺環状体38が、2つの回転軸40、42の周囲だけでなく、それ以外の回転軸の周囲を通る無端軌道で回転してもよく、幅広のベルト状の環状体で構成されてもよい。加えて、搬送機構52も、スクリューコンベア52Aに限定されるものではなく、それ以外の機構や、リボン型以外のスクリューコンベアであってもよい。
【0063】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、図1に示すように、走行部12、掘削揚土部36、及び搬送部50を含んでいる。走行部12は、操向ハンドル14、少なくとも1つの前輪16、及び少なくとも2つの後輪18を有し、そのような走行部12に掘削揚土部36及び搬送部50が搭載されている。このため、装置10全体を前輪16及び後輪18によって支持した状態で、操向ハンドル14を介して使用者Wにより操向しながら、意図した位置で作業を行うことができる。又、前輪16と後輪18とを合わせて、少なくとも3つの車輪で装置10全体を支持するため、作業時や停止時においても安定して自立させることができる。
【0064】
掘削揚土部36は、無端軌道に沿って回転する長尺環状体38(一対のチェーン38A、38B)と、この長尺環状体38の外周部に、長尺環状体38の回転方向に互いに間隔を空けて着脱可能に取り付けられた複数のバケット44とを有している。長尺環状体38が回転する無端軌道は、走行部12の前後方向に基づいた基準方向で、走行部12の下部とこの下部の上斜め後方とに位置する、側方向と平行な2つの回転軸40、42の周囲を通るものである。このため、長尺環状体38がそのような無端軌道で回転すると、複数のバケット44は、走行部12の前方下部とそこから上斜め後方の位置との間を、繰り返し斜めに移動するような動作を行う。そして、走行部12の前方下部において堆積物Sを掘削し、そのまま上斜め後方へと揚土することができる。
【0065】
搬送部50は搬送機構52を有し、この搬送機構52によって、掘削揚土部36により揚土されて投入口68(図2参照)を介して受けた堆積物Sを、走行部12の前後方向に基づいた基準方向での側方向の一方へ搬送して排出する。すなわち、掘削揚土部36によって堆積物Sの掘削及び揚土を行い、そこから搬送部50によって堆積物Sを搬送するため、堆積物Sの除去に必要な掘削、揚土、搬送という一連の工程を同時に行うことができる。しかも、それらの工程を行う掘削揚土部36及び搬送部50は、使用者Wにより操向ハンドル14を介して操向される走行部12に搭載可能な大きさであり、装置10全体の小型化が図られている。このため、進入路の大きさや作業用通路の有無といった現場条件の如何に関わらず、水路の堆積物Sを除去することが可能となる。
【0066】
更に、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、掘削揚土部36で使用される複数のバケット44が、フォーク型バケット44Aである。これらフォーク型バケット44Aの各々は、図2図3に示すように、長尺環状体38の回転方向と平行な側面46aを有する平板状の複数の移動刃46が、側方向に互いに間隔を空けて設けられている。これにより、長尺環状体38が回転すると、フォーク型バケット44Aの移動刃46は、平板状の幅の小さい細面46bが進行方向に向けられた状態で回転移動し、堆積土砂Sへと貫入されるため、堆積土砂面Gへの進入時の抵抗を小さく抑えることができる。しかも、移動刃46の細面46bが堆積土砂S中を移動することで、土砂Sに生えた雑草の根などを切断することができる。従って、フォーク型バケット44Aを移動させるための、長尺環状体38の回転に必要な駆動力を抑制しながら、効率的に堆積物Sを掘削することが可能となる。
【0067】
又、フォーク型バケット44Aの移動刃46は、その側面46aが堆積土砂Sへの貫入方向や移動方向と直交する方向へ向けられている。ここで、特に農業用水路の堆積土砂Sは、一般的に粘性が高いため、面積が大きい移動刃46の側面46aに付着し易く、複数の移動刃46の間に多くの堆積土砂Sを付着させることができる。従って、移動刃46の側面46aが移動方向と直交する方向へ向けられていても、複数のフォーク型バケット44Aの連続的な回転移動により、主に移動刃46の細面46bで掘削しながら、堆積土砂Sの粘着力を利用して移動刃46の側面46a間で多くの堆積土砂Sを揚土することができる。これにより、掘削から揚土のための堆積土砂Sの移載が必要なく、掘削と揚土とを連続して行うことができ、堆積物Sの除去を効率的に行うことができる。
【0068】
ここで、上記のような堆積土Sの除去作業では、フォーク型バケット44Aの複数の移動刃46に付着しなかった堆積土Sが、堆積土砂面G上に置き去りになっている。しかしながら、この置き去りになった堆積土Sは、フォーク型バケット44Aの切削により、堆積土S中に生えた根が切断されかつ解れた状態になっているため、大型スコップなどで人力により容易に掘り起こすことができる。よって、使用者Wの要求品質などに応じて、仕上げ工程の有無を選定すればよい。つまり、荒掘りでよい場合は水路堆積物除去装置10による機械掘削揚土のみの1工程で仕上げとし、底浚い面をしっかりと出す場合は、機械掘削揚土後に人力にて掘削を行う2工程作業で仕上げればよい。
【0069】
又、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、図2に示すように、掘削揚土部36から搬送部50へ堆積物Sを移載するための投入口68の上方に、着脱可能に取り付けられた複数の固定刃70を含んでいる。これら複数の固定刃70は、図3にも示すように、回転移動する各フォーク型バケット44Aの複数の移動刃46の各々が、隣接する固定刃70の間を通り抜けるような位置に、側方向に互いに間隔を空けて取り付けられている。すなわち、複数の固定刃70が設けられた位置を複数の移動刃46が通るとき、固定刃70と移動刃46とが側方向に交互に配置される態様となる。これにより、複数の移動刃46の側面46a間に付着して揚土された堆積土砂Sを、固定刃70の各々によって削ぎ落とし、投入口68を通して搬送部50へと落下させることができる。従って、揚土された堆積土砂Sの粘性が高くても、移動刃46に付着した堆積土砂Sを確実に剥がすことができ、掘削揚土部36から搬送部50への堆積物Sの移載を効率よく行うことができる。
【0070】
更に、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、複数の固定刃70の各々が、走行部12の前後方向に基づいた基準方向での上斜め前方へ延びているものである。すなわち、複数の移動刃46とのすれ違いを実現するために、複数の固定刃70は、その先端側が掘削揚土部36の長尺環状体38の方へ向けられ、基端側が投入口68へ向けられることになる。又、複数の固定刃70の各々は、長尺環状体38が回転する無端軌道の頂上を通って下降に転じたときの、フォーク型バケット44Aの移動方向と対向する凸条部72を有している。すなわち、各固定刃70は、その延在方向に沿った凸条部72を有し、その凸条部72の延在方向についての断面の頂点(峰)72a側が、フォーク型バケット44Aの移動刃46の移動方向と対向する方向に向けられている。
【0071】
これにより、固定刃70とすれ違う際に、フォーク型バケット44Aの移動刃46に付着した堆積土砂Sは、固定刃70の凸条部72の峰72aで左右に削ぎ分けられ、それらが凸条部72の麓72bや固定刃70の基端側で集積し、自重で投入口68へと落下する。従って、掘削揚土部36から搬送部50への堆積物Sの移載を、上記のような固定刃70を介して、より効率的に行うことができる。しかも、固定刃70の凸条部72の峰72aが、移動刃46の移動方向と対向していることで、移動してくる移動刃46が固定刃70に対して突き合わさることはない。すなわち、移動してくる移動刃46が仮に固定刃70に接触したとしても、固定刃70の凸条部72の峰72aから麓72bまでの面に沿って、移動刃46が滑りながら移動するため、移動刃46と固定刃70との突き合わせ衝突を防止することが可能となる。
【0072】
又、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、掘削揚土部36から搬送部50へ堆積物Sを移載するための投入口68の側方向の幅68wが、フォーク型バケット44Aの、複数の移動刃46が設けられている側方向についての幅44wよりも大きいものである。これにより、固定刃70によって複数の移動刃46から剥がされた堆積土砂Sが、投入口68の周りの壁部に接触することなく落下するため、そのような壁部への堆積土砂Sの付着を防止することができ、投入口68の周辺が堆積土砂Sにより閉塞してしまうリスクを避けることができる。更に、図5(b)や図1(a)で確認できるように、複数の移動刃46の各々は、走行部12の前後方向に基づいた側方向視で、長尺環状体38の外周部から、その外周部と直交する方向に突出した矩形をなすものである。これにより、長尺環状体38の無端軌道に沿って斜めに移動する複数の移動刃46は、掘削時に矩形の角部分から堆積土砂Sへ貫入されることになるため、貫入抵抗をより抑制することができる。
【0073】
又、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、図4に示すように、側方向の一方へ堆積物Sを搬送する搬送部50の搬送機構52が、スクリューコンベア52Aにより構成されたものである。このスクリューコンベア52Aは、側方向の両端にのみ軸部54を有し、その軸部54間に、側方向と平行な軸を中心軸とした螺旋状の羽根56が設けられた、所謂リボン型のスクリューコンベアである。このような構成により、投入口68を介して搬送部50に落下した堆積土砂Sが、端部に設けられた軸部54を介して回転されるスクリューコンベア52Aの、軸部を有さない螺旋状の羽根56によって側方向の一方へ搬送される。このため、軸部を有する羽根によって堆積土砂Sを搬送する場合と比較して、堆積土砂Sを付着させることなくスムーズに搬送することができ、堆積土砂Sによって搬送部50が閉塞してしまうリスクを大幅に低減することができる。
【0074】
更に、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、スクリューコンベア52Aの螺旋状の羽根56の側方向についての間隔56w、換言すれば、螺旋状の羽根56の軸方向視で同じ回転位相に位置している、側方向に隣接する羽根同士の間隔56wが、フォーク型バケット44Aの、複数の移動刃46が設けられている側方向についての幅44w(図2及び図3参照)よりも大きいものである。これにより、固定刃70によって複数の移動刃46から剥がされた堆積土砂Sが、想定される堆積土砂Sの落下範囲よりも大きな間隔を有する羽根56に向かって落下するため、堆積土砂Sを搬送部50によって円滑に取り込むことができる。
【0075】
加えて、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、内部にスクリューコンベア52Aが設置されるケース体58を搬送部50が含むものであり、このケース体58は、側方向視で円弧状の底部60を有している。すなわち、ケース体58の底部60は、スクリューコンベア52Aの側方向視形状に倣った形状を有していることで、堆積土砂Sが停滞するような隙間の形成を防止することができる。更に、ケース体58は、側方向視で底部60と対向する開閉可能な蓋部62を有している。そして、この蓋部62を閉じた状態でスクリューコンベア52Aを回転させることで、搬送される堆積土砂Sの上方への逸脱を防止しながら、強制的に堆積土砂Sを側方向の一方へ移動させることができる。又、蓋部62を開くと、上方からケース体58の内部を確認することができるため、搬送部50のメンテナンス性を高めることが可能となる。しかも、搬送部50のケース体58の、側方向の一方側の端部の下方に開口部64が設けられていることで、ケース体58の内部でスクリューコンベア52Aにより一方側の端部まで搬送された堆積土砂Sを、開口部64から自由落下させて排出することができる。このような単純な構造にも関わらず、ケース体58の内部から堆積土砂Sを円滑に排出することが可能となる。
【0076】
又、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、搬送部50において、ケース体58の側方向の一方側(走行部12を中心とした側方向外側)の一部と、ケース体58の内部に設置されるスクリューコンベア52Aとが、取り外し可能に構成されたものである。ここで、搬送部50は、側方向の一方へと堆積土砂Sを搬送するものであるため、その一方側へと張り出ており、作業を伴わない移動時や運搬車などによる運搬時に、水路堆積物除去装置10の姿勢の安定性が保たれない虞がある。そこで、上述したような取り外しが可能であることで、移動時や運搬時にケース体58の一部及びスクリューコンベア52Aを取り外して、側方向の一方側へと張り出た部分を無くす或いは少なくし、装置10の姿勢の安定性を保つことができる。しかも、そのような状態では装置10の大きさがよりコンパクトになるため、装置10の収容時の省スペース化を図ることもできる。
【0077】
又、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、図1に示すように、走行部12が後輪18を駆動するためのエンジン26を有し、更にこのエンジン26によって、掘削揚土部36及び搬送部50にも駆動力が供給されるものである。すなわち、エンジン26は、掘削揚土部36の長尺環状体38を無端軌道に沿って回転させるための駆動力と、搬送部50の搬送機構52を駆動するための駆動力(スクリューコンベア52Aを回転させるための駆動力)とを供給する。これにより、走行部12に搭載される1つのエンジン26から、装置10の移動、堆積物Sの掘削、揚土、及び搬送のための駆動力を得ることができるため、装置10の小型化を維持したまま、堆積物Sの除去作業の省力化を図ることができる。
【0078】
更に、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、図5及び図4(a)に示すように、チェーン78(78A〜78C)及びスプロケット80(80A〜80H)を介して、エンジン26から長尺環状体38及び搬送機構52へ駆動力が伝達されるように構成されたものである。すなわち、1つのエンジン26から供給される駆動力によって、装置10の移動と堆積物Sの除去作業とが行われるため、長尺環状体38の回転速度や搬送機構52の駆動速度は、装置10の移動速度に比例することになる。そこで、エンジン26と長尺環状体38及び搬送機構52との間に、スプロケット80により実現する固定減速機を介在させることで、装置10の移動量と堆積物Sの除去作業量との均衡化を図ることができる。又、介在させるスプロケット80の歯数を変更することで、減速比の調整を行うこともできる。更に、上記のような構成により、エンジン26と長尺環状体38及び搬送機構52との間には変速機が具備されないため、装置10の軽量化や低廉化に貢献することができる。
【0079】
又、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、エンジン26によって後輪18に供給される駆動力が、切断可能及び/又は低減可能に構成されているものである。ここで、掘削揚土部36の掘削能力は、硬さ、粘性、含水量、根の入り具合、堆積土厚といった堆積土Sの状態によって変化するため、装置10の移動速度に掘削能力が追い付かなくなる場合が想定される。そこで、例えば図6に示すような構成により、必要に応じて後輪18への駆動力を切断することで、使用者Wによって手押しで装置10を移動させることができるため、必要な場所で装置10を前後に移動させながら、堆積土砂Sを取り残さずに確実に掘削揚土することが可能となる。又、後輪18への駆動力が低減可能に構成されている場合は、掘削能力と均衡がとれるように装置10の移動速度を低減しながらも、エンジン26からの駆動アシストを受けながら移動させることができるため、堆積土砂Sの除去作業の効率化及び省力化の双方を図ることができる。
【0080】
又、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、図7に示すように、後輪18の側方向の位置が、掘削揚土部36を中心として外側に変更可能に構成されたものである。すなわち、図7のような装置10の正面視で、少なくとも2つの後輪18のうち、左側に位置する後輪18Aは、より左側へと位置を変更することができ、右側に位置する後輪18Bは、より右側へと位置を変更することができる。ここで、幅が大きい水路などでは、水路に沿って移動しながらの除去作業が、水路の幅方向に位置を変えながら繰り返し行われ、そのとき、これから除去作業が行われる経路の隣に、既に堆積物Sが除去されていることで生じた轍Rが形成されている場合がある。そのような場合に、後輪18の側方向の位置を轍Rなどを避ける位置に調整することで、安定した姿勢で堆積物Sの除去作業を行うことができる。
【0081】
更に、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、側方向の一方へ堆積物Sを搬送する搬送機構52を具備した搬送部50が張り出ている方向である、側方向の一方側(図7における左側)に位置する後輪18Aが、その一方側と反対側に位置する後輪18Bと比較して、車輪幅が大きい或いは車輪の数が多くなっていてもよい。このような構成であると、搬送部50が張り出ていることで装置重量の負担が大きくなる一方側の後輪18Aの、接地面積を大きくすることができるため、装置10全体を安定して支えることが可能となる。
【0082】
又、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、図1及び図8に示すように、前輪16の地面Gに接触する高さ位置が、前輪取付部32及び取付部材34を介して、走行部12に対して相対的に調整可能に構成されているものである。すなわち、他の構成要素を搭載している走行部12に対して、走行部12を支える前輪16の地面Gに接触する高さ位置を調整することで、走行部12の前側の高さを調整することができる。このため、図1(a)に示すように、走行部12の前側の高さが比較的低く調整されている場合は、走行部12の前方下部を通って回転移動するバケット44が、堆積土砂面Gに達して貫入されるようになるため、この状態では堆積土砂Sの掘削作業を行うことができる。更にこの状態では、走行部12の前側の高さを、堆積土Sの深さに応じた掘削に適した高さに調整することもできる。これに対し、走行部12の前側の高さが比較的高く調整されている場合は、走行部12の前方下部を通るバケット44が、堆積土砂面Gや地面Gに届かない高さに位置するため、この状態では作業時以外の装置10の移動を円滑に行うことができる。
【0083】
加えて、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、図8に示すように、走行部12の前後方向についての前輪16と後輪18との間に、着脱可能に補助輪90が取り付けられるものである。この補助輪90が取り付けられると、補助輪90と後輪18とで走行部12が支持され、走行部12の前方下部を通るバケット44が地面Gに届かなくなるように、走行部12が持ち上げられる。又、それと同時に、前輪16と後輪18とで走行部12が支持されていた状態と比較して、ホイールベース(前輪16又は補助輪90と後輪18との間の距離)が短くなる。これにより、水路への移動時や運搬車への積み下ろし時などに、傾斜面を移動する必要が生じても、装置10の底面を傾斜面の頂上近傍などに接触させることなく、装置10を円滑に移動することができ、例えば吊り具などで装置10を移動させる必要がないものである。
【0084】
又、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、前輪16が、地面Gにおいて360度旋回可能な状態と旋回不可の状態とが切り替え可能に構成されているものである。これにより、作業中の装置10の方向転換の要否や、装置10が移動される路面状態などに応じて、前輪16の旋回の可不可を切り替えることができるため、装置10の操向性を高めることができる。
更に、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10は、走行部12が流用された市販の小型耕運機により構成されたものであり、特に小型耕運機の中で、操向ハンドル14、少なくとも1つの前輪16、少なくとも2つの後輪18、エンジン26などを具備したものが利用される。これにより、本装置10専用に走行部12を製作する場合と比較して、コストを大幅に抑えながらも、必要な機能を問題なく実現することができる。
一方、本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去方法は、上述した本発明の実施の形態に係る水路堆積物除去装置10を利用して実行されることで、水路堆積物除去装置10と同等の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0085】
10:水路堆積物除去装置、12:走行部、14:操向ハンドル、16:前輪、18(18A、18B):後輪、26:エンジン、36:掘削揚土部、38(38A、38B):長尺環状体(チェーン)、40、42:回転軸(下回転軸、上回転軸)、44:バケット、44A:フォーク型バケット、46:移動刃、46a:側面、44w:フォーク型バケットの側方向の幅、50:搬送部、52:搬送機構、52A:スクリューコンベア、54:軸部、56:羽根、56w:羽根の側方向の間隔、58:ケース体、60:底部、62:蓋部、68:投入口、68w:投入口の側方向の幅、70:固定刃、72:凸条部、78:チェーン、80:スプロケット、90:補助輪、S:堆積物(堆積土、堆積土砂)、G:地面(堆積土砂面)、W:使用者
【要約】
【課題】大きな駆動力を要することなく、堆積物を効率的に掘削して除去する。
【解決手段】水路堆積物除去装置10は、前輪16及び後輪18を有する走行部12と、走行部12に搭載され、側方向と平行な2つの回転軸40、42の周囲を通る無端軌道に沿って回転する長尺環状体38を有し、長尺環状体38の外周部に複数のバケット44が着脱可能に取り付けられた掘削揚土部36と、走行部12に搭載され、掘削揚土部36により揚土された堆積物Sを、搬送機構52により搬送して排出する搬送部50とを含み、複数のバケット44は、平板状の複数の移動刃を有するフォーク型バケット44Aである。これにより、移動刃の細面によって堆積物Sの掘削や根の切断を行いつつ、隣接する移動刃の側面間に付着させた堆積物Sを揚土及び搬送できるため、大きな駆動力を要することなく、堆積物Sを効率的に掘削して除去することができる。
【選択図】図1
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図10