【0015】
[最大粒度決定工程]
本工程は、不溶化材基準量決定工程で定められた不溶化材基準量以上の量の不溶化材が、処理対象物(掘削ずりまたは掘削ずり破砕物)を構成する粒体に付着するように、処理対象物の最大粒度を決定する工程である。
最大粒度決定工程は、例えば、以下の2つの方法A、Bのいずれかによって行なわれる。
[最大粒度決定工程の具体的方法である方法A]
方法Aは、以下の(a)〜(c)からなる。
(a)処理対象物を複数の粒度範囲区分に分画すること
(b)上記(a)で得た複数の粒度範囲区分の各々について、不溶化材基準量決定工程で定められた不溶化材基準量以上の量の不溶化材が、粒度範囲区分を構成する粒体に付着するように、不溶化材の添加量を定めること
(c)不溶化材を上記(b)で定めた添加量で用いることを前提として、複数の粒度範囲区分の各々における上限値を、該粒度範囲区分における処理対象物の最大粒度として定めること
ここで、上記(b)における不溶化材の添加量は、以下の(i)〜(iii)からなる手順によって定めることができる。
(i)粒度調整ずりにおける、不溶化材の添加量と不溶化材に含まれている主成分の量の関係を求めること
(ii)複数の粒度範囲区分の各々について、(イ)不溶化材の添加量と、(ロ)上記(イ)の添加量に対応する、粒度範囲区分を構成する粒体への不溶化材の付着量であって、該付着量に含まれている主成分の量を、上記(i)の関係に適用することによって決定される、上記(i)の関係における上記不溶化材の添加量と一致する、不溶化材の付着量、の関係を求めること
(iii)上記(ii)において、上記(ロ)の不溶化材の付着量が、不溶化材基準量以上の量である場合に、該不溶化材の付着量に対応する上記(イ)の不溶化材の添加量を、上記(b)における不溶化材の添加量として定めること
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[1.使用材料]
(1)不溶化材:マグネサイト(炭酸マグネシウムの含有率:93質量%)を、1,000℃で焼成した後、得られた軽焼マグネシアを粉砕したもの(酸化マグネシウムの含有率:85質量%以上;ブレーン比表面積:6,120cm
2/g)
(2)掘削ずり:以下の通過質量百分率を有する掘削ずり(頁岩と砂岩の混在岩;密度:2.8g/cm
3;鉱物の種類:石英、イライト、バトラライト等)
0.1mm以下:9%
1mm以下:23%
2mm以下:32%
5mm以下:43%
10mm以下:51%
20mm以下:75%
30mm以下:82%
40mm以下:84%
50mm以下:96%
【0019】
[2.粉砕工程]
掘削ずりの試料を、最大粒度が2mm以下になるまで粉砕し、粒度調整ずりを得た。
[3.不溶化材基準量決定工程]
粉砕工程で得た粒度調整ずりに対し、不溶化材(粉体)を0kg/m
3、10kg/m
3、20kg/m
3の各量で添加し、オムニミキサで1分間混合した後、掻き落としを行ない、次いで、1分間混合した。得られた混合物(3つの試料)を20℃で材齢7日の時点まで湿空養生した。養生後の混合物の検出溶液を、平成15年3月6日環境省告示第18号(環告18号)「土壌溶出量調査に係る測定方法を定める件」に準拠して調製した。調製した検出溶液(3つの試料)中のヒ素の量を、「JIS K 0102−2013」(ICP質量分析法)に準拠して測定した。
その結果、不溶化材の量が0kg/m
3、10kg/m
3、20kg/m
3である場合の検出溶液におけるヒ素の溶出量は、各々、0.024mg/リットル、0.0036mg/リットル、0.001mg/リットル未満(検出限界値未満)であった。
これらの結果から、ヒ素の土壌溶出量基準である0.01mg/リットルを満たすための不溶化材の量(不溶化材基準量)は、5kg/m
3であることがわかった。
【0020】
[4.最大粒度決定工程の具体的方法である方法A]
粉砕工程で得た粒度調整ずりに対し、不溶化材(粉体)を0kg/m
3、50kg/m
3、100kg/m
3の各量で添加し、オムニミキサで1分間混合した後、掻き落としを行ない、次いで、1分間混合した。得られた混合物(3つの試料)を105μm以下になるように粉砕した後、得られた粉砕物に、1Nの塩酸溶液を液固比が10になるように添加し、次いで、2時間振とうを行なった。振とうの後の上澄み液を、孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した後、得られたろ液中のマグネシウム(Mg)濃度を、「JIS K 0102−2013」(ICP発光分光分析法)に準拠して測定した。その結果、不溶化材の添加量(x;単位:kg/m
3)と、不溶化材に含まれている主成分であるマグネシウムに関する上記ろ液中のマグネシウム(Mg)濃度(y;単位:mg/リットル)の関係は、式:y=26.3x+208.33、で表されることがわかった。
【0021】
次に、処理対象物である掘削ずりを複数の粒度範囲区分に分画した。
具体的には、「4.75mmを超え、9.5mm以下」(以下、「4.75〜9.5mm」と略す。)、「9.5mmを超え、37.5mm以下」(以下、「9.5〜37.5mm」と略す。)、「37.5mmを超え、75mm以下」(以下、「37.5〜75mm」と略す。)、の3つの粒度範囲区分に分画した。
次いで、これら3つの粒度範囲区分の各々について、不溶化材の添加量が30kg/m
3、50kg/m
3、100kg/m
3である場合の不溶化材の付着量を算出した。この算出に際し、不溶化材の付着量は、付着している不溶化材に含まれているマグネシウム(Mg)の量の測定値を、上述の関係(不溶化材の添加量(x)と、ろ液中のマグネシウム(Mg)濃度(y)の関係を表す式:y=26.3x+208.33)に適用することによって求めた。
その結果は、以下のとおりである。
[4.75〜9.5mmの粒度範囲区分]
不溶化材の添加量が30kg/m
3である場合の不溶化材の付着量:14kg/m
3
不溶化材の添加量が50kg/m
3である場合の不溶化材の付着量:30kg/m
3
不溶化材の添加量が100kg/m
3である場合の不溶化材の付着量:43kg/m
3
[9.5〜37.5mmの粒度範囲区分]
不溶化材の添加量が30kg/m
3である場合の不溶化材の付着量:2kg/m
3
不溶化材の添加量が50kg/m
3である場合の不溶化材の付着量:16kg/m
3
不溶化材の添加量が100kg/m
3である場合の不溶化材の付着量:18kg/m
3
[37.5〜75mmの粒度範囲区分]
不溶化材の添加量が30kg/m
3である場合の不溶化材の付着量:4kg/m
3
不溶化材の添加量が50kg/m
3である場合の不溶化材の付着量:4kg/m
3
不溶化材の添加量が100kg/m
3である場合の不溶化材の付着量:12kg/m
3
【0022】
以上の結果から、以下のことがわかる。
4.75〜9.5mmの粒度範囲区分では、不溶化材の添加量が30kg/m
3であっても、ヒ素の土壌溶出量基準(0.01mg/リットル)を満たすための不溶化材の量(5kg/m
3以上)を満たす付着量の値(14kg/m
3)を得ている。したがって、不溶化材の添加量を30kg/m
3に定め、かつ、処理対象物である掘削ずりの最大粒度を9.5mm以下に定めれば、ヒ素の土壌溶出量基準(0.01mg/リットル)を満たしうることがわかる。
9.5〜37.5mmの粒度範囲区分では、不溶化材の添加量が50kg/m
3である場合に、ヒ素の土壌溶出量基準(0.01mg/リットル)を満たすための不溶化材の量(5kg/m
3以上)を満たす付着量の値(16kg/m
3)を得ている。したがって、不溶化材の添加量を50kg/m
3に定め、かつ、処理対象物である掘削ずりの最大粒度を37.5mm以下に定めれば、ヒ素の土壌溶出量基準(0.01mg/リットル)を満たしうることがわかる。
37.5〜75mmの粒度範囲区分では、不溶化材の添加量が100kg/m
3である場合に、ヒ素の土壌溶出量基準(0.01mg/リットル)を満たすための不溶化材の量(5kg/m
3以上)を満たす付着量の値(12kg/m
3)を得ている。したがって、不溶化材の添加量を100kg/m
3に定め、かつ、処理対象物である掘削ずりの最大粒度を75mm以下に定めれば、ヒ素の土壌溶出量基準(0.01mg/リットル)を満たしうることがわかる。
【0023】
[5.最大粒度決定工程の具体的方法である方法B]
掘削ずりを、粒度の大きさに応じて、複数の粒度範囲(イ)〜(ホ)に分画した。
複数の粒度範囲(イ)〜(ホ)は、以下のとおりである。
(イ)平均粒度5mm(7.5mm以下の粒度を有するもの)
(ロ)平均粒度9mm(7.5mmを超え、12mm以下の粒度を有するもの)
(ハ)平均粒度15mm(12mmを超え、21mm以下の粒度を有するもの)
(ニ)平均粒度28mm(21mmを超え、45mm以下の粒度を有するもの)
(ホ)平均粒度61mm(45mmを超え、76mm以下の粒度を有するもの)
【0024】
掘削ずりの複数の粒度範囲(イ)〜(ホ)の各々について、十分に水洗し、掘削ずりを構成する粒体の表面に付着している微粒分を除去した後、20℃の水中で24時間吸水させた。吸水後の掘削ずりを水から取り出して、水を切った後、吸水性の布で粒体の表面の水膜を拭い去り、表乾状態の掘削ずり(表面水率:0%)を調製した。
複数の粒度範囲(イ)〜(ホ)の各々の表乾状態の掘削ずりについて、不溶化材の付着量を測定した。
具体的には、不溶化材を付着させる対象となる試料(表乾状態の掘削ずり)に、十分な量の不溶化材を添加して混合した後、試料(表乾状態の掘削ずり)を構成する粒体の表面に、不溶化材からなる凝集物が残らないように、目開き寸法が2mmであるふるいを用いて、試料(表乾状態の掘削ずり)に余分に付着した不溶化材(凝集物)を落とし、その後、不溶化材が付着している試料(表乾状態の掘削ずり)の質量を測定した。この質量から、不溶化材が付着する前の試料(表乾状態の掘削ずり)の質量を差し引くことによって、付着した不溶化材の質量を算出した。また、この不溶化材の質量を、不溶化材が付着する前の試料(表乾状態の掘削ずり)の体積で除することによって、不溶化材が付着する前の試料(表乾状態の掘削ずり)の単位体積(1m
3)当たりの不溶化材の付着量(kg)を算出した。
【0025】
結果は、以下のとおりである。
(イ)平均粒度5mmの場合の不溶化材の付着量:12kg/m
3
(ロ)平均粒度9mmの場合の不溶化材の付着量:8kg/m
3
(ハ)平均粒度15mmの場合の不溶化材の付着量:7kg/m
3
(ニ)平均粒度28mmの場合の不溶化材の付着量:5kg/m
3
(ホ)平均粒度61mmの場合の不溶化材の付着量:3kg/m
3
【0026】
以上の結果から、ヒ素の土壌溶出量基準(0.01mg/リットル)を満たすための不溶化材の量(5kg/m
3以上)を確保するためには、上記(ニ)の平均粒度28mm(平均値;21mmを超え、45mm以下の粒度を有するもの)と同等またはそれ未満の平均粒度が必要であることがわかる。この場合、不溶化材の付着量として、5kg/m
3以上を確保するためには、処理対象物である掘削ずりの全量が、概ね、粒度38mm程度以下であればよいと推測される。