(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維状酸化チタンが、数平均繊維長(L)1μm〜50μm、数平均繊維径(D)0.05μm〜2.0μmであり、かつL/Dが3〜50である、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
電子部品が、コネクタ、スイッチ、リレー、コンデンサ、コイル、トランス、カメラモジュール、アンテナおよびチップアンテナからなる群より選択されるものを構成する部品である、請求項5に記載の成形品。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーは、異方性溶融相を形成するものであり、当業者にサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるものであって、式(I)および(II)で表される繰返し単位を含むものであれば、特に制限されない。
【化2】
【0016】
本明細書および特許請求の範囲において、「式(I)および式(II)で表される繰返し単位を含む液晶ポリマー」とは、液晶ポリマーがその構成成分として式(I)および式(II)で表される繰返し単位の他に、他の繰返し単位を含有していてもよいことを意味する。
【0017】
異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明における液晶ポリマーは光学的に異方性を示すもの、即ち、直交偏光子の間で検査したときに光を透過させるものである。試料が光学的に異方性であると、たとえ静止状態であっても偏光は透過する。
【0018】
式(I)で表される繰返し単位を与える単量体としては、4−ヒドロキシ安息香酸ならびに、そのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0019】
式(II)で表される繰返し単位を与える単量体としては、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ならびに、そのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0020】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーは、耐熱性および薄肉成形性に優れる点で、式(I)で表される繰返し単位および式(II)で表される繰返し単位の合計が25モル%以上であることが好ましい。
【0021】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーは、式(I)で表される繰返し単位および式(II)で表される繰返し単位以外のオキシカルボニル繰返し単位を含んでいてもよい。
【0022】
オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0023】
さらに、本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーは、式(III)で表されるジカルボニル繰返し単位および/または式(IV)で表されるジオキシ繰返し単位を含んでいてもよい。
【化3】
【化4】
[式中、Ar
1およびAr
2はそれぞれ2価の芳香族基を表す。]
【0024】
ここで、式(III)および式(IV)はそれぞれ、複数種のAr
1およびAr
2を含み得る。また、「芳香族基」は、6員の単環または環数2もしくは3の縮合環である芳香族基を示す。
【0025】
式(III)で表されるジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸および4,4’−ジカルボキシビフェニル等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸およびヘキサヒドロテレフタル酸等の脂肪族ジカルボン酸、およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0026】
式(IV)で表されるジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルエ−テル等の芳香族ジオール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0027】
さらに、本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーとしては、流動性および機械特性に優れる点で、式(I)〜(IV)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステルが好適に使用される。
【化5】
[式中、Ar
1およびAr
2はそれぞれ2価の芳香族基を表す。]
【0028】
流動性および機械特性に優れる点で、Ar
1およびAr
2はそれぞれ、互いに独立して、下記の式(1)〜(4)で表される芳香族基から選択される1種以上であることがより好ましい。
【化6】
さらに、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすい点から、Ar
1が式(4)で表される芳香族基であり、Ar
2が式(1)で表される芳香族基である、式(I)〜(IV)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル、または、Ar
1が式(1)で表される芳香族基であり、Ar
2が式(1)および/または式(3)で表される芳香族基である、式(I)〜(IV)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル、が好適に使用される。
【0029】
Ar
1が式(4)で表される、式(III)で表される繰返し単位を与える単量体としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸ならびに、そのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0030】
Ar
1が式(1)で表される、式(III)で表される繰返し単位を与える単量体としては、テレフタル酸ならびに、そのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0031】
Ar
2が式(1)で表される、式(IV)で表される繰返し単位を与える単量体としては、ハイドロキノンならびにそのアシル化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0032】
Ar
2が式(3)で表される、式(IV)で表される繰返し単位を与える単量体としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニルならびにそのアシル化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0033】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーの好ましい一つの態様として、下記の単量体組成比で構成される全芳香族液晶ポリエステルが挙げられる。
【化7】
[pおよびqは、各繰返し単位の液晶ポリマー樹脂中での組成比(モル%)であり、以下の式を満たす;
90≦p+q≦100
20≦p≦80
20≦q≦80]
【0034】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーの好ましい一つの態様として、下記の単量体組成比で構成される全芳香族液晶ポリエステルが挙げられる。
【化8】
[p、q、r、およびsは、各繰返し単位の液晶ポリマー樹脂中での組成比(モル%)であり、以下の式を満たす;
60≦p+q≦78
0.05≦q≦3
11≦r≦20
11≦s≦20]
【0035】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーの好ましい一つの態様として、下記の単量体組成比で構成される全芳香族液晶ポリエステルが挙げられる。
【化9】
[式中、p、q、r、tおよびuは、各繰返し単位の液晶ポリマー樹脂中での組成比(モル%)を示し、以下の条件を満たす:
25≦p≦45;
2≦q≦10;
10≦r≦20;
10≦t≦20;
20≦u≦40;
r>t;
p+q+r+t+u=100]
【0036】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーの結晶融解温度は、式(I)および(II)で表される繰返し単位を含むものであれば特に限定されないが、200〜360℃であるものが好ましい。
【0037】
本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーは、キャピラリーレオメーターで測定した溶融粘度が1〜1000Pa・sであるものが好ましく、5〜300Pa・sであるものがより好ましい。
【0038】
以下、本発明の液晶ポリマー組成物に使用される液晶ポリマーの製造方法について説明する。
【0039】
本発明に用いる液晶ポリマーの製造方法に特に限定はなく、前記の単量体成分によるエステル結合を形成させる公知のポリエステルの重縮合法、たとえば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などを用いることができる。
【0040】
溶融アシドリシス法とは、本発明に用いる液晶ポリマーを製造するのに適した方法であり、この方法は、最初に単量体を加熱して反応物質の溶融液を形成し、反応を継続することにより溶融ポリマーを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(たとえば酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
【0041】
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
【0042】
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法のいずれの場合においても、液晶ポリマーを製造する際に使用する重合性単量体成分は、常温において、ヒドロキシル基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。低級アシル基は炭素原子数2〜5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。特に好ましくは前記単量体成分のアセチル化物を反応に用いる方法が挙げられる。
【0043】
単量体の低級アシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、液晶ポリマーの製造時にモノマーに無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
【0044】
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれの場合においても反応時、必要に応じて触媒を用いてもよい。
【0045】
触媒の具体例としては、ジアルキルスズオキシド(たとえばジブチルスズオキシド)、ジアリールスズオキシドなどの有機スズ化合物;二酸化チタン、三酸化アンチモン、アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物;カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(たとえば酢酸カリウム);ルイス酸(たとえばBF
3)、ハロゲン化水素(たとえばHCl)などの気体状酸触媒などが挙げられる。
【0046】
触媒の使用割合は、通常モノマーに対し10〜1000ppm、好ましくは20〜200ppmである。
【0047】
このような重縮合反応によって得られた液晶ポリマーは、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工される。
【0048】
ペレット状、フレーク状、または粉末状の液晶ポリマーは、分子量を高め耐熱性を向上させる目的などで、減圧下、真空下、または窒素、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下において、実質的に固相状態で熱処理を行ってもよい。
【0049】
固相状態において行う熱処理の温度は、液晶ポリマーが溶融しない限り特に限定されないが、200〜350℃、好ましくは230〜320℃で行うのがよい。
【0050】
本発明の液晶ポリマー組成物における繊維状酸化チタンの含有量は、液晶ポリマー100重量部に対して1〜150重量部であり、2〜120重量部が好ましく、5〜110重量部がより好ましく、10〜80重量部が特に好ましい。含有量が1重量部未満であるとパーティクル発生の抑制効果が不十分であり、150重量部超であると流動性が不十分となるうえに、成形機のシリンダーや金型の磨耗が大きくなる。
【0051】
液晶ポリマーに繊維状酸化チタンを含有させると、液晶ポリマーと繊維状酸化チタンとの界面の濡れ性が良いことから、超音波洗浄によるパーティクル発生を抑制すると考えられる。パーティクルには、本発明の液晶ポリマー組成物から構成される成形品から剥落した樹脂や充填材などが含まれる。
【0052】
本発明における繊維状酸化チタンの数平均繊維長(L)については、1μm〜50μmであることが好ましく、2μm〜40μmであることがより好ましく、3μm〜30μmであることがさらに好ましい。繊維状酸化チタンの数平均繊維長(L)が1μm未満であると機械強度が維持できない傾向があり、50μm超であるとパーティクル発生の抑制効果が不十分となる傾向がある。
【0053】
繊維状酸化チタンの数平均繊維径(D)については、0.05μm〜2.0μmであることが好ましく、0.1μm〜1.5μmであることがより好ましく、0.1〜1.0μmであることがさらに好ましい。繊維状酸化チタンの数平均繊維径(D)が0.05μm未満であると機械強度が維持できない傾向があり、2.0μm超であるとパーティクル発生の抑制効果が不十分となる傾向がある。
【0054】
また、剛性とパーティクル発生抑制をバランスよく実現するためには、数平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)の比L/Dが、3〜50であることが好ましく、3.5〜40であることがより好ましく、4〜30であることがさらに好ましい。L/Dが3未満であると機械強度が維持できない傾向があり、50超であるとパーティクル発生の抑制効果が不十分となる傾向がある。
【0055】
なお、数平均繊維長(L)および数平均繊維径(D)の測定方法は、走査型電子顕微鏡(日立製作所製S2100A)を用いて、10000倍で写真撮影し、ランダムに500本サンプリングし、各繊維(粒子)の最長部の長さの数平均値を数平均繊維長、最短部の長さの数平均値を数平均繊維径とした。
【0056】
本発明に使用する繊維状酸化チタンとしては、針状酸化チタンおよび棒状酸化チタンが挙げられる。
本発明に使用する繊維状酸化チタンの結晶構造は、特に限定されないが、ルチル型、アナターゼ型およびブルサイト型からなる群から選択される一種以上のものを用いることができ、超音波洗浄した際のパーティクル発生低減効果に優れる点でルチル型が好ましい。また、樹脂への分散を良くするためにマグネシウム、カルシウムなど他の金属酸化物がドープされたものであってもよい。
【0057】
本発明に使用する繊維状酸化チタンは、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミ系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0058】
本発明の液晶ポリマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、以下に説明する無機または有機充填材、他の添加剤、および他の樹脂成分から選択される一種以上を配合してもよい。
【0059】
本発明の液晶ポリマー組成物に配合してもよい無機または有機充填材は、繊維状、板状または粒状のものであってよく、たとえばガラス繊維、ミルドガラス、粒状酸化チタン等の非繊維状酸化チタン、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウイスカ、ホウ酸アルミニウムウイスカ、ウォラストナイト、タルク、マイカ、グラファイト、炭酸カルシウム、ドロマイト、クレイ、ガラスフレーク、ガラスビーズおよび硫酸バリウムなどが挙げられる。これらの中では、ガラス繊維、ミルドガラスもしくは粒状酸化チタンが物性とコストのバランスが優れている点で好ましい。これらの充填材は、2種以上を併用してもよい。
【0060】
本発明の液晶ポリマー組成物が無機または有機充填材を含有する場合、本発明の液晶ポリマー組成物における無機または有機充填材の含有量は特に限定的ではないが、液晶ポリマー100重量部に対して、通常0.1〜100重量部であるのが好ましい。
【0061】
本発明において液晶ポリマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10〜25のものをいう)、ポリシロキサン、フッ素樹脂などの離型改良剤;染料、顔料、カーボンブラックなどの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などを配合してもよい。これらの中では、成型品について黒色が選好される点においてカーボンブラックが好ましい。これらの添加剤は1種のみを配合してもよく、または2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0062】
液晶ポリマー組成物における他の添加剤の含有量は、液晶ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜7重量部である。他の添加剤の含有量が液晶ポリマー100重量部に対して10重量部を超える場合には、液晶ポリマー組成物の成形加工性が低下する傾向や、熱安定性が悪くなる傾向がある。他の添加剤の合計量が0.1重量部を下回る場合、添加剤の機能を実現することができない。
【0063】
また、本発明の液晶ポリマー組成物を成形するに際し、上記他の添加剤のうち高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有する添加剤を、予め、液晶ポリマーおよび/または液晶ポリマー組成物のペレットの表面に付着せしめてもよい。
【0064】
本発明の液晶ポリマー組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明に係る液晶ポリマーと同様の温度域で成形加工可能である他の樹脂成分を添加してもよい。他の樹脂成分としては、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、およびその変性物、ならびにポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。他の樹脂成分は、単独で、または2種以上を組み合わせて含有することができる。液晶ポリマー組成物が他の樹脂成分を含む場合、他の樹脂成分の含有量は特に限定的ではないが、液晶ポリマー100重量部に対して通常0.1〜30重量部、特に0.5〜10重量部であるのがよい。
【0065】
上述した繊維状酸化チタンや他の充填材等は、液晶ポリマー中に添加され、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出機などを用いて、液晶ポリマーの結晶融解温度近傍ないし結晶融解温度+20℃までの温度で溶融混練して液晶ポリマー組成物とすることができる。
【0066】
このようにして得られた本発明の液晶ポリマー組成物は、射出成形機、押出機などを用いる公知の成形方法によって、射出成形品、フィルム、シート、および不織布などに加工される。
【0067】
本発明の液晶ポリマー組成物は、超音波洗浄した際のパーティクル発生を抑制することができるため、精密機器等の電子部品として好適に使用される。
【0068】
本発明の液晶ポリマー組成物が使用される電子部品としては、コネクタ、スイッチ、リレー、コンデンサ、コイル、トランス、カメラモジュール、アンテナおよびチップアンテナからなる群から選択されるものを構成する部品が挙げられる。
特に、超音波洗浄を必要とする電子部品、例えばカメラモジュール等を構成する光学電子部品や、他の部材との摺動を伴う摺動部材用電子部品、例えばコネクタ、スイッチ、リレー、カメラモジュールからなる群から選択されるものを構成する部品の製造に好適に使用される。
【0069】
これらの中でも、本発明の液晶ポリマーは、成形品表面のフィブリル化に起因する光学特性の低下を阻止することから、カメラモジュールを構成する光学電子部品の製造に特に好適に使用される。カメラモジュールを構成する光学電子部品としては、レンズバレル部(レンズが載る部分)、マウントホルダー部(バレルを装着し、基板に固定する部分)、CMOS(イメージセンサー)の枠、シャッター、シャッタープレート、シャッターボビン部、絞りのリング、ストッパー(レンズを押さえる部分)などが挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中の結晶融解温度、溶融粘度、荷重たわみ温度、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、Izod衝撃強度およびパーティクル発生数の測定、評価は以下に記載の方法で行った。
【0071】
〈結晶融解温度〉
示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ株式会社製Exstar6000を用いて、試料を室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)を測定した後、Tm1より50℃高い温度で10分間保持する。次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却し、さらに再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を結晶融解温度(Tm)とした。
【0072】
〈溶融粘度〉
溶融粘度測定装置(東洋精機(株)製キャピログラフ1D)により、1.0mmφ×10mmのキャピラリーを用いて、剪断速度1000sec
−1の条件下、試料の結晶融解温度(Tm)+20℃での溶融粘度をそれぞれ測定した。
【0073】
〈荷重たわみ温度〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて、短冊状試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を成形し、これを用いてASTM D648に準拠し、荷重1.82MPa、昇温速度2℃/分で所定たわみ量(0.254mm)になる温度を測定した。
【0074】
〈引張強度〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて結晶融解温度+20〜40℃のシリンダー温度、金型温度70℃で射出成形し、ASTM4号ダンベル試験片を作製した。INSTRON5567(インストロンジャパン カンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、ASTM D638に準拠して測定した。
【0075】
〈曲げ強度、曲げ弾性率〉
荷重たわみ温度の測定に用いた試験片と同じ試験片を用いてASTM D790に準拠して測定した。
【0076】
〈Izod衝撃強度〉
荷重たわみ温度測定に用いた試験片と同じ試験片を用いて、試験片の中央を長さ方向に垂直に切断し、ノッチを付けた。長さ63.5mm、幅12.7mm、厚さ3.2mmの短冊状試験片を得、ASTM D256に準拠して測定した。
【0077】
〈パーティクル発生数〉
樹脂組成物のペレットを型締め圧15tの射出成形機(住友重機械工業株式会社製 MINIMAT M26/15)を用いて、#8000相当の鏡面仕上げを施した金型により、結晶融解温度(Tm)よりも20℃高いシリンダー温度および金型温度70℃で、長さ64mm、幅12.7mm、厚み2mmの短冊状曲げ試験片を作製し、パーティクル数測定の試験片とした。
純水50mLを備えた外径50mm、内径45mm、高さ100mmの円筒ガラス容器に、
図1の通り各試験片1個をゲート部が水に浸からないように載置した後、円筒ガラス容器を、水1000mLを備えた縦140mm、横240mm、深さ100mmの超音波洗浄槽(株式会社エスエヌディ製US−102)に設置した。
38kHz、100Wの出力で10分間超音波洗浄を行った後、純水1mL中に含まれる粒子径が2μm以上である粒子(試験片から剥落した脱落物(パーティクル))の数を、パーティクルカウンター(スペクトリス社製LiQuilaz−05)を使用して3回測定し、平均値を測定結果とした。
【0078】
実施例および比較例において下記の略号は以下の化合物を表す。
POB:4−ヒドロキシ安息香酸
BON6:6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
BP:4,4’−ジヒドロキシビフェニル
HQ:ハイドロキノン
TPA:テレフタル酸
NDA:2,6−ナフタレンジカルボン酸
【0079】
[合成例1(LCP−1)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:641.9g(71.5モル%)、BON6:30.6g(2.5モル%)、HQ:93.0g(13モル%)およびNDA182.7g(13モル%)を仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0080】
窒素ガス雰囲気下に室温〜145℃まで1時間かけて昇温し、145℃で30分保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ345℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステル樹脂のペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は321℃であった。
【0081】
[合成例2(LCP−2)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:323.2g(36モル%)、BON6:48.9g(4モル%)、BP:169.4g(14モル%)、HQ:114.5g(16モル%)およびTPA:323.9g(30モル%)を仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0082】
窒素ガス雰囲気下に室温〜145℃まで1時間かけて昇温し、145℃で30分保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ350℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて5mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステル樹脂のペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は335℃であった。
【0083】
[合成例3(LCP−3)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:655.4g(73モル%)およびBON6:330.2g(27モル%)を仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.02倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0084】
窒素ガス雰囲気下に室温〜145℃まで1時間で昇温し、145℃にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去させつつ320℃まで 時間かけて昇温した後、80分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステル樹脂のペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットの結晶融解温度(Tm)は279℃であった。
【0085】
以下の実施例および比較例で使用した充填材を示す。
繊維状酸化チタン(A−1): 石原産業(株)社製、針状酸化チタン「FTL−400」(数平均繊維長(L)=10.2μm、数平均繊維径(D)=0.5μm、L/D=20)
繊維状酸化チタン(A−2): 石原産業(株)社製、棒状酸化チタン「PFR404」(数平均繊維長(L)=2.41μm、数平均繊維径(D)=0.54μm、L/D=4.5)
タルク: 富士タルク(株)社製、「DS−34」(数平均粒径23μm)
ガラス繊維: 日東紡績(株)製PF70E−001(数平均繊維長(L)=58μm、数平均繊維径(D)=10.4μm)
カーボンブラック: 三菱化学(株)製三菱カーボンブラック #950
オレフィン系共重合体: 住友化学(株)社製ボンドファーストBF−2C
【0086】
実施例1〜5及び比較例1〜7
熱風乾燥器中で130℃にて6時間乾燥したLCP−1と充填材を表1に記載の組成にて混合し、この混合物を、シリンダーの最高温度360℃に設定した2軸押出機((株)池貝社製PCM−30)を用い溶融混練して液晶ポリマー組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、前記の試験方法にて、各物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例6及び比較例8
熱風乾燥器中で130℃にて6時間乾燥したLCP−2と充填材を表2に記載の組成にて混合し、この混合物を、シリンダーの最高温度360℃に設定した2軸押出機((株)池貝社製PCM−30)を用い溶融混練して液晶ポリマー組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、前記の試験方法にて、各物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
実施例7
(参考例)及び比較例9
熱風乾燥器中で130℃にて6時間乾燥したLCP−3と充填材を表3に記載の組成にて混合し、この混合物を、シリンダーの最高温度300℃に設定した2軸押出機((株)池貝社製PCM−30)を用い溶融混練して液晶ポリマー組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、前記の試験方法にて、各物性の測定を行った。結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
表1〜3に示すように、繊維状酸化チタンを所定の量で含む本発明の液晶ポリマー組成物(実施例1〜7)は、タルクやガラス繊維などの繊維状酸化チタン以外の充填材を含む液晶ポリマー組成物(比較例4〜7)、充填材を全く含まない液晶ポリマー(比較例1、比較例8〜9)および繊維状酸化チタンを所定の量で含まない液晶ポリマー(比較例2、3)と比較して、超音波洗浄した際のパーティクル発生数が優位に抑制される。そのため、超音波洗浄を必要とする電子部品を構成する成形品等に好適に使用できる。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕液晶ポリマー100重量部に対して、繊維状酸化チタン1〜150重量部を含有する液晶ポリマー組成物であって、該液晶ポリマーが式(I)および(II)で表される繰返し単位を含む、液晶ポリマー組成物。
【化1】
〔2〕液晶ポリマーが、式(I)〜(IV)で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステルである、〔1〕に記載の液晶ポリマー組成物。
【化2】
[式中、Ar1およびAr2はそれぞれ2価の芳香族基を表す。]
〔3〕Ar1およびAr2がそれぞれ、互いに独立して、下記の式(1)〜(4)で表される芳香族基から選択される1種以上である、〔2〕に記載の液晶ポリマー組成物。
【化3】
〔4〕Ar1が、式(4)で表される芳香族基であり、Ar2が式(1)で表される芳香族基である、〔3〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔5〕Ar1が、式(1)で表される芳香族基であり、Ar2が式(1)および/または式(3)で表される芳香族基である、〔3〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔6〕繊維状酸化チタンが、数平均繊維長(L)1μm〜50μm、数平均繊維径(D)0.05μm〜2.0μmであり、かつL/Dが3〜50である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔7〕カーボンブラックを更に含む、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物から構成される成形品。
〔9〕成形品が電子部品である、〔8〕に記載の成形品。
〔10〕電子部品が、コネクタ、スイッチ、リレー、コンデンサ、コイル、トランス、カメラモジュール、アンテナおよびチップアンテナからなる群より選択されるものを構成する部品である、〔9〕に記載の電子部品。
〔11〕電子部品が超音波洗浄を必要とする電子部品である、〔9〕または〔10〕に記載の電子部品。
〔12〕電子部品が摺動部材用電子部品である、〔9〕〜〔11〕のいずれかに記載の電子部品。
〔13〕電子部品がカメラモジュールを構成する光学電子部品である、〔9〕〜〔12〕のいずれかに記載の電子部品。