(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電源に、電力無供給時に前記電動負荷部の駆動に対して制動力を作用させ、かつ電力供給時に前記制動力を解除する制動部を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の故障診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電源装置は、故障診断シーケンス中に両方のリレーを同時にオンさせる期間が存在することから、その間、モータに電力が供給されて、車両が不用意に走行し始めたり、暴走したりする虞がある。一方、かかる故障診断方法では、車両を走行駆動状態にしてリレーの故障診断を行うこととなり、製品の品質上、故障診断手法に改善の余地があると考えられる。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、電動負荷部に電力を供給することなく、スイッチの故障診断を可能にする非常停止用スイッチの故障診断を行う装置、方法、プログラム及び故障診断装置を搭載した電動移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る非常停止用スイッチの故障診断装置は、電源と前記電源から電力の供給を受けて駆動される電動負荷部との間に介設された、直列接続された負荷側の複数のスイッチの故障診断処理を行う非常停止用スイッチの故障診断装置において、前記負荷側の複数のスイッチの各出力端電圧をそれぞれ検出する電圧検出部と、予め設定された監視期間毎に前記電源側となる先頭のスイッチから最後尾のスイッチを除くスイッチまでに対して、1番目の監視期間では全てのスイッチをオフにする切換信号を、2番目以降の監視期間では順次選択的にオンさせる切換信号を出力し、各監視期間で各出力端電圧の検出を行う診断実行部と、前記各監視期間における各出力端電圧から、各スイッチの故障診断を行う診断結果処理部とを備えたものである。
【0007】
また、本発明に係る非常停止用スイッチの故障診断方法は、電源と前記電源から電力の供給を受けて駆動される電動負荷部との間に介設された、直列接続された負荷側の複数のスイッチの故障診断処理を行う非常停止用スイッチの故障診断方法において、前記負荷側の複数のスイッチの各出力端電圧をそれぞれ検出する電圧検出部を用いて、予め設定された監視期間毎に前記電源側となる先頭のスイッチから最後尾のスイッチを除くスイッチまでに対して、1番目の監視期間では全てのスイッチをオフにする切換信号を、2番目以降の監視期間では順次選択的にオンさせる切換信号を出力し、各監視期間で各出力端電圧の検出を行う診断実行ステップと、前記各監視期間における各出力端電圧から、各スイッチの故障診断を行う診断結果処理ステップとを備えたものである。
【0008】
また、本発明に係る故障診断プログラムは、電源と前記電源から電力の供給を受けて駆動される電動負荷部との間に介設された、直列接続された負荷側の複数のスイッチの故障診断処理を故障診断装置に行わせる故障診断プログラムにおいて、前記負荷側の複数のスイッチの各出力端電圧をそれぞれ検出する電圧検出部を用いて、予め設定された監視期間毎に前記電源側となる先頭のスイッチから最後尾のスイッチを除くスイッチまでに対して、1番目の監視期間では全てのスイッチをオフにする切換信号を、2番目以降の監視期間では順次選択的にオンさせる切換信号を出力し、各監視期間で各出力端電圧の検出を行う診断実行手段、前記各監視期間における各出力端電圧から、各スイッチの故障診断を行う診断結果処理手段、として前記故障診断装置を機能させるものである。
【0009】
かかる発明によれば、電源と電動負荷部との間に介設されたリレー等のスイッチの故障診断に際して、負荷電動部に電源からの電力が供給される手順を採用しないため、電動移動体が不用意に動いたり、暴走したりすることが抑制され、また故障診断処理の信頼性を高めることができる。
【0010】
また、前記負荷側の複数のスイッチは、第1、第2のスイッチであり、前記診断実行部は、2番目の監視期間で前記第1スイッチのみをオンさせる切換信号を出力するとともに、各出力端電圧の検出を行い、前記診断結果処理部は、前記1番目の監視期間で、各出力端電圧から前記第1、第2スイッチが常時導通状態の故障か否かを診断し、前記2番目の監視期間で、前記第1スイッチが常時遮断状態の故障か否かを診断するものである。この構成によれば、1番目と2番目の監視期間を利用して、第1、第2スイッチの故障診断が行われる。特に第1、第2スイッチの常時導通状態の故障か否かが診断し得るので、重度の故障診断が可能となる。
【0011】
また、前記診断実行部は、前記第2スイッチのみをオンさせる切換信号を出力する3番目の監視期間を設け、前記3番目の監視期間に各出力端電圧の検出を行い、前記診断結果処理部は、前記第1、第2スイッチへの切換信号の出力ライン上の異常の有無を診断する。この構成によれば、第1、第2スイッチ周りの信号ライン等に対する以上の有無の診断が可能となり、信頼性がより高まる。
【0012】
また、前記診断実行部は、前記2番目の監視期間の開始から出力端電圧の検出までの時間を前記3番目の監視期間の開始から出力端電圧の検出までの時間に比して短時間に設定したことを特徴とする。この構成によれば、2番目の監視期間の開始から出力端電圧の検出までの時間が短くすることで、第2スイッチが仮にショート(故障)していた場合でも、電動負荷部に流れ込む電流が抑制される(リスク低減が図れる)。
【0013】
また、本発明は、前記電源と前記第1スイッチとの間に介設され、前記診断結果処理部からの異常信号を受けて回路を遮断する保護回路を備え、前記診断結果処理部は、前記第1、第2スイッチが常時通電状態の故障と診断された場合に、前記異常信号を前記保護回路に出力する。この構成によれば、第1、第2スイッチがいずれも常時導通状態の故障である場合、電源と電動負荷部とが短絡状態になることから、保護回路によって短絡を遮断することが可能となり、これによって、信頼性がより高まる。
【0014】
また、本発明は、前記電源に、電力無供給時に前記電動負荷部の駆動に対して制動力を作用させ、かつ電力供給時に前記制動力を解除する制動部を備えたことを特徴とする。この構成によれば、制動部は電力無供給時に電動負荷部に制動力を作用させているので、電動負荷側の複数のスイッチに対する故障診断時に電動負荷部に誤って電流が流れても電動負荷部が暴走等の動作をすることはない。
【0015】
また、本発明は、前記制動部と前記電源との間に介設された、直列接続された制動側の複数のスイッチを備え、前記監視実行部及び診断結果処理部は、前記電動負荷側の複数のスイッチに対する故障診断を実行した後に、前記制動部側の複数のスイッチに対する故障診断を実行することを特徴とする。この構成によれば、電動負荷側の故障診断時に電動負荷部が誤って暴走等の動作をすることはない。
【0016】
また、電源と、前記電源から電力の供給を受けて駆動される電動負荷部と、非常停止用スイッチの故障診断装置とを備えた電動移動体を提供する。この構成によれば、信頼性の高い電動移動体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電動負荷部に電力を供給することなく、非常停止用スイッチの故障診断を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、電動移動体1は、車体10と、車体10の前後で左右両側の下部位置で支承された一対の車輪11とを有し、平地を走行可能なものである。電動移動体1は、種々の走行体に適用可能であり、例えばコンピュータで走行制御される自律型走行ロボットでもよい。また、電動移動体1は、設定電圧で電力供給を行う電源としてのバッテリー12、バッテリー12からの電力供給を受けて、車体10の前方側の車輪11を回転駆動させる電動負荷部としてのモータ17を備えている。また、必要に応じて(例えば後述する第3実施形態)、バッテリー12からの電力供給を受けて、モータ17の回転に制動力を作用させたり、解除させたりする電磁ブレーキ18(破線で示す)を備えている。
【0020】
また、電動移動体1は、制御系として、非常停止用電源リレー回路部13、非常停止用電源リレー回路部13の故障診断を行う診断制御部14、モータ17への回転信号を出力する走行制御部15、及び必要に応じて例えば走行シーケンス全般を統括的乃至は自律的に制御して走行制御部15に走行指示内容を出力する上位制御部16を備えている。
【0021】
以下、非常停止用スイッチの故障診断装置に係る第1〜第4実施形態の構成、動作を説明する。
【0022】
(第1実施形態)
第1実施形態を、
図2〜
図4を用いて説明する。第1実施形態では、バッテリー12〜モータ17の負荷ラインを備え、保護回路は設けられていない。また、各監視期間の開始から監視動作開始までの時間は通常時間、すなわちΔtに設定されている。
【0023】
図2において、非常停止用電源リレー回路部13は、並列接続されたバッテリー12からモータ17までの負荷ラインを備えている。なお、第1実施形態では、電磁ブレーキ18は備えていない。
【0024】
バッテリー12からモータ17までの負荷ライン上には、直列接続されたリレーLa、Lbが介設されている。リレーLa、Lbは、励磁コイル(図略)に診断制御部14からオンオフ信号(
図2中、破線で示す)が印加されることで、個々に導通(オン)と遮断(オフ)との切り替えを行う。なお、電磁式のリレーLa、Lbに代えて、機械的スイッチ、半導体スイッチ素子等のスイッチを適用してもよい。また、コンデンサC1は、モータ17の平滑用である。
【0025】
リレーLa、Lbの各出力端には、電圧検出回路141,142が接続されている。電圧検出回路141は、リレーLaの出力端の電圧V1を検出し、電圧検出回路142は、リレーLbの出力端の電圧V2を検出する。第1実施形態では、電圧検出回路141,142は、A−Dコンバータを内蔵し、検出電圧をデジタル値に変換して診断制御部14に導く。なお、電圧検出回路141,142は、アースとの間で出力端の電圧を検出しているが、対応する入力端との間で出力端の電圧を検出するものでもよい。
【0026】
図3は、診断制御部14のブロック図で、第1実施形態では、コンピュータを含み、診断処理の一部をソフトウエアで行っている。なお、診断制御部14の機能をシーケンス回路で実行する態様としてもよい。
【0027】
図3に示す診断制御部14は、例えばマイクロコンピュータで構成される処理部145を備えている。処理部145は、故障診断シーケンスプログラムを記憶した記憶部146、電圧検出回路141,142、及びリレーLa,Lbの励磁コイル(図略)と接続されている。
【0028】
処理部145は、故障診断シーケンスプログラムを実行することで、診断実行部1451、診断結果処理部1452、及びタイマ1453として機能する。
【0029】
診断実行部1451は、故障診断のシーケンスを実行するもので、例えば
図4に示すように、予め設定された例えば一定の通常期間としての監視期間To,Ta,Tbで負荷ラインのリレーLa、Lbをオフに、また一方ずつオンさせる切換え信号を出力し、その間に電圧V1,V2の計測を行わせる。なお、診断実行部1451は、
図4で説明するように、各監視期間が終了して起動が行われた後に一定の監視を行う。電圧V1,V2の計測は、監視期間の開始時点から一定時間Δt(監視開始時間)の経過時点で行われる。
【0030】
診断結果処理部1452は、監視期間To,Ta,Tbで計測した電圧V1,V2からリレーLa,Lbの故障診断を行う。タイマ1453は、電源オン後の監視期間等をそれぞれ計測(計時)する。
【0031】
次に、
図4のタイムチャートを用いて故障診断動作を説明する。なお、リレーの故障には、常時導通状態の故障と常時遮断状態の故障とがあり、以降の故障診断は、これらの一方に該当するか、あるいはいずれにも該当しない正常かを診断する。なお、故障のうち常時遮断状態の故障は電流を流さないため、モータ17を不用意に回転させることはなく、常時導通状態の重度の故障に比して軽度な故障といえる。
【0032】
電源オンを受けると、まず、監視期間Toが開始される。監視期間Toでは、リレーLa、Lbにオフ信号を出力する。このとき、リレーLaが常時導通状態の故障でなければ、電圧V1は共に0レベル(ローレベル)となる。さらに、リレーLa、Lbのいずれもが常時導通状態の故障でなければ、電圧V1,V2は共に0レベル(ローレベル)となる。
【0033】
一方、電圧V1のみがバッテリー12の電圧に相当する電圧レベル(ハイレベル)である場合(
図4の電圧V1の破線V1o’で示す)、リレーLaが常時導通状態の故障であることが分かる。この場合、リレーLaの故障を示す報知用の異常信号が出力され、以降の監視動作が停止される。
【0034】
さらに、電圧V1,V2が共にハイレベルの場合(
図4の電圧V1の破線V1o’、電圧V2の破線V2o’で示す)、リレーLa、Lbがいずれも常時導通状態の故障であることが分かる。この場合、バッテリー12から負荷ラインに電流が流入するため、異常信号が出力され、以降の監視動作が停止される。また、この場合にはバッテリー12からモータ17に一時的に電流が流れるが、自動あるいはマニュアルで電源をオフにすることで異常動作が停止可能となる。なお、各監視期間の開始からの監視開始時間(電圧検出時点)は、検出精度と早期の検出の点から、監視期間のほぼ中間位置(
図4のΔtを参照)に設定されている。また、診断結果として異常信号を出力する場合、報知部に出力するようにしてもよい。
【0035】
監視期間ToでリレーLaが常時導通状態の故障ではないと診断された場合、監視動作は、監視期間Taに進む。監視期間TaではリレーLaに対してオン信号が出力され、リレーLbに対してオフ信号が出力される。このとき、電圧V1がハイレベルであると(
図4の電圧V1のV1aで示す)、リレーLaは常時遮断状態の故障ではないと診断される。すなわち、リレーLaは正常と診断される。
【0036】
また、電圧V2もハイレベルの場合(
図4の電圧V1のV1a、電圧V2の破線V2a’で示す)、リレーLbは常時導通状態の故障であると診断され、異常信号が出力される。一方、電圧V1がローレベルの場合、リレーLaは常時遮断状態の故障と診断される。
【0037】
次いで、監視期間Taで、リレーLaが正常で、かつリレーLbが常時導通状態の故障でないと診断された場合、監視動作は、監視期間Tbに進む。監視期間TbではリレーLaに対してオフ信号が出力され、リレーLbに対してオン信号が出力される。このとき、電圧V1,V2がいずれもローレベルであれば、診断制御部14からリレーLa、Lbへのオンオフ信号が対応するリレーに正常に出力されたと診断される。一方、既に正常と判断されているリレーLaの電圧V1がハイレベルになったり、電圧V2がハイレベルになったりすることは(
図4の電圧V1の破線V1b’、電圧V2の破線V2b’で示す)、リレーLbの故障によるものではなく、電源ライン上の問題、例えば配線の誤接触の有無として診断される。このように、監視期間Tbは、リレーLa、Lbの故障診断では必ずしも必要ではない。
【0038】
監視期間Tbが終了し、起動タイミングに移行すると、リレーLa,Lbのいずれもオンに切換えられてモータ17が回転駆動される。この間、診断制御部14はリレーLa,Lbの状態、少なくともリレーLbの状態を監視し、リレーLa、Lbにオン信号が出力されている間に、電圧V2がローレベルになっていないか否かを検出する。電圧V2がローレベルになっていると、リレーLbが常時遮断状態の故障として報知が行われ、電動移動体1の動作が停止される。一方、電圧V2がハイレベルであれば、リレーLbは正常として、走行動作が継続される。
【0039】
(第2実施形態)
第2実施形態を、
図5、
図6及び
図4を用いて説明する。第2実施形態では、バッテリー12〜モータ17の負荷ラインを備え、さらに保護回路が設けられている。なお、各監視開始時間は通常時間、すなわちΔtに設定されている。なお、共通する部分の説明は省略する。
【0040】
図5は、
図2に対して、バッテリー12とリレーLaとの間に保護回路131が介設されている点で相違する。保護回路131は、本実施形態ではヒューズである。保護回路131の出力端側には、さらにリレーLxが接続されている。リレーLxは、診断制御部14からの異常信号を受けるとオンするもので、このオンによってバッテリー12との間を短絡させて、保護回路131にバッテリー12から大電流を流してヒューズを溶断する。ヒューズの溶断によって、バッテリー12が負荷ラインから遮断される。なお、ヒューズに代えて導電性ポリマー等から製造される、繰り返し使用可能なポリスイッチを採用し、トリップさせることで一時的な遮断機能を発揮させる態様としてもよい。また、電動移動体1の走行状態によってはモータ17での回生発電に起因する過電圧がリレーLa、Lbに印加して故障原因となることから、保護回路131を動作させるようにしてもよい。
【0041】
図6は、診断制御部14のブロック図で、本実施形態では、コンピュータを含み、診断処理の一部をソフトウエアで行っている。なお、診断制御部14の機能をシーケンス回路で実行する態様としてもよい。
【0042】
図6に示す診断制御部14は、例えばマイクロコンピュータで構成される処理部145を備え、処理部145は、故障診断シーケンスプログラムを記憶した記憶部146、電圧検出回路141,142、及びリレーLa,Lb,Lxの励磁コイル(図略)と接続されている。
【0043】
処理部145は、故障診断シーケンスプログラムを実行することで、診断実行部1451、診断結果処理部1452、タイマ1453及び保護処理部1454として機能する。
【0044】
診断実行部1451は、故障診断のシーケンスを実行するもので、例えば
図4と同様に、予め設定された例えば一定の通常期間としての監視期間To,Ta,Tbで負荷ライン側のリレーLa、Lbをオフに、また一方ずつオンさせる切換え信号を出力し、その間に電圧V1,V2の計測を行わせる。なお、診断実行部1451は、
図4と同様に、各監視期間が終了して起動が行われた後に一定の監視を行う。電圧V1,V2の計測は、監視期間の開始から一定時間Δt(監視開始時間)の経過時点で行われる。
【0045】
診断結果処理部1452は、監視期間To,Ta,Tbで計測した電圧V1,V2からリレーLa,Lbの故障診断を行う。保護処理部1454は、バッテリー12を負荷ラインから切り離すべく、リレーLxへ異常信号を出力させる。タイマ1453は、電源オン後の各監視期間等をそれぞれ計測する。
【0046】
第2実施形態における故障診断動作は、
図4のタイムチャートと同様であり、保護回路131に対する動作のみが相違する。
【0047】
監視期間Toにおいて、電圧V1,V2が共にハイレベルの場合(
図4の電圧V1の破線V1o’、電圧V2の破線V2o’で示す)、リレーLa、Lbがいずれも常時導通状態の故障であることが分かる。この場合、バッテリー12から負荷ラインに電流が流入するため、リレーLxへヒューズ溶断用の異常信号が出力される。また、この場合にはバッテリー12からモータ17に一時的に電流が流れるが、ヒューズが溶断されるため異常動作は停止される。なお、診断結果として報知用、又はヒューズ溶断用の異常信号を出力する場合、報知部に出力するようにしてもよい。
【0048】
監視期間ToでリレーLaが常時導通状態の故障ではないと診断された場合、監視動作は、監視期間Taに進む。監視期間TaではリレーLaに対してオン信号が出力され、リレーLbに対してオフ信号が出力される。このとき、電圧V1,V2がハイレベルの場合(
図4の電圧V1のV1a、電圧V2の破線V2a’で示す)、リレーLbは常時導通状態の故障であると診断され、リレーLxへヒューズ溶断用の異常信号が出力される。一方、電圧V1がローレベルの場合、リレーLaは常時遮断状態の故障と診断される。
【0049】
次いで、監視期間Taで、リレーLaが正常で、かつリレーLbが常時導通状態の故障でないと診断された場合、監視動作は、監視期間Tbに進む。監視期間Tbでは、電源ライン上の問題、例えば配線の誤接触の有無として診断される。このように、監視期間Tbは、リレーLa、Lbの故障診断では必ずしも必要ではない。また、起動タイミングの後は、リレーLbの診断が行われる。
【0050】
(第3実施形態)
第3施形態を、
図7〜
図9を用いて説明する。第3実施形態では、バッテリー12〜モータ17の負荷ライン及びバッテリー12〜電磁ブレーキ18の制動ラインを備え、保護回路は設けられていない。また、各監視開始時間は通常時間、すなわちΔtである。なお、共通する部分の説明は省略する。
【0051】
図7は、
図2に対して、制動ラインを備えている点で相違する。すなわち、非常停止用電源リレー回路部13は、並列接続された、バッテリー12とモータ17間の負荷ラインとバッテリー12と電磁ブレーキ18間の制動ラインとを備えている。なお、電磁ブレーキ18は、モータ17への制動力を機械的に作用させる構成であり、本実施形態では、電力供給がされていない間、制動力が作用し、電力供給を受けると、制動力が解除される無励磁ブレーキ制御型を採用している。また、負荷ラインと制動ラインとはバッテリー12に対して並列に接続されていてもよいが、バッテリーを個別に設けて別の回路としてもよい。
【0052】
バッテリー12と電磁ブレーキ18との制動ライン上には、直列接続されたリレーLc、Ldが介設されている。リレーLc、Ldは、励磁コイル(図略)に診断制御部14からオンオフ信号(
図7中、破線で示す)が印加されることで、個々に導通(オン)と遮断(オフ)との切り替えを行う。なお、電磁式のリレーLc、Ldに代えて、機械的スイッチ、半導体スイッチ素子等のスイッチを適用してもよい。
【0053】
リレーLc、Ldの各出力端には、電圧検出回路143,144が接続されている。電圧検出回路143は、リレーLcの出力端の電圧V3を検出し、電圧検出回路144は、リレーLdの出力端の電圧V4を検出する。本実施形態では、電圧検出回路143,144は、A−Dコンバータを内蔵し、検出電圧をデジタル値に変換して診断制御部14に導く。なお、電圧検出回路143,144は、アースとの間で出力端の電圧を検出しているが、対応する入力端との間で出力端の電圧を検出するものでもよい。
【0054】
図8は、診断制御部14のブロック図で、本実施形態では、コンピュータを含み、診断処理の一部をソフトウエアで行っている。なお、診断制御部14の機能をシーケンス回路で実行する態様としてもよい。
【0055】
図8に示す診断制御部14は、例えばマイクロコンピュータで構成される処理部145を備えている。処理部145は、故障診断シーケンスプログラムを記憶した記憶部146、電圧検出回路141〜144、及びリレーLa〜Ldの励磁コイル(図略)と接続されている。
【0056】
処理部145は、故障診断シーケンスプログラムを実行することで、診断実行部1451、診断結果処理部1452、及びタイマ1453として機能する。
【0057】
診断実行部1451は、故障診断のシーケンスを実行するもので、例えば
図9に示すように、予め設定された例えば一定の通常期間としての監視期間To,Ta,Tbで負荷ライン側のリレーLa、Lbをオフに、また一方ずつオンさせる切換え信号を出力し、その間に電圧V1,V2の計測を行わせる。また、リレーLa、Lbと同期して、同様にリレーLc,Ldをオフに、また一方ずつオンさせる故障診断のシーケンスを実行させる。なお、診断実行部1451は、
図9で説明するように、各監視期間が終了して起動が行われた後に一定の監視を行う。
【0058】
診断結果処理部1452は、監視期間To,Ta,Tbで計測した電圧V1,V2からリレーLa,Lbの故障診断を行う。同様に、リレーLc,Ldの故障診断を行う。タイマ1453は、電源オン後の各監視期間等をそれぞれ計測する。
【0059】
次に、
図9のタイムチャートを用いて故障診断動作を説明する。なお、
図9に示すリレーLa、Lbの故障診断動作は、
図4と同一であるので説明は省略し、リレーLc,Ldの故障診断に関する部分について説明する。
【0060】
まず、監視期間Toで、診断制御部14は、リレーLc,Ldにオフ信号を出力すると共に、リレーLa、Lbにオフ信号を出力する。
【0061】
このとき、電圧V1,V2が共にハイレベルの場合(
図9の電圧V1の破線V1o’、電圧V2の破線V2o’で示す)、リレーLa、Lbがいずれも常時導通状態の故障であることが分かる。この場合、バッテリー12からモータ17に一時的に電流が流れるが、リレーLc,Ldが共に常時導通状態の故障でない限り、電磁ブレーキ18による制動力が作用している状態にあるため、モータ17が回転、すなわち電動移動体1が不用意に走行することは規制される。なお、診断結果として報知用の異常信号を出力する場合、報知部に出力するようにすればよい。
【0062】
監視期間ToでリレーLaが常時導通状態の故障ではないと診断された場合、監視動作は、監視期間Taに進む。監視期間TaではリレーLaに対してオン信号が出力され、リレーLbに対してオフ信号が出力される。このとき、電圧V1,電圧V2がハイレベルの場合(
図9の電圧V1のV1a、電圧V2の破線V2a’で示す)、リレーLdにオフ信号が出力されているので、電磁ブレーキ18による制動力が作用し、モータ17は回転が規制される。
【0063】
次いで、監視動作は、監視期間Tbに進み、さらに起動後に移行する。なお、
図9に示すように、リレーLc,Ldに対する故障監視動作も、診断実行部1451及び診断結果処理部1452によって、リレーLa、Lbに対する監視動作と同期して行われる。
【0064】
なお、リレーLa、Lbに対する監視動作が終了した後に、リレーLc,Ldに対する故障監視動作を実行するようにしてもよい。これによれば、リレーLa、Lbの故障診断時に、リレーLc,Ldがオフ状態にあるので、モータ17が誤って暴走等の動作をすることを防止できる。
【0065】
(第4実施形態)
第4実施形態を、
図10、
図11を用いて説明する。第4実施形態では、バッテリー12〜モータ17の負荷ラインを備え、保護回路は設けられていない。第4実施形態では、監視期間Taの開始からの監視開始時間Δtsが、監視期間Tbの通常時間Δtに比して短く設定されている。なお、バッテリー12とモータ17間の負荷ラインは、
図4と同一なので説明は省略する。
【0066】
図10は、診断制御部14のブロック図で、本実施形態では、コンピュータを含み、診断処理の一部をソフトウエアで行っている。なお、診断制御部14の機能をシーケンス回路で実行する態様としてもよい。
【0067】
図10に示す診断制御部14は、例えばマイクロコンピュータで構成される処理部145を備えている。処理部145は、故障診断シーケンスプログラムを記憶した記憶部146、電圧検出回路141,142、及びリレーLa,Lbの励磁コイル(図略)と接続されている。
【0068】
処理部145は、故障診断シーケンスプログラムを実行することで、診断実行部1451、診断結果処理部1452及びタイマ1453として機能する。
【0069】
診断実行部1451は、故障診断のシーケンスを実行するもので、例えば
図11に示すように、監視期間To,Ta,Tbで負荷ラインのリレーLa、Lbをオフに、また一方ずつオンさせる切換え信号を出力し、その間に電圧V1,V2の計測を行わせる。診断実行部1451は、監視期間To,Tbでは開始時点からの監視開始時間をΔtに設定する一方、監視期間Taでは、Δts(<Δt)に設定している。各時間はタイマ1453によってそれぞれ計時される。
【0070】
診断結果処理部1452は、監視期間To,Ta,Tbで計測した電圧V1,V2からリレーLa,Lbの故障診断を行う。
【0071】
次に、
図11は第4実施形態の故障診断動作を示すタイムチャートである。
図11に示すリレーLa、Lbの故障診断動作は、監視期間Taの開始から監視開始までの時間Δtsが相違する点を除いて、
図4と同一であるので、主に監視期間Taでの動作について説明する。
【0072】
監視期間ToでリレーLaが常時導通状態の故障ではないと診断された場合、監視動作は、監視期間Taに進む。監視期間Taでは、開始から監視開始までの時間Δts、すなわち電圧が立ち上がりきる前の時点で測定するのが好ましい。このようにすれば、リレーLbが故障していて、電流がショートした場合でも、モータ17に流れ込む電流を極力少なくすることが可能となる。一方、監視期間Tbでは、既に監視期間Taで、リレーLaのオフに問題がないことがわかっているため、モータ17に大電流が流れ込む心配がないことから、通常の測定時間Δt(電圧が立ち上がった後)で監視を行うことができ、検出精度が維持される。
【0073】
なお、第1実施形態では、直列接続されるリレーの個数を2個としたが、3個又はそれ以上の個数を直列接続したものでもよい。
【0074】
また、前記実施形態では、リレーLa、LbとリレーLc,Ldとを同期させて故障診断処理を実行させたが、リレーLa、Lbに対する故障診断処理が終了した後に、同様な手順でリレーLc,Ldの故障診断処理を行わせる態様としてもよい。これによれば、電磁ブレーキ18は電源オフ時にモータ17に制動力を作用させているので、負荷ラインの故障診断時にモータ17に電流が流れても電動移動体1が暴走することはない。
【0075】
なお、前記実施形態では、電動移動体1として、車輪11による走行体としたが、これに限定されず、車輪以外の要素で走行したり、あるいは水上、空中を移動したりする移動体に適用可能である。また、電動負荷部としてのモータに代えて他電動駆動源を採用することができる。
【0076】
また、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。