特許第6885700号(P6885700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6885700シール用接着剤組成物、及びプレススルーパック包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885700
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】シール用接着剤組成物、及びプレススルーパック包装体
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20210603BHJP
   B65D 75/34 20060101ALI20210603BHJP
   B65D 83/04 20060101ALI20210603BHJP
   C09J 127/06 20060101ALI20210603BHJP
   C09J 131/04 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C09J133/04
   B65D75/34
   B65D83/04 D
   C09J127/06
   C09J131/04
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-196422(P2016-196422)
(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公開番号】特開2018-58968(P2018-58968A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】竹下 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】立花 真理
(72)【発明者】
【氏名】高木 武
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−051314(JP,A)
【文献】 特開2007−246092(JP,A)
【文献】 特開2002−080058(JP,A)
【文献】 特開2005−335818(JP,A)
【文献】 特開2009−262935(JP,A)
【文献】 特開2006−199720(JP,A)
【文献】 実開昭59−176526(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 − 201/10
B65D 75/34
B65D 83/04
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル共重合体(A)、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)、及び酢酸ビニル共重合体(C)を含有するシール用接着剤組成物であって、
シール用接着剤組成物中の固形分100質量%、(メタ)アクリル共重合体(A)を35〜90質量%、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)を5〜25質量%、酢酸ビニル共重合体(C)を5〜40質量%含有する事を特徴とするシール用接着剤組成物。
但し、前記酢酸ビニル共重合体(C)は、酢酸ビニル/エチレン共重合体であり、共重合成分である酢酸ビニル量の含有量が、酢酸ビニル共重合体(C)中、5〜50質量%である。
【請求項2】
前記酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)の共重合成分が、マレイン酸もしくはフマル酸の酸成分を含むことを特徴とする請求項1に記載されたシール用接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシール用接着剤組成物を、アルミ箔の少なくとも片面に塗布し、フィルムと貼りあわせたプレススルーパック包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品等の包装形態であるアルミニウム箔を使用したプレススルーパック包装体(以下PTPという)において、蓋材であるアルミニウム箔と底材フィルムを接着させるヒートシールコート(熱接着剤層)向けシール用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の包装形態の一つとして、底材と蓋材とを備えるPTP包装体が知られている。PTP包装体は、収納された内容物に対して底材の外側から蓋材の方向に力を加えて蓋材を破ることによって内容物を取り出すように構成されたものである。PTP包装体の蓋材は、蓋材フィルムとヒートシール層で構成される。蓋材フィルムは、現在、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)に優れた、アルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂の延伸フィルム等が用いられている(例えば、特許文献1)。
蓋材フィルムがアルミ箔の場合、アルミニウム箔の破片が生じることがあり、誤って薬剤と共に該アルミニウム箔破片を飲み込んでしまうという事故が報告されている。また、老人や幼児などの弱者にとっては薬剤を押し出す筋力が不足し、PTPから薬剤を取り出し難いという苦情もある。さらに病院などでは、1日に数十〜数百種類の薬剤を扱う関係上、一度に多量の薬剤を容易に取り出したいという要望がある。
上記の問題を解決することを目的に、アルミ箔の片面に樹脂フィルムを貼り付け、他面にイージーピール性熱接着剤層を有する蓋材と多数のポケット部を形成した容器により、プレススルー機能とイージーピール機能を併せ持つプレススルーパック包装体に関する発明が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0003】
しかしながら、採用されている熱接着層の樹脂組成物では、蓋材のアルミ箔と底材フィルム間の界面剥離が不均一である為に、蓋材を剥がした際に、開封前にきちんと接着していたことの証明(evidence)が得られない事、生産ラインの高速化により接着温度条件が振れることで接着力が不安定化したり、付与熱量が減少すると接着力が低下するという問題が依然、克服できていない。
【0004】
アルミ蓋材には樹脂フィルムを貼り付けている事例も多く、ヒートシール剤層への熱伝導性が悪い条件下でも、より低い温度域での低温ヒートシール性能が保て、また接着温度条件が振れても一定で安定した接着力、蓋材を剥がした際に前記(evidence)に答える均一な凝集剥離状態、保管環境の悪化と経時変化を再現した耐湿熱条件下での安定した経時接着性の保持が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−093727号公報
【特許文献2】特開2010−254315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、接着温度依存性がより少なく、開封剥離時に均一な凝集剥離の接着痕を残す事ができ、耐湿熱条件下でも水分による加水分解等で接着力が低下する事のない経時保存性に優れるシール用接着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは鋭意研究を重ねた結果、3種の共重合体を含有することで前記課題を解決するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、(メタ)アクリル共重合体(A)、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)、及び酢酸ビニル共重合体(C)を含有するシール用接着剤組成物に関する。
【0009】
また、本発明のシール用接着剤組成物中の固形分100質量%に対し、(メタ)アクリル共重合体(A)が35〜90質量%、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)が5〜25質量%、酢酸ビニル共重合体(C)が5〜40質量%であるシール用接着剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記酢酸ビニル共重合体(C)が酢酸ビニル/エチレン共重合体であり、共重合成分である酢酸ビニル量の含有量が、5〜50質量%であるシール用接着剤組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、前記酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)の共重合成分が、マレイン酸もしくはフマル酸の酸成分を含むシール用接着剤組成物に関する。
【0012】
更に、本発明はシール用接着剤組成物を、アルミ箔の少なくとも片面に塗布し、フィルムと貼りあわせたブリスターパック包装体に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、接着温度依存性がより少なく、開封剥離時に均一な凝集剥離の接着痕を残す事ができ、耐湿熱条件下でも水分による加水分解等で接着力が低下する事のない経時保存性に優れるシール用接着剤組成物を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ブリスターパック包装体の断面図を示すイラスト図である(破線楕円は錠剤を示す)。
図2】本発明のシール用接着剤組成物を用いたブリスターパック包装体を開封した際のイラスト図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のシール用接着剤組成物は、(メタ)アクリル共重合体(A)、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)、及び酢酸ビニル共重合体(C)の3成分を含有することを特徴とするものである。
【0016】
ここで、(メタ)アクリル共重合体(A)と酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)は互いに相溶するが、酢酸ビニル共重合体(C)は、(メタ)アクリル共重合体(A)とも酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)とも相溶しない事が好ましい。
また、低温ヒートシール条件下では、(メタ)アクリル共重合体(A)はPTP底材のポリ塩化ビニル(PVC)基材とよく接着し、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)は、アルミ製蓋材と良く接着する。そして(B)については酸基含有とする事でアルミ製蓋材への接着がより向上する。
一方で、高温ヒートシール条件下では(メタ)アクリル共重合体(A)、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)共に底材のポリ塩化ビニル(PVC)基材と良く接着し、また酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)はアルミ製蓋材と良く接着する。
以上より、(A)、(B)及び(C)の3成分の相互特性をバランスよく保持する事が重要であり、例えば互いに相溶性のよい(メタ)アクリル共重合体(A)と酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)の2種類のみ混合物からなる接着剤の場合、開封時の「底材とヒートシール層間」や「アルミ蓋材とヒートシール層間」の層間剥離や、ヒートシール層内での不均一な凝集剥離を起こし易い。
【0017】
本発明のシール用接着剤組成物は、(メタ)アクリル共重合体(A)、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)、及び酢酸ビニル共重合体(C)の3成分を混合する事で、(メタ)アクリル共重合体(A)とも酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)とも相溶しない酢酸ビニル共重合体(C)が、形成膜中にマトリックスを形成し微分散している為、マクロ的に均一な凝集破壊を起こすことで、接着温度条件に影響を受けにくい安定した接着力が得ることが出来る。
【0018】
本発明のシール用接着剤組成物に使用する(メタ)アクリル共重合体(A)としては、
アセトアセチル(acetoacetyl)基を含む(メタ)アクリル共重合体も使用できる。前記メタクリル共重合体を合成するために使用可能なメタクリルモノマー(methacrylic monomer)としては、メチルメタクリレート(methylmethacrylate)、エチルメタクリレート(ethylmethacrylate)、プロピルメタクリレート(propyl methacrylate)、ブチルメタクリレート(butyl methacrylate)、ヘキシルメタクリレート(hexyl methacrylate)、2−エチルヘキシルメタクリレート(2−ethylhexyl methacrylate)、シクロヘキシルメタクリレート(cyclohexyl methacrylate)、ベンジルメタクリレート(benzyl methacrylate)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(dimethylaminoethyl methacrylate)、ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(hydroxypropyl methacrylate)、グリシジルメタクリレート(glycidyl methacrylate)などを挙げることができる。
【0019】
中でも、メタクリルモノマーとしてブチルメタクリレート(butyl methacrylate)を使用したメタクリル酸メチルとのコーポリマーがより好ましく、例えば
市販品としてはEVONIK Industries社のDEGALAN P24等を挙げる事ができる。
【0020】
本発明のシール用接着剤組成物で使用する酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)としては、重量平均分子量が5,000〜50,000のものを使用することが好ましい。前記酸基含有とする事でアルミ製蓋材への接着がより向上する。前記酸基としてはマレイン酸、もしくはフマル酸が好ましい。
また、このような酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(B)を得るに際しては、酢酸ビニルモノマーを5〜40質量%配合することが好ましく、10〜20質量%であればより好ましい。
酢酸ビニルの配合量が多すぎるとブロッキング現象が生じやすく、反対に酢酸ビニルの配合量が少なすぎると、併用する(メタ)アクリル共重合体(A)、酢酸ビニル共重合体(C)との相溶性が低下したり、基材上にコーティングするときに使用する溶媒に対する溶解性が低くなりコーティングできなくなる。
【0021】
本発明のシール用接着剤組成物に使用する酢酸ビニル共重合体(C)としては、酢酸ビニル/エチレン共重合体が挙げられ、共重合成分である酢酸ビニル量の含有量が、10〜50質量%である事が好ましく、15〜50質量%であればより好ましく、40〜50質量%であれば更に好ましい。
【0022】
本発明のシール用接着剤組成物で使用する(メタ)アクリル共重合体(A)、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)、及び酢酸ビニル共重合体(C)の3成分の含有比率は、前記段落〔0017〕、〔0018〕を背景にシール用接着剤組成物中の固形分100質量%に対し、(メタ)アクリル共重合体(A)が35〜90質量%、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)が5〜25質量%、酢酸ビニル共重合体(C)が5〜40質量%の範囲であることが好ましい。
そして、(メタ)アクリル共重合体(A)については、低温ヒートシール条件140℃下での接着性に優れる点で、本接着剤組成物固形分全量の55〜80質量%であることがより好ましい。酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)についても、低温ヒートシール条件140℃下での接着性に優れる点で、本接着剤組成物固形分全量の10〜20質量%であることがより好ましい。更に酢酸ビニル共重合体(C)については、高温ヒートシール条件180℃下での接着性に優れる点で、本接着剤組成物固形分全量の10〜35質量%であることがより好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル共重合体(A)が90質量%を超えると、アルミ蓋材とヒートシール層間の接着性が低下しこの間で層間剥離が生じ易い。
(メタ)アクリル共重合体(A)が35質量%を下回ると、底材のポリ塩化ビニル(PVC)基材への接着性が低下し、不均一な凝集剥離が生じ易い。
酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)が25質量%を超えると、低温ヒートシール条件下の場合に接着性が低下し、逆に高温ヒートシール条件下で接着性が高くなりすぎる傾向にあり、接着力が強すぎるが為に開封時にヒートシール層内で不均一に凝集剥離してしまう場合がある。
酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)が5質量%を下回ると、アルミ製蓋材との接着性が低下し、アルミ製蓋材とヒートシール層間の層間剥離が生じ易い。
酢酸ビニル共重合体(C)が40質量%を超えると、接着剤組成物として相溶性が極端に悪化し、すぐに相分離してしまい塗工が困難になる。また、高温ヒートシール条件下で特にアルミ蓋材とヒートシール層間の密着性が阻害され、この間で層間剥離が生じ易い。
酢酸ビニル共重合体(C)が5質量%を下回ると、「底材とヒートシール層間」や「アルミ蓋材とヒートシール層間」の層間剥離や、ヒートシール層内での不均一な凝集剥離を起こし易い。
【0024】
実際に本発明のシール用接着剤組成物を蓋材に塗布するに当っては、その塗布性能を上げるべく(メタ)アクリル共重合体(A)、酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)、及び酢酸ビニル共重合体(C)の混合物をトルエン、メチルエチルケトン等から選ばれる任意の溶剤で固形分20%質量となる様に溶解して使用する。
必要に応じてブロッキング防止剤を使用することもできる。ブロッキング防止剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、タルク、ウレタンビーズ、アクリルビーズ、メラミンビーズ、シリコーンビーズ等の粒子系ブロッキング防止剤や、ポリエチレンワックス(PEワックス)、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級脂肪酸等の有機化合物系ブロッキング防止剤を使用することが好ましい。粒子系ブロッキング防止剤はヒートシール層表面に凹凸を形成しヒートシール層面と背面の接触面積を減らすことでブロッキングを防止する。一方、有機化合物系ブロッキング防止剤はヒートシール層表面にブリードアウトすることでブロッキングを防止する。そのため、粒子系ブロッキング防止剤と有機化合物系ブロッキング防止剤を併用することが好ましい。有機化合物系ブロッキング防止剤は多量に配合すると接着性を阻害し、接着不良を起こし易いので、少量添加に留めることが好ましい。
【0025】
蓋材への塗工法としては、例えば、バーコーター、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法で塗工することができる。硬質アルミ箔への塗膜量としては1〜5g/mが好ましく、乾燥条件は120〜200℃で5〜100秒の範囲が好ましい。次に乾燥した蓋材を硬質塩ビのPVCシートに120〜200℃、
0.3MPaの圧力で1秒間接着させる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明する。例中「部」及び「%」は、「質量部」、
「質量%」を各々表わす。
尚、本発明におけるGPCによる数平均分子量、及び重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−80〜450℃、昇温温度10℃/分の条件下、DMA法で実施した。
【0027】
〔シール用接着剤の作製〕
実施例1として、ブチルメタクリレート/メタクリル酸メチル共重合体(80/20wt%)を90部、マレイン酸含有塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(マレイン酸1/塩化ビニル84/酢酸ビニル15wt%)を5部、酢酸ビニル/エチレン共重合体(酢酸ビニル量が41質量%)を5部使用し、固形分総計20部に対し溶剤分が100部となる様トルエンを200部、メチルエチルケトンを200部の混合比率にて、分散攪拌機を用いて25℃の温度下、3000rmpの回転数で撹拌しながら溶剤中に固形分を少しずつ投入し、10分間撹拌してシール用接着剤を作製した。
【0028】
表1、2の実施例2〜8、表3の比較例1〜7についても同様にシール用接着剤を作製した。尚、比較例6については、本発明で使用する3種の共重合体の代わりに、東洋紡(株)社製非晶性ポリエステル樹脂バイロン220と、同ポリエステル樹脂GK810の混合物(50/50wt%)を、比較例7については三井・デュポンポリケミカル(株)社製エチレン系ポリマーCMPS VN503を前記の溶剤希釈にて同様に混合しシール用接着剤を作製した。表1、表2中の数字は固形分重量比率を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
・ブチルメタクリレート/メタクリル酸メチル共重合体(80/20wt%)、重量平均分子量180,000、ガラス転移点(Tg)=43℃
・マレイン酸含有塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(マレイン酸1/塩化ビニル84/酢酸ビニル15wt%)、重量平均分子量19,600、ガラス転移点(Tg)=79℃
・酢酸ビニル/エチレン共重合体(酢酸ビニル量が41質量%)、融点=40℃(DSC)
・バイロン220/GK810:東洋紡(株)社製非晶性ポリエステル樹脂、バイロン220(数平均分子量3,000、Tg=53℃)とバイロンGX810(数平均分子量6,000、Tg=46℃)の50/50wt%の混合物
・CMPS VN503:三井・デュポンポリケミカル(株)社製エチレン系ポリマー
ビカット軟化温度=53℃
【0032】
〔蓋材への塗装〕
汎用の硬質アルミ箔(製品名、膜厚25μ)へバーコーターを使用し、各々のシール用接着剤を塗工量3g/mで塗工し、乾燥条件は180℃、10秒とした。
【0033】
〔ヒートシール加工〕
上記で塗装、乾燥した蓋材を住友ベークライト株式会社製硬質塩ビのPVCシート(製品名VSS−1202、膜厚250μ)に、テスター産業社製ヒートシールテスターを用い、各々140℃と180℃(何れも0.3MPa1秒)でヒートシールし、テストピースを作製した。
【0034】
〔評価基準1:剥離試験による接着性〕
作製したテストピースを(株)島津製作所製小型卓上試験機EZ testを用い、剥離速度100mm/分、剥離方向180度剥離、剥離幅15mmにおける接着力の測定を行った。
また、作製したテストピースを水40℃に6ヶ月間浸漬したものについても、同様の条件で接着力を測定し、耐湿熱条件下での経時変化を比較した。
5〜15N/1.5cmが好ましく、5〜12N/1.5cmが理想的である。5N/1.5cm以下であると保管中に剥離し、気密性が保てなく恐れがある。15N以上であると子供や老人等が手で剥離することが困難となり、病院などで1日に大量に薬剤を開封する薬剤師等の作業では負担が大となる。
【0035】
〔評価基準2:剥離界面の状態〕
評価基準1の測定と合わせて、剥離界面の状態を目視にて下記基準にて3段階で評価した。
「底材とヒートシール層間」や「アルミ蓋材とヒートシール間」の層間剥離や、「ヒートシール層内での不均一な凝集剥離」を起こす事なく、「ヒートシール層内で均一に凝集剥離する」ものを合格品とした。「均一に凝集剥離するもの」は白色の均一な界面表面が目視で確認できる。
評価は、水40℃に6ヶ月間浸漬したものについても、同様の基準で目視評価した。

○:界面表面が均一に白く、ヒートシール層内での均一な凝集剥離が確認できる。
△:界面表面の一部分に「底材とヒートシール層間」や「アルミ蓋材とヒートシール
間」の層間剥離や、「ヒートシール層内での不均一な凝集剥離」が確認できる。
×:「底材とヒートシール層間」や「アルミ蓋材とヒートシール間」の層間剥離、
「ヒートシール層内での不均一な凝集剥離」が確認できる。
【0036】
表4は、表1、2の実施例に対する接着力測定値、及び剥離状態の目視評価結果である。
【0037】
【表4】
【0038】
表5は、表3の比較例に対する接着力測定値、及び剥離状態の目視評価結果である。
表中の(−)の部分は接着せず測定不能を示す。
【0039】
【表5】
【0040】
実施例が示す本発明のシール用接着剤組成物では、5〜12N/1.5cmの理想的な接着性を保持でき、耐湿熱条件下でも水分による加水分解等で接着力が低下する事がなく経時保存性に優れる。また、界面表面が均一に白く、ヒートシール層内でのほぼ均一な凝集剥離が再現できる。比較例が示すシール用接着剤組成物の大半が層間剥離してしまい、蓋材を剥がした際に開封前にきちんと接着していたことの証明(evidence)が得られない。また、接着性が不十分で保管中に気密が保てないもの、耐湿熱条件下で水分による加水分解等で接着力が低下するものが確認できた。
その詳細を記せば、(メタ)アクリル共重合体(A)のみを含む比較例1ではアルミ蓋材とヒートシール層間の接着性が低下しこの間で層間剥離が確認できた。
酢酸ビニル共重合体(C)を含まない比較例2,3は「底材とヒートシール層間」や「アルミ蓋材とヒートシール層間」の層間剥離や、ヒートシール層内での不均一な凝集剥離を起こし、耐湿熱下ではその程度はより顕著となった。
酸基含有塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体(B)のみを含有する比較例4では、接着温度140℃では「底材とヒートシール層間」の層間剥離が、接着温度180℃ではヒートシール層内での不均一な凝集剥離が確認でき、(メタ)アクリル共重合体(A)を未使用の比較例5についても比較例4と類似した傾向が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のシール用接着剤組成物では、PTP包材向け接着剤に限定される事なく、イージーピール対応の食品包装・サニタリー・コスメ・各種電子部品等工業製品向け用途に幅広く展開され得る。
【符号の説明】
【0042】
1 アルミ箔製蓋材
2 ヒートシールコート層
3 ポリ塩化ビニル(PVC)製底材
4 ヒートシール層内での均一な凝集剥離を再現する本発明のシール用接着剤
図1
図2