(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
最初に、
図7を用いて、実施形態のリクライニング装置が設けられたシートの説明を行う。
図7は実施形態のリクライニング装置が組み付けられたシートの要部側面図である。
図に示すように、リクライニング装置51は、シートクッション53と、シートバック55との間に設けられる。
【0015】
次に、
図1−
図4を用いてリクライニング装置51の説明を行う。
図1は第1実施形態のリクライニング装置の分解斜視図、
図2は組み立てられた
図1のリクライニング装置を矢印II方向からみた正面図、
図3は
図2の切断線III-IIIでの端面図、
図4は
図2の切断線IV-IVでの端面図である。
【0016】
図1において、シートクッション55側に設けられる内歯歯車61は、円形の底部61aと底部61aの周部に沿って形成された円筒状の立壁部61bとからなり、一方の面が開放面となった略有底円筒状となっている。立壁部61bの内周面には、周方向全域にわたって内歯61cが形成されている。また、内歯歯車61の底部61aの中央には、貫通した穴61dが形成されている。穴61dの内周面に沿って、開放面方向に突出する円筒状の立壁部61eが形成されている。この円筒状の立壁部61eの内部には円形穴が形成されている。
【0017】
有底円筒状の内歯歯車61の内部には、シートバック55側に設けられる外歯歯車63が配置される。外歯歯車63の外面には、周方向全域にわたって外歯63aが形成されている。そして、外歯歯車63の外歯63aは内歯歯車61の内歯61cに噛合可能となっている。更に、外歯歯車63の外歯63aの歯数は、内歯歯車61の内歯61cの歯数より少なく設定されている。また、外歯歯車63の中央部には、貫通した穴63bが形成されている。外歯歯車63の内歯歯車61と対向する面側には、穴63bの開口の縁部に沿って、内歯歯車61方向に突出する円筒状の立壁部63cが形成されている。この円筒状の立壁部63cの外径は、内歯歯車61の円筒状の立壁部61eの内径より小さく設定され、外歯歯車63の円筒状の立壁部63cは、円形穴である内歯歯車61の円筒状の立壁部61e内に挿入される円筒として機能する。
【0018】
そして、
図2に示すように、内歯歯車61の内歯61cに外歯歯車63の外歯63aが噛合している状態では、内歯歯車61の回転軸(円筒状の立壁部61e(円形穴)の中心)O1と、外歯歯車63の回転軸(立壁部63cの中心)O2とは位置が異なり、偏心している。よって、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面と、外歯歯車63の円筒状の立壁部63c(円筒)の外面との間には、偏心環状空間Kが形成されている。
【0019】
図1、
図2に示すように、この偏心環状空間Kには、第1ウェッジ71と第2ウェッジ73とが、周方向に移動可能に設けられている。
第1ウェッジ71と、第2ウェッジ73とは、面対称の形状を有している。第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の内面71a、内面73aは、外歯歯車63の立壁部63cの外径と略同一の内径を有している。また、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の外面71b、外面73bは、内面71a、内面73aの径より大きく、中心も異なる径を有しており、第1ウェッジ71と、第2ウェッジ73とは肉厚が楔状に変化している。
【0020】
本実施形態では、
図1に示すウェッジの偏心環状空間での保持を説明する図である
図10に示すように、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の外面71b、外面73bには、内歯歯車61の立壁部61eの内面に当接する外側接触点(OC)が2箇所形成され、また、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の内面71a、内面73aには、外歯歯車63の立壁部63cの外面に当接する内側接触点(IC)が1箇所形成されている。さらに内側接触点(IC)は、2箇所ある外側接触点(OC)の間に位置している。この3箇所の接触点で、第1ウェッジ71と第2ウェッジ73とは、偏心環状空間Kに安定して保持される。
【0021】
そして、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73が互いに離反する方向、換言すれば、偏心環状空間Kの狭幅部へ楔を打ち込む方向に移動すると、内歯歯車61と外歯歯車63とは、内歯61cと外歯63aとが噛合する方向に相対移動するようになっている。
第1ウェッジ71、第2ウェッジ73は、拡径方向に弾性復帰しようとするスプリング77から互いに離反する方向に付勢力を受けている。このスプリング77は、1ターンの環状部分77aと、この環状部分77aから立ち上がった端部77b、端部77cからなっている。環状部分77aは、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の開口に沿って形成された溝61gに収納されている。又、端部77bは、第1ウェッジ71の厚肉側の側端面に形成された溝部71cに係止され、端部77cは、第2ウェッジ73の厚肉側の側端面に形成された溝部73cに係止されている。
【0022】
そして、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の内歯歯車61の溝61g側を向く上面(溝61gに露出する面)71d、上面73dの薄肉側には、溝61g側に突出する突部71e、突部73eが形成されている。従って、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の上面71d、上面73dにおいて、突部71e、突部73e以外は、径方向に貫通した凹部となっている。さらに、突部71e、突部73eの立壁部71f、立壁部73fは、後述するストライカの押圧部が押圧可能な被押圧部となっている。
【0023】
図1−
図4に示すように、ストライカ79は、内歯歯車61の溝61gに配置される本体部79dと、本体部79dと連接され、外歯歯車63の立壁部63cの内部に嵌合する円筒部79eとからなっている。よって、ストライカ79の回転軸は、外歯歯車63の回転軸O2となる。円筒部79eの内筒部の断面形状は、非円形(本実施形態では正六角形)となっており、図示しない駆動軸が嵌合し、駆動軸の回転が伝達される嵌合孔79fとなっている。そして、
図2に示すように、嵌合孔79fの断面形状は、ストライカ79の回転軸O2と直交する軸、例えば第1軸A1を対称軸とする対称形状となっている。
【0024】
本体部79dの外縁には、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73を押圧可能な第1突部、第2突部からなる押圧部が複数、本実施形態では2組形成されている。
本実施形態の2組ある押圧部のうちの一方の押圧部81は、本体部79dの外縁部から半径方向に突出する第1突部81aと、第2突部81bとを有している。第1突部81aは、ストライカ79が
図1において時計方向に回転することにより、第1ウェッジ71の楔先端側の端面を押圧し、第1ウェッジ71を偏心環状空間Kの狭幅部から楔を引き抜く方向に移動させる。また、第2突部81bは、第2ウェッジ73の凹部に重なり、ストライカ79が
図1、2において時計方向に回転することにより、突部73eの立壁部73fを押圧し、第2ウェッジ73を偏心環状空間Kの狭幅部へ楔を打ち込む方向に移動させる。
【0025】
本実施形態の2組ある押圧部のうちの他方の押圧部83は、本体部79dの外縁部から半径方向に突出する第1突部83aと、第2突部83bとを有している。第1突部83aは、ストライカ79が
図1において反時計方向に回転することにより、第2ウェッジ73の楔先端側の端面を押圧し、第2ウェッジ73を偏心環状空間Kの狭幅部から楔を引き抜く方向に移動させる。また、第2突部83bは、第1ウェッジ71の凹部に重なり、ストライカ79が
図1において反時計方向に回転することにより、突部71eの立壁部71fを押圧し、第1ウェッジ71を偏心環状空間Kの狭幅部へ楔を打ち込む方向に移動させる。
【0026】
押圧部81を構成する一対の第1突部81a、第2突部81bは、ストライカ79の回転方向において、180度の範囲で設けられている。同様に、押圧部83を構成する一対の第1突部83a、第2突部83bも、ストライカ79の回転方向において、180度の範囲で設けられている。
【0027】
図2に示すように、ストライカ79の回転平面内で、ストライカ79の回転軸O2に直交すると共に、互いに直交する2軸(
図2において、第1軸A1、第2軸A2)で区切られた4つの領域(
図2で、領域E1−領域E4)において、対頂角を有する一方の2つの領域(領域E1、領域E3)のうちの一方の領域(領域E1)に押圧部81の第1突部81aが、他方の領域(領域E3)に押圧部81の第2突部81bが位置している。また、対頂角を有する他方の2つの領域(領域E2、領域E4)のうちの一方の領域(領域E2)に押圧部83の第1突部83aが、他方の領域(領域E4)に押圧部83の第2突部83bが位置している。
【0028】
図2の構成図である
図8に示すように、2組の押圧部81、押圧部83において、一方の押圧部81の第1突部81a(突部における周方向の中央部)と嵌合孔79fの中心(回転軸)O2を結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度をθ1、他方の押圧部83の第1突部83a(突部における周方向の中央部)と嵌合孔79fの中心とを結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度をθ2、他方の押圧部83の第2突部83b(突部における周方向の中央部)と嵌合孔79fの中心を結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度をθ3、一方の押圧部81の第2突部81bと嵌合孔79fの中心とを結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度をθ4とした際に、
θ1=θ2
θ3=θ4
θ1=θ2≠θ3=θ4
とした。
【0029】
さらに、
θ1=θ2>θ3=θ4
とした。
θ1=θ2、θ3=θ4としたことにより、
図1−
図4、
図8に示すストライカ79の状態からストライカ79を180度回転させて位置を変えても、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73を押圧可能であり、移動させることができる。
【0030】
その際、θ1=θ2>θ3=θ4であるので、
図8のように、ウェッジロック位置が高い場合には、突部と嵌合孔79fの中心とを結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度が大きいθ1、θ2である押圧部81の第1突部81aと、押圧部83の第1突部83aとが第1ウェッジ71と、第2ウェッジ83の楔先端側の端面を押すようにすればよい。また、
図9のように、ウェッジロック位置が低い場合には、突部と嵌合孔79fの中心とを結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度が小さいθ3、θ4である押圧部81の第2突部81bと、押圧部83の第2突部83bとが第1ウェッジ71と、第2ウェッジ83の楔先端側の端面を押すようにすればよい。
【0031】
さらに、嵌合孔79fの断面形状は、第1軸A1を対称軸とする対称形状となっている。よって、
図1−
図4、
図8に示すストライカ79の状態からストライカ79を180度回転させて位置を変えても、嵌合孔79fの形状が変わらず、駆動軸が支障なく嵌合できる。
【0032】
また、
図10に示すように、本実施形態では、ストライカ79の押圧部が押圧する被押圧部である第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の突部71e、突部73eの立壁部71f、立壁部73fは、ウェッジの長手方向に傾いた傾斜面となっている。この傾斜面は、ストライカ79の押圧部が押圧すると、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73が内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面、外歯歯車63の円筒状の立壁部63c(円筒)の外面のうちのどちらか一方の面に押接するような傾斜面となっている。
【0033】
そして、本実施形態では、ストライカ79の押圧部は、傾斜面である第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の突部71e、突部73eの立壁部71f、立壁部73fにおいて、径方向の中間部より離れた位置で押圧するようにした。
また、本実施形態では、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73が偏心回転運動をしないシートクッション55側の内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面に押接するように設定した。
【0034】
尚、この傾斜面は、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の突部71e、突部73eの立壁部71f、立壁部73fのみならず、立壁部71f、立壁部73fを押接するストライカ79の押圧部にも形成してもよい。即ち、ウェッジの立壁部と、ストライカ79の押圧部とのうち、少なくともどちらか一方に傾斜面を形成してもよい。
【0035】
そして、
図1、
図2、
図3に示すように、内歯歯車61、外歯歯車63とは、連結リング91を介して軸方向に相対移動できないように取り付けられている。
次に、
図2、
図5、
図6を用いて、上記構成の作動を説明する。
(ロック状態:非作動状態)
図2に示すように、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73は、スプリング77から互いに離反する方向に付勢力を受け、外歯歯車63の立壁部63cの外面と、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面とを押圧している。
【0036】
第1ウェッジ71、第2ウェッジ73は、それぞれ外歯歯車63の立壁部63cの外面と、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面とを押圧することにより、内歯歯車61と外歯歯車63とが両者の回転軸間の偏心量を増やす方向に付勢され、内歯歯車61の内歯61cと外歯歯車63の外歯63aとが深く噛み合い、シートバック55は傾動しない。
(ロック解除状態:作動状態)
図5に示すように、ロック状態において、操作ボタン、または操作ハンドルを操作して、図示しない駆動軸を右方向または左方向に回転駆動すると、ストライカ79が右方向または左方向に回転する。一例として、
図5、
図6において、ストライカ79が反時計方向に回転したとき、ストライカ79の押圧部83の第1突部83aが第2ウェッジ73の楔先端側の端面を押し、第2ウェッジ73を偏心環状空間Kの狭幅部から楔を引き抜く方向に移動させる。
【0037】
シートバック55に作用する荷重が小さい場合には、
図5に示すように、第2ウェッジ73がストライカ79によって押されて移動すると、第2ウェッジ73の外歯歯車63の立壁部63cの外面と、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面への押接力が減り、内歯歯車61の内歯61cと外歯歯車63の外歯63aとの噛み合いが浅くなり、シートバックは傾動可能な状態となる。
【0038】
第2ウェッジ73の移動始めは、第1ウェッジ71は外歯歯車63の立壁部63cの外面と、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面との摩擦により、静止している。しかし、第2ウェッジ73が楔引き抜き方向に移動していくと、スプリング77の弾性反発力により第1ウェッジ71が偏心環状空間Kに楔を打ち込む方向に移動する。この動作を繰り返しながら、内歯歯車61と外歯歯車63との偏心状態を保持しつつ、噛み合い部位が変化しシートバックは傾動する。
【0039】
なお、シートバック55に作用する荷重が大きな場合には、第1ウェッジ71と、外歯歯車63の立壁部63cの外面と、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面との摩擦が大きくなり、スプリング77の弾性反発力だけでは、第1ウェッジ71は動かない。この場合、
図6に示すように、ストライカ79がさらに反時計方向に回転し、押圧部83の第2突部83bが第1ウェッジ71の突部73eの立壁部71fを押し、第1ウェッジ71は偏心環状空間Kに楔を打ち込む方向に移動する。
【0040】
この動作により、内歯歯車61と外歯歯車63との偏心状態を保持しつつ、噛み合い部位が変化しシートバック55は傾動する。
このような構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1) ストライカ79の押圧部が押圧する被押圧部である第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の突部71e、突部73eの立壁部71f、立壁部73fは、ウェッジの長手方向に対して傾いた傾斜面となっている。この傾斜面は、ストライカ79の押圧部が押圧すると、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73が内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面、外歯歯車63の円筒状の立壁部63c(円筒)の外面のうちのどちらか一方の面に押接するような傾斜面となっていることにより、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73が同一方向に傾き、傾き方向の違いによる動作変化が発生せず、安定した動作が実現できる。
【0041】
(2) 第1ウェッジ71、第2ウェッジ73が偏心回転運動をしないシートクッション55側の内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面に押接するように設定したことにより、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の動作が安定する。
(3) ストライカ79の押圧部は、傾斜面である第1ウェッジ71、第2ウェッジ73の突部71e、突部71eの立壁部71f、立壁部73fにおいて、径方向の中間部より離れた位置で押圧するようにしたことにより、第1ウェッジ71、第2ウェッジ73を傾動させやすい。
【0042】
本発明は、上記実施例に限定するものではない。上記実施形態での押圧部は、押圧部81、押圧部83の2つであったが、3つ以上設けても良い。
また、外歯歯車をシートクッション側に、内歯歯車をシートバック側に設けてもよい。
更に、内歯歯車に円筒を形成し、外歯歯車に円形穴を形成してもよい。
<第2実施形態>
本実施形態と第1実施形態との相違点は、ストライカ、第1ウェッジ、第2ウェッジであり、他の部分は同一なので、同一部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0043】
図11,
図12において、偏心環状空間Kには、第1ウェッジ171と第2ウェッジ173とが、周方向に移動可能に設けられている。
第1ウェッジ171と、第2ウェッジ173とは、面対称の形状を有している。第1ウェッジ171、第2ウェッジ173の内面171a、内面173aは、外歯歯車63の立壁部63cの外径と略同一の内径を有している。また、第1ウェッジ171、第2ウェッジ173の外面171b、外面173bは、内面171a、内面173aの径より大きく、中心も異なる径を有しており、第1ウェッジ171と、第2ウェッジ173とは肉厚が楔状に変化している。
【0044】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、第1ウェッジ171、第2ウェッジ173の外面171b、外面173bには、内歯歯車61の立壁部61eの内面に当接する外側接触点が2箇所形成され、また、第1ウェッジ171、第2ウェッジ173の内面171a、内面173aには、外歯歯車63の立壁部63cの外面に当接する内側接触点が1箇所形成されている。さらに内側接触点は、2箇所ある外側接触点の間に位置している。この3箇所の接触点で、第1ウェッジ171と第2ウェッジ173とは、偏心環状空間Kに安定して保持される。
【0045】
そして、第1ウェッジ171、第2ウェッジ173が互いに離反する方向、換言すれば、偏心環状空間Kの狭幅部へ楔を打ち込む方向に移動すると、内歯歯車61と外歯歯車63は、内歯61cと外歯63aとが噛合する方向に相対移動するようになっている。
第1ウェッジ171、第2ウェッジ173は、拡径方向に弾性復帰しようとするスプリング77から互いに離反する方向に付勢力を受けている。このスプリング77は、1ターンの環状部分77aと、この環状部分77aから立ち上がった端部77b、端部77cからなっている。端部77bは、第1ウェッジ171の厚肉側の側端面に形成された溝部171cに係止され、端部77cは、第2ウェッジ173の厚肉側の側端面に形成された溝部173cに係止されている。
【0046】
そして、第1ウェッジ171、第2ウェッジ173の内歯歯車61の溝61g側を向く上面(溝61gに露出する面)171d、上面173dの薄肉側には、溝61g側に突出する突部171e、突部173eが形成されている。また、第1ウェッジ171、第2ウェッジ173の上面171d、上面173dの厚肉側には、溝61g側に突出する突部171g、突部173gが形成されている
従って、第1ウェッジ171、第2ウェッジ173の上面171d、上面173dにおいて、突部171e、突部173e、突部171g、突部173g以外は、径方向に貫通した凹部となっている。さらに、突部171e、突部173eの立壁部171f、立壁部173f、及び突部171g、突部173gの立壁部171h、立壁部173hは、ストライカ179の押圧部が押圧可能な被押圧部となっている。
【0047】
本実施形態のストライカ179と、第1実施形態のストライカ79との相違点は、押圧部の突部の配置である。本実施形態のストライカ179も、第1実施形態と同様に、第1ウェッジ171、第2ウェッジ173を押圧可能な第1突部、第2突部からなる押圧部が2組形成されている。
【0048】
図12に示すように、ストライカ179の回転平面内で、ストライカ179の回転軸O2に直交すると共に、互いに直交する2軸(
図12において、第1軸A1、第2軸A2)で区切られた4つの領域(
図12で、領域E1−領域E4)において、一方の隣り合う領域E3、E4のうちの一方の領域(領域E3)に一方の押圧部183の第1突部183aが、他方の領域(領域E4)に押圧部183の第2突部183bが位置している。また、他方の隣り合う2つの領域(領域E1、領域E2)のうちの一方の領域(領域E2)に他方の押圧部181の第2突部181bが、他方の領域(領域E1)に押圧部181の第1突部181aが位置している。
【0049】
図12に示すように、2組の押圧部181、押圧部183において、一方の押圧部183の第1突部183aと嵌合孔179fの中心(回転軸)O2を結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度をθ1’、他方の押圧部181の第1突部181aと嵌合孔179fの中心とを結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度をθ2’、一方の押圧部183の第2突部183bと嵌合孔179fの中心を結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度をθ3’、他方の押圧部181の第2突部181bと嵌合孔179fの中心とを結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度をθ4’とした際に、
θ1’=θ3’
θ2’=θ4’
θ1’=θ3’≠θ2’=θ4’
とした。
【0050】
さらに、
θ1’=θ3’<θ2’=θ4’
とした。
ストライカ179が反時計方向に回転すると、第1突部183aは、第2ウェッジ173の突部173gの立壁部171hを押圧し、第2ウェッジ173を偏心環状空間Kの狭幅部から楔を引き抜く方向に移動させる。また、第2突部183bは、第1ウェッジ171の突部171eの立壁部171fを押圧し、第1ウェッジ171を偏心環状空間Kの狭幅部へ楔を打ち込む方向に移動させる。逆に、
図12において、ストライカ179が時計方向に回転すると、第1突部183aは、第2ウェッジ173の突部173eの立壁部173fを押圧し、第2ウェッジ173を偏心環状空間Kの狭幅部へ楔を打ち込む方向に移動させる。また、第2突部183bは、第1ウェッジ171の突部171gの立壁部171hを押圧し、第1ウェッジ171を偏心環状空間Kの狭幅部から楔を引き抜く方向に移動させる。
【0051】
θ1’=θ3’、θ2’=θ4’としたことにより、
図12示すストライカ179の状態からストライカ179を180度回転させて位置を変えても、第1ウェッジ171、第2ウェッジ173を押圧可能であり、移動させることができる。
この場合、ストライカ179が反時計方向に回転すると、第1突部181aは、第2ウェッジ173の突部173gの立壁部173hを押圧し、第1ウェッジ171を偏心環状空間Kの狭幅部から楔を引き抜く方向に移動させる。また、第2突部181bは、第1ウェッジ171の突部171eの立壁部171fを押圧し、第1ウェッジ171を偏心環状空間Kの狭幅部へ楔を打ち込む方向に移動させる。逆に、ストライカ179が時計方向に回転すると、第1部181aは、第2ウェッジ173の突部173eの立壁部173fを押圧し、第2ウェッジ173を偏心環状空間Kの狭幅部へ楔を打ち込む方向に移動させる。また、第2突部181bは、第1ウェッジ171の突部171gの立壁部171hを押圧し、第1ウェッジ171を偏心環状空間Kの狭幅部から楔を引き抜く方向に移動させる。
【0052】
その際、θ1’=θ3’<θ2’=θ4’であるので、ウェッジロック位置が高い場合には、突部と嵌合孔79fの中心とを結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度が小さいθ1’、θ3’である押圧部183の第1突部183aと、第2押圧部183bとが第1ウェッジ171と、第2ウェッジ173を押圧して移動させるようにすればよい。また、ウェッジロック位置が低い場合には、突部と嵌合孔179fの中心とを結ぶ直線と第2軸A2とが交わる角度が大きいθ2’、θ4’である押圧部181の第1突部181aと、第2突部181bとが第1ウェッジ171と、第2ウェッジ173を押圧して移動させるようにすればよい。
【0053】
このような構成のリクライニング装置の作動を説明する。
(ロック状態:非作動状態)
第1ウェッジ171、第2ウェッジ173は、スプリング77から互いに離反する方向に付勢力を受け、外歯歯車63の立壁部63cの外面と、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面とを押圧している。
【0054】
第1ウェッジ171、第2ウェッジ173は、それぞれ外歯歯車63の立壁部63cの外面と、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面とを押圧することにより、内歯歯車61と外歯歯車63とが両者の回転軸間の偏心量を増やす方向に付勢され、内歯歯車61の内歯61cと外歯歯車63の外歯63aとが深く噛み合い、シートバック55は傾動しない。
(ロック解除状態:作動状態)
ロック状態において、操作ボタン、または操作ハンドルを操作して、図示しない駆動軸を右方向または左方向に回転駆動すると、ストライカ179が右方向または左方向に回転する。
図11においてストライカ179が反時計方向に回転したとき、ストライカ179の押圧部183の第1突部183aが第2ウェッジ173の立壁部173hを押し、第2ウェッジ173を偏心環状空間Kの狭幅部から楔を引き抜く方向に移動させる。
【0055】
シートバック55に作用する荷重が小さい場合には、第2ウェッジ173がストライカ179によって押されて移動すると、第2ウェッジ173の外歯歯車63の立壁部63cの外面と、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面への押接力が減り、内歯歯車61の内歯61cと外歯歯車63の外歯63aとの噛み合いが浅くなり、シートバックは傾動可能な状態となる。
【0056】
第2ウェッジ173の移動始めは、第1ウェッジ171は外歯歯車63の立壁部63cの外面と、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面との摩擦により、静止している。しかし、第2ウェッジ173が楔引き抜き方向に移動していくと、スプリング77の弾性反発力により第1ウェッジ171が偏心環状空間Kに楔を打ち込む方向に移動する。この動作を繰り返しながら、内歯歯車61と外歯歯車63との偏心状態を保持しつつ、噛み合い部位が変化しシートバックは傾動する。
【0057】
なお、シートバック55に作用する荷重が大きな場合には、第1ウェッジ171と、外歯歯車63の立壁部63cの外面と、内歯歯車61の円筒状の立壁部61e(円形穴)の内面との摩擦が大きくなり、スプリング77の弾性反発力だけでは、第1ウェッジ171は動かない。この場合、
図12に示すように、ストライカ179がさらに反時計方向に回転し、押圧部183の第2突部183bが第1ウェッジ171の突部171eの立壁部171fを押し、第1ウェッジ171は偏心環状空間Kに楔を打ち込む方向に移動する。
【0058】
この動作により、内歯歯車61と外歯歯車63との偏心状態を保持しつつ、噛み合い部位が変化しシートバック55は傾動する。
このような構成でも、第1実施形態と同じ様な効果を得ることができる。