特許第6885722号(P6885722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885722
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】ショートアーク型放電ランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/073 20060101AFI20210603BHJP
   H01J 61/20 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   H01J61/073 B
   H01J61/20 U
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-254748(P2016-254748)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-107059(P2018-107059A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】金井 信夫
(72)【発明者】
【氏名】南雲 陽佑
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/133773(WO,A1)
【文献】 特開2004−362861(JP,A)
【文献】 特開2003−203602(JP,A)
【文献】 特開2003−051282(JP,A)
【文献】 特開2006−040621(JP,A)
【文献】 特開2001−118540(JP,A)
【文献】 特開平08−273596(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0125223(US,A1)
【文献】 特開2010−153391(JP,A)
【文献】 特開2007−265624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/073
H01J 61/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管と、
前記発光管内に対向配置される一対の電極とを備え、
前記電極が、
電極先端側に向けて縮径する溶融先端部と、
前記溶融先端部の電極後端側において、電極芯棒周りに複数のコイルが層状に形成されたコイル部とを有し、
前記コイル部において前記電極芯棒と接する内側コイル層の電極後端側端部に、エッジ部分を境界にもつ平坦面が、前記電極芯棒の周方向に沿って形成されていることを特徴とするショートアーク型放電ランプ。
【請求項2】
前記平坦面が、前記電極芯棒の周全体に渡って形成されていることを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項3】
前記平坦面が、電極軸に垂直な方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項4】
前記内側コイル層のコイル径が、前記内側コイル層の外側に位置する外側コイル層のコイル径よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項5】
前記内側コイル層のコイル径は前記外側コイル層のコイル径の50%以上95%以下であることを特徴とする請求項4に記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項6】
前記内側コイル層の端部が、前記内側コイル層の外側に位置する外側コイル層の端部よりも電極後方側に位置し、
前記内側コイル層と前記外側コイル層の電極軸に沿った端部間の距離が、前記コイル部の電極径方向厚さの20%以上60%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項7】
前記内側コイル層が、前記コイル部において、前記内側コイル層の外側に位置する外側コイル層と部分接触していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項8】
前記内側コイル層の外側に位置する外側コイル層が、電極後方側端部で折り返されている2重巻きのコイル層であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項9】
前記発光管内に、0.15mg/mm以上の水銀と、希ガスと、1×10−6〜1×10−2μmol/mmの範囲のハロゲンとが封入され、
前記一対の電極の距離間隔が、2mm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のショートアーク型放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関し、特に、ショートアーク型放電ランプの電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ、露光装置などの光源として使用されるショートアーク型放電ランプでは、発光管内に一対の電極を非常に短い間隔(例えば数ミリ程度)で配置し、発光管両端には発光管と一体的に繋がる封止管がそれぞれ形成される。そして、発光管内に水銀とハロゲンと希ガスが封入される。電極対に電圧を印加することでアーク放電が生じ、発光管内の圧力が高圧(例えば100気圧以上)になることで、アーク放電が電極対の電極先端の間に安定し、反射鏡などによってアーク放電より放射される光が所定方向へ導かれる。
【0003】
このようなショートアーク型放電ランプでは、いわゆるコイル溶融電極が一般的に用いられる。コイル溶融電極は、電極芯棒にコイルを巻き付け、電極先端部側をレーザ等で加熱溶融することにより形成される。溶融部分は椀状、半球状などに形成されて電極先端部として構成される一方、溶融されていないコイル部分が、先端部と一体的に繋がって形成される。
【0004】
放電ランプでは、アーク放電が不安定な状態となると、電極先端部以外でアーク放電が生じる場合がある。特に、点灯直後は電極の温度が低く、封入物の蒸発も少なく発光管内のガス圧も低いことから、アーク放電が不安定な状態となり、コイル部分への電界集中などの理由により電極後端部(コイル部分)を起点としてアーク放電が生じる。
【0005】
電極後端側にアーク放電が生じると、アーク放電の起点が発光管に近いことによって発光管が変形し、失透が生じる。これを防ぐため、コイル部分の後端部の表面全体に対して丸みをもたせる電極形状が知られている(特許文献1参照)。これにより、点灯始動後の電極後端部を起点とするアーク放電を持続させないようにし、アーク放電の起点を電極先端部の突起部へ向けて移行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−362861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コイル溶融電極では、椀状/半球状の電極先端部をレーザ溶融によって成形するため、コイル部分の側面には、レーザ照射の影響によって微小な突起が生じやすい。この微小な突起部分があると、突起部分に電界集中が生じてアーク放電が生じる、また、突起部分にアーク放電が留まることで電極先端部へアーク放電が速やかに移動しない場合があり、その結果、コイル部分と近接する発光管の変形や失透が生じてしまう。
【0008】
したがって、コイル溶融電極において、発光管内壁と距離の近いコイル部の表面にアーク放電の起点が生じないことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のショートアーク型放電ランプは、発光管と、発光管内に対向配置される一対の電極とを備える。例えば、発光管内に、0.15mg/mm以上の水銀と、希ガスと、1×10−6〜1×10−2μmol/mmの範囲のハロゲンとが封入され、一対の電極の距離間隔が、2mm以下である。
【0010】
電極は、電極先端側に向けて縮径する溶融先端部と、溶融先端部の電極後端側において、電極芯棒周りに複数のコイルが層状に形成されたコイル部とを備える。コイル部は、電極芯棒と接する内側コイル層と、内側コイル層の外側に位置する外側コイル層で構成することが可能であり、外側コイル層は電極後方側端部で折り返されている2重巻きのコイル層にすることができる。内側コイル層は、溶融先端部に対し、溶接などによって一体化している。一方、内側コイル層と外側コイル層は、互いにその表面で部分的に接触しており、溶融先端部のように一体化していない。
【0011】
本発明では、内側コイル層の電極後端側端部に、エッジ部分を境界にもつ平坦面が、電極芯棒の周方向に沿って形成されている。エッジ部分が電極芯棒周り(周方向)に沿って形成されるため、点灯開始直後にアーク放電の起点が内側コイル層の電極後端側端部(エッジ部分)に形成され、内側コイルの熱伝導によって溶融先端部が熱せられる。これにより、アーク放電の起点は、外側コイル層の外表面(コイル部の側面)に留ることなく、内側コイル層の電極後端側端部から溶融先端部へ移動する。
【0012】
平坦面は、電極芯棒周りの一部にだけ沿って形成してもよく、周全体に渡って形成してもよい。放電ランプの配置(例えば水平配置)に応じて、アーク放電の起点となりやすい範囲で、平坦面を電極芯棒周りに形成することが可能である。また、平坦面は、周全体で、あるいは部分的に電極芯棒と接するように形成することが可能である。平坦面と曲面部分との境界すべてがエッジ部分であってもよく、一部がエッジ部分であってもよい。
【0013】
平坦面は、電極軸に垂直な方向に沿って形成することが可能である。これによって、ランプ軸方向に関してアーク放電の起点の位置に相違が生じなく、放電ランプの配置に関係なく、アーク放電の起点が溶融先端部へ移動する。内側コイル層のコイル径は、内側コイル層の外側に位置する外側コイル層のコイル径よりも小さくすることができる。
【0014】
内側コイル層のコイル径は外側コイル層のコイル径の、例えば50%以上95%以下に定めることが可能である。また、内側コイル層の端部が、内側コイル層の外側に位置する外側コイル層の端部よりも電極後方側に位置するように構成することが可能である。この場合、内側コイル層と外側コイル層の電極軸に沿った端部間の距離は、コイル部の電極径方向厚さの20%以上60%以下に定めることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ショートアーク型放電ランプにおいて、安定したアーク放電を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態であるショートアーク型放電ランプの概略的構成図である。
図2】電極の平面図である。
図3図2の電極の電極軸を通るラインに沿った断面図である。
図4図2のコイル部の電極後方端部を示した平面図である。
図5図2の電極を電極芯棒後方側から見た平面図である。
図6】アーク放電の移動方向を示した電極断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態であるショートアーク型放電ランプの概略的構成図である。
【0018】
ショートアーク型放電ランプ10は、透明な石英ガラス製の略球状発光管12を備え、発光管12内には一対の電極20、30が2mm以下の距離間隔で対向配置される。発光管12の両側には、石英ガラス製の封止管14A、14Bが発光管12と連設し、一体的に形成されている。
【0019】
発光管12内の放電空間Sには、水銀とハロゲンとアルゴンガスなどの希ガスが封入されている。ここでは、0.15mg/mm以上の水銀と、希ガスと、1×10−6〜1×10−2μmol/mmの範囲のハロゲンとが封入されている。ハロゲンは、水銀とその他の金属との化合物として封入されている。
【0020】
放電ランプ10は、ここでは所定の定格電力(例えば100〜500W)が供給される交流点灯ランプであり、電圧が一対の電極20、30に印加されると、電極間でアーク放電が発生し、発光管12の外部に向けて光が放射され、反射鏡(図示せず)によって所定方向へ導かれる。交流電圧が一対の電極20、30に印加されるため、極性(陰極、陽極)が交互に入れ替わる。
【0021】
図2は、電極30の平面図である。図3は、図2の電極30の電極軸に沿った断面図である。図2、3を用いて、電極30について説明する。なお、電極20も同様の構造になっている。
【0022】
電極30は、電極芯棒32にコイルを巻き付けて先端部を溶融させた電極(以下、コイル溶融電極という)によって構成されている。すなわち、電極芯棒32周りにコイルを巻き付けた後、電極先端側をレーザ溶融などによって溶融することにより、図3に示す電極30の外観形状が形成される。電極30は、ここでは電極芯棒32を含めてタングステンによって構成されている。
【0023】
電極30は、略半球状の電極先端部(以下、溶融先端部という)40と、溶融されていないコイル部50とを備える。溶融先端部40は、コイルが溶融した部分に該当し、溶融先端部40の表面40Sは滑らかな曲面状であって、電極先端側に向けて先細くなっている。また、溶融によって溶融先端部40は電極芯棒32と一体化している。溶融先端部40の端部には、アーク放電時の起点となる椀状の突起部42が形成されている。
【0024】
コイル部50は、図3に示すように、複数のコイルが電極芯棒32周りに巻かれることによって層状(ここでは3層)に形成されている。コイル部50は、電極芯棒32と接する内側コイル層52と、内側コイル層52よりも電極芯棒32の径方向外側に位置する外側コイル層54から構成される。
【0025】
外側コイル層54は、1つの断面円状のコイルを電極後方側の端部で折り返し、二重に巻き回したコイル層であり、一体的なコイル層となって形成されている。内側コイル層52は、外側コイル層54とは別のコイルによって形成されている。溶融先端部40以外のコイル部50では、外側コイル層54と一体化しておらず、互いに部分的に接した状態で電極芯棒32周りに固定されている。
【0026】
内側コイル層52を構成するコイルの径r1は、外側コイル層54を形成するコイルの径r2よりも小さい。また、内側コイル層52の電極軸Xに沿った端部52Eは、外側コイル層54の端部54Eよりも電極後方側に位置する。
【0027】
図4は、図2のコイル部50の電極後方端部を示した平面図である。図5は、図2の電極30を電極芯棒32後方側から見た平面図である。
【0028】
図4、5に示すように、内側コイル層52の端部52Eは一部カット(切断)されている。具体的には、エッジ部分52Dを境界にもつ平坦な切断面52Sが、電極軸Xに垂直な方向に沿って形成されている。また、この切断面S52は、電極芯棒32周りの周全体に渡って形成されており、部分的にエッジ部分52Dが電極芯棒32と接している。
【0029】
エッジ部分52Dをもつ切断面52Sを設けることにより、内側コイル層52の端部52Eは、外側コイル層54の端部54Eのように全体が曲面状(管状)ではなく、曲面部分と平坦面(切断面52S)とが両方存在する形状となっている。そして、平坦面境界にエッジ部分52Dが存在することによって、曲面部分と切断面52Sとの間は滑らか(連続的)になっていない。また、内側コイル層52の端部52Eの電極軸Xに沿った位置は、外側コイル層54の端部54Eとは異なり、周方向に関してどの箇所においても実質的に同じになる。
【0030】
このようなコイル部50の構成により、点灯時(点灯直後)において、内側コイル層52の端部52Eに生じたアーク放電が、速やかに溶融先端部40の突起部42へ移動する。以下、図6を用いて詳述する。
【0031】
図6は、アーク放電の移動方向を示した電極断面図である。
【0032】
点灯直後においては、電極温度が低く、封入物の蒸発も少なくガス圧も低いため、アーク放電は突起部42以外で生じる。内側コイル層52は、外側コイル層54とは異なり、内側コイル層52の端部52Eにエッジ部分52Dを有する切断面52Sが形成されているため、切断面52Sのエッジ部分52Dに電界が集中する。これにより、コイル部のレーザ溶融による微小な突起の有無に関わらず、アーク放電が端部52Eを起点として必然的に生じる。
【0033】
上述したように、内側コイル層52は外側コイル層54と溶接していないために一体的に繋がっておらず、互いにその表面が部分的に接している。そのため、内側コイル層52の熱は、外側コイル層54へ伝搬しにくい。一方、内側コイル層52は、溶融先端部40と溶接し、溶融先端部40と一体化している。したがって、内側コイル層52の熱は、外側コイル層54よりも溶融先端部40へ伝搬しやすい。
【0034】
また、内側コイル層52の径r1が外側コイル層54の径r2よりも小さいため、外側コイル層54は加熱されにくい。さらに、平坦な切断面52Sが電極軸Xに垂直な方向に沿って形成されることで、切断面52Sで生じたアーク放電は、外側コイル層54の端部54Eに沿うように発生し、発光管12に近接しない。そして、内側コイル層52の端部52Eは外側コイル層54の端部54Eよりも電極後方側に位置するため、切断面52Sで生じたアーク放電は、外側コイル層54の端部54Eに接触せず、アーク放電によって端部54Eが加熱されることが抑制される。
【0035】
ランプ軸が水平になるように放電ランプ10を配置した場合、ランプ消灯直後の電極温度は、電極上方側がより高くなる。ここでは、切断面52Sが周方向全体に渡って形成されているため、放電ランプ10を設置したときの回転位置(軸回り方向の位置)に関わらず、内側コイル層52の端部52Eにおいてアーク放電が確実に生じ、外側コイル層54の端部54Eにアーク放電が発生することを抑制する。
【0036】
以上のことから、内側コイル層52の端部52Eの切断面52Sにアーク放電が生じることで生じた熱は、外側コイル層54ではなく溶融先端部40に伝搬し、点灯時は外側コイル層54より溶融先端部40の方が高温となる。アーク放電は一般的に高温箇所に生じやすい(移動しやすい)ことから、内側コイル層52の端部52Eに生じたアーク放電の起点は、外側コイル層54の外表面、すなわちコイル部50の側面に移動することなく、すみやかに溶融先端部40へ移動する。
【0037】
このように内側コイル層52の切断面52Sにおいて最初にアーク放電を生じさせるとともに、電極芯棒32に沿って内側コイル層52を媒体に熱を溶融先端部40へ伝搬することで、速やかなアーク放電の移動を行うことができる。また、コイル部50の側面にアーク放電が移動しないため、発光管12の変形、失透が生じるのを抑えることができる。
【0038】
ここで、内側コイル層52の径r1は、外側コイル層54の径r2の50%〜95%の範囲に定めればよい。95%以下にすることによって、端部52Eに生じたアーク放電によって端部54Eが高温になるよりも早く、溶融先端部40を加熱することができる。一方、50%以上に設定しないと、安定点灯時、すなわちアーク放電が溶融先端部40で生じているときに内側コイル層52の温度が外側コイル層54と比べて極端に高くなり、アーク放電が切断面52Sへ再移動して照度低下、チラツキなどが発生する恐れがある。そのため、50%以上に設定するのがよい。
【0039】
一方、内側コイル層52の端部52Eの位置と外側コイル層54の端部54Eとの電極軸Xに沿った距離Aは、コイル部50の最大径部の電極径方向厚さB(図4参照)の20%〜60%の範囲に定められる。20%以下では、切断面52Sに生じたアーク放電が外側コイル層54の端部54Eに接触することで、端部54Eが加熱され高温になる。その結果、切断面52Sに生じたアーク放電が端部54Eに移動するおそれがある。一方、60%を超えて設定すると、切断面52Sが発光管12、封止管14Bに近接し、発光管12などに影響を与える。また、内側コイル層52の露出が大きくなり、露出による熱損失が大きくなる。そのため、距離Aはコイル部50の最大径部の電極径方向厚さBの20%以上、60%以下に定めるのがよい。
【0040】
以上のような構成の電極30は、様々な製造方法によって製造することができる。例えば、あらかじめ切断面を形成してあってコイリング(巻き回された)内側コイル層を電極芯棒に圧入し、その後、コイルを巻き返した2重の外側コイル層を、折り返し部分を電極後端側に配置するように、電極芯棒に挿入する。そして、電極先端側をレーザ溶融することによって、溶融先端部とコイル部から成る電極が成形される。切断面は、レーザ、研磨などによって形成することが可能である。コイル部に対して平坦な切断面を形成することで、特別な工程を設けることなく、エッジ部分が電極芯棒周りに沿って形成される。
【0041】
このように本実施形態によれば、溶融先端部40とコイル部50とを備えた電極30(電極20)を備えたショートアーク型放電ランプ10において、コイル部50が、内側コイル層52と外側コイル層54から成る層状コイルとして構成されている。そして、内側コイル層52の端部52Eにおいて、エッジが存在するように切断面52Sが電極芯棒32周りに沿って形成されている。
【0042】
切断面52Sについては、その全体が電極軸Xに垂直でなくてもよく、電極芯棒32周りの周方向に沿って形成されればよい。また、周全体ではなくその一部であってもよい。例えば、電極30を水平配置した場合、内側コイル層52の上方側でアーク放電が生じやすい。そのため、切断面52Sが周方向半分に渡って形成し、切断面52Sがその上方側に位置するように電極配置することで、内側コイル層52の端部52Eにおいて確実に生じさせることができる。さらに、電極配置の状態および高温状態の箇所がある程度把握できれば、より少ない周方向に沿った範囲で切断面を形成することも可能であり、その範囲の周方向長さで平坦面を形成してもよい。また、切断面52Sと曲面部分との境界すべてに対してエッジ部分52Dを形成するのではなく、部分的にエッジが存在するように形成してもよい。
【0043】
コイル部50については、3層以外の層状コイルによって形成することが可能である。また、内側コイル層と外側コイル層を別のコイルで形成せず、1つのコイルを電極芯棒に巻いた電極構造であってもよい。この場合でも、最も内側のコイル層が溶融先端部側と一体的に繋がっている一方、その溶融先端部を通じて外側のコイル層が繋がっているため、先に溶融先端部が加熱され、アーク放電が電極芯棒に沿って移動する。
【符号の説明】
【0044】
10 放電ランプ
20、30 電極
40 溶融先端部
50 コイル部
52 内側コイル層
52E 端部
52S 切断面(平坦面)
54 外側コイル層
図1
図2
図3
図4
図5
図6