(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885750
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】滑車用巻込み防止具
(51)【国際特許分類】
B66D 3/04 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
B66D3/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-33569(P2017-33569)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138482(P2018-138482A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】505272618
【氏名又は名称】株式会社タワーライン・ソリューション
(73)【特許権者】
【識別番号】505176682
【氏名又は名称】ヨシハタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 博幸
(72)【発明者】
【氏名】伊波 興兼
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/109593(WO,A1)
【文献】
特開2011−225319(JP,A)
【文献】
特開平10−077193(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3115571(JP,U)
【文献】
特開2014−121152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00− 5/34
B66C 1/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の略円錐台形状の筒状体から成る本体を設け、当該本体は筒状体の軸方向に二等分され、各分割片の相対向する一方の端縁に蝶番を設けて当該二つの分割片を開閉自在に設け、当該分割片外面から広口の開口縁を越えて、板体から成るアーム部を夫々外方に突出させて設け、当該各アーム部の先端に磁石を夫々設け、
上記本体を開き、開いた本体を金属製の滑車近くの線状体に被せ、上記2本のアーム部の磁石を使って上記滑車の外側に固着させて当該本体の開放端を閉じる構成としたことを特徴とする、滑車用巻込み防止具。
【請求項2】
上記各分割片の相対向する他方の端縁に凹凸形状の係止具を夫々設けたことを特徴とする、上記請求項1に記載の滑車用巻込み防止具。
【請求項3】
上記本体の内側に緩衝材を設けたことを特徴とする、上記請求項1又は2の何れかに記載の滑車用巻込み防止具。
【請求項4】
上記本体の外側に目立つ着色を行い、注意喚起を図る様にしたことを特徴とする、上記請求項1、2又は3の何れかに記載の滑車用巻込み防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄塔等の高所に工事資材や工具を運ぶ滑車等に取付けて、作業員の腕や衣服などの巻込みを防止する滑車用巻込み防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄塔の他、様々なところで、工事資材や工具等を運搬するのに滑車(金車)が一般的に使用されている。この様な滑車は使用するワイヤロープ類の力の方向を自在に変える手段として活用され、便利であるが、作業中に、作業員の指や手もしくは腕または衣服の一部が当該滑車や出入りするワイヤロープ類に接触したり、当該滑車に出入するワイヤロープに巻き込まれたりする事故が後を絶たない。
【0003】
この様な事故を未然に防ぐものとして、例えば、特許文献1の様なものが考えられている。これは、合成樹脂から成り、丸めて筒体を形成した際にその広口から狭口に向って縮径するテーパー状をなすシート状の本体部と、前記筒体を形成する際に前記本体部の辺々が重なり合う重なり部分を面ファスナとした固定部と、前記筒体の前記広口側に形成されて被装着対象である金車と嵌合して前記筒体を前記金車に係止させる切欠きとを有する着脱式金車巻き込み防止具である。
【特許文献1】特開2014−121152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この様な巻込み防止具は、滑車及びワイヤロープへの取り付け取外しが容易であること、繰り返し通過する線条体との摺動や滑車本体の動揺に対して耐久性があること、さらに、作業時の利便性を損なわないといったことを満足する必要が有る。
【0005】
これらの点、上記特許文献1に記載された着脱式金車巻き込み防止具は、本体部を丸めてロープ等を覆いながら、辺々の重なり部分を固定部により固定して筒体を形成し、最後に、金車から落下しない様に当該金車に固定用ワイヤや紐で固定したものであり、取り付け取外しに手間が掛り、金車に簡単に取り付け取外しが出来るものでは無く、また、風圧や張力変動による線条体や金車本体の動揺による線条体のずれなどが発生し易い。
【0006】
この発明は、これらの点に鑑みて為されたもので、滑車(金車)やワイヤロープへの取り付け取外しがワンタッチで出来、耐久性がある、滑車用巻込み防止具を提供して上記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、金属製の略円錐台形状の筒状体から成る本体を設け、当該本体は筒状体の軸方向に二等分され、各分割片の相対向する一方の端縁に蝶番を設けて当該二つの分割片を開閉自在に設け、当該分割片外面から広口の開口縁を越えて
、板体から成るアーム部を夫々外方に突出させて設け、当該各アーム部の先端に磁石を夫々設け、上記本体を開き、開いた本体を金属製の滑車近くの線状体に被せ、上記2本のアーム部の磁石を使って上記滑車の外側に固着させて当該本体の開放端を閉じる
構成とした、滑車用巻込み防止具とした。
【0008】
請求項2の発明は、上記各分割片の相対向する他方の端縁に凹凸形状の係止具を夫々設けた上記請求項1に記載の滑車用巻込み防止具とした。
【0009】
請求項3の発明は、上記本体の内側に緩衝材を設けた上記請求項1又は2の何れかに記載の滑車用巻込み防止具とした。
【0010】
請求項4の発明は、上記本体の外側に目立つ着色を行い、注意喚起を図る様にした上記請求項1、2又は3の何れかに記載の滑車用巻込み防止具とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、この滑車用巻込み防止具を線条体に被せ、アーム部の磁石で滑車に取り付けることとしたのでワンタッチで滑車や線条体に取付けることが出来、また、外す際もアーム部の磁石を外せばワンタッチで滑車等から取り外すことが出来、便利である。さらに、この滑車用巻込み防止具の本体を金属製としたので摩耗による耐久性から飛躍的に向上した。
【0012】
請求項2の発明によれば、上記各分割片の相対向する他方の端縁に係止具を夫々設けたので、線条体に対する滑車用巻込み防止具の取り付け及び取外しがワンタッチでありながら、取り付けが確実に出来、便利であり、また、安心である。さらに、当該滑車用巻込み防止具が滑車から外れた場合でも、当該滑車用巻込み防止具は筒状を成しているため線条体から外れず、落下しない。
【0013】
請求項3の発明によれば、上記本体の内側に緩衝材を設けて上記滑車の線条体が接触しても破損しないようにしたので、さらに、耐久性が向上し、器具として信頼性が高いものなった。
【0014】
請求項4の発明によれば、上記本体の外側に目立つ着色を行い、注意喚起を図る様にしたので安全であり、また、この巻込み防止具が滑車に取付けられているか否かが一目で分かり、さらに安全である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施の形態例1の滑車用巻込み防止具を滑車近くのワイヤロープに被せて夫々滑車に取付けた状態の正面図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の滑車用巻込み防止具の正面右側斜視図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の滑車用巻込み防止具の背面左側斜視図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の滑車用巻込み防止具を成す分割片の他方の端縁をやや開いた状態の正面右側斜視図である。
【
図5】この発明の実施の形態例2の滑車用巻込み防止具を成す分割片の他方の端縁をやや開いた状態の正面右側斜視図である。
【
図6】この発明の実施の形態例2の滑車用巻込み防止具の正面右側斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態例1)
以下、この発明の実施の形態例1の滑車用巻込み防止具(以下、「巻込み防止具」と言う。)Aを図に基づいて説明する。
【0017】
この実施の形態例1の巻込み防止具Aは、金属製で(ここでは鉄製とする。)、
図2、
図3及び
図4に示す様に、略円錐台形状の筒状体から成る本体1を設け、この本体1を筒状体の軸方向に二等分して二つの分割片1a、1bとし、これらの分割片1a、1bの相対向する一方の端縁の外側に蝶番2を設けてボルト3とナット4で取り付けて当該分割片1a、1bを接続し、本体1を開閉自在に設けている。
【0018】
また、これらの各分割片1a、1bの外面から広口の開口縁を越えて中空に突出したアーム部5、5が夫々設けられており、当該アーム部5、5は本体1にボルト6とナット7で取り付けられている(
図1参照)。これらの各アーム部5、5の先端内側には円盤状の磁石8、8を夫々設けている。以上の様にして、この巻込み防止具Aを形成している。
【0019】
次に、この実施の形態例1の巻込み防止具Aの使用の方法を説明する。上記本体1を上記蝶番2を境にして開き、
図1に示す様に、開いた本体1を金属製の滑車Bに出入する一側のワイヤロープCの滑車B近くのワイヤロープCに被せる。さらに、上記2本のアーム部5、5の磁石8、8を使って、上記滑車Bの外側に各アーム部5、5の先端を磁力により固着する。これにより、上記本体1の開放端が合わさり、本体1を閉じる。
【0020】
この後、上記滑車Bの他側のワイヤロープCにも同様にして別の巻込み防止具Aを取り付ける。以上の様に、滑車B近くの両側のワイヤロープにこの巻込み防止具Aを取付け、これらの状態で滑車Bを使用し、この滑車Bの巻込み口に、作業員の体や衣服などが巻き込まれないようにしている。
【0021】
また、
図3に示す様に、上記本体1の内側に緩衝材、例えば、硬質ウレタン材9などを取り付ければ、本体の内側をワイヤロープCが接触しながら挿通しても、本体1の内側を破損することも無く安心であり、また、この巻込み防止具Aを長期にわたって使用することが出来る。
【0022】
さらに、本体1の外側に目立つ着色、例えば、赤、オレンジ、黄色又は単色ではなく縞模様などの着色を行えば(図示省略)、作業員の注意喚起を図れると共に、この巻込み防止具Aが滑車Bに取付けられているか否かが一目で分かり、さらに、安全である。
【0023】
続いて、この実施の形態例2の巻込み防止具A´を説明する。ここでは、上記実施の形態例1と異なる構成のみを説明する。この実施の形態例2では、
図5及び
図6に示す様に、各分割片1a、1bの相対向する他方の端縁に夫々係止具として爪10を互い違いに取り付けて、本体1を係止自在に設けている。
【0024】
これにより、この実施の形態例2の巻込み防止具A´を使用する際、上記本体1を開き、開いた本体1を金属製の滑車B近くのワイヤロープに被せ、上記2本のアーム部5、5の磁石8、8を使って上記滑車Bの外側に磁力で固着する。これにより、当該本体1の開放端を閉じ、当該本体1の係止具である爪10を使って本体1をより確実に係止固定する。
【0025】
この時、上記本体1の他方の相対向する端縁に夫々係止具として爪10、10を互い違いに取り付け、これらの端縁を閉じた際、各爪10、10が相対向する端縁の内側に入り込むようにしたので、この巻込み防止具A´をワイヤロープに被せて取り付ける際、上記2本のアーム部5、5の磁石8、8を使って、上記滑車Bの外側に各アーム部5の先端を固着する。これにより、上記本体1の開放端が合わさり、上記各爪10、10が夫々開放端の内側に入り込んで本体1を閉じ、より確実に本体1をワイヤロープに取付けることが出来、安心である。
【0026】
上記実施の形態例1において、この巻込み防止具Aを取付ける対象として滑車Bを使用しているが、滑車の他、金車など、この巻込み防止具Aを取付けて効果が得られるものであれば他のものでも良い。また、滑車Bに出入する滑車B近くの両側のワイヤロープC夫々に巻込み防止具Aを取付けているがどちらか一方でも良い。また、本体1を鉄製としているが鉄製に限らず、他の金属から成るものでも良い。
【0027】
さらに、滑車の内部を挿通する線条体としてワイヤロープCを使用しているが、線条体としてはワイヤロープに限るものでは無く、他のロープ、ワイヤなどでももちろん良い。
【0028】
また、上記実施の形態例2において、凹凸形状の係止具として相対向する他方の端縁に爪10、10を夫々互い違いに取り付け、これらの端縁を閉じた際、各爪10、10が相対向する端縁の内側に入り込むようにしたが、係止具としてはこれらの構成に限るものでは無く、相対向する端縁を確実に係止できるものであれば他の凹凸形状の構成によるものでも良い。
【符号の説明】
【0029】
A 巻込み防止具 A´ 巻込み防止具 B 滑車
C ワイヤロープ
1 本体 2 蝶番 3 ボルト
4 ナット 5 アーム部 6 ボルト
7 ナット 8 磁石 9 硬質ウレタン材
10 爪