【実施例1】
【0011】
本開示に係るレンズメータの一実施形態としての実施例1のレンズメータ10を、
図1から
図9を用いて説明する。まず、実施例1のレンズメータ10の構成を説明する。
【0012】
[全体構成]
レンズメータ10は、
図1に示すように、装置本体11を有する。装置本体11では、前面上部に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなりタッチパネル式の表示画面12aとされた表示部12が設けられている。表示画面12aには、被検レンズL(
図3参照)の光学特性値(球面度数、円柱度数、円柱軸角度、プリズム度数、プリズム基底方向等)等を示す後述するオブジェクト画像IO、撮像された被検レンズLの被検レンズ画像IL(以下では、単にレンズ画像ILという)、そのレンズ画像ILにオブジェクト画像IOを重畳した重畳画像IS等が表示される(
図7等参照)。また、表示画面12aには、測定モードを切り換えるためのモード切換ボタンや、測定の開始や停止等の操作を行うための測定ボタンや、後述する印字部42(
図4参照)に測定結果等を印字させるための操作ボタン等の各種操作用のボタン等をアイコンで示す操作部13が表示される(
図7等参照)。なお、この操作部13は、装置本体11に適宜ボタンやスイッチ等を設けて構成してもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0013】
装置本体11では、表示部12の下方に、測定光学系20(
図2参照)の各種光学部材を収納する光学部材収納部11a、11bが上下に配置されている。光学部材収納部11aは、表示部12の下方に延びて設けられ、投光光学系21と撮像部30(
図2参照)とが収納されている。光学部材収納部11bは、光学部材収納部11aと間隔を置いた下方に設けられ、受光光学系22(
図2参照)が収納されている。光学部材収納部11bの上端部には、円錐筒台状とされて被検レンズLが載せられるレンズ受け14が一体に設けられている。
【0014】
装置本体11の前面では、レンズ受け14の後側の位置にレンズテーブル15が設けられている。レンズテーブル15は、レンズ受け14に載せられた被検レンズLが押し当てられる箇所で、操作レバー15aを回転操作することにより前後方向での位置調整が可能になっている。なお、被検レンズLとしては、円形の未加工レンズや眼鏡用に研削加工されたレンズ、或いは眼鏡フレームに枠入れされたレンズ等が適用される。被検レンズLは、光学特性値の測定精度を高めるために、レンズ光軸Llが後述する測定光学系20の測定光軸Lmと合致するように、レンズテーブル15に押し当てられた状態でレンズ受け14上での位置が調整される(
図2参照)。そのレンズ光軸Llは、被検レンズLにおける光学的な中心位置であり、入射した光を屈折させずに通過させる位置(プリズム値が0の位置)である。
【0015】
装置本体11では、光学部材収納部11aの下方に、レンズ押え部材16と印点装置17とが設けられている。レンズ押え部材16は、レンズ受け14上に配置された被検レンズLを上側方向から押えることで、被検レンズLを固定する。印点装置17は、レバー部材17aを操作することで、固定された被検レンズLに印点する。
【0016】
[光学系の構成]
レンズメータ10は、被検レンズLの光学特性値を測定するための測定光学系20を有する。測定光学系20は、
図2に示すように、投光光学系21と受光光学系22とを有する。
【0017】
投光光学系21は、被検レンズLに対して測定光を投光する光学系であって、光学部材収納部11a(
図1参照)に収納されている。投光光学系21は、光源21aとハーフミラー21bとレンズ21cとを有する。光源21aは、測定光を出射するもので、実施例1ではLED(発光ダイオード)とされている。投光光学系21は、光源21aからハーフミラー21bへと延びて、ハーフミラー21bで折り返される測定光学系20の測定光軸Lmを有し、この測定光軸Lm上にレンズ21cが設けられている。この測定光軸Lmは、レンズ受け14の上端に設けられた開口14a(
図1参照)の中心を通る位置関係とされている。投光光学系21は、光源21aから出射された測定光を、ハーフミラー21bとレンズ21cとを経ることで、所定の口径の平行光にしてレンズ受け14上に配置された被検レンズLに投光する。
【0018】
受光光学系22は、被検レンズLを通過した測定光を受光する光学系であって、光学部材収納部11b(
図1参照)においてレンズ受け14の下方に収納されている。受光光学系22は、投光光学系21からレンズ受け14の開口14a(
図1参照)を経て延びる測定光軸Lm上に、フィルタ22aとパターンプレート22bと測定用受光素子22cとを有する。パターンプレート22bは、被検レンズLを通過した測定光を複数の分割測定光束に分離するパターン板である。パターンプレート22bは、
図3に示すように、縦横に(2次元的に)所定の間隔で配置された複数の円形の開口部22dが設けられて形成され、実施例1では7つの開口部22dが設けられている。受光光学系22は、被検レンズLを透過した測定光を、フィルタ22aとパターンプレート22bとを経ることで、複数の分割測定光束に分離(変換)させて測定用受光素子22cに受光させる。
【0019】
測定用受光素子22cは、この複数の分割測定光束を受光して電気信号(画像信号)に変換して出力する。この画像信号には、受光した複数の分割測定光束のそれぞれについての受光位置及び受光像の形状を示す情報が含まれている。この情報は、測定用受光素子22cの画素上の位置座標として表現される。ここで、各分割測定光束は、測定用受光素子22c上での受光位置が被検レンズLの光学特性値に応じて変位されるので、測定用受光素子22c上に形成されるパターンが縮小または拡大されたり歪んだりする。実施例1のレンズメータ10(その後述する制御部41(光学特性算出部44))は、この複数の分割測定光束の投影パターンを解析することにより、被検レンズLの光学特性値を求める。
【0020】
実施例1では、測定光学系20の投光光学系21において、レンズ21cからハーフミラー21bを透過した直線上に撮像部30(撮像装置)が設けられている。撮像部30は、例えば単眼式のデジタルカメラであり、撮像光学系31と撮像素子32とを有する。撮像光学系31は、複数のレンズで構成され、投光光学系21のレンズ21cと協働して、レンズ受け14上に置かれた被検レンズLの被写体像を撮像素子32上に形成する。撮像光学系31は、実施例1では、レンズ受け14上の水平面と平行な面に沿って、測定光軸Lmを中心としつつ一辺が100mmとなる正方形状の領域を撮影可能とされている。撮像素子32は、撮像光学系31が形成する被写体像を電気信号(画像信号)に変換して出力する。
【0021】
[制御系の構成]
レンズメータ10では、
図4に示すように、レンズメータ10の各部を統括的に制御する制御部41に、上記した表示部12と操作部13と投光光学系21の光源21aと受光光学系22の測定用受光素子22cと撮像部30の撮像素子32とに加えて、印字部42と記憶部43とが接続されている。制御部41は、内部メモリ41aまたは記憶部43に格納された制御プログラムを例えばRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、操作部13に為された操作等に従って各種の制御を行う。実施例1では、内部メモリ41aは、RAM等で構成され、記憶部43は、ROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等で構成される。各種の制御としては、被検レンズLの画像であるレンズ画像IL(静止画や動画)を取得するための撮像部30(撮像素子32)の制御や、被検レンズLを経た各分割測定光束が形成するパターンを取得するための測定光学系20(光源21aおよび測定用受光素子22c)の制御がある。また、制御としては、表示部12(表示画面12a)での表示制御や、印字部42により被検レンズLの光学特性値等を印字する印字制御や、各種のデータの記憶部43への記憶処理および記憶部43からの読出処理等の制御がある。制御部41は、上記した各制御に加えて、光学特性算出部44や画像生成部45としても機能する。
【0022】
光学特性算出部44は、受光光学系22の測定用受光素子22cから入力される画像信号、すなわち測定用受光素子22cに結像された複数の分割測定光束の像に基づいて、被検レンズLの測定箇所における球面度数、円柱度数、円柱軸角度、プリズム度数、プリズム基底方向等の光学特性値を算出する。光学特性算出部44は、測定用受光素子22cからの画像信号に含まれる複数の分割測定光束の受光位置(測定用受光素子22cの受光面上の各分割測定光束の座標を示すデータ)と、受光像の形状(各分割測定光束の受光点の形状を示すデータ)と、を解析して取得する。そして、光学特性算出部44は、取得した受光位置および受光像の形状を、被検レンズLが載せられていない状態での各分割測定光束の受光位置および各分割測定光束の受光像の形状と比較することで、被検レンズLの各測定位置の光学特性値を求める。その被検レンズLが載せられていない状態での各分割測定光束の受光位置および各分割測定光束の受光像の形状は、予め測定されて、内部メモリ41aまたは記憶部43内の制御プログラムに格納されている。
【0023】
画像生成部45は、被検レンズLの測定を補助するために表示画面12aに表示させるオブジェクト画像IOとしての、測定光学系20の測定光軸Lmの位置を示す測定光軸記号Ooと、被検レンズLのレンズ光軸Llの位置を示すレンズ光軸記号Olと、プリズム量を段階的に示すプリズムサークル記号Op(以下では、Pサークル記号Opという)と、(その各記号を示す画像)を生成する(
図7等参照)。測定光軸記号Ooは、レンズメータ10(測定光学系20)の光軸中心位置、すなわち測定光学系20において被検レンズLがないものとすると測定光軸Lmが存在する位置(パターンプレート22bにより形成されるパターンの重心位置)を示すもので、実施例1ではPサークル記号Opの中心として示される。
【0024】
レンズ光軸記号Olは、被検レンズLのレンズ光軸Llの位置を示すもので、実施例1では十字の記号とされている。このレンズ光軸記号Olは、レンズ光軸Llの位置を示すことで、被検レンズLの位置を示すレンズ位置記号として機能する。
【0025】
Pサークル記号Opは、測定光軸Lmを中心として、被検レンズLの測定光軸Lmに位置する箇所のプリズム量を段階的に示す。Pサークル記号Opは、実施例1では測定光軸Lmの位置を中心として等しいプリズム値を円形に結びつつプリズム値が大きくなるほど外側に位置するように同心状の複数の円の記号とされている。
【0026】
画像生成部45は、実施例1では、後述するように測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが近付くと、測定光軸Lmの位置(測定光軸記号Oo)を強調するように4分割した太い枠状で囲む合致記号Om(その記号を示す画像)を緑色で表示させる(
図8参照)。また、画像生成部45は、実施例1では、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが合致すると合致記号Omを桃色で表示させるとともに、レンズ光軸記号Olにおける横に延びる線をPサークル記号Opの端まで延ばしたものとする(
図9参照)。なお、合致記号Omは、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとを合致させる操作を補助するものであれば、この色や表示の態様は適宜設定すればよく、実施例1の例に限定されない。また、合致記号Omは、レンズ光軸記号Olとともに拡大して表示画面12aに表示してもよい。このように拡大する構成とすると、後述するように測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとを合致させる操作をより容易なものにできる。
【0027】
また、画像生成部45は、光学特性算出部44が算出した被検レンズLの光学特性値を表示させるオブジェクト画像IOとしての測定値表示Ov(各値を示す画像)を生成する。測定値表示Ovでは、表示画面12aの右端において、被検レンズLの光学特性値である球面度数、円柱度数、軸角度を「S、C、A」の記号の右側に表示させる。また、測定値表示Ovでは、表示画面12aの右端において、被検レンズLの光学特性値であるプリズム度数およびプリズム基底方向を「ΔP、ΔB」の記号の右側に表示させる。
【0028】
さらに、画像生成部45は、撮像部30の撮像素子32から入力される撮像信号、すなわち撮像素子32により光電変換された被写体像から、撮像部30で撮像した被検レンズLのレンズ画像ILを生成する。画像生成部45は、撮像部30により撮影された画像に対して、必要な処理や加工(例えば、座標変換、コントラスト調整、色変換(半透明やセピアカラーとする等)、明るさ調整、フィルタ処理等)を実施して所望のレンズ画像ILを生成する。画像生成部45は、実施例1では、レンズ画像ILの明るさを抑えたり薄い表示(例えば半透明やセピアカラーとする)としたりすることで、オブジェクト画像IOよりも目立たないようにレンズ画像ILを生成する。
【0029】
ここで、レンズ画像ILを生成する場合、レンズ押え部材16が被検レンズLを上方から押さえているので、被検レンズL上にレンズ押え部材16が写り込むことが考えられる。このため、実施例1のレンズメータ10では、レンズ押え部材16を板金等で形成した上方から見て細い板状の部材を組み合わせた構造とすることで、レンズ押え部材16の写り込みを最低限に留めている。特に、実施例1の撮像部30では、レンズ受け14上にピントを合わせているので、被検レンズLを上方から押さえるレンズ押え部材16にはピントは合っておらず、細い板状の部材とされることでレンズ押え部材16の写り込みを略無くすことができる。なお、写り込みを無くす構成としては、レンズ押え部材16が写る領域が予め解っているので、画像生成部45が画像処理により消してもよく、レンズ押え部材16を透明の部材で形成してもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。なお、
図7から
図9のレンズ画像ILでは、理解容易のために、レンズ受け14およびレンズ押え部材16を省略して示している。
【0030】
画像生成部45は、レンズ画像ILに、オブジェクト画像IOすなわち測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovとを重畳させて重畳画像ISを生成する。ここで、撮像部30が測定光学系20の測定光軸Lm上に設けられていることから、レンズ画像ILは、画像の中心位置が測定光軸Lmの位置と合致する。このため、画像生成部45は、レンズ画像ILにおける中心位置に測定光軸記号Ooを重畳させるとともに、そこを中心としてPサークル記号Opを重畳させる。画像生成部45は、受光光学系22の測定用受光素子22cでの測定光の受光位置に応じて、被検レンズLのプリズム値が0となる位置にレンズ光軸記号Olを重畳させ、それらの右側に測定値表示Ovを重畳させる。画像生成部45は、実施例1では、測定光軸Lm(測定光軸記号Oo)に対して被検レンズLのプリズム値が0となる位置が存在する方向であって、Pサークル記号Op上で測定した箇所のプリズム値を示す位置にレンズ光軸記号Olを表示させる。これにより、画像生成部45は、レンズ画像ILに各オブジェクト画像IOを重ね合わせた重畳画像ISを生成する。
【0031】
制御部41は、画像生成部45が生成した重畳画像IS(そのデータ)を、表示部12へと出力して表示画面12aに表示させる(
図7等参照)。表示画面12aでは、画像生成部45および制御部41が上記した動作を繰り返し行うことで、被検レンズLが移動される様子を示すレンズ画像ILと、その被検レンズLの位置に応じてレンズ光軸Llが移動する様子を示すレンズ光軸記号Olと、がリアルタイムの動画として写し出される(
図7等参照)。
【0032】
[画像制御処理構成]
次に、レンズメータ10において、制御部41の制御下で重畳画像ISを表示させる表示処理(表示方法)について、
図5を用いて説明する。この表示処理は、内部メモリ41aまたは記憶部43に記憶されたプログラムに基づいて、制御部41が実行する。以下では、この
図5のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。この
図5のフローチャートは、レンズメータ10において被検レンズLの測定が開始されることにより開始される。
【0033】
ステップS1では、撮像部30による被検レンズLの画像であるレンズ画像ILの取得を開始して、ステップS2へ進む。
【0034】
ステップS2では、各種のデータを取得して、ステップS3へ進む。ステップS2では、測定光学系20からの被検レンズLの測定データおよび撮像部30からのレンズ画像ILのためのデータを取得する。
【0035】
ステップS3では、被検レンズLの各光学特性値を算出して、ステップS4へ進む。ステップS3では、光学特性算出部44が、被検レンズLの測定データすなわち測定用受光素子22cから入力される画像信号に基づいて、被検レンズLの測定箇所における球面度数、円柱度数、円柱軸角度、プリズム度数、プリズム基底方向等の光学特性値を算出する。
【0036】
ステップS4では、各オブジェクト画像IOを生成して、ステップS5へ進む。ステップS4では、画像生成部45が、オブジェクト画像IOとしての測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovとを生成する。ここで、画像生成部45は、後述する
図6のフローチャートに示すように、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとの接近度合に応じて合致記号Omも適宜生成する。
【0037】
ステップS5では、レンズ画像ILに各オブジェクト画像IOを重畳させた重畳画像ISを生成して、ステップS6へ進む。ステップS5では、画像生成部45が、レンズ画像ILを生成し、そのレンズ画像ILに、各オブジェクト画像IOとしての測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovと(場合によっては合致記号Omも)を重ね合わせて、重畳画像ISを生成する。
【0038】
ステップS6では、重畳画像ISを、表示部12(その表示画面12a)に表示させて、ステップS7へ進む。
【0039】
ステップS7では、被検レンズLの測定が終了されたか否かを判断し、YESの場合はステップS8へ進み、NOの場合はステップS2に戻る。ステップS7では、この測定が終了されたか否かの判断は、例えば、操作部13から測定を終了させる旨の操作の信号を受けたり、被検レンズLがレンズ受け14上からはずされたりすると終了させるものと判断し、それ以外の場合には終了していないものと判断する。なお、この測定が終了されたか否かの判断は、操作部13から取得した被検レンズLの各光学特性値を、印字部42で印字させたりそのデータを外部に送信させたりする操作の信号を受けると、終了させるものと判断してもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0040】
ステップS8では、撮像部30による被検レンズLの画像であるレンズ画像ILの取得を終了して、この眼情報取得処理を終了する。
【0041】
次に、レンズメータ10において、画像生成部45が各オブジェクト画像IOを生成する生成処理(生成方法)(
図5のフローチャートのステップS4)について、
図6を用いて説明する。以下では、この
図6のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。
【0042】
ステップS11では、合致記号Omを除く他の各オブジェクト画像IOを生成して、ステップS12へ進む。ステップS11では、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovとを生成する。
【0043】
ステップS12では、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが遠いか否かを判断し、YESの場合はステップS13へ進み、NOの場合はステップS14へ進む。ステップS12では、測定光学系20からの被検レンズLの測定データに基づいて、測定光軸記号Ooが示す測定光軸Lmの位置とレンズ光軸記号Olが示すレンズ光軸Llの位置とが所定の距離(第1距離)よりも離れているか否かを判断する。この第1距離は、予め定められて内部メモリ41aまたは記憶部43に記憶されている。
【0044】
ステップS13では、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが遠いので、合致記号Omを生成することなくこの生成処理を終了する。このため、この後の
図5のフローチャートのステップS5では、レンズ画像ILに、各オブジェクト画像IOとしての測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovとが重ね合わせられた重畳画像ISが生成される。
【0045】
ステップS14では、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが合致したか否かを判断し、YESの場合はステップS16へ進み、NOの場合はステップS15へ進む。ステップS14では、測定光学系20からの被検レンズLの測定データに基づいて、測定光軸記号Ooが示す測定光軸Lmの位置とレンズ光軸記号Olが示すレンズ光軸Llの位置とが合致(厳密な意味での合致に限定されず極めて小さな所定の距離(第2距離)よりも接近しているか否かで判断してもよい)しているか否かを判断する。
【0046】
ステップS15では、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが第1距離よりも近付きつつ合致はしていないので、緑色の合致記号Omを生成して、この生成処理を終了する。このため、この後の
図5のフローチャートのステップS5では、レンズ画像ILに、各オブジェクト画像IOとしての測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovと緑色の合致記号Omとが重ね合わせられた重畳画像ISが生成される。
【0047】
ステップS16では、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが合致したので、桃色の合致記号Omを生成して、この生成処理を終了する。このため、この後の
図5のフローチャートのステップS5では、レンズ画像ILに、各オブジェクト画像IOとしての測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovと桃色の合致記号Omとが重ね合わせられるとともにレンズ光軸記号Olの横に延びる線が端まで延びるものとされた重畳画像ISが生成される。
【0048】
次に、レンズメータ10において、被検レンズLの光学特性値を測定する際の動作の一例を説明する。使用者(検者)は、レンズメータ10において、操作部13で被検レンズLの測定を開始する旨の操作を行い、被検レンズLをレンズ受け14の上に載せつつ被検レンズLの周縁部をレンズテーブル15に押し当てる。実施例1では、被検レンズLとして、
図7等に示すように、メガネとして構成された一対のレンズを適用する。
【0049】
すると、レンズメータ10は、
図5のフローチャートに示す表示処理を実行して、ステップS1→S2→S3へと進んで被検レンズLの各光学特性値を算出し、ステップS4へと進んで各オブジェクト画像IOを生成する。すると、画像生成部45は、被検レンズLの測定を開始した時点では測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが遠いので、
図6のフローチャートに示す生成処理において、ステップS11→S12→S13へと進んで、合致記号Omを生成することなく測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovとを生成する。そして、
図5のフローチャートでステップS5→S6へと進むことで、
図7に示すように、生成したレンズ画像ILに各オブジェクト画像IOとしての測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovとを重ね合せた重畳画像ISを表示画面12aに表示させ、ステップS7→S2へと進んで上記した動作を繰り返す。
【0050】
被検レンズLの測定を開始した時点では、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが離れているので、使用者は、表示画面12aを見ながら測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが近付くようにレンズ受け14上の被検レンズLをレンズテーブル15とともに移動させる。このとき、表示画面12aには、レンズ画像ILも写し出されているので、使用者は、表示画面12aを見るだけで被検レンズLが実際にどのように移動しているのかを容易にかつ適切に把握することができ、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとを近付ける作業を容易なものにできる。
【0051】
測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが近付くと、画像生成部45は、
図6のフローチャートでステップS11→S12→S14→S15へと進んで、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovとともに緑色の合致記号Omを生成する。そして、
図5のフローチャートでステップS5→S6へと進むことで、
図8に示すように、生成したレンズ画像ILに各オブジェクト画像IOとしての測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovと緑色の合致記号Omとを重ね合せた重畳画像ISを表示画面12aに表示させ、ステップS7→S2へと進んで上記した動作を繰り返す。使用者は、表示画面12aを見ることで、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとがかなり近付いてきたことを把握でき、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが合致するように引き続き被検レンズLを移動させる。
【0052】
そして、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとが合致すると、画像生成部45は、
図6のフローチャートでステップS11→S12→S14→S16へと進んで、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovとともに桃色の合致記号Omを生成する。そして、
図5のフローチャートでステップS5→S6へと進んで、
図9に示すように、生成したレンズ画像ILに各オブジェクト画像IOとしての測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opと測定値表示Ovと桃色の合致記号Omとを重ね合せられるとともにレンズ光軸記号Olの横に延びる線が端まで延びる重畳画像ISを表示画面12aに表示させ、ステップS7→S2へと進んで上記した動作を繰り返す。使用者は、表示画面12aを見ることで、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olと合致したことを把握でき、被検レンズLの正確な光学特性値が得られることがわかる。そして、使用者は、操作部13を操作して被検レンズLの各光学特性値を取得し、適宜印字部42から印字させて、測定を終了する。
【0053】
このように、レンズメータ10は、被検レンズLの測定を補助するために表示画面12aに表示させる各オブジェクト画像IOすなわち測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号OlとPサークル記号Opとに、レンズ画像ILを重ね合せた重畳画像ISを表示画面12a(表示部12)に表示させる。ここで、レンズメータ10では、球面度数がマイナスである円柱レンズと球面度数がプラスである円柱レンズとが90度で交差する乱視レンズ(MIXレンズ)では、プラス度数とマイナス度数とが複合されているので、方向によっては測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとを近付けるように被検レンズLを移動させても、Pサークル記号Op上で合致させることができなくなる。また、レンズメータ10では、球面度数が異なる2つの被検レンズLでは各被検レンズLを同じ量だけ移動させてもレンズ光軸記号OlのPサークル記号Op上での移動量が異なる。これに対し、レンズメータ10は、被検レンズLの移動の態様とそれに伴うレンズ光軸記号Olの移動の態様との双方を表示画面12aで同時に見せることができるので、被検レンズLの移動に対するレンズ光軸記号Olの移動方向や移動量を容易に把握させることができる。これにより、レンズメータ10は、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとを近付けるようにレンズ受け14上の被検レンズLをレンズテーブル15とともに移動させる作業を容易なものにできる。
【0054】
本開示に係るレンズメータの実施例1のレンズメータ10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0055】
レンズメータ10は、撮像部30で取得したレンズ画像ILに重ねて、測定光学系20の測定光軸Lmの位置を示す測定光軸記号Ooと、被検レンズLのレンズ光軸Llの位置を示すレンズ位置記号(実施例1ではレンズ光軸記号Ol)と、を表示部12に表示させる。このため、レンズメータ10は、表示部12を見るだけで、測定光軸記号Ooに対する被検レンズLの移動の態様を把握させることができる。これにより、レンズメータ10は、不慣れな使用者であっても実際の被検レンズLを見ることなく測定光学系20の測定光軸Lmの位置と被検レンズLのレンズ光軸Llの位置とを合致させることができる。また、レンズメータ10は、レンズ画像ILを表示部12に表示させるので、実際の被検レンズLを見ることなく、被検レンズLが適切な姿勢(傾き)であるかを確認することができる。特に、レンズメータ10は、レンズ位置記号として、被検レンズLのプリズム値が0となる位置にレンズ光軸記号Olを表示させるので、不慣れな使用者であっても実際の被検レンズLを見ることなく測定光軸Lmの位置とレンズ光軸Llの位置とを、より適切に合致させることができる。
【0056】
また、レンズメータ10は、被検レンズLが移動される様子を示すレンズ画像ILと、その被検レンズLの位置に応じてレンズ光軸Ll(その位置)が移動する様子を示すレンズ光軸記号Olと、をリアルタイムの動画として表示部12に写し出すことができる。このため、レンズメータ10は、表示部12を見るだけで、被検レンズLの移動の態様と、それに伴う測定光軸記号Ooに対するレンズ光軸記号Olの移動の態様と、の双方をより適切に把握させることができる。
【0057】
さらに、レンズメータ10は、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとに加えて、プリズム量を段階的に示すPサークル記号Opを表示部12に表示させる。このため、レンズメータ10は、被検レンズLの測定箇所におけるプリズム量も併せて把握させることができるので、測定光軸Lmの位置とレンズ光軸Llの位置とを合致させるための被検レンズLの移動をより容易なものにできる。
【0058】
レンズメータ10は、測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとの接近の度合に応じて表示部12での表示の態様を変化させる。このため、レンズメータ10は、測定光軸Lmの位置とレンズ光軸Llの位置との接近の度合を一見して把握させることができるので、レンズ光軸Llの位置を測定光軸Lmの位置に合致させるための被検レンズLの移動をより容易なものにできる。
【0059】
レンズメータ10は、測定光学系20の投光光学系21において、レンズ21cからハーフミラー21bを透過した直線上に撮像部30を設けている。このため、レンズメータ10は、レンズ画像ILの中心位置と測定光軸Lmとが合致するので、レンズ画像ILの取得を容易なものにできるととともに、レンズ画像ILに測定光軸記号OoやPサークル記号Opを重ね合わせることを容易なものにできる。また、レンズメータ10は、撮像部30を設けることを容易なものとすることができる。
【0060】
レンズメータ10は、レンズ画像ILとして、レンズ受け14に載せられつつレンズテーブル15に押し当てられた状態の被検レンズLを表示部12に表示させる。このため、レンズメータ10は、レンズ画像ILにおいて、被検レンズLとレンズ受け14との位置関係を確認することで、被検レンズLがレンズ受け14から浮いていないか等のレンズ受け14上で適切な姿勢であるか否かを確認させることができる。また、レンズメータ10は、レンズ画像ILにおいて、被検レンズLとレンズテーブル15との位置関係を確認することで、被検レンズLが傾いていないかを確認させることができる。これらのことは、測定光学系20による被検レンズLの光学特性値(球面度数、円柱度数、円柱軸角度、プリズム度数、プリズム基底方向等)の測定精度の確保を可能とする。このため、レンズメータ10は、測定光軸Lmの位置とレンズ光軸Llの位置とを合致させることに加えて、レンズ光軸Llの位置以外での測定精度を確保することができ、それに基づくPサークル記号Op上の適切位置でのレンズ光軸記号Olの表示を可能にできる。
【0061】
したがって、本開示に係るレンズメータの一実施例としてのレンズメータ10では、表示部12において実際の被検レンズLの動きを把握しつつ測定光学系20の測定光軸Lmの位置と被検レンズLのレンズ光軸Llの位置とを合致させることができる。
【0062】
以上、本開示のレンズメータを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0063】
例えば、実施例1では、測定光学系20の投光光学系21におけるレンズ21cからハーフミラー21bを透過した直線上に撮像部30を設けていたが、レンズ受け14上に置かれた被検レンズLの画像を取得できるものであれば、例えば、
図1に示すように、レンズテーブル15の内部や後方の設置箇所30Aに設けてもよく、レンズ押え部材16の内部の設置箇所30Bに設けてもよく、他の箇所に設けてもよく、実施例1の構成に限定されない。また、撮像部(30)としては、複数の撮像部を設けるとともに、各撮像部が取得した画像を繋ぎ合わせることでレンズ受け14上に置かれた被検レンズLの画像(レンズ画像IL)の取得(形成)を可能とするものでもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0064】
また、実施例1では、レンズ位置記号として、測定光軸Lm(測定光軸記号Oo)に対して被検レンズLのプリズム値が0となる位置が存在する方向であって、Pサークル記号Op上で測定した箇所のプリズム値を示す位置にレンズ光軸記号Olを表示させている。しかしながら、レンズ位置記号は、測定光学系20の測定光軸Lmの位置と被検レンズLのレンズ光軸Llの位置とを合致させることを補助するように被検レンズLの位置を示すものであればよく、実施例1の構成に限定されない。レンズ位置記号の他の例として、画像生成部45が、Pサークル記号Opが示すプリズム座標系に替えて、偏心量(mm)を表すXY座標上にレンズ光軸記号Olを表示させることがあげられる。その偏心量は、公知のプレンティスの公式により、球面度数およびプリズム値から求める(変換する)ことができる。この場合、画像生成部45は、オブジェクト画像IOとして、測定光軸Lmを中心とし、
図7等を正面視して横方向をX軸、縦方向をY軸として、それぞれ偏心量(mm)を表すXY座標を示すXY座標記号を生成する。そして、画像生成部45は、測定光軸Lm(測定光軸記号Oo)に対して偏心量が0となる位置が存在する方向であって、XY座標記号上で変換された偏心量を示す位置にレンズ光軸記号Olを表示させる。このとき、レンズ画像ILの縮尺とXY座標記号の縮尺とを揃える構成とすると、レンズ光軸記号Olがレンズ画像ILにおける実際のレンズ光軸Llの位置を示すものとなる。このような構成とすると、偏心量(mm)を把握することができるので、不慣れな使用者であっても実際の被検レンズLを見ることなく測定光軸Lmの位置とレンズ光軸Llの位置とを、より適切に合致させることができる。
【0065】
さらに、実施例1では、上記した測定光軸記号Ooとレンズ光軸記号Olとを表示部12に表示させている。しかしながら、測定光軸記号(Oo)は測定光学系20の測定光軸Lmの位置を示すものであればよく、レンズ光軸記号(Ol)は被検レンズLのレンズ光軸Llの位置を示すものであればよく、実施例1の構成(態様)に限定されない。
【0066】
実施例1では、撮像部30が、レンズ受け14上の水平面と平行な面に沿って、測定光軸Lmを中心としつつ一辺が100mmとなる正方形状の領域を撮影するものとされている。しかしながら、撮像部30は、レンズ受け14上に置かれた被検レンズLの画像(レンズ画像IL)を取得できるものであれば、撮影する位置や領域は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0067】
実施例1では、測定光学系20が、投光光学系21がレンズ受け14上に配置された被検レンズLにおける小さな範囲に平行光を投光することで被検レンズLの光学特性値の測定を可能としている。しかしながら、測定光学系(20)は、被検レンズLの光学特性値の測定を可能とするものであればよく、実施例1の構成に限定されない。その他の一例としては、ハルトマンプレートを用いて被検レンズLにおける広い範囲に平行光を投光することで被検レンズLにおける広い範囲の光学特性値の測定を可能として光学特性値の分布(マッピング画像)を形成するものがあげられる。