(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像制御部は、前記レンズ画像に基づいて前記被検レンズの外周縁を検出し、前記重畳画像に前記被検レンズの外周縁を含めることを特徴とする請求項1に記載のレンズメータ。
前記画像制御部は、前記マッピング画像と前記レンズ画像との少なくとも一方を半透明に加工し、半透明に加工された画像が前面を前面に位置させて前記マッピング画像と前記レンズ画像とを重畳することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレンズメータ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のレンズメータを実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
[レンズメータの全体構成]
以下、
図1に基づき、実施例1のレンズメータ1の全体構成を説明する。
図1に示すレンズメータ1は、被検レンズLの光学特性を測定し、光学測定値を算出すると共に、この光学測定値の分布をマッピング画像で表示するものである。このレンズメータ1は、装置本体2を有する。
【0011】
装置本体2は、前面上部に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等からなり、タッチパネル式の表示画面3aを有する表示部3が設けられている。表示画面3aには、被検レンズLの光学特性値(球面度数、円柱度数、円柱軸角度、プリズム度数、加入度数、プリズム基底方向等)の数値データや、被検レンズLの光学特性値の分布を示すマッピング画像、被検レンズLのレンズ画像、マッピング画像にレンズ画像を重畳した重畳画像等の各種画像データが表示される。また、表示画面3aには、測定の開始や停止等の操作を行うための操作ボタンや、測定モードを切り換えるためのモード切替ボタン、表示する重畳画像を選択するための選択ボタン等をアイコンで示す操作部が表示される。なお、この操作部は、装置本体2に適宜ボタンやスイッチ等を設けて構成してもよい。
【0012】
装置本体2は、上部2aに投光光学系10(
図2参照)が収容され、下部2bであって、投光光学系10の下方に対向する位置に受光光学系20(
図2参照)が収容されている。なお、この投光光学系10及び受光光学系20により、被検レンズLの光学特性を測定する測定光学系Kが構成されている。
さらに、この装置本体2の上部2aには、被検レンズLの外観を撮像する撮像部30(撮像装置、
図2参照)が収容されている。
【0013】
そして、装置本体2の中間部には、被検レンズLをセットするレンズセット空間2cが形成され、このレンズセット空間2cの内側にレンズ保持機構4が設けられている。レンズ保持機構4は、上下方向に回動して被検レンズLを上方向から押えるレンズ押え部材4aと、被検レンズLを下方から点支持する支持ピン4bと、レンズセット空間2c内での被検レンズLの位置決めを補助するレンズ保持部材4cとを有している。ここでは、下側の支持ピン4b上に被検レンズLを載置し、操作ボタンをON操作すると、レンズ押え部材4aが駆動機構によって駆動されて下方に回動すると共に、レンズ保持部材4cの位置が駆動機構によって駆動され、被検レンズLのセット位置(測定光学系Kの測定光軸Lmに対する被検レンズLの位置)を自動的に調整する。
なお、この実施例1では、被検レンズLとして、
図1に示すように、メガネフレームFの左右のレンズ枠FL,FRに枠入れされた一対のレンズLL,LRを適用する。そのため、レンズ押え部材4a及び支持ピン4bは、一対のレンズLL,LRに対応して一対設けられている。
【0014】
また、この実施例1のレンズメータ1は、レンズセット空間2c内に、レンズ保持機構4に保持された被検レンズLに印点を行う印点装置や、メガネフレームFに設けられた鼻当てを支持する鼻当支持部を設けてもよい。
【0015】
[測定光学系の詳細構成]
以下、
図2及び
図3に基づき、実施例1のレンズメータ1の測定光学系Kの詳細構成を説明する。実施例1の測定光学系Kは、被検レンズLの光学特性値を測定するためのものであり、上述のように、投光光学系10と、受光光学系20とを有している。また、この実施例1のレンズメータ1は、一対の測定光学系Kを有しており、被検レンズLとして適用した一対のレンズLL,LRを同時に測定可能になっている。
【0016】
投光光学系10は、被検レンズLに対して測定光を投光する光学系であって、
図2に示すように、測定光を出射する光源11と、この光源11からの測定光を平行光にして被検レンズLに投光するコリメータレンズ12とを有している。ここでは、光源11は、LED(発光ダイオード)により構成されている。なお、レンズメータ1のコンパクト化のため、ミラーを用いて光源11からの測定光を反射させて光路を屈折させてもよい。
【0017】
受光光学系20は、測定光軸Lm上に配置されると共に、被検レンズLを通過した測定光を受光する光学系であって、
図2に示すように、ハルトマンプレート21(パターン板)と、スクリーン22と、フィールドレンズ23(結像光学系)と、結像レンズ24(結像光学系)と、CCD(Charge Coupled Devise、測定用受光素子)25とを有している。
【0018】
ハルトマンプレート21は、被検レンズLを通過した測定光を複数の分割測定光束に分離するパターン板である。このハルトマンプレート21には、
図3に示すように、2次元的に等間隔に配置された多数の円形の開口部21aが形成されている。開口部21aは、例えば2ミリメートル間隔で縦横に配列されている。被検レンズLを透過した測定光は、ハルトマンプレート21に形成された開口部21aを透過することで、複数の分割測定光束に分離(変換)される。
【0019】
スクリーン22には、ハルトマンプレート21の開口部21aを透過することで分離された複数の分割測定光束が投影される。複数の分割測定光束のそれぞれは、被検レンズLの光学特性値に応じてスクリーン22における投影位置が変位される。それにより、この複数の分割測定光束のスクリーン22上における投影パターンが縮小/拡大されたり歪んだりすることとなる。実施例1のレンズメータ1は、当該複数の分割測定光束の投影パターンを解析することにより、被検レンズLの光学特性値を求めるように構成された装置である。
【0020】
スクリーン22に投影された複数の分割測定光束は、結像光学系であるフィールドレンズ23と結像レンズ24とを介して、スクリーン22と共役に配置されたCCD25に結像される。
【0021】
CCD25は、この複数の分割測定光束を受光して電気信号(画像信号)に変換して出力する。この画像信号には、受光した複数の分割測定光束のそれぞれについての受光位置及び受光像の形状を示す情報が含まれている。この情報は、CCD25の画素上の位置座標として表現される。
【0022】
[撮像部の詳細構成]
以下、
図2に基づき、実施例1のレンズメータ1の撮像部30の詳細構成を説明する。
撮像部30は、一対の投光光学系10の間に配置され、各投光光学系10の測定光軸Lmと平行な方向からレンズ保持機構4に保持された被検レンズLを撮像する。ここでは、レンズ保持機構4に保持された被検レンズLの一対のレンズLL,LRの全体を同時に撮像可能な位置に取り付けられている。
この撮像部30は、例えば単眼式のデジタルカメラであり、撮像光学系31と、撮像素子32と、を有している。
【0023】
撮像光学系31は、複数のレンズから構成され、レンズ保持機構4の保持された被検レンズLの被写体像を撮像素子32上に形成する。
【0024】
撮像素子32は、撮像光学系31が形成する被写体像を電気信号(画像信号)に変換して出力する。
【0025】
[制御系の詳細構成]
以下、
図4に基づき、実施例1のレンズメータ1の制御系の詳細構成を説明する。
実施例1のレンズメータ1は、CPU(Central Processing Unit)40と、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等により構成されて必要な制御プログラムが格納された記憶部41とを有している。
【0026】
CPU40は、記憶部41に格納された制御プログラムを、例えばRAM(Random Access Memory)よって構成された内部メモリ上に展開することにより、レンズメータ1の各部の動作制御や光学特性値の算出処理などを実行する。CPU40は、この制御プログラムにしたがって、制御部42、光学特性算出部43、マッピング形成部44、画像制御部45として動作する。
【0027】
制御部42は、レンズメータ1の各部の動作を統括的に制御する。すなわち、例えば、投光光学系10の光源11の点灯/消灯動作の制御、CCD25から入力される画像信号やマッピング形成部44にて形成されるマッピング画像、撮像素子32から入力される撮像信号、画像制御部45にて形成される重畳画像等の記憶部41への記憶処理/読出処理等を行う。
【0028】
光学特性算出部43は、CCD25から入力される画像信号、つまり、CCD25に結像された複数の分割測定光束の像に基づいて、被検レンズLの各部の球面度数、円柱度数、円柱軸角度、プリズム度数、プリズム基底方向等の光学特性値を算出する処理を行う。算出された光学測定値の数値データは、マッピング形成部44及び画像制御部45へと出力される。
ここで、画像信号には、受光した複数の分割測定光束のそれぞれについての受光位置及び受光像の形状を示す情報が含まれている。この情報は、CCD25の画素上の位置座標として表現される。各分割測定光束は、CCD25上での受光位置が被検レンズLの光学特性値に応じて変位されるので、CCD25上に形成されるパターンが縮小または拡大されたり歪んだりする。この光学特性算出部43では、この複数の分割測定光束の投影パターンを解析することにより、被検レンズLの光学特性値を求める。
【0029】
マッピング形成部44は、被検レンズLの光学特性値の分布を表すマッピング画像を形成する処理を行う。このマッピング形成部44では、光学特性算出部43により算出された被検レンズLの各測定位置の光学特性値のうち、光学特性値が等しい測定位置を、等高線のように等度数線によって結ぶことで、被検レンズLの光学特性値の分布を表すマッピング画像を形成する。形成されたマッピング画像の画像データは、画像制御部45へと出力される。
なお、
図5に例示するマッピング画像は、球面度数(S)及び円柱度数(C)の分布を示す複合マップである。
【0030】
画像制御部45は、マッピング形成部44によって形成されたマッピング画像と、撮像部30によって撮像された被検レンズLのレンズ画像とを重畳し、重畳画像を生成すると共に、生成した重畳画像を表示部3に表示させるための制御を行う。この画像制御部45は、レンズ画像取得部45aと、光学特性データ取得部45bと、レンズ画像データ取得部45cと、重畳画像生成部45dと、表示制御部45eとを有している。
【0031】
レンズ画像取得部45aは、撮像部30の撮像素子32から入力される撮像信号、つまり、撮像素子32によって光電変換された被写体像から、撮像部30によって撮像されたレンズ画像を取得する。すなわち、このレンズ画像取得部45aは、撮像部30によって撮影された画像に対して、必要な処理や加工(例えば、座標変換、コントラスト調整、色変換(半透明やセピアカラーとする等)、明るさ調整、フィルタ処理等。レンズ画像をマッピング画像よりも目立たなくさせる処理を含む。)を実施し、所望のレンズ画像を取得する。取得したレンズ画像の画像データは、レンズ画像データ取得部45c及び重畳画像生成部45dへと出力される。なお、取得するレンズ画像は静止画像である。
【0032】
光学特性データ取得部45bは、光学特性算出部43にて算出された光学特性値に基づいて、被検レンズLの特徴ポイント(特徴点)を検出すると共に、この特徴ポイントのマッピング画像上での座標位置を検出する。検出した特徴ポイントの座標位置情報は、重畳画像生成部45dへと出力される。なお、「被検レンズLの特徴ポイント(特徴点)」とは、被検レンズLにおいて光学的に特徴のある部分であり、被検レンズLの遠用度数測定位置(F点)や近用度数測定位置(N点)、遠用ポイント、近用ポイント、累進帯の中心線、累進帯長等が挙げられる。
【0033】
レンズ画像データ取得部45cは、レンズ画像取得部45aにて取得されたレンズ画像に基づき、レンズ画像内に写っている被検レンズLの外周縁を検出し、この外周縁のレンズ画像上での座標位置を検出する。また、このレンズ画像データ取得部45cでは、レンズ画像に基づいて、被検レンズLに指標が設けられているか否かを判定し、指標が設けられていると判定した場合には、レンズ画像上での指標の座標位置を検出する。検出した指標の座標位置情報は、重畳画像生成部45dへと出力される。なお、「被検レンズL上の指標」とは、印点インクによる印点マークや、アイポイントを示すマジック印、ペイント印等、被検レンズLに直接描かれたり、刻印されたり、貼付されたりした目印である。
【0034】
重畳画像生成部45dは、マッピング形成部44によって形成されたマッピング画像と、レンズ画像取得部45aによって取得された撮影画像とを重畳し、マッピング画像とレンズ画像が重ねられた第1重畳画像を生成する。このとき、被検レンズLに対するマッピング画像の倍率と、被検レンズLに対するレンズ画像の倍率とを一致させ、マッピング画像とレンズ画像の倍率を合わせた状態とする。また、マッピング画像とレンズ画像を重畳するときには、まず、マッピング画像内にマップ内基準位置を設定すると共に、レンズ画像内に撮像内基準位置を設定する。そして、マップ内基準位置と撮像内基準位置とが予め設定した位置関係になるよう、マッピング画像の配置(位置、向き等)を決定し、決定した配置でマッピング画像をレンズ画像に重畳する。
なお、
図5に第1重畳画像の一例を示す。
図5に示す第1重畳画像では、レンズ画像S内のうち、Mで示す領域にマッピング画像を重畳する。また、この
図5に示す第1重畳画像では、レンズ画像S内に任意の表示オブジェクトHを重ねて表示している。ここでは、「表示オブジェクトH」において、被検レンズLの一対のレンズLL,LRのそれぞれの光学特性値である球面度数(S)、円柱度数(C)、円柱軸角度(A)、プリズム度数(P)、加入度数(ADD)を数値によって表示する。
【0035】
また、この重畳画像生成部45dでは、被検レンズLの特徴ポイントのマッピング画像上での座標位置を示すオブジェクト画像と、被検レンズLに設けられた指標のレンズ画像上での座標位置を示すオブジェクト画像とを第1重畳画像に重ね合わせ、第1重畳画像とこれらのオブジェクト画像を含む第2重畳画像を生成する。このとき、各オブジェクト画像の重畳位置は、マッピング画像又はレンズ画像上のそれぞれの座標位置に一致するように設定される。
なお、
図6に第2重畳画像の一例を示す。
図6に示す第2重畳画像では、第1重畳画像に対し、遠用ポイントの座標位置を示すオブジェクト画像Aと、近用ポイントの座標位置を示すオブジェクト画像Bと、累進帯中心線の座標位置を示すオブジェクト画像Cと、実際のメガネ装用者のアイポイントを示すマジック印の座標位置を示すオブジェクト画像Dとが重ね合わされている。
【0036】
さらに、この重畳画像生成部45dは、レンズ画像データ取得部45cにて検出されたレンズ画像内の被検レンズLの外周縁の座標位置に基づいて、生成した第1重畳画像及び第2重畳画像を、被検レンズLの外周縁の少なくとも一部が含まれる画像に調整する。すなわち、レンズ画像及びマッピング画像を拡大・縮小・表示範囲の調整を行うことで、被検レンズLの外周縁の少なくとも一部が、第1重畳画像及び第2重畳画像のいずれにも写るようにする。
そして、生成した第1重畳画像及び第2重畳画像の画像データは、適宜表示制御部45eへと出力される。
【0037】
なお、この重畳画像生成部45dにおいて、マッピング画像及びレンズ画像を両方とも半透明に画像加工し、半透明状態のマッピング画像とレンズ画像を重ねることで、両者が重畳した領域であっても、両方の画像が目視できる重畳画像を生成してもよい。
また、マッピング画像及びレンズ画像のいずれか一方を半透明に加工し、マッピング画像とレンズ画像を重ねる際、半透明状態の画像が前面に位置するように重畳することで、両者が重畳した領域であっても、両方の画像が目視できる重畳画像を生成してもよい。
さらに、半透明状態のマッピング画像とレンズ画像を重ねた上に、被検レンズLの特徴ポイントの座標位置を示すオブジェクト画像や、指標の座標位置を示すオブジェクト画像を重畳してもよい。
【0038】
表示制御部45eは、重畳画像生成部45dにて生成された第1重畳画像又は第2重畳画像の画像データを表示部3へと出力し、表示部3の表示画面3aに表示させる。
なお、第1重畳画像の画像データを出力するか、第2重畳画像の画像データを出力するかは、制御部42によって制御する。
【0039】
[画像制御処理]
以下、実施例1のレンズメータ1にて行われる画像制御処理の一例を、
図7フローチャートを用いて具体的に説明する。
【0040】
ステップS1では、制御部42により、装置本体2に設けられた測定ボタンがON操作されたか否かを判断する。YES(ON操作あり)の場合は被検レンズLの光学測定が指示されたとしてステップS2へ進み、NO(ON操作なし)の場合は被検レンズLの光学測定が指示されていないとしてステップS1を繰り返す。
【0041】
ステップS2では、ステップS1での測定ボタンがON操作ありとの判断に続き、被検レンズLの光学測定を実施し、ステップS3へ進む。
なお、被検レンズLの光学測定は、制御部42からの制御指令に基づいて、投光光学系10が有する光源11から被検レンズLに向けて測定光を投光し、被検レンズLを通過した測定光の像を受光光学系20にて取得することで行う。また、この実施例1では、一対の測定用光学系Kが設けられているため、一対のレンズLL,LRの光学測定を同時に行うことができる。
【0042】
ステップS3では、ステップS2でのレンズ光学測定の実施に続き、光学特性算出部43により、光学測定で得られた複数の分割測定光束の像に基づいて、被検レンズLの光学特性値を算出し、ステップS4へ進む。
【0043】
ステップS4では、ステップS3での光学特性値の算出に続き、マッピング形成部44により、光学特性値の被検レンズL上での分布を表すマッピング画像を形成し、ステップS5へ進む。
ここで、マッピング画像は、光学特性値が等しい測定位置を等度数線によって結ぶことで形成される。
【0044】
ステップS5では、ステップS4でのマッピング画像の形成に続き、光学特性データ取得部45bにより、ステップS3にて算出した光学特性値及びステップS4にて形成したマッピング画像に基づき、被検レンズLの特徴ポイントのマッピング画像上での座標位置を検出し、ステップS6へ進む。
ここで、座標位置を検出する特徴ポイントは、例えば遠用ポイントや近用ポイント、累進帯中心線である。
【0045】
ステップS6では、ステップS5での被検レンズLの特徴ポイントの検出に続き、撮像部30により被検レンズLの画像を撮影し、ステップS7へ進む。なお、撮影した画像データは、レンズ画像取得部45aに出力する。
【0046】
ステップS7では、ステップS6での被検レンズLの撮影に続き、レンズ画像取得部45aにより、撮影した撮像データに対して必要な処理や加工を行ってレンズ画像を取得し、ステップS8へ進む。なお、取得したレンズ画像の画像データは、レンズ画像データ取得部45cに出力する。
【0047】
ステップS8では、ステップS7でのレンズ画像の取得に続き、レンズ画像データ取得部45cにより、取得したレンズ画像を解析し、レンズ画像に写っている被検レンズLの外周縁を検出してステップS9へ進む。
ここで、「被検レンズLの外周縁」とは、被検レンズLの縁部分(輪郭)であり、レンズ枠FL,FRと一対のレンズLL,LRとの境界線であってもよいし、レンズ枠FL,FRであってもよい。
【0048】
ステップS9では、ステップS8でのレンズ外周縁の検出に続き、レンズ画像データ取得部45cにより、ステップS7にて取得したレンズ画像を解析し、レンズ画像に写っている被検レンズLのレンズLL,LRに指標が設けられているか否かを判断する。YES(指標あり)の場合はステップS10へ進み、NO(指標なし)の場合はステップS11へ進む。
ここで、検出する指標は、例えば印点装置により被検レンズLに施された印点マークや、アイポイントの位置を示すマジック印である。
【0049】
ステップS10では、ステップS9での指標ありとの判断に続き、レンズ画像データ取得部45cにより、被検レンズLに設けられていると判断された指標のレンズ画像上の座標位置を、ステップS7にて取得したレンズ画像を解析して検出し、ステップS11へ進む。
【0050】
ステップS11では、ステップS9での指標なしとの判断又はステップS10での指標の位置座標の検出に続き、重畳画像生成部45dにより、ステップS4にて形成したマッピング画像と、ステップS6にて取得したレンズ画像とを、被検レンズLに対する倍率を一致させた状態で重畳して第1重畳画像を生成する。また、この第1重畳画像に対し、ステップS5にて検出した被検レンズLの特徴ポイントのマッピング画像上での座標位置を示すオブジェクト画像と、ステップS10にて検出した被検レンズLに設けられた指標のレンズ画像上での座標位置を示すオブジェクト画像とを第1重畳画像に重ね合わせ、第2重畳画像を生成する。さらに、第1,第2重畳画像に、ステップS8にて検出した被検レンズLの外周縁が含まれるように倍率や表示範囲を調整し、最終的な第1,第2重畳画像を生成し、ステップS12へ進む。
ここで、マッピング画像の配置(位置、向き等)は、マッピング画像内に設定したマップ内基準位置と、レンズ画像内に設定した撮像内基準位置が予め設定した位置関係になるように決定される。
【0051】
ステップS12では、ステップS11での第1,第2重畳画像の生成に続き、表示制御部45eにより、このステップS11にて生成した第1重畳画像又は第2重畳画像の画像データを表示部3に対して出力し、表示部3の表示画面3aに第1重畳画像又は第2重畳画像を表示する。
【0052】
次に、実施例1のレンズメータ1の作用効果を説明する。
実施例1のレンズメータ1では、被検レンズLをレンズ保持機構4にセットしたら、
図7に示すフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進み、被検レンズLの光学測定を実施し、光学測定値を算出する。そして、ステップS4に進んで、算出された光学測定値に基づき、この被検レンズLの光学測定値の分布を示すマッピング画像を形成する。
【0053】
マッピング画像が形成されたら、ステップS5へ進み、被検レンズLの光学特性値及びマッピング画像に基づいて、被検レンズLの特徴ポイントの座標位置を検出する。ここでは、被検レンズLが累進レンズであり、特徴ポイントを、遠用ポイント、近用ポイント、累進帯中心線とする。
【0054】
続いて、ステップS6→ステップS7へと進み、撮像部30によって被検レンズLを撮影して、被検レンズLのレンズ画像を取得する。
【0055】
被検レンズLのレンズ画像を取得したら、ステップS8へ進み、被検レンズLのレンズ画像を解析して、被検レンズLの外周縁の座標位置を検出する。ここでは、メガネフレームFのレンズ枠FL,FRを被検レンズLの外周縁として検出する。
【0056】
レンズ外周縁を検出したら、ステップS9→ステップS10へと進み、被検レンズLに指標が設けられていると判断したら、被検レンズLのレンズ画像を解析して被検レンズLに設けられた指標の座標位置を検出する。ここでは、指標を、被検レンズLに設けられたアイポイントを示すマジック印とする。
【0057】
このようにマッピング画像を形成すると共に、レンズ画像を取得し、さらに被検レンズLの特徴ポイントの座標位置、被検レンズLの外周縁の座標位置、指標の座標位置をそれぞれ検出したら、ステップS11へと進んで、光学測定値の分布を示すマッピング画像と、被検レンズLのレンズ画像とを、倍率を合わせた状態で重畳した重畳画像(第1重畳画像)を生成する(
図5参照)。また、光学測定値の分布を示すマッピング画像と、被検レンズLのレンズ画像とを、倍率を合わせた状態で重畳すると共に、被検レンズLの特徴ポイント(遠用ポイント、近用ポイント、累進帯中心線)の座標位置を示すオブジェクト画像と、被検レンズLに設けられた指標(アイポイントのマジック印)の座標位置を示すオブジェクト画像とを重ね合わせた第2重畳画像を生成する(
図6参照)。
【0058】
そして、第1重畳画像及び第2重畳画像を生成したら、ステップS12へ進んで、適宜のタイミングで表示部3の表示画面3aに、この重畳画像(第1重畳画像又は第2重畳画像)を表示させる。
【0059】
これにより、被検レンズLの測定者は、表示部3の表示画面3aを目視することで、被検レンズLの光学特性分布と被検レンズLの外観とを同時に把握することができ、被検レンズLと光学特性分布との位置関係を確認することができる。つまり、測定中に被検レンズLを表示画面3aに重ねるために移動させる必要がなく、被検レンズLの光学特性を測定しながら、光学特性値の分布と実際の被検レンズLとの位置関係を容易に把握することができる。
【0060】
また、この実施例1では、第2重畳画像(
図6参照)を表示したときには、マッピング画像と、被検レンズLのレンズ画像とを重畳した第1重畳画像に対し、さらに特徴ポイントや指標の座標位置を示すオブジェクト画像が重ねて表示される。
【0061】
これにより、被検レンズLの特徴ポイント(遠用ポイント、近用ポイント、累進帯中心線)の座標位置が強調して表示され、表示部3の表示画面3aを目視することで、被検レンズLのどの位置に遠用光学中心や近用光学中心、累進帯中心線が形成されているのかを容易に確認することができる。そのため、被検レンズLの特徴ポイントと被検レンズLとの位置関係を容易に把握することができる。
【0062】
また、特徴ポイントを強調して表示することで、例えば被検レンズLが二重焦点レンズや三重焦点レンズの場合では、小玉の位置が明確になり、被検レンズLの球面度数等の測定演算を補助することが可能になる。
【0063】
さらに、レンズ画像とマッピング画像とを重畳した第1重畳画像では、マッピング画像によって被検レンズLに設けられた指標が隠れてしまう。これに対し、第1重畳画像に被検レンズLに設けられた指標(アイポイントのマジック印)の座標位置を示すオブジェクト画像を重ね合わせることで、指標の座標位置を表示することができる。これにより、被検レンズLの光学特性分布と被検レンズLのレンズ画像を重畳しても、被検レンズLに設けられた指標の位置を確認することができ、この指標と光学特性分布との位置関係を把握することができる。
【0064】
また、この実施例1では、第1重畳画像(
図5参照)又は第2重畳画像(
図6参照)の倍率や表示領域を調整し、この被検レンズLの外周縁(メガネフレームF)を第1,第2重畳画像に含めている。つまり、第1,第2重畳画像にメガネフレームFが写るように調整される。
これにより、被検レンズLとその周囲領域との境界(被検レンズLの輪郭)を表示部3に確実に表示することができ、被検レンズLのレンズ領域を明確に把握することができる。そのため、被検レンズLの球面度数等の測定演算を補助することが可能になる。
【0065】
なお、被検レンズLの外周縁の座標位置に沿って、この外周縁(例えばメガネフレームF)を強調するオブジェクト画像を重ねて表示してもよい。これにより、被検レンズLのレンズ領域が強調して表示され、レンズ領域をさらに明確に把握することができる。
【0066】
また、例えば
図8Aに示すように、レンズ画像S内の領域Mに重畳されたマッピング画像Gは、周縁部(輪郭)Gaが、ハルトマンプレート21に形成された多数の開口部21aの影響により滑らかな曲線にならず、いわゆるギザギザに表現されてしまう。これに対し、被検レンズLの外周縁(メガネフレームF)の座標位置を検出すれば、被検レンズLのレンズ領域を把握することができる。そのため、レンズ領域内であってもマッピング画像Gで光学特性分布を示すことが不可能な領域(
図8Aにおいてドットで示す領域X)を確定することが可能となる。これにより、この領域Xの光学特性分布を推定し、
図8Bに示すように、この推定した光学特性分布を示すオブジェクト画像(
図8において破線で示す)を重畳画像に重ねる。これにより、被検レンズLのレンズ領域の全域に光学特性分布を拡張して表示することができ、レンズ領域全域の光学特性分布を把握することが可能となる。
【0067】
すなわち、被検レンズLの外周縁の座標位置を検出することで、被検レンズLのレンズ領域を把握でき、マッピング画像では示すことのできない領域の光学特性分布を推定して表示することが可能となる。
【0068】
さらに、実施例1において、マッピング画像及びレンズ画像の少なくとも一方を半透明に加工し、半透明状態の画像が前面に位置するようにマッピング画像とレンズ画像を重ね合わせ、両者が重畳した領域であっても、両方の画像が目視できる重畳画像を生成した場合では、
マッピング画像に基づいて被検レンズLの特徴ポイントを検出したり、レンズ画像に基づいて被検レンズLに設けられた指標を検出することなく、これらの位置を重畳画像から把握することができる。この結果、画像制御部45の処理負荷を軽減することができる。
【0069】
以上、本発明のレンズメータを実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0070】
実施例1では、被検レンズLとして、メガネフレームFの左右のレンズ枠FL,FRに枠入れされた一対のレンズLL,LRを適用し、測定光学系Kを一対のレンズLL,LRに対応して一対設けると共に、撮像部30によって被検レンズLの一対のレンズLL,LRの全体を同時に撮像可能とする例を示したが、これに限定されない。
例えば、被検レンズLとして未加工レンズや、メガネフレームに枠入れされていないフレーム加工済みレンズであってもよい。また、測定光学系Kは、少なくとも一つを備えていればよいし、撮像部30は、被検レンズLの少なくとも一部を撮影可能であれば任意の位置に設けることができる。
【0071】
また、実施例1では、
図5に示す第1重畳画像と、
図6に示す第2重畳画像のいずれにおいても、メガネフレームFの全体及び一対のレンズLL,LRが同時に表示されている例を示したが、これに限定されない。マッピング画像及びレンズ画像の任意の領域を拡大又は縮小し、例えば
図8A,8Bに示すように、表示部3の表示画面3aに被検レンズLの一部を表示してもよい。
【0072】
また、実施例1では、第2重畳画面に表示する「特徴ポイント」として、遠用ポイント、近用ポイント、累進帯中心線を検出する例を示したが、これに限定されない。幾何学的光学中心、プリズム測定点、累進帯長、アイポイント等、被検レンズLにおいて光学特性値に基づいて検出可能な光学的に特徴のある部分であれば、特徴ポイントとして検出してもよい。
【0073】
さらに、第2重畳画面に表示する「指標」についても、実施例1に示すアイポイントを示すマジック印や、印点マークに限らず、被検レンズLに設けられた隠しマークであってもよい。
【0074】
また、実施例1では、被検レンズLをセットしたら光学特性を測定してマッピング画像を形成し、その後被検レンズLを撮影してレンズ画像を取得する例を示したが、これに限定されない。例えば、被検レンズLをセットしたら、被検レンズLの撮影を先に実施する。そして、レンズ画像を取得した後、光学特性の測定を行ってもよい。また、動画撮影を行う場合等では、被検レンズLのセット状態に拘わらず、任意の期間の間継続して撮影を実施してもよい。
【0075】
また、実施例1では、撮像部30を、一対の投光光学系10の間に配置された単眼式デジタルカメラによって構成する例を示したが、例えば複眼式のデジタルカメラによって撮像部30を構成してもよいし、複数の単眼式カメラで撮像部30を構成してもよい。
さらに、複眼式カメラ又は複数の単眼式カメラを用いた場合では、撮影された画像を合成してレンズ画像を生成してもよい。
【0076】
また、実施例1では、撮像部30を装置本体2の上部2aに内蔵し、撮像部30の取り付け位置を一対の投光光学系10の間に設定した例を示したが、これに限定されない。撮像部30は、例えば、装置本体2に形成されたレンズセット空間2cを区画する壁面の表面や、レンズ押え部材4a、レンズ保持部材4c等に設けてもよい。また、この撮像部30を、投光光学系10と受光光学系20との連結部分に設けたり、受光光学系20の下方から上方を見上げる角度で撮影可能な位置に設けたりしてもよい。
つまり、撮像部30の取り付け位置は、被検レンズLを撮像可能な位置であれば任意に設定することができる。
【0077】
また、レンズ押え部材4aを、プラスチックよりも剛性の高い板金によって形成すると共に厚みや幅を薄くして、被検レンズLの撮像の邪魔にならないようにしてもよい。さらに、レンズ押え部材4a等を透明な樹脂によって形成することで、被検レンズLの撮像の邪魔にならないようにしてもよい。
【0078】
実施例1では、レンズ画像を静止画像とする例を示したが、動画像であってもよい。つまり、被検レンズLを測定している状態をビデオカメラである撮像部によって動画撮影し、取得した動画像にマッピング画像を重畳してもよい。
この場合には、撮影している状態をリアルタイムで確認することができ、測定者が安心して被検レンズLの測定を行うことができる。
【0079】
そして、実施例1では、被検レンズLを通過した測定光を複数の分割測定光束に分離するパターン板として、
図3に示すようなハルトマンプレート21を用いる例を示したが、これに限定されない。測定光を分離することが可能なパターン板であれば、任意のものを用いることができる。