(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記水力発電装置の発電電力を低下させることによって前記水車の回転速度を増加させた後、前記制動装置の作動と解放とを繰り返す、請求項1に記載の水力発電装置。
前記制御装置は、前記水力発電装置の発電電力を低下させることによって前記水車の回転速度を増加させた後、前記制動装置の作動と解放とを繰り返す、請求項8に記載の水力発電装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0022】
[実施の形態1]
<水力発電装置の構成>
図1は、本実施の形態に係る水力発電装置の構成を示す正面図である。
図2は、本実施の形態に係る水力発電装置の構成を示す側面図である。
【0023】
図1および
図2に示す水力発電装置は、水流が持つ運動エネルギーを発電に利用し、既存の農業用水、水道用水、あるいは、工業用水などを流通する水路に設置可能な小型かつ軽量な水力発電システムである。
【0024】
図1および
図2に示すように、水力発電装置は、水車1と、増速機2と、発電機3と、支持部40とを含む。
【0025】
水車1は、水平方向の軸を回転中心とするプロペラ型の回転翼を有する。水車1は、水路内において水流の力を受けて回転する。
【0026】
増速機2は、水車1に接続されている。増速機2は、水車1の回転速度を所定のギヤ比で増速するとともに、水平軸の回転を鉛直軸の回転に変換して発電機3に伝達する。
【0027】
発電機3は、たとえば、3相同期発電機である。発電機3は、増速機2を介して水車1に連結される。発電機3は、ロータとステータ(いずれも図示せず)とを含む。発電機3は、水車1の回転によりロータが回転することによって交流電力を発電する。発電機3の発電電力は、制御装置100(
図3参照)によって制御される。
【0028】
支持部40は、水車1と増速機2と発電機3とを支持する。支持部40は、2本の梁40a,40bと、架台40cと、支柱40dと、ベース板40eとを含む。
【0029】
2本の梁40a,40bは、互いに平行な位置関係になるように配置される。2本の梁40a,40bの中央部において、2本の梁40a,40bの両方の上部に載置されるように架台40cが設けられる。2本の支柱40dは、架台40cの一方端部と他方端部とにそれぞれ配置されている。2本の支柱40dの上部を繋ぐようにベース板40eが配置されている。
【0030】
発電機3は、架台40cとベース板40eとの間に配置され、ベース板40eに固定される。架台40cの下側には、架台40cの位置に対する水車1および増速機2の位置を固定する支柱が設けられる。支柱内部には、増速機2と発電機3とを接続する回転軸が収納される。2本の梁40a,40bが水路の幅方向に沿って水路の側壁上方に配置される場合、水車1は、支持部40によって水路内の所定位置に固定される。
【0031】
<水力発電装置の制御構成について>
図3は、本実施の形態に係る水力発電装置の構成を示すブロック図である。
図3を参照して、本実施の形態に係る水力発電装置は、水車1と、増速機2と、発電機3と、回転速度検出器6と、制動装置12と、流速計14と、制御装置100とを含む。制御装置100は、制御部7と、整流回路4と、DC/ACコンバータ10とを含む。制御部7は、整流回路4およびDC/ACコンバータ10を制御するとともに、制動装置12を制御する。
【0032】
水車1は、流水の力で回転する。水車1には増速機2を介して発電機3が連結されている。発電機3は、水車1の回転に伴い発電を行なう。発電機3は3相同期発電機であり、その出力は3相交流で出力される。発電機3の3相交流出力は、整流回路4によって直流出力に変換され、直流出力は後段のDC/ACコンバータ10に出力される。
【0033】
なお、ここでは具体例として発電機3が3相同期発電機である場合について説明するが、発電機の型式はこれに限定されず、3相誘導発電機や直流発電機など、任意の型式の発電機を、発電機の型式に対応した制御装置と組合せて使用することができる。
【0034】
制動装置12としては、運動エネルギーを摩擦により熱に変換する機械式ブレーキを使用することができる。たとえば、制動装置12として機械式ブレーキ(電磁ブレーキ、ディスクブレーキ等)および流体式ブレーキ等を使用することができる。制動装置12で発生させる制動力を増減させることによって、水車1の回転速度を増減または回転を停止させることができる。また、制動装置12の代わりに発電機等の短絡による電気式ブレーキで水車の制動と解放を行っても良い。
【0035】
制御部7は、流速計14で水流の状態を計測しつつ、発電機3の状態を計測している。ゴミが絡まった場合、制御装置100は、流速が十分であるにもかかわらず、水車1の回転速度が低下したことまたは発電量が低下したことを観測することができる。この時、制御装置100は、制動装置12に制動(回転速度減)と解放(回転速度増)を繰り返す制御を行なう。水車翼に絡みついたゴミや水草は、水車1の回転速度が減少した時に、水車翼の回転による水圧や遠心力が弱まり、水車1から浮き上がる。一方、回転速度が増加した時には、水車1の回転が加速するため水圧や遠心力が上昇し、より強い力がゴミや水草にかかるため、ゴミ等が水車翼に付着している位置がずれる。発電機3の制動と解放を繰り返すとゴミ等が水車翼から浮き上がりやすくなり、水流による下流へ押し流す力が作用し、ゴミ等が下流へ流される。
【0036】
なお、流速や水量を監視しない場合であれば、ある時間が経過する毎に上記の制御を行なうようにしても良い。
【0037】
図4は、
図3の構成例において制御部が実行する制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、発電機制御のメインルーチンから一定時間ごとに呼び出されて実行される。
図3、
図4を参照して、ステップS1において、制御部7は、ゴミ除去運転条件が成立したか否かを判断する。
【0038】
ゴミ除去運転条件は、水車1にゴミが付着した可能性が高まった場合に成立する。たとえば、以下の条件(1)〜(4)のいずれか1つが成立したときに、制御部7は、ゴミ除去運転条件が成立したと判断する。なお、条件(1)〜(4)のうち、2つまたはそれ以上を組み合わせた条件が成立した場合に、制御部7は、ゴミ除去運転条件が成立したと判断しても良い。
【0039】
条件(1):ある一定の時間における水力発電装置の平均発電電力がしきい値よりも低下したこと。条件(2):ある一定の時間における水車1の平均回転速度が低下して、しきい値を下回ったこと。条件(3):ある一定の時間における水力発電装置の平均発電電圧がしきい値よりも低下したこと。条件(4):前回のゴミ除去運転条件成立時(または解除時)から所定の時間が経過したこと。
【0040】
なお、上記の発電電力、回転速度および発電電圧のしきい値は、水路の大きさや流速によって変更することが好ましい。上記の(1)〜(4)以外であっても、平均発電電力の低下量、平均電流、平均回転トルクなどに基づいて運転条件を判断しても良い。
【0041】
ステップS1において、ゴミ除去運転条件が成立しないと判断された場合(S1でNO)、制御部7は、ステップS10に処理を進める。この場合、制御はメインルーチンに戻される。
【0042】
一方、ステップS1において、ゴミ除去運転条件が成立したと判断された場合(S1でYES)、制御部7は、ステップS2〜S9に示されるゴミ除去運転を実行する。
【0043】
ゴミ除去運転では、制御部7は、制動装置12の制動力を増減させる。たとえば、制御部7は、回転速度検出器6によって発電機3の回転速度の低下を検出した時、制動力が最大値とゼロとを繰り返すように制動装置12への指令信号を出力することによって、水車1の減速と加速を繰り返す。
【0044】
このとき、発電電力の回復を図りつつ、制動装置12の寿命をなるべく伸ばすため、制動力の増減回数をゴミの付着状況に応じて変えることが望ましい。制動力の増減回数は、ブレーキをON/OFFさせる以下の制御ではカウンタの上限値に相当する。ゴミの付着量は、発電電力の低下量と相関があるので、ステップS2では、制御部7は、発電電力の低下量に対応するカウンタ上限値を設定する。
【0045】
以下に、発電量の低下量と制動力の増減回数をどのように対応させるかについて説明する。
図5は、ゴミ除去運転前の発電電力と、ごみ除去運転後に回復した発電電力との関係を示す図である。
【0046】
図5に示すように、ゴミ除去運転前発電電力が0〜30%の間は、ゴミ除去運転を行なっても、ほとんど発電電力は変わらない。これに対して、ゴミ除去運転前発電電力が40%では、ゴミ除去運転を行なうと、発電電力は、60%まで回復する。
【0047】
さらに、ゴミ除去運転前発電電力が50%でゴミ除去運転を行なうと、発電電力は、90%まで回復する。また、ゴミ除去運転前発電電力が60%以上の状態でゴミ除去運転を行なうと、発電電力は100%まで回復する。
【0048】
ゴミ除去制御において、水車翼に絡んでいるゴミの量が多いほど、ゴミを除去し難くなる。これは、ゴミが水車翼に複雑に絡んでいるため、および、ゴミが多いほど水車翼の回転速度が低いので制動をかけた際のゴミの慣性力が十分に得られず、ゴミが浮き上がらないためであると考えられる。
【0049】
以上の結果より、ごみ除去運転は、発電電力が50%に低下する前に行なうことが効果的であることが分かる。したがって、上述の条件(1)〜(3)は、発電電力50%、好ましくは60%に対応するように各条件のしきい値を定めると良い。
【0050】
図6は、ブレーキによる制動回数の検討を行なうためのグラフである。
図6において、縦軸はブレーキ後発電電力(%)を示し、横軸は制動回数を示し、ブレーキ前発電電力(%)が、20%、30%、40%、50%、70%、90%の6通りのデータがプロットされている。
【0051】
図6では、ブレーキ前発電電力が20%および30%の場合には、ブレーキを何回作動させても発電電力は増加しておらず、ゴミが除去されないことが分かる。ブレーキ前発電電力が40%の場合には、ブレーキを作動させると発電電力は多少回復するが、60%以上は増加しない。
【0052】
ブレーキ前発電電力が50%の場合には、ブレーキを作動させると4回までは発電電力は増加回復するが、4回以上作動させても90%以上は増加しない。
【0053】
ブレーキ前発電電力が70%の場合には、ブレーキを作動させると3回までは発電電力は増加回復し、3回で100%となる。ブレーキ前発電電力が90%の場合には、ブレーキを作動させると2回までは発電電力は増加回復し、2回で100%となる。
【0054】
ブレーキは、作動回数が多いと寿命が短くなるので、水力発電装置のように長期に連続して使用される設備では、発電電力の回復とブレーキの寿命維持の兼ね合いから適切な作動頻度とすることが望まれる。そこで、本実施の形態では、発電電力の低下率によってブレーキの作動頻度を変更することとした。
【0055】
図7は、ブレーキ前発電電力と、ゴミ除去運転のブレーキ作動回数との関係を示した図である。
図5で説明したように、有効に電力を回復させるために、発電電力が50%以上である段階でごみ除去運転を実行する。この場合、
図6の関係を考慮し、ゴミ除去運転実行時にゴミ除去運転前発電電力が90%の場合にはブレーキ作動回数を3回とし、ゴミ除去運転前発電電力が70%の場合にはブレーキ作動回数を4回とし、ゴミ除去運転前発電電力が50%の場合にはブレーキ作動回数を6回とする。このように、ゴミ除去運転前発電電力が低下するほど、ブレーキ作動回数を多くする。
【0056】
図4に戻って、ステップS2において、制御部7は、
図7に示す関係に示す除去運転回数に基づいて、発電電力の低下量に対応する数値にカウンタ上限値(ブレーキ回数)を決定する。続いて、ステップS3において、制御部7は、内蔵するカウンタをクリアする。このカウンタは、繰返しの回数を計測するためのカウンタである。続いて、ステップS4において、制御部7は、制動装置12が制動力を発生させるように指令信号SBを設定する(ブレーキON)。その後ステップS5において、制御部7はブレーキON状態において設定時間(たとえば1〜10秒)が経過するまで待つ。
【0057】
次に、ステップS6において、制御部7は、制動装置12が制動力を発生させないように指令信号SBを設定する(ブレーキOFF)。その後ステップS7において、制御部7はブレーキOFF状態において設定時間(たとえば1〜10秒)が経過するまで待つ。
【0058】
続いて制御部7は、ステップS8においてカウンタをインクリメントし、ステップS9において、カウンタのカウント値が上限値(増減繰返しの設定回数)に達したか否かを判断する。ステップS9において、カウント値がまだ上限値に達していなければ、制御部7は処理をステップS4に戻し、再びブレーキをONさせる。
【0059】
一方、ステップS9において、カウント値が上限値に達した場合には、ステップS10に処理が進められ、1回あたりのゴミ除去運転が終了する。
【0060】
本実施の形態では、水力発電装置の増速機2と発電機3とを連結する回転軸に制動装置12を設置し、制動装置12のオンとオフを繰り返す。これによって、水車1の回転速度を変化させる。水車1に付着した異物を加速時に力を加え、減速時に浮き上がらせ、水流の力で下流に流すことにより、異物を取り除くことができる。したがって、異物が原因で低下した発電量を回復する効果がある。
【0061】
なお、本実施の形態では、S5の設定時間、S7の設定時間は、カウンタの上限値まで繰り返す間、固定値を採用しているが、設定時間を変化させても良い。
【0062】
図8は、水力発電装置の構成の変形例を示すブロック図である。
図8を参照して、変形例の水力発電装置は、水車1と、増速機2と、発電機3と、回転速度検出器6と、流速計14と、制御装置100Aとを含む。
【0063】
制御装置100Aは、制御部7Aと、整流回路4と、DC/DCコンバータ9と、DC/ACコンバータ10とを含む。水車1、発電機3、整流回路4、回転速度検出器6は
図3に示したものと同じであるため説明は繰り返さない。
【0064】
制御部7Aは、電流指令信号SAをDC/DCコンバータ9へ出力する。DC/DCコンバータ9は、電流指令信号SAの指令に従い、整流回路4の出力から電力を取り出し、DC/ACコンバータ10に指令通りの電流を出力する。これに伴いDC/DCコンバータ9の出力電圧が上昇する。DC/ACコンバータ10は後段に電力を出力する。DC/DCコンバータ9の出力電圧が上昇すると、DC/ACコンバータ10はより多くの電力を後段に出力することによって、DC/DCコンバータ9の出力電圧の上昇を抑えるように構成されている。
【0065】
水車1から取り出すことができる最適な電力は、水車1が受ける水の流速で決まる。流速と発電機3の回転数は、ほぼ比例する。発電機3の回転速度を検出することによって、最適な電力を決定することができる。もし、最適な電力より過大な電力を発電機3から取り出すと、発電機3の回転速度は低下する。この時、発電機3と連結された水車1の回転速度も同様に低下する。逆に、発電機3から取り出す電力を最適値より少なく例えばゼロにすると、発電機の回転速度は上昇し、発電機3と連結された水車1の回転速度同様に上昇する。
【0066】
したがって、発電機3から取り出す電力を増減させることによって、水車1の回転速度を増減させることができる。
【0067】
図9は、
図8の構成において水車に付着したゴミを除去する制御を説明するためのフローチャートである。
図8、
図9を参照して、ステップS11において、制御部7Aは、ゴミ除去運転条件が成立したか否かを判断する。
【0068】
ゴミ除去運転条件は、水車1にゴミが付着した可能性が高まった場合に成立する。具体的な条件(条件(1)〜(4)またはこれらの組み合わせ)については、既に説明したものが適用できるので、ここでは説明は繰り返さない。
【0069】
ステップS11において、ゴミ除去運転条件が成立しないと判断された場合(S11でNO)、制御部7Aは、ステップS20に処理を進める。この場合、制御はメインルーチンに戻される。
【0070】
一方、ステップS11において、ゴミ除去運転条件が成立したと判断された場合(S11でYES)、制御部7Aは、ステップS12〜S19に示されるゴミ除去運転を実行する。
【0071】
ステップS12では、制御部7Aは、
図7に示す関係に示す除去運転回数に基づいて、発電電力の低下量に対応する数値にカウンタ上限値を決定する。続いて、制御部7Aは、ゴミ除去運転としてDC/DCコンバータ9への電流指令値を増減させる。たとえば、制御部7Aは、回転速度検出器6より発電機3の回転速度の低下を検出した時、出力電流が最大値とゼロとを繰り返すように電流指令信号SAを出力することによって、水車1の減速と加速を繰り返す。
【0072】
具体的には、ステップS13において、制御部7Aは、内蔵するカウンタをクリアする。このカウンタは、繰返しの回数を計測するためのカウンタである。続いて、ステップS14において、制御部7Aは、DC/DCコンバータ9が出力電流を最大とするように電流指令信号SAを設定して、その後ステップS15において、制御部7Aは設定時間(たとえば1〜3秒)待つ。DC/DCコンバータ9の出力電流が最大となっている間、大きな電力が消費され、発電機3に大きな制動力を発生させることとなる。
【0073】
次に、ステップS16において、制御部7Aは、DC/DCコンバータ9が出力電流をゼロとするように電流指令信号SAを設定し、その後ステップS17において、制御部7Aは設定時間(たとえば1〜3秒)待つ。この場合は、電流指令信号SAが最大電流に設定される場合よりも発電機3の負荷は軽くなるので、発電機3の回転速度は上昇する。
【0074】
続いて制御部7Aは、ステップS18においてカウンタをインクリメントし、ステップS19において、カウンタのカウント値が上限値(増減繰返しの設定回数)に達したか否かを判断する。ステップS19において、カウント値がまだ上限値に達していなければ、制御部7Aは処理をステップS14に戻し、再び出力電流を最大にするように電流指令信号SAを設定する。
【0075】
一方、ステップS19において、カウント値が上限値に達した場合には、ステップS20に処理が進められ、1回あたりのゴミ除去運転が終了する。
【0076】
実施の形態1の変形例では、DC/DCコンバータ9の電流指令値を増減させることによって、水力発電装置の水車1と連動する発電機3の負荷を変動させる。これによって、発電機3の回転速度を変化させ、発電機3に連動する水車1の回転速度を変化させる。水車1に付着した異物を加速時に力を加え、減速時に浮き上がらせ、水流の力で下流に流すことにより、異物を取り除くことができる。したがって、異物が原因で低下した発電量を回復する効果がある。
【0077】
[実施の形態2]
実施の形態1では、制動力の増減回数を、発電電力の低下量に対応して定めることによって、ゴミ除去を効果的に行ないつつ、ブレーキ寿命を延長するようにした。これに対して、実施の形態2では、制動力を与えるパターンを変化させる。
【0078】
図10は、実施の形態2の水力発電装置において制御部が実行する制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、発電機制御のメインルーチンから一定時間ごとに呼び出されて実行される。
【0079】
図3、
図10を参照して、まずステップS51において、制御部7は、ゴミ除去運転条件が成立したか否かを判断する。
【0080】
ゴミ除去運転条件は、水車1にゴミが付着した可能性が高まった場合に成立する。具体的な条件(条件(1)〜(4)またはこれらの組み合わせ)については、既に説明したものが適用できるので、ここでは説明は繰り返さない。
【0081】
ステップS51において、ゴミ除去運転条件が成立しないと判断された場合(S51でNO)、制御部7は、ステップS55に処理を進める。この場合、制御はメインルーチンに戻される。
【0082】
一方、ステップS51において、ゴミ除去運転条件が成立したと判断された場合(S51でYES)、制御部7は、ステップS52〜S54に示されるゴミ除去運転を実行する。
【0083】
ステップS52では、第1制動パターンで水車1を減速する制御が行なわれる。第1制動パターンは、制動装置12の負荷が比較的小さい制動パターンである。その後ステップS53において、発電電力が判定値まで回復しない場合には、ステップS54に処理が進められ、第2制動パターンで水車1を減速する制御が行なわれた後に制御はメインルーチンに戻される。第2制動パターンは、第1制動パターンよりも制動装置の負荷が大きい制動パターンである。一方、ステップS53において、発電電力が判定値まで回復した場合には、ステップS54の処理は実行されず、ステップS55に処理が進められ制御はメインルーチンに戻される。
【0084】
図11は、第1制動パターンの第1例を示した波形図である。
図12は、第1制動パターンの第2例を示した波形図である。
図13は、第1制動パターンの第3例を示した波形図である。
図14は、第1制動パターンの第4例を示した波形図である。
図15は、第2制動パターンの例を示した波形図である。
【0085】
図15に示す第2制動パターンは、回転している水車1に対して急ブレーキをかけて回転を一旦止め、その後にブレーキを解放する制御を繰り返すものである。これに対して、
図11〜
図14に示す波形では、
図15よりもゆっくりブレーキを掛けているか、または、停止に至る前にブレーキを解放している。
【0086】
図15に示す第2制動パターンのようにt41,t44における制動力(負の角加速度)を大きくした方が、また、水車翼の回転速度を0まで減速したほうが、水車翼とゴミの速度差が大きくなり、より確実にゴミを除去することができる。さらに制動制御の回数も多いほうが、より多くのゴミを除去することができる。しかし、常時
図15の波形を繰り返し与えるのでは、制動装置12も耐久性が高く大型のものを使用する必要があるとともに、制動装置12に与える衝撃が大きく制動装置12の寿命が短縮される。また、制動装置12の作動中は発電電力が減少する。
【0087】
そのため、まず、制御部7は、制動装置12に対して負荷が軽い第1制動パターンでゴミ除去を試み、それでも電力が回復しない場合には、第2制動パターンを適用する。第1制動パターンには種々の例が考えられるので、
図11〜
図14に図示して説明する。
【0088】
図11に示した例では、時刻t1の減速度合いは
図15と変わらないが、回転速度がN1からN2に低下したところで、制動力を保ち、時刻t2で解放している。
【0089】
また、
図12に示した例では、時刻t11〜t12の減速度合いが
図15よりもゆっくりであり、制動装置12の制動トルクは小さくて済む。
【0090】
図13に示した例では、時刻t21〜t22の減速度合いが
図15よりもゆっくりであり、また時刻t22においてすぐ制動装置12を解放しているので、発電量の低下も少なくて済む。
【0091】
図14に示した例では、時刻t31〜t32の減速期間において、階段状に回転速度をN1からN2まで低下させている。これは、水車の慣性力が大きく、急ブレーキを掛けるのが難しく、かつ制動力の制御を連続的に行うことが難しい場合に有効である。このように、制動時間を短くして何度も制動を行なうことによって、ゴミ除去運転制御による衝撃荷重を低減し機械部品の破損を防ぐことができる。
【0092】
なお、上記の実施の形態2の説明では、
図3に示した水力発電装置に適用した例を示したが、
図8に示した水力発電装置にも同様な制御が適用可能である。
【0093】
[実施の形態3]
以上説明した実施の形態1〜2では、
図1および
図2に示した水平軸型のプロペラ式回転翼を有する水車によって流水を受けて発電を行なう発電装置を例に挙げて説明した。実施の形態3では、垂直軸型の回転翼を有する水車によって流水を受けて発電を行なう発電装置にも実施の形態1または2を変形して適用が可能であることを説明する。
【0094】
図16は、実施の形態3に係る水力発電装置の概略形状を示す正面図である。
図16を参照して、実施の形態4に係る水力発電装置は、水車1Aと、発電機3とを含む。水車1Aは、垂直軸型の回転翼を有し、水流により回転する。発電機3は水車1Aの回転軸と連結されている。水車1Aが回転すると発電機3の回転軸も回転する。
【0095】
図3〜
図15に示した制御装置、フローチャート、制動パターンについては、
図16に示した水車1Aについても同様に組み合わせて用いることができる。
図3〜
図15に示した制御装置、フローチャート、制動パターンについては、実施の形態1〜2において説明したので、ここでは説明を繰り返さない。
【0096】
垂直軸型の水車1Aは、
図16に示すように、直線翼式であり翼の上下の先端を回転軸に向けて曲げた構成を例示したが、とくにこれに限定されるものではない。たとえば、ダリウス式、ジャイロミル式、サボニウス式、クロスフロー式、パドル式、S型ロータ式等の他の形式であっても良い。
【0097】
実施の形態3に係る水力発電装置でも、発電機3の回転速度を変化させ、発電機3に連結した水車1Aの回転速度を変化させることができる。水車1Aに付着した異物を加速時に力を加え、減速時に浮き上がらせ、水流の力で下流に流すことにより、異物を取り除くことができる。したがって、異物が原因で低下した発電量を回復する効果がある。
【0098】
一部が上記説明と重複する部分もあるが、最後に実施の形態1〜3について総括する。本実施の形態の水力発電装置は、水車1と、水車1に連動する回転軸に制動力を作動させる電気式または機械式の制動装置12と、制動力が増減するように制動装置12の作動と解放とを繰り返す制御装置100とを備える。
図7に示すように、制御装置100は、発電機3の発電電力の流速に対応する電力からの低下量が第1の値である場合には、制動装置12を第1回数作動させ(たとえば、流速に対応する電力を100%とし、それから10%低下した90%の場合、3回作動)、発電電力の低下量が第1の値よりも大きい第2の値である場合には、制動装置12を第1回数よりも多い第2回数作動させる(たとえば、30%低下した70%の場合4回作動、50%低下した場合6回作動させる)。
【0099】
このように、水力発電装置の水車と連結した回転制動装置を設置し、水車翼に制動(回転速度減)と解放(回転速度増)を繰り返すことで、水車翼の回転速度を変化させる。水車翼に絡みついたゴミや草は、水車の回転速度が減少した時に、水車翼の回転による水圧や遠心力が弱まり、慣性力によって水車翼から浮き上がる。制動と解放を繰り返すと浮き上がりやすくなり、水流によって下流へ押し流す力が作用し、下流へ流される。なお、発電電力の低下量ΔPについては、割合(%)で表しても良く、電力(W)で表しても良い。
【0100】
好ましくは、
図3に示すように、制動装置12は、水車の回転軸に固定された部材に摩擦力を与えるブレーキ(機械式の摩擦ブレーキ)を含む。制御装置100は、摩擦力を変動させることによって制動力を増減させる。
【0101】
好ましくは、
図8に示すように、制動装置は、水車の回転によって発電を行なう発電機3を含む。
図9に示すように、制御装置100Aは、発電機から取り出す電力を増減させることによって制動力を増減させる。
【0102】
なお、水車1の回転速度が所定の回転速度から、制動力を増減することを繰り返し、水車1の速度変動幅が十分得られることが望ましい。水車1が受ける水の流速は、長期的には大きく変動し、降雨量の少ない季節では、大きく低下する場合がある。これに伴い、水車1の回転速度も低下し、水車1の回転速度が低下した状態から、制動力の増減動作を繰り返しても、水車1の回転速度の変動幅が小さく、所定のゴミ除去の効果が得られない場合がある。このように水車1の回転速度が低下している場合には、発電機3から取り出す電力を低下させ(発電負荷を低下させ)、水車1の回転速度を増加させた後、制動装置12の作動と解放とを繰り返すことが望ましい。
【0103】
好ましくは、
図1、
図2に示すように、水車は、水平軸型のプロペラ式回転翼を有する。
【0104】
好ましくは、
図16に示すように、水車は、垂直軸型の回転翼を有する。
本開示で開示される他の局面の水力発電装置は、水車1と、水車と連動する回転軸に制動力を作動させる電気式または機械式の制動装置12と、制動力が増減するように制動装置12の作動と解放とを繰り返す制御装置100とを備える。
図10に示すように、制御装置100は、発電電力が流速に対応する電力よりも低下した場合に、制動力が第1の増減パターン(
図12〜
図14のいずれか)を示すように制動装置12を作動させ、発電電力の回復が不十分であるときには、第1の増減パターンよりも減速度が大きい第2の増減パターン(
図15)で制動装置を作動させる。
【0105】
本開示は、また、上記いずれかの水力発電装置を用いて、流水が持つ運動エネルギーを電力に変換する海流発電または潮力発電を行なう発電システムを開示する。
【0106】
以上のように制動回数または制動パターンを定めることによって、制動装置等の保護を図りつつ、ゴミ等の水車翼への付着に起因する発電量の著しい低下を防ぐことができる。
【0107】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。