特許第6885790号(P6885790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6885790画像形成装置、その状態制御方法および画像形成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885790
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】画像形成装置、その状態制御方法および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20210603BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B41J29/38 104
   H04N1/00 127Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-109343(P2017-109343)
(22)【出願日】2017年6月1日
(65)【公開番号】特開2018-202700(P2018-202700A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】長井 勇祐
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−194749(JP,A)
【文献】 特開2012−004996(JP,A)
【文献】 特開2016−081280(JP,A)
【文献】 米国特許第09179028(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の情報機器から印刷データを受信する通信デバイスと、
受信した印刷データを格納する記憶デバイスと、
前記記憶デバイスに格納された印刷データを印刷する画像形成部と、
通信可能で前記印刷データへアクセス可能な即応可能状態および通信可能だが前記印刷データへアクセス不能で電力消費が前記即応可能状態より小さい応答可能状態を少なくとも有する複数の電力状態のうち何れをとるかを制御する制御部と
ユーザの操作を受付ける操作部とを備え、
前記制御部は、外部の画像形成装置からの要求に応答して前記印刷データを前記画像形成装置へ送信し、かつ、
外部の画像形成装置から前記印刷データの送信要求を受けたことのある場合に、その画像形成装置を所定の画像形成装置として前記記憶デバイスに記憶し、電源オフを要求するユーザの操作を前記操作部が受付けた場合に、前記所定の画像形成装置に対する通信を試み、通信を試みた画像形成装置が何れも通信不能な場合は前記応答可能状態へ遷移させるが何れか一つが通信可能であれば前記応答可能状態へ遷移させないようにする画像形成装置。
【請求項2】
前記電力状態は、通信不能かつ前記印刷データへアクセス不能で電力消費が最も小さい応答不能状態を含み、
前記記憶デバイスは、自律的に前記応答不能状態に遷移すべき時刻および遷移後自律的に前記即応可能状態または前記応答可能状態に遷移すべき時刻を設定データとして記憶し、
前記制御部は、前記応答不能状態に遷移すべき時刻になったときに前記所定の画像形成装置に対する通信を試み、通信を試みた画像形成装置の少なくとも一つが通信可能であれば前記所定の画像形成装置が通信可能な状態と判断して前記応答不能状態への遷移させない請求項に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定の画像形成装置とそれぞれ通信し、通信相手の画像形成装置が自律的な電源オフ処理である自律電源オフを実行すべき時刻および前記自律電源オフの後自律的に前記即応可能状態または前記応答可能状態に遷移すべき自律電源オンの時刻として当該画像形成装置の記憶デバイスに記憶されている設定データを取得し、取得された設定データに基づいて前記所定の画像形成装置の何れかが応答不能状態でない期間は、自機の自律電源オフを実行せず、かつ、前記画像形成装置の何れもが自律電源オフ後でかつ自律電源オン前の期間中に自機の自律電源オフを実行しようとする際、前記所定の画像形成装置に対する通信を試み、通信を試みた画像形成装置の少なくとも一つが通信可能であれば自律電源オフを抑制する請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像形成装置を制御するコンピュータが、
外部の情報機器から印刷データを受信して記憶デバイスに格納するステップと、
外部の画像形成装置から要求を受けて前記印刷データを前記画像形成装置へ送信するステップと、
前記要求を受けた外部の画像形成装置を所定の画像形成装置として前記記憶デバイスに記憶するステップと、
通信可能で前記印刷データへアクセス可能な即応可能状態および通信可能だが前記印刷データへアクセス不能で電力消費が前記即応可能状態より小さい応答可能状態を少なくとも有する複数の電力状態のうち一の電力状態を他の電力状態へ遷移させるステップと
操作部を介して電源オフを要求するユーザの操作を受付けるステップとを備え、
受付けた前記操作に応答して前記所定の画像形成装置に対する通信を試み、通信を試みた画像形成装置が何れも通信不能な場合は前記応答可能状態へ遷移させるが何れか一つが通信可能であれば前記応答可能状態へ遷移させないようにする画像形成装置の状態制御方法。
【請求項5】
親機である画像形成装置と子機である1以上の画像形成装置と情報機器とが通信可能に接続された画像形成システムであって、
親機は、
何れかの情報機器から印刷データを受信する親機通信デバイスと、
受信した印刷データを格納する親機記憶デバイスと、
前記印刷データを印刷可能な親機画像形成部と、
子機からの要求に応答して前記印刷データを子機へ送信し、かつ、通信可能で前記印刷データへアクセス可能な即応可能状態および通信可能だが前記印刷データへアクセス不能で電力消費が前記即応可能状態より小さい応答可能状態を少なくとも有する複数の電力状態のうち何れをとるかを制御する親機制御部と
ユーザの操作を受付ける親機操作部とを備え、
子機は、
親機に格納された印刷データを要求しその印刷データを受信する子機通信デバイスと、
親機から受信した印刷データを印刷する子機画像形成部と、
前記印刷に係る処理を制御する子機制御部とを備え、
前記親機制御部は、子機から前記印刷データの要求を受けたことのある場合に、その子機を所定の子機として前記親機記憶デバイスに記憶し、電源オフを要求するユーザの操作を前記親機操作部が受付けた場合に、前記所定の子機に対する通信を試み、通信を試みた子機が何れも通信不能な場合は前記応答可能状態へ遷移させるが何れか一つが通信可能であれば前記応答可能状態へ遷移させないようにする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置、その状態制御方法および画像形成システムに関し、より詳細には自機に格納した印刷データを外部の画像形成装置へ送信して印刷させる機能を有する画像形成装置の電力状態の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の画像形成装置が通信可能に接続された環境で、そのうちの1台をプリントサーバとして稼働させることで、専用のプリントサーバを不要とする印刷システムが知られている。そして、印刷システムの構築の際、親機、子機の設定をユーザが行わなくとも自動的に周辺の画像形成装置から親機を決定して親機としての設定を行い、その親機に対して子機メンバを登録するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、複数の画像形成装置が導入されている印刷システムにおいて、全数を省電力モードに移行することを行わず、必ず1台は待機状態にしておくことでシステム全体の省電力性を向上させるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−186897号公報
【特許文献2】特開2007−133759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように専用のプリントサーバが不要な印刷システムを、この明細書で組込プリントサーバとも呼ぶ。組込プリントサーバを実現する構成は、上述の特許文献に限らず種々の態様が考えられる。例えば、複数の画像形成装置に対して予め親機、子機の設定を行っておく。ユーザは、印刷すべきデータを情報機器で作成する。その情報機器は、作成された印刷データを親機に送るように予め設定しておく。親機は、情報機器から送られた印刷データを受信して保存する。親機として設定した画像形成装置に印刷データが保存されると、親機だけでなくどの子機からでも印刷が可能になる。
【0005】
印刷データを出力する場合、ユーザは親機でなくとも、自分の側にある任意の子機から親機に保存された印刷データにアクセスできる。即ち、子機に対するユーザの操作に応答して、その子機は親機に保存された印刷データにアクセスしてその印刷データを取得し、取得された印刷データを子機で印刷する。
このようなシステムでは、一旦親機、子機の設定がなされた後は、印刷の都度、親機、子機の設定状態を各ユーザが意識することがない。ユーザは煩雑な操作をせずとも親機に限らず任意の子機から印刷出力を得ることが可能になる。
その反面、親機であることを意識せず子機と同様に、ユーザは親機の電源オフ操作を行う。また、親機、子機を問わず、画像形成装置は設定された条件が満たされると自律的に省電力状態へ遷移するといった省電力設定を有している。
【0006】
子機が親機の印刷データにアクセスする際に、アクセス先の親機が省電力状態に入っている場合がある。そうすると、親機が省電力状態から復帰して印刷データにアクセスできるようになるまで子機の印刷処理が待たされ、印刷に時間を要したり、待たされている間に通信タイムアウトになって親機の印刷データを印刷できずに終了したりする事態が生じてしまう。
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、記憶デバイスに格納された印刷データを外部の画像形成装置から確実かつ迅速にアクセスできるように制御する画像形成装置、その状態制御方法および画像形成システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、外部の情報機器から印刷データを受信する通信デバイスと、受信した印刷データを格納する記憶デバイスと、前記記憶デバイスに格納された印刷データを印刷する画像形成部と、通信可能で前記印刷データへアクセス可能な即応可能状態および通信可能だが前記印刷データへアクセス不能で電力消費が前記即応可能状態より小さい応答可能状態を少なくとも有する複数の電力状態のうち何れをとるかを制御する制御部とを備え、前記制御部は、外部の画像形成装置からの要求に応答して前記印刷データを前記画像形成装置へ送信し、かつ、前記即応可能状態において、電源をオフすべき要求があった場合に外部の所定の画像形成装置が通信可能な状態か否か判断し、通信不能な場合に前記応答可能状態へ遷移させる画像形成装置を提供する。
【0008】
さらにの発明は、外部の画像形成装置と通信可能な画像形成装置であって、第1の動作状態または前記第1の動作状態より電力消費の少ない第2の動作状態で動作するよう制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第1の動作状態にあるときに前記第2の動作状態への移行要求を受け付けた場合、前記外部の画像形成装置との通信が不可能である場合に、第2の動作状態へ移行する事を特徴とする画像形成装置を提供する。
【0009】
また、異なる観点からこの発明は、画像形成装置を制御するコンピュータが、外部の情報機器から印刷データを受信して記憶デバイスに格納するステップと、外部の画像形成装置から要求を受けて前記印刷データを前記画像形成装置へ送信するステップと、通信可能で前記印刷データへアクセス可能な即応可能状態および通信可能だが前記印刷データへアクセス不能で電力消費が前記即応可能状態より小さい応答可能状態を少なくとも有する複数の電力状態のうち一の電力状態を他の電力状態へ遷移させるステップとを備え、電源をオフすべき要求があった場合に外部の所定の画像形成装置が通信可能な状態か否か判断し、通信不能な場合に前記応答可能状態へ遷移させる画像形成装置の状態制御方法を提供する。
【0010】
さらに異なる観点から、この発明は、親機である画像形成装置と子機である1以上の画像形成装置と情報機器とが通信可能に接続されたシステムであって、親機は、何れかの情報機器から印刷データを受信する親機通信デバイスと、受信した印刷データを格納する親機記憶デバイスと、前記印刷データを印刷可能な親機画像形成部と、子機からの要求に応答して前記印刷データを子機へ送信し、かつ、通信可能で前記印刷データへアクセス可能な即応可能状態および通信可能だが前記印刷データへアクセス不能で電力消費が前記即応可能状態より小さい応答可能状態を少なくとも有する複数の電力状態のうち何れをとるかを制御する親機制御部とを備え、子機は、親機に格納された印刷データを要求しその印刷データを受信する子機通信デバイスと、親機から受信した印刷データを印刷する子機画像形成部と、前記印刷に係る処理を制御する子機制御部とを備え、前記親機制御部は、前記即応可能状態において、電源をオフすべき要求があった場合、子機が通信可能な状態か否か判断し、通信不能な場合に親機を前記応答可能状態へ遷移させる画像形成システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
この発明による画像形成装置において、制御部は、前記即応可能状態において、電源をオフすべき要求があった場合に外部の所定の画像形成装置が通信可能な状態か否か判断し、通信不能な場合に応答可能状態へ遷移させるので、記憶デバイスに格納された印刷データを外部の画像形成装置から確実かつ迅速にアクセスできる。よって、前記所定の画像形成装置を用いた前記印刷データの印刷を確実かつ迅速に行うことができる。
この発明による画像形成装置の状態制御方法および画像形成システムの親機についても同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この実施形態における画像形成システムの構成例を示すブロック図である。
図2図1に示す親機の構成を示すブロック図である。
図3】この実施形態において、印刷されるべきデータの移動を示す説明図である。
図4】この実施形態において、組込プリントサーバの機能を用いた印刷の操作を示す第1の説明図である。
図5】この実施形態において、組込プリントサーバの機能を用いた印刷の操作を示す第2の説明図である。
図6】この実施形態において、組込プリントサーバの機能を用いた印刷の操作を示す第3の説明図である。
図7A】この実施形態において、親機に格納された印刷データを子機で印刷する場合の、親機および子機の処理を示す第1のフローチャートである。
図7B】この実施形態において、親機に格納された印刷データを子機で印刷する場合の、親機および子機の処理を示す第2のフローチャートである。
図8】この実施形態において、親機をシャットダウン状態に遷移させるべき事象が発生した場合の処理を示すフローチャートである。
図9図8に示す処理S39、41、43の遷移に対応する電力状態の状態遷移図である。
図10】この実施形態において、親機をシャットダウン状態に遷移させるべき事象が発生した場合の処理について図8と異なる態様を示すフローチャートである。
図11図10に示す処理S39、51、53に対応する電力状態の状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
【0014】
(実施の形態1)
≪印刷システムおよび画像形成装置の構成≫
図1は、この実施形態における画像形成システムの構成例を示すブロック図である。図1に示すように、前記画像形成システムは、親機100、第1の子機200、第2の子機201、第3の子機202、ノート型コンピュータ210、第1のデスクトップ型コンピュータ211および第2のデスクトップ型コンピュータ211がネットワークに接続されている。
【0015】
ノート型コンピュータ210、デスクトップ型コンピュータ211および212は、親機100あるいは子機200、201、202の何れかで印刷されるべきコンテンツを作成して、親機100、子機200、201、202の何れかに送る。
親機、子機は、例えば一つのネットワークに複数の画像形成装置が接続される際、設置を行うサービスエンジニアやネットワークを管理するアドミニストレータが任意の1台を親機に設定し、他を子機に設定することによって決定される。
【0016】
図2は、この実施形態における画像形成装置の代表例として、図1に示す親機100の構成を示すブロック図である。この実施形態の子機200、201および202は、親機100と同様の構成である。
図2で、通信デバイス101は、ネットワーク・インターフェイス回路であって、ネットワークを介して接続された外部の機器と通信を行うための回路である。通信は、有線であっても無線であってもよく、通信方式は問わない。
【0017】
記憶デバイス102は、不揮発性の記憶装置であって、後述する制御部104のCPUが実行するプログラムを格納する。さらに、外部の機器から印刷データの送信要求を受信した履歴であるアクセス履歴、画像形成部103を用いて印刷可能な印刷データおよび組込プリントサーバ機能において自機が親機として設定されているか否かのフラグを格納する。記憶デバイス102の具体的なハードウェアの例として、フラッシュメモリーやハードディスク装置が挙げられる。親機100の記憶デバイス102は、組込型のプリントサーバとして印刷データを格納する。
【0018】
なお、記憶デバイス102は、プリントサーバとして印刷データを格納するだけでなく、通常の画像形成装置と同様に自機が印刷するための印刷データを格納してもよい。
子機200、201および202も親機100と同様の構成であるので、印刷システムを構成する何れの画像形成装置が親機に設定されてもよい。親機として設定された画像形成装置の記憶デバイス102がプリントサーバとして印刷データを格納する。
【0019】
画像形成部103は、記憶デバイス102に格納された印字データを印刷可能なデータに変換して印刷する。印刷可能なデータへの変換は、例えばインタプリタやレンダラによって実現される。このようにして変換されたデータが印刷される。印刷は、その方式を問わないが一例として電子写真方式が挙げられる。
【0020】
制御部104は、CPUを中心として入出力回路やタイマー回路などの周辺回路を含む回路である。制御部104は、親機100の各部の動作を制御する。特に、この発明と関連深い制御として、画像形成装置の動作状態および電力状態の制御を行う。
操作部105は、親機100がユーザからの指示を受け付ける回路であって、一例として電源スイッチを含む種々の操作スイッチや表示装置の表面に配置されたタッチパネルが挙げられる。なお、ここで電源スイッチは画像形成装置の電源回路に配置されて電源を直接オンおよびオフする回路的なスイッチではなく、制御部104に電源オンおよびオフの要求を送るスイッチであって、電源のオンおよびオフは制御部104が制御する。
【0021】
以上のように、複数の画像形成装置がネットワークを介して通信可能に接続された図1の印刷システムにおいて、ユーザは通常の印刷を行うことができると共に、組込プリントサーバの機能を用いて印刷を行うことができる。
まず、通常の印刷について簡単に述べる。ユーザが例えばノート型コンピュータ210で印刷すべきデータを作成したとする。その場合、ユーザはネットワークを介して接続された親機100、子機200、201、202の何れかへ印刷すべきデータを送信する。送信先の親機または子機は、送信されたデータに基づいて印刷を行う。以上が、通常の印刷である。
【0022】
次に、組込プリントサーバの機能を用いた印刷について述べる。図1に示す印刷システムにおいて、何れか1台の画像形成装置が予め親機として設定されている。その親機を組込型のプリントサーバとして用いる印刷である。親機が組込型のプリントサーバとして機能するので、専用のPCサーバを用意しなくてもよい。親機以外の画像形成装置は、親機から印刷データを取得して印字する。
【0023】
≪組込プリントサーバを用いた印刷の手順≫
図3図6は、この実施形態において組込プリントサーバの機能を用いた印刷を説明する説明図である。図3は、この実施形態において、印刷されるべきデータの移動を示す説明図である。図3で、ユーザが例えばノート型コンピュータ210で印刷すべきコンテンツを作成したものとする。その場合ユーザは、まずネットワークを介して接続された親機100へ印刷すべきデータを送信する。
【0024】
図4は、ノート型コンピュータ210で印刷データを親機に送信する設定の一例を示す説明図である。印刷データを作成する際に、ユーザは自身のIDを用いて印刷に係るダイアログボックスにログインする。ログインの後、ノート型コンピュータ210のディスプレイにダイアログボックスが表示される。図4は、そのダイアログボックスの一部を示している。図4に示すダイアログボックスには、組込プリントサーバの機能を使用するか否かの選択肢が用意されている。ユーザが組込プリントサーバの選択肢にチェックボックスを入れて選択することにより、通常の印刷ではなく組込プリントサーバの機能を用いた印刷が選択される。その場合、ノート型コンピュータ210で作成された印刷データは、ユーザのIDと紐付けられて親機100へ送信される。そして、親機100の記憶デバイス102に格納される。
【0025】
ここで、ユーザが組込プリントサーバの選択肢にチェックボックスを入れなければ、通常の印刷が選択されたことになる。その場合、図示しないプリンタ選択画面に親機100、子機200、201および202が印刷データの送信先の選択肢として表示される。それらのうち何れかをユーザが選択すると、選択された画像形成装置へ印刷データが送られる。そして、送信先の画像形成装置で印刷が行われて出力される。
以上、印刷ダイアログボックスを用いて組込プリントサーバの機能を選択し、印刷データが親機100へ送られるように設定する操作が、コンピュータ側でユーザが実行する操作である。
次に、ユーザは親機100に格納された印刷データを出力したい画像形成装置が設置されている場所へ行って、操作部105を操作して前記印刷データを選択し印刷を指示する。印刷データを出力したい画像形成装置は、子機200、201および202のうちの何れであってもよく、さらに、親機100を含んでいてもよい。
【0026】
図5および図6は、親機100に格納された印刷データを取得して印刷するように指示する画面を示す説明図である。印刷データを出力したい親機または子機が設置された場所へ行って、操作部105を操作してユーザが自分のIDでログインすると、図5の操作画面が表示される。例えば、子機200に図5の操作画面が表示される。ここで、ログインのIDは、前述の印刷ダイアログボックスへのログインで用いたIDと同じものである。
図5の操作画面で、ログインユーザが「組込プリントサーバ」の操作キーにタッチすると、その操作に応答して親機100へのアクセスが行われる。そして、親機の記憶デバイス102に格納されている印刷データのうち、ログインユーザのIDに紐付けられた印刷データのリストが子機200の操作部に表示される(図6参照)。
一方、親機100は、子機200から印刷データの送信要求のアクセスがあったことを記憶デバイス102にアクセス履歴として格納する。記憶デバイス102は、印刷データの送信要求が送られてきたすべての子機の履歴をアクセス履歴として格納している。即ち、子機200以外から印刷データの送信要求を受けた場合も、その送信要求をアクセス履歴として格納する。
【0027】
図6に示す印刷データのリストから、ユーザが出力したい印刷データを選択して「印刷」キーを押すと、その操作に応答して、選択された印刷データの要求が親機100へ送られる。それに応答して、親機100から子機200へ印刷データが送られる。その印刷データを受領した子機200は、受領した印刷データを印刷して出力する。
以上、子機200で印刷する例を述べたが、親機100、子機201または子機202で印刷する場合の操作手順も同様である。親機100の場合は、自機の中で子機としての要求と親機としての印刷データの取得が行われる。
図7Aおよび図7Bは、組込プリントサーバの機能を用いた上述の印刷において、親機および子機がそれぞれ実行する処理を示すフローチャートである。
【0028】
フローチャートに沿って処理の流れを述べる。分り易いように上述の例と同様、ユーザは子機200から印刷出力を行うものとして説明する。また、子機200は、親機100と同様の構成であるとする。
子機200から印刷データを出力すべく、ユーザが子機200の操作部105を操作してログインすると、図5に示す操作画面が表示される。図5に示す操作画面で、「組込プリントサーバ」を選択するユーザからの操作を受付けると(図7AのステップS11のYes)、子機200の制御部104は、印刷データリストを要求する。即ち、親機100の記憶デバイス102に格納されている印刷データのうちでログインしたユーザのIDが紐付けられた印刷データのリストを親機100に対して要求する(ステップS13)。即ち、子機にログインする際に使用されたユーザのIDを付加したうえで、印刷データリストの要求を親機に送信し、印刷データリストを要求する。
【0029】
印刷データリストの要求を受けた親機100の側では(ステップS101)、親機の制御部104が、受信した印刷データリストの要求に付加されたIDと同一のIDが紐付けられ記憶デバイス102に格納されている印刷データを捜す(ステップS103)。該当する印刷データがあれば、その印刷データのリストを子機200に返す(ステップS105)。一方、該当する印刷データがなければ、印刷データがない旨を子機に返す(ステップS107)。
【0030】
子機200の制御部104は、親機100からの応答を受信すると、印刷データがある場合は受信した印刷データリストを操作部105に表示する(図6参照)。該当する印刷データがなければ、その旨を表示して処理を終了する。
印刷データリストが子機200の操作部105に表示され、その中から出力したい印刷データがユーザによって選択されたら(図7BのステップS17)、子機200の制御部104は、選択された印刷データを親機100に要求する(ステップS19)。
印刷データの要求を受けた親機100の側では(ステップS107)、親機の制御部104が、要求された印刷データを記憶デバイス102から読みだして子機200へ送信する(ステップS109)。
親機100から印刷データを受信すると、子機200の制御部104は、受信した印刷データを子機200の画像形成部103で印刷し出力させる(ステップS21)。
【0031】
≪画像形成装置の動作状態と電力状態の対応付け≫
この実施形態において、親機100および子機200、201および202は、ある時点でそれぞれ以下の4つの動作状態のうち何れか一つの動作状態をとり、それぞれの画像形成装置において発生した事象や受け付けた操作に応答して一の状態から他の状態へと遷移する。各動作状態に対して何れかの電力状態が対応付けられている。動作状態が遷移すると、各動作状態に対応付けられている電力状態も遷移する。ただし、元の動作状態に対応する電力状態と遷移先の動作状態に対応する電力状態が同じ場合は電力状態の遷移が生じないで動作状態のみ遷移する。
1)稼働状態:図2に示す親機100の各部に通電して画像形成に係る処理を実行している動作状態である。この状態は印刷データへのアクセスが可能だが画像形成に係る処理を実行するために親機100が動作しているので電力消費が大きい。電力状態としては即応可能状態に対応する。
2)待機状態:図2に示す親機100の各部に通電いるが画像形成に係る処理を実行していない動作状態である。外部の機器から印刷処理または印刷データの送信要求を受付けたら即時実行開始可能な状態である。印刷データへのアクセスが可能だが電力消費が稼働状態に次いで大きい。電力状態は即応可能状態に対応する。
3)省電力状態:親機100の一部、例えば、通信デバイス101のみ動作可能な状態で、他の部分は電源が遮断された動作状態である。よって、外部の機器から印刷処理または印刷データの送信要求を受付けたら、省電力状態で通電が遮断されている部分に通電したうえで各部を動作させるために起動処理が必要であって、起動には時間を要する。印刷データへのアクセスは即座にできないが、印刷データへのアクセスに係る各部分の起動後に可能になる。即ち、印刷データへのアクセスに時間を要する。電力消費が稼働状態や待機状態よりも小さい。即ち、上述の即応可能状態と異なり、この省電力状態に対応する電力状態は、応答可能状態である。
4)シャットダウン状態:各部への電源が遮断され、外部の機器から印刷処理または印刷データの送信要求を受けても印刷処理を開始できない動作状態である。印刷データへのアクセスができない。電力消費は、上述の即応可能状態および応答可能状態よりも小さい。このシャットダウン状態に対応する電力状態は、応答不能状態である。
【0032】
≪親機の電源オフに伴う電力状態制御≫
親機が、電力状態としての即応可能状態に対応する稼働状態(上記項目の1)もしくは待機状態(上記項目の2)の何れかの動作状態にあるとき、親機100の図示しない電源スイッチがユーザによって操作され、電源オフの指示を受付けた場合の処理について述べる。
電源スイッチがオフされると、制御部104は、自機が親機として設定されているか否かを調べる。親機として設定されていない場合、即ち、子機の場合、制御部104はシャットダウン状態へ動作状態の遷移を実行する。稼働状態で電源オフを受付けた場合は、画像形成に係る処理の実行を停止してシャットダウン状態へ遷移する。シャットダウン状態への遷移に伴って電力状態は応答不能状態に遷移する。
一方、親機として設定されている場合、制御部104は子機からのアクセス履歴を参照する。そして、アクセスのあった子機に対して現在の子機の動作状態を確認する。すべての子機の動作状態がシャットダウン状態であれば子機からのアクセスが低いと判断し、自機の動作状態を待機状態に遷移させる。それに伴って電力状態は応答可能状態に遷移する。もし子機からのアクセスがあれば時間を要しても親機としてそのアクセスに応答可能な状態でいるためである。しかし、何れかの子機がシャットダウン状態以外の状態であれば、子機からアクセスされる可能性が高いと判断する。その場合、自機の動作状態を子機からのアクセスに応答できる待機状態に遷移させる。それに伴って電力状態は即応可能状態に遷移する。シャットダウン状態へは遷移させない。
【0033】
図8は、この実施形態において、親機100の動作状態をシャットダウン状態に遷移させるべき事象が発生した場合の処理を示すフローチャートである。
図8に示すように、親機の制御部104は、電源スイッチのオフの操作を受付けると、まず、記憶デバイス102を参照して自機が親機として設定されているか否かを調べる(ステップS31)。
親機として設定されていなければ(ステップS31のNo)、動作状態をシャットダウン状態へ遷移させる(ステップS33)。そして、処理を終了する。
一方、親機として設定されている場合(ステップS31のYes)、制御部104は、記憶デバイス102にアクセス履歴があるか否かを調べる(ステップS35)。アクセス履歴がなければ、外部の子機から印刷データを要求されたことがないということである。その場合は、設置されて日が浅く未だ外部の子機からのアクセスを受けていないことも考えられる。そこで、外部の子機から新たにアクセスを受けても即応できるように動作状態を待機状態へ遷移させる(ステップS37)。それに伴って電力状態は即応可能状態に遷移する。そして、処理を終了する。
【0034】
一方、前記ステップS35で、アクセス履歴がある場合、制御部104は、アクセス履歴のある子機に対して通信を行って応答が返るか否かを調べる。対象の子機が複数ある場合は、それぞれの子機について応答が返るか否かを調べる。即ち、アクセス履歴のある子機が通信可能な状態、つまりシャットダウン状態以外の状態にあるか否かを調べる(ステップS39)。
対象となった何れかの子機から応答が返った場合(ステップS39のYes)、その子機からアクセスされる可能性が高いと判断する。そして、アクセスがあった場合速やかに応答できるように、制御部104は自機の動作状態を待機状態に遷移させる(ステップS43)。それに伴って電力状態は即応可能状態に遷移する。
一方、何れの子機からも応答が返らない場合(ステップS39のNo)、子機からアクセスされる可能性が低いと判断し、制御部104は自機の動作状態を省電力状態へ遷移させる(ステップS41)。それに伴って電力状態は応答可能状態に遷移する。
【0035】
図9は、図8に示す処理SS35〜43の動作状態の遷移に対応して電力状態の遷移を示す状態遷移図である。
図9に示す3つの長円形は、異なる動作状態を示している。即ち、稼働状態、待機状態、省電力状態の3つの動作状態を示している。実線の長円形は、対応する電力状態が即応可能状態であることを示している。鎖線の長円形は、対応する電力状態が応答可能状態であることを示している。即ち、稼働状態と待機状態には電力状態として即応可能状態が対応し、省電力状態には電力状態として応答可能状態が対応することを示している。
また、実線の矢印は何れかの子機から応答がある場合の遷移を示し、鎖線の矢印は何れの子機からも応答がない場合の遷移を示している。
【0036】
図9で、稼働状態から待機状態への遷移は、稼働状態で電源オフの要求を受け、子機のアクセス履歴がないので動作状態を待機状態へ遷移させる処理(図8のステップS35のNoからS37)に対応する。あるいは、何れかの子機から応答があったので待機状態に遷移させる処理(図8のステップS39のYesからS43)に対応する。
図9で待機状態から待機状態への遷移は、待機状態で電源オフの要求を受け、子機のアクセス履歴がないので動作状態を待機状態へ遷移させる処理(図8のステップS35のNoからS37)に対応する。あるいは、何れかの子機から応答があったので待機状態に遷移させる処理(図8のステップS39のYesからS43)に対応する。
【0037】
一方、図9で稼働状態から省電力状態への遷移は、稼働状態で電源オフの要求を受け、子機から応答がないので省電力状態に遷移させる処理(図8のステップS39のNoからS41)に対応する。
図9で待機状態から省電力状態への遷移は、待機状態で電源オフの要求を受け、子機から応答がないので省電力状態に遷移させる処理(図8のステップS39のNoからS41)に対応する。
【0038】
(実施の形態2)
この実施の形態では、動作状態について実施の形態1と異なる態様を示す。具体的には、実施の形態1で唯一つの待機状態が、この実施形態では操作部105の表示がオンの待機状態Aと前記表示がオフの待機状態Bの2種類あるものとする。待機状態Bにおける表示のオフ状態は、省電力状態における操作部105の状態に等しいかまたは類似している。
制御部104は、電源オフの要求に応答して待機状態へ遷移する場合は、動作状態を待機状態B(表示オフ)へ遷移させる。一方、電源オン後や画像形成の処理が終了した場合は待機状態A(電源オン)へ遷移させる。
【0039】
図10は、この実施形態において電源オフの要求を受付けた制御部が動作状態を遷移させる処理を示す図3に対応するフローチャートである。図10で、図3と同様の部分には同様の符号を付している。符号が異なるのは、ステップS51およびS53の処理の部分である。いずれも、動作状態を待機状態Bへの遷移させている。
図11は、図10に示すフローチャートに対応する状態遷移図である。実施の形態1における図9に対応するものである。
図9と同様に、4つの長円形は、異なる動作状態を示している。即ち、稼働状態、待機状態A(表示オン)、待機状態B(表示オフ)、省電力状態の4つの動作状態を示している。
【0040】
また、図9と同様に、実線の長円形は、対応する電力状態が即応可能状態であることを示している。鎖線の長円形は、対応する電力状態が応答可能状態であることを示している。つまり、稼働状態、待機状態Aおよび待機状態Bには電力状態として即応可能状態が対応し、省電力状態には電力状態として応答可能状態が対応することを示している。
また、実線の矢印は何れかの子機から応答がある場合の遷移を示し、鎖線の矢印は何れの子機からも応答がない場合の遷移を示している。
【0041】
図11で、稼働状態から待機状態Bへの遷移は、稼働状態で電源オフの要求を受け、子機から応答があったので待機状態Bに遷移させる処理(図10のステップS39のYesからS53)に対応する。
図11で待機状態Aから待機状態Bへの遷移は、待機状態Aで電源オフの要求を受け、機から応答があったので待機状態Bに遷移させる処理(図10のステップS39のYesからS53)に対応する。操作部105をユーザが見ると、表示がオフになるので電源オフの操作に制御部104が応答したことがわかる。
【0042】
一方、図11で稼働状態から省電力状態への遷移は、稼働状態で電源オフの要求を受け、子機から応答がないので省電力状態に遷移させる処理(図10のステップS39のNoからS51)に対応する。
図11で待機状態Aから省電力状態への遷移は、待機状態Aで電源オフの要求を受け、子機から応答がないので省電力状態に遷移させる処理(図10のステップS39のNoからS51)に対応する。
【0043】
図10には図示していないが、例えば電源オフの要求を受けて待機状態Bへ遷移した後、制御部104が親機の電源オンのトリガとなる操作の有無および子機の動作状態を逐次モニタしてもよい。そして、電源オンのトリガがなくかつ何れの子機もシャットダウン状態のまま所定期間が経過した場合、動作状態を待機状態Bから省電力状態へ遷移させるようにしてもよい。
上述の遷移に対応して、図11で待機状態Bから待機状態Bへの遷移および待機状態Bから省電力状態への遷移を示している。待機状態Bから待機状態Bへの遷移は、何れかの子機から応答が返った場合に対応する。待機状態Bから省電力状態への遷移は、何れの子機もシャットダウン状態のまま所定期間が経過した場合に対応する。
【0044】
(実施の形態3)
実施の形態1では、親機100をシャットダウン状態に遷移させるべき事象として、親機100の電源スイッチがユーザによりオフされた場合について述べた。
しかし、ユーザによる電源オフ操作ではなく、親機100が予め定められた条件を満足すると自律的に電源オフ操作を受付けた場合と同様の処理(自律電源オフの処理)を実行する場合がある。例えば、親機100が電源オフ操作を受付けた場合と同様に自律電源オフの処理をすべきオフ時刻および前記自律電源オフ後に、自律的に電源オンの処理(自律電源オン)を実行すべきオン時刻が予め設定されている場合がある。制御部104は、オフ時刻が到来したら自律的に親機100の動作状態を遷移させる。あるいは、親機100が何れのジョブも実行せずに予め定められた期間が経過した場合に、自律的にシャットダウン状態に遷移させる態様も考えられる。
そのように、親機100が自律電源オフする場合も、制御部104は図8に示す処理を実行する。
そして、アクセス履歴のある何れかの子機から印刷データが要求される可能性があると判断したら、その要求に応答できるように動作状態を省電力状態または待機状態とする。
【0045】
(実施の形態4)
実施の形態3で、親機100が自律電源オフを実行し、また、自律電源オフ後に自律電源オンするように予めオフ時刻およびオン時刻が設定されている態様について述べた。
この実施形態では、子機も親機100と同様に、オフ時刻およびオン時刻が設定され、子機はオフ時刻になると自律電源オフを実行し、また、オン時刻になると自律電源オンする機能を有しているものとしている。
そして、親機100は、アクセス履歴のある子機に対して、その子機に設定されているオフ時刻およびオン時刻を知らせるように要求する。要求は、例えば親機100が電源オンするタイミングで行われてもよい。あるいは、所定の期間が経過したら、繰り返し要求が送られてもよい。
【0046】
要求に応答して子機が、オフ時刻およびオン時刻の設定を返すと、それを受信した親機100の制御部104は、子機のオフ時刻およびオン時刻の設定を記憶デバイス102に格納する。なお、オフ時刻およびオン時刻が設定されていない子機は、設定されていない旨を親機100に返す。
アクセス履歴のあるそれぞれの子機からオフ時刻およびオン時刻の設定を取得したら、親機100の制御部104は、それらの設定を参照し、何れの子機も自律電源オフ後かつ自律電源オン前の期間にのみ、自機を自律電源オフするように制御する。何れかの子機が自律的にシャットダウン状態から復帰している期間は、動作状態を省電力状態または待機状態の何れかに遷移させて子機から印刷データの要求があった場合、その要求に応答できる状態にしておく。
【0047】
以上に述べたように、
(i)この発明による画像形成装置は、外部の情報機器から印刷データを受信する通信デバイスと、受信した印刷データを格納する記憶デバイスと、前記記憶デバイスに格納された印刷データを印刷する画像形成部と、通信可能で前記印刷データへアクセス可能な即応可能状態および通信可能だが前記印刷データへアクセス不能で電力消費が前記即応可能状態より小さい応答可能状態を少なくとも有する複数の電力状態のうち何れをとるかを制御する制御部とを備え、前記制御部は、外部の画像形成装置からの要求に応答して前記印刷データを前記画像形成装置へ送信し、かつ、電源をオフすべき要求があった場合に外部の所定の画像形成装置が通信可能な状態か否か判断し、通信不能な場合は前記応答可能状態へ遷移させることを特徴とする。
【0048】
この発明において、情報機器は、印刷データを作成する例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を含み、さらに、印刷データを印刷する画像形成装置を含む。
印刷データは、画像形成装置が印刷を行うために使用されるデータであればよくデータの形式は問わない。
通信デバイスは、画像形成装置が外部の画像形成装置や情報機器と通信を行うためのインターフェイス回路である。通信方式は問わない。
記憶デバイスは、好ましくは不揮発性の記憶装置である。その具体的な態様は、例えば、フラッシュメモリーやハードディスクドライブである。
【0049】
また、制御部は、画像形成装置の各部の動作および動作状態を制御するものである。その具体的な態様は、例えば、CPUやマイクロコンピュータを中心として入出力回路等を含んだハードウェア資源とソフトウエアとが協働してその機能が実現されるものである。
電力状態とは、画像形成装置が稼働中および稼働していないとき、その状態に応じて電力消費を管理するために設けられたものであって、画像形成装置の動作状態に対応づけられている。特に、画像形成装置が稼働していない場合に不要な部分の消費電力を抑えるために規定される。
上述の実施形態における動作状態のうち稼働状態および待機状態は、この発明に係る電力状態の即応可能状態に対応する。また、実施形態における動作状態のうち省電力状態は、この発明に係る電力状態の応答可能状態に対応する。
【0050】
画像形成装置の電力状態が即応可能状態のときに電源オフの要求を受けかつ外部の所定の情報機器が通信可能な状態の場合、制御部は現在の即応可能状態を維持する。
一方、画像形成装置の電力状態が応答可能状態のときに電源オフの要求を受けかつ外部の所定の情報機器が通信可能な状態の場合、制御部は現在の応答可能状態を即応可能状態へ遷移させる。
【0051】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)前記制御部は、外部の画像形成装置から前記印刷データの送信要求を受けたことのある場合に、その画像形成装置を前記所定の画像形成装置として前記記憶部に記憶するように制御してもよい。
このようにすれば、印刷データの送信要求を受けたことのある画像形成装置を所定の画像形成装置として記憶しておき、記憶された画像形成装置が通信可能場合は応答不能状態へ遷移させずにおくことで、その画像形成装置から印刷データの送信要求を再度受けた場合に確実かつ迅速に応答できる。
【0052】
(iii)前記制御部は、ユーザの操作を受付ける操作部をさらに備え、前記即応可能状態から他の状態へ遷移させるように要求するユーザの操作を前記操作部が受け付けた場合に、前記所定の画像形成装置に対する通信を試み、通信を試みた画像形成装置の少なくとも一つが通信可能であれば前記所定の画像形成装置が通信可能な状態と判断して前記応答可能状態へ遷移させないようにしてもよい。
このようにすれば、印刷データの送信要求を受けたことのある画像形成装置を所定の画像形成装置として記憶しておき、記憶された画像形成装置が通信可能場合は応答可能状態へ遷移させずにおくことで、その画像形成装置から印刷データの送信要求を再度受けた場合に確実かつ迅速に応答できる。
【0053】
(iv)前記電力状態は、通信不能かつ前記印刷データへアクセス不能で電力消費が最も小さい応答不能状態を含み、前記制御部は、前記所定の画像形成装置とそれぞれ通信し、通信相手の画像形成装置が自律的な電源オフ処理である自律電源オフを実行すべき時刻および前記自律電源オフの後自律的に前記即応可能状態または前記応答可能状態に遷移すべき自律電源オンの時刻として当該画像形成装置の記憶部に記憶されている設定データを取得し、取得された設定データに基づいて前記所定の画像形成装置の何れかが応答不能状態でない期間は、自機の自律電源オフを実行せず、かつ、前記所定の画像形成装置の何れもが自律電源オフ後でかつ自律電源オン前の期間中に自機の自律電源オフを実行しようとする際、前記所定の画像形成装置に対する通信を試み、通信を試みた画像形成装置の少なくとも一つが通信可能であれば自機の自律電源オフを抑制するようにしてもよい。
【0054】
このようにすれば、前記所定の画像形成装置が何れも自律電源オフ後かつ自律電源オン前の期間以外は自機を応答可能な状態にしておき、さらに、前記画像形成装置が何れも自律電源オフ後かつ自律電源オン前の期間中に自機の自律電源オフを実行しようとする際に、前記所定の画像形成装置の少なくとも一つが通信可能であれば自機の自律電源オフを抑制できる。即ち、前記所定の画像形成装置の何れかが応答不能状態にない場合は自機の自律電源オフを抑制するので、前記所定の画像形成装置から印刷データの送信要求を再度受けた場合に確実かつ迅速に応答できる。
上述の実施形態におけるシャットダウン状態はこの発明における応答不能状態に該当する。
【0055】
この発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0056】
100:親機、 101:通信デバイス、 102:記憶デバイス、 103:画像形成部、 104:制御部、 105:操作部、 200,201,202:子機、 210:ノート型コンピュータ、 211、212:デスクトップ型コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11