(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、油圧制御システムとして、本発明の油圧制御装置がエンジンに搭載された構成を例にして説明する。
【0017】
[油圧制御システム]
図1は、油圧制御システム1のブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の油圧制御システム1は、エンジン(被供給部)2と、油圧制御装置3と、を主に備えている。
【0018】
<エンジン>
エンジン2は、シリンダヘッド及びシリンダブロックにより画成されたエンジン本体11と、エンジン本体11の下部に取り付けられたオイルパン(オイル供給源)12と、を有している。
エンジン本体11内には、オイルの供給対象13である種々の潤滑部材や冷却部材、油圧デバイスが収容されている。供給対象13としては、例えばピストンやクランクシャフト、カムシャフト、VTC(Valve Timing Control SYSTEM)等が挙げられる。供給対象13には、オイルフィルタ15を通過したオイルがメインギャラリ16を通過した後、各分配流路17を経て供給される。なお、供給対象13に供給されたオイルは、供給対象13を通過した後、オイルパン12に戻される。
【0019】
<油圧制御装置>
油圧制御装置3は、可変容量ポンプ21と、ソレノイドバルブ(電磁弁)22と、制御部に相当するECU(Engine Control Unit)23と、を備えている。
【0020】
<可変容量ポンプ>
可変容量ポンプ21は、エンジン2(クランクシャフト)の回転に応じて回転するとともに、エンジン2の1回転毎に吐出されるオイルの吐出量(ポンプ容量)が変更可能に構成されている。可変容量ポンプ21には、例えばベーンポンプが用いられている。
【0021】
可変容量ポンプ21は、ハウジング31と、ハウジング31に収容されたカムリング32、カムスプリング33及びポンプ部34と、を主に有している。
ハウジング31は、正面視(紙面垂直方向)で矩形枠状の周壁部36と、周壁部36の両端開口部を閉塞する第1エンド部37及び第2エンド部(不図示)と、を主に有している。なお、ハウジング31は、主に周壁部36及び第1エンド部37を構成する箱型のポンプボディ41と、ポンプボディ41の開口部を閉塞するとともに、主に第2エンド部を構成するカバーと、に分割構成されている。
【0022】
ハウジング31内には、カムリング32及びポンプ部34を収容するポンプ収容部44と、ポンプ収容部44に連通するスプリング収容部45と、が画成されている。
【0023】
ポンプ収容部44は、正面視で矩形状に形成されている。周壁部36のうち、第1壁部51には、第1壁部51を貫通する吸入ポート52が形成されている。吸入ポート52は、吸入流路53を通してポンプ収容部44内とオイルパン12内に連通させている。なお、吸入流路53の上流端部には、ストレーナ54が接続されている。
【0024】
ハウジング31には、吐出ポート58が形成されている。吐出ポート58は、周壁部36のうち、例えば第1壁部51に対向する第2壁部56で開口している。吐出ポート58は、供給流路61を通してポンプ収容部44内と上述したオイルフィルタ15とを連通させている。本実施形態において、供給流路61からは、オイルパン12に向けて延びるエマージェンシー流路62が分岐している。エマージェンシー流路62には、エマージェンシーバルブ63が設けられている。エマージェンシー流路62は、供給流路61内で過大圧力が発生したときにエマージェンシーバルブ63が開弁して、供給流路61とオイルパン12内とを連通させる。これにより、供給流路61内にオイルがエマージェンシー流路62を通ってオイルパン12に流出し、供給流路61内の圧力を解放する。
【0025】
スプリング収容部45は、正面視でポンプ収容部44よりも小さい矩形状に形成されている。スプリング収容部45は、上述した周壁部36のうち、第1壁部51と第2壁部56とを架け渡す第3壁部64に形成されている。スプリング収容部45は、第3壁部64の内面においてポンプ収容部44に開口している。
【0026】
カムリング32は、正面視で円形状の貫通孔71を有する角筒状に形成されている。カムリング32は、ポンプ収容部44内において、上述した第3壁部64に接近離間する方向にスライド移動可能に構成されている。ポンプ収容部44内において、第3壁部64に対向する第4壁部74と、カムリング32と、の間には、制御室S1が画成されている。制御室S1は、制御流路77を通じてソレノイドバルブ22からオイルが供給可能に構成されている。カムリング32は、制御室S1に発生する圧力(以下、「制御圧Pa」という。)に応じてスライド移動することで、制御室S1を拡縮させる。すなわち、カムリング32のうち、第4壁部74の内面に対向する対向面は、制御圧Paを受ける制御面32aとして機能する。
【0027】
カムリング32において、第1壁部51と対向する部分には、吸入連通路72が形成されている。吸入連通路72は、貫通孔71内と吸入ポート52内とを連通させている。カムリング32のうち、第2壁部56に対向する部分には、第2壁部56の内面に密接する一対のチップシール(第1チップシール75及び第2チップシール76)が取り付けられている。ポンプ収容部44内において、カムリング32、第2壁部56及び各チップシール75,76に画成された部分には、圧力室S2が画成されている。圧力室S2は、例えば第1エンド部37に形成された吐出連通路78を通じて貫通孔71内に連通するとともに、上述した吐出ポート58に連通している。
【0028】
圧力室S2には、ポンプ部34から送出されるオイルが流入することで、吐出圧Pbが作用する。したがって、カムリング32は、圧力室S2内で発生する吐出圧Pbによって第1壁部51に向けて押さえ付けられている。すなわち、カムリング32のうち、第1壁部51の内面に対向する対向面は、制御室S1と吸入ポート52との間を仕切り、かつカムリング32のスライドに伴い第1壁部51の内面に摺動する押付面32bとして機能する。一方、カムリング32のうち、第2壁部56の内面に対向する対向面は、吐出圧Pbを受ける受圧面32cとして機能する。
【0029】
カムリング32は、第1チップシール75を介して圧力室S2(吐出ポート58)と制御室S1との間を仕切っている。すなわち、カムリング32は、制御室S1及び吐出ポート58間、並びに制御室S1及び吸入ポート52間を仕切っている。なお、ポンプ収容部44内において、カムリング32と第3壁部64との間には大気圧が作用する開放室S3を構成している。カムリング32は、第2チップシール76を介して圧力室S2と開放室S3との間を仕切っている。
【0030】
カムスプリング33は、スプリング収容部45内に収容されている。具体的に、カムスプリング33は、スプリング収容部45の内面と、カムリング32における第3壁部64との対向面と、の間に弾性変形した状態で介在している。すなわち、カムスプリング33には、所定のカムセット荷重W1が付与されている。したがって、カムスプリング33は、カムリング32を第4壁部74に向けて(制御室S1が縮小する方向に向けて)常に付勢している。
【0031】
ポンプ部34は、カムリング32内に回転可能に収容されている。具体的に、ポンプ部34は、ロータ81と、複数のベーン82と、ガイドリング83と、を備えている。
【0032】
ロータ81は、軸線O1に沿って延びるシャフト85と、シャフト85に固定されたロータコア86と、を備えている。
シャフト85は、カムリング32のスライド方向に直交する方向(紙面垂直方向)に延びる軸線O1に沿って延在している。シャフト85のうち、軸線O1に沿うポンプ軸方向の両端部は、第1エンド部37及び第2エンド部に回転可能に支持されている。シャフト85は、例えばクランクシャフトに直接又は間接で接続されている。したがって、シャフト85は、クランクシャフトの回転に連動して回転する。
【0033】
ロータコア86は、外径が貫通孔71の内径よりも小さい筒状に形成されている。ロータコア86は、貫通孔71内においてシャフト85に外嵌されている。ロータコア86には、軸線O1に対して放射状に延びる複数のスリット87が形成されている。各スリット87は、ロータコア86の外周面でそれぞれ開口している。
【0034】
ベーン82は、上述した各スリット87内に各別に収容されている。ベーン82は、軸線O1に直交するポンプ径方向にそれぞれスライド移動可能構成されている。ベーン82の先端面(ポンプ径方向の外側端面)は、ロータ81の回転に伴いカムリング32の内周面を摺動可能に構成されている。
【0035】
ガイドリング83は、ポンプ軸方向におけるシャフト85の両端部(ロータコア86よりも外側に位置する部分)にそれぞれ外挿されている(
図1では一方のガイドリング83のみを示す)。各ガイドリング83は、外径がロータコア86の外径よりも小さく、内径がシャフト85の外径よりも大きくなっている。各ガイドリング83の外周面には、各ベーン82におけるポンプ径方向の内側端面が摺動可能に当接している。したがって、ロータ81、カムリング32の内周面及びガイドリング83の外周面の間には、各ベーン82によって仕切られた扇状のポンプ室S4が複数画成される。
【0036】
上述した各ポンプ室S4のうち、ロータ81の回転方向(図示の例では反時計回り)において、吸入連通路72と吐出連通路78との中間部分に対して吸入連通路72側の領域は、吸入領域になっている。一方、ポンプ室S4のうち、吸入連通路72と吐出連通路78との中間部分に対して吐出連通路78側の領域は、吐出領域になっている。可変容量ポンプ21では、吸入領域において吸入連通路72から中間部分に至る各ポンプ室S4の容積が増大する量の差分(吐出領域において中間部分から吐出連通路78に至る各ポンプ室S4の容積が減少する量の差分)に応じて吐出ポート58からのオイルの吐出量が変化する。
【0037】
すなわち、カムリング32(制御面32a)が第4壁部74に最接近している場合、ガイドリング83の軸線O2は、軸線O1に対して最も偏心した状態になる。この際、各ポンプ室S4間での容積変化が最大となるため、吐出量が最大となる。具体的に、各ポンプ室S4の容積が吸入連通路72から中間部分に向かう従い大きくなることで、吸入連通路72を通じてポンプ室S4にオイルが吸入される。一方、各ポンプ室S4の容積が、中間部分から吐出連通路78に接近するに従い小さくなることで、吐出連通路78を通じてポンプ室S4からオイルが吐出される。
【0038】
図2は、可変容量ポンプ21が同心位置にある場合の油圧制御システム1のブロック図である。
図2に示すように、可変容量ポンプ21では、カムリング32の移動量に応じて各ポンプ室S4の容積が変化する。具体的に、カムリング32(制御面32a)と第4壁部74とが離間するに従い、軸線O1,O2の偏心量が縮小する。そのため、各ポンプ室S4間での容積変化が小さくなり、吐出量が減少する。なお、本実施形態の可変容量ポンプ21では、軸線O1,O2が同軸上に配置された場合(同心位置)には、各ポンプ室S4の容積変化がゼロとなり、吐出量はゼロになる。
【0039】
<ソレノイドバルブ>
図1に示すように、ソレノイドバルブ22は、制御圧Paを制御して、可変容量ポンプ21の吐出量(カムリング32の偏心量)を制御する。具体的に、ソレノイドバルブ22は、バルブボディ100と、栓体101と、ソレノイド102と、スプール103と、を主に備えている。なお、本実施形態において、ソレノイドバルブ22は、可変容量ポンプ21のハウジング31に一体に組み付けられている。但し、ソレノイドバルブ22は、可変容量ポンプ21と別体で設けられていても構わない。
【0040】
バルブボディ100は、軸線O3に沿って延びる有底筒状に形成されている。バルブボディ100の周壁部110には、周壁部110を貫通する入力ポート111及び制御ポート112が形成されている。各ポート111,112は、軸線O3に沿うバルブ軸方向において、バルブボディ100の開口部寄りに位置する部分(以下、「第1側」という。)に、バルブ軸方向に間隔をあけて配置されている。
【0041】
入力ポート111は、入力流路115を通じてメインギャラリ16に連通している。
制御ポート112は、入力ポート111に対してバルブ軸方向の第1側に位置している。制御ポート112は、制御流路77を通じて制御室S1内に連通している。なお、各ポート111,112の形状は、軸線O3回りのバルブ周方向に延びるスリット形状や丸孔等、適宜変更が可能である。
【0042】
栓体101は、バルブボディ100の周壁部110内において、制御ポート112よりもバルブ軸方向の第1側に位置する部分に、圧入等によって固定されている。
【0043】
ソレノイド102は、バルブボディ100内における底壁部116寄りに位置する部分(以下、バルブ軸方向の「第2側」という。)に配置されている。具体的に、ソレノイド102は、コイル120と、プランジャ121と、を備えている。
【0044】
コイル120は、周壁部110内において、バルブ軸方向の第2側に位置する部分に嵌合されている。コイル120には、ECU23により算出される電流信号(DUTY信号)に基づき、電流が流れる(励磁される)。
プランジャ121は、コイル120の内側に、軸線O3と同軸で配置されている。プランジャ121は、コイル120との間に作用する電磁力Waによって、バルブ軸方向に移動可能に構成されている。
【0045】
スプール103は、バルブボディ100内において、ソレノイド102に対してバルブ軸方向の第1側に収容されている。スプール103は、バルブボディ100内をバルブ軸方向に移動することで、制御ポート112と制御室S1との連通及び遮断を切り替える。本実施形態では、スプール103のバルブ軸方向での移動量に応じて、制御ポート112と制御室S1との連通量を無段階で変更できるように構成されている。
【0046】
スプール103は、軸部130と、軸部130におけるバルブ軸方向の両端部にそれぞれ形成された第1弁座部131及び第2弁座部132と、を有している。
軸部130は、軸線O3と同軸に配置されている。軸部130は、バルブ軸方向の第1側に向かうに従い漸次拡径するテーパ状に形成されている。軸部130におけるバルブ軸方向の第1側の端部と、栓体101と、の間には、バルブスプリング135が介在している。バルブスプリング135には、所定のバルブセット荷重W2が付与されている。すなわち、バルブスプリング135は、スプール103をバルブ軸方向の第2側に向けて常に付勢している。なお、バルブセット荷重W2は、バルブボディ100に対する栓体101の圧入量等によって無段階に調整可能である。
【0047】
一方、軸部130におけるバルブ軸方向の第2側の端面は、上述したプランジャ121に連係している。したがって、スプール103は、プランジャ121の移動(電磁力Wa)に伴い、バルブボディ100内をバルブ軸方向に移動可能に構成されている。
【0048】
第1弁座部131は、軸部130におけるバルブ軸方向の第1側の端部から軸線O3に直交するバルブ径方向の外側に張り出している。第1弁座部131の外周面は、スプール103の移動に伴い、周壁部110の内周面に摺動可能に構成されている。
第2弁座部132は、軸部130におけるバルブ軸方向の第2側の端部からバルブ径方向の外側に張り出している。第2弁座部132の外周面は、スプール103の移動に伴い、周壁部110の内周面に摺動可能に構成されている。第2弁座部132は、スプール103の位置に関わらず、入力ポート111よりもバルブ軸方向の第2側に位置している。なお、第1弁座部131の外径は、第2弁座部132の外径に比べて0.数mm程度大きくなっている。
【0049】
スプール103における軸部130、各弁座部131,132及び周壁部110で囲まれた部分は、入力室S5を画成している。入力室S5には、入力ポート111を通じてメインギャラリ16からオイルが流入する。本実施形態において、上述した第1弁座部131は、スプール103の移動に伴い、入力室S5と制御ポート112とを連通させる開放位置(
図2参照)、及び入力室S5と制御ポート112との連通を遮断する遮断位置(
図1参照)の間を移動する。なお、開放位置では、制御ポート112の少なくとも一部が入力室S5に開口していれば構わない。すなわち、本実施形態では、開放位置において、スプール103のバルブ軸方向での移動量に応じて、制御ポート112と制御室S1との連通量(制御ポート112のうち、入力室S5に開口する開口面積)が変わり、制御圧Paを無段階に変更することができる。
【0050】
各弁座部131,132における入力室S5を画成する面(バルブ軸方向で対向する面)は、入力室S5に発生する圧力(以下、「入力圧Pc」という。)を受ける受圧面131a,132aとして機能する。なお、本実施形態において、入力圧Pcは、吐出圧Pbやメインギャラリ16内の圧力(以下、「メインギャラリ圧Pd」という。)と同等とみなすことができる。
【0051】
本実施形態において、第1受圧面131aは、第2受圧面132aよりも大きくなっている。これは第1弁座部131の外径が第2弁座部132の外径よりも大きいためである。したがって、入力圧Pcに起因して第1受圧面131aに作用する荷重(以下、「入力荷重W3」という。)は、第2受圧面132aに作用する荷重に比べて大きくなる。すなわち、本実施形態では、電磁力Wa及び入力荷重W3が同一方向に作用するように構成されている。
【0052】
次に、可変容量ポンプ21及びソレノイドバルブ22の動作について簡単に説明する。
図2に示すように、本実施形態のソレノイドバルブ22は、電磁力Waと入力荷重W3との合力W4が、バルブセット荷重W2よりも大きい場合に、合力W4によってスプール103が開放位置に向けて押し込まれる。すなわち、スプール103を開放位置に移動させるための入力圧Pcを開放圧Pc1とすると、電流値Iが増加するに従い電磁力Waが増加する。そのため、開放圧Pc1(入力荷重W3)が低下してもスプール103は移動できる。
【0053】
そして、合力W4が所定の連通閾値以上の場合に制御ポート112が開放され、入力室S5と制御室S1とが連通する。そして、入力室S5と制御室S1とが連通することで、制御流路77を通じて可変容量ポンプ21の制御室S1にオイルが流入する。なお、ソレノイドバルブ22は、入力圧Pcが所定の開放圧Pc1を超えた場合に、開放圧Pc1のみによって(コイル120の無通電状態であっても)スプール103が開放位置に移動するように設定されている。
【0054】
上述した可変容量ポンプ21では、制御室S1にオイルが流入することで、制御圧Paが増加する。
図1に示すように、制御圧Paに起因して制御面32aに作用する荷重(以下、「制御荷重W5」という。)がカムセット荷重W1以下の場合、制御面32aは
図1のように第4壁部74の内面に最接近している。そのため、上述したように可変容量ポンプ21からの吐出量が最大となる。
一方、
図2に示すように、制御荷重W5がカムセット荷重W1よりも大きくなると、カムリング32が制御室S1を拡大させる方向にスライド移動する。これに伴い、軸線O1,O2の偏心量が縮小する方向にガイドリング83が移動することで、可変容量ポンプ21の1回転毎の吐出量が減少する。
【0055】
このように、本実施形態の油圧制御装置3は、ソレノイド102による電磁力Waと入力荷重W3との合力W4によって可変容量ポンプ21からの吐出量が制御される。これにより、油圧制御装置3は、エンジン2の回転数に関わらず、エンジン2の1回転毎の吐出量を調整できる。なお、ソレノイド102が故障すると電磁力Waはゼロとなるので合力W4も小さくなり、制御圧Paも低くなる。これにより、制御室S1が縮小し、可変容量ポンプ21の1回転毎に吐出するオイルの量及び/又は吐出圧が増加する。そのため、ソレノイド102が仮に故障した場合であっても、エンジン2を保護できる。
【0056】
<ECU>
図3は、ECU23のブロック図である。
図3に示すように、ECU23は、ENG状態決定部150、油圧目標算出部151、記憶部152、必要電流算出部153、フェール電流設定部154及び出力部155を主に有している。なお、ECU23は、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成される。
【0057】
ENG状態決定部150は、エンジン2の状態を示すENGパラメータを決定する。なお、ENGパラメータは、例えばエンジン2の負荷や、アクセル開度、温度(外気温や油温)、大気圧等により決定される。
【0058】
油圧目標算出部151は、例えば記憶部152に記憶された油圧目標マップに基づき、メインギャラリ圧Pdの油圧目標値Pd1を算出する。油圧目標マップは、例えば上述したENGパラメータと油圧目標値Pd1との相関を、シミュレーション等によって予め決定したものである。具体的に、油圧目標マップは、ENGパラメータが増大するに従い(例えば、エンジン2の負荷が増大するに従い)油圧目標値Pd1が増大するように設定されている。
【0059】
必要電流算出部153は、記憶部152に記憶された必要電流マップに基づき、油圧目標値Pd1を達成するために必要な電流値(以下、「必要電流値Ia」という。)を算出する。必要電流マップは、上述した油圧目標値Pd1と必要電流値Iaとの相関を、シミュレーション等によって予め決定したものである。具体的に、必要電流マップは、油圧目標値Pd1が増大するに従い、必要電流値Iaが減少するように設定されている。
【0060】
ここで、必要電流マップの設定方法について説明する。
図4は、コイル120に流れる電流値Iと吐出圧Pbとの相関(IP特性と名付ける)を回転数毎に示すグラフである。
図5は、電流値Iと制御圧Paとの関係を回転数毎に示すグラフである。なお、
図4、
図5では、回転数A〜Dの順に回転数が高くなっている。この場合、例えば回転数A,Bは低回転領域であり、回転数C,Dは中高回転領域(例えば、1000rpm以上)である。また、上述したように、吐出圧Pbは、メインギャラリ圧Pd及び入力圧Pcと同等とみなすことができる。
【0061】
図4に示すように、本実施形態の油圧制御装置3では、中高回転領域における無通電状態での最大吐出圧Pb2が一定に設定されている。これは、中高回転領域では、エンジン2の回転数に伴う可変容量ポンプ21の回転により、メインギャラリ圧Pdが増大した場合に、無通電状態であっても開放圧Pc1に達するためである。
一方、
図5に示すように、無通電状態において、制御室S1には、エンジン2の回転数に応じて異なる制御圧Paが入力されている。この場合には、回転数に応じて軸線O1,O2の偏心量が変化する。具体的には、制御圧Paが増加するに従い(回転数が高くなるに従い)、軸線O1,O2の偏心量が減少することで、吐出量が減少する。すなわち、エンジン2の回転数の増加に伴い、可変容量ポンプ21の回転数が増加したとしても、制御圧Paが増加することで、エンジン2の1回転毎の吐出量が減少する。そのため、中高回転領域では、エンジン2の回転数に関わらず、無通電状態での最大吐出圧Pb2が一定に設定される。
【0062】
また、本実施形態の可変容量ポンプ21では、上述したようにソレノイド102による電磁力Waと入力荷重W3との合力W4によって可変容量ポンプ21からの吐出量が制御される。具体的に、
図5に示すように、電流値Iが増加するに従い、スプール103のストロークが増加することで、制御圧Paが増加する。これにより、電流値Iを増加させるに従い、可変容量ポンプ21の吐出量を減少させることができる。そのため、
図4に示すように、電流値Iが増加するに従い、吐出圧Pbが減少する。
【0063】
このように、本実施形態では、特に中高回転領域において同一のIP特性を示す。そのため、本実施形態では、IP特性に倣った必要電流マップを設定する。すなわち、必要電流マップは、油圧目標値Pd1が増大するに従い、必要電流値Iaが減少するように設定される。
【0064】
なお、
図4に示すように、低回転数領域において、無通電状態での吐出圧Pbは、最大吐出圧Pb2未満になっている。この場合には、吐出圧Pbが開放圧Pb1に達しないため(制御ポート112が開放されないため)制御圧Paは発生しない。すなわち、低回転領域では、エンジン2の回転数に応じた吐出圧Pbで可変容量ポンプ21からオイルが送出される。そのため、低回転領域では、必要電流マップを別途設定しても構わない。なお、低回転数領域においても、合力W4によって制御ポート112が開放された後は、中高回転領域と同様のIP特性を示している。
【0065】
図3に示すように、フェール電流設定部154は、
図1に示すメインギャラリ16と入力流路115との分岐部に設けられた圧力スイッチ160の検出結果に基づき、フェール電流値(増大電流値Ib、低減電流値Ic)を設定する。本実施形態の圧力スイッチ160は、上限スイッチ160a及び下限スイッチ160bを有している。
【0066】
上限スイッチ160aは、メインギャラリ圧Pdが所定の上限ギャラリ圧Pdmaxを超えた場合に例えばオン状態となる。
下限スイッチ160bは、メインギャラリ圧Pdが所定の下限ギャラリ圧Pdminを下回った場合に例えばオン状態となる。
【0067】
フェール電流設定部154は、上限スイッチ160aがオン状態であると判断した場合、現在の電流値Iよりも高い増大電流値Ibを設定する。すなわち、上限スイッチ160aがオン状態の場合には、何らかの原因(例えば、カムリング32やスプール103での異物の噛み込みによる動作不良等)によりメインギャラリ圧Pdが高くなっていると判断する。そのため、コイル120に流す電流値Iを増大電流値Ibに設定することで、カムリング32を軸線O1,O2の偏心量が縮小する方向に移動させ、吐出量を低減させる。
フェール電流設定部154は、下限スイッチ160bがオン状態であると判断した場合、現在の電流値Iよりも低い低減電流値Icを設定する。すなわち、下限スイッチ160bがオン状態の場合には、何らかの原因によりメインギャラリ圧Pdが低くなっていると判断する。そのため、コイル120に流す電流値Iを低減電流値Icに設定することで、カムリング32を軸線O1,O2の偏心量が拡大する方向に移動させ、吐出量を増加させる。
【0068】
出力部155は、上述した必要電流算出部153及びフェール電流設定部154で設定された電流値Iに基づく電流信号をソレノイドバルブ22(コイル120)に向けて出力する。
【0069】
[油圧制御方法]
次に、上述した油圧制御装置3による油圧制御方法について説明する。
図6は、油圧制御方法を説明するためのフローチャートである。
図6に示すステップS1では、まず油圧目標算出部151において、油圧目標値Pd1を算出する(油圧目標値算出ステップ)。油圧目標値Pd1は、上述したように記憶部152に記憶された油圧目標マップに基づき算出する。
【0070】
次に、ステップS2では、必要電流算出部153において、必要電流値Iaを算出する(必要電流値算出ステップ)。必要電流値Iaは、上述したように記憶部152に記憶された必要電流マップに基づき算出する。具体的に、油圧目標値Pd1が最大吐出圧Pb2以上である場合には、必要電流値Iaはゼロになる。この場合には、上述したように回転数に応じて制御室S1の容積が変化することで可変容量ポンプ21の吐出量が調整される。そのため、エンジン2の回転数がある回転数以上の場合、エンジン2の回転数に関わらず、メインギャラリ圧Pdをほぼ一定に出来る。
【0071】
一方、油圧目標値Pd1が最大吐出圧Pb2未満の場合には、必要電流マップに基づく必要電流値Iaが変化する。すなわち、必要電流算出部153では、油圧目標値Pd1が低くなるに従い必要電流値Iaが高く算出される。
【0072】
そして、ECU23は、ステップS3において、上述した必要電流値IaをDUTY変換する。その後、ECU23は、ステップS4において、出力部155を介して必要電流値Iaに基づく電流信号をコイル120に向けて出力する。
【0073】
コイル120に必要電流値Iaが流れることで、電磁力Waと入力荷重W3との合力W4によってスプール103を押し込むことで、スプール103のストロークが増加する。これにより、制御圧Paが増加することで、可変容量ポンプ21の吐出量を減少させることができる。そのため、電流値Iが増加するに従い、吐出圧Pbが減少する結果、メインギャラリ圧Pdが油圧目標値Pd1に近づく。
【0074】
このように、本実施形態では、ECU23において、エンジン2の状態を示すENGパラメータに基づき油圧目標値Pd1を算出するとともに、ENGパラメータと必要電流値Iaとの相関を示す必要電流マップに基づき、必要電流値Iaを算出する構成とした。
この構成によれば、必要電流マップに基づき算出された必要電流値Iaの電流をソレノイドバルブ22に流すため、要求された油圧目標値Pd1にメインギャラリ圧Pdを速やかに近づけることができる。この場合、フィードバック制御のように、油圧目標値と油圧実測値とに基づき必要電流値を常に変化させる場合に比べて、低コスト化や制御の簡素化を図った上で、過渡特性を満足できる。その結果、エンジン2に対して所望の油圧でオイルを供給できる。
【0075】
本実施形態では、油圧目標値Pd1が増大するに従い必要電流値Iaが小さくなるように必要電流マップが設定されている構成とした。
この構成によれば、必要電流値Iaを増加させることで油圧目標値Pd1が減少するため、エンジン2の回転数に関わらずエンジン2に対して所望の油圧でオイルを供給できる。特に、本実施形態では、所定の回転数領域において、エンジン2の回転数に関わらず同一のIP特性に基づいてソレノイドバルブ22を制御することで、制御の更なる簡素化を図ることができる。
【0076】
本実施形態では、カムリング32の外周面のうち、互いに対向する面を受圧面32c及び押付面32bに設定する構成とした。
この構成によれば、吐出圧Pbに起因して受圧面32cに作用する押付荷重によって第1壁部51の内面に押付面32bを押し付けることができる。これにより、制御室S1と吸入ポート52との間を確実にシールできる。
【0077】
本実施形態では、メインギャラリ圧Pdが下限ギャラリ圧Pdminを下回った場合に、コイル120に流す電流を減少させる構成とした。
この構成によれば、コイル120に流れる電流値Iを低減電流値Icに設定することで、開放圧Pc1を増加させることができるため、油圧目標値Pd1に関わらず強制的に吐出量を増加させることができる。これにより、メインギャラリ圧Pdが極端に低下した状態に陥るのを抑制し、メインギャラリ圧Pdを所望の範囲に維持できる。
【0078】
本実施形態では、メインギャラリ圧Pdが上限ギャラリ圧Pdmaxを上回った場合に、コイル120に流す電流を増加させる構成とした。
この構成によれば、コイル120に流れる電流値Iを増大電流値Ibに設定することで、開放圧Pc1を減少させることができるため、油圧目標値Pd1に関わらず強制的に吐出量を低下させることができる。これにより、メインギャラリ圧Pdが極端に上昇した状態に陥るのを抑制し、メインギャラリ圧Pdを所望の範囲に維持できる。
なお、圧力スイッチ160は、比較的安価であるため、仮に圧力スイッチ160を設けた場合であっても、フィードバック制御のように圧力センサを設ける場合に比べて、コスト優位性を確保できる。
【0079】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述した実施形態では、油圧制御装置によってオイルが供給される被供給部として、エンジンを例にした場合について説明したが、エンジン以外(例えば、トランスミッションやデファレンシャルギヤ、ブレーキ等)であっても構わない。
上述した実施形態では、可変容量ポンプにベーンポンプを用いた場合について説明したが、制御室の油圧を変化させることでオイルの吐出量及び/又は吐出圧を変更できるギヤポンプやトロコイドポンプ等を採用しても構わない。
上述した実施形態では、フェールセーフ用に圧力スイッチ160を2つ設ける構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、圧力スイッチ160は、上限スイッチ160a及び下限スイッチ160bの何れか一方のみを設けてもよく、圧力スイッチ160を設けない構成であってもよい。
【0080】
上述した実施形態では、電磁力Wa及び入力荷重W3が同一方向(バルブスプリング135の付勢力に抗する方向)に作用する構成について説明したが、この構成のみに限られない。電磁力Waがバルブスプリング135の付勢力と同一方向に作用する構成であっても構わない。この場合、必要電流マップは、油圧目標値Pd1が増大するに従い、必要電流値Iaが増大するように設定することが好ましい。
【0081】
なお、可変容量ポンプ21やソレノイドバルブ22の劣化等により、IP特性に変化が生じた場合には、必要電流マップの補正を行っても構わない。マップの補正方法としては、例えば圧力スイッチ160の出力値を参照して行うことが可能である。圧力スイッチ160が1つ設けられている場合には、IP特性の切片(最大吐出圧Pb2)を変更する。また、圧力スイッチ160が2つ設けられている場合には、IP特性の切片及び傾き(必要電流値Iaに対する油圧目標値Pd1の変化量)を変更する。
これにより、油圧目標値Pd1とメインギャラリ圧Pdとのずれを長期に亘って抑えることができ、例えば駆動力のロスを長期に亘って低減できる。
【0082】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。