(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態に係る口腔挿入具につき、詳細に説明する。図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成し、y軸の正方向を前方向、y軸の負方向を後ろ方向、x軸方向を左右方向、z軸の正方向を上方向、及びz軸の負方向を下方向として説明する。
【0012】
<口腔挿入具の構成>
本発明の実施形態に係る口腔挿入具1につき、
図1から
図6を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0013】
口腔挿入具1は、弾力性のある合成樹脂により一体に形成されており、全体が弾性変形可能になっている。ここで、口腔挿入具1を形成する合成樹脂としては、スチレン系・エラストマー、ポリエステル・エラストマー、シリコンゴム、ポリエチレン又は塩化ビニルを例示する。
【0014】
口腔挿入具1は、湾曲部10と、突出部20と、上側負荷付与部30と、下側負荷付与部40と、引張部50と、を有している。
【0015】
湾曲部10は、板状であり、
図3に示すように、前方に凸形状となるように湾曲している。湾曲部10には、板厚方向に貫通する一対の貫通孔105及び貫通孔106が形成されることにより環状になっている。湾曲部10は、上側片101と、下側片102と、側片103と、側片104と、が互いに接続することにより構成されている。
【0016】
上側片101は、側片103及び側片104に接続している。上側片101には、左右方向の中央に下方に凹んだ窪み部107が設けられている。
【0017】
下側片102は、側片103及び側片104に接続している。下側片102には、左右方向の中央に上方に凹んだ窪み部108が設けられている。
【0018】
突出部20は、湾曲部10より前方に突出しており、連結部201と、連結部202と、上側口唇当接部203と、下側口唇当接部204と、凹部205と、上側載置部206と、下側載置部207と、を備えている。
【0019】
連結部201は、側片103に接続している。連結部202は、側片104に接続している。連結部201が側片103に接続すると共に連結部202が側片104に接続することにより、一対の貫通孔105及び貫通孔106が形成されている。
【0020】
上側口唇当接部203は、上側負荷付与部30の先端30aよりも前方に設けられていると共に、突出部20の前端から上方に延設されている。
【0021】
下側口唇当接部204は、下側負荷付与部40の先端40aよりも前方に設けられていると共に、突出部20の前端から下方に延設されている。
【0022】
凹部205は、矩形状であり、突出部20の後端から前方に凹設されている。
【0023】
上側載置部206は、上側口唇当接部203の後方に設けられると共にx−y平面に沿って平坦になっている。
【0024】
下側載置部207は、下側口唇当接部204の後方に設けられると共にx−y平面に沿って平坦になっている。
【0025】
上側負荷付与部30は、舌状であり、湾曲部10の上端の上側片101より前方且つ内方(下方)に向けて湾曲して延設されると共に、先端が突出部20の上側口唇当接部203よりも後方に位置した片持ち形状である。上側負荷付与部30の後面には、網目状の凸部31が形成されている。上側負荷付与部30の左右方向の中央には、窪み部107に連設された下方に凹んだ窪み部34が形成されている。上側負荷付与部30には、板厚方向に貫通する一対の窓孔32及び窓孔33が形成されている。窓孔32は、上側負荷付与部30の窪み部34に対して左右方向の一方側(
図6において左側)の略中央に設けられている。窓孔33は、上側負荷付与部30の窪み部34に対して左右方向の他方側(
図6において右側)の略中央に設けられている。上側負荷付与部30は、
図4に示すように、前方から見て突出部30に重ならないように設けられている。
【0026】
上側負荷付与部30には、外表面の窓孔32の周囲及び窓孔33の周囲の各々において外方に突出する複数の押圧部35が形成されている。上側負荷付与部30の外表面の窓孔32の周囲に形成される押圧部35は、4つ設ける場合を例示しているが、任意の数を設けることができる。同様に、上側負荷付与部30の外表面の窓孔33の周囲に形成される押圧部35は、4つ設ける場合を例示しているが、任意の数を設けることができる。
【0027】
下側負荷付与部40は、舌状であり、湾曲部10の下側片102より前方且つ内方(上方)に向けて湾曲して延設されると共に、先端が突出部20の下側口唇当接部204よりも後方に位置した片持ち形状である。下側負荷付与部40の後面には、網目状の凸部41が形成されている。下側負荷付与部40の左右方向の中央には、窪み部108に連接された上方に凹んだ窪み部44が形成されている。下側負荷付与部40には、板厚方向に貫通する一対の窓孔42及び窓孔43が形成されている。窓孔42は、下側負荷付与部40の窪み部44に対して左右方向の一方側(
図6において左側)の略中央に設けられている。窓孔43は、下側負荷付与部40の窪み部44に対して左右方向の他方側(
図6において右側)の略中央に設けられている。下側負荷付与部40は、
図4に示すように、前方から見て突出部30に重ならないように設けられている。
【0028】
下側負荷付与部40には、外表面の窓孔42の周囲及び窓孔43の周囲の各々において外方に突出する複数の押圧部45が形成されている。下側負荷付与部40の外表面の窓孔42の周囲に形成される押圧部45は、4つ設けられる場合を例示しているが、任意の数を設けることができる。同様に、下側負荷付与部40の外表面の窓孔43の周囲に形成される押圧部45は、4つ設けられる場合を例示しているが、任意の数を設けることができる。
【0029】
上側負荷付与部30と下側負荷付与部40とは、前方に向けて互いに徐々に近づくように湾曲して形成されている。
【0030】
引張部50は、リング状であり、突出部20の前端から前方に突出して設けられている。引張部50には、略円形の貫通孔51が形成されている。
【0031】
上記構成を有する口腔挿入具1は、高温度で溶融させた樹脂を所定の圧力を加えながら図示しない成型用金型に流し込むと共に、成形用金型に流し込んだ樹脂が冷えて固化することにより形成される。そして、成形用金型を前後方向にスライドさせて二分割して口腔挿入具1を成型用金型から取り出す。この際に、上側負荷付与部30が前方から見て上側口唇当接部203を含む突出部30に重ならないように設けられていると共に、下側負荷付与部40が前方から見て下側口唇当接部204を含む突出部30に重ならないように設けられているため、前後方向にスライドするのみの簡易な構成の成型用金型を用いて口腔挿入具1を形成することができ、口腔挿入具1を製造容易にすることができて製造コストを低減することができると共に、口腔挿入具1を安価にすることができる。
【0032】
<口腔挿入具の使用方法>
本発明の実施形態に係る口腔挿入具1の使用方法につき、
図7を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0033】
まず、湾曲部10の後面を口唇に対向させた状態から、湾曲部10の後面が前歯の歯牙及び歯肉に当接するまで、湾曲部10を弾性変形させながら口腔挿入具1を口腔に挿入する。この際に、窪み部107及び窪み部34を上唇小帯に係合させると共に、窪み部108及び窪み部44を下唇小帯に係合させる。
【0034】
湾曲部10の後面が歯牙及び歯肉に当接した際に口腔に対する口腔挿入具1の挿入を止めて、上口唇を上側載置部206に載置させると共に下口唇を下側載置部207に載置させることにより、口腔に対する口腔挿入具1の装着を完了する。
【0035】
この際、上口唇は上側口唇当接部203と上側負荷付与部30とに挟まれると共に、下口唇は下側口唇当接部204と下側負荷付与部40とに挟まれ、更に、上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40が片持ち形状で弾性変形して上口唇及び下口唇を前方に付勢するため、口腔挿入具1を安定した状態で口腔に装着することができる。
【0036】
また、上側負荷付与部30に窓孔32及び窓孔33を設けると共に、下側負荷付与部40に窓孔42及び窓孔43を設けることにより、上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40が弾性変形する際に上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40の肉を窓孔42及び窓孔43に逃がすことができ、上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40を口唇及び歯肉の粘膜に柔らかく接触させることができる。特に、上側負荷付与部30の窪み部34に対して左右方向の一方側の略中央に窓孔32を設けると共に、上側負荷付与部30の窪み部34に対して左右方向の他方側の略中央に窓孔33を設けることにより、窓孔32の周囲の肉又は窓孔33の周囲の肉を窓孔32又は窓孔33に均等に逃がすことができ、上側負荷付与部30の全体を口唇及び歯肉の粘膜に柔らかく接触させることができる。同様に、下側負荷付与部40の窪み部44に対して左右方向の一方側の略中央に窓孔42を設けると共に、下側負荷付与部40の窪み部44に対して左右方向の他方側の略中央に窓孔43を設けることにより、窓孔42の周囲の肉又は窓孔43の周囲の肉を窓孔42又は窓孔43に均等に逃がすことができ、下側負荷付与部40の全体を口唇及び歯肉の粘膜に柔らかく接触させることができる。
【0037】
口腔挿入具1を口腔に装着した状態において、引張部50は口腔から外部に突出している。また、口腔挿入具1を口腔に装着した状態において、貫通孔105及び貫通孔106を介して呼吸することができる。
【0038】
口腔挿入具1を口腔に装着した状態において、引張部50を前方に引っ張ることにより、上口唇が上側負荷付与部30を後方に弾性変形させると共に、下口唇が下側負荷付与部40を後方に弾性変形させる。この際、上側負荷付与部30の弾性復帰力により上口唇が前方に押圧されると共に、下側負荷付与部40の弾性復帰力により下口唇が前方に押圧され、これらの押圧力に打ち勝つように口を閉じることにより、表情筋に負荷を加えることができる。
【0039】
ここで、
図7に示すように、表情筋の一つである口輪筋k1の縁部には、口輪筋k1の筋組織と他の多くの表情筋の筋組織とが混ざり合うように吻合して繋がっているため、直線に近い部分もある一方、小帯の存在により大きく湾曲している部分、及び頬小帯付近等において鋭角を形成して繋がっている部分もある。従って、口輪筋k1と他の表情筋との吻合部f1、f2及びf3の吻合状態は一様ではない。本実施形態における口腔挿入具1は、口輪筋k1と他の表情筋との吻合部f1、f2及びf3の付近に位置する上側負荷付与部30の上側片101側の部分及び下側負荷付与部40の下側片102側の部分が、各吻合部f1、f2及びf3に負荷を掛けることとなり、吻合状態が一様ではない各吻合部f1、f2及びf3を確実にストレッチすることができる。これにより、口輪筋k1以外の他の表情筋に対しても、各吻合部f1、f2及びf3を介してトレーニング効果を得ることができる程度の負荷を掛けることができる。
【0040】
また、押圧部35及び押圧部45により、口腔の圧点を内部から押圧することができるため、トレーニング効果をより向上させることができる。
【0041】
また、上側口唇当接部203及び下側口唇当接部204を設けることにより、口腔に装着された口腔挿入具1が必要以上に後方に移動しようとした際に、上口唇が上側口唇当接部203を前方に押圧すると共に下口唇が下側口唇当接部204を前方に押圧して、口腔挿入具1の後方への移動を阻止するため、口腔挿入具1により歯肉の粘膜を必要以上に押圧することがなく、痛みをなくすることができる。
【0042】
また、上側負荷付与部30の後面に網目状の凸部31を設けると共に、下側負荷付与部40の後面に網目状の凸部41を設けることにより、上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40の弾性力を向上させることができるため、口輪筋k1と他の表情筋との吻合部f1、f2及びf3に対してより強い負荷を掛けることができると共に、上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40の意図しない変形を防ぐことができる。
【0043】
また、突出部20に凹部205を設けることにより、突出部20の弾性力を向上させることができるため、口輪筋k1と他の表情筋との吻合部f1、f2及びf3に対してより強い負荷を掛けることができる。
【0044】
更に、上側負荷付与部30に窓孔32及び窓孔33を設けると共に、下側負荷付与部40に窓孔42及び窓孔43を設けることにより、上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40における口唇及び歯肉の粘膜との接触面積を小さくすることができ、上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40が口唇及び歯肉の粘膜に貼り付いてしまうことを防ぐことができる。
【0045】
なお、口腔挿入具1により負荷を掛けることが可能な
図7に示す吻合部f1、f2及びf3は例示であって、口輪筋k1と口輪筋k1以外の表情筋との吻合部f1、f2及びf3以外の吻合部に対しても口腔挿入具1により負荷を掛けることができる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、湾曲部10の上端より前方且つ内方に向けて湾曲して延設されると共に、先端が突出部20の前端よりも後方に位置する舌状の上側負荷付与部30と、湾曲部10の下端より上側負荷付与部30に近づくように前方且つ内方に向けて湾曲して延設されると共に、先端が突出部20の前端よりも後方に位置する舌状の下側負荷付与部40と、を有することにより、口輪筋に加えて、口輪筋以外の他の表情筋にも負荷を掛けることができ、顔面のトレーニング効果を向上させることができる。
【0047】
本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【0048】
具体的には、上記実施形態において、リング状の引張部50を設けたが、突出部20に引張部50に代えて紐状の部材を設けてもよい。
【0049】
また、上記実施形態において、上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40の両方の後面に網目状の凸部を設けたが、上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40の何れか一方の後面にのみ網目状の凸部を設けてもよいし、上側負荷付与部30及び下側負荷付与部40の両方に網目状の凸部を設けなくてもよい。
【0050】
また、上記実施形態において、上側負荷付与部30の後面に網目状の凸部31及び下側負荷付与部40の後面に網目状の凸部41を設けたが、上側負荷付与部30の後面に網目状の凹部及び下側負荷付与部40の後面に網目状の凹部を設けてもよい。
【0051】
また、上記実施形態において、上側口唇当接部203及び下側口唇当接部204を突出部20の前端に設けたが、上側負荷付与部30の先端30a及び下側負荷付与部40の先端40aよりも前方であれば、上側口唇当接部203及び下側口唇当接部204を突出部20の前端以外の前端側に設けることができる。
【0052】
また、上記実施形態において、上側口唇当接部203及び下側口唇当接部204を設けたが、上側口唇当接部203及び下側口唇当接部204を設けなくてもよい。