特許第6885826号(P6885826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885826
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】水浄化剤の製造方法、及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20210603BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20210603BHJP
   C02F 1/62 20060101ALI20210603BHJP
   C02F 1/56 20060101ALI20210603BHJP
   C02F 1/64 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B01D21/01 101A
   B01D21/01 111
   C02F1/58 M
   C02F1/62 B
   C02F1/62 C
   C02F1/62 E
   C02F1/62 Z
   C02F1/56 J
   C02F1/56 K
   C02F1/64 Z
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-165392(P2017-165392)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-47451(P2018-47451A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2020年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-180583(P2016-180583)
(32)【優先日】2016年9月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】伊東 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 竜
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴則
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−073898(JP,A)
【文献】 特開2004−067878(JP,A)
【文献】 特開2011−194385(JP,A)
【文献】 特開平11−114313(JP,A)
【文献】 特開2015−231600(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/052696(WO,A1)
【文献】 特開2011−194384(JP,A)
【文献】 大池敦夫ほか,医薬品製造における撹拌造粒,粉体工学会誌,1987年,24巻, 8号,pp.535-541
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 21/00−21/34
C02F 1/28
C02F 1/42
C02F 1/52− 1/56
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物粉末と高分子凝集剤とを含有する造粒物からなる水浄化剤の製造方法であって、
植物粉末と高分子凝集剤とを混練する工程を含み、
前記混練する工程において、前記混練する工程を経ることにより得られる混練物の硬さが、下記測定条件において3N/mm〜100N/mmの応力を示すように植物粉末と高分子凝集剤とを混練することを特徴とする水浄化剤の製造方法。
測定条件:前記混練物に対し、応力制御型レオメータ(粘度測定装置)を用いて、直径16mmプローブを押し込み速度30mm/minで押し込んだ時の押し込み量5mmにおける応力を測定する
【請求項2】
下記(a1)、下記(a2)、及び下記(b)のいずれかである、請求項1に記載の水浄化剤の製造方法。
(a1)前記高分子凝集剤に水を混合し、前記高分子凝集剤と水とを混練する第1の混練する工程と、その後、混練した前記高分子凝集剤に前記植物粉末を混合し、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する第2の混練する工程とを含み、前記第1の混練する工程において、混合される水の合計量(質量)が、前記水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1.5倍から8倍である
(a2)前記高分子凝集剤に水を混合し、前記高分子凝集剤と水とを混練する第1の混練する工程と、その後、混練した前記高分子凝集剤に前記植物粉末と水とを混合し、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する第2の混練する工程とを含み、前記第1の混練する工程、及び前記第2の混練する工程において、混合される水の合計量(質量)が、前記水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1.5倍から8倍である
(b)植物粉末と高分子凝集剤と水とを混合し、これらを混練する工程を含み、前記混練する工程において、混合される水の合計量(質量)が、前記水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1.5倍から8倍である
【請求項3】
前記高分子凝集剤に水を混合し、前記高分子凝集剤と水とを混練する第1の混練する工程と、その後、混練した前記高分子凝集剤に前記植物粉末を混合し、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する第2の混練する工程とを含む、請求項1に記載の水浄化剤の製造方法。
【請求項4】
前記混練時における混練時間の合計数が、回転数80rpm〜150rpmの条件下で、15分以上30分以内である、請求項1から3のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法。
【請求項5】
前記植物粉末が、長朔黄麻、モロヘイヤ、小松菜、三つ葉、水菜、及びほうれん草のいずれかである、請求項1から4のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法。
【請求項6】
前記植物粉末が長朔黄麻である、請求項5に記載の水浄化剤の製造方法。
【請求項7】
前記長朔黄麻が、中国農業科学院麻類研究所による鑑定番号2013の「中黄麻4号」である、請求項6に記載の水浄化剤の製造方法。
【請求項8】
前記造粒物のメジアン径が150μm以上850μm以下である、請求項1から7のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法。
【請求項9】
前記高分子凝集剤がポリアクリルアミドである、請求項1から8のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法。
【請求項10】
前記混練する工程を経ることにより得られた混練物を成形し成形体を形成する成形工程と、前記成形体を乾燥させる乾燥工程と、乾燥した成形体を粉砕する粉砕工程とを含む、請求項1から9のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法により得られた水浄化剤を水に溶かし、植物粉末及び高分子凝集剤を含む分散液を得、無機系不要物を含有する排水に該分散液を供することにより、排水中の無機系不要物を除去することを特徴とする排水処理方法。
【請求項12】
前記排水が、ニッケル、フッ素、鉄、銅、亜鉛、クロム、ヒ素、カドミウム、及び鉛の少なくともいずれかを有する無機系不要物を含有する排水である、請求項11に記載の排水処理方法。
【請求項13】
前記分散液の水の電気伝導度が、30μS/cm以上である請求項11から12のいずれかに記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業排水などの水の浄化に使用する、植物由来の水浄化剤の製造方法、及び該水浄化剤を用いた排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場に於いて種々の製品を製造する過程において、無機イオンとして金属イオンやフッ素イオン等の環境負荷物質を含む廃液が大量に発生している。
一方、これらの無機イオンの排出に関する規制は徐々に厳しくなっている。この排出規制を遵守するために、無機イオンを含む排水から無機イオンを効果的に除去することができ、しかもできるだけ簡易に、低コストで実施できる無機イオンの除去方法が求められている。
従来、工場排水などから不純物イオンを除去する方法としては、凝集沈殿法、イオン交換法、活性炭などの吸着剤への吸着法、電気的吸着法、および磁気吸着法などが提案されている。
【0003】
例えば、凝集沈殿法として、重金属イオンが溶解した排水に塩基を加え、排水を塩基性にして、重金属イオンの少なくとも一部を不溶化し、懸濁固形物を形成させる工程と、排水に無機凝集剤を加え、懸濁固形物を凝結沈降させる工程と、排水に高分子凝集剤を加え、懸濁固形物を巨大フロック化する工程と、モロヘイヤ、小松菜などの葉菜からなる陽イオン交換体が含有されている吸着層に排水を通水する吸着工程を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、モロヘイヤ、又はこの乾燥物、又はこの抽出物の少なくともいずれかを含有する凝集剤と、高分子凝集剤とを混合或いは併用して懸濁液中の微粒子を凝集分離する凝集方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ところで、浄化したい排水の量が多い、排水に含まれる不要物質の量が多い、あるいは排水に含まれる不要物質の種類が多いほど、これら排水の浄化処理に必要な浄化剤を自動で投入するシステムの構築が望まれる。
高速で安定した浄化処理を行ううえで、装置の自動化は重要な課題であり、安定した浄化性能を示す自動化浄化装置を提供するうえで、該自動化浄化装置に適した水浄化剤の提供が望まれていた。
しかし、上記特許文献1や上記特許文献2に記載の方法は、排水の浄化処理する自動化装置は全く意図しておらず、これら文献に記載の水浄化剤は、自動化システム装置に供するうえで適したものではなかった。
そこで、自動化浄化装置に好適に使用し得る水浄化剤として、植物粉末と高分子凝集剤との混合物を含む造粒物からなる水浄化剤が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−194385号公報
【特許文献2】特開平11−114313号公報
【特許文献3】特開2016−73898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献3に記載の水浄化剤は、自動化浄化装置が大型化し、特に排水槽のスケールが大きい自動化浄化装置に供する場合に、低コストで、かつ毎回ばらつかず、安定した浄化性能を発揮するという点では、不十分なものであることがわかった。
そこで、排水槽のスケールが大きい自動化浄化装置にも好適に使用し得る水浄化剤であって、低コストで、かつ毎回ばらつかず、安定した浄化性能を示す水浄化剤の提供が望まれていた。
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、排水槽のスケールが大きい自動化浄化装置にも好適に使用し得る水浄化剤であって、低コストで、かつ毎回ばらつかず、安定した浄化性能を示す水浄化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 植物粉末と高分子凝集剤とを含有する造粒物からなる水浄化剤の製造方法であって、
植物粉末と高分子凝集剤とを混練する工程を含み、
前記混練する工程において、前記混練する工程を経ることにより得られる混練物の硬さが、下記測定条件において3N/mm〜100N/mmの応力を示すように植物粉末と高分子凝集剤とを混練することを特徴とする水浄化剤の製造方法である。
測定条件:前記混練物に対し、応力制御型レオメータ(粘度測定装置)を用いて、直径16mmプローブを押し込み速度30mm/minで押し込んだ時の押し込み量5mmにおける応力を測定する
<2> 下記(a1)、下記(a2)、及び下記(b)のいずれかである、前記<1>に記載の水浄化剤の製造方法である。
(a1)前記高分子凝集剤に水を混合し、前記高分子凝集剤と水とを混練する第1の混練する工程と、その後、混練した前記高分子凝集剤に前記植物粉末を混合し、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する第2の混練する工程とを含み、前記第1の混練する工程において、混合される水の合計量(質量)が、前記水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1.5倍から8倍である
(a2)前記高分子凝集剤に水を混合し、前記高分子凝集剤と水とを混練する第1の混練する工程と、その後、混練した前記高分子凝集剤に前記植物粉末と水とを混合し、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する第2の混練する工程とを含み、前記第1の混練する工程、及び前記第2の混練する工程において、混合される水の合計量(質量)が、前記水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1.5倍から8倍である
(b)植物粉末と高分子凝集剤と水とを混合し、これらを混練する工程を含み、前記混練する工程において、混合される水の合計量(質量)が、前記水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1.5倍から8倍である
<3> 前記高分子凝集剤に水を混合し、前記高分子凝集剤と水とを混練する第1の混練する工程と、その後、混練した前記高分子凝集剤に前記植物粉末を混合し、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する第2の混練する工程とを含む、前記<1>に記載の水浄化剤の製造方法である。
<4> 前記混練時における混練時間の合計数が、回転数80rpm〜150rpmの条件下で、15分以上30分以内である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法である。
<5> 前記植物粉末が、長朔黄麻、モロヘイヤ、小松菜、三つ葉、水菜、及びほうれん草のいずれかである、前記<1>から<4>のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法である。
<6> 前記植物粉末が長朔黄麻である、前記<5>に記載の水浄化剤の製造方法である。
<7> 前記長朔黄麻が、中国農業科学院麻類研究所による鑑定番号2013の「中黄麻4号」である、前記<6>に記載の水浄化剤の製造方法である。
<8> 前記水浄化剤のメジアン径が150μm以上850μm以下である、前記<1>から<7>のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法である。
<9> 前記高分子凝集剤がポリアクリルアミドである、前記<1>から<8>のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法である。
<10> 前記混練する工程を経ることにより得られた混練物を成形し成形体を形成する成形工程と、前記成形体を乾燥させる乾燥工程と、乾燥した成形体を粉砕する粉砕工程とを含む、前記<1>から<9>のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法である。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の水浄化剤の製造方法により得られた水浄化剤を水に溶かし、植物粉末及び高分子凝集剤を含む分散液を得、無機系不要物を含有する排水に該分散液を供することにより、排水中の無機系不要物を除去することを特徴とする排水処理方法である。
<12> 前記排水が、ニッケル、フッ素、鉄、銅、亜鉛、クロム、ヒ素、カドミウム、及び鉛の少なくともいずれかを有する無機系不要物を含有する排水である、前記<11>に記載の排水処理方法である。
<13> 前記分散液の水の電気伝導度が、30μS/cm以上である前記<11>から<12>のいずれかに記載の排水処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、排水槽のスケールが大きい自動化浄化装置にも好適に使用し得る水浄化剤であって、低コストで、かつ毎回ばらつかず、安定した浄化性能を示す水浄化剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(水浄化剤の製造方法)
本発明の水浄化剤の製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)でいう水浄化剤は、植物粉末と高分子凝集剤とを含有する造粒物からなる。
本発明の製造方法は、植物粉末と高分子凝集剤とを混練する工程を含み、さらに必要に応じて、成形工程、乾燥工程、粉砕工程などのその他の工程を含む。
本発明の製造方法は、前記混練する工程において、前記混練する工程を経ることにより得られる混練物の硬さが、下記測定条件において3N/mm〜100N/mmの応力を示すように植物粉末と高分子凝集剤とを混練することを特徴とする。
測定条件:前記混練物に対し、応力制御型レオメータ(粘度測定装置)を用いて、直径16mmプローブを押し込み速度30mm/minで押し込んだ時の押し込み量5mmにおける応力を測定する
【0011】
上記所望の硬さの混練物を得るうえで、以下の製造方法であることがより好ましい。
本発明の製造方法は、高分子凝集剤と水とを混練する際、あるいは植物粉末と高分子凝集剤とを混練する際に、混合される水の合計量(質量)を規定する。該混合される水の合計量(質量)は、水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1.5倍から8倍である。
また、本発明の製造方法は、植物粉末と高分子凝集剤とを混練する工程の前に、高分子凝集剤に水を混合させ、高分子凝集剤と水とを混練する工程を行なうことを規定する。
上記要件を満たす本発明の製造方法により製造された水浄化剤は、排水槽のスケールが大きい自動化浄化装置にも好適に使用し得る水浄化剤であって、低コストで、かつ毎回ばらつかず、安定した浄化性能を示す水浄化剤となる。
【0012】
水浄化剤を使って排水の浄化を行う際、水浄化剤の添加方法としては、排水に水浄化剤を直接投入する方法、一旦水浄化剤を水に溶かし、植物粉末と高分子凝集剤との分散液を得、該分散液を排水に投入する方法などが挙げられる。しかし、自動化浄化装置が大型化し、特に排水槽のスケールが大きくなると、粒状の水浄化剤では毎回、安定して均一な分散状態を形成し、ばらつきのない水浄化性能を維持することが困難となってくる。したがって、排水槽のスケールが大きい自動化浄化装置においては、分散液を使用した排水の浄化処理方法が、必須となる。
そこで、本発明者らは、分散液を使用した排水の浄化処理について研究を重ねたところ、分散液の水の種類によって、植物粉末と高分子凝集剤とを溶かした際、該分散液の粘度が変わることがわかった。
そして、分散液の粘度の違いが排水の浄化性能に影響すること、良好な浄化性能を得るには、分散液の粘度をある程度高くすることが有効であることを見出した。
具体的には、水道水や地下水に代表される比較的安価であるが、含有するイオン等の影響により電気伝導度が大きい水を使用して分散液を得た場合、排水に該分散液を添加すると、排水の粘度は小さくなり、植物粉末等の固形分が短時間で沈降してしまい、結果として十分な無機イオンの吸着性能が得られないことがある。一方、水道水や地下水に代えて、電気伝導度が小さい蒸留水を使用すると、そのような問題は生じない。しかし、蒸留水は高価であり、毎日大量の排水を処理する半導体工場やメッキ工場などではそのコストが大きな負担となる。
そこで、本発明者らは、さらに研究をすすめたところ、水道水や地下水に代表される比較的安価な水を分散液に使用しても、排水中の無機イオンを所望の濃度以下まで減少させることができる水浄化剤を見出した。
【0013】
水道水や地下水を使用した分散液でもその粘度を高くするには、水浄化剤の製造方法において、植物粉末と高分子凝集剤とを混練して得られる混練物の硬さを調整することが有効であるとの認識に至った。
ここで、混練物の硬さは、応力制御型レオメータ(粘度測定装置)であるティー・エイ・インスツルメント社製 AR−G2の硬さ測定モードを用いて、求めることができる。具体的には、混練物を内径の直径が22mm、深さ11mmのポリプロピレン製円筒状容器に約7.5g充填し、直径16mmプローブを用いて、押し込み速度30mm/minで押し込み、押し込み量5mm時の応力を測定する。本発明では、この条件で測定される応力を「硬さ」とする。
その結果、混練物の硬さは、3N/mm〜100N/mmの範囲であるとよい。
そして、本発明者らは、この所望の硬さの混練物を得るのに、下記(i)又は(ii)で示される工程を行うことが重要であることを見出した。
(i)水浄化剤を製造する方法において、高分子凝集剤と水とを混練する際、あるいは植物粉末と高分子凝集剤とを混練する際に、混合される水の合計量(質量)を水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1.5倍から8倍とする。
(ii)水浄化剤を製造する方法において、植物粉末と高分子凝集剤とを混練する工程の前に、高分子凝集剤に水を混合させ、高分子凝集剤と水とを混練する工程を行なう。
【0014】
このように、多めの水分を高分子凝集剤に添加し混練するか、あるいは植物粉末と混練する前に高分子凝集剤を水と予め混練する工程を行うと、所望の硬さの混練物を形成することができ、このような混練物を経て製造された水浄化剤は、該水浄化剤を分散させた分散液や、該分散液を投入した排水の粘度を向上させることができる。
理由は明らかではないが、これらの条件が、混練により高分子凝集剤の分子鎖の凝集をある程度解き、水への溶解性を向上させるのに有効に寄与するのではないかと思われる。
【0015】
以下、水浄化剤の製造方法の具体的構成について、(A)第1の態様、及び(B)第2の態様に分けて詳しく説明する。
【0016】
<A;水浄化剤の製造方法の第1の態様>
前記水浄化剤の製造方法において、前記高分子凝集剤と水とを混練する際、あるいは前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する際に、混合される水の合計量(質量)が、前記水浄化剤中の固形分(質量)に対し1.5倍から8倍である。
【0017】
<<植物粉末と高分子凝集剤とを混練する工程>>
前記水浄化剤の製造方法は、植物粉末と高分子凝集剤とを混練する工程を含むが、この混練工程としては、具体的には、例えば、下記(a1)、(a2)、及び(b)で規定する工程を含む、下記(a1)、(a2)、及び(b)の3つの態様が挙げられる。
(a1)高分子凝集剤に水を混合し、前記高分子凝集剤と水とを混練する第1の混練する工程と、その後、混練した前記高分子凝集剤に前記植物粉末を混合し、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する第2の混練する工程とを含む
上記(a1)において、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する際にも、水を混合してもよく、その場合には、下記(a2)となる。
(a2)高分子凝集剤に水を混合し、前記高分子凝集剤と水とを混練する第1の混練する工程と、その後、混練した前記高分子凝集剤に前記植物粉末と水とを混合し、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する第2の混練する工程とを含む
(b)植物粉末と高分子凝集剤と水とを混合し、これらを混練する工程を含む
【0018】
前記混合される水の合計量(質量)とは、上記(a1)においては、第1の混練する工程において混合される水の量をいい、上記(a2)においては、第1の混練する工程において混合される水の量と、第2の混練する工程において混合される水の量との合計量をいい、上記(b)においては、植物粉末と高分子凝集剤との混練する工程において、植物粉末と高分子凝集剤の混合時に一緒に混合される水の量をいう。
混合される水の合計量(質量)は、水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1.5倍から8倍であるとよい。
尚、上記(a2)の場合、第1の混練時及び第2の混練時に混合される水の合計量が1.5倍から8倍であればよいが、好ましくは、第1の混練時に混合される水の量が、前記固形分(質量)に対し、少なくとも1倍以上であるとよい。
また、上記水浄化剤中の固形分とは、植物粉末と高分子凝集剤とを足し合わせたものをいうが、水浄化剤が、植物粉末と高分子凝集剤の他にも、下記で示すようなその他の添加剤を含む場合には、それらの添加剤も含めた、水浄化剤における固形成分をすべて足し合わせたものをいう。
【0019】
混練手段は、特に制限はなく、目的に応じて選択することができ、例えば、プラネタリーミキサー、ニーダー、バタフライミキサー、エクストルーダー等、一定の混練効果が得られる混練機であれば使用することができる。
【0020】
前記混練時における混練機の回転数は、例えば、10rpm〜180rpmの範囲内で行われるとよい。
また、前記混練時における混練時間の合計数は、例えば、回転数80rpm〜150rpmの条件下で、15分以上30分以内であるとよい。15分未満では、排水に供した際の粘度を上げる効果が十分でない。また、30分を超えても、排水に供した際の粘度を上げる効果が十分ではなくなる。混練時間が長すぎると、高分子凝集剤の分子鎖が切断されるからではないかと思われる。
【0021】
<<植物粉末>>
前記植物としては、排水中の不要物(ニッケル、銅、フッ素など)を凝集分離することができる植物であれば、特に制限はなく用いることができる。例えば、陽イオン交換機能を有する植物として、長朔黄麻(チョウサクコウマ)、モロヘイヤ、小松菜、三つ葉、水菜、ほうれん草などを挙げることができる。
植物の部位としては、葉、茎、根のいずれの部分であっても使用できる。
前記植物の中でも、長朔黄麻(チョウサクコウマ)、及びモロヘイヤが好ましく、下記実施例で良好な結果を示した、長朔黄麻がより好ましい。
【0022】
また、長朔黄麻の中でも、中国農業科学院麻類研究所による鑑定番号2013の「中黄麻4号」が特に好ましい。
「中黄麻4号」とは、以下の特性を有する。
農産物種類:黄麻
【0023】
<<高分子凝集剤>>
前記高分子凝集剤としては、上記植物と同様、排水中の前記無機系不要物を除去する効果を示すものであれば、特に制限はなく、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリアクリルアミドの部分加水分解塩、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、CMCナトリウム塩などを挙げることができる。これらの中でも、ポリアクリルアミドが好ましく使用できる。該ポリアクリルアミドとしては、例えば、市販されているFlopan AN 995SH、FA 920SH、FO 4490、AN 923、AN 956(株式会社エス・エヌ・エフ製)などを用いることができる。
【0024】
<<その他の添加剤>>
前記水浄化剤には、その他の添加剤として、例えば、フィラー、増粘剤、着色剤、チキソ性付与剤等の添加物を含有させてもよい。また、混練成分の水への溶解性向上などの目的で、アルコール等の液体を少量含有させてもよい。
尚、その他の添加剤は、高分子凝集剤を混練する際に含有させてもよく、あるいは、植物粉末と高分子凝集剤とを混練する際に含有させてもよい。
【0025】
<<植物粉末と高分子凝集剤との造粒物>>
前記植物粉末粒子と前記高分子凝集剤の混合比率は、質量比で10:90〜90:10の範囲であるとよい。
前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練して得られた造粒物の表面は、造粒物の表面に存在する植物粉末が高分子凝集剤で覆われている被覆部分と、高分子凝集剤で覆われていない非被覆部分とが混在されているとよい。
前記造粒物のメジアン径は、150μm以上であるとよく、150μm以上850μm以下であるとより好ましい。前記造粒物のメジアン径が150μm以上であると、浄化寄与成分の沈降を遅らせて、浄化寄与成分による吸着時間を長くすることができる。
ここで、メジアン径(d50ともいう)とは、前記造粒物を粒子径の大きさでプロットしたとき、全体の個数の50%にプロットされた粒子径(粒子径の大きい側と小さい側が等量となっている粒子径)をいう。メジアン径は、市販の測定機により計測することができる。
【0026】
<<その他の工程>>
本発明の製造方法は、上記混練する工程の他、成形工程、乾燥工程、粉砕工程などのその他の工程を含んでもよい。
具体的には、本発明で規定する造粒物は、上述のようにして混練する工程を経ることにより得られた混練物を成形し成形体を形成する成形工程と、前記成形物を乾燥させる乾燥工程と、乾燥した成形体を粉砕する粉砕工程とを含む製造方法により製造される。
さらに、前記粉砕工程後に、ふるいにより造粒物を分級する分級工程を含んでもよい。
【0027】
前記成形工程では、例えば、前記混練物が任意の成形方法により成形され、成形体が形成される。
【0028】
前記乾燥工程では、得られた成形体に対し、多段階熱風式乾燥機を用い、80℃〜150℃の温度で2時間〜12時間乾燥させるとよい。
前記成形体を乾燥させ、粉砕工程へ供するとよい。
尚、前記乾燥工程は、成形工程により得られた成形体を乾燥させ、次に該乾燥した成形体を粉砕するという手順で適用されるのが好ましい態様であるが、例えば、成形工程で得られた成形体を粉砕し、その後乾燥工程を施すことにより造粒物を得るという手順で行われてもよい。
前記粉砕工程では、粉砕機、例えば気流式超微粉砕機を用い粉砕するとよい。
前記分級工程では、粉砕した粉末を、分級機、例えば振動ふるい機、あるいは風比式分級機を用いメジアン径が所望の範囲になるよう分級するとよい。メジアン径が150μm〜850μmの範囲になるよう、粒子径が150μm〜850μmの範囲に入るもののみ選別するため、150μm未満と850μmを超える粉末をふるいにかけ、取り除く(カットする)とよい。
【0029】
<B;水浄化剤の製造方法の第2の態様>
前記水浄化剤の製造方法において、植物粉末と高分子凝集剤とを混練する工程の前に、高分子凝集剤に水を混合させ、高分子凝集剤と水とを混練する工程を含む。
【0030】
<<植物粉末と高分子凝集剤とを混練する工程>>
第2の態様における混練工程としては、具体的には、例えば、上述した第1の態様における上記(a1)及び(a2)で記載したものと同じ、下記(a1)及び(a2)で規定する工程を含む、下記(a1)及び(a2)の2つの態様が挙げられる。
(a1)高分子凝集剤に水を混合し、前記高分子凝集剤と水とを混練する第1の混練する工程と、その後、混練した前記高分子凝集剤に前記植物粉末を混合し、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する第2の混練する工程とを含む
上記(a1)において、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する際にも、水を混合してもよく、その場合には、下記(a2)となる。
(a2)高分子凝集剤に水を混合し、前記高分子凝集剤と水とを混練する第1の混練する工程と、その後、混練した前記高分子凝集剤に前記植物粉末と水とを混合し、前記植物粉末と前記高分子凝集剤とを混練する第2の混練する工程とを含む
【0031】
第2の態様で規定するように、植物粉末との混練の前に、高分子凝集剤を水と予め混練しておくことでも、所望の硬さの混練物を得るには有効に作用する。
この場合、混練時に添加される水の合計量(質量)としては、特に制限されず、例えば、水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1倍から9倍でも本発明の目的とする水浄化剤を得ることができる。但し、より好ましくは、第1の態様で規定するように、混練の際、混合される水の合計量(質量)が、水浄化剤中の固形分(質量)に対し、1.5倍から8倍の範囲である。
混練する工程で規定する上記以外の要件としては、上述した第1の態様で記載した内容が適用できる。
【0032】
第2の態様における<<植物粉末>>、<<高分子凝集剤>>、<<その他の添加剤>>、<<植物粉末と高分子凝集剤との造粒物>>、<<その他の工程>>に関する要件についても、上述した第1の態様で記載した内容が適用できる。
【0033】
(排水処理方法)
本発明の排水処理方法は、上述した本発明の製造方法により得られた水浄化剤を水に溶かし、植物粉末と高分子凝集剤との分散液を得、該分散液を排水に供することにより排水中の無機系不要物を除去するものである。
前記無機系不要物としては、例えば、ニッケル、フッ素、鉄、銅、亜鉛、クロム、ヒ素、カドミウム、及び鉛の少なくともいずれかを有する無機系不要物が挙げられる。
前記分散液としては、純水(蒸留水)の他、電気伝導度が30μS/cm以上の水を使用することができる。これにより、比較的安価な水道水や地下水を使用することができる。
分散液に水道水や地下水を使用しても、排水中の無機イオン濃度を所望の濃度以下まで減少させることができ、高い水浄化性能を示すことができる。
本発明の製造方法により得られた水浄化剤を使用し、分散液を作製する。
【0034】
本発明の排水処理方法について具体的に説明する。
例えば、排水に塩基を加え、排水を塩基性にして、前記重金属イオンの少なくとも一部を不溶化し、懸濁固形物を形成させる不溶化工程の後に本発明の製造方法により得られた水浄化剤を添加してもよい。さらに、アミン等の高分子凝集剤を単独で添加した後に本発明の製造方法により得られた水浄化剤を添加してもよい。
本発明の製造方法により得られた水浄化剤を使用し、分散液を作製し、この分散液を排水に供するとよい。
分散液を排水に供することにより、無機系不要物を凝集沈降させ、沈降分離された沈殿物を取り除くことにより、排水は浄化される。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
実験用に使用する排水として、硫酸ニッケル六水和物を純水に溶解し、50mg/Lのニッケルイオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に苛性ソーダをpHが10になるよう供給し、攪拌してニッケルを不溶化した。該排水の上澄み液のニッケルイオン濃度は2mg/Lであった。
<水浄化剤>
次に、植物として「群馬県前橋産 ちぢみほうれん草」を、高分子凝集剤としてポリアクリルアミド(PAM)を使用した。下記に示す製造方法により、造粒物1を得、かかる造粒物1を水浄化剤1として使用した。
【0037】
<<水浄化剤の製造方法>>
植物粉末と高分子凝集剤とを合わせた固形分の質量に対し5倍の質量の水を加えて得られた混練物(植物粉末+高分子凝集剤+水=30kg)を、プラネタリーミキサー(株式会社愛工舎製作所製、混合機ACM−110、容量110L)に入れ、回転数150rpm、20分混合の条件にてシェアをかけ混練した。
得られた混練物を成形し、成形体を作製した。
この成形体を、多段階熱風式乾燥機(株式会社七洋製作所製、ラック式オーブン装置)を用いて、120℃で3時間、さらに150℃で2時間乾燥させた。
次に乾燥させたシートを気流式超微粉砕機(増幸産業株式会社製 セレンミラー)を用いてメジアン径が400μmになるよう粉砕した。
尚、メジアン径は、マスターサイザー2000(マルバーン インスツルメント製)により測定した。
粉砕した粉末を分級機(ツカサ工業株式会社製 振動ふるい機)を用い、粒子径が150μm〜850μmの範囲に入るもののみ使用するよう、150μm未満と850μmより大きいものは、ふるいにかけ取り除いた(カットした)。
このようにして、造粒物1を得、水浄化剤1とした。
【0038】
<分散液>
この造粒物に対し、電気伝導度110μS/cmの水(栃木県鹿沼市水道水)を固形分0.1質量%になるように加えて攪拌し、分散液1を得た。
【0039】
<特性評価>
次に、上記排水に対して、固形分が7mg/Lになるように水浄化剤1を含む分散液1を添加し、攪拌した。ここで、「固形分」の測定方法は、排水中のスラリー濃度を水分計にて計測し、逆算することにより、求めることができる。
分散液1を添加した排水を沈殿槽に移送し、その後静置して1時間毎に目視で状態を確認した。
明らかに上澄み液と沈殿物の2層に分かれたと確認した時点を沈降時間として測定した。
また、上澄み液を採取し、ラムダ(Λ)9000(共立理化学研究所製)により、イオン濃度を測定した。
その結果、下記の基準により水浄化性能を評価した。
[水浄化性能の評価基準]
◎ :1.0mg/L未満(検出限界以下)
○ :1.0mg/L以上1.4mg/L未満
○△:1.4mg/L以上1.7mg/L未満
△ :1.7mg/L以上2.0mg/L未満
× :2.0mg/L以上
実施例1の評価結果を表1−1に示す。
また、表1−1において、分散液の粘度50(mPa・sec)をB型粘度計により測定した結果も示す。また、造粒物を製造する過程により得られる混練物の硬さについても上述の方法に従い、ティー・エイ・インスツルメント製 AR−G2の硬さ測定モードで測定した結果を示す。
尚、上記粘度測定は、東機産業製TVC−7型粘度計(B型粘度計)を使用し、室温23℃下、1号ローターにて測定した。
尚、表1−1において、植物粉末1は、「群馬県前橋産 ちぢみほうれん草」を、PAMはポリアクリルアミドを表す(表1−2〜表1−3、表2においても同様)。
【0040】
(実施例2)
実施例1において、植物として、長朔黄麻(中国・広州産)を使用し、混練工程におけるミキサーの回転数を80rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、造粒物2を作製した。
造粒物2からなる水浄化剤2を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例2の評価結果を表1−1に示す。尚、表1−1において、植物粉末2は、「長朔黄麻(中国・広州産)」を表す。
【0041】
(実施例3)
実施例2において、植物として、長朔黄麻の中国農業科学院麻類研究所による鑑定番号2013、「中黄麻4号」を使用した。それ以外は、実施例2と同様にして、造粒物3を作製した。
造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例3の評価結果を表1−1に示す。尚、表1−1において、植物粉末3は、「中黄麻4号」を表す。
【0042】
(実施例4)
実施例3において、固形分(高分子凝集体+植物粉末)に対する加水量を3倍とした以外は、実施例3と同様にして、造粒物4を作製した。
造粒物4からなる水浄化剤4を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例4の評価結果を表1−1に示す。
【0043】
(実施例5)
実施例3において、固形分(高分子凝集体+植物粉末)に対する加水量を8倍とした以外は、実施例3と同様にして、造粒物5を作製した。
造粒物5からなる水浄化剤5を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例5の評価結果を表1−1に示す。
【0044】
(実施例6)
実施例3において、混練工程における混練時間を15分に変更した以外は、実施例3と同様にして、造粒物6を作製した。
造粒物6からなる水浄化剤6を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例6の評価結果を表1−2に示す。
【0045】
(実施例7)
実施例3において、混練工程における混練時間を30分に変更した以外は、実施例3と同様にして、造粒物7を作製した。
造粒物7からなる水浄化剤7を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例7の評価結果を表1−2に示す。
【0046】
(実施例8)
実施例3において、分散液の水として、電気伝導度198μS/cmの水(栃木県鹿沼市水道水)を使用した以外は、実施例3と同様にして、造粒物8を作製した。
造粒物8からなる水浄化剤8を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例8の評価結果を表1−2に示す。
【0047】
(実施例9)
実施例3において、分散液の水として、栃木県鹿沼市水道水と蒸留水とを適量ブレンドして得た、電気伝導度30μS/cmの水を使用した以外は、実施例3と同様にして、造粒物9を作製した。
造粒物9からなる水浄化剤9を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例9の評価結果を表1−2に示す。
【0048】
(実施例10)
実施例3において、分級を行わなかった以外は、実施例3と同様にして、造粒物10を作製した。
造粒物10からなる水浄化剤10を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例10の評価結果を表1−2に示す。
【0049】
(実施例11)
実施例3において、高分子凝集剤としてポリアミンを使用した以外は、実施例3と同様にして、造粒物11を作製した。
造粒物11からなる水浄化剤11を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例11の評価結果を表1−2に示す。
【0050】
(実施例12)
実験用に使用する排水として、フッ化カリウムを純水に溶解し、2,500mg/Lのフッ素イオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、塩化カルシウムを8.6mg/L添加し、pHが7.5〜9.0になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌してフッ素を不溶化した。この操作により、フッ素水溶液は、ミクロフロックを含む上澄み液と沈殿物に分離した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は10mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例12の評価結果を表1−3に示す。
【0051】
(実施例13)
実験用に使用する排水として、塩化第二鉄・六水和物を純水に溶解し、200mg/Lの鉄イオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、pHが6.5〜9.0になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌して、鉄を不溶化した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は2mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例13の評価結果を表1−3に示す。
【0052】
(実施例14)
実験用に使用する排水として、硫酸銅・五水和物を純水に溶解し、100mg/Lの銅イオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、pHが7.0〜8.0になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌して、銅を不溶化した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は2mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例14の評価結果を表1−3に示す。
【0053】
(実施例15)
実験用に使用する排水として、硝酸亜鉛・六水和物を純水に溶解し、100mg/Lの亜鉛イオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、pHが.9.0〜9.5になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌して、亜鉛を不溶化した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は5mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例15の評価結果を表1−3に示す。
【0054】
(実施例16)
実験用に使用する排水として、二クロム酸カリウムを純水に溶解し、100mg/Lのクロムイオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、pHが6.0〜7.5になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌して、クロムを不溶化した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は5mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例16の評価結果を表1−3に示す。
【0055】
(実施例17)
実験用に使用する排水として、三酸化二ヒ素を純水に溶解し、10mg/Lのヒ素イオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、塩化第二鉄を65mg/L、塩化カルシウムを354mg/L添加し、次に、pHが8.0〜9.5になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌して、ヒ素を不溶化した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は0.05mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例17の評価結果を表1−3に示す。
但し、実施例17においては、実施例3と同様にして、沈降時間を測定した後、上澄み液を採取し、エバポレーターにより体積が1/100になるよう濃縮後、イオン濃度を測定した。ヒ素イオンについては、イオン濃度が0.01mg/L以下を好ましい結果であると判断し、◎として評価した。
【0056】
【表1-1】
【0057】
【表1-2】
【0058】
【表1-3】
【0059】
(実施例18)
実施例3、4、及び5で得られた水浄化剤3、4、及び5のそれぞれについて、分散液の水を電気伝導度1μS/cmの水(蒸留水)に変えた場合の水浄化剤の特性評価も、実施例3、4,及び5と同様の方法で行った。
水浄化剤3、4、及び5に対する、分散液の水を蒸留水とした場合の評価結果と、上記実施例3、4、及び5で行った、電気伝導度110μS/cmの水(栃木県鹿沼市水道水)を分散液として使用した場合の評価結果とを、表2に示す。
【0060】
(比較例1〜2)
実施例3において、固形分(高分子凝集体+植物粉末)に対する加水量を0.8倍、9倍とした以外は、実施例3と同様にして、比較造粒物1〜2を作製した。
比較造粒物1〜2からなる比較水浄化剤1〜2を使用して、実施例3及び実施例18と同様にして、分散液が、電気伝導度110μS/cmの水(栃木県鹿沼市水道水)を使用した場合と、電気伝導度1μS/cmの水(蒸留水)を使用した場合における、排水の水浄化性能を評価した。比較例1〜2の評価結果を表2に示す。
尚、比較例1で使用した比較造粒物1に対し、製造過程で得られた混練物について、該混練物の硬さを実施例1と同様の方法で測定しようとしたが、該混練物は、粘性がなく、ぼろぼろと崩れまとまりがなかったため、硬さ計で測定することもできなかった。
【0061】
【表2】
【0062】
(実施例19)
実施例3において、実施例3のように分散液を使用して、排水の浄化性能を評価する実験を30回行った。
一方、実施例3において得られる水浄化剤3を用い、分散液は使用せず、該水浄化剤3を上記排水に直接投入することにより、排水の浄化性能を評価する実験を30回行った。水浄化剤3の添加量は、排水に対して、固形分が7mg/Lになるようにした。
それぞれについて、浄化性能のばらつき度を評価した。
分散液を使用した場合は、◎の結果となり、毎回、ばらつきが少ない浄化結果が得られることが確認できた。
一方、水浄化剤を直接排水に投入した場合は、◎の良好な結果を示す時もあれば、同様な方法で実験しているが、同じような結果を示さない時(○や○△の結果の時)もあり、結果にばらつきがあった。
【0063】
(実施例20)
実施例3において、混練工程を、以下で示すように変更した以外は、実施例3と同様にして、造粒物20を作製した。
造粒物20からなる水浄化剤20を使用して、実施例3と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。
<混練工程>
下記表3で示す量の水を高分子凝集剤に添加し、高分子凝集剤と水とを10分間混練した。その後、混練した高分子凝集剤に植物粉末を混合し、植物粉末と高分子凝集剤とを10分間混練した。
また、上記のように得た水浄化剤20を使用して、実施例18で示すように、分散液の水を電気伝導度1μS/cmの水(蒸留水)に変えた場合の水浄化剤の特性も評価した。
水浄化剤20を使用した評価結果を表3に示す。
【0064】
(実施例21〜23)
水浄化剤20に対し、下記表3で示す条件に変えた以外は、同様の方法で水浄化剤21〜23を作製した。
実施例20において、水浄化剤20を水浄化剤21〜23に変えた以外は、同様の方法により、水浄化剤の特性を評価した(実施例21〜23)。
【0065】
【表3】
【0066】
以上、実施例1から23の結果から、本発明の製造方法により製造された水浄化剤は、排水槽のスケールが大きい自動化浄化装置にも好適に使用し得る水浄化剤であって、低コストで、かつ毎回ばらつかず、安定した浄化性能を示す水浄化剤であることが確認できた。