【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
実験用に使用する排水として、硫酸ニッケル六水和物を純水に溶解し、50mg/Lのニッケルイオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に苛性ソーダをpHが10になるよう供給し、攪拌してニッケルを不溶化した。該排水の上澄み液のニッケルイオン濃度は2mg/Lであった。
<水浄化剤>
次に、植物として「群馬県前橋産 ちぢみほうれん草」を、高分子凝集剤としてポリアクリルアミド(PAM)を使用した。下記に示す製造方法により、造粒物1を得、かかる造粒物1を水浄化剤1として使用した。
【0037】
<<水浄化剤の製造方法>>
植物粉末と高分子凝集剤とを合わせた固形分の質量に対し5倍の質量の水を加えて得られた混練物(植物粉末+高分子凝集剤+水=30kg)を、プラネタリーミキサー(株式会社愛工舎製作所製、混合機ACM−110、容量110L)に入れ、回転数150rpm、20分混合の条件にてシェアをかけ混練した。
得られた混練物を成形し、成形体を作製した。
この成形体を、多段階熱風式乾燥機(株式会社七洋製作所製、ラック式オーブン装置)を用いて、120℃で3時間、さらに150℃で2時間乾燥させた。
次に乾燥させたシートを気流式超微粉砕機(増幸産業株式会社製 セレンミラー)を用いてメジアン径が400μmになるよう粉砕した。
尚、メジアン径は、マスターサイザー2000(マルバーン インスツルメント製)により測定した。
粉砕した粉末を分級機(ツカサ工業株式会社製 振動ふるい機)を用い、粒子径が150μm〜850μmの範囲に入るもののみ使用するよう、150μm未満と850μmより大きいものは、ふるいにかけ取り除いた(カットした)。
このようにして、造粒物1を得、水浄化剤1とした。
【0038】
<分散液>
この造粒物に対し、電気伝導度110μS/cmの水(栃木県鹿沼市水道水)を固形分0.1質量%になるように加えて攪拌し、分散液1を得た。
【0039】
<特性評価>
次に、上記排水に対して、固形分が7mg/Lになるように水浄化剤1を含む分散液1を添加し、攪拌した。ここで、「固形分」の測定方法は、排水中のスラリー濃度を水分計にて計測し、逆算することにより、求めることができる。
分散液1を添加した排水を沈殿槽に移送し、その後静置して1時間毎に目視で状態を確認した。
明らかに上澄み液と沈殿物の2層に分かれたと確認した時点を沈降時間として測定した。
また、上澄み液を採取し、ラムダ(Λ)9000(共立理化学研究所製)により、イオン濃度を測定した。
その結果、下記の基準により水浄化性能を評価した。
[水浄化性能の評価基準]
◎ :1.0mg/L未満(検出限界以下)
○ :1.0mg/L以上1.4mg/L未満
○△:1.4mg/L以上1.7mg/L未満
△ :1.7mg/L以上2.0mg/L未満
× :2.0mg/L以上
実施例1の評価結果を表1−1に示す。
また、表1−1において、分散液の粘度50(mPa・sec)をB型粘度計により測定した結果も示す。また、造粒物を製造する過程により得られる混練物の硬さについても上述の方法に従い、ティー・エイ・インスツルメント製 AR−G2の硬さ測定モードで測定した結果を示す。
尚、上記粘度測定は、東機産業製TVC−7型粘度計(B型粘度計)を使用し、室温23℃下、1号ローターにて測定した。
尚、表1−1において、植物粉末1は、「群馬県前橋産 ちぢみほうれん草」を、PAMはポリアクリルアミドを表す(表1−2〜表1−3、表2においても同様)。
【0040】
(実施例2)
実施例1において、植物として、長朔黄麻(中国・広州産)を使用し、混練工程におけるミキサーの回転数を80rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、造粒物2を作製した。
造粒物2からなる水浄化剤2を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例2の評価結果を表1−1に示す。尚、表1−1において、植物粉末2は、「長朔黄麻(中国・広州産)」を表す。
【0041】
(実施例3)
実施例2において、植物として、長朔黄麻の中国農業科学院麻類研究所による鑑定番号2013、「中黄麻4号」を使用した。それ以外は、実施例2と同様にして、造粒物3を作製した。
造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例3の評価結果を表1−1に示す。尚、表1−1において、植物粉末3は、「中黄麻4号」を表す。
【0042】
(実施例4)
実施例3において、固形分(高分子凝集体+植物粉末)に対する加水量を3倍とした以外は、実施例3と同様にして、造粒物4を作製した。
造粒物4からなる水浄化剤4を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例4の評価結果を表1−1に示す。
【0043】
(実施例5)
実施例3において、固形分(高分子凝集体+植物粉末)に対する加水量を8倍とした以外は、実施例3と同様にして、造粒物5を作製した。
造粒物5からなる水浄化剤5を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例5の評価結果を表1−1に示す。
【0044】
(実施例6)
実施例3において、混練工程における混練時間を15分に変更した以外は、実施例3と同様にして、造粒物6を作製した。
造粒物6からなる水浄化剤6を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例6の評価結果を表1−2に示す。
【0045】
(実施例7)
実施例3において、混練工程における混練時間を30分に変更した以外は、実施例3と同様にして、造粒物7を作製した。
造粒物7からなる水浄化剤7を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例7の評価結果を表1−2に示す。
【0046】
(実施例8)
実施例3において、分散液の水として、電気伝導度198μS/cmの水(栃木県鹿沼市水道水)を使用した以外は、実施例3と同様にして、造粒物8を作製した。
造粒物8からなる水浄化剤8を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例8の評価結果を表1−2に示す。
【0047】
(実施例9)
実施例3において、分散液の水として、栃木県鹿沼市水道水と蒸留水とを適量ブレンドして得た、電気伝導度30μS/cmの水を使用した以外は、実施例3と同様にして、造粒物9を作製した。
造粒物9からなる水浄化剤9を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例9の評価結果を表1−2に示す。
【0048】
(実施例10)
実施例3において、分級を行わなかった以外は、実施例3と同様にして、造粒物10を作製した。
造粒物10からなる水浄化剤10を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例10の評価結果を表1−2に示す。
【0049】
(実施例11)
実施例3において、高分子凝集剤としてポリアミンを使用した以外は、実施例3と同様にして、造粒物11を作製した。
造粒物11からなる水浄化剤11を使用して、実施例1と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。実施例11の評価結果を表1−2に示す。
【0050】
(実施例12)
実験用に使用する排水として、フッ化カリウムを純水に溶解し、2,500mg/Lのフッ素イオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、塩化カルシウムを8.6mg/L添加し、pHが7.5〜9.0になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌してフッ素を不溶化した。この操作により、フッ素水溶液は、ミクロフロックを含む上澄み液と沈殿物に分離した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は10mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例12の評価結果を表1−3に示す。
【0051】
(実施例13)
実験用に使用する排水として、塩化第二鉄・六水和物を純水に溶解し、200mg/Lの鉄イオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、pHが6.5〜9.0になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌して、鉄を不溶化した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は2mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例13の評価結果を表1−3に示す。
【0052】
(実施例14)
実験用に使用する排水として、硫酸銅・五水和物を純水に溶解し、100mg/Lの銅イオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、pHが7.0〜8.0になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌して、銅を不溶化した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は2mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例14の評価結果を表1−3に示す。
【0053】
(実施例15)
実験用に使用する排水として、硝酸亜鉛・六水和物を純水に溶解し、100mg/Lの亜鉛イオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、pHが.9.0〜9.5になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌して、亜鉛を不溶化した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は5mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例15の評価結果を表1−3に示す。
【0054】
(実施例16)
実験用に使用する排水として、二クロム酸カリウムを純水に溶解し、100mg/Lのクロムイオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、pHが6.0〜7.5になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌して、クロムを不溶化した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は5mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例16の評価結果を表1−3に示す。
【0055】
(実施例17)
実験用に使用する排水として、三酸化二ヒ素を純水に溶解し、10mg/Lのヒ素イオンを含む水溶液を800g作製した(仮想排水)。
次に、上記排水に、塩化第二鉄を65mg/L、塩化カルシウムを354mg/L添加し、次に、pHが8.0〜9.5になるよう水酸化ナトリウムを添加しながら攪拌して、ヒ素を不溶化した。
この時点で、該排水の上澄み液のイオン濃度は0.05mg/Lであった。
上記排水を使用したこと以外は、実施例3と同様にして、造粒物3からなる水浄化剤3を使用して、水浄化剤の特性を評価した。実施例17の評価結果を表1−3に示す。
但し、実施例17においては、実施例3と同様にして、沈降時間を測定した後、上澄み液を採取し、エバポレーターにより体積が1/100になるよう濃縮後、イオン濃度を測定した。ヒ素イオンについては、イオン濃度が0.01mg/L以下を好ましい結果であると判断し、◎として評価した。
【0056】
【表1-1】
【0057】
【表1-2】
【0058】
【表1-3】
【0059】
(実施例18)
実施例3、4、及び5で得られた水浄化剤3、4、及び5のそれぞれについて、分散液の水を電気伝導度1μS/cmの水(蒸留水)に変えた場合の水浄化剤の特性評価も、実施例3、4,及び5と同様の方法で行った。
水浄化剤3、4、及び5に対する、分散液の水を蒸留水とした場合の評価結果と、上記実施例3、4、及び5で行った、電気伝導度110μS/cmの水(栃木県鹿沼市水道水)を分散液として使用した場合の評価結果とを、表2に示す。
【0060】
(比較例1〜2)
実施例3において、固形分(高分子凝集体+植物粉末)に対する加水量を0.8倍、9倍とした以外は、実施例3と同様にして、比較造粒物1〜2を作製した。
比較造粒物1〜2からなる比較水浄化剤1〜2を使用して、実施例3及び実施例18と同様にして、分散液が、電気伝導度110μS/cmの水(栃木県鹿沼市水道水)を使用した場合と、電気伝導度1μS/cmの水(蒸留水)を使用した場合における、排水の水浄化性能を評価した。比較例1〜2の評価結果を表2に示す。
尚、比較例1で使用した比較造粒物1に対し、製造過程で得られた混練物について、該混練物の硬さを実施例1と同様の方法で測定しようとしたが、該混練物は、粘性がなく、ぼろぼろと崩れまとまりがなかったため、硬さ計で測定することもできなかった。
【0061】
【表2】
【0062】
(実施例19)
実施例3において、実施例3のように分散液を使用して、排水の浄化性能を評価する実験を30回行った。
一方、実施例3において得られる水浄化剤3を用い、分散液は使用せず、該水浄化剤3を上記排水に直接投入することにより、排水の浄化性能を評価する実験を30回行った。水浄化剤3の添加量は、排水に対して、固形分が7mg/Lになるようにした。
それぞれについて、浄化性能のばらつき度を評価した。
分散液を使用した場合は、◎の結果となり、毎回、ばらつきが少ない浄化結果が得られることが確認できた。
一方、水浄化剤を直接排水に投入した場合は、◎の良好な結果を示す時もあれば、同様な方法で実験しているが、同じような結果を示さない時(○や○△の結果の時)もあり、結果にばらつきがあった。
【0063】
(実施例20)
実施例3において、混練工程を、以下で示すように変更した以外は、実施例3と同様にして、造粒物20を作製した。
造粒物20からなる水浄化剤20を使用して、実施例3と同様にして、水浄化剤の特性を評価した。
<混練工程>
下記表3で示す量の水を高分子凝集剤に添加し、高分子凝集剤と水とを10分間混練した。その後、混練した高分子凝集剤に植物粉末を混合し、植物粉末と高分子凝集剤とを10分間混練した。
また、上記のように得た水浄化剤20を使用して、実施例18で示すように、分散液の水を電気伝導度1μS/cmの水(蒸留水)に変えた場合の水浄化剤の特性も評価した。
水浄化剤20を使用した評価結果を表3に示す。
【0064】
(実施例21〜23)
水浄化剤20に対し、下記表3で示す条件に変えた以外は、同様の方法で水浄化剤21〜23を作製した。
実施例20において、水浄化剤20を水浄化剤21〜23に変えた以外は、同様の方法により、水浄化剤の特性を評価した(実施例21〜23)。
【0065】
【表3】
【0066】
以上、実施例1から23の結果から、本発明の製造方法により製造された水浄化剤は、排水槽のスケールが大きい自動化浄化装置にも好適に使用し得る水浄化剤であって、低コストで、かつ毎回ばらつかず、安定した浄化性能を示す水浄化剤であることが確認できた。