特許第6885836号(P6885836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885836
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】警報システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 29/12 20060101AFI20210603BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20210603BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   G08B29/12
   G08B17/00 C
   G08B25/00 520A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-183192(P2017-183192)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-61316(P2019-61316A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】中島 義人
(72)【発明者】
【氏名】森木 大樹
(72)【発明者】
【氏名】島 裕史
【審査官】 吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−250916(JP,A)
【文献】 特開2017−151802(JP,A)
【文献】 特開2013−105370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00−31/00
H04Q9/00−9/16
H04W4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域に設置された複数の警報器により相互に信号を通信可能な連動グループが形成され、前記複数の警報器の何れかで火災を検出した場合に連動元を示す火災警報を出力すると共に火災連動信号を他の警報器に送信して連動先を示す火災警報を出力させる警報システムに於いて、
前記警報器の各々に、自己の発生事象及び他の警報器の発生事象を履歴情報とし記憶して共有させる履歴共有制御部が設けられ
前記履歴共有制御部は、前記複数の警報器の相互間で定期的に行われる通信テストにより自己の履歴情報を他の警報器に送信すると共に他の警報器からの履歴情報を受信して前記履歴情報として記憶することを特徴とする警報システム。
【請求項2】
請求項1記載の警報システムに於いて、前記履歴共有制御部は、所定の読出操作又は読出指示信号の受信を検出した場合に、前記履歴情報を読み出して外部に送信することを特徴とする警報システム。
【請求項3】
請求項記載の警報システムに於いて、前記警報システムは無線通信機能を備えた読出器をさらに備え、前記読出器は前記読出指示信号を送信し、前記履歴情報を受信することを特徴とする警報システム。
【請求項4】
請求項1記載の警報システムに於いて、前記履歴共有制御部は、所定の読出操作又は読出指示信号の受信を検出した場合に、自己の履歴情報を他の警報器に送信すると共に他の警報器からの履歴情報を受信して前記履歴情報として記憶した後に、前記履歴情報を読み出して外部に送信することを特徴とする警報システム。
【請求項5】
監視領域に設置された複数の警報器により相互に信号を通信可能な連動グループが形成され、前記複数の警報器の何れかで火災を検出した場合に連動元を示す火災警報を出力すると共に火災連動信号を他の警報器に送信して連動先を示す火災警報を出力させる警報システムに於いて、
前記警報器の各々に、自己の発生事象及び他の警報器の発生事象を履歴情報とし記憶して共有させる履歴共有制御が設けられ、
前記履歴共有制御部は、所定の読出操作又は読出指示信号の受信を検出した場合に、自己の履歴情報を他の警報器に送信すると共に他の警報器からの履歴情報を受信して前記履歴情報として記憶した後に、前記履歴情報を読み出して外部に送信することを特徴とする警報システム。
【請求項6】
請求項記載の警報システムに於いて、
前記履歴共有制御部は、前記複数の警報器の相互間で定期的に行われる通信テストにより自己の履歴情報を他の警報器に送信すると共に他の警報器からの履歴情報を受信して前記履歴情報として記憶することを特徴とする警報システム。
【請求項7】
請求項1又は5記載の警報システムに於いて前記履歴共有制御部は、不揮発メモリに前記履歴情報を記憶させることを特徴とする警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線式連動型の警報器により連動グループを形成し、警報器で火災を検出して警報した場合に他の警報器に火災連動信号を送信して警報させる警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅における火災を検出して警報する警報器が普及している。このうち、住宅用火災警報器を住警器と言う。
【0003】
このような住警器にあっては、住警器内にセンサ部と警報部を一体に備え、火災を検出すると火災警報を出すようにしており、住警器単体で火災監視と警報ができることから、設置が簡単でコスト的にも安価であり、一般住宅での設置義務化に伴い広く普及している。
【0004】
また、住警器を無線式連動型として複数の住警器により連動グループを形成し、任意の住警器で火災が検出されて連動元を示す警報音が出力されると火災連動信号が送信され、他の住警器からも連動して連動先を示す警報音が出力されるようにした警報システムも実用化され、普及している。
【0005】
このような警報システムに設けられた受信機に接続されない住警器においては、火災の検出動作、障害、定期通報などの全ての情報を履歴情報として警報器自身のメモリ内に記憶する履歴記憶機能を設けている。
【0006】
このような履歴記憶機能を備えた住警器は、火災が発生した場合や故障した場合等に、記憶している履歴情報を読み出して解析することで、住警器がどのような状態であったかを知ることで、火災が発生して消火した後に火元の特定や住警器が故障した場合の原因調査等に活用できる。
【0007】
例えば、特許文献1の住警器は、連動元又は連動先を示す異常警報の履歴を保持する警報履歴保持部と、外部指示操作部の警報履歴出力操作を検出した時に、警報履歴保持部に保持している最新の異常警報の履歴を示す情報を報知部により出力させる警報履歴出力部とを設け、火災を検出して複数の住警器で連動警報が行われた場合に警報履歴を保存し、警報が全て停止した後であっても、火元の特定や、誤報又は非火災報を発した住警器を特定する必要が生じた場合、直前の警報時に連動元であった住警器において、操作部により警報履歴出力操作を行うと、火災警報時に保存された火災警報履歴が読み出されて、直前(最新警報時)の連動元を示す火災警報の履歴報知が行われ、火元の特定や、誤報又は非火災報を発した住警器の特定が簡単且つ確実にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−113114号公報
【特許文献2】特開2014−225055号公報
【特許文献3】特開2015−087885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の警報システムに設けられた無線連動型の住警器にあっては、住警器が火災等で焼け落ちたり、メモリを含むICが読取不可能なレベルで破壊されてしまったような場合には、住警器に記憶されている履歴情報を回収することができないという問題がある。
【0010】
本発明は、連動グループを構成する何れかの警報器の履歴情報の読み取りが不能な状態であっても、他の警報器から履歴情報の回収を可能とする警報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(警報システム)
本発明は、監視領域に設置された複数の警報器により相互に信号を通信可能な連動グループが形成され、複数の警報器の何れかで火災を検出した場合に連動元を示す火災警報を出力すると共に火災連動信号を他の警報器に送信して連動先を示す火災警報を出力させる警報システムに於いて、
警報器の各々に、自己の発生事象及び他の警報器の発生事象を履歴情報とし記憶して共有させる履歴共有制御部が設けられたことを特徴とする。
【0012】
(通信テストによる履歴情報の収集)
履歴共有制御部は、複数の警報器の相互間で定期的に行われる通信テストにより自己の履歴情報を他の警報器に送信すると共に他の警報器からの履歴情報を受信して履歴情報として記憶する。
【0013】
(不揮発メモリ)
履歴共有制御部は、不揮発メモリに履歴情報を記憶させる。
【0014】
(履歴情報の取出し)
履歴共有制御部は、所定の読出操作又は読出指示信号の受信を検出した場合に、履歴情報を読み出して外部に送信する。
【0015】
(履歴情報の読出器)
警報システムは無線通信機能を備えた読出器をさらに備え、読出器は読出指示信号を送信し、履歴情報を受信する。
【0016】
(最新の履歴情報を収集して取出し)
履歴共有制御部は、所定の読出操作又は読出指示信号の受信を検出した場合に、自己の履歴情報を他の警報器に送信すると共に他の警報器からの履歴情報を受信して履歴情報として記憶した後に、履歴情報を読み出して外部に送信する。
【発明の効果】
【0017】
(基本的な効果)
本発明は、監視領域に設置された複数の警報器により相互に信号を通信可能な連動グループが形成され、前記複数の警報器の何れかで火災を検出した場合に連動元を示す火災警報を出力すると共に火災連動信号を他の警報器に送信して連動先を示す火災警報を出力させる警報システムに於いて、警報器の各々に、自己の発生事象及び他の警報器の発生事象を履歴情報とし記憶して共有させる履歴共有制御部が設けられたため、火災により連動グループ内の警報器が焼け落ちたり、メモリを格納したICが読取り不能状態にあっても、グループを構成する警報器の履歴情報は警報器で共有されていることから、正常に機能する何れか一つの警報器の履歴情報を取り出すことで警報器の履歴情報が取得でき、焼け落ちたり、履歴情報が回収できない故障を起こしている警報器の履歴情報を取得して火災の発生状況や故障原因の調査等を効率的に高い精度で行うことを可能とする。
【0018】
(通信テストによる履歴情報の収集による効果)
また、履歴共有制御部は、複数の警報器の相互間で定期的に行われる通信テストにより自己の履歴情報を他の警報器に送信すると共に他の警報器からの履歴情報を受信して履歴情報として記憶するようにしたため、無線式連動型の警報器が本来備えている定期テスト機能を利用して、警報器間で相互に履歴情報を定期的に送受信して共有することが簡単にできる。
【0019】
(不揮発メモリによる効果)
また、履歴共有制御部は、不揮発メモリに履歴情報を記憶させるようにしたため、警報器の電池電源が失われても共有している履歴情報が失われることがない。
【0020】
(履歴情報の取出しによる効果)
また、履歴共有制御部は、所定の読出操作又は読出指示信号の受信を検出した場合に、履歴情報を読み出して外部に送信するようにしたため、共有している履歴情報の取出しを必要とする場合に、簡単な操作で共有している履歴情報を外部の装置や機器に取り出して調査等の解析に利用することができる。
【0021】
(履歴情報の読出器による効果)
また、警報システムは無線通信機能を備えた読出器をさらに備え、読出器は読出指示信号を送信し、履歴情報を受信するようにしたため、履歴情報を収集する際には、担当者は読取器を携帯して警報器の近くに行くことで、無線による通信接続により簡単に警報器に記憶されている履歴情報を読み出して利用することができる。
【0022】
(最新の履歴情報を収集して取出しによる効果)
また、履歴共有制御部は、所定の読出操作又は読出指示信号の受信を検出した場合に、自己の履歴情報を他の警報器に送信すると共に他の警報器からの履歴情報を受信して履歴情報として記憶した後に、履歴情報を読み出して外部に送信するようにしたため、共有している履歴情報を読み出す場合に、他の警報器から履歴情報を収集した後に外部に送信することで、最新の事象を含む警報器の履歴情報を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の受信機の機能が用いられる警報システムを示した説明図
図2】住警器の外観を示したブロック図
図3】本発明による履歴共有機能を備えた住警器の機能構成を示したブロック図
図4】連動グループを形成する住警器間で行われる定期通信テストの通信経路を示した説明図
図5図3の不揮発メモリに記憶された履歴共有ファイルを一覧形式で示した説明図
図6図3の住警器による制御動作を示したフローチャート
図7図6のステップS11における通信テスト制御の詳細を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
[警報システムの概要]
図1は本発明の受信機の機能が用いられる警報システムを示した説明図であり、住宅に設置される無線式の住警器(住宅用火災警報器)により構成される警報システムを例にとっている。
【0025】
図1の例にあっては、住宅12の台所、居間、主寝室、子供部屋のそれぞれに、火災を検出して警報する住警器10−1〜10−4が設置され、更に屋外に建てられたガレージ14にも住警器10−5が設置されている。住警器10−1〜10−5は、火災等の連動信号を無線により相互に送受信する機能を備え、住宅全体の火災監視を行っている。
【0026】
また。住警器10−1〜10−5は、同じチャンネル周波数を使用することにより連動グループを形成している。本実施形態で連動グループを形成する住警器の最大数は例えば15台となる。また、以下の説明で住警器10−1〜10−5を区別する必要がない場合は、住警器10という場合がある。
【0027】
いま、住宅12の子供部屋で火災が発生したとすると、住警器10−4が火災を検出し、警報音と警報表示により連動元を示す火災警報を出力する。また火災を検出した住警器10−4は他の住警器10−1〜10−3,10−5に対し、火災発生を示す火災連動信号を無線により送信する。他の住警器10−1〜10−3,10−5は連動元の住警器10−4からの火災連動信号を受信した場合に、警報音と警報表示により連動先を示す火災警報を出力する。
【0028】
住警器10−1〜10−5は火災警報の出力中に警報停止操作を行うと、自身の警報を停止すると共に警報停止連動信号を他の住警器に送信して警報停止動作を行わせる。また、火災を検出した住警器10−4で火災復旧が検出されると、自身の警報を停止すると共に火災復旧連動信号を他の住警器に送信して警報停止動作を行わせる。
【0029】
また、通常の監視状態で、住警器10−1〜10−5は、例えば72時間の周期で自動的に通信テスト(定期通報テスト)を行っている。更に、住警器10−1〜10−5は、何れかのテストボタンを長押し操作すると、通信テストを行うことができる。
【0030】
図2は無線式の住警器の外観を示した説明図であり、図2(A)に正面図を示し、図2(B)に側面図を示している。
【0031】
図2に示すように、住警器10は本体16とカバー18で構成され、カバー18の中央には煙流入口を開口し、内部には検煙部26が配置され、火災による煙が所定濃度に達したときに火災を検出する。カバー18の左下側には音響孔24が設けられ、この背後にスピーカを内蔵し、警報音や音声メッセージを出力できるようにしている。
【0032】
検煙部26の下側にはテストスイッチ20が設けられている。テストスイッチ20は住警器の警報停止を指示するテストスイッチとしての機能を兼ねており、火災警報時にテストスイッチ20が操作されると警報を停止し、通常状態でテストスイッチ20が操作されると機能点検を開始して結果を報知する。更に、テストスイッチ20を長押し操作すると通信テストが行われる。テストスイッチ20の内部には、点線で示すように警報表示を行うLED22が配置され、テストスイッチ20を介して内部のLED22の点灯、点滅等を視認可能としている。
【0033】
[住警器の機能構成]
(機能構成の概要)
図3は本発明による履歴共有機能を備えた住警器の機能構成を示したブロック図である。図3に示すように、住警器10は制御プロセッサ30を備え、制御プロセッサ30に対しては検煙部26、テストスイッチ20、LED22、スピーカ34、履歴共有ファイル76が格納された不揮発メモリ35及びアンテナ42を接続した通信部32が設けられている。
【0034】
制御プロセッサ30には、CPU46が設けられ、CPU46からのバス54に、制御ロジック48、ROM50、RAM52、AD変換ポート58、入力ポート60、出力ポート62、音声出力ポート64、メモリポート66及び通信ポート56が接続されている。なお、制御ロジック48はCPU46の制御処理に伴うバス制御などの各種のハードウェア機能を実現する。
【0035】
AD変換ポート58には検煙部26が接続され、入力ポート60にはテストスイッチ20が接続され、出力ポート62にはLED22が接続され、音声出力ポート64にはスピーカ34が接続され、メモリポート66には不揮発メモリ35が接続され、通信ポート56には通信部32が接続されている。なお、不揮発メモリ35としては着脱自在な不揮発メモリカードとしても良い。
【0036】
検煙部26は、公知の散乱光式検煙構造をもち、所定周期で赤外LEDを用いた発光部を間欠的に発光駆動し、フォトダイオードなどの受光部で受光した散乱光の受光信号を増幅し、煙濃度検出信号を出力する。なお、検煙部26に代えて温度検出部を設ける場合もあり、温度検出部は、温度検出素子として例えばサーミスタを使用し、この場合、温度による抵抗値の変化に対応した電圧信号となる温度検出信号を出力する。
【0037】
通信部32は、他の住警器との間で所定の通信プロトコルに従って火災等の連動信号を送受信する。この通信プロトコルは、日本国内の場合には、例えば426MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30(特定小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)に準拠する。
【0038】
426MHz帯の特定小電力セキュリティシステム無線局設備では、426.2500MHz〜426.8375MHzの間に12.5kHzの周波数帯域幅を持つ48チャンネルが割り当てられており、何れかのチャンネル周波数を複数の住警器で構成する連動グループに割り当てて使用する。
【0039】
通信部32には通信プロセッサ36が設けられ、通信プロセッサ36に対しては送信部38と受信部40が設けられている。
【0040】
送信部38は通信プロセッサ36から出力された火災連動信号等のデータ信号をMSK変調した後にFM変調してアンテナ42から426MHz帯の割当チャンネル周波数の信号電波として送信する。
【0041】
受信部40は、アンテナ42による他の住警器が送信した信号電波を受信し、FM復調した後に、FSK復調を行い、更にビット判定を行って火災連動信号等のデータ信号を復調する。
【0042】
(火災制御機能)
CPU46にはプログラムの実行により実現される火災制御部70、通信テスト制御部72及び履歴共有制御部74の機能が設けられる。
【0043】
(火災制御部の機能)
CPU46に設けられた火災制御部70の制御機能は次のようになる。火災制御部70は、検煙部26から出力された煙濃度の検出信号をAD変換ポート58から読み込み、煙濃度が所定の閾値以上の場合に火災を検出し、連動元の火災を示す火災警報を出力させる制御を行う。
【0044】
火災制御部70は、火災警報を出力させた場合、火災連動信号を生成し、通信部32に指示し、他の住戸の住警器へ火災連動信号を送信させる制御を行い、当該火災連動信号を受信した他の住戸の住警器で連動先を示す火災警報を出力させる。
【0045】
また、火災制御部70は、同じ連動グループとなる住戸内の他の住警器が送信した火災連動信号を受信した場合、連動先を示す火災を出力させる制御を行う。
【0046】
また、火災制御部70は、テストスイッチ20の操作による警報停止制御、検煙部の煙濃度が閾値以下に下がる火災復旧制御についても、火災連動信号の場合と同様に、警報停止連動信号及び火災復旧連動信号の送信を行う。
【0047】
更に、火災制御部70は、他の住警器との間で連動グループを形成するための登録制御を行う。住警器10の登録制御は、連動グループを形成する例えば5台の住警器10−1〜10−5を作業テーブルに並べ、電池電源を入れた状態で、順番に登録スイッチを操作すると、住警器10−1〜10−5に割り当てられたアドレスA1〜A5が相互に送受信され、住警器10−1〜10−5の各々に、同一グループに属する他の住警器のアドレスが登録され、連動信号を受信した場合に自分のグループに属する住警器からの信号か、他のグループに属する住警器からの信号かを区別可能としている。
【0048】
また、グループ登録の際に、登録スイッチを操作すると、後に説明する自動通信テストの周期を決める通信テスト周期タイマ、例えば72時間タイマのリセットスタートが行なわれ、このため登録スイッチを最初に操作した住警器の72時間タイマが最初にタイムアップして自動通信テストを開始する。
【0049】
(通信テスト制御部の機能)
図4は連動グループを形成する住警器間で行われる定期通信テストの通信経路を示した説明図である。図3のCPU46に設けられた通信テスト制御部72の制御機能は次のようになる。通信テスト制御部72は、自動通信テストの周期を決める例えば72時間タイマを備えており、72時間タイマは連動グループを形成するために登録スイッチを操作したときにリセットスタートされる。
【0050】
ここで連動グループの登録操作の際に、住警器10−1の登録スイッチを最初に操作したとすると、そのときリセットスタートされた住警器10−1の通信テスト周期タイマとして機能する72時間タイマが72時間後に最初にタイムアップし、住警器10−1の通信テスト制御部72が通信テスト制御を行う。
【0051】
住警器10−1の通信テスト制御部72による通信テストは、グループ登録の際に得られた他の住警器10−2〜10−5の順番に、相手先のアドレスA2〜A5を順次指定した通信テスト信号を図4の実線の矢印で示すように送信する。
【0052】
住警器10−1からの通信テスト信号を受信した住警器10−2〜10−5は、点線で示すように、通信テスト応答信号を住警器10−1に送信する。住警器10−1は通信テスト信号を送信してから所定時間内に住警器10−2〜10−5から通信テスト応答信号を受信した場合は通信テスト正常と判断し、所定時間を経過しても通信テスト応答信号が受信されない場合は通信テスト異常と判断する。
【0053】
住警器10−1の通信テスト制御部72は、通信テストにより通信テスト異常を判断した場合は、通信テスト異常を示す連動元警報を出力すると共に、通信テスト異常連動信号を他の住警器10−2〜10−5に送信する制御を行い、通信テストによる電波が正常に受信された他の住警器から連動先を示す通信テスト異常警報を出力させる。
【0054】
通信テストを行った住警器10−1の通信テスト制御部72による通信テスト異常の連動元を示す警報は、例えば10秒周期でLED22を点滅させ、例えば1時間に1回の周期で、例えば「ピッピッ 通信テスト異常です 別の警報器を確認してください」とする音声メッセージを出力させる制御を行う。
【0055】
また、住警器10−2〜10−5の内の電波の届いた住警器の通信テスト制御部72による通信テスト異常の連動先を示す警報は、10秒周期でLED22を点滅させ、この状態でテストスイッチ20の操作を検出すると、例えば「ピッピッ 通信テスト異常です 別の警報器を確認してください」とする音声メッセージを出力させる制御を行う。
【0056】
このため住警器10−1〜10−5の中でLED22が消灯している住警器を電波の届かなかった住警器として捜し出し、設置場所を変える等の対応をとることになる。電波の届かなかった住警器の設置場所を変えた場合には、住警器10−1のテストスイッチ20の長押し操作等により、手動操作で通信テストを行って全ての住警器で電波が届いたことを確認する。
【0057】
なお、手動操作による通信テストは、住警器10−1〜10−5のどれからも行うことができ、テストスイッチ20を長押した住警器が通信テスト信号を他の住警器に送信して通信テスト応答信号を返信させ、所定時間を経過しても通信テスト応答信号が受信されない住警器が存在した場合に通信テスト異常と判断し、自動通信テストの場合と同様にして、通信テスト異常を示す連動元警報及び連動先警報が出力される。
【0058】
(履歴共有制御部の機能)
図5図3の不揮発メモリに記憶された履歴共有ファイルを一覧形式で示した説明図である。ここで、図5に示す履歴共有ファイル76は、図1の住警器10−1〜10−5の連動グループを例にとっていることから、アドレスA1〜A5に対応した実在フラグが実在を示すビット1に設定され、また、住警器10−1の履歴共有ファイル76を例にとっていることから、アドレスA1に対応した自他フラグが自己を示すビット1に設定されている。なお、アドレスA6〜A15の内容は空きとなっている。
【0059】
図3のCPU46に設けられた履歴共有制御部74の制御機能は次のようになる。履歴共有制御部74は、住警器自身で発生した火災の検出動作、警報動作、障害等の発生事象、火災検出を行うための補正値、電池電圧を、不揮発メモリ35の履歴共有ファイル76に、例えば住警器10−1を例にとると、自己のアドレスA1に対応して発生順に自己の履歴データLD1として記憶している。
【0060】
また、履歴共有制御部74は、通信テスト制御部72による72時間に1回の自動通信テストによる信号の送受信を利用して、自己の履歴情報を他の住警器に送信すると共に、他の住警器からの履歴情報を受信して不揮発メモリ35の履歴共有ファイル76に記憶させる制御を行う。
【0061】
通信テスト制御部72は、自動通信テストにおいて他の住警器から通信テスト信号を受信した場合に通信テスト応答信号を送信する制御を行うことから、履歴共有制御部74は、通信テスト制御部72が生成する通信テスト応答信号に、不揮発メモリ35の履歴共有ファイル76に記憶している自己の履歴データLD1を含めて送信させる制御行う。この場合、通信テスト制御部72は前回の通信テストから今回の通信テストまでの72時間に記憶した自己の履歴データを読み出し、通信テスト応答信号に含めて送信させる制御を行う。
【0062】
また、履歴共有制御部74は、通信テスト制御部72か他の住警器10−2〜10−5から受信した通信テスト応答信号に含まれている履歴情報LD2〜LD5を取り出し、住警器10−2〜10−5のアドレスA2〜A5に分けて不揮発メモリ35の履歴共有ファイル76に記憶させる制御を行う。
【0063】
また、履歴共有制御部74は、テストスイッチ20の所定の読出操作又は無線通信機能を備えた読出器からの読出指示信号の受信を検出した場合に、不揮発メモリ35の履歴共有ファイル76を読み出して外部に送信する制御を行う。
【0064】
また、履歴共有制御部74は、テストスイッチ20の所定の読出操作又は無線通信機能を備えた読出器からの読出指示信号の受信を検出した場合に、通信テスト制御部72に指示して強制的に通信テストを行なわせることで、他の住警器10−2〜10−5から最新の事象を含む履歴情報を収集して不揮発メモリ35の履歴共有ファイル76に記憶させた後に、不揮発メモリ35の履歴共有ファイル76を読み出して外部に送信する制御を行うようにしても良い。
【0065】
[火災監視制御]
図6図3の住警器による制御動作を示したフローチャートである。図6に示すように、図3のCPU46に設けられた火災制御部70は、ステップS1で検煙部26から出力された煙検出信号が所定の火災レベルを超えると火災発報ありを判別してステップS2に進み、スピーカ34からの音声メッセージとLED22の点灯により連動元を示す火災警報を出力させ、火災連動信号を送信する。
【0066】
また火災制御部70はステップS3で他の住警器が送信した連動信号の受信を判別するとステップS4に進み、スピーカ34からの音声メッセージとLED22の点滅により連動元を示す火災警報を出力させる。
【0067】
続いて火災制御部70は、ステップS5で連動元を示す火災警報中にテストスイッチ20の操作を判別するとステップS6に進んで火災警報を停止し、続いてステップS7に進んで警報停止連動信号を他の住警器に送信して火災警報を停止させる。
【0068】
また火災制御部70はステップS8で検煙部26からの煙検出信号が低下して火災状態が解消する火災復旧を判別すると、ステップS9に進んで連動元を示す火災警報を停止し、続いてステップS10に進んで火災復旧連動信号を他の住警器に送信して連動先を示す火災警報を停止させる。
【0069】
続いてステップS11に進み、CPU46に設けた通信テスト制御部72により履歴共有を伴う通信テスト制御が行われる。
【0070】
[通信テスト制御]
図7図6のステップS11における通信テスト制御の詳細を示したフローチャートであり、図3のCPU46に設けられた通信テスト制御部72及び履歴共有制御部74による制御となり、図1に示した住警器10−1による通信テスト制御を例にとって説明する。
【0071】
図7に示すように、住警器10−1の通信テスト制御部72は、ステップS21で通信テスト周期タイマとして機能する72時間タイマによる通信テスト周期への到達(タイムアップ)を判別するとステップS22に進み、図5に示した履歴共有ファイル76を参照して自己の連動グループに属する他の住警器10−2〜10−5のアドレスA2〜A5を認識し、最初のアドレスA2を指定した通信テスト信号を生成して送信する。
【0072】
続いて、住警器10−1の通信テスト制御部72は、住警器10−2から送信された通信テスト応答信号をステップS23で判別するとステップS24に進み、住警器10−2の通信テスト正常をRAM52に保持し、続いて、受信した通信テスト応答信号に含めて送られてきた住警器10−2の履歴データLD2を取り出して不揮発メモリ35の履歴共有ファイル76に記憶させる。
【0073】
一方、ステップS23で通信テスト応答信号の受信を判別しない場合はステップS26で所定の応答待ち時間の経過を監視しており、所定の応答待ち時間の経過を判別するとステップS27に進み、アドレスA2の住警器10−2に電波が届かなかったと判断し、ステップS27で指定アドレスA2の住警器10−2における通信テスト異常をRAM52に保持させる。
【0074】
続いて、通信テスト制御部72は、ステップS28で他の住警器10−2〜10−5の全アドレスに対する通信テストの終了の有無を判別しており、未終了の場合はステップS29で次の住警器10−3のアドレスA3にアドレス指定を変更してステップS23に戻り、アドレスA3を指定した通信テスト信号を住警器10−3に送信し、ステップS24〜S27の処理を繰り返す。
【0075】
通信テスト制御部72は、ステップS28で全アドレスA2〜A5の通信テスト終了を判別するとステップS30に進み、ステップS27で保持した通信テスト異常を判別するとステップS31に進み、通信テスト異常連動信号を送信する制御を行う。これにより他の住警器10−2〜10−5の中で正常に通信テストの電波を受信できた住警器が通信テスト異常連動信号を受信することになる。
【0076】
続いて、通信テスト制御部72はステップS32に進み、通信テスト異常の連動元を示す警報として、LED22を10秒周期で2回点滅させると共にスピーカ34から例えば1時間に1回「ピッピッ 通信テスト異常です 別の警報器を確認してください」といった音声メッセージを出力させる。これを聞いた担当者は、LED22が消灯している住警器を通信テストによる電波の届いていない住警器として捜し出し、設置場所を変える等して電波が届くようにする。
【0077】
一方、通信テスト制御部72はステップS21で通信テスト周期への到達を判別しない場合はステップS33に進み、通信テスト信号の受信の有無を判別している。ここで、住警器10−1以外の他の住警器10−2〜10−5の何れかで通信テスト周期への到達が判別されてアドレスA1を指定した通信テスト信号が送信されたとすると、住警器10−1の通信テスト制御部72は、ステップS33で通信テスト信号の受信を判別してステップS34に進み、自身の72時間タイマをリセットスタートする。
【0078】
このため連動グループを構成する住警器10−1〜10−5の中で最初に72時間の通信テスト周期に到達した住警器のみが通信テストを行い、他の住警器は72時間タイマをリセットスタートとすることで、通信テスト信号が重複して送信されないようにしている。
【0079】
続いて、通信テスト信号を受信した住警器10−1の通信テスト制御部72は、ステップS35に進んで通信テスト応答信号を送信するが、このとき履歴共有制御部74は、履歴共有ファイル76から自己の履歴情報の内、前回の通信テストからの72時間対応の履歴情報を読み出し、通信テスト応答信号に含めて連動元の住警器に送信する。
【0080】
また、住警器10−1の通信テスト制御部72は、通信テスト信号を送信した住警器が通信テスト異常を判別して送信した通信テスト異常連動信号の受信をステップS36で判別するとステップS37に進み、通信テスト異常を示す連動先警報を出力させる。
【0081】
この通信テスト異常を示す連動先警報は、LED22を10秒周期で2回点滅させており、この状態でテストスイッチ20の操作を検出すると、スピーカ34から例えば「ピッピッ 通信テスト異常です 別の警報器を確認してください」といった音声メッセージを出力させる。これを聞いた担当者は、LED22が消灯している住警器を通信テストによる電波の届いていない住警器として捜し出し、設置場所を変える等して電波が届くようにする。
【0082】
また、履歴共有制御部74は、ステップS38でテストスイッチ20による所定の履歴読出し操作、又は、住警器と無線通信機能を備えた読出器からの履歴読出信号の受信を含む履歴読出要求を判別するとステップS39に進み、不揮発メモリ35に記憶している履歴共有ファイル76を読み出して外部の読出器に送信し、連動グループに属する全ての住警器の履歴情報を一括して回収して利用可能とする。
【0083】
〔本発明の変形例〕
(特定小規模施設用自動火災報知設備)
上記の実施形態は、一般住宅に設置される無線式連動型の住警器を用いた警報システムを例にとっているが、一般住宅よりも規模が大きいが、火災報知設備の設置義務のない、床面積が3000平米未満の施設、例えば高齢者や知的障害者の家事支援などを行うグループホーム等に、無線式連動型の住警器で構成された連動グループを複数設け、グループ間で連動を行う特定小規模施設用自動火災報知設備を構成する警報システムについても、同様、連動グループ単位に履歴情報を共有し、必要に応じてグループ単位に共有された履歴情報を回収して解析利用を可能とする。
【0084】
(親子方式)
上記の実施形態は、住戸内に複数の警報器を設置して連動グループを形成する場合、親機/子機の区別が無くそれぞれの警報器が相互に通信するものであるが、親機と複数の子機を設けて連動グループを形成し、各グループの親機に中継器の機能を持たせ、異なるグループの親機同士の間で連動警報のための通信を行うようにしても良い。
【0085】
(警報器)
上記の実施形態は、火災を検知して警報する無線式の住警器を例にとるものであったが、住警器以外の無線式の火災警報器、ガス漏れ警報器、CO警報器、各種の防犯用警報器を配置した警報システムやそれら警報器を複合的に含むシステムについても同様に適用できる。
【0086】
また、上記の実施形態は無線式の警報器にセンサ部と警報出力処理部を一体に設けた場合を例にとるが、他の実施形態として、センサ部と警報出力処理部を別体とした無線式の警報器であっても良い。
【0087】
(その他)
上記の実施形態は定期的な通信又は操作をトリガとして履歴を共有するようにしていたが、警報器の検出値をトリガとして履歴を共有するようにしても良い。例えば、煙濃度や温度等の火災の検出値が発報前の予兆検出値となった際に履歴の共有を開始するようにしても良い。これにより、火災が進展して警報器が焼失したとしても予兆段階の履歴が共有されているため、事後の火元の確認が可能となる。火災の検出値が発報値になった後でも履歴の共有を継続することは可能だが、火災の連動動作を妨げないように、火災連動信号を送信または受信した警報器は履歴の送信を終了することが好適である。また、電池電圧が所定値以下となった際に履歴の共有を開始するようにしても良い。これにより、通信不能なまでに電池電圧が低下する前に履歴を共有することが可能となる。
【0088】
また、上記の実施形態は警報器の状態履歴を共有するものであったが、例えば通信可否や連動段数等の警報器間の通信履歴を共有するようにしても良い。
【0089】
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0090】
10,10−1〜10−5:住警器
12:住宅
16:本体
18:カバー
20:テストスイッチ
22:LED
26:検煙部
30:制御プロセッサ
32:通信部
34:スピーカ
35:不揮発メモリ
36:通信プロセッサ
38:送信部
40:受信部
42:アンテナ
46:CPU
70:火災制御部
72:通信テスト制御部
74:履歴共有制御部
76:履歴共有ファイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7