特許第6885853号(P6885853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885853
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】レーザ溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20210603BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20210603BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20210603BHJP
   H01M 10/04 20060101ALN20210603BHJP
【FI】
   B23K26/21 P
   B23K26/03
   B23K26/00 N
   !H01M10/04 W
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-211879(P2017-211879)
(22)【出願日】2017年11月1日
(65)【公開番号】特開2019-84536(P2019-84536A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津久井 亮
(72)【発明者】
【氏名】小池 将樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 義範
(72)【発明者】
【氏名】鹿田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】坂井 一成
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−93119(JP,A)
【文献】 特開2013−220462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のケース体が有する開口部を閉塞するように配置された蓋体と前記ケース体との接合対象部分にレーザ光を照射して前記蓋体と前記ケース体とを溶接するレーザ溶接装置であって、
前記ケース体の側面に対向して配置される対向部と、
前記接合対象部分に前記レーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記対向部と前記ケース体との間の第1間隙部、および、前記ケース体と前記蓋体との間の第2間隙部が互いに並走する部分を含む領域を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された画像を認識して、前記第1間隙部を特定することにより前記ケース体の外縁の位置を決定し、決定された前記ケース体の前記外縁の位置に基づいて、前記第2間隙部の位置および大きさを特定する画像認識部と、
前記画像認識部によって特定された前記第2間隙部の位置および大きさに基づいて、レーザ照射位置を含むレーザ照射条件を決定するレーザ照射条件決定部と、を備え、
前記対向部は、前記ケース体の開口端側に位置する一端から前記ケース体の底部側に位置する他端に亘って貫通し、かつ、前記ケース体の前記側面に対向するように設けられた溝部を有し、
前記撮像部は、前記溝部が含まれるように前記領域を撮像する、レーザ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ光を用いて接合対象となる部材を溶接するレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ溶接装置が開示された文献として、たとえば、特開2015−188901号公報(特許文献1)が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示のレーザ溶接装置にあっては、有底筒状のケース体の側面にブロックを当接させた状態で、ケース体の開口部を閉塞するように配置された蓋体と、ケース体との間に形成される隙間を検出器によって測長する。検出器による測長結果に基づいて、ブロック体をケース体に向けて押圧する押圧力を調整する。これにより隙間を調整し、その後レーザ光を照射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−188901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブロックとケース体との間にも隙間があり、当該隙間と、蓋体とケース体との間に形成される隙間とを混同することがあり、蓋体とケース体との間の隙間を正確に特定することが困難である。
【0006】
本開示は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、蓋体とケース体とを精度よく溶接することができるレーザ溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に基づくレーザ溶接装置は、有底筒状のケース体が有する開口部を閉塞するように配置された蓋体と上記ケース体との接合対象部分にレーザ光を照射して上記蓋体と上記ケース体とを溶接する装置である。上記レーザ溶接装置は、上記ケース体の側面に対向して配置される対向部と、上記接合対象部分に上記レーザ光を照射するレーザ照射部と、上記対向部と上記ケース体との間の第1間隙部、および、上記ケース体と上記蓋体との間の第2間隙部が互いに並走する部分を含む領域を撮像する撮像部と、上記撮像部によって撮像された画像を認識して、上記第1間隙部を特定することにより上記ケース体の外縁の位置を決定し、決定された上記ケース体の上記外縁の位置に基づいて、上記第2間隙部の位置および大きさを特定する画像認識部と、上記画像認識部によって特定された上記第2間隙部の位置および大きさに基づいて、レーザ照射位置を含むレーザ照射条件を決定するレーザ照射条件決定部と、を備える。上記対向部は、上記ケース体の開口端側に位置する一端から上記ケース体の底部側に位置する他端に亘って貫通し、かつ、上記ケース体の上記側面に対向するように設けられた溝部を有し、上記撮像部は、上記溝部が含まれるように上記領域を撮像する。
【0008】
上記のように構成することにより、撮像部は、対向部とケース体との間の第1間隙部、ケース体と蓋体との間の第2間隙部、およびケース体の側面に対向する溝部を含む領域を撮像する。溝部は採光しやすいため、撮像された画像においては、溝部と、対向部およびケース体との輝度差が大きくなる。これにより、画像認識部は、溝部を精度よく把握し、当該溝部に隣接する第1間隙部を容易に特定することができる。当該第1間隙部を特定することにより、その端部に位置するケース体の外縁の位置を容易に決定することができる。また、画像認識部は、上記画像において、決定されたケース体の外縁の位置から蓋体側に所望の距離離れた位置に位置する線部を第2間隙部と容易に認識することができ、第2間隙部の大きさおよび位置を精度よく特定することができる。これにより、レーザ照射条件決定部は、特定された第2間隙部の大きさおよび位置に基づいて、レーザ照射位置を含むレーザ照射条件を適切に決定することができる。この結果、蓋体とケース体とを精度よく溶接することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、蓋体とケース体とを精度よく溶接することができるレーザ溶接装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るレーザ溶接装置を用いて二次電池のケース体と蓋体とを溶接する様子を示す図である。
図2】実施の形態に係るレーザ溶接装置に具備される複数の対向部をそれぞれ二次電池のケース体の各側面に対向配置させた状態を示す平面図である。
図3】実施の形態に係るレーザ溶接装置に具備される対向部の示す斜視図である。
図4】実施の形態に係るレーザ溶接装置に具備される撮像部にて図2に示す破線にて囲まれる領域を撮像した際に得られる画像を示す図である。
図5】実施の形態に係るレーザ溶接装置を用いて二次電池のケース体と蓋体とを溶接する溶接方法を示すフロー図である。
図6】実施の形態の効果を確認するために行なった第1検証実験の実験結果を示す図である。
図7】実施の形態の効果を確認するために行なった第2検証実験の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態に係るレーザ溶接装置を用いて二次電池のケース体と蓋体とを溶接する様子を示す図である。図2は、実施の形態に係るレーザ溶接装置に具備される複数の対向部をそれぞれ二次電池のケース体の各側面に対向配置させた状態を示す平面図である。図1および図2を参照して、実施の形態に係るレーザ溶接装置1について説明する。
【0013】
図1に示すように、実施の形態に係るレーザ溶接装置1は、後述する二次電池20のケース体21と蓋体22とを溶接する。具体的には、レーザ溶接装置1は、有底筒状のケース体21が有する開口部を閉塞するように配置された蓋体22と当該ケース体21との接合対象部分WRにレーザ光Lを照射して蓋体22とケース体21とを溶接する。
【0014】
ケース体21は、角筒型形状を有し、4つの側面21a、21b、21c、21d(図2参照)を有する。ケース体21は、開口部を規定する第1内周面211と、当該第1内周面211よりも内側に位置する第2内周面212と、第1内周面211および第2内周面212を接続する接続面213を有する。第1内周面211は、上部に位置し、第2内周面212は、第1内周面211よりも下方側に位置する。接続面213は、平坦に構成されている。
【0015】
蓋体22の周縁部が接続面213上に配置されることにより、蓋体22がケース体21の開口部を閉塞する。この際、蓋体22の周端面221は、ケース体21の第1内周面211に対向し、周端面221と第1内周面211との間に第2間隙部G2(図3参照)が形成される。第2間隙部G2の周囲に接合対象部分WRが位置する。
【0016】
なお、二次電池20は、車両駆動用であり、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能なバッテリから電力供給されるモータとを動力源とするハイブリッド自動車や、外部充電が可能なプラグインハイブリッド自動車、電気自動車などに搭載される。
【0017】
レーザ溶接装置1は、レーザ照射部としてのヘッドユニット10、複数の対向部31、32、33、34(図2参照)、撮像部40、画像認識部50、レーザ照射条件決定部60、および制御部70を備える。
【0018】
ヘッドユニット10は、光ファイバ102を通って入射されるレーザ発振源101からのレーザ光を上記接合対象部分WRに向けて照射する。ヘッドユニット10は、光学系110、XYガルバノスキャナユニット120、Zレンズ駆動ユニット130、XYZガルバノスキャナドライバ140、および保護ガラス150を含む。
【0019】
光学系110は、コリメートレンズ111、ダイクロイックミラー112、反射ミラー113、回折光学素子(Diffractive Optical Element)114、Zレンズ115、反射ミラー116、集光レンズ117を含む。
【0020】
上記レーザ発振源101から入射されたレーザ光は、コリメートレンズ111によってコリメートされる。コリメートされたレーザ光のうち所望の波長を有するレーザ光が、ダイクロイックミラー112によって反射ミラー113に向けて反射される。
【0021】
反射ミラー113に入射されたレーザ光は、回折光学素子114に向けて反射される。回折光学素子114は、入射されたレーザ光を複数の光束に分岐する。複数の光束に分岐されたレーザ光は、Zレンズ115を通過する。
【0022】
Zレンズ115は、ヘッドユニット10から照射されるレーザ光の集光点をZ軸方向に走査させるためのレンズである。Zレンズ115は、Zレンズ駆動ユニット130によって移動させられることにより、上記集光点をZ軸方向に走査させる。Zレンズ駆動ユニット130の動作は、XYZガルバノスキャナドライバ140によって制御される。
【0023】
Zレンズ115を通過したレーザ光は、反射ミラー116によって集光レンズ117に向けて反射される。集光レンズ117に入射したレーザ光は、集光されてXYガルバノスキャナユニット120に入射する。
【0024】
XYガルバノスキャナユニット120は、X方向ガルバノミラーおよびY方向ガルバノミラーを含む。X方向ガルバノミラーは、ヘッドユニット10から照射されるレーザ光の集光点をX軸方向に走査させるためのミラーである。Y方向ガルバノミラーは、ヘッドユニット10から照射されるレーザ光の集光点をY軸方向に走査させるためのミラーである。
【0025】
X方向ガルバノミラーおよびY方向ガルバノミラーは、それぞれ駆動ユニットによって回動されることにより、上記集光点をXY平面内で任意の方向に走査する。当該駆動ユニットの動作は、XYZガルバノスキャナドライバ140によって制御される。
【0026】
XYガルバノスキャナユニット120によって調整されたレーザ光は、保護ガラス150を通って接合対象部分WRに照射される。
【0027】
なお、ヘッドユニット10の下方には、レーザポインタ160、エアナイフ170、エアノズル180が配置される。レーザポインタ160は、レーザ光Lの波長と同じ波長を有する光を、レーザ光Lの照射位置に照射する。エアナイフ170は、空気を噴出することにより、溶接によって飛散したプルームおよびスパッタが保護ガラス150に付着することを防止する。エアノズル180は、溶接位置にシールドガスを供給する。
【0028】
図2に示すように、複数の対向部31、32、33、34は、ケース体21の周囲に配置される。具体的には、対向部31は、ケース体21の側面21aに対向して配置される。対向部32は、ケース体21の側面21bに対向して配置される。対向部33は、ケース体21の側面21cに対向して配置される。対向部34は、ケース体21の側面21dに対向して配置される。
【0029】
対向部31,32は、ケース体21の厚さ方向(図2中DR1方向)にケース体21を挟み込むように配置される。対向部33,34は、ケース体21の幅方向(図2中DR2方向)にケース体21を挟み込むように配置される。
【0030】
なお、対向部31,32,33,34は、ケース体21と蓋体22とを溶接するごとに、繰り返し使用されるものであり、ケース体21に向かい合う対向部31,32,33,34の表面には、溶接によって発生するスパッタが固着することがある。また、製造上において、各対向部31,32,33,34の上記表面の粗さがばらつくことがある。このため、対向部31,32,33,34をケース体21の側面21a,21b,21c,21dに対向して配置した場合には、対向部31,32,33,34とケース体21との間に、第1間隙部G1(図4参照)が形成されている。
【0031】
対向部31,32,33,34のそれぞれには、溝部31c,32c,33c,34cが設けられている。溝部31c,32c,33c,34cは、それぞれ、ケース体の側面21a,21b,21c,21dに対向するように設けられている。
【0032】
図3は、実施の形態に係るレーザ溶接装置に具備される対向部の示す斜視図である。図1および図3を参照して、対向部31の溝部31cについて説明する。なお、溝部32c、33c、34cも、31c同様に構成されているため、その説明については省略する。
【0033】
図3に示すように、溝部31cは、ケース体21の開口端側に位置する一端31aからケース体21の底部側に位置する他端31bに亘って切り欠かれて貫通するように設けられている。
【0034】
再び図1に示すように、撮像部40は、接合対象部分WRおよびその周囲を含む領域を撮像する。図4は、実施の形態に係るレーザ溶接装置に具備される撮像部にて図2に示す破線にて囲まれる領域を撮像した際に得られる画像を示す図である。
【0035】
図4に示すように、撮像部40は、対向部とケース体21との間の第1間隙部G1およびケース体21と蓋体22との間の第2間隙部G2が互いに並走する部分を含む領域を撮像する。撮像部40は、溝部31cが含まれるように上記領域を撮像する。
【0036】
撮像部40の視軸は、レーザ光Lの光軸と同軸となっている。撮像部40としては、たとえば、CCDカメラ等を採用することができる。撮像部40で撮像された画像情報は、画像認識部50に出力される。
【0037】
画像認識部50は、撮像部40によって撮像された画像を認識して、第1間隙部G1を特定することによりケース体21の外縁の位置を決定し、決定されたケース体21の外縁の位置に基づいて、第2間隙部G2の位置および大きさを特定する。
【0038】
具体的には、画像認識部50は、以下のようにして第2間隙部G2の位置および大きさを特定する。撮像部40によって撮像された画像は、たとえば2値化されて形成されている。撮像部40によって撮像された画像には、複数の線部として、第1間隙部G1、第2間隙部G2に加えて、蓋体22の上面に形成された傷等によるラインL1,L2,L3が写っている。このため、何ら基準が設けられていない場合には、どの線部が第1間隙部G1、および第2間隙部G2に該当するのかを特定するのが困難となることが起こり得る。
【0039】
ここで、本実施の形態においては、溝部31cは、一端31aから他端31bに亘って貫通するように設けられているため、他端31bから採光される。このため、画像においては、溝部31cは、その周囲に位置する対向部31、およびケース体21よりも輝度が明るくなる。
【0040】
このような溝部31cと、対向部31およびケース体21との輝度差によって、画像認識部50は、溝部31cを把握しやすくなり、溝部31cに隣接する第1間隙部G1を容易に特定することができる。第1間隙部G1を特定することにより、当該第1間隙部G1の端部に位置するケース体21の外縁を決定することができる。
【0041】
ケース体21の側面21aと第2間隙部G2の一端側を構成する第1内周面211との距離は決定されているため、ケース体21の外縁を決定することにより、当該外縁から蓋体22側に所定の距離離れた位置に位置する線部を第2間隙部G2と容易に認識することができる。
【0042】
第2間隙部G2と、ケース体21および蓋体22との間にも相当程度輝度差が生じているため、第2間隙部G2を認識することで、第2間隙部G2の大きさおよび位置を精度よく特定することができる。
【0043】
画像認識部50によって特定された第2間隙部G2の大きさおよび位置に関する情報は、レーザ照射条件決定部60に入力される。
【0044】
レーザ照射条件決定部60は、当該情報に基づいて、レーザ照射位置を含むレーザ照射条件を決定する。レーザ照射条件は、レーザ照射位置に加えて、レーザ出力等が含まれていてもよい。
【0045】
これら画像認識部50およびレーザ照射条件決定部60は、レーザ溶接装置1を制御する制御部70の一部に組み込まれており、制御部70は、レーザ照射条件決定部60によって決定されたレーザ照射条件に基づいて、レーザ発振源101、およびXYZガルバノスキャナドライバ140を制御する。
【0046】
これにより、適切な照射位置にレーザ光を照射することができ、蓋体22とケース体21とを精度よく溶接することができる。
【0047】
(レーザ溶接方法)
図5は、実施の形態に係るレーザ溶接装置を用いて二次電池のケース体と蓋体とを溶接する溶接方法を示すフロー図である。図5を参照して、レーザ溶接装置1を用いたレーザ溶接方法について説明する。
【0048】
図5に示すように、蓋体22とケース体21とを溶接する際には、まず、工程S1において、複数の対向部31〜34をケース体21の収支に配置する。具体的には、複数の対向部31〜34を、それぞれケース体の側面21a〜21dに対向して配置する。
【0049】
この際、対向部31,32によって厚さ方向DR1方向(図2参照)にケース体21を挟み込み、対向部33,34によって幅方向DR2方向(図2参照)にケース体21を挟み込むことによって、ケース体21の位置を固定してもよい。また、ケース体21を複数の対向部31〜34と異なる把持具によって把持することにより、ケース体21の位置を固定してもよい。
【0050】
なお、蓋体22は、ケース体21の周囲に複数の対向部31〜34を配置する前にケース体21に載置してもよいし、ケース体21の周囲に複数の対向部31〜34を配置した後にケース体21に載置してもよい。
【0051】
次に、工程S2において、複数の対向部31〜34のいずれかにおいて溝部が含まれるように第1間隙部G1および第2間隙部G2が互いに並走する部分を含む領域を撮像部40によって撮像する。具体的には、撮像しようとする溝部を含む領域上にレーザ光の光軸が位置するようにヘッドユニット10を移動させる。当該領域に光を当てて、撮像部40によって当該領域を撮像する。撮像された画像情報は、画像認識部50に入力される。
【0052】
次に、工程S3において、画像認識部50が、撮像された画像を認識して、第2間隙部G2の位置および大きさを特定する。
【0053】
この際、画像認識部50は、溝部31cと、対向部31およびケース体21との輝度差によって、溝部31cの領域を把握し、当該溝部31cに隣接する第1間隙部G1を特定する。当該第1間隙部G1を特定することにより、上述のように、画像認識部50は、ケース体21の外縁の位置を決定し、決定されたケース体21の外縁の位置に基づいて、第2間隙部G2の位置および大きさを特定する。
【0054】
なお、第2間隙部G2の位置は、ケース体21に対向する対向部の端部と、ケース体21との距離を測定し、撮像された対向部とケース体との密着度を算出することにより、精度よく特定することができる。
【0055】
次に、工程S4において、制御部70は、複数の対向部31〜34が有する全ての溝部31c〜34cに対して撮像をして、第2間隙部G2の位置および大きさを特定したか否かを確認する。
【0056】
全ての溝部31c〜34cを撮像して、第2間隙部G2の位置および大きさを特定していない場合(工程S5:NO)には、全ての溝部31c〜34cに対して撮像をして、全ての対向部とケース体との密着度を算出するまで、工程S2〜工程S4を繰り返す。
【0057】
一方、全ての溝部31c〜34cに対して撮像をして、第2間隙部G2の位置および大きさを特定した場合(工程S5:YES)には、工程S5を実施する。
【0058】
撮像された全ての上記領域において、決定された第2間隙部G2の位置および大きさに関する情報は、レーザ照射条件決定部60に入力される。
【0059】
次に、工程S5において、レーザ照射条件決定部60は、画像認識部50によって特定された第2間隙部G2の位置および大きさに基づいて、レーザ照射位置を含むレーザ照射条件を決定する。
【0060】
次に、工程S6において、制御部70は、決定されたレーザ照射条件に基づいて、レーザ照射位置にレーザを照射する。これにより、接合対象部分WRを溶かし、蓋体22とケース体21とを溶接する。
【0061】
以上のように、実施の形態に係るレーザ溶接装置1にあっては、レーザ照射位置を含むレーザ照射条件を決定する際に、撮像部40にて第1間隙部G1および第2間隙部G2が互いに並走する部分を含む領域を撮像する。この際、対向部に設けられた溝部が当該領域に含まれるように撮像することにより、画像認識部50は、溝部と、対向部およびケース体21との輝度差によって、溝部を把握し、当該溝部に隣接する第1間隙部G1を容易に特定することができる。画像認識部50は、第1間隙部G1を特定することにより、その端部に位置するケース体21の外縁を精度よく決定することができる。
【0062】
また、画像認識部50は、決定されたケース体の外縁の位置から蓋体側に所望の距離離れた位置に位置する線部を第2間隙部G2と容易に認識することができ、第2間隙部G2の大きさおよび位置を精度よく特定することができる。これにより、レーザ照射条件決定部は、特定された第2間隙部G2の大きさおよび位置に基づいて、レーザ照射位置を含むレーザ照射条件を適切に決定することができる。この結果、蓋体22とケース体21とを精度よく溶接することができる。
【0063】
(第1検証実験)
図6は、実施の形態の効果を確認するために行なった第1検証実験の実験結果を示す図である。図6を参照して、実施の形態の効果を確認するために行なった第1検証実験の実験結果について説明する。
【0064】
第1検証実験としては、比較例1に係るレーザ溶接装置および実施例1に係るレーザ溶接装置を用いた場合において、画像認識部50によって決定されたケース体21の外縁の位置の精度を確認した。位置精度の確認にあたり、画像認識部50によって決定された外縁の位置と、実物における外縁の位置との差を測定した。
【0065】
比較例1に係るレーザ溶接装置としては、実施の形態に係るレーザ溶接装置1と比較して、対向部に溝部が設けられていない装置を使用した。実施例1に係るレーザ溶接装置としては、実施の形態に記載のレーザ溶接装置1を使用した。
【0066】
対向部は、繰り返し使用されるものであるため、使用初期と、使用開始一ヶ月後とにおいて、画像認識部50によって決定されたケース体21の外縁の位置の精度を確認した。溶接時のスパッタは、ケース体に対向する対向部の表面に付着する場合がある。このため、対向部を繰り返し使用した場合には、上記表面が汚れて、対向部とケース体との密着性が低下する。これにより、対向部とケース体との間の第1間隙部G1の大きさが変化する。
【0067】
比較例1においては、使用初期には、画像認識部50によって決定されたケース体21の外縁の位置の精度は、±50μmであり、使用開始一ヶ月後には、画像認識部50によって決定されたケース体21の外縁の位置の精度は、±95μmであった。
【0068】
実施例1においては、使用初期には、画像認識部50によって決定されたケース体21の外縁の位置の精度は、±30μmであり、使用開始一ヶ月後には、画像認識部50によって決定されたケース体21の外縁の位置の精度は、±30μmであった。
【0069】
比較例1においては、対向部に溝部が設けられていないため、対向部およびケース体21との輝度差が小さく、また、第1間隙部G1と、対向部およびケース体21との輝度差も小さくなった。このため、決定されたケース体21の外縁の位置がばらついた。
【0070】
使用開始一ヶ月後においては、第1間隙部G1の間隔が大きくなることにより、使用初期と比較して、対向部およびケース体21との輝度差がさらに小さく、また、第1間隙部G1と、対向部およびケース体21との輝度差もさらに小さくなった。このため、決定されたケース体21の外縁の位置が大きくばらついた。
【0071】
一方、実施例1においては、対向部31〜34に溝部31c〜34cが設けられており、使用初期および使用開始一ヶ月後のいずれにおいても、溝部31c、その周囲に位置する対向部31およびケース体21との輝度差が大きく、溝部31cを精度よく把握できた。これにより、当該溝部31cに隣接する第1間隙部G1も精度よく特定でき、ひいては、ケース体21の外縁の位置も精度よく決定できた。
【0072】
(第2検証実験)
図7は、実施の形態の効果を確認するために行なった第2検証実験の実験結果を示す図である。図7を参照して、実施の形態の効果を確認するために行なった第2検証実験の実験結果について説明する。
【0073】
第2検証実験として、比較例1に係るレーザ溶接装置、比較例2に係るレーザ溶接装置、実施例1に係るレーザ溶接装置を用いた場合におけるレーザ照射位置のバラツキを確認した。
【0074】
比較例1に係るレーザ溶接装置、および実施例1に係るレーザ溶接装置は、第1検証実験と同様である。比較例2に係るレーザ溶接装置としては、溝部に代えて吸着部が対向部に設けられており、吸着部を流れる流量をエアキャッチセンサによって検出することにより、密着度を測定できる装置を用いた。
【0075】
比較例1においては、レーザ照射位置のバラツキは、±100μmとなった。比較例2においては、レーザ照射位置のバラツキは、±50μmとなった。実施例1においては、レーザ照射位置のバラツキは、±30μmとなった。
【0076】
比較例1においては、第1検証実験で確認されたように、ケース体21の外縁の位置がばらついて決定される。これに加えて、対向部とケース体21との距離もばらつくため、各種のばらつきが加味されて、レーザ照射位置も大きくばらついた。
【0077】
比較例2においては、密着度を測定できるため、対向部とケース体21との距離を測定することができた。これにより、当該距離に基づいてレーザ照射位置を決定できるものの、ケース体21の外縁の位置がばらつくため、レーザ照射位置もばらつく結果となった。
【0078】
実施例1においては、第1検証実験で確認されたようにケース体21の外縁位置を精度よく決定できるうえ、ケース体21の外縁位置に基づいて、接合対象部分の指標となる第2間隙部G2の位置および大きさを精度よく特定することができた。これにより、レーザ照射位置を精度よく特定でき、レーザ照射位置のばらつきを抑制することができた。
【0079】
以上の第1検証実験および第2検証実験の結果から、実施の形態に係るレーザ溶接装置1を使用することにより、ケース体21と蓋体22とを精度よく溶接できることが確認されたと言える。
【0080】
上述した実施の形態に係る二次電池においては、ケース体21の第1内周面211と第2内周面212とを接続する接続面213が平坦に構成される場合を例示して説明したが、これに限定されず、接続面213は、ケース体21の開口部側から底部側に向うにつれて内周側に傾斜するテーパを有していてもよい。この場合には、蓋体21の周縁部の下部には、当該接続面213に載置可能に上記テーパに略平行となる切欠き部が設けられていることが好ましい。さらに、レーザ溶接装置1は、対向部をケース体に向けて押圧する押圧部を有することが好ましい。
【0081】
当該押圧部によって対向部をケース体に向けて押圧することにより、押圧力によって蓋体22を接続面213に沿って摺動させることができる。これにより、ケース体21と蓋体21との間の第2間隙部G2の大きさを調整することができる。
【0082】
画像認識部50によって特定された第2間隙部G2の大きさおよび位置に基づいて、押圧部によって対向部をケース体に向けて押圧し、上記第2間隙部G2の大きさを調整することにより、さらに適切なレーザ照射条件を設定することができる。これにより、より精度よく蓋体22とケース体21とを溶接することができる。
【0083】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 レーザ溶接装置、10 ヘッドユニット、20 二次電池、21 ケース体、21a,21b,21c,21d 側面、22 蓋体、31,32,33,34 対向部、31a 一端、31b 他端、31c,32c,33c,34c 溝部、40 撮像部、50 画像認識部、60 レーザ照射条件決定部、70 制御部、101 レーザ発振源、102 光ファイバ、103 コネクタ、110 光学系、111 コリメートレンズ、112 ダイクロイックミラー、113 反射ミラー、114 回折光学素子、115 レンズ、116 反射ミラー、117 集光レンズ、120 XYガルバノスキャナユニット、130 Zレンズ駆動ユニット、140 XYZガルバノスキャナドライバ、150 保護ガラス、160 レーザポインタ、170 エアナイフ、180 エアノズル、211 第1内周面、212 第2内周面、213 接続面、221 周端面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7