特許第6885855号(P6885855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885855
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】キャリアテープの巻回方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/195 20060101AFI20210603BHJP
   B65D 85/38 20060101ALI20210603BHJP
   B65H 18/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B65H23/195
   B65D85/38 300
   B65H18/00
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-226459(P2017-226459)
(22)【出願日】2017年11月27日
(65)【公開番号】特開2019-94194(P2019-94194A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】吉増 航
【審査官】 飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−100136(JP,A)
【文献】 特開2012−046261(JP,A)
【文献】 特開平09−315628(JP,A)
【文献】 特開2001−247158(JP,A)
【文献】 特開平06−127770(JP,A)
【文献】 特開2002−274707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/18− 23/198
B65H 26/00− 26/08
B65H 18/00− 18/28
B65D 85/38
B65D 73/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取リールに長尺のキャリアテープを巻き付けるキャリアテープの巻回方法であって、巻取リールにキャリアテープの先端部側を張力を加えながら巻き付ける巻き付け開始ステップと、巻取リールにキャリアテープの中間部を張力を加えながら複数列に巻き付ける巻き付け継続ステップと、巻取リールにキャリアテープの末端部側を張力を加えながら巻き付ける巻き付け終了ステップとを含み、
巻き付け開始ステップを、巻取リールにキャリアテープの先端部側を1層〜10層の範囲で複数列にスパイラル巻きするステップとするとともに、この巻き付け開始ステップ時における張力を、巻き付け継続ステップ時における張力の2倍〜7倍大きくし、
巻き付け終了ステップを、巻取リールにキャリアテープの末端部側を1層〜10層の範囲で複数列にスパイラル巻きするステップとし、この巻き付け終了ステップ時における張力を、巻き付け継続ステップ時における張力の1.5倍〜5倍大きくすることを特徴とするキャリアテープの巻回方法。
【請求項2】
キャリアテープは、樹脂含有の成形材料により成形される略帯形のテープ本体と、このテープ本体に所定の間隔で配列形成される複数の収納エンボスとを含み、成形材料の樹脂を、ポリスチレン樹脂、非晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びABS樹脂のいずれかとし、テープ本体の側部に複数の送り孔を所定の間隔で形成する請求項1記載のキャリアテープの巻回方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路素子や半導体パッケージ等の電子部品の収納、供給、保管、在庫管理、輸送等に用いられるキャリアテープの巻回方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャリアテープ1は、図1ないし図3に示すように、細長いテープ本体2と、このテープ本体2に配列形成される複数の送り孔3と、テープ本体2に配列形成される電子部品用の複数の収納エンボス4とを備え、所定のプレス成形法により製造された後、巻取リール10に巻き付けられる(特許文献1、2参照)。
【0003】
テープ本体2は、図2に示すように、例えば可撓性を有する絶縁性の中間樹脂層と、この中間樹脂層の表面に積層される導電性の表面層と、中間樹脂層の裏面に積層されて表面層との間に中間樹脂層を挟持する導電性の裏面層とを備えた長さ500〜4000m程度の帯形に形成され、収納エンボス4と共に多層構造に形成されている。
【0004】
中間樹脂層の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば汎用性に優れるポリスチレン(PS)樹脂、非晶性のポリエチレンテレフタレート(A‐PET)樹脂、耐衝撃性や寸法安定性に優れるポリカーボネート(PC)樹脂、機械的性質や成形性に優れるABS樹脂等の樹脂シートがあげられる。また、表面層と裏面層とは、例えば中間樹脂層の表裏面の層にカーボンや帯電防止剤等がそれぞれ塗布されたり、練り込まれることで薄く積層形成され、静電気の発生を防止するよう機能する。
【0005】
テープ本体2は、幅が規格化された4、8、12、16、24、32、44、56、72、200mm等のサイズに設定され、厚さが可撓性と強度とを両立させる観点から、0.15〜0.50mm、好ましくは0.20〜0.40mmの厚みとされる。また、テープ本体2の一側部の長手方向には図2に示すように、複数の貫通孔が送り孔3として所定の間隔でそれぞれ打ち抜き形成され、各送り孔3が平面円形に形成されている。テープ本体2の表面には、電子部品を封止するトップテープが後から加熱融着される。
【0006】
複数の収納エンボス4は、図2に示すように、テープ本体2の長手方向に所定の間隔で配列形成される。各収納エンボス4は、テープ本体2に所定の間隔で並べて形成される開口と、この開口の周縁部から裏面方向に伸びて電子部品を包囲する包囲壁と、この包囲壁の下端部に設けられて電子部品を搭載する底板とを備えた浅底のポケット形に形成され、電子部品の収納を前提にテープ本体2に一体化されている。
【0007】
収納エンボス4の開口と底板とは、それぞれ平面矩形に形成され、底板の中央には必要に応じ、丸い貫通孔が検査孔として打ち抜き形成される。この検査孔は、検出センサにより、電子部品の有無を検出する場合等に利用される。
【0008】
巻取リール10は、図1図3に示すように、例えば円筒形の巻芯(コア)11と、この巻芯11の両端部にそれぞれ装着されて相対向する左右一対のフランジ12とを備え、巻芯11の外周面にキャリアテープ1が巻き付けられる。巻取リール10に巻き付けられるキャリアテープ1は、長く巻き付けて生産性を向上させる観点から、レコード巻きではなく、スパイラル巻き(トラバース巻き)されるのが一般的である。
【0009】
具体的には、巻取リール10の巻芯11の軸方向、換言すれば、巻芯11の一端部方向から他端部方向に一層目のキャリアテープ1が所定の巻取張力で横方向に移動しながら複数列に整列して巻き付けられる(図1参照)とともに、巻芯11の他端部方向から一端部方向に二層目のキャリアテープ1が所定の巻取張力で横方向に移動しながら複数列に整列して巻き付けられ、その後、巻芯11の一端部方向から他端部方向に三層目のキャリアテープ1が所定の巻取張力で横方向に移動しながら複数列に整列して巻き付けられ、以下、これらの巻き付け作業の繰り返しにより、キャリアテープ1が多層に巻き付けられる(図3参照)。
【0010】
ところで、キャリアテープ1は、強い巻取張力でスパイラル巻きされると、左幅方向や右幅方向に弓なりの反りが発生(図4図5参照)したり、左右幅方向に蛇行してうねりが発生(図6参照)したり、巻姿に巻乱れが生じる(図8図9参照)。さらに、キャリアテープ1に電子部品を収納するとき、巻取リール10に巻回されたキャリアテープ1を繰り出すが、この際、繰り出し不良を招くこととなる。
【0011】
これに対し、弱い巻取張力でスパイラル巻きされると、キャリアテープ1の巻姿に巻緩みが生じ(図10参照)、この巻緩み等に伴い、巻姿に巻崩れが発生するという問題が生じる(図7参照)。
【0012】
このような問題を解消するため、従来においては、(1)キャリアテープ1の中間樹脂層の材質を弾性率の高い材質に変更する方法、(2)巻取リール10にキャリアテープ1をスパイラル巻きする場合に、一定の巻取張力でスパイラル巻きする方法、(3)巻取リール10にキャリアテープ1をスパイラル巻きする場合に、巻取張力を徐々に強くしながらスパイラル巻きする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第5586716号公報
【特許文献2】特開2002‐274707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、(1)の方法の場合には、キャリアテープ1の弾性率は向上するものの、キャリアテープ1を成形して製造する作業に支障を来す等、大きな問題が新たに生じることとなる。また、(2)、(3)の方法の場合には、ある程度の効果は期待できるものの、巻取張力の変更に限界があるので、製品によっては、キャリアテープ1の巻姿の巻乱れ、巻緩み、巻崩れを防止できないことがある。
【0015】
本発明は上記に鑑みなされたもので、キャリアテープの材質を特に変更する必要がなく、キャリアテープの巻姿の巻乱れ、巻緩み、巻崩れ、及びキャリアテープの反り、うねりを有効に低減することのできるキャリアテープの巻回方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明においては上記課題を解決するため、巻取リールに長尺のキャリアテープを巻き付けるキャリアテープの巻回方法であって、
巻取リールにキャリアテープの先端部側を張力を加えながら巻き付ける巻き付け開始ステップと、巻取リールにキャリアテープの中間部を張力を加えながら複数列に巻き付ける巻き付け継続ステップと、巻取リールにキャリアテープの末端部側を張力を加えながら巻き付ける巻き付け終了ステップとを含み、
巻き付け開始ステップを、巻取リールにキャリアテープの先端部側を1層〜10層の範囲で複数列にスパイラル巻きするステップとするとともに、この巻き付け開始ステップ時における張力を、巻き付け継続ステップ時における張力の2倍〜7倍大きくし、
巻き付け終了ステップを、巻取リールにキャリアテープの末端部側を1層〜10層の範囲で複数列にスパイラル巻きするステップとし、この巻き付け終了ステップ時における張力を、巻き付け継続ステップ時における張力の1.5倍〜5倍大きくすることを特徴としている。
【0017】
なお、キャリアテープは、樹脂含有の成形材料により成形される略帯形のテープ本体と、このテープ本体に所定の間隔で配列形成される複数の収納エンボスとを含み、成形材料の樹脂を、ポリスチレン樹脂、非晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びABS樹脂のいずれかとし、テープ本体の側部に複数の送り孔を所定の間隔で形成すると良い。
【0020】
ここで、特許請求の範囲におけるキャリアテープのテープ本体は、単層構造、二層構造、三層等の多層構造でも良い。このテープ本体の側部には、テープ本体の一側部と、テープ本体の両側部のいずれもが含まれる。また、収納エンボスは、テープ本体に必要数が形成され、各種の部品(半導体パッケージ、抵抗素子、キャパシタ等)を収納する。この収納エンボスの大きさや形は、収納する部品の大きさに応じて変更される。したがって、収納エンボスは、送り孔よりも大きくても良いし、小さくても良い。さらに、巻き付け継続ステップは、1ステップでも良いし、複数のステップに分割することができる。
【0021】
本発明によれば、キャリアテープの反り、うねり、巻崩れ、繰り出し不良、巻乱れ、巻緩みの原因となりやすいキャリアテープの先端部側と末端部側の張力をこれら以外の張力よりも強くするので、キャリアテープの変形や巻崩れ、繰り出し不良、巻乱れ、巻緩み等を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、巻き付け開始ステップ時と巻き付け終了ステップ時における張力を、巻き付け継続ステップ時における張力よりも大きくするので、キャリアテープの材質を特に変更する必要がなく、しかも、キャリアテープの巻姿の巻乱れ、巻緩み、巻崩れを有効に低減することができるという効果がある。また、キャリアテープの反りやうねりを有効に低減することができる。
具体的には、巻き付け開始ステップ時における巻取張力を、巻き付け継続ステップ時における巻取張力の2倍〜7倍大きい値とするので、キャリアテープに巻緩みが発生するのを抑制したり、巻き始めのキャリアテープが整列せずに乱れ、巻乱れが発生するのを抑制することができる。さらに、巻き付け終了ステップ時における巻取張力を、巻き付け継続ステップ時における巻取張力の1.5倍〜5倍大きい値とするので、キャリアテープに巻緩みが発生するのを防いだり、巻き終わりのキャリアテープが整列せず、巻乱れが発生するのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】巻取リールの巻芯に一層目のキャリアテープの先端部側を複数列にスパイラル巻きした状態を模式的に示す説明図である。
図2】キャリアテープを模式的に示す平面説明図である。
図3】巻取リールの巻芯にキャリアテープを複数列、かつ多層にスパイラル巻きした状態を模式的に示す説明図である。
図4】左幅方向に反ったキャリアテープを模式的に示す平面説明図である。
図5】右幅方向に反ったキャリアテープを模式的に示す平面説明図である。
図6】左右幅方向にうねったキャリアテープを模式的に示す平面説明図である。
図7】巻取リールに巻き付けられた多層のキャリアテープの巻姿が崩れた状態を模式的に示す説明図である。
図8】巻取リールの巻芯に巻き付けられた一層目のキャリアテープの先端部側が巻乱れた状態を模式的に示す説明図である。
図9】巻取リールに巻き付けられた多層のキャリアテープが巻乱れた状態を模式的に示す説明図である。
図10】巻取リールの巻芯に巻き付けられた多層のキャリアテープが緩んだ状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるキャリアテープの巻回方法は、図1ないし図3に示すように、巻取リール10に長尺のキャリアテープ1を巻き付ける方法であり、キャリアテープ1を巻き付けるステップを、巻き付け開始ステップ、巻き付け継続ステップ、及び巻き付け終了ステップの3段階以上に分割し、巻き付け開始ステップ時と巻き付け終了ステップ時における巻取張力を、巻き付け継続ステップ時における巻取張力よりもそれぞれ大きくして巻取張力を変化させるようにしている。
【0025】
キャリアテープ1は、図1ないし図3に示すように、ポリスチレン樹脂や非晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂により成形された細長い帯形のテープ本体2と、このテープ本体2の長手方向に所定の間隔で配列形成される複数の送り孔3と、テープ本体2の長手方向に所定の間隔で配列形成される電子部品収納用の複数の収納エンボス4とを備え、所定のプレス成形法により製造された後、巻取リール10の巻芯11に所定の巻取張力で巻き付けられる。
【0026】
このキャリアテープ1は、先端部側5と末端部側6が使用の対象とはならず、これら先端部側5と末端部側6以外の中間部が使用の対象となるのが一般的である。これらキャリアテープ1と巻取リール10については、従来例と同様であるので、説明を省略する。
【0027】
巻き付け開始ステップ、巻き付け継続ステップ、及び巻き付け終了ステップの間は、巻取張力が急激に変化するのを防止する観点から、暫次変化するよう設定される。巻き付け開始ステップは、巻取リール10の巻芯11軸方向(図1の左右方向)にキャリアテープ1の使用対象とはならない数mの先端部側5を巻取張力を加えながら複数列にスパイラル巻きし始めるステップである。この巻き付け開始ステップにおけるキャリアテープ1の先端部側5は、1層〜10層の範囲で複数列に整列して斜めにスパイラル巻きされる。
【0028】
巻き付け開始ステップ時における巻取張力は、キャリアテープ1の材質にもよるが、巻き付け継続ステップ時における巻取張力の2倍〜7倍大きい値とされる。これは、巻取張力が巻き付け継続ステップ時における巻取張力の2倍未満の場合には、実験結果から、キャリアテープ1に巻緩みが発生するからである。これに対し、巻取張力が巻き付け継続ステップ時における巻取張力の7倍を越える場合には、実験結果から、巻き始めのキャリアテープ1が整列せずに乱れ、巻乱れが発生するからである。巻取張力は、所定のテンションンゲージ等により測定することが可能である。
【0029】
巻き付け継続ステップは、巻取リール10の巻芯11軸方向にキャリアテープ1の使用対象となる中間部を巻取張力を加えながら複数列に整列させて斜めにスパイラル巻きするステップである。この巻き付け継続ステップにおける巻取張力は、巻き付け開始ステップや巻き付け終了ステップにおける巻取張力よりも、キャリアテープ1の整列が崩れない範囲で相対的に小さくされ、キャリアテープ1の反りやうねりに伴う電子部品の挿入不良、テーピングエラーの発生が防止される。巻取張力は、所定のテンションンゲージ等により測定することが可能である。
【0030】
巻き付け終了ステップは、巻取リール10の巻芯11軸方向にキャリアテープ1の使用対象とはならない数mの末端部側6を巻取張力を加えながら複数列にスパイラル巻きし終わるステップである。この巻き付け終了ステップにおけるキャリアテープ1の末端部側6は、1層〜10層の範囲で複数列に整列して斜めにスパイラル巻きされる。
【0031】
巻き付け終了ステップ時における巻取張力は、キャリアテープ1の材質にもよるが、巻き付け継続ステップ時における巻取張力の1.5倍〜5倍大きい値とされる。これは、巻取張力が巻き付け継続ステップ時における巻取張力の1.5倍未満の場合には、実験結果から、キャリアテープ1に巻緩みが発生するからである。これに対し、巻取張力が巻き付け継続ステップ時における巻取張力の5倍を越える場合には、実験結果から、巻き終わりのキャリアテープ1が整列せず、巻乱れが発生するからである。この巻取張力も、所定のテンションンゲージ等により測定することが可能である。
【0032】
上記において、巻取リール10に細長いキャリアテープ1をスパイラル巻きする場合には、先ず、巻き付け開始ステップで巻取リール10の巻芯11の軸方向、換言すれば、巻芯11の一端部方向から他端部方向に一層目のキャリアテープ1の先端部側5を強い巻取張力で横方向に移動させながら複数列に整列させて巻き付ける。
【0033】
こうして一層目のキャリアテープ1の先端部側5を複数列に整列させて巻き付けたら、必要に応じ、巻芯11の他端部方向から一端部方向に二層目のキャリアテープ1を強い巻取張力で横方向に移動させながら複数列に整列させて巻き付けるとともに、巻芯11の一端部方向から他端部方向に三層目のキャリアテープ1を強い巻取張力で横方向に移動させながら複数列に整列させて巻き付け、以下、これらの作業の繰り返しにより、キャリアテープ1の先端部側5を完全に巻き付ける。
【0034】
次いで、巻き付け開始ステップでキャリアテープ1の先端部側5の巻き付けが終了したら、巻き付け継続ステップで巻取リール10の巻芯11の一端部方向から他端部方向に一層目のキャリアテープ1の中間部を相対的に弱い巻取張力で横方向に移動させながら複数列に整列させて巻き付け、巻芯11の他端部方向から一端部方向に二層目のキャリアテープ1を弱い巻取張力で横方向に移動させながら複数列に整列させて巻き付ける。その後、巻芯11の一端部方向から他端部方向に三層目のキャリアテープ1を弱い巻取張力で横方向に移動させながら複数列に整列させて巻き付け、以下、これらの作業の繰り返しにより、キャリアテープ1の中間部を多層に巻き付ける。
【0035】
次いで、巻き付け継続ステップでキャリアテープ1の中間部の巻き付けが終了したら、巻き付け終了ステップで巻取リール10の巻芯11の一端部方向から他端部方向に一層目のキャリアテープ1の末端部側6を強い巻取張力で横方向に移動させながら複数列に整列させて巻き付ける。
【0036】
一層目のキャリアテープ1の末端部側6を複数列に整列させて巻き付けたら、必要に応じ、巻芯11の他端部方向から一端部方向に二層目のキャリアテープ1を強い巻取張力で横方向に移動させながら複数列に整列させて巻き付けるとともに、巻芯11の一端部方向から他端部方向に三層目のキャリアテープ1を強い巻取張力で横方向に移動させながら複数列に整列させて巻き付け、以下、これらの作業の繰り返しにより、キャリアテープ1の末端部側6を完全に巻き付ければ、巻取リール10に細長いキャリアテープ1をスパイラル巻きすることができる。
【0037】
上記によれば、キャリアテープ1の材質を特に変更する必要がないので、キャリアテープ1の製造作業に支障を来すおそれを有効に排除することができる。また、キャリアテープ1の反り、うねり、巻崩れ、繰り出し不良、巻乱れ、巻緩みの原因となりやすいキャリアテープ1の先端部側5と末端部側6の巻取張力のみを強くするので、製品に拘わらず、キャリアテープ1の反り、うねり、巻崩れ、繰り出し不良、巻乱れ、巻緩みを有効に防止することができる。
【0038】
なお、上記実施形態ではキャリアテープ1の中間樹脂層の材料として、ポリスチレン樹脂や非晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂を主に示したが、何らこれに限定されるものではなく、ポリカーボネート樹脂やABS樹脂でも良い。また、キャリアテープ1のテープ本体2と収納エンボス4とは、可撓性を有する中間樹脂層と、この中間樹脂層の表面に積層される導電性の表面層とを備えた二層構造でも良い。
【0039】
また、テープ本体2の中央部を凹ませ、この凹み部分に複数の収納エンボス4を一体形成しても良い。また、各収納エンボス4の底板に、電子部品を浮かせて支持する平面略枠形の支持壁を立設することもできる。さらに、巻き付け継続ステップは、必要に応じ、複数のステップにすることもできる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明に係るキャリアテープの巻回方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、巻取リールに細長い帯形のキャリアテープをスパイラル巻きし、このキャリアテープの最内周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表1にまとめた。
【0041】
巻取リールは,外径φ254mm、幅33.5mmのタイプを使用した。また、キャリアテープは、ポリスチレン樹脂により幅4mm、総厚0.45mmにプレス成形した。キャリアテープをスパイラル巻きするステップは、巻き付け開始ステップ、巻き付け継続ステップ、及び巻き付け終了ステップの3段階とした。巻き付け開始ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの先端部側を巻取張力80gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。
【0042】
巻き付け継続ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの中央部を巻取張力40gで横方向に移動させながら複数列に整列させて多層にスパイラル巻きした。また、巻き付け終了ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの末端部側を巻取張力60gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。各ステップの巻取張力は、テンションンゲージにより測定した。キャリアテープを完全にスパイラル巻きしたら、このスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表1に記載し、キャリアテープの最外周の巻姿を視認して検討し、巻姿の良否を表1にまとめた。
【0043】
キャリアテープの巻緩み量は、振動試験後に緩み量として、巻取リールのフランジの先端部からキャリアテープまでの長さを計測し、振動試験前と振動試験後の変位量を記録した。振動試験は、加速度4Gの環境下(振動はZ軸方向のみ)で14分間放置する条件で実施した。また、キャリアテープの反り最大量は、加速試験後に反り量として、巻取リールに巻かれたキャリアテープの中間部の1層分を400mm毎にカットし、幅方向の変位量を計測してその最大値を記録した。加速試験は、気温40℃の環境下で24時間放置する条件で実施した。
【0044】
〔実施例2〕
基本的には実施例1と同様だが、巻き付け開始ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの先端部側を巻取張力120gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。また、巻き付け継続ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの中央部を巻取張力40gで横方向に移動させながら複数列に整列させてスパイラル巻きした。巻き付け終了ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの末端部側を巻取張力80gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。
【0045】
その他の部分は、実施例1と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表1に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表1にまとめた。
【0046】
〔実施例3〕
基本的には実施例1と同様だが、巻き付け開始ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの先端部側を巻取張力200gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。また、巻き付け継続ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの中央部を巻取張力40gで横方向に移動させながら複数列に整列させてスパイラル巻きした。巻き付け終了ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの末端部側を巻取張力120gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。
【0047】
その他の部分は、実施例1と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表1に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表1にまとめた。
【0048】
〔実施例4〕
基本的には実施例1と同様だが、巻き付け開始ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの先端部側を巻取張力280gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。また、巻き付け継続ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの中央部を巻取張力40gで横方向に移動させながら複数列に整列させてスパイラル巻きした。巻き付け終了ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの末端部側を巻取張力200gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。
【0049】
その他の部分は、実施例1と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表1に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表1にまとめた。
【0050】
〔実施例5〕
先ず、巻取リールに細長い帯形のキャリアテープをスパイラル巻きし、このキャリアテープの最内周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表2にまとめた。
【0051】
巻取リールは,外径φ570mm、幅300mmのタイプを使用した。また、キャリアテープは、ポリスチレン樹脂により幅44mm、総厚22.1mmにプレス成形した。キャリアテープをスパイラル巻きするステップは、巻き付け開始ステップ、巻き付け継続ステップ、及び巻き付け終了ステップの3段階とした。巻き付け開始ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの先端部側を巻取張力200gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。
【0052】
巻き付け継続ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの中央部を巻取張力100gで横方向に移動させながら複数列に整列させてスパイラル巻きした。また、巻き付け終了ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの末端部側を巻取張力150gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。各ステップの巻取張力は、テンションンゲージにより測定した。キャリアテープを完全にスパイラル巻きしたら、このスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表2に記載し、キャリアテープの最外周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表2にまとめた。
【0053】
キャリアテープの巻緩み量は、振動試験後に緩み量として、巻取リールのフランジの先端部からキャリアテープまでの長さを計測し、振動試験前と振動試験後の変位量を記録した。振動試験は、加速度4Gの環境下(振動はZ軸方向のみ)で14分間放置する条件で実施した。また、キャリアテープの反り最大量は、加速試験後に反り量として、巻取リールに巻かれたキャリアテープの中間部の1層分を400mm毎にカットし、幅方向の変位量を計測してその最大値を記録した。加速試験は、気温40℃の環境下で24時間放置する条件で実施した。
【0054】
〔実施例6〕
基本的には実施例5と同様だが、巻き付け開始ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの先端部側を巻取張力300gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。また、巻き付け継続ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの中央部を巻取張力100gで横方向に移動させながら複数列に整列させてスパイラル巻きした。巻き付け終了ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの末端部側を巻取張力200gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。
【0055】
その他の部分は、実施例5と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表2に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表2にまとめた。
【0056】
〔実施例7〕
基本的には実施例5と同様だが、巻き付け開始ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの先端部側を巻取張力500gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。また、巻き付け継続ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの中央部を巻取張力100gで横方向に移動させながら複数列に整列させてスパイラル巻きした。巻き付け終了ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの末端部側を巻取張力300gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。
【0057】
その他の部分は、実施例5と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表2に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表2にまとめた。
【0058】
〔実施例8〕
基本的には実施例5と同様だが、巻き付け開始ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの先端部側を巻取張力700gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。また、巻き付け継続ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの中央部を巻取張力100gで横方向に移動させながら複数列に整列させてスパイラル巻きした。巻き付け終了ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの末端部側を巻取張力500gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。
【0059】
その他の部分は、実施例5と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表2に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表2にまとめた。
【0060】
〔比較例1〕
先ず、巻取リールに細長い帯形のキャリアテープをスパイラル巻きし、このキャリアテープの最内周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表1にまとめた。
【0061】
巻取リールは,外径φ254mm、幅33.5mmのタイプを使用した。また、キャリアテープは、ポリスチレン樹脂により幅4mm、総厚0.45mmにプレス成形した。キャリアテープをスパイラル巻きするステップは、巻き付け開始ステップ、巻き付け継続ステップ、及び巻き付け終了ステップの3段階とした。巻き付け開始ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの先端部側を巻取張力40gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。
【0062】
巻き付け継続ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの中央部を巻取張力40gで横方向に移動させながら複数列に整列させて多層にスパイラル巻きした。また、巻き付け終了ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの末端部側を巻取張力40gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。各ステップの巻取張力は、テンションンゲージにより測定した。キャリアテープを完全にスパイラル巻きしたら、このスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表1に記載し、キャリアテープの最外周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表1にまとめた。
【0063】
キャリアテープの巻緩み量は、振動試験後に緩み量として、巻取リールのフランジの先端部からキャリアテープまでの長さを計測し、振動試験前と振動試験後の変位量を記録した。振動試験は、加速度4Gの環境下(振動はZ軸方向のみ)で14分間放置する条件で実施した。また、キャリアテープの反り最大量は、加速試験後に反り量として、巻取リールに巻かれたキャリアテープの中間部の1層分を400mm毎にカットし、幅方向の変位量を計測してその最大値を記録した。加速試験は、気温40℃の環境下で24時間放置する条件で実施した。
【0064】
〔比較例2〕
基本的には比較例1と同様だが、巻き付け開始ステップ、巻き付け継続ステップ、及び巻き付け終了ステップの巻取張力をそれぞれ120gに設定した。その他の部分は、比較例1と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表1に記載し、キャリアテープの最外周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表1にまとめた。
【0065】
〔比較例3〕
基本的には比較例1と同様だが、巻き付け開始ステップの巻取張力を60g、巻き付け継続ステップの巻取張力を40g、及び巻き付け終了ステップの巻取張力を48gにそれぞれ設定した。その他の部分は、比較例1と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表1に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討し、巻姿の良否を表1にまとめた。
【0066】
〔比較例4〕
基本的には比較例1と同様だが、巻き付け開始ステップの巻取張力を400g、巻き付け継続ステップの巻取張力を40g、及び巻き付け終了ステップの巻取張力を280gにそれぞれ設定した。その他の部分は、比較例1と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表1に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討し、巻姿の良否を表1にまとめた。
【0067】
〔比較例5〕
巻取リールに細長い帯形のキャリアテープをスパイラル巻きし、このキャリアテープの最内周の巻姿を視認して検討・評価し、巻姿の良否を表2にまとめた。
【0068】
巻取リールは,外径φ570mm、幅300mmのタイプを使用した。また、キャリアテープは、ポリスチレン樹脂により幅44mm、総厚22.1mmにプレス成形した。キャリアテープをスパイラル巻きするステップは、巻き付け開始ステップ、巻き付け継続ステップ、及び巻き付け終了ステップの3段階とした。巻き付け開始ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの先端部側を巻取張力100gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。
【0069】
巻き付け継続ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの中央部を巻取張力100gで横方向に移動させながら複数列に整列させてスパイラル巻きした。また、巻き付け終了ステップでは、巻取リールの巻芯の軸方向にキャリアテープの末端部側を巻取張力100gで横方向に移動させながら複数列に整列させて10層スパイラル巻きした。各ステップの巻取張力は、テンションンゲージにより測定した。キャリアテープを完全にスパイラル巻きしたら、このスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表2に記載し、キャリアテープの最外周の巻姿を視認して検討し、巻姿の良否を表2にまとめた。
【0070】
キャリアテープの巻緩み量は、振動試験後に緩み量として、巻取リールのフランジの先端部からキャリアテープまでの長さを計測し、振動試験前と振動試験後の変位量を記録した。振動試験は、加速度4Gの環境下(振動はZ軸方向のみ)で14分間放置する条件で実施した。また、キャリアテープの反り最大量は、加速試験後に反り量として、キャリアテープの中間部の1層分を400mm毎にカットし、幅方向の変位量を計測してその最大値を記録した。加速試験は、気温40℃の環境下で24時間放置する条件で実施した。
【0071】
〔比較例6〕
基本的には比較例5と同様だが、巻き付け開始ステップ、巻き付け継続ステップ、及び巻き付け終了ステップの巻取張力をそれぞれ300gに設定した。その他の部分は、比較例5と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表2に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討し、巻姿の良否を表2にまとめた。
【0072】
〔比較例7〕
基本的には比較例5と同様だが、巻き付け開始ステップの巻取張力を150g、巻き付け継続ステップの巻取張力を100g、及び巻き付け終了ステップの巻取張力を120gにそれぞれ設定した。その他の部分は、比較例1と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表2に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討し、巻姿の良否を表2にまとめた。
【0073】
〔比較例8〕
基本的には比較例5と同様だが、巻き付け開始ステップの巻取張力を1000g、巻き付け継続ステップの巻取張力を100g、及び巻き付け終了ステップの巻取張力を700gにそれぞれ設定した。その他の部分は、比較例5と同様にしてスパイラル巻きしたキャリアテープの巻緩み量と反り最大量とをそれぞれ計測して計測値を表2に記載し、キャリアテープの最内外周の巻姿を視認して検討し、巻姿の良否を表2にまとめた。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
〔評 価〕
実施例1の場合、キャリアテープの最内周の巻姿は、最外周の巻姿と同様に良好であった。また、キャリアテープの巻緩み量は、6mmであったが、実用上、問題ない範囲であった。キャリアテープの反り最大量は、1mmであったが、実用上、問題ない範囲であった。
【0077】
実施例2の場合、キャリアテープの最内周の巻姿は、最外周の巻姿と同様に良好であった。また、キャリアテープの巻緩み量は、0mmであり、きわめて優れた結果を得ることができた。キャリアテープの反り最大量は、−1mmであったが、実用上、問題ない範囲であった。
【0078】
実施例3の場合、キャリアテープの最内周の巻姿は、最外周の巻姿と同様に良好であった。また、キャリアテープの巻緩み量は、0mmであり、きわめて優れた結果を得ることができた。キャリアテープの反り最大量も0mmであり、きわめて優れた結果を得ることができた。
実施例4の場合、キャリアテープの最内周の巻姿は、最外周の巻姿と同様に良好であった。また、キャリアテープの巻緩み量も0mmであり、きわめて優れた結果を得ることができた。キャリアテープの反り最大量は、2mmであったが、実用上、問題ない範囲であった。
【0079】
実施例5の場合、キャリアテープの最内周の巻姿は、最外周の巻姿と同様に良好であった。また、キャリアテープの巻緩み量は、4mmであったが、実用上、支障のない範囲であった。キャリアテープの反り最大量は、1mmであったが、実用上、支障のない範囲であった。
実施例6の場合、キャリアテープの最内周の巻姿は、最外周の巻姿と同様に良好であった。また、キャリアテープの巻緩み量は、1mmであったが、実用上、支障のない範囲であった。キャリアテープの反り最大量は、−1mmであったが、実用上、支障のない範囲であった。
【0080】
実施例7の場合、キャリアテープの最内周の巻姿は、最外周の巻姿と同様に良好であった。また、キャリアテープの巻緩み量も0mmであり、きわめて優れた結果を得ることができた。キャリアテープの反り最大量は、2mmであったが、実用上、支障のない範囲であった。
実施例8の場合、キャリアテープの最内周の巻姿は、最外周の巻姿と同様に良好であった。また、キャリアテープの巻緩み量も0mmであり、きわめて優れた結果を得ることができた。キャリアテープの反り最大量は、1mmであったが、実用上、問題ない範囲であった。
【0081】
上記各実施例に対し、比較例1の場合、キャリアテープの巻緩み量は、巻取張力が常時一定であったので、25mmにもなり、実用上、問題となるのが判明した。
比較例2の場合、キャリアテープの反り最大量は、巻取張力が常時一定であったので、16mmにもなり、実用上、問題となるのが判明した。
比較例3の場合、キャリアテープの巻緩み量は、巻き付け開始ステップ時における張力が巻き付け継続ステップ時における張力の2倍未満であるとともに、巻き付け終了ステップ時における張力が巻き付け継続ステップ時における張力の1.5倍未満なので、21mmの緩み量になり、実用上、問題化するのが判明した。
【0082】
比較例4の場合、キャリアテープの最内周の巻姿は、巻き付け開始ステップ時における張力が巻き付け継続ステップ時における張力の7倍を越えるとともに、巻き付け終了ステップ時における張力が巻き付け継続ステップ時における張力の5倍を越えるので、キャリアテープの整列が乱れ、最外周の巻姿と同様、大きな巻乱れが生じた。
比較例5の場合、キャリアテープの巻緩み量は、巻取張力が常時一定であったので、22mmにもなり、実用上、問題化するのが判明した。
【0083】
比較例6の場合、キャリアテープの反り最大量は、巻取張力が常時一定であったので、34mmにもなり、実用上、問題となるのが判明した。
比較例7の場合、キャリアテープの巻緩み量は、巻き付け開始ステップ時における張力が巻き付け継続ステップ時における張力の2倍未満であるとともに、巻き付け終了ステップ時における張力が巻き付け継続ステップ時における張力の1.5倍未満なので、14mmにもなり、実用上、問題化するのが判明した。
【0084】
比較例8の場合、キャリアテープの最内周の巻姿は、巻き付け開始ステップ時における張力が巻き付け継続ステップ時における張力の7倍を越えるとともに、巻き付け終了ステップ時における張力が巻き付け継続ステップ時における張力の5倍を越えるので、キャリアテープの整列が乱れ、最外周の巻姿と同様、大きな巻乱れが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係るキャリアテープの巻回方法は、小型の電子部品、半導体、携帯機器、情報機器、精密機器等の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0086】
1 キャリアテープ
2 テープ本体
3 送り孔
4 収納エンボス
5 キャリアテープの先端部側
6 キャリアテープの末端部側
10 巻取リール
11 巻芯
12 フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10