(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
(実施の形態1)
《電力変換装置の主要部の概略構成》
図1は、本発明の実施の形態1による電力変換装置の主要部の構成例を示す概略図である。
図1に示す電力変換装置は、パワートランジスタPTRと、電圧リミッタLMTと、ドライバ装置DRICと、制御装置MCUとを備える。パワートランジスタPTRは、代表的には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、SiやSiC構造のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等である。明細書では、パワートランジスタPTRは、SiC構造のMOSFETである場合を例とするが、Si、GaN、その他材料のMOSFETでもよく、IGBTの場合は、ソースおよびドレインをそれぞれエミッタおよびコレクタに置き換えればよい。
【0016】
パワートランジスタPTRは、ゲート端子(制御入力端子)、ソース端子およびドレイン端子を備え、ソース端子およびドレイン端子を介して所定の負荷に電力を供給する。ソース・ドレイン間に印加される電圧(通常、略電源電圧となる)は、数百V(例えば、400V等)や、場合によっては千Vを超える大きさとなる。パワートランジスタPTRは、例えば、一つのパッケージ部品、またはモジュール部品で構成される。
【0017】
ドライバ装置DRICは、ドライバDRVと、電圧検出回路VDETとを有し、例えば、一つのパッケージ部品で構成される。ドライバDRVは、パワートランジスタPTRのゲート端子をゲート電圧VGで駆動する。電圧検出回路VDETは、パワートランジスタPTRのオン期間におけるソース端子(ソース電圧VS)とドレイン端子(ドレイン電圧VD)の端子間電圧Vdsを検出する。ドライバ装置DRICは、数V〜数十V(例えば20V等)の電源電圧で動作する。このため、端子間電圧Vdsを電圧検出回路VDETへ直接伝送することは困難となる。そこで、電圧リミッタLMTは、端子間電圧Vdsを、上限値を制限した上で電圧検出回路VDETへ伝送する。
【0018】
制御装置MCUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を含むマイクロコントローラや、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等であり、一つの半導体チップで構成される。制御装置MCUは、パワートランジスタPTRのオン・オフをドライバDRVを介して制御する。ここで、制御装置MCUは、例えば、CPUを用いたプログラム処理によって実装される温度推定部PTJUを備える。
【0019】
温度推定部PTJUは、予め、ソース端子とドレイン端子の端子間電圧Vdsおよび端子間電流Idsと、パワートランジスタPTRのジャンクション温度TJとの相関情報IVTRを記憶部MEMに保持する。当該相関情報IVTRは、具体的には、変換テーブルや、計算式等の形態で記憶部MEMに保持される。記憶部MEMは、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。温度推定部PTJUは、電圧検出回路VDETから取得した端子間電圧Vdsと、既知の端子間電流Idsと、相関情報IVTRとに基づきジャンクション温度TJを推定する。
【0020】
すなわち、パワートランジスタPTRの端子間電圧Vdsと端子間電流Idsの特性は、温度依存性を有する。これを利用して、温度推定部PTJUは、この温度依存性を含む電気的特性を予め相関情報IVTRとして保持し、端子間電圧Vdsおよび端子間電流Idsを入力パラメータとして相関情報IVTRを参照することでジャンクション温度TJを推定する。このような方式を用いると、パワートランジスタPTRから直接的に取得した電気的特性を用いてパワートランジスタPTRのジャンクション温度TJを推定するため、推定精度の高精度化が図れる。さらに、電圧リミッタLMT等は、後述するDESAT検出回路等に伴い予め設けられる場合が多く、これを流用することで新たな追加部品も特に必要とされない。このため、高精度なジャンクション温度TJの推定を、低コスト、または小さい面積オーバヘッドで行うことが可能になる。
【0021】
ここで、一般的な電力変換装置において、制御装置MCUは、パワートランジスタPTRの端子間電流Ids(ひいては、負荷電流)を目標に近づけるような制御を行う。代表例として、予め負荷電流の電流経路上に電流センサが設けられ、制御装置MCUは、電流センサからの電流検出値と既知の電流目標値とが一致するようにパワートランジスタPTRをPWM(Pulse Width Modulation)信号PWMiで制御する。このような制御に伴い、前述したように、端子間電流Idsは既知となる。
【0022】
《電力変換装置の主要部の詳細構成》
図2は、
図1の電力変換装置の詳細な構成例を示す回路図である。
図2において、パワートランジスタPTRは、この例では、駆動用トランジスタTRdと、電流センス用トランジスタTRcsと、クランプ用トランジスタTRclpとを備える。電流センス用トランジスタTRcsは、駆動用トランジスタTRdよりも小さいトランジスタサイズで構成され、駆動用トランジスタTRdとゲート端子(ゲート電圧VG)およびドレイン端子(ドレイン電圧VD)が共通化される。
【0023】
電流センス用トランジスタTRcsのソース端子と、駆動用トランジスタTRdのケルビン端子(KS)との間には、電流検出用の抵抗素子Rsが結合される。ケルビン端子(KS)は、駆動用トランジスタTRdのソース端子(VS)に結合されるが、ソース端子(VS)と異なり負荷電流が殆ど流れない端子となる。このため、ケルビン端子(KS)からは、ソース電圧VSから寄生インダクタ等に伴うノイズ成分を排除したような安定したケルビンソース電圧KSが生成される。このような構成により、電流センス用トランジスタTRcsには、駆動用トランジスタTRdの端子間電流Idsにほぼ比例するセンス電流が流れる。なお、駆動用トランジスタTRdにケルビン端子(KS)が無い場合は、ケルビン端子(KS)の代わりにソース端子(VS)を用いても良い。
【0024】
クランプ用トランジスタTRclpは、駆動用トランジスタTRdよりも小さいトランジスタサイズで構成され、駆動用トランジスタTRdとドレイン端子が共通化される。クランプ用トランジスタTRclpは、
図1に示した電圧リミッタLMTを構成する。クランプ用トランジスタTRclpのゲート端子には、前述した電圧リミッタLMTの上限値を定めるクランプ電圧Vclpが印加される。クランプ電圧Vclpは、場合によっては、ゲート電圧VGであってもよい。すなわち、クランプ用トランジスタTRclpと駆動用トランジスタTRdのゲート端子を共通化することも可能である。
【0025】
クランプ用トランジスタTRclpのソース端子からは、駆動用トランジスタTRdのドレイン電圧VDに応じたドレイン検出電圧VDsenが出力される。詳細には、ドレイン検出電圧VDsenは、ドレイン電圧VD、または、クランプ電圧Vclpからクランプ用トランジスタTRclpのしきい値電圧Vthを差し引いた電圧の内、いずれか小さい方の値となる。
【0026】
ドライバ装置DRICは、ドライバDRVと、電圧検出回路VDETと、DESAT検出回路DSTと、コンパレータCMP2と、PWM変調器PWMMDと、アンドゲートAD1およびオアゲートOR1と、アイソレータISO1〜ISO3とを備える。アイソレータISO1〜ISO3は、例えば、フォトカプラや、絶縁トランス等である。アイソレータISO1は、パワートランジスタPTRのオン・オフ制御信号(例えばPWM信号PWMi)を制御装置MCUから受け、それをPWM信号PWMi2として出力する。ドライバDRVは、当該PWM信号PWMi2を受け、ゲート抵抗素子Rgを介して駆動用トランジスタTRdのゲート端子を駆動する。
【0027】
電圧検出回路VDETは、サンプリングホールド回路SHを有し、また、アンプ回路AMP1を有していてもよい。アンプ回路AMP1は、例えば、サージ吸収回路SACを介したドレイン検出電圧VDsenとケルビンソース電圧KSとの差電圧を検出し、所定のゲインで増幅する。サンプリングホールド回路SHは、制御装置MCUからのパワートランジスタPTRのオン・オフ制御信号(PWM信号PWMi2)と、アンプ回路AMP1の出力信号とを受けて動作する。アンプ回路AMP1の出力信号は、クランプ用トランジスタTRclpに伴い、実質的に、パワートランジスタPTRのオン期間における端子間電圧Vdsを表す。サンプリングホールド回路SHは、パワートランジスタPTRのオン期間における端子間電圧VdsをPWM信号PWMi2のオン期間でサンプリングし、当該サンプリング値をオフ期間で保持する。
【0028】
DESAT検出回路DSTは、コンパレータCMP1を備え、電圧検出回路VDETで検出された端子間電圧Vdsと所定の電圧判定値Vcp1とを比較することでパワートランジスタPTRの非飽和の有無を判定する。すなわち、パワートランジスタPTRは、例えば過電流等が発生すると非飽和状態となり、端子間電圧Vdsが大きくなる。DESAT検出回路DSTは、このような状態を検出する。
【0029】
ここで、例えば、クランプ用トランジスタTRclpのしきい値電圧Vthは、5V程度であり、DESAT検出回路DSTの電圧判定値Vcp1は、7V程度である。この場合、クランプ用トランジスタTRclpは、ドレイン電圧VDに応じたドレイン検出電圧VDsenとして7Vよりも大きい電圧を伝送する必要があるため、“Vclp−Vth>7V”を満たす必要がある。したがって、クランプ電圧Vclpは、12Vよりも大きい必要があり、例えば、15V等が望ましい。
【0030】
コンパレータCMP2は、過電流検出回路として機能し、電流検出用の抵抗素子Rsからのセンス電圧CS(端子間電流Idsにほぼ比例する値)と所定の電圧判定値Vcp2(実質的に端子間電流Idsの電流判定値に相当)とを比較することで駆動用トランジスタTRdの過電流の有無を判定する。また、例えば、2個の電圧判定値Vcp2(例えば、0.25Vと0.5V等)を用いることで、コンパレータCMP2は、過電流に加えて短絡電流の有無を判定することも可能である。コンパレータCMP2は、過電流有りの場合には、過電流検出信号OCを出力し、短絡電流有りの場合には、短絡電流検出信号SCを出力する。
【0031】
PWM変調器PWMMDは、電圧検出回路VDETで検出された端子間電圧VdsをPWM変調することでPWM信号PWMdsを生成する。アイソレータISO2は、PWM信号PWMdsを受け、それをPWM信号PWMoとして制御装置MCUへ出力する。すなわち、アイソレータISO2は、ディジタル信号しか伝送できないため、この例では、PWM変調器PWMMDが設けられる。ただし、ディジタル信号に変換(変調)できる何らかの回路を設ければよく、PWM変調器PWMMDの代わりに、例えば、ΔΣ変調器や、アナログディジタル変換器を用いてもよい。
【0032】
オアゲートOR1は、DESAT検出回路DSTまたはコンパレータCMP2(過電流検出回路)の少なくとも一方で異常が検出された場合に、‘H’レベルを出力する。アンドゲートAD1は、アイソレータISO1からのPWM信号PWMi2のオン期間(‘H’レベル期間)でオアゲートOR1の出力を異常検出信号Fdetとして出力する。アイソレータISO3は、当該異常検出信号Fdetを受け、制御装置MCUへ異常出力信号FOを出力する。
【0033】
制御装置MCUは、アイソレータISO2からのPWM信号PWMoを受け、それを復調することで端子間電圧Vdsを取得する。制御装置MCUは、
図1で述べたように、当該端子間電圧Vdsと、既知の端子間電流Idsと、相関情報IVTRとに基づきジャンクション温度TJを推定し、その結果をPWM信号PWMiに反映することで、パワートランジスタPTRの保護を図る。具体的には、ジャンクション温度TJが下がるまで、PWMデューティを制限する方法等が挙げられる。さらに、制御装置MCUは、アイソレータISO3からの異常出力信号FOを受け、必要に応じて、PWM信号PWMiを介して駆動用トランジスタTRdをターンオフすること等で、パワートランジスタPTRの保護を図る。
【0034】
以上のように、
図2の構成例では、サンプリングホールド回路SHが設けられる。サンプリングホールド回路SHからは、例えば、PWM信号PWMi2のオン期間が短いような場合であっても、パワートランジスタPTRのオン期間に対応する端子間電圧Vdsのみが出力される(言い換えればオフ期間に対応する電圧は出力されない)。その結果、例えば、DESAT検出回路DSTやPWM変調器PWMMDにおいて、パワートランジスタPTRのオン期間を処理対象とするようなタイミング設計等が不要となり、回路設計や処理の容易化が図れる。
【0035】
また、パワートランジスタPTRは、例えば、インバータ等におけるハイサイド(高電位側)やロウサイド(低電位側)に配置される。ハイサイドに配置される場合、制御装置MCUが0Vレベルを基準に動作するのに対して、ドライバ装置DRICは、ハイサイドのソース電圧VS(例えば、0Vレベル〜数百Vレベルの間で推移する電圧)を基準に動作するため、アイソレータISO1〜ISO3が必要とされる。一方、ロウサイドに配置される場合、ドライバ装置DRICは、ロウサイドのソース電圧VSを基準に動作するため、場合によっては、アイソレータISO1〜ISO3は不要となる。ただし、実際上、ドライバ装置DRICの接地電源電圧とロウサイドのソース電圧VSとの間には、寄生インダクタンス等に伴い差電圧が生じ得るため、アイソレータISO1〜ISO3が必要とされる場合もある。
【0036】
《パワートランジスタ(半導体装置)の構成》
図3(a)および
図3(b)は、
図2におけるパワートランジスタの構成例を示す概略図である。
図3(a)に示すように、パワートランジスタ(SiC構造のMOSFET)PTRは、半導体チップCHPに形成され、半導体チップCHPの表面には、ソースパッドSP、ゲートパッドGP、クランプ入力パッドCLPP、電流センスパッドCSP、、電圧センスパッドDSPとが形成される。当該半導体チップCHPは、外部端子(リードまたはリードフレーム)PNs,PNks,PNd,PNg,PNclp,PNcs,PNdsを備えるパッケージPKGによって封止される。
【0037】
外部端子PNs,PNksは、それぞれ、ソース端子、ケルビン端子であり、共にソースパッドSPにボンディングワイヤBWを介して結合される。外部端子(ソース端子)PNsは、所定の負荷へ電力を供給するための端子であり、端子間電流Idsのほぼ全てが流れる端子となる。一方、外部端子(ケルビン端子)PNksは、ドライバ装置DRICに接地電源電圧GNDを供給するための端子であり、実質的に、端子間電流Idsが流れない端子となる。このため、外部端子(ケルビン端子)PNksは、ボンディングワイヤBWや外部端子等に起因する寄生インダクタンスの影響を受けにくい。
【0038】
外部端子PNdは、ドレイン端子であり、半導体チップCHPの裏面に形成されるドレインパッドに結合される。外部端子PNg,PNclpは、それぞれ、ゲート端子、クランプ入力端子であり、ゲートパッドGP、クランプ入力パッドCLPPにボンディングワイヤBWを介して結合される。外部端子PNcs,PNdsは、それぞれ、電流センス端子、電圧センス端子であり、電流センスパッドCSP、電圧センスパッドDSPにボンディングワイヤBWを介して結合される。
【0039】
このような半導体チップCHPには、
図3(b)に示されるように、ソースノード、ドレインノードおよびゲートノード(制御入力ノード)を備える複数(例えば数千個)の単位トランジスタU[1]〜U[n],U[n+1],U[n+2]が形成される。そして、当該半導体チップCHPには、当該複数の単位トランジスタの配分によって、駆動用トランジスタTRd、電流センス用トランジスタTRcsおよびクランプ用トランジスタTRclpが設けられる。
【0040】
電流センス用トランジスタTRcsを構成する単位トランジスタの数は、駆動用トランジスタTRdを構成する単位トランジスタの数(ここではn個)よりも少なく、数個程度(この例では1個(U[n+1]))である。クランプ用トランジスタTRclpを構成する単位トランジスタの数も、駆動用トランジスタTRdを構成する単位トランジスタの数(n個)よりも少なく、数個程度(この例では1個(U[n+2]))である。
【0041】
外部端子(ゲート端子)PNgは、駆動用トランジスタTRdおよび電流センス用トランジスタTRcsのゲートノード(ゲートパッドGP)に共通に結合される。外部端子(ソース端子)PNsと外部端子(ケルビン端子)PNksは、それぞれ、駆動用トランジスタTRdのソースノード(ソースパッドSP)に結合される。外部端子(ドレイン端子)PNdは、駆動用トランジスタTRd、電流センス用トランジスタTRcsおよびクランプ用トランジスタTRclpのドレインノード(ドレインパッド)に共通に結合される。
【0042】
外部端子(電流センス端子)PNcsは、電流センス用トランジスタTRcsのソースノード(電流センスパッドCSP)に結合される。外部端子(電圧センス端子)PNdsは、クランプ用トランジスタTRclpのソースノード(電圧センスパッドDSP)に結合される。外部端子(クランプ入力端子)PNclpは、クランプ用トランジスタTRclpのゲートノード(クランプ入力パッドCLPP)に結合される。なお、この例では、クランプ入力パッドCLPPおよびクランプ入力端子PNclpを設けたが、場合によっては、これらを設けずに、クランプ用トランジスタTRclpのゲートノードを外部端子(ゲート端子)PNgに結合することも可能である。
【0043】
図4は、
図3(b)における各単位トランジスタの構造例を示す断面図である。
図4には、各単位トランジスタU[k]の一例として、SiC構造の縦型MOSFETの構造例が示される。半導体基板SUBは、n
+型のSiC半導体で構成される。半導体基板SUB上には、n
−型のドリフト層DRFが形成される。ドリフト層DRF内には、p型の拡散層DFp2が形成され、その中にn
+型の拡散層DFnと、p
+型の拡散層DFp1とが形成される。p
+型の拡散層DFp1の上部には、ゲート絶縁膜Goxを介してゲート層GTが形成される。
【0044】
主面側において、拡散層DFp1および拡散層DFnは、ソースパッドSPに接続され、裏面側において、半導体基板SUBはドレインパッドDPに接続される。ゲート層GTに所定のゲート電圧VGを印加することで拡散層DFp2にnチャネルが形成される。その結果、ソースパッドSPに接続される拡散層DFnと、ドレインパッドDPに接続される半導体基板SUBおよびドリフト層DRFとがnチャネルを介して導通する。なお、拡散層DFp1は、拡散層DFp2への給電層となる。このようなSiC構造のMOSFETを用いると、例えば、Si構造を用いる場合と比較して、低オン抵抗化が図れ、電力変換装置の低損失化等が可能となる。
【0045】
以上のように、クランプ用トランジスタTRclpを駆動用トランジスタTRdと同一の半導体チップCHPに形成することで、例えば、クランプ用トランジスタTRclpを別の外部部品で実装する場合と比較して、コストの低減等が可能となる。また、このような1チップ化を前提とすると、パワートランジスタPTRは、例えば、IGBT等よりもSiC構造のMOSFETの方が望ましい。IGBTの場合、コレクタ・エミッタ間の電圧降下が大きく、さらに、当該電圧降下は、ある程度の温度依存性を有する。その結果、クランプ用トランジスタの電圧降下に伴い、ドレイン電圧VDとドレイン検出電圧VDsenとの間にある程度の誤差が生じ得る。一方、SiC構造のMOSFETの場合、このような問題は生じ難い。なお、この観点では、SiC構造に限らず、Si構造のMOSFETであってもよい。ただし、高耐圧と低オン抵抗を両立する観点からは、SiC構造の方が望ましい。
【0046】
《サージ吸収回路の構成例》
図5は、
図2におけるサージ吸収回路の各種構成例を示す回路図である。
図2のサージ吸収回路SACは、ドレイン電圧VDに重畳し得るノイズ(サージ)を吸収するために設けられる。なお、
図2の構成例は、ドレイン電圧VD側にサージ吸収回路SACを備えるが、加えて、ソース電圧VS(ケルビンソース電圧KS)側に同じサージ吸収回路SACを備えてもよい。
【0047】
図5において、サージ吸収回路SACaは、ドレイン検出電圧VDsenを抵抗素子Rおよび容量Cでフィルタリングするロウパスフィルタである。サージ吸収回路SACbは、ドレイン検出電圧VDsenと接地電源電圧GNDとの間にツェナーダイオードZDを備え、ドレイン検出電圧VDsenの最大電圧をツェナー電圧に制限する。サージ吸収回路SACcは、ドレイン検出電圧VDsenと電源電圧VCCおよび接地電源電圧GNDとの間にそれぞれダイオードD1,D2を備え、ドレイン検出電圧VDsenの電圧範囲をほぼ電源電圧VCCと接地電源電圧GNDの間に制限する。
【0048】
サージ吸収回路SACdは、ドレイン検出電圧VDsenと接地電源電圧GNDとの間にバリスタ素子VARを備え、ドレイン検出電圧VDsenの最大電圧をバリスタ素子VARで定まる電圧に制限する。バリスタ素子VARは、両端の差電圧が低い場合には抵抗値が高く、ある程度以上に高くなると急激に抵抗値が低くなる素子である。
【0049】
《ドライバ装置の主要部の動作》
図6は、
図2におけるドライバ装置の主要部の動作例を示すタイミングチャートである。
図6において、PWM信号PWMiがオンレベル(‘H’レベル)に遷移すると、ドライバDRVを介して、ゲート電圧VGが立ち上がる。これに応じて、端子間電流Idsが増加し、その後に、端子間電圧Vds(ドレイン電圧VD)が減少する。すなわち、例えば、インバータ等において、ハイサイドまたはロウサイドの一方に還流電流が流れている状態でそれを他方の駆動電流に切り替える場合、還流電流が駆動電流に完全に切り替わるまでは、一方の還流ダイオードがオンであるため、ドレイン電圧VDは推移しない。
【0050】
一方、PWM信号PWMiがオフレベル(‘L’レベル)に遷移すると、ドライバDRVを介して、ゲート電圧VGが立ち下がる。これに応じて、端子間電圧Vds(ドレイン電圧VD)が増加し、その後に、端子間電流Idsが減少する。すなわち、ハイサイドまたはロウサイドの一方に駆動電流が流れている状態で、それを他方の還流電流に切り替える場合、ドレイン電圧VDが増加し、他方の還流ダイオードがオンしたのちに、還流電流への切り替え(すなわち端子間電流Idsの減少)が始まる。
【0051】
このように、実際のスイッチング動作では、ドレイン電圧VDは、PWM信号PWMiがオンレベル(‘H’レベル)に推移してからある程度の時間を経て推移する。これに伴い、ドレイン検出電圧VDsenも、PWM信号PWMiがオンレベルに推移してからある程度の時間を経て安定レベルとなる。サンプリングホールド回路SHは、この安定レベルを取得するため、PWM信号PWMiのオンレベルへの遷移を受けて、所定の遅延時間Tdly後にサンプリング動作を開始する。遅延時間Tdlyは、例えば、1〜2μs等である。
【0052】
また、サンプリングホールド回路SHは、PWM信号PWMiのオフレベルへの遷移を受けてホールド動作を開始する。このような動作により、サンプリングホールド回路SHは、PWM信号PWMi(パワートランジスタPTR)のオン期間における定常状態での端子間電圧Vds(ドレイン電圧VD)を常に出力する。このため、PWM変調回路PWMMDやDESAT回路DSTは、サンプリングホールド回路SHの出力信号を、特に動作期間を定めることなく処理すればよい。例えば、PWM変調回路PWMMDは、
図6に示されるように、サンプリングホールド回路SHの出力信号を内部で生成した三角波と常時比較することができ、これによって、端子間電圧Vdsに応じたPWMデューティを持つPWM信号PWMdsを生成することができる。
【0053】
《電圧リミッタの構成(変形例)》
図7は、
図1における電圧リミッタの
図2とは異なる構成例を示す回路図である。
図7に示す電圧リミッタLMTbは、アンプ回路AMP1と、サージ吸収回路SAC1,SAC2と、ブロッキングダイオードDbk1,Dbk2と、電流源IS1,IS2とを備える。ブロッキングダイオードDbk1およびサージ吸収回路SAC1は、駆動用トランジスタTRdのドレイン端子(VD)とアンプ回路AMP1の(+)入力との間に直列に挿入される。電流源IS1によってブロッキングダイオードDbk1に微小電流を流すことで、アンプ回路AMP1の(+)入力電圧は、電流源IS1の電圧V1にほぼ制限される。
【0054】
同様に、ブロッキングダイオードDbk2およびサージ吸収回路SAC2は、駆動用トランジスタTRdのケルビン端子(KS)とアンプ回路AMP1の(−)入力との間に直列に挿入される。電流源IS2によってブロッキングダイオードDbk2に微小電流を流すことで、アンプ回路AMP1の(−)入力電圧は、電流源IS1の電圧V2にほぼ制限される。
【0055】
一般的なDESAT回路では、例えば、特許文献2に示されるように、ドレイン電圧VD側にブロッキングダイオードを設けるような方式が多く用いられる。しかし、このような方式では、ブロッキングダイオードの順方向電圧に伴い電圧誤差が生じ得る。このため、
図7の構成例では、2個のブロッキングダイオードDbk1,Dbk2を用いて順方向電圧をキャンセルすることで、電圧誤差の低減を図っている。ただし、この場合、誤差は低減できるが、追加部品が必要となるため、コストや面積の増大を招き得る。この観点では、
図2や
図3に示したクランプ用トランジスタTRclpを用いることが有益となる。
【0056】
《温度推定部の構成(応用例)》
図8(a)は、
図2の温度推定部で生じ得る問題点の一例を示す説明図であり、
図8(b)は、
図8(a)の問題点を解決する温度推定部の構成例を示す概略図である。
図8(a)に示されるように、実動作において、端子間電圧Vdsおよび端子間電流Idsが小さい範囲AR1では、相対的に温度依存に伴う変化量が小さくなるため、ジャンクション温度TJの推定精度が低くなる。逆に、端子間電圧Vdsおよび端子間電流Idsが大きい範囲AR2では、相対的に温度依存に伴う変化量が大きくなるため、ジャンクション温度TJの推定精度が高くなる。
【0057】
そこで、ジャンクション温度TJの推定精度をより高めるため、次の2つの方式のいずれかを用いることが有益となる。一つ目の方式は、端子間電圧Vdsまたは端子間電流Idsが所定の基準値よりも小さい場合には(すなわち、
図8(a)の範囲AR1では)、温度推定を行わない方式である。当該方式は、実装が容易であるが、実動作において、温度推定を行わない期間が存在し得るため、場合によっては、リアルタイム性が損なわれる恐れがある。そこで、二つ目の方式は、
図8(b)に示されるように、温度推定部PTJUに加重平均フィルタWFLTを設ける方式である。
【0058】
加重平均フィルタWFLTは、各時刻t[1],t[2],…で推定した複数のジャンクション温度TJ[k](k=1,2,…)を、対応する端子間電圧Vds[k]または端子間電流Ids[k]の大きさで重み付けを行った上で平均化する。具体的には、加重平均フィルタWFLTは、例えば、各時刻(サンプリングポイント)t[k](k=1,…,m)で得られた各ジャンクション温度TJ[k](k=1,…,m)に対して、式(1)のような演算を行うことで、平均ジャンクション温度TJaveを算出する。“w[k](k=1,…,m)”は、重み係数であり、端子間電圧Vds[k]または端子間電流Ids[k]の大きさに比例する値に定められる。
【0059】
TJave=(w[1]×TJ[1]+…+w[m]×TJ[m])/(w[1]+…+w[m]) …(1)
《電力変換装置の主要部の概略構成(応用例)》
図9は、
図1の電力変換装置を更に拡張した構成例を示す概略図である。
図9の構成例は、
図1の構成例に対して、更に、制御装置MCU2が追加されている。制御装置MCU2は、例えば、マイクロコントローラ等によって構成され、
図1の電力変換装置を含んだ上位システムを管理する。当該上位システムの制御装置MCU2と、
図1の電力変換装置内の制御装置MCUとは、通信経路CPHで結合され、通信インタフェースCIFを介して通信を行う。通信インタフェースCIFには、例えば、CAN(Controller Area Network)やSPI(Serial Peripheral Interface)等の通信プロトコルが適用される。
【0060】
制御装置MCUは、推定したジャンクション温度TJの情報を、通信経路CPHを介して制御装置MCU2へ送信する。制御装置MCU2は、当該情報に基づいて、例えば、ジャンクション温度TJの推移を記録したり、または、ジャンクション温度TJの推移をディスプレイ上に表示する処理等を行う。ユーザは、当該ジャンクション温度TJの推移に基づいて、例えば、システムの問題点等を把握することができる。
【0061】
《実施の形態1の主要な効果》
図20は、本発明の比較例となる電力変換装置の主要部の構成例を示す概略図である。
図20に示す電力変換装置では、パワートランジスタPTR’内に、温度検出用のダイオードDjが搭載される。電圧検出回路VDET’は、当該ダイオードDjの順方向電圧Vfを検出し、制御装置MCU’は、当該順方向電圧Vfに基づいてジャンクション温度TJを推定する。
【0062】
当該方式は、例えば、非特許文献1と同様の方式である。温度検出用のダイオードDjは、例えば、多結晶シリコン等で製造される。このため、製造ばらつきが大きく、ジャンクション温度TJの推定誤差が大きくなる恐れがある。また、パワートランジスタPTR’において、ダイオードDj用の追加の端子や追加の製造プロセスが必要とされるため、コストや実装面積の増大が生じ得る。
【0063】
一方、特許文献1に示されるように、ダイオードの代わりにサーミスタを用いる方式も考えられる。しかし、この場合、サーミスタがパワートランジスタから離れて配置されるため、ジャンクション温度TJの推定精度が低下する恐れがある。また、特許文献1には、前述したように、サーミスタの検出結果を用いて各種演算を行うことでジャンクション温度を推定する方式が示される。ただし、当該方式では、複雑な演算処理が必要とされ、また、推定アルゴリズムによっては十分な推定精度が得られない恐れがある。さらに、追加部品となるサーミスタや、これに伴う追加の端子が必要となるため、コストや実装面積の増大が生じ得る。
【0064】
このように、比較例となるジャンクション温度TJの推定方式では、第1の問題点として、推定誤差が大きくなる恐れがある。第2の問題点として、追加部品や、追加端子や、追加の製造プロセス等が必要とされるため、コストの増大や、実装面積の増大等が生じる恐れがある。
【0065】
一方、実施の形態1の方式では、パワートランジスタPTRの電気的特性を利用してジャンクション温度TJを推定するため、ジャンクション温度TJを高精度に推定することが可能になる。その結果、例えば、パワートランジスタPTRの熱設計に対する要求マージンを小さくできるため、コストの削減等が図れる。
【0066】
さらに、実施の形態1の方式では、DESAT回路DST等の仕組みを流用することで、追加部品や追加端子も特に必要とされず、追加の製造プロセスも不要であるため、高精度なジャンクション温度TJの推定を、低コスト、または、小さい面積オーバヘッドで実現可能になる。この際には、電圧リミッタLMTとして、パワートランジスタPTR内にクランプ用トランジスタTRclpを設けることで、更なる低コスト化や小面積化が図れる。
【0067】
なお、端子間電圧Vdsと端子間電流Idsの特性は、詳細には、温度依存性に加えてゲート電圧依存性を持つ。ゲート電圧は、例えば、ドライバ装置DRICに供給される外部電源電圧によって定まり、当該外部電源電圧の値は、仕様上の電圧値に定められる。しかし、実際には、当該外部電源電圧を生成する電源レギュレータの構成等に応じて、仕様上の電圧値に対して誤差が生じる場合がある。このような場合、制御装置MCUは、ドライバ装置DRICからゲート電圧を取得して、相関情報IVTRを補正してもよい。
【0068】
(実施の形態2)
《モータシステムへの適用例》
図10(a)は、本発明の実施の形態2による電力変換装置を適用したモータシステムの主要部の構成例を示す概略図であり、
図10(b)および
図10(c)は、
図10(a)の動作例を示す図である。
図10(a)のモータシステムは、負荷駆動端子OUTに結合されるモータMTと、負荷駆動端子OUTと電源電圧(高電位側電源電圧)Vbusとの間に設けられる駆動用トランジスタTRdhと、負荷駆動端子OUTと接地電源電圧(低電位側電源電圧)GNDとの間に設けられる駆動用トランジスタTRdlとを備える。明細書では、電源電圧Vbus側の駆動用トランジスタTRdhをハイサイドトランジスタと呼び、接地電源電圧GND側の駆動用トランジスタTRdlをロウサイドトランジスタと呼ぶ。負荷駆動端子OUTは、モータMTに含まれる複数相(例えば3相)の中の1相を駆動する端子となる。
【0069】
また、
図10(a)のモータシステムは、電圧リミッタLMTh,LMTlと、電圧検出回路VDETh,VDETlと、ドライバDRVh,DRVlと、制御装置MCUと、電流センサISENとを備える。電圧リミッタLMTh、電圧検出回路VDEThおよびドライバDRVhは、ハイサイドトランジスタTRdhに対応して設けられ、電圧リミッタLMTl、電圧検出回路VDETlおよびドライバDRVlは、ロウサイドトランジスタTRdlに対応して設けられる。電流センサISENは、負荷駆動端子OUT(モータMT)に流れる負荷電流ILを検出する。制御装置MCUは、電流センサISENによって検出された負荷電流ILが電流目標値となるように、ハイサイドトランジスタTRdhおよびロウサイドトランジスタTRdlのオン・オフを相補のPWM信号PWMih,PWMilで制御する。
【0070】
図10(b)には、制御装置MCUからの相補のPWM信号PWMih,PWMilによって切り替えられる各ステートが示される。ステートST1では、PWM信号PWMihはオン期間(ハイサイドトランジスタTRdhのゲート電圧VGhは‘H’レベル)であり、PWM信号PWMilはオフ期間(ロウサイドトランジスタTRdlのゲート電圧VGlは‘L’レベル)である。ステートST1では、
図10(a)に示されるように、ハイサイドトランジスタTRdhを介してモータMTに負荷電流ILを供給するソース動作が行われる。
【0071】
ステートST3では、PWM信号PWMihはオフ期間(VGh=‘L’レベル)であり、PWM信号PWMilはオン期間(VGl=‘H’レベル)である。ステートST3では、
図10(a)に示されるように、ロウサイドトランジスタTRdlを介して負荷電流ILを還流される同期整流動作が行われる。ステートST2では、PWM信号PWMih,PWMilは、共にオフ期間(VGh,VGl=‘L’レベル)である。ステートST2は、ステートST1からステートST3への切り替えに伴うデットタイムで実行される。ステートST2では、
図10(a)に示されるように、ロウサイドの還流ダイオード(図示せず)を介して負荷電流ILを還流される還流動作が行われる。
【0072】
ステートST4では、PWM信号PWMihはオフ期間(VGh=‘L’レベル)、PWM信号PWMilはオン期間(VGl=‘H’レベル)である。ステートST4では、
図10(a)に示されるように、ロウサイドトランジスタTRdlを介して、他の相のハイサイドトランジスタ(図示せず)からモータMTに供給された負荷電流ILを引き抜くシンク動作が行われる。ステートST6では、PWM信号PWMihはオン期間(VGh=‘H’レベル)であり、PWM信号PWMilはオフ期間(VGl=‘L’レベル)である。ステートST6では、
図10(a)に示されるように、ハイサイドトランジスタTRdhを介して負荷電流ILを還流される同期整流動作が行われる。ステートST5は、ステートST4からステートST6への切り替えに伴うデットタイムで実行される。ステートST5では、
図10(a)に示されるように、ハイサイドの還流ダイオード(図示せず)を介して負荷電流ILを還流される還流動作が行われる。
【0073】
このような動作に伴い、ハイサイドの電圧検出回路VDEThは、ステートST1において、ハイサイドトランジスタTRdhにおけるプラス方向の端子間電圧Vds_Hを検出でき、ステートST6において、ハイサイドトランジスタTRdhにおけるマイナス方向の端子間電圧Vds_Hを検出できる。また、ロウサイドの電圧検出回路VDETlは、ステートST3において、ロウサイドトランジスタTRdlにおけるマイナス方向の端子間電圧Vds_Lを検出でき、ステートST4において、ロウサイドトランジスタTRdlにおけるプラス方向の端子間電圧Vds_Lを検出できる。
【0074】
ここで、例えば、ハイサイドトランジスタTRdhおよびロウサイドトランジスタTRdlを
図4に示したようなSiC構造のMOSFETで構成する場合、ソース・ドレイン間には、p領域(DFp1,DFp2)とn領域(DRF,SUB)に伴いpn接合ダイオード(還流ダイオード)が結合される。このため、プラス方向(
図4の下から上)に端子間電流Idsが流れる場合と、マイナス方向(
図4の上から下)に端子間電流Idsが流れる場合とで、実施の形態1で述べた相関情報IVTRが異なる場合がある。
【0075】
そこで、制御装置MCUは、端子間電流Idsの各電流方向に対応する2通りの相関情報を保持し、既知の電流方向に応じて当該2通りの相関情報を切り替えてジャンクション温度TJを推定することが望ましい。例えば、制御装置MCUは、プラス方向(ハイサイドではVbus→OUT)の端子間電流Idsに応じた相関情報(IVTR(+)とする)と、マイナス方向(ハイサイドではOUT→Vbus)の端子間電流Idsに応じた相関情報(IVTR(−)とする)とを保持する。
【0076】
また、制御装置MCUは、例えば、
図10(c)に示されるように、プラス方向の負荷電流ILを流している期間のPWM周期Tpwm1では、ステートST1→ST2→ST3を実行し、マイナス方向の負荷電流ILを流している期間のPWM周期Tpwm2では、ステートST4→ST5→ST6を実行する。PWM周期は、例えば、数十〜数百μs等である。このような制御に伴い、制御装置MCUは、各駆動用トランジスタ(TRdh,TRdl)における端子間電圧Vdsおよび端子間電流Idsの方向も常時把握している。制御装置MCUは、各ステートの長さ(すなわちPWMデューティ)を制御することで、負荷電流ILの電流値を制御する。
【0077】
このような動作において、制御装置MCUは、ハイサイドトランジスタTRdhのジャンクション温度TJを推定するため、PWM周期Tpwm1内のステートST1ではプラス方向の相関情報(IVTR(+))を用い、PWM周期Tpwm2内のステートST6ではマイナス方向の相関情報(IVTR(−))を用いる。同様に、制御装置MCUは、ロウサイドトランジスタTRdlのジャンクション温度TJを推定するため、PWM周期Tpwm1内のステートST3ではマイナス方向の相関情報(IVTR(−))を用い、PWM周期Tpwm2内のステートST4ではプラス方向の相関情報(IVTR(+))を用いる。
【0078】
なお、相関情報(IVTR(+))と相関情報(IVTR(−))は、必ずしも独立した2個の変換テーブル等である必要はなく、共通化された1個の変換テーブル等であってもよい。具体的には、例えば、共通化された1個の変換テーブルの入力値(端子間電圧および端子間電流)や出力値(ジャンクション温度)を端子間電流の電流方向に応じて適宜補正することで、実質的に2個の変換テーブルとするような形態であってもよい。
【0079】
《制御装置の概略動作》
図11(a)は、
図10における制御装置の概略的な処理内容の一例を示すフロー図であり、
図11(b)は、
図11(a)の補足図である。
図11(a)において、制御装置MCUは、電圧検出回路VDETh,VDETlから端子間電圧Vds_H,Vds_Lを取得する(ステップS101)。詳細には、制御装置MCUは、
図2に示したように、受信したPWM信号PWMoを復調することで各端子間電圧Vds_H,Vds_Lを取得する。
【0080】
次いで、制御装置MCUは、例えばモータ制御用のソフトウェアによって得られる負荷電流ILの制御情報から、各駆動用トランジスタ(TRdh,TRdl)の端子間電流Idsの大きさおよび電流方向を認識する(ステップS102)。続いて、制御装置MCUは、電流方向に応じた相関情報IVTRを用いて、駆動用トランジスタ(TRdh,TRdl)毎のジャンクション温度TJを推定する(ステップS103)。
図11(b)の例では、ジャンクション温度TJは120℃と推定される。なお、相関情報IVTRが変換テーブルの形態で実装される場合、その容量を低減するため、端子間電圧Vds、端子間電流Idsおよびジャンクション温度TJの関係は、例えば離散値として保持される。この場合、制御装置MCUは、各離散値間の補完演算を行うことでジャンクション温度TJを推定する。
【0081】
次いで、制御装置MCUは、推定したジャンクション温度TJが予め定めた温度判定値に達したか否かを判定する(ステップS104)。温度判定値に達した場合、制御装置MCUは、所定の保護動作を実行する(ステップS105)。具体的には、制御装置MCUは、例えば、PWMデューティ(すなわち負荷電流)を制限することで、ジャンクション温度TJを下げるような保護動作を行う。
【0082】
《モータシステムの詳細》
図12は、
図10(a)に示されるモータシステムのより詳細な構成例を示す概略図である。
図12のモータシステムは、3相(u,v,w相)の負荷駆動端子OUT(u,v,w)に結合される3相のモータMTと、3相の負荷駆動端子OUT(u,v,w)と接地電源電圧GNDとの間に設けられるロウサイドトランジスタTRd(lu,lv,lw)とを有する。3相のロウサイドトランジスタTRd(lu,lv,lw)は、3相インバータの一部である。すなわち、3相インバータは、図示は省略されているが、実際には
図10(a)に示したような3相のハイサイドトランジスタも有する。
【0083】
また、当該モータシステムは、3相のロウサイドトランジスタおよびハイサイドトランジスタをそれぞれ駆動する複数のドライバ装置DRICと、1個の制御装置MCUとを備える。複数のドライバ装置DRICは、適宜、モジュール化されてもよい。また、
図12では、ドライバ装置DRICの一部として、ロウサイドトランジスタTRd(lu)のドライバDRVluおよび電圧検出回路VDETluが図示され、さらに、ロウサイドトランジスタTRd(lu)に対応する電圧リミッタLMTluが図示される。
【0084】
制御装置MCUは、例えば、マイクロコントローラ等であり、モータ制御部(負荷制御部)MCTUと、温度推定部PTJUとを備える。モータ制御部MCTUおよび温度推定部PTJUは、例えば、プロセッサを用いたプログラム処理によって実装される。モータ制御部MCTUは、負荷駆動端子OUT(u,v,w)に流れる3相の負荷電流Iu,Iv,Iwの値が電流目標値となるように、3相のハイサイドトランジスタおよびロウサイドトランジスタのオン・オフを相補のPWM信号で制御する。
【0085】
具体的には、モータ制御部MCTUは、電流センサISENを介して3相の負荷電流Iu,Iv,Iwを検出する。電流センサISENを用いた電流方式として、例えば、3相に挿入された3個の抵抗素子を用いて3相電流を検出する3シャント方式や、3相の共通接続パス(GNDパス)に挿入された1個の抵抗素子を用い、アナログディジタル変換器のサンプリングタイミングの工夫によって3相電流を検出する1シャント方式が挙げられる。また、各相にカレントトランスを挿入する方式等も挙げられる。
【0086】
モータ制御部MCTUは、当該検出した3相電流が電流目標値となるようにPWMデューティを定め、それを反映して、3相のハイサイドトランジスタを制御するPWM信号PWMi(hu,hv,hw)と、3相のロウサイドトランジスタを制御するPWM信号PWMi(lu,lv,lw)とを生成する。PWM信号PWMi(hu,hv,hw)とPWM信号PWMi(lu,lv,lw)は、相補のPWM信号となる。ただし、厳密には、デットタイムが含まれる。
【0087】
また、相補のPWM信号を生成する際に、モータ制御部MCTUは、モータMTのホール素子や、あるいは位置センサレス方式の場合には回転角度検出部(または推定部)を備えることでモータMTの回転角度を認識している。モータ制御部MCTUは、負荷電流がモータMTの回転角度(すなわち正弦波信号)と同期するようにタイミング制御を行うことで、例えば、PWMデューティが正弦波状に順次推移するようなPWM信号を生成する。このような制御に伴い、モータ制御部MCTUは、各PWM周期における3相のPWM信号の論理レベル情報と、それに対応する3相の負荷電流Iu,Iv,Iwの情報(電流値および電流方向)とを認識している。すなわち、モータ制御部MCTUは、
図10(b)に示した各ステートS1〜S6を3相毎に常時把握している。
【0088】
温度推定部PTJUは、概略的には、モータ制御部MCTUからの3相の負荷電流Iu,Iv,Iwの情報と、相補のPWM信号の論理レベル情報とに基づき、PWM周期毎に3相のハイサイドトランジスタおよびロウサイドトランジスタに流れる各端子間電流の電流値および電流方向を判別する。そして、温度推定部PTJUは、当該判別した電流方向に応じて、
図10(a)〜
図10(c)で説明したように、2通りの相関情報IVTR(+),相関情報IVTR(−)を切り替えることで、3相のハイサイドトランジスタおよびロウサイドトランジスタの各ジャンクション温度TJを推定する。
【0089】
具体的には、温度推定部PTJUは、例えば、端子間電圧・電流ラッチ部LTUと、演算処理部CALPUと、相関情報IVTR(+),IVTR(−)とを備える。端子間電圧・電流ラッチ部LTUは、モータ制御部MCTUから、相補のPWM信号の論理レベル情報(言い換えれば3相毎のステート情報)と駆動電流Iu,Iv,Iwの情報(電流値)とを順次取得する。また、端子間電圧・電流ラッチ部LTUは、ドライバ装置DRICから、3相のハイサイドトランジスタの端子間電圧(ドレイン電圧)Vds(hu,hv,hw)と、3相のロウサイドトランジスタの端子間電圧Vds(lu,lv,lw)とを取得する。
【0090】
端子間電圧・電流ラッチ部LTUは、3相のハイサイドトランジスタに対応する3個のレジスタユニットREGU(hu,hv,hw)と、3相のロウサイドトランジスタに対応する3個のREGU(lu,lv,lw)とを備える。各レジスタユニットREGUは、電流値レジスタREGiおよび電圧値レジスタREGvを備える。端子間電圧・電流ラッチ部LTUは、3相毎のステート情報に基づくラッチタイミングで、3相の負荷電流Iu,Iv,Iwの情報(電流値)を、対応するレジスタユニットREGUの電流値レジスタREGiに取り込む。同様に、端子間電圧・電流ラッチ部LTUは、3相毎のステート情報に基づくラッチタイミングで、3相のハイサイドトランジスタおよびロウサイドトランジスタの端子間電圧を、対応するレジスタユニットREGUの電圧値レジスタREGvに取り込む。
【0091】
具体例として、
図10(c)に示した負荷電流ILがu相の負荷電流Iuであり、モータ制御部MCTUがPWM周期Tpwm1の制御を行っている期間を想定する。当該期間では、端子間電圧・電流ラッチ部LTUは、ステートST1のタイミングで、負荷電流IuをレジスタユニットREGU(hu)の電流値レジスタREGiに取り込み、u相のハイサイドトランジスタの端子間電圧Vds(hu)をレジスタユニットREGU(hu)の電圧値レジスタREGvに取り込む。また、端子間電圧・電流ラッチ部LTUは、ステートST3のタイミングで、負荷電流Iuの反転電流値(−Iu)をレジスタユニットREGU(lu)の電流値レジスタREGiに取り込み、u相のロウサイドトランジスタの端子間電圧Vds(lu)をレジスタユニットREGU(lu)の電圧値レジスタREGvに取り込む。
【0092】
演算処理部CALPUには、例えば、PWM周期毎に、3個のレジスタユニットREGU(hu,hv,hw)に保持される3相のハイサイドトランジスタの端子間電圧および端子間電流と、3個のレジスタユニットREGU(lu,lv,lw)に保持される3相のロウサイドトランジスタの端子間電圧および端子間電流とが入力される。演算処理部CALPUは、例えば、取り込んだ端子間電流(または端子間電圧)の極性に基づき、
図10で説明したように、参照する相関情報IVTR(+),IVTR(−)を切り替える。
【0093】
そして、演算処理部CALPUは、各駆動用トランジスタの端子間電圧および端子間電流と、対応する相関情報とに基づいて、各駆動用トランジスタのジャンクション温度TJを推定する。前述したPWM周期Tpwm1の具体例の場合、演算処理部CALPUは、u相のハイサイドトランジスタに対しては相関情報IVTR(+)を用い、u相のロウサイドトランジスタに対しては相関情報IVTR(−)を用いる。
【0094】
さらに、演算処理部CALPUは、いずれかの駆動用トランジスタのジャンクション温度TJが予め定めた温度判定値を超えた場合には、モータ制御部MCTUへ過熱検出信号を出力する。これを受けて、モータ制御部MCTUは、例えば、PWM信号を介して各駆動用トランジスタをオフに固定したり、あるいは、負荷電流を制限して動作を継続する等の保護動作を実行する。
【0095】
《実施の形態2の主要な効果》
以上、実施の形態2の電力変換装置(モータシステム)を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果と同様の効果が得られる。さらに、使用する相関情報IVTRを端子間電流Idsの方向に応じて切り替えることで、ジャンクション温度TJを、実施の形態1の場合よりも更に高精度に推定することが可能になる。また、実動作において、駆動用トランジスタ毎のジャンクション温度TJの推定期間を適切に定めることが可能になる。
【0096】
(実施の形態3)
《ドライバ装置(半導体装置)の構成》
図13は、本発明の実施の形態3による半導体装置の主要部の構成例を示す概略図である。
図13に示すドライバ装置(半導体装置)DRICbは、
図2に示したドライバ装置DRICと比較して、次の点が異なっている。1つ目の相違点として、ドライバ装置DRICbは、例えば、
図2のアンドゲートAD1やオアゲートOR1等を含む制御ロジック回路LGCを有する。
【0097】
2つ目の相違点として、ドライバ装置DRICbは、電流検出回路IDETと、過電流検出回路OCDを有する。電流検出回路IDETは、パワートランジスタPTRのオン期間におけるソース端子とドレイン端子の端子間電流Idsを、電流検出用の抵抗素子Rsによって検出する。具体的には、電流検出回路IDETは、抵抗素子Rsの両端電圧を検出し、所定のゲインで増幅するアンプ回路AMP2を備える。過電流検出回路OCDは、
図2のコンパレータCMP2に対応し、電流検出回路IDETで検出された端子間電流Ids(実際にはそれに比例する電圧値)と所定の電流判定値(実際には、
図2のような電圧判定値Vcp2)とを比較することでパワートランジスタPTRの過電流や短絡電流の有無を判定する。なお、
図2では簡略化されているが、
図2の構成例も、より詳細には、このような電流検出回路IDETを備える。
【0098】
3つ目の相違点として、ドライバ装置DRICbは、パワートランジスタPTRの過熱の有無を検出する過熱検出回路OHDを有する。過熱検出回路OHDは、詳細は後述するが、パワートランジスタPTRのジャンクション温度TJを推定し、それが予め定めた温度判定値を超えた場合に、過熱検出信号OHを出力する。制御ロジック回路LGCは、過熱検出回路OHDからの過熱検出信号OHや、過電流検出回路OCDからの過電流検出信号OCまたは短絡電流検出信号SCや、DESAT検出回路DSTからの検出信号を受けて、ドライバDRVを介して所定の保護動作を行う。例えば、制御ロジック回路LGCは、過熱検出信号OHを受けた場合には、ドライバDRVを介してパワートランジスタPTRをオフに制御する。
【0099】
ここで、前述した実施の形態1,2の方式を用いると、制御装置MCUを用いてジャンクション温度TJを推定でき、その結果に応じてパワートランジスタPTRの保護動作を行うことが可能である。ただし、特に、車載用途などを代表とする高い安全性が求められる用途では、例えば、制御装置MCUに不具合が発生した場合のフェイルセーフ機能を設けることが望ましい。そこで、ここでは、ドライバ装置DRIC内に過熱検出回路OHDを設けることで、ドライバ装置DRICでも過熱保護を行う。
【0100】
制御装置MCUによる保護動作と、ドライバ装置DRICによる保護動作とを併用する場合、例えば、次のような方法を用いることができる。制御装置MCUは、パワートランジスタPTRの動作温度範囲の上限値よりも低い温度判定値を用いて、パワートランジスタPTRが当該上限値に達しないように、負荷電流を制限する等の所定の保護動作を行う。一方、ドライバ装置DRICは、制御装置MCUの温度判定値よりも高く、例えば、当該上限値と同等あるいは若干高めの温度判定値を用いて、パワートランジスタPTRが上限値に達した場合に所定の保護動作を行う。このように、ドライバ装置DRICによる保護動作を制御装置MCUによる保護動作のフェイルセーフ機能とする場合、ドライバ装置DRICによる温度推定精度は、制御装置MCUよりもある程度低くてよい。
【0101】
ここで、ドライバ装置DRICは、通常、アナログ回路を主体に、簡単なディジタル回路を加えたような構成を備える。また、ドライバ装置DRICで、
図10(b)に示したようなステート情報を把握することは容易でない。このため、ドライバ装置DRICでジャンクション温度TJを推定する場合、制御装置MCUの場合と同様の温度推定部PTJUを設けることは困難となる。
【0102】
そこで、過熱検出回路OHDは、
図14に示されるような方式を用いてジャンクション温度TJを推定する。
図14(a)は、
図13における過熱検出回路の構成例を示す概略図であり、
図14(b)は、
図14(a)の動作例を示す補足図である。
図14(a)に示す過熱検出回路OHDは、除算器(温度演算回路)DIVと、判定回路JGUとを有する。
【0103】
除算器DIVは、電圧検出回路VDETで検出された端子間電圧Vdsと電流検出回路IDETで検出された端子間電流Idsとに基づきパワートランジスタPTRのオン抵抗Ronを算出する。具体的には、除算器DIVは、“Ron=Vds/Ids”を演算することで、ジャンクション温度TJを推定する。判定回路JGUは、除算器DIVによって算出されたオン抵抗Ronと所定の抵抗判定値Rthとを比較することで過熱の有無を検出し、過熱有りの場合には過熱検出信号OHを出力する。なお、電流検出回路IDETに関しては、過電流検出回路OCDで用いる構成をそのまま流用できるため、特に、追加で設ける必要はない。
【0104】
オン抵抗Ronは、
図14(b)に示されるように、温度依存性を有する。したがって、適切な抵抗判定値Rthを設定すれば、過熱検知が可能となる。ただし、オン抵抗Ronは端子間電流Idsにも若干依存するため、一定レベルの抵抗判定値Rthを用いた場合、端子間電流Idsが大きい場合に抵抗判定値Rthを超えやすくなる。言い換えれば、端子間電流Idsが大きい場合には、ジャンクション温度TJが本来よりも低い場合でも、過熱有りと判定することになる。これは、安全性をより高める方向に働くため、抵抗判定値Rthは、一定レベルであっても特に問題は生じない。
【0105】
なお、除算器DIVに関しては、アナログ回路で構成することも、ディジタル回路で構成することも可能である。また、PWM信号PWMi(パワートランジスタPTR)のオフ期間では、過熱検出回路OHDは正しい検出動作を行うことができない。したがって、制御ロジック回路LGCは、例えば、PWM信号PWMi(パワートランジスタPTR)のオン期間において、過熱検出信号OHを受信するように構成される。
【0106】
図15は、
図13における過熱検出回路の別の構成例を示す概略図である。前述したように、抵抗判定値Rthが一定レベルの場合、端子間電流Idsが大きい場合に、より安全な方向に過熱保護が働くが、場合によっては、当該過熱保護が過剰となる恐れがある。そこで、
図15の過熱検出回路OHDbは、
図14(a)の構成例に対して、さらに、加算器(判定値補正回路)ADDを有する。加算器ADDは、抵抗判定値Rth2を端子間電流Idsの大きさに応じて補正する。例えば、加算器ADDは、
図14(b)に示した特性カーブに基づき、端子間電流Idsがある基準値を超える場合には、一定レベルの抵抗判定値(Rth1)に端子間電流Idsに比例する補正値を加算した結果を抵抗判定値Rth2として出力すればよい。
【0107】
《実施の形態3の主要な効果》
以上、実施の形態3の半導体装置を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果と同様の効果が得られる。さらに、ドライバ装置DRICでも過熱保護を行うことで、電力変換装置、ひいては、それを含んだシステムの安全性をより高めることが可能になる。
【0108】
(実施の形態4)
《モータシステムの構成》
図16は、本発明の実施の形態4によるモータシステムの主要部の構成例を示す概略図である。
図16に示すモータシステムは、負荷駆動端子OUT1,OUT2間に結合されるモータMTと、ハイサイドトランジスタTRd(h1),TRd(h2)およびロウサイドトランジスタTRd(l1),TRd(l2)とを有する。ハイサイドトランジスタTRd(h1),TRd(h2)は、電源電圧Vbusと負荷駆動端子OUT1,OUT2との間にそれぞれ設けられる。ロウサイドトランジスタTRd(l1),TRd(l2)は、接地電源電圧GNDと負荷駆動端子OUT1,OUT2との間にそれぞれ設けられる。
【0109】
また、当該モータシステムは、電圧リミッタLMTh,LMTlと、電圧検出回路VDETh,VDETlと、ドライバDRVh,DRVlと、制御装置MCUと、電流センサISENと、回転角センサθSENとを備える。電圧リミッタLMTh、電圧検出回路VDEThおよびドライバDRVhは、ハイサイドトランジスタTRd(h1)に対応して設けられ、電圧リミッタLMTl、電圧検出回路VDETlおよびドライバDRVlは、ロウサイドトランジスタTRd(l1)に対応して設けられる。また、図示は省略されているが、ハイサイドトランジスタTRd(h2)およびロウサイドトランジスタTRd(l2)にも同様の構成が設けられる。
【0110】
電流センサISENは、モータMTの電流I(t)を検出し、回転角センサθSENは、モータMTの回転角を検出する。制御装置MCUは、予め、モータMTの巻線抵抗と、巻線温度との相関情報RTRを保持する。制御装置MCUは、アナログディジタル変換器ADC1を用いて電源電圧Vbusの大きさを認識し、アナログディジタル変換器ADC2を用いて電流センサISENによるモータMTの電流I(t)の大きさを認識する。また、制御装置MCUは、回転角センサθSENの検出結果に基づき、モータMTの回転速度を認識する。
【0111】
図17(a)は、
図16におけるモータの等価回路であり、
図17(b)は、
図17(a)の等価回路の動作例を示す波形図である。
図16に示したようなモータシステムでは、パワートランジスタのジャンクション温度TJに加えて、モータMTの温度を推定することが求められる場合がある。モータMTは、
図17(a)に示されるように、印加電圧V(t)、巻線インダクタンスL、巻線抵抗R(T)および逆起電圧Vbemfでモデル化される。
【0112】
ここで、巻線抵抗R(T)は温度Tで変動するため不定となるが、巻線インダクタンスL、逆起電圧Vbemf、印加電圧V(t)およびモータMTの電流I(t)が分かれば、巻線抵抗R(T)を算出できる。巻線インダクタンスLに関しては、温度依存性が無い固定値として予め定めることが可能である。電流I(t)に関しては、電流センサISENで検出できる。逆起電圧Vbemfに関しては、例えば、モータ制御ソフト内部の計算(回転速度×逆起電圧定数)によって算出できる。
【0113】
したがって、制御装置MCUは、印加電圧V(t)が分かれば、巻線抵抗R(T)を算出できる。さらに、制御装置MCUは、
図16に示したように、巻線抵抗R(T)と巻線温度の相関情報RTR(具体的には、数式や変換テーブル)を予め保持することで、巻線抵抗R(T)から巻線温度を推定できる。この推定精度を高めるためには、印加電圧V(t)を高精度に求める必要がある。すなわち、
図16に示したような電流経路で電流I(t)が流れる場合、印加電圧V(t)は、電源電圧Vbusから、ハイサイドトランジスタTRd(h1)およびロウサイドトランジスタTRd(l2)の電圧ドロップを差し引いた値となる。
図16の構成例では、この電圧ドロップを電圧検出回路VDETh,VDETlで検出できるため、巻線温度を高精度に推定することが可能になる。
【0114】
また、
図17(b)には、印加電圧V(t)に対する電流I(t)の応答特性が示される。PWM信号に伴うステップ状の印加電圧V(t)(=Vp×u(t))に対して、電流I(t)は、式(2)のように変化する。その結果、時定数τは“L/R(T)”となる。
【0115】
I(t)={(Vp−Vbemf)/R(T)}×(1−exp(−(R(T)/L)×t)) …(2)
《制御装置の動作》
図18は、
図16における制御装置の処理内容の一例を示すフロー図である。
図18において、制御装置MCUは、ハイサイドトランジスタTRd(h1)の端子間電圧Vds_H1と、ロウサイドトランジスタTRd(h2)の端子間電圧Vds_L2とを、対応する電圧検出回路VDETh,VDETlから取得する(ステップS201)。また、制御装置MCUは、アナログディジタル変換器ADC1を用いて、電源電圧Vbusと接地電源電圧GNDの電位差を取得する。そして、これらの情報を用いて、制御装置MCUは、モータMTへの正味の印加電圧V(t)(=Vbus−(Vds_H1+Vds_L2))を算出する(ステップS202)。
【0116】
次いで、制御装置MCUは、印加電圧V(t)に対して応答するモータMTの電流I(t)を電流センサISENを用いて観測する(ステップS203)。続いて、制御装置MCUは、回転角センサθSENに基づく回転速度と既定の逆起電圧定数から逆起電圧Vbemfを算出し、当該逆起電圧Vbemfと、モータへの印加電圧V(t)とに基づき、モータMTの巻線(RL)への印加電圧(=V(t)−Vbemf)を算出する(ステップS204)。
【0117】
次いで、制御装置MCUは、モータMTの巻線(RL)への印加電圧と、ステップS203でのモータMTの電流I(t)の観測結果に基づき、モータMTの巻線抵抗R(T)を算出する(ステップS205)。詳細には、制御装置MCUは、
図17(b)に示した時定数τ(=L/R(T))を算出し、既知の巻線インダクタンスLを用いて巻線抵抗R(T)を算出する。その後、制御装置MCUは、相関情報RTRに基づき、巻線抵抗R(T)から巻線温度を推定する(ステップS206)。
【0118】
《実施の形態4の主要な効果》
以上、実施の形態4のモータシステムを用いることで、モータMTへの印加電圧を高精度に算出できるため、巻線抵抗を正確に推定でき、巻線抵抗の温度依存性(相関情報RTR)から巻線温度を精度よく推定できる。その結果、モータMTの温度管理、過熱保護等が可能になる。
【0119】
(実施の形態5)
《電力変換装置の製造方法》
図19は、本発明の実施の形態5による電力変換装置の製造方法において、処理内容の一例を示す模式図である。例えば、実施の形態1の方式では、相関情報IVTRに基づいてジャンクション温度TJが推定される。この際に、高精度な推定を行うためには、相関情報IVTRが高精度であることが必要とされる。一方、実際のパワートランジスタでは、製造ばらつきに伴い電気的特性にもばらつきが生じ得る。このため、複数のパワートランジスタに対して高精度な相関情報IVTRを共通に定めることは困難となる恐れがある。
【0120】
そこで、
図19に示されるような製造方法を用いることが有益となる。まず、
図19のステップS301の検査工程において、各種検査装置(ウエハテスト装置、パッケージ品テスト装置等)は、パワートランジスタPTRの電気的特性(例えば、端子間電圧Vds−端子間電流Ids特性やオン抵抗の特性)を検査する。そして、各種検査装置(または、その管理端末等)は、検査結果となる電気的特性のデータをパワートランジスタPTRの識別子に対応付けてサーバに格納する。識別子としては、ロット番号、ウエハマップ、追跡番号等が挙げられる。
【0121】
次いで、当該パワートランジスタPTRは、製造メーカから組み立てメーカに出荷される。ステップS302の組み立て工程において、組み立てメーカは、所定の組み立て装置を用いて、電力供給装置に、パワートランジスタPTR、ドライバ装置DRIC、制御装置MCUといった各種部品(例えば、
図1に示される各部品)を実装する。この際に、例えば、パワートランジスタPTRと制御装置MCU(例えば、マイクロコントローラ)の組み合わせは、自由に定められる。
【0122】
続いて、ステップS303の相関情報作成工程において、所定の情報処理端末等は、電力供給装置に実装されるパワートランジスタPTRの電気的特性のデータを、当該パワートランジスタPTRの識別子を検索キーとしてサーバから取得する。そして、不揮発性メモリ書き込み装置は、当該パワートランジスタPTRと同一の電力供給装置に実装される制御装置MCUの相関情報IVTRを、サーバから取得した電気的特性のデータに基づき定める。具体的には、例えば、相関情報IVTRを始めから定める方式であってもよく、または、予め共通化された相関情報IVTRを制御装置MCUに保持しておき、それに対して、取得したデータに基づく各種補正パラメータを加えるような方式であってもよい。
【0123】
なお、例えば、制御装置MCUがマイクロコントローラの場合、相関情報IVTRは、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに書き込まれる。不揮発性メモリ書き込み装置は、不揮発性メモリに対して、このような相関情報IVTRに加えて、各種ユーザプログラム、ユーザデータ等も書き込む。
【0124】
《実施の形態5の主要な効果》
以上、実施の形態5の電力変換装置の製造方法を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果と同様の効果が得られる。さらに、パワートランジスタ毎にカスタマイズされた相関情報IVTRを用いることができるため、パワートランジスタに製造ばらつき等が生じる場合であっても、ジャンクション温度TJを高精度に推定することが可能になる。
【0125】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0126】
《付記》
(1)第1のノード、第2のノードおよび制御入力ノードを備える複数の単位トランジスタが形成され、前記複数の単位トランジスタの配分によって駆動用トランジスタおよびクランプ用トランジスタが設けられる半導体チップと、
前記駆動用トランジスタの前記制御入力ノードに結合される制御入力端子と、
前記駆動用トランジスタの前記第1のノードに結合される第1の端子と、
前記駆動用トランジスタおよび前記クランプ用トランジスタの前記第2のノードに共通に結合される第2の端子と、
前記クランプ用トランジスタの前記制御入力ノードに結合されるクランプ入力端子と、
前記クランプ用トランジスタの前記第1のノードの結合される電圧センス端子と、
を有し、
前記クランプ用トランジスタを構成する前記単位トランジスタの数は、前記駆動用トランジスタを構成する前記単位トランジスタの数よりも少ない、
半導体装置。
(2)前記(1)記載の半導体装置において、
前記半導体チップには、さらに、前記複数の単位トランジスタの配分によって電流センス用トランジスタが設けられ、
前記半導体装置は、さらに、前記電流センス用トランジスタの前記第1のノードに結合される電流センス端子を備え、
前記電流センス用トランジスタの前記制御入力ノードは、前記制御入力端子に結合され、
前記電流センス用トランジスタの前記第2のノードは、前記第2の端子に結合され、
前記電流センス用トランジスタを構成する前記単位トランジスタの数は、前記駆動用トランジスタを構成する前記単位トランジスタの数よりも少ない、
半導体装置。
(3)前記(2)記載の半導体装置において、さらに、
前記駆動用トランジスタの前記第1のノードに結合されるケルビン端子を有する、
半導体装置。
(4)前記(2)記載の半導体装置において、
前記複数の単位トランジスタは、SiC構造のMOSFETである、
半導体装置。
(5)第1のノード、第2のノードおよび制御入力ノードを備える複数の単位トランジスタが形成され、前記複数の単位トランジスタの配分によって駆動用トランジスタ、電流センス用トランジスタおよびクランプ用トランジスタが設けられる半導体チップと、
前記駆動用トランジスタおよび前記電流センス用トランジスタの前記制御入力ノードに結合される制御入力端子と、
前記駆動用トランジスタの前記第1のノードに結合される第1の端子と、
前記駆動用トランジスタ、前記電流センス用トランジスタおよび前記クランプ用トランジスタの前記第2のノードに共通に結合される第2の端子と、
前記電流センス用トランジスタの前記第1のノードに結合される電流センス端子と、
前記クランプ用トランジスタの前記第1のノードの結合される電圧センス端子と、
を有し、
前記電流センス用トランジスタを構成する前記単位トランジスタの数は、前記駆動用トランジスタを構成する前記単位トランジスタの数よりも少なく、
前記クランプ用トランジスタを構成する前記単位トランジスタの数は、前記駆動用トランジスタを構成する前記単位トランジスタの数よりも少ない、
半導体装置。
(6)前記(5)記載の半導体装置において、さらに、
前記クランプ用トランジスタの前記制御入力ノードに結合されるクランプ入力端子を有する、
半導体装置。
(7)前記(5)記載の半導体装置において、
前記クランプ用トランジスタの前記制御入力ノードは、前記制御入力端子に結合される、
半導体装置。
(8)前記(5)記載の半導体装置において、さらに、
前記駆動用トランジスタの前記第1のノードに結合されるケルビン端子を有する、
半導体装置。
(9)第1の負荷駆動端子と、第2の負荷駆動端子との間に結合されるモータと、
高電位側電源電圧と、前記第1の負荷駆動端子との間に設けられるハイサイドトランジスタと、
前記第2の負荷駆動端子と、低電位側電源電圧との間に設けられるロウサイドトランジスタと、
前記モータの電流を検出する電流センサと、
前記ハイサイドトランジスタおよび前記ロウサイドトランジスタのオン・オフをそれぞれ制御し、予め、前記モータの巻線抵抗と、巻線温度との相関情報を保持する制御装置と、
前記ハイサイドトランジスタのオン期間における前記ハイサイドトランジスタの第1の端子と第2の端子の端子間電圧を検出するハイサイド電圧検出回路と、
前記ロウサイドトランジスタのオン期間における前記ロウサイドトランジスタの第1の端子と第2の端子の端子間電圧を検出するロウサイド電圧検出回路と、
を有するモータシステムであって、
前記制御装置は、
前記高電位側電源電圧と前記低電位側電源電圧の電位差と、前記ハイサイド電圧検出回路で検出された前記端子間電圧と、前記ロウサイド電圧検出回路で検出された前記端子間電圧とに基づき前記モータへの印加電圧を算出する第1の処理と、
前記モータへの印加電圧に対して応答する前記モータの電流を前記電流センサを用いて観測する第2の処理と、
前記モータの逆起電圧を算出し、当該逆起電圧と前記モータへの印加電圧とに基づき前記モータの巻線への印加電圧を算出する第3の処理と、
前記モータの巻線への印加電圧と、前記モータの電流の観測結果とに基づき、前記モータの巻線抵抗を算出する第4の処理と、
前記相関情報に基づき前記巻線抵抗から前記巻線温度を推定する第5の処理と、
を実行する、
モータシステム。
(10)前記(9)記載のモータシステムにおいて、
前記制御装置は、前記第3の処理において、前記モータへの印加電圧に対して応答する前記モータの電流の時定数を算出し、当該時定数と前記モータにおける既知の巻線インダクタンスとに基づき前記巻線抵抗を算出する、
モータシステム。
(11)制御入力端子、第1の端子および第2の端子を備え、前記第1の端子および前記第2の端子を介して所定の負荷に電力を供給するパワートランジスタと、
前記パワートランジスタとは別の部品で構成され、温度推定部を含み、前記パワートランジスタのオン・オフを制御する制御装置と、
前記パワートランジスタのオン期間における前記第1の端子と前記第2の端子の端子間電圧を検出する電圧検出回路と、
を有する電力変換装置の製造方法であって、
前記温度推定部は、予め、前記第1の端子と前記第2の端子の端子間電圧および端子間電流と、ジャンクション温度との相関情報を保持し、前記電圧検出回路から取得した前記端子間電圧と、既知の端子間電流と、前記相関情報とに基づきジャンクション温度を推定し、
前記製造方法は、
前記パワートランジスタの電気的特性を検査し、検査結果となる電気的特性のデータを前記パワートランジスタの識別子に対応付けてサーバに格納する検査工程と、
電力供給装置に、前記パワートランジスタと、前記制御装置と、前記電圧検出回路とを実装する組み立て工程と、
前記電力供給装置に実装される前記パワートランジスタの電気的特性のデータを、前記パワートランジスタの識別子を検索キーとして前記サーバから取得し、前記パワートランジスタと同一の電力供給装置に実装される前記制御装置の前記相関情報を、前記取得した電気的特性のデータに基づき定める相関情報作成工程と、
を有する、
電力変換装置の製造方法。
(12)前記(11)記載の電力変換装置の製造方法において、
前記制御装置は、不揮発性メモリを搭載したマイクロコントローラであり、前記相関情報を前記不揮発性メモリに保持する、
電力変換装置の製造方法。