(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合する処理は、前記第1混合物を形成するために、導電性炭素付加物と前記アノード活性材料及び前記混合バインダ材の少なくとも1つの成分とを混合することをさらに含む、請求項16に記載の作製方法。
前記多孔性炭素材料は活性炭素を含み、前記少なくとも1つの成分はPVDFを含み、前記混合する処理は、前記活性炭素とPVDFとを1:1から1:5の質量比で混合すること含む、請求項23に記載の作製方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
特定の実施形態と例が以下に示されるが、当業者は、本発明が、ここに具体的に開示される実施形態及び/又は使用、明らかな改良、及びそれらと均等のもの、を超えて拡張されるものであることを理解するだろう。したがって、ここに開示される本発明の範囲は以下のどのような実施形態によっても限定されるものではない。
【0029】
ここに記載されるように、乾式電極工程は、湿式の工程で必要とされ時間とコストのかかる乾燥のための手順を少なくするために開発されてきた。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダ材を利用し、他のバインダ材を用いずに、活性炭素材料と混合され、カレンダ処理をして電極フィルムを形成するという方法を改良する乾式電極工程もまた開発されてきた。例えば、酸化還元の過程でPTFEの電気化学的な不安定性と劣化がPTFEバインダ材から形成される電極容量の不可逆的な損失を引き起こすかもしれない。この容量の不可逆的な損失は最終的にエネルギー貯蔵装置のエネルギー密度を減少させ、その電極の耐久性とサイクル寿命を低下させ得る。PTFEの不安定性及びそのような容量の損失は、より低い作動電圧のもとで悪化する可能性がある。例えば、より低い作動電位におけるPTFEバインダ材の不安定性はリチウムイオンバッテリー及び/又はリチウムイオンキャパシタのエネルギー密度を著しく減少させる。
【0030】
PTFEのようなより低いイオン伝導性を有するバインダ材を混合して形成された電極は、電極層におけるバインダ材やその他の物質中にある空孔をイオンが移動する。しかし、そのようなバインダ材はまた、その力学的性質とフィルムに用いられる他の物質との相互作用により、圧縮されて本質的に孔隙率が低くなった電極フィルムを形成する。例えば、PTFEバインダは乾式工程で活性材料と混合され圧縮されたときに、例えば湿式のPVDFスラリー工程で形成される電極フィルムと比較して孔隙率のより低い、乾燥し高密度化した電極フィルムを形成する可能性がある。そのような高密度化したフィルムから形成された電極は、PTFEの低いイオン伝導性とフィルムそれ自体の低い孔隙率との両方が原因となって、電力性能が低くなる可能性がある。そのように、活性材料サイトへのイオン輸送は逆に妨げられることもあり得る。例えば、他のバインダを用いずにPTFEを用いる乾式電極工程のように、他のバインダを用いずにPTFEから形成された電極では、上記の電極のバインダ材としてのPTFEの弱点はさらに増大する可能性がある。
【0031】
ここに開示された実施形態は、例えば乾式電極工程において電極のバインダ材としてPTFEを単体で用いる方法に内在している、上記の劣化の欠点と不可逆的な電気容量の損失とを抑えることができるような、電極フィルムに用いる代わりのバインダ材を含む。いくつかの実施形態は、低電圧で電気化学的な操作をしても、著しい付加的なエネルギー損失が抑えられるか又は実質的に全く無いような電極のバインダ材を提供する。いくつかの実施形態においては、上記のPTFEの弱点を緩和するためにPTFEとその他のバインダ材との両方を含むPTFE混合バインダ材が提供される。いくつかの実施形態においては、いくつかの又は全ての上記PTFEの代わりに、例えばポリオレフィンを用いることができる。実施形態は機械的完全性とイオン伝導性とが改良された電極フィルムを提供できる。いくつかの実施形態は乾式電極フィルム工程で利用され、PVDF湿式スラリー被覆法で通常得られるものと同等の電気化学的性能を獲得する一方で、上記の湿式の電極フィルム工程における電極フィルムの乾燥に伴うコスト増を避ける。いくつかの実施形態においては、ここに記載するバインダ材を含むカソード及び/又は電極フィルムを形成するための作製工程が提供される。いくつかの実施形態においては、望ましい電気的性能を示す電極の形成を促進するために、作製工程の全体又は一部は室温又はそれ以上の温度で実施できる。いくつかの実施形態においては、ここに記載するバインダ組成を含むカソード電極フィルムを形成するための作製工程が提供される。いくつかの実施形態においては、カソード電極フィルム作製工程は、乾式工程を利用して欠点の少ない、又は欠点がほぼ無い電極フィルムの形成を促進するために、ジェットミルで処理する工程を含む。
【0032】
混合バインダ材と電極を形成する工程を開発する際、他の機械的又は電気的な性質を考慮してもよい。例えば、改良された機械的完全性及び/又はイオン伝導性が得られるように、バインダ材の延性及び/又は多孔性を選択してもよい。いくつかの実施形態においては、電解液などの装置の一つ以上の構成物の望ましい相互作用を示し、及び/又はバインダ材としての望ましい有効性を与える一方で、望ましい電気的な性質を有する電極フィルムを結果として与えるようにバインダ材を選択してもよい。
【0033】
ここに記載する電極とエネルギー貯蔵装置は、リチウムイオンバッテリーか又はリチウムイオンキャパシタの関係で記述できるが、その実施形態は、一つ以上のバッテリー、キャパシタ、燃料電池及びそれと同類のもの、並びにそれらを組み合わせなど、どのような多くのエネルギー貯蔵装置及びそれらを統合した装置にも実装することができる、ということが理解されるだろう。
【0034】
バインダの量の電極フィルムの総重量に対する割合をここに記載するのは、説明のみを目的としたものである。いくつかの実施形態においては、好ましいバインダの濃度範囲は、フィルムの総重量に対する割合として概ね1%から20%である。さらに好ましい濃度範囲はフィルムの総重量に対する割合で概ね4%から10%である。ここで用いられる限りにおいては、電極フィルム及び/又は電極フィルム混合物の組成量を、互いに相対的に%で表したときは、特に他の記載をしない場合は、重量%と定義する。ここで用いられる限りにおいては、電極フィルム及び/又は電極フィルム混合物の組成物の比は、互いに相対的な比として表したとき、特に他の記載をしない場合は、質量比と定義する。
【0035】
ここに記載され、例として用いられる物質の厳密な比や物質の混合物は説明の目的として用いられるものであり、その他の比や混合物も本発明の範囲に含まれることを理解されたい。
【0036】
図1はエネルギー貯蔵装置100の一例の側方の概略断面図を示す。いくつかの実施形態においては、エネルギー貯蔵装置100は電気化学的な装置である。いくつかの実施形態においては、エネルギー貯蔵装置100は、リチウムイオンバッテリーなどのリチウムをベースとしたバッテリーであってもよい。いくつかの実施形態においては、エネルギー貯蔵装置100は、リチウムイオンキャパシタなどのリチウムをベースとしたキャパシタであってもよい。もちろん、他のエネルギー貯蔵装置も本発明の範囲に含まれ、キャパシタとバッテリーとのハイブリッド、及び/又は燃料電池も含むことができる。上記のエネルギー貯蔵装置100には、第1電極102、第2電極104、及び第1電極102と第2電極104との間に位置するセパレータ106が設けられていてもよい。例えば、第1電極102及び第2電極104はセパレータ106のそれぞれ反対の表面に位置するように配設されてもよい。
【0037】
第1電極102がカソードを備え、第2電極104がアノードを備えていてもよく、又はそれぞれが逆になるように備えていてもよい。いくつかの実施形態においては、第1電極102はリチウムイオンキャパシタのカソードを備えていてもよい。いくつかの実施形態においては、第1電極102はリチウムイオンキャパシタのカソード又はリチウムイオンバッテリーのカソードを備えていてもよい。いくつかの実施形態においては、第2電極104はリチウムイオンバッテリーのアノード又はリチウムイオンキャパシタのアノードを備えていてもよい。
【0038】
エネルギー貯蔵装置100は、エネルギー貯蔵装置100に備えられた電極102と104との間のイオン伝達を促進するように電解液を備えていてもよい。例えば、電解液は第1電極102、第2電極104、及びセパレータ106と接していてもよい。上記の電解液、第1電極102、第2電極104、及びセパレータ106はエネルギー貯蔵装置のハウジング120の中に入っていてもよい。例えば、第1電極102、第2電極104、セパレータ106、及び電解液が物理的にハウジング120の外部環境から密閉されるように、第1電極102、第2電極104、及びセパレータ106を投入し、電解質でエネルギー貯蔵装置100を満たした後に、エネルギー貯蔵装置のハウジング120を密封してもよい。
【0039】
セパレータ106は、例えば第1電極102及び第2電極104のように、セパレータ106の互いに反対側に配置された二つの電極を電気的に絶縁し、同時に二つの電極の間でイオン伝達がなされるように構成することができる。セパレータ106は種々の多孔性の電気的絶縁性物質により構成することができる。いくつかの実施形態においては、セパレータ106は高分子材料により構成することができる。セパレータの例には多孔性のポリオレフィンフィルム、多孔性のセルロースフィルム、ポリエーテルフィルム、及び/又はポリウレタンフィルムが含まれる。
【0040】
エネルギー貯蔵装置100は多くの異なる種類の電解液を含むことができる。いくつかの実施形態においては、装置100はリチウムイオンバッテリー電解液を含むことができる。いくつかの実施形態においては、装置100はリチウムイオンキャパシタ電解液を含むことができる。それは、リチウム塩などのリチウム源、及び有機溶媒などの溶媒を含むことができる。いくつかの実施形態においては、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、テトラフルオロホウ素リチウム(LiBF
4)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ビス(トリウフオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO
2CF
3)
2)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO
3CF
3)、それらの組み合わせ、及び/又はそれらと同類のものを含むことができる。いくつかの実施形態においては、リチウムイオンキャパシタ及び/又はバッテリーの電解質溶媒は一つ以上のエーテル及び/又はエステルを含むことができる。例えば、リチウムイオンキャパシタの電解質溶媒はエチレンカルボナート(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ビニル(VC)、炭酸プロピレン(PC)、それらの組み合わせ、及び/又はそれと同類のもの、を含むことができる。
【0041】
図1に示されているように、第1電極102と第2電極104とは、それぞれ第1集電体108と第2集電体110とを含む。第1集電体108及び第2集電体110は、対応する電極と外部回路(図示されていない)との間の電気的接続を容易にすることができる。第1集電体108及び/又は第2集電体110は、一つ以上の導電性物質により構成することができ、また、対応する電極と、外部電気回路の外部端子とエネルギー貯蔵装置100とを接続するための端子との間の電荷の移動を促進するための様々な形状及び/又はサイズであってもよい。例えば、集電体はアルミニウム、ニッケル、銅、銀、それらの合金、及び/又はそれと同類のものなどの、金属物質を含むことができる。例えば、第1集電体108及び/又は第2集電体110は矩形又は実質的に矩形のアルミ箔を含んでいてもよく、対応する電極と外部電気回路との間の望ましい電荷移動が、(例えば、集電体プレート、及び/又は電極と外部電気回路との間を電気的に接続するように配設された他のエネルギー貯蔵装置の構成要素、を通して)生じるように構成されていてもよい。
【0042】
第1電極102は第1電極フィルム112(例えば、上方の電極フィルム)を第1集電体108の第1表面(例えば、第1集電体108の上側の表面)に有していてもよく、第2電極フィルム114(例えば、下方の電極フィルム)を第1集電体108の反対側の第2表面(例えば、第1集電体108の下側の表面)に有していてもよい。同様に、第2電極104は第1電極フィルム116(例えば、上方の電極フィルム)を第2集電体110の第1表面(例えば、第2集電体110の上側の表面)に有していてもよく、第2電極フィルム118を第2集電体110の反対側の第2表面(例えば、第2集電体110の下側の表面)に有していてもよい。例えば、セパレータ106が第2電極104の第1電極フィルム116と第1電極102の第2電極フィルム114に隣接するように、第2集電体110の第1表面は第1集電体108の第2表面を向くようにしてもよい。電極フィルム112,114,116,及び/又は118は、様々な適切な形状、大きさ、及び/又は厚みを有していてもよい。例えば、電極フィルムの厚みは、約80μmから約150μmを含み、約60μmから約1,000μmであってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態においては、ここに記載する一つ以上の電極フィルムは乾式作製工程で作製されてもよい。ここで用いられる限りにおいては、乾式作製工程は電極フィルムを形成する際に、溶媒が全く用いられないか又は実質的には用いられないような過程を意味するものとして用いられる。例えば、電極フィルムの構成要素として乾燥粒子を含むことができる。電極フィルムを形成するための乾燥粒子は、混合により乾燥粒子電極フィルム混合物となることができる。いくつかの実施形態においては、電極フィルムの構成要素の重量%と乾燥粒子電極フィルム混合物の構成要素の重量%がほぼ同じ又は等しくなるように、乾式作製過程を経て乾燥粒子電極フィルム混合物から電極フィルムを形成することができる。電極を作製するための乾式方法は、活性材料、導電性添加物、及び/又はバインダ材の混合、及びそれに続く独立したフィルム形成のための混合物のカレンダ処理、を含むことができる。いくつかの実施形態においては、独立したフィルムはラミネート処理を通して行うように集電体に付着させることができる。
【0044】
ここに記載するように、いくつかの実施形態は、電気化学的に安定したバインダ材を含む一つ以上の電極フィルムを有する、アノード及び/又はカソードなどの電極を含む。いくつかの実施形態においては、バインダ材は一つ以上のポリオレフィンを含むことができる。いくつかの実施形態においては、一つ以上のポリオレフィンはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、それらの共重合体、及び/又はそれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態においては、一つ以上のポリオレフィンを含むバインダ材を有する電極フィルムは乾式工程により作製できる。例えば、電極フィルムは上記のポリマーが互いに貫通して形成するネットワークを含むことができる。
【0045】
いくつかの実施形態においては、ポリオレフィンを含むバインダはそれ以外のバインダを用いることなく単独で使用できる。例えば、バインダはポリオレフィンバインダであってもよい。ここで用いられる限りにおいては、ポリオレフィンバインダとは一つ以上のポリオレフィン及び/又はそれらの共重合体からなるバインダを意味するものとして用いられる。例えば、一つ以上のポリオレフィン及び/又はそれらの共重合体が、PTFEの代わりに用いられてもよい。いくつかの実施形態においては、バインダ材はPEからなるか、又は実質的にPEからなるものであってもよい。いくつかの実施形態においては、バインダ材はPPからなるか、又は実質的にPPからなるものであってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態においては、バインダはPTFEを含み、一つ以上のそれ以外の構成成分を含むことができる。例えば、バインダはPTFE混合バインダ材を含むことができる。いくつかの実施形態は、電気化学的に安定なPTFE混合バインダ材を含んだアノード及び/又はカソードを有する電極を含む。いくつかの実施形態においては、PTFE混合バインダ材は一つ以上のポリオレフィン及び/又はそれらの共重合体、及びPTFEを含むことができる。いくつかの実施形態においては、バインダ材はPTFE、一つ以上のポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエーテル前駆体、ポリシロキサン、それらの共重合体、及び/又はそれらと同類のものを含めた、PTFE混合物質を含むことができる。いくつかの実施形態においては、PTFE混合バインダ材は枝分かれしたポリエーテル、ポリビニルエーテル、それらの共重合体、及び/又はそれと同類のもの、を含むことができる。いくつかの実施形態においては、PTFE混合バインダ材はポリシロキサン共重合体やポリシロキサン、及び/又はポリエーテル前駆体の共重合体を含むことができる。例えば、PTFE混合物はポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレン−ブロック−ポリエチレングリコール、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン−コアルキルメチルシロキサン、それらの組み合わせ、及び/またはそれらと同類のものを含むことができる。いくつかの実施形態においては、PTFE混合バインダ材はPVDF及び/又はPEOを含むことができる。
【0047】
いくつかの実施形態においては、リチウムイオンキャパシタ及び/又はリチウムイオンバッテリーのカソードの電極フィルムは多孔性の炭素材料、活性材料、導電性付加物、及び/又はバインダ材を含むことができ、バインダ材はここに記載のPTFE混合バインダ材などの一つ以上の混合物を含む。いくつかの実施形態においては、上記の導電性添加物は、カーボンブラックなどの導電性の炭素添加物を含むことができる。いくつかの実施形態においては、多孔性の炭素材料は活性炭素を含む。いくつかの実施形態においては、リチウムイオンバッテリーのカソードの活性材料はリチウム金属酸化物及び/又は硫化リチウムを含むことができる。いくつかの実施形態においては、リチウムイオンバッテリーカソードの活性材料はリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムリン酸鉄(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、及び/又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)を含むことができる。いくつかの実施形態においては、リチウムイオンキャパシタカソードの活性材料はリチウム金属酸化物及び/又はリチウム金属リン酸化物を含むことができる。
【0048】
いくつかの実施形態においては、リチウムイオンキャパシタのカソード電極フィルム及び/又はリチウムイオンバッテリーのアノードは、約70重量%から約95重量%の活性材料を含むことができ、これには約70重量%から約92重量%までが含まれ、又は約70重量%から約88重量%までが含まれる。いくつかの実施形態においては、カソード電極フィルムは最大で約10重量%までの多孔性炭素材料を含むことができ、これには最大約5重量%までが含まれ、又は約1重量%から約5重量%までが含まれる。いくつかの実施形態においては、カソード電極フィルムは最大約5重量%までの導電性付加物を含むことができ、これには約1重量%から約3重量%までが含まれる。いくつかの実施形態においては、カソード電極フィルムは最大約20重量%までのバインダ材を含むことができ、これには約1重量%から20重量%まで、約2重量%から10重量%まで、又は約5重量%から10重量%までが含まれる。
【0049】
いくつかの実施形態においては、リチウムイオンバッテリー及び/又はリチウムイオンキャパシタのアノード電極フィルムは活性材料、導電性添加物、及び/又はバインダ材を含むことができる。バインダ材はここに記載する1つ以上の成分を含む。いくつかの実施形態においては、導電性添加物はカーボンブラックなどの導電性炭素付加物を含むことができる。いくつかの実施形態においては、アノードの活性材料は人工のグラファイト、天然のグラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラフェン、メソポーラスカーボン、ケイ素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、上記の物質の混合物又は組成物、及び/又は他の知られているか或いはここに記載の物質を含む。いくつかの実施形態においては、リチウムイオンキャパシタ及び/又はリチウムイオンバッテリーのアノード電極フィルムは約80重量%から約94重量%の活性材料を含むことができ、これには約80重量%から約92重量%、又は約80重量%から約90重量%が含まれる。いくつかの実施形態においては、アノード電極フィルムは最大約5重量%までの導電性付加物を含むことができ、これには約1重量%から約3重量%までが含まれる。いくつかの実施形態においては、アノード電極フィルムはここに記載の成分を有するバインダ材を最大約20重量%まで含むことができ、これには約1重量%から20重量%まで、約2重量%から10重量%まで、又は約5重量%から10重量%までが含まれる。いくつかの実施形態においては、アノードフィルムは導電性添加物を含んでいなくてもよい。
【0050】
PTFE混合バインダ材は、様々な適切な配合比の成分を有する混合バインダ材を含むことができる。例えば、PTFE混合バインダ材のPTFEは最大約98重量%まで含まれていてよく、これには約20重量%から約95重量%まで、約20重量%から約90重量%まで、約20重量%から約80重量%まで、約30重量%から約70重量%まで、又は約30重量%から約50重量%までが含まれる。いくつかの実施形態においては、アノード電極フィルムのPTFE混合バインダ材はPTFEと一つ以上の非PTFE成分とを、両者の質量比が約1:3から約3:1となるように含むことができる。例えば、アノード電極フィルムのPTFE混合バインダ材はPTFEとPVDFとを質量比約1:1で含むことができる。例えば、アノード電極フィルムのPTFE混合バインダ材はPTFEとPVDF共重合体を質量比約1:1で含むことができる。例えば、アノード電極フィルムのPTFE混合バインダ材はPTFEとPEOとを質量比約1:1で含むことができる。いくつかの実施形態においては、カソード電極フィルムのPTFE混合バインダ材はPTFEと1つ以上の非PTFE成分とを質量比約1:5から約5:1で含むことができる。いくつかの実施形態においては、カソード電極フィルムのPTFE混合バインダ材はPTFEとPVDF、又はPTFEとPVDF共重合体とを質量比約3:2で含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態においては、ポリオレフィン混合のバインダは、例えばPTFEで構成され又は実質的にPTFEで構成されるバインダなどの、PTFEバインダについての前述の1つ以上の問題を軽減することができる。例えば、以下により詳細に記載するように、電極フィルムに用いられるポリオレフィン混合のバインダ材は、PTFEバインダのみを有する同様のフィルムと比較して、不可逆な容量損失が抑えられる。さらに、ポリオレフィン混合のバインダ材はその機械的及び熱的な性質によって、PTFEのみからなるバインダ材と比較して圧縮しやすい。例えば、PTFEバインダ材と活性材料とを他のバインダ材なしで乾式電極工程において圧縮するには、与えられた温度と圧力で約80μmから約130μmの範囲の目標とするフィルム厚みに達するまで、カレンダロールに10回通す必要があることがわかった。完全に又は実質的にPEバインダとPVDFバインダとからなるバインダと、上記と同様の活性材料とを圧縮するには、同様の条件下で、同等の目標とするフィルム厚みに達するために、同様のカレンダロールに3回通せばよい。
【0052】
いくつかの実施形態においては、ここに記載するように、PTFEの代わりにPEなどのポリオレフィンを、例えばポリオレフィンバインダにおいては用いることができる。どのような特定の理論や実施の形態によっても限定されることなく、低電圧におけるPTFEの不安定性は、その分子軌道の低いエネルギーレベルによるものかもしれない。上記のPTFEの最低非占有軌道(LUMO)は、例えばポリオレフィンバインダにおける、PVDF又はPEのそれよりも低い。PTFEのLUMOのエネルギーレベルは、例えばポリマーの炭素主鎖を完全にフッ素化させたことにより、PTFE混合バインダ材の非PTFEバインダのそれと比較してもまた低いこともありうる。低い作動電位では、電荷がPTFEのLUMOへより移動しやすく、それによって脱フッ素化の過程を経て最終的にフッ化リチウムとポリエンの化学種を生成する可能性もある。バインダ材のPTFEを部分的に或いは全てにおいてより高いエネルギーのLUMOを有するもの、例えばPE、に代えるか、又は他の非PTFEバインダを加えるか、によって、その結果生成されるバインダは電荷移動過程の影響をより受けにくくなることもありうる。結果として、ここに示される1つ以上の例が示すように、バインダの電気化学的な過程への関与によって容量が損失するということはほとんど起こらなくなることが考えられる。電極の残る少ない不可逆的な容量損失は、第1リチウム化サイクルの電極被膜の生成によるであることが考えられる。
【0053】
ここに記載する限りにおいては、いくつかの実施形態においては、バインダ材はPTFE混合物質を含むことができる。例えば、バインダ材はPTFE、PEO、PVDF、及び/又はPVDF共重合体を含むことができる。どのような特定の理論や実施形態によっても制限されることなく、PEO、PVDF、及び/又はPVDF共重合体は、PTFEと電極の1つ以上の導電性物質との間の直接的な接触を抑制することができ、それは例えば、PTFEと導電性物質との間の電気的な障壁をもたらす。PEO、PVDF、及び/又はPVDF共重合体は望ましい低温の流れの特性を示し、PEO、PVDF、及び/又はPVDF共重合体による、電子伝導体のコーティングを促進する。電子伝導体のコーティングは、PTFEへの電荷移動を大きく抑制でき及び/又は完全に若しくは実質的に妨げることができる。いくつかの実施形態においては、PEO、PVDF、及び/又はPVDF共重合体は電気化学的装置の電解液の有機溶媒において可溶及び/又は膨潤するものであってもよい。そのような可溶性及び/又は膨潤性はPTFEと電子伝導体の間におけるPEO、PVDF、及び/又はPVDF共重合体の移動を促進することができ、PTFEへの電荷移動を大きく抑制し及び/又は完全に若しくは十分に妨げる。いくつかの実施形態においては、PEO、PVDF、及び/又はPVDF共重合体を電極のバインダに含めることは、グラファイトのような活性物質からPTFEへの電子移動を著しく抑制し、及び/又は完全に妨げるか又は実質的に妨げることができる。いくつかの実施形態においては、リチウムイオンバッテリー及び/又はリチウムイオンキャパシタなどの電気化学的装置のインターカレーションや脱インターカレーションの過程が維持される一方で、そのような電荷移動は抑えられ又は妨げられる。例えば、PEO、PVDF、及び/又はPVDF共重合体は、望ましいリチウムイオンの導電性をもたらすことができる。いくつかの実施形態においては、PTFE混合物を含むバインダ材を用いることは、装置が作動している間のエネルギー損失の抑制を促進し、同時に電極でPTFEを使用することを可能にする。
【0054】
ここに記載するいくつかの実施形態は、高空孔率のPTFEから又は湿式のPE/PVDFスラリー工程から生成した電極と同等の電力効率を示しながらも、活性材料と混合でき且つ低空孔率の電極フィルムに圧縮することができるイオン伝導率の高いバインダを提供する。例えば、いくつかの実施形態は電気化学的に安定なバインダ材か、又は直鎖状のポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、枝分かれしたポリエーテル、ウレタン、エーテル、アミド、及びカーボネートのうち少なくとも2つのモノマーの組み合わせを含む共重合体、ウレタン、エーテル、アミド、及びカーボネートのうち2つの組み合わせを含むブロック共重合体、そしてエーテルやポリエーテルを上記のポリマー、共重合体、及びブロック共重合体上に移植したもの有する電極を含む。例えば、商品名ペバックス(登録商標)でアルケマの商品であるポリエーテルブロックアミド材などがある。ほかの例は、末端の水酸基をアルキル化、例えばメチル化、することにより、エーテル末端となっているペバックス(登録商標)ポリマーなどがある。さらにほかの例は、ポリウレタンエラストマーであり、例えばルブリゾルにより商品名Pellethane(登録商標)で売り出されているものや、ポリウレタン−ポリエーテルブロック共重合体などがある。これらの他のバインダ材やバインダ混合物はPTFE又は既知の若しくはここに記載の他のバインダ及び付加物と混合してもよいし、又はバインダ材や付加物をさらに加えることなく用いてもよい。これらの代替のバインダ材もまた、前述した電極バインダとしてPTFEを用いたとき生じる容量の損失と劣化の問題を抑制することができる。いくつかの実施形態は機械的性質の完全性とイオン伝導性とが改善された電極フィルムを提供することができる。
【0055】
図2は、例えば
図1のエネルギー貯蔵装置100などの、エネルギー貯蔵装置のアノードの電極フィルムを作製するための工程200の一例を示す。電極フィルム作製工程200は乾式の作製工程を含むことができる。いくつかの実施形態においては、電極フィルム作製工程200はリチウムイオンバッテリーのアノードを作製するために利用することができる。いくつかの実施形態においては、電極フィルム作製工程200はリチウムイオンキャパシタのアノードを作製するために用いることができる。いくつかの実施形態においては、電極フィルム作製工程200はここに記載する1つ以上の成分を有するPTFE結合バインダ材を含むアノード電極フィルムを形成するために利用することができる。例えば、電極フィルム作製工程200によって、93重量%のグラファイト、3.5重量%のPVDF、及び3.5重量%のPTFEを有するアノード電極フィルムを作製することができる。いくつかの実施形態においては、電極フィルム作製工程200を利用して、単一のバインダ成分のみ有するバインダを含むアノード電極フィルムを形成することができる。
【0056】
ブロック202では、第1バインダ成分とアノード活性材料とが混合され第1アノード電極フィルム混合物が形成される。例えば、第1バインダ成分とアノード活性材料とは、バインダ成分とアノード活性物質とが相互に混ざり合うように混合することができる。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分とアノード活性材料とは、第1バインダ成分がアノード活性材料中に分散するように混合することができる。いくつかの実施形態においては、第1アノード電極フィルム混合物は、第1バインダ成分とアノード活性材料とを低せん断工程により混合して生成できる。例えば、低せん断工程は、ブレードを有するブレンダーを用いた、ブレンディングの処理を含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、低せん断混合工程はWaring(登録商標)ブレンダーを用いてなされる。いくつかの実施形態においては、低せん断混合工程はCyclomix
TMブレンダーを用いてなされる。例えば、第1バインダ成分とアノード活性材料とはブレンドされ第1アノード電極フィルム混合物を生成できる。
【0057】
いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分はフィブリル化できないバインダ材を含むことができる。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分は、半結晶熱可塑性物質など、熱可塑性物質を含むことができる。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分は可溶の接着剤を含むことができる。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分はポリオレフィンを含むことができる。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分はPVDFであってもよい。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分はPEであってもよい。いくつかの実施形態においては、アノード活性材料はリチウムイオンがインターカレートされた炭素成分を含むことができる。例えば、アノード活性材料はグラファイトを含むことができる。例えば、PVDFとグラファイトはブレンドされ第1アノード電極フィルム混合物を生成することができる。いくつかの実施形態においては、商用の製品から入手可能なPVDF粉末などの、ブレンドされていない最初のPVDF粉末は、二次粒子を有していることがある。二次粒子とはサイズがより小さい主粒子の凝集体を含む粒子である。例えば、二次粒子はサイズのオーダーがより小さいたくさんの主粒子の凝集体を含むことができる。低せん断工程を利用してPVDFをアノード活性材料と混合することにより、サイズの縮小及び/又は第二粒子の分裂が始まり、それによってPVDFのグラファイト中への分散が促進される。
【0058】
いくつかの実施形態においては、第一バインダ成分とアノード活性材料は室温(例えば、約20℃から約25℃)又はそれ以上の温度で混合することができる。例えば、第一バインダ成分とアノード活性材料とを混合する間、冷却はすることができない。いくつかの実施形態においては、第一バインダ成分とアノード活性材料とは略室温からバインダ成分の融点直下までの温度で混合することができる。例えば、混合は約20℃から約75℃、約20℃から約50℃、又は約25℃から約50℃で行うことができる。ここに記述する限りにおいて、第1バインダ成分はPVDFを含むことができる。例えば、PVDFは約140℃から約170℃の融点を有することができる。いくつかの実施形態においては、PVDFとグラファイト等アノード活性材料は、約20℃から140℃までの温度で混合でき、これには約20℃から140℃、約20℃から75℃、約25℃から約75℃、又は約20℃から約50℃が含まれる。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分とアノード活性材料とを室温付近から第1バインダ成分の融点直下までの温度で混合することで、結果として得られる電極の第1サイクルにおける容量損失を、例えば室温より低いような低温で混合が行われた工程により形成した電極と比較して、改善することができる。
【0059】
いくつかの実施形態においては、第1アノード電極フィルム混合物は導電性付加物を含むことができる。例えば、導電性の炭素付加物などの、導電性付加物は、第1バインダ成分及びアノード活性材料と混合してアノード電極フィルム混合物を生成することができる。いくつかの実施形態においては、上記のPVDF、グラファイト、及びカーボンブラックはブレンドされ第1アノード電極フィルム混合物を生成することができる。いくつかの実施形態においては、上記のPVDF、グラファイト、及びカーボンブラックは、約20℃から約50℃を含み、約20℃から約75℃の温度でブレンディングなどにより混合され、第1アノード電極フィルム混合物を生成することができる。
【0060】
ここに記述する限りにおいて、バインダは1つ以上の成分を含むことができる。例えば、アノード電極フィルム作製工程200を利用して混合バインダ材を生成することができる。そのような実施形態においては、第2バインダ成分を第1アノード電極フィルム混合物に加えて(混合して)、ブロック204の第2アノード電極フィルム混合物を生成することができる。いくつかの実施形態においては、第2バインダ成分はフィブリル化可能なバインダ成分を含むことができる。いくつかの実施形態においては、フィブリル化可能な第2バインダ成分はPTFEを含むことができ、それは例えばPTFE混合バインダ材を含むアノード電極フィルムのバインダなどである。そのような実施形態においてはブロック202は、活性材料をPTFE混合バインダ材の少なくとも1つの成分と混合することを含むことができる。PTFEがのちにそれと混合されてPTFEバインダ材を形成する。いくつかの実施形態においては、PTFEなどの第2バインダ成分は、低せん断混合工程などの低せん断工程により第1アノード電極フィルム混合物と混合される。いくつかの実施形態においては、第2バインダ材と第1アノード電極フィルム混合物の混合は、パドルタイプブレンダーなどのブレンダーを用いて行われる。いくつかの実施形態においては、低せん断工程はWaring(登録商標)ブレンダーを用いて行われる。いくつかの実施形態においては、低せん断工程はCyclomix
TMブレンダーを用いて行われる。
【0061】
いくつかの実施形態においては、第2バインダ成分を第1アノード電極フィルム混合物に加えることは、第2バインダ成分を少なくとも部分的にフィブリル化することを含むことができる。例えば、第2バインダ成分と第1アノード電極フィルム混合物はブレンディングにより混合でき、そのフィブリル化された第2バインダ成分から形成されるたくさんの微小繊維を含む混合物を与えることができる。第2バインダ成分のフィブリル化によりマトリックス、結晶、及び/又は網状の微小繊維が形成され、混合物の1つ以上の成分の望ましい構造的な支えを提供することができる。
【0062】
いくつかの実施形態においては、冷却しない周囲環境で第2バインダ成分を第1アノード電極フィルム混合物と混合することができる。例えば、第2バインダ成分と第1アノード電極フィルム混合物のブレンディングは概ね室温か又はそれ以上の温度でなされる。例えば、約20℃から約75℃、又は約20℃から約50℃の温度である。例えば、PTFEは、グラファイト、PVDF、及び/又はカーボンブラックとを含む第1アノード電極フィルム混合物と約20℃から約75℃の温度でブレンドすることができる。いくつかの実施形態においては、第2バインダ成分と第1アノード電極フィルム混合物を室温前後かそれ以上の温度で混合することは、その結果得られる電極の不可逆的な第1サイクルの容量損失は、例えばより低温で混合を行って形成される電極と比較して、改良される。
【0063】
ブロック206において、第2アノード電極フィルム混合物は高せん断工程で処理することができる。いくつかの実施形態においては、高せん断工程は、その工程中望ましくない高温の発生を抑制し又は回避させながら、第1バインダ成分をさらに分散させるような構成にすることができる。例えば、高せん断工程は、第1バインダ成分中にある二次粒子凝集体を抑制し及び/又はそれらを分離させ及び/又は第1バインダ成分を分散させるような構成にすることができる。例えば、過度な熱の発生は、結果として第1バインダ成分の望ましくない溶解になる。
【0064】
いくつかの実施形態においては、高せん断工程は第2バインダ成分をフィブリル化することができる。例えば、高せん断工程によりPTFEをフィブリル化することができる。ここに記載する限りにおいて、微小繊維のマトリックス、結晶、及び/又は網状構造は、第2バインダ成分のフィブリル化によって形成することができる。いくつかの実施形態においては、第2バインダ成分と第1アノード電極フィルム混合物との混合(例えば、ブロック204)において、第2バインダ成分を少なくとも部分的にフィブリル化し、高せん断工程によって第2バインダ成分をさらにフィブリル化することができる。
【0065】
いくつかの実施形態においては、高せん断工程はジェットミルを用いた工程をその一部とすることができる。例えば、上記のジェットミルを用いた工程は、高熱の発生を抑制し及び/又は回避させつつ、第1バインダ成分の粒子と、アノード活性材料の粒子と、及び/又は第2バインダ成分との間の望ましい相互作用をもたらす(例えば、バインダ成分とアノード活性材料との粒子間の望ましい接触をもたらす)。いくつかの実施形態においては、第2アノード電極フィルム混合物はジェットミルを用いた工程で処理され、たくさんの微小繊維を有する一様な又は実質的に一様な混合物を生成する。例えば、上記のジェットミルを用いた工程では第1バインダ成分の二次粒子を分散させ、及び/又は第2バインダ成分の望ましいフィブリル化をもたらす。
【0066】
ブロック208においては、第2アノード電極フィルム混合物は、圧縮されアノード電極フィルムを形成する。いくつかの実施形態においては、第2電極フィルム混合物はカレンダ処理によって圧縮され、電極フィルムを形成することができる。いくつかの実施形態においては、第2アノード電極フィルム混合物はカレンダ処理され、独立した乾燥粒子電極フィルムを形成することができる。いくつかの実施形態においては、電極フィルムは、ラミネート加工工程などを通じて、対応する集電体に貼り付け、電極を形成することができる。例えば、電極フィルムは
図1における第1集電体108か又は第2集電体110に対してラミネート加工することができる。いくつかの実施形態においては、PVDFなどの可溶バインダ成分を融解させるのに十分な温度で、第2アノード電極フィルム混合物を圧縮し、独立したフィルムを形成することが可能である。例えば、約140℃から300℃、又は約140℃から約200℃を含む、約140℃以上の温度で、電極フィルム混合物を圧縮し独立した電極フィルムを形成することが可能である。いくつかの実施形態においては、独立した電極フィルムは、同じステップか又は別のステップで集電体に対してラミネート加工することができる。いくつかの実施形態においては、約100℃から約200℃、又は約160℃から200℃の温度で、独立した電極フィルムを集電体に対してラミネート加工することができる。
【0067】
ここに記載するように、いくつかの実施形態において、カソード電極フィルムを作製する工程が提供される。ここに記載する1つ以上のカソード作製工程によって、望ましくない孔、隙間、表面の窪み、及び/又は黒い筋が全く無いか又は実質的に無い電極フィルムを有するカソードを作製することができる。いくつかの実施形態においては、ここに記載するカソード電極フィルムの1つ以上の作製工程はジェットミルを用いた工程のような高せん断工程を含む。いくつかの実施形態においては、カソード電極フィルムの作製工程は、望ましくない欠陥が無いか又は実質的に無いカソード電極フィルムの形成を容易にするために、多孔性の炭素材料の存在する中での1つ以上のバインダ成分のジェットミルによる処理を含む。例えば、多孔性の炭素材料はバインダ成分とともにジェットミルで処理され、粒子が分散する望ましい特徴を有する混合物を生成できる。ここで1つ以上の他の電極フィルム成分を混合物に加えることで、該混合物が電極フィルムを形成するようにさらに処理することができる。いくつかの実施形態においては、そのような工程は、カソードの活性材料をジェットミルを用いた工程で処理せずに(例えば、NMCをジェットミルを用いた工程で処理せずに)、欠陥の無いカソード電極フィルムの作製を容易にする。活性材料をジェットミルを用いた工程で処理することにより、活性材料の1つ以上の電気化学的な性質が望ましくない変化を起こす可能性がある。いくつかの実施形態においては、カソードの活性材料を、ジェットミルなどの、高せん断工程にさらすことは、望ましい厚みの電極フィルムを形成することが難しい混合物を生成する可能性がある。例えば、そのようなフィルム混合物は、電極フィルムを形成するのに用いられるカレンダ処理の間に密度が高くなってしまうという望ましくない傾向を示す可能性がある。ここに記載する1つ以上のカソード電極フィルム作製工程は、望ましい質及び/又は処理性を有するフィルムをもたらす一方で、乾式工程を利用することで乾燥のステップを回避させ、カソード電極の形成することを容易にする。
【0068】
図3は、
図1のエネルギー貯蔵装置など、エネルギー貯蔵装置のカソード電極フィルムを生成するための作成工程300の一例を示す。いくつかの実施形態においては、カソード電極フィルム作製工程300はリチウムイオンバッテリーのカソードを作製するために利用することができる。いくつかの実施形態においては、カソード電極フィルム作製工程300は、リチウムイオンキャパシタのカソードを作製するために用いることができる。いくつかの実施形態においては、カソード電極フィルム作製工程300は混合バインダ材を含むカソード電極フィルムを形成する。
【0069】
ブロック302においては、第1バインダ成分と多孔性炭素材料の第1部分は、混合することができ、第1カソード電極フィルム混合物を与える。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分と多孔性炭素材料の第1部分は低せん断工程を利用して混合できる。いくつかの実施形態においては、低せん断工程は多くの低せん断均一化技術を含むことができる。例えば、第1バインダ成分と多孔性炭素材料を混合することは、v−ブレンダー及び/又はキッチンブレンダーを含めたブレンダーを用いて行うことができる。
【0070】
いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分はフィブリル化できないバインダ材を含むことができる。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分は半結晶性熱可塑性物質を含む熱可塑性物質を有することができる。例えば、第1バインダ成分は可溶な接着剤であってもよい。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分はポリオレフィンを含むことができる。例えば、第1バインダ成分はPVDFを含むことができる。いくつかの実施形態においては、多孔性の炭素材料は活性炭素を含むことができる。例えば、ブロック302においては、PVDFと活性炭素を混合して第1カソード電極フィルム混合物を生成することができる。
【0071】
いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分と多孔性の炭素材料の第1分量とを質量比約1:1から約1:5、約1:1から約1:4、又は約1:1から約1:3でブレンドすることができる。例えば、PVDFと活性炭素はブロック302において質量比約1:2で混合することができる。
【0072】
いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分と多孔性炭素材料の質量比は、両者間の望ましい接触をもたらすように選択してもよい。例えば、以下により詳細に記載するように、PVDFと活性炭素の質量比は、ブロック302における両者の混合の間、及び/又はそれに続く高せん断工程の間、それらの粒子間の望ましい衝突をもたらすように選択してもよい。
【0073】
いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分とカソード活性材料の混合は冷却なしで周囲環境の条件下で行ってもよい。例えば、第1バインダ成分とカソード活性材料との混合は、例えば約20℃から約75℃、又は約20℃から約50℃など、略室温又はそれ以上の温度で行ってもよい。
【0074】
ブロック304では、第1カソード電極フィルム混合物は高せん断工程で処理できる。いくつかの実施形態においては、高せん断工程における望ましくない熱の発生を抑制し又は回避させながら、該高せん断工程は第1バインダ成分を多孔性の炭素材料中に分散させるような構成にすることができる。ここに記載する限りにおいては、第1バインダ成分はPVDFを含むことができる。いくつかの実施形態においては、商用の物質から入手可能なPVDF粉末は、小さな主要粒子の凝集体である望ましくない二次粒子を含んでいる可能性がある。いくつかの実施形態においては、高せん断工程は、第1バインダ成分中の凝集体二次粒子のサイズを抑制し及び/又は凝集体二次粒子を粉砕するように構成することができる。例えば、高せん断工程によって、二次粒子を粉砕して、多孔性炭素材料中に第1バインダ成分の主要粒子をさらに分散させることができる。いくつかの実施形態においては、高せん断工程は、過度に熱を発生させることなく、第1バインダ成分を多孔性炭素材料中に可逆で均一に又は実質的に均一に分散させるように構成することができる。例えば、過度な熱の発生は結果として第1バインダ成分の溶解を引き起こし、第1バインダ成分の多孔性炭素材料中での可逆な分散を抑制し又は妨げることになるかもしれない。
【0075】
いくつかの実施形態においては、高せん断工程はジェットミル工程を含むことができる。例えば、ジェットミル工程は、過度な熱の発生を抑制し又は回避させながら、第1バインダ成分粒子と多孔性炭素材料粒子との間の望ましい相互作用をもたらすことができる(例えば、バインダ成分と多孔性炭素材料の粒子間の望ましい接触をもたらす)。いくつかの実施形態においては、第1カソード電極フィルム混合物はジェットミル工程で処理され、均一の又は実質的に均一の混合物を与えることができる。例えば、PVDFなどの第1バインダ成分と、活性炭素などの多孔性炭素材料とを含む、第1カソード電極フィルム混合物は、ジェットミルで処理され均一の又は実質的に均一の混合物を与えることができる。いくつかの実施形態においては、第1カソード電極フィルム混合物をジェットミルで処理することは、望ましくない大きな粒子凝集体が全く無いか、実質的に無い粉末混合物の形成を促進する。いくつかの実施形態においては、そのような大きな粒子凝縮体が全く無いか又は実質的に無い粉末混合物は、空孔や割れ目、表面の孔及び/又は黒い筋の無い電極フィルムの形成を促進する。
【0076】
いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分と多孔性炭素材料の質量比は、多孔性炭素材料の中のバインダ成分の望ましい分散をもたらす高せん断工程の間に起こる二粒子間の衝突などの、望ましい相互作用をもたらすように選択してもよい。例えば、第1バインダ成分と多孔性炭素成分の質量比は、高せん断工程の継続時間を減らすために、約1:1から約1:5の間で選択されてもよい。いくつかの実施形態においては、そのような比は高せん断工程が効率的にする(例えば、高せん断工程の継続時間を減らす)一方で、望ましい粒子の分散をもたらす。いくつかの実施形態においては、第1バインダ成分と多孔性炭素材料の質量比として約1:1と約1:5以外もまた可能であるかもしれない。例えば、そのような比の混合物は、長時間ジェットミル工程など、より長時間の高せん断工程を利用することによって処理できる。
【0077】
ブロック306においては、カソード活性材料、多孔性炭素材料の第2分量、及び導電性付加物が混合され、第2カソード電極フィルム混合物が生成される。いくつかの実施形態においては、カソード活性材料、多孔性炭素材料の第2分量、及び導電性付加物は、より低せん断の工程で混合することができる。いくつかの実施形態においては、上記のより低せん断の工程はブレンディングを含んでいてもよい。例えば、カソード活性材料、多孔性炭素材料の第2分量、及び導電性付加物との混合はパドル式ブレンダーなどのブレンダーを用いて行うことができる。いくつかの実施形態においては、ブレンダーはWaring(登録商標)ブレンダーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、ブレンダーははCyclomix
TMを含んでいてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態においては、カソード活性材料は非炭素活性材料を含む。いくつかの実施形態においては、カソード活性材料はリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、又はリチウムリン酸鉄(LFP)を含むことができる。例えば、活性炭素の第2区画であるNMCと、カーボンブラックとをブレンドして均一の又は実質的に均一の第2カソード電極フィルム混合物ができる。いくつかの実施形態においては、活性炭素における第1分量と第2分量の割合は、電極フィルムのための望ましい多孔性炭素材料をもたらし、また一方で高せん断工程における炭素対バインダ材の望ましい質量比をもたらすように選択してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態においては、第2カソード電極フィルム混合物は、望ましいタップ密度に達するまで混合してもよい。例えば、第2カソード電極フィルム混合物は最も高い初期タップ密度の混合物の組成物のタップ密度と同じ程度か又は同一のタップ密度に達するように混合してもよい。例えば、NMC、活性炭素及び/又はカーボンブラックを含む混合物において、NMCは例えば約2g/mLの最高初期タップ密度をもつことができる。いくつかの実施形態においては、NMC、活性炭素及びカーボンブラックを含む混合物は、該混合物において約2g/mLのタップ密度に達するまでブレンドすることができる。いくつかの実施形態においては、望ましい最終タップ密度を有する混合物はその混合物において望ましい程度の成分の分散を示すかもしれない。いくつかの実施形態においては、望ましい程度の粒子の分散を示す混合物は、より少ないカレンダ処理の工程によって、望ましい厚みの電極の形成を促進することができる。
【0080】
ブロック308においては、第1カソード電極フィルム混合物と第2カソード電極フィルム混合物は混合され、第3カソード電極フィルム混合物を与えることができる。いくつかの実施形態においては、第1カソード電極フィルム混合物と第2カソード電極フィルム混合物はここに記載される1つ以上の低せん断工程によって混合することができる。例えば、第1カソード電極フィルム混合物と第2カソード電極フィルム混合物とを混合することは、例えばパドル式ブレンダーなどの、ブレンダーを用いて達することができる。いくつかの実施形態においては、上記のブレンダーにはWaring(登録商標)(登録商標)ブレンダーを含むことができる。いくつかの実施形態においては、上記のブレンダーにはCyclomix
TMブレンダーを含むことができる。
【0081】
ブロック310においては、第2バインダ成分と第3カソード電極フィルム混合物は混合されて第4カソード電極フィルム混合物を与えることができる。いくつかの実施形態においては、第2バインダ成分はフィブリル化可能なバインダ成分を含む。いくつかの実施形態においては、フィブリル化可能な第2バインダ成分はPTFEを含む。そのような実施形態においては、上記記載のブロック302は、多孔性炭素材料と、PTFE混合バインダ材の少なくとも1つの成分と、の混合を含むことができる。上記のPTFE混合バインダ材の少なくとも1つの成分には、ブロック310の一部として、PTFEがのちに加えられてPTFE混合バインダ材を形成することができる。例えば、PTFE混合バインダ材を含むカソード電極フィルムを形成することができるように、活性炭素、NMC、PVDF、及びカーボンブラックを含む第3カソード電極フィルム混合物にPTFEを加えることができる。いくつかの実施形態においては、第2バインダ成分と第3カソード電極フィルム混合物との混合は、第2バインダ成分のフィブリル化を含むことができる。例えば、第2バインダ成分と第3カソード電極フィルム混合物は、ブレンディングなどの、1つ以上の低せん断工程を用いて混合することができ、上記のフィブリル化された第2バインダ成分から形成される多数のフィブリルを含む混合物を与える。例えば、第2バインダ成分のフィブリル化によりフィブリルのマトリックス、結晶及び/又は網状構造を形成し、混合物の1つ以上の成分の望ましい構造的な支えをもたらすことができる。いくつかの実施形態においては、ブレンディングはパドル式ブレンダーの利用を含むことができる。いくつかの実施形態においては、ブレンダーはWaring(登録商標)ブレンダーを含むことができる。いくつかの実施形態においては、ブレンダーはCyclomix
TMブレンダーを含むことができる。いくつかの実施形態においては、ブロック310における低せん断フィブリル化工程の利用によって、カソード活性材料が高せん断工程にさらされるのを抑制し又は回避させつつ、第2バインダ成分のフィブリル化を有利にもたらすことができる。
【0082】
ブロック312においては、第4カソード電極フィルム混合物は圧縮されてカソード電極フィルムを形成することができる。いくつかの実施形態においては、第4カソード電極フィルムは上記の混合物をカレンダ処理することによって圧縮され、電極フィルムを形成することができる。いくつかの実施形態においては、第4カソード電極フィルム混合物はカレンダ処理されて、独立した乾燥粒子カソード電極フィルムを形成することができる。いくつかの実施形態においては、電極フィルムはラミネート加工工程などにより、対応する集電体、例えば
図1の第1集電体108や第2集電体110などに貼り付けてカソードを形成することができる。
【0083】
いくつかの実施形態においては、PVDFなどのような可溶なバインダ成分を溶かすのに十分な温度で、カソード電極フィルム混合物を圧縮して独立したフィルムを形成することができる。例えば、電極フィルム混合物を圧縮して独立した電極フィルム形成することは、約140℃より高い温度、約140℃から約300℃、又は約140℃から約200℃でできる。いくつかの実施形態においては、電極フィルムは集電体に同じステップ又は異なるステップでラミネート加工することができる。いくつかの実施形態においては、電極フィルムを集電体にラミネート加工することは約100℃から約200℃、又は160℃から200℃の温度で達成できる。
【実施例1】
【0084】
図4は第1のリチウム化と脱リチウム化とのサイクルの間における、3つのリチウムイオンバッテリー半電池の比容量性能を示す。それぞれの半電池は
図4に示されるようなバインダ成分を含むアノードを備えていた。その性能は、y軸にVで表した電極電圧と、x軸にmAh/gで表した各電池の充放電の間の対応するアノードのグラファイトの比容量との関数として示されている。右上がりになっている最初の3種類のカーブの組は脱リチウム化工程、又はそれぞれの電池の放電を示している。右下がりになっている2番目の3種類のカーブの組はリチウム化工程、又はそれぞれの電池の充電を示している。図に示されているように、
図4の脱リチウム化とリチウム化のカーブに相当するアノードは、本質的にPTFE、PVDF、又はPEをそれぞれ含むバインダを有する電極フィルムを備える。それぞれのアノードの第1のリチウム化のサイクルの容量は、リチウム化の曲線における電極電圧が近似的にゼロである点に対応する。それぞれの電極の第1の脱リチウム化のサイクルの容量は脱リチウム化曲線における電極電圧が近似的に2Vである点に対応する。不可逆な容量損失はこれらの2つの数の差である。
【0085】
PEバインダからなるアノードは乾式作製工程により形成された。乾式作製工程は次のように行われた:グラファイト(約90グラム、例えばConoco Phillipsの商品であるG5グラファイト粉末)、導電性のカーボンブラック付加物(約2グラム、例えばTimcalの商品であるSuper P導電性カーボンブラック)、及びポリエチレン(約8グラム、例えばDuPontの商品である)が全体的に混合された。結果として得られる粉末が、カレンダ処理され独立したアノード電極フィルムになった。電極フィルムはカーボンで被覆されたカッパーホイルに対してラミネート加工され、これがアノードを形成した。PTFEバインダからなるアノードは、ポリオレフィンバインダを含むアノードを作製するために用いるのと同様の乾式工程を用いて準備した。PVDFからなるアノードは湿式スラリー被覆によって準備された。3つのアノードすべては約90重量%のグラファイト、約2重量%の導電性炭素、そして約8重量%のバインダを含む電極フィルム混合物を用いて作製された。
【0086】
リチウムイオンバッテリー半電池は、対応する3つのアノードを以下のように用いて形成された:ポリオレフィンセパレータをリチウム金属(0.750ミリメートルのリチウム金属リボンから打ち抜かれた直径16ミリメートル、Sigma Aldrichの商品)の上に置き、その上に前述のアノードをおいて電極スタックを形成した。炭酸エチレン(EC)と炭酸エチルメチル(EMC)を約3:7の比で含む溶媒において約1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を含む電解液が電極スタックに用いられ、その結合した電極スタックと電解液が密閉されてリチウムイオンバッテリー半電池が形成された。
【0087】
図5は、の
図4に示されたグラフに対応する比較するアノードのリチウム化と脱リチウム化の第1のサイクルの比容量をまとめた表を提供する。
図4に示された結果と
図5に示された表とが実証するように、乾式工程とグラファイトを利用することによって形成されたPTFEバインダからなる電極は、乾式工程によって形成されたポリエチレン(PE)バインダとグラファイトとからなる電極(該グラファイトの質量を基にして、近似的に30mAh/g)、及びスラリーで被覆されたPVDFとグラファイトとから形成された電極(該グラファイトの質量を基にして、近似的に23mAh/g)、の両方と比較して、より高い不可逆的容量損失を有する(近似的にグラファイトの質量を基にして127mAh/g)。それに応じて、
図4と
図5に示すように、ポリエチレンバインダを含むアノードは、乾式工程で形成されることと、またその一方で最初の充電及び放電の間で不可逆的容量損失が少なくなること、の両方の利益を有する。
【実施例2】
【0088】
図6は、他の実施形態に斯かる、第1サイクルのリチウム化及び脱リチウム化の間のリチウムイオンバッテリーのアノードにおける半電池比容量を示す。Vで表した電極電圧がy軸に示され、mAh/gで表した対応するアノードの最初の充放電の間における、アノードのグラファイトの比容量がx軸に示されている。
図6の脱リチウム化及びリチウム化の曲線は、質量比約1:1で本質的にPVDFとPEとからなる混合バインダを含むアノードを備えた半電池に対応している。上記のアノードは約90重量%のグラファイト、約2重量%の導電性炭素、及び約8重量%のバインダ、を用いて作製された。
図6に対応するアノードと半電池は、ポリオレフィンバインダを含むアノードのための実施例1に記載された方法と同様の方法によって準備された。
【0089】
図6のリチウム化および脱リチウム化の第1サイクルの比容量において示されたように、不可逆的容量損失はグラファイト質量(電極に約90重量%含まれる)を基にして約50mAh/gだった。実施例1、
図4及び
図5を参照すると、この不可逆的容量損失は、PEバインダ又はPVDFバインダのどちらかを用いたものとして上記に記載されたアノードに対して決定されたものと比較できる。前述の実施例1と実施例2からの結果は、アノードは乾式電極作製技術を用い、PEとPVDFとからなるバインダのような、PEバインダ又は混合されたPEベースのバインダ系を利用して準備でき、同時に、湿式スラリー被覆方法によってPVDFから一般的なやり方で作製されたものと同様の電気化学的性能を獲得できることを示している。そのような系は、PTFEバインダのみを用いて形成される多くの乾式電極に内在する、前述の劣化と不可逆的容量損失を抑制し、同時にまた湿式のPVDFスラリー法の乾燥のためのコストの発生を回避させる。
【実施例3】
【0090】
図7Aから
図7Cは、本質的にはPTFEバインダ、又は本質的にはPTFEとその他のリストに挙げられた物質とからなるPTFE混合バインダ材、からなるバインダを含むアノードを備えた電気化学的半電池の、リチウム化及び脱リチウム化の第1サイクルの間における比容量を示している。これらの図に示されるように、3つの異なるPTFE混合バインダ材の1つをそれぞれ含むアノードを備えた半電池が得られる。リチウム化及び脱リチウム化の第1サイクルの間における比容量が、
図7Aと
図7Bとにそれぞれ示されている。Vで表された電極電圧がy軸に示され、mAh/gで表されたそれぞれの電池の最初の充放電の間のグラファイトの比容量がx軸に示されている。
図7Aにおいて、一組の右下がりの曲線はリチウム化の過程、又はそれぞれの電池の充電、を示しており、
図7Bにおいて、一組の右上がりの曲線はそれぞれの電池の脱リチウム化の過程又は放電を示している。
図7Cは、
図7A及び
図7Bに示されたリチウム化と脱リチウム化の第1サイクルの間の上記のそれぞれのアノードの比容量を基にした、該アノードの不可逆的容量損失をまとめた表である。
【0091】
4つの半電池のそれぞれのアノードは、PTFEバインダのみか又はPTFE混合バインダ材を用いて準備された。
図7Aと
図7Bは、PTFEバインダのみを含むアノードを備えた第1リチウムイオンバッテリー半電池、質量比約1:1のPTFEとポリエチレン(PE)からなるバインダを含むアノードを備えた第2リチウムイオンバッテリー半電池、質量比約1:1のPTFEとポリビニリデンフルオライド(PVDF)を有するバインダを含むアノードからなる第3リチウムイオンバッテリー半電池、及び質量比約1:1でPTFEとポリエチレンオキシド(PEO)を有するバインダを含むアノードを備えた第4のリチウムイオンバッテリー半電池の比容量を示す。4つのアノードそれぞれは、約92重量%のグラファイト、約1重量%の導電性炭素付加物、及び約7重量%のPTFE混合バインダを用いて作製された。これらのアノードは実施例1を参照して記述された乾式工程により作製され、これらの半電池は実施例1を参照して記述された工程により組み立てられた。例えば、約92グラム(g)のグラファイト粉末、約1グラムの導電性炭素付加物、約3.5グラムのPTFE、及び約3.5gのポリエチレン、ポリビニリデンフルオライド、又はポリエチレンオキシドが十分に混合され、PTFE混合バインダ材を含む電極フィルム混合物が得られた。
【0092】
図7Aから
図7Cを参照すると、PTFE混合バインダ材を用いて作製されたアノードは、リチウム化及び脱リチウム化の第1サイクル後に、上記の本質的にPTFEバインダからなるバインダを含む示されたアノードと比較して、不可逆的容量損失が抑制されることが実証できる。
図7Cの表に示されているように、PTFEとPEOを含むアノードは、リチウムベースの電池におけるリチウム化と脱リチウム化の第1サイクル後、PTFEバインダのみを含むアノードと比較して、顕著に抑制された不可逆的容量損失を実証でき、また脱リチウム化の比容量が増加することを示すことができる。
【0093】
図7Aを参照して、PTFEバインダ、又はPTFE及びPE、若しくはPTFE及びPVDFバインダを含むPTFE混合バインダ、からなるグラファイトアノードのそれぞれについての第1リチウム化サイクルの間の比容量は1Vより低い電圧において幅広い電圧上昇を示した。そのような幅広い電圧上昇はPTFEの劣化を示唆しているかもしれない。PTFEとPEOを用いた混合バインダ系からなるアノードは1Vより低い電圧において、抑制された電圧上昇を示した。これは、例えばPTFE劣化が比較的抑えられたことを示唆する。
【0094】
図8Aと8Bは、PTFEとPEOを含むPTFE混合バインダからなるアノードのリチウム化及び脱リチウム化の第1サイクルの間の比容量と、先行技術で知られた湿式のスラリー被覆のPVDFバインダ系からなるアノードのそれ、とを比較する。PTFE混合バインダは質量比約1:1のPTFEとPEOから形成された。PTFE混合バインダから形成されたアノードは、約92重量%グラファイト、約1重量%の導電性炭素付加物、及び約7重量%のPTFE混合バインダ材を用いて作製され、実施例1を参照して記載された乾式工程が用いられた。
【0095】
図8A及び
図8Bに示されるように、PTFE及びPEOバインダ系から形成されたアノードにおける、第1のリチウム化及び脱リチウム化の比容量は、湿式のスラリー被覆のPVDFを用いて作製されたアノードにおけるそれと比較して高いことがありうる。一方で不可逆的容量損失は比較できるものであることも示された。
【0096】
前述の実施例3の結果は、乾式の電極作製技術においてPTFE混合バインダ系を用いて電極を得ることができ、一方でPVDF湿式スラリー被覆法から一般的なやり方で得られたものと同様か又はより良い電気化学的性能を達成できる。そのような系は前述の、本質的にPTFEによって構成されたバインダシステムを用いて形成された、多くの乾式電極に内在する劣化及び不可逆的容量損失を抑制でき、同時にまた湿式のPVDFスラリー法に特有のコストの問題を回避させることができる。
【実施例4】
【0097】
図9はPTFE混合バインダ材を含むカソードを備えたリチウムイオンバッテリー半電池の最初の充電及び放電の間の比容量を示す。
図10は様々な放電電流率における
図9のリチウムイオンバッテリー半電池の放電の間の比容量を示す。
図9及び
図10は、y軸にVで表されたカソード電圧を示し、x軸にmAh/gで表されたNMCの比容量を示す。
図10において放電電流率はCの比率として示されている。
図10は放電電流率が約0.1C、約0.2C、約0.5C、約1C及び約2Cである放電における比容量を示す。
図9と
図10のカソードはここに記載の乾式工程を用いて作製され、NMC約88g(例えばUmicoreの商品である)、活性炭素約5g(例えばクラレの商品であるYP80F)、カーボンブラックケッチェンブラック約2g(例えばLionの商品であるECP600JD)、PVDF約2g(例えばArkemaの商品であるKynar Flex 3121−50)、及びPTFE約3g(例えばDuPontの商品であるTeflon Type 60)を含む。
【0098】
図10に示されたように、半電池の比容量は増加した放電電流率に伴って概ね減少した。カソードは望ましい放電比容量、例えば湿式被覆技術を利用して作製されたカソードのそれと少なくとも比較しうる放電比容量、を示した。
【実施例5】
【0099】
図11Aから
図15は、その成分が様々な温度下で混合されてできたそれぞれのアノードを備えたリチウムイオンバッテリー半電池の、最初のリチウム化と脱リチウム化の間の比容量を示す。
図11A、
図12A、
図13A、及び
図14Aはアノード電圧をそれぞれのy軸にVで表し、グラファイトの質量をもとにした比容量をそれぞれのx軸にmAh/gで表す。
図11B、
図12B、
図13B、及び
図14Bは、それぞれ
図11A、
図12A、
図13A、及び
図14Aに示された充電比容量と放電比容量をmAh/gで表示し、それぞれの不可逆的容量損失を%で表示してまとめた表を示している。
図15は
図11から
図14に相当するアノードの処理条件を、対応する平均不可逆的容量損失%とともにリスト化した表である。
【0100】
図11Aから
図14Bの半電池のアノードは、乾式の作製工程によって準備されたものである。これらのアノードは約92重量%のグラファイト、約1重量%の導電性炭素付加物、及び約7重量%のバインダを含む電極フィルム混合物から形成されたものである。その詳細についてここに議論するように、バインダはPVDFバインダ及び/又はPTFE混合バインダを含む。
【0101】
図11Aと
図11BはPVDFバインダを含むアノードを備えた半電池のリチウム化と脱リチウム化の間の比容量を示す。アノード電極フィルムの成分は、周囲環境条件で(例えば冷却無しで)、例えばブレンディングによって混合され、さらにジェットミルで処理された。例えば、
図11Aに描かれた曲線に相当する半電池のアノードはグラファイト、導電性炭素付加物、及びPVDFを含んだ。グラファイト、導電性炭素付加物、及びPVDFを含む混合物がブレンディングされる間の温度は約50℃から約75℃だった。例えば、アノード成分が混合される混合容器は約40℃から約50℃に維持された。それに続いて、上記の混合された混合物はジェットミルで処理された。
図11Bは充電比容量と放電比容量をmAh/gで表し、
図11Aに示されたそれぞれの半電池の不可逆的容量損失を%で表したものである。例えば、
図11Aと
図11Bに示されるように、PVDFバインダを含むアノードは約18%の不可逆的容量損失%を示す。ここでアノード電極フィルム混合物の成分は室温で混合された。
【0102】
図12Aと
図12Bは、本質的にPTFEからなるバインダを用いて作製されたアノードを備えた半電池のリチウム化と脱リチウム化の間の比容量を示す。
図12Aと
図12Bのアノード電極フィルムの成分は、周囲環境条件(例えば冷却無し)で、例えばブレンディングにより混合され、さらにジェットミルによって処理される。例えば、
図12Aに描かれた曲線に相当する半電池のアノードはグラファイト、導電性炭素付加物、及びPTFEを含んでいた。グラファイト、導電性炭素付加物及びPTFEを含む混合物の温度はブレンディングの間約50℃から約75℃だった。例えば、アノード成分がブレンドされた混合容器は約40℃から約50℃に維持されていた。それに引き続いて、ブレンドされた混合物はジェットミルで処理された。
図12Bは
図12Aに示されたそれぞれの半電池の充電比容量と放電比容量をmAh/gで、不可逆的容量損失を%で表したものをまとめた表である。例えば、
図12Aと
図12Bに示されたように、本質的にPTFEからなるバインダを含むアノードは約23%から約25%の不可逆的容量損失を示すことが実証できる。ここでアノード電極フィルムの成分は室温で混合された。
【0103】
図13Aと
図13BはPTFE混合バインダを含むアノードを備えた半電池のリチウム化と脱リチウム化の間の比容量を示す。ここで電極フィルムの成分は低い温度の下混合され、さらにジェットミルで処理された。そのアノードは、PTFEとPVDFを質量比約1:1の割合で含むPTFE混合バインダ材を含んでいた。例えば、
図13Aに描かれた曲線に相当するアノードはグラファイト、導電性炭素付加物、PVDF及びPTFEを含んでいた。グラファイト、導電性炭素付加物、及びPVDFを含む混合物の温度は、ブレンディングの間約−196℃から約20℃だった。例えば、混合容器の温度は、液体窒素(N2)(例えば、約−196℃から約0℃、又は約77Kから約273Kの温度の液体窒素)による冷却によって保たれた。そしてバインダ、グラファイト、導電性炭素付加物、及びPVDFはジェットミルで処理された。それに引き続き、ジェットミル処理された混合物は約−196℃から約20℃(約77Kから約293K)の温度でPTFEとブレンドされた。例えば、混合容器の温度は液体窒素(N2)冷却(例えば、約−196℃から約0℃、又は約77Kから約273Kの温度の液体窒素)によって保たれていた。
【0104】
図13Bは
図13Aに示されたそれぞれの半電池の、充電比容量と放電比容量をmAh/gで、また不可逆的容量損失を%で表したものをまとめた表を示す。例えば、
図13Aと13Bに示されるように、PTFE混合バインダを含むアノードは約23%から約25%の不可逆的容量損失%を実証できる。ここでアノード電極フィルム混合物の成分は低い温度で混合された。
【0105】
図14Aと
図14BはPTFE混合バインダを含むアノードを備えた半電池のリチウム化と脱リチウム化の間の比容量を示す。
図14Aと
図14Bの電極フィルムの成分は周囲環境条件(例えば冷却無し)で例えばブレンディングによって混合され、さらにジェットミルによって処理された。アノードは質量比約1:1のPTFEとPVDFを含むPTFE混合バインダ材を含んでいた。例えば、
図14Aに描かれた曲線に相当するアノードはグラファイト、活性炭素付加物、PVDF及びPTFEを含む。グラファイト、導電性炭素付加物、及びPVDFを含む混合物の温度は約50℃から約75℃だった。例えば、アノード成分が混合される混合容器は約40℃から約50℃に保つことができる。それに引き続き、グラファイト、導電性炭素付加物、及びPVDFを含む混合物はジェットミル処理され、混合物は室温でPTFEとブレンドされた。ジェットミル処理された混合物は約20℃から約75℃の温度でブレンドされた。例えば、アノード成分がブレンドされた混合容器は約40℃から約50℃に維持され、同時にアノード成分を含んだ混合物の温度は約50℃から約75℃であった。
図14Bは、
図14Aに示されたそれぞれの半電池のmAh/gで表された充電比容量と放電比容量及び不可逆的容量損失%をまとめた表を示す。例えば、
図14Aと
図14Bで示されたように、PTFEとPVDFを含むPTFE混合バインダを有するアノードは約16%から約18%の不可逆的容量損失%を実証できる。ここでアノード電極フィルム混合物の成分は室温で混合された。
【0106】
図15は
図11Aから
図14Bのアノードの比容量をまとめたもののリストを示した表である。例えば、
図15に示されるように、いくつかの実施形態においては、乾式工程によって作製されたPTFEとPVDFを含むアノードであってその成分が乾式工程により室温で混合されたアノードは、PVDFを有するアノードであってその成分が乾式工程により室温で混合されたアノードと同様の不可逆的容量損失を有する。
図10の表に示されるように、質量比約1:1のPTFEとPVDFを含むPTFE混合バインダを有するアノードであってその成分が低い温度で混合されたもの(例えば、液体窒素によって冷却された混合工程)は、室温において混合されたのと同様の構成のアノードよりも約7%高い第1サイクル不可逆的容量損失を有する。
【0107】
いくつかの実施形態においては、アノードの成分を混合する過程における1つ以上の要因によって、第1サイクルの不可逆的容量損失の抑制が促進される。例えば、乾式電極作製技術を用いて作製され、PTFE及びPVDFを有するPTFE混合バインダを含むアノードであって、その成分が室温で混合されるアノードは、組成がより低い温度で混合された同様の成分を有するアノードのそれと比べて、不可逆的容量損失がより少ないことを実証できる。どのような特定の理論や実施の形態に制限されることもなく、いくつかの実施形態においては、PVDFはPTFEとグラファイトの直接の物理的な接触を阻害することができる。そのような阻害の効率性は処理温度に依存し得る。例えばそのような効率性は、成分の混合が低い温度でなされたときよりも、室温でなされたときに高まる可能性もある。
【実施例6】
【0108】
湿式工程を利用したカソード電極フィルムとここに記載の工程によって作製したカソード電極フィルムの比較が
図16から
図32に示されている。カソード電極フィルムはNMC、活性炭素、カーボンブラック、及びPTFE混合バインダ材を含んでいた。カソード電極フィルムはNMC:活性炭素:カーボンブラック:PVDF:PTFEを約88:5:2:2:3の質量比で含んでいた。様々な粉末の物理的サイズ、形態、及び/又は分散効率を解析するために走査型電子顕微鏡(SEM)像が用いられた。
【0109】
ここに記載の1つ以上の工程によるカソード電極フィルムを形成するための作製工程は、活性炭素(例えば、Kurarayの商品であるYP−17D)とPVDF乾燥粉末(例えば、Arkemaの商品であるPVDF乾燥粉末)を約2:1の質量比で約10分間最初にブレンディングすることを含む。ブレンディングの時間は活性炭素とPVDFの望ましい混合をもたらすように調整することができる。例えば、その時間はブレンダーの構成を基に選択してもよい(例えば、もたらされるせん断のサイズ及び/又はレベル)。
図16は活性炭素粒子の1,000倍拡大の走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、
図17は活性炭素粒子の5,000倍拡大のSEM像である。
図18は乾燥PVDF粉末の4,000倍拡大のSEM像である。
図19は乾燥PVDF粉末の10,000倍拡大のSEM像である。
図20は活性炭素とPVDFを含むブレンドされた乾燥粉末の1,000倍拡大のSEM像であり、一方、
図21は4,000倍拡大のSEM像である。
【0110】
結果として得られた活性炭素とPVDFを含む混合粉末は、ある供給量のもと、約80ポンドパースクウェアインチ(psi)の製粉圧力のもとジェットミル処理された。いくつかの実施形態においては、より高い圧力を用いることできる。例えば、約40psiから約150psiの圧力が用いられる。
図22は、活性炭素とPVDFを含むジェットミル処理された乾燥粉末の1,000倍拡大のSEM像であり、
図23はジェットミル処理された乾燥粉末の5,000倍拡大のSEM像である。
【0111】
NMC(例えば、Umicoreの商品である)、活性炭素、及びカーボンブラック(例えば、Lion Corporationの商品であるケッチェンブラック ECP600JD)が、約2グラムパーミリリッター(g/mL)の粉末タップ密度に達するまでブレンドされた。
【0112】
NMC、活性炭素、及びカーボンブラックを含んでブレンドされたこの粉末は、活性炭素及びPVDFを含む上記のジェットミル処理された混合物と共に、約5分間ブレンディングされることにより混合された。PTFE(例えば、DuPontの商品)が、引き続き、付加的に約10分間ブレンディングしながら加えられた。ブレンディングの時間は、上記のブレンドされた粉末及びジェットミル処理された混合物が望ましい程度に混合されるように調整してもよい。例えば、最終電極フィルムが所望の特質(例えば、フィルムの所望の完全性及び又はフィルム表面の質など)を有して形成されるように調整する。例えば、上記時間は、ブレンダーの構成を基にして決めてもよい(例えば、もたらされるせん断のサイズ及び/又はレベル)。
【0113】
乾燥PVDFバインダ粉末は、主粒子(例えば、約100ナノメートルから約300ナノメートルのサイズを有する)が凝集した第2の粒子を含むことができる。
図18及び19に示されるように、これらの第2粒子は数十ミクロンの範囲であってもよい(例えば、約5ミクロンから約50ミクロンのサイズを有する)。どのような特定の理論や実施形態に制限されることもなく、乾燥PVDFバインダ粉末のカソード粉末成分中での分散は、欠陥の無い所望の結合する特性を示す、独立した乾燥粒子フィルムの形成を促進する。例えば、第2粒子凝集を抑制し及び/又は防止することで、欠陥の無いカソード電極フィルム形成を促進することができる。第2粒子凝集の望ましい抑制や防止は、乾燥PVDF粉末を活性炭素と、2対1の質量比で処理することにより得られる。ここに記載するように他の配合比でも適当かもしれない。ブレンディングのみの処理後の、大きなPVDF粒子凝集体が
図20と
図21においてみられる。
図22及び23は付加的にジェットミルによる処理を行ったあとの
図20及び
図21と同じ粒子の分散を示している。明らかに
図20及び
図21の大きなPVDF粒子凝集体は、ジェットミルによる処理後消えており、その結果、表面の孔、空孔や割れ目、及び/又は黒い筋などの、不必要な欠陥の無いカソードフィルムの作製が容易になった。
【0114】
湿式工程によって作られる、上記のものと比較しうるカソード電極フィルムが、PVDFラテックスを用いて作製された。PVDFラテックスを用いて作製される、比較しうるカソード電極フィルムの配合は、NMC:活性炭素:カーボンブラック:PVDF:PTFEが質量比約88:5:2:2:3であった。比較できるカソード電極フィルムは活性炭素(例えば、Kurarayの商品であるYP−17D)の第1区画にPVDFラテックス(例えば、Arkemaの商品)を質量比が約2:1でペーストを形成するように噴霧することで作製された。
図24はPVDFラテックスの5,000倍拡大のSEM像であり、
図25はそのPVDFラテックスの10,000倍拡大のSEM像である。
図26は、混合後の活性炭素及びPVDFラテックスを含む乾燥粉末の、200倍拡大のSEM像であり、
図27は500倍拡大のSEM像である。
【0115】
ペーストは約110℃で約16時間乾燥させた。そして、その乾燥したペーストは約1分間ブレンドされた。NMC(例えば、Umicoreの商品)、活性炭素の第2区画、及びカーボンブラック(例えば、Lion Corporationの商品であるケッチェンブラックECP600JD)が約2g/mlのタップ密度に達するようにブレンドされた。この粉末は活性炭素の第1区画とPVDFラテックス粉末を含む乾燥ペーストと約10分間ブレンドされた。引き続いてPTFE(例えば、DuPontの商品)が加えられ、付加的に20分間ブレンドされた。
【0116】
図24及び
図25に示すように、PVDFラテックスバインダはよく分散した主要なPVDF粒子(例えば、これらの図に示されるように、約数百ナノメートルのサイズ)を含んでいたが、
図26と
図27はPVDFラテックスが活性炭素と混合されたときの大きな粒子凝集物を示している。これらの大きな凝集物は、結果として得られる独立したフィルムに黒い筋及び/又は小数の表面の孔をもたらすことがあり、その結果、最終的にできる電極フィルムの質を低下させる。
【0117】
図28は上記のPVDFラテックスと乾燥PVDF粉末を用いて作られたカソード電極フィルム同士を比較する2枚の写真である。
図29はPVDFラテックスを用いて作られたカソード電極フィルムの詳細な写真を示す。
図29でみられるように、カソード電極フィルムは表面欠陥を有する。
図30は乾燥PVDFを用いて作られたカソードフィルムの詳細な写真を示す。
図30でみられるように、乾燥PVDF粉末を用いて作製したカソード電極フィルムは表面欠陥を示さない。
【0118】
図31はPVDFラテックスを用いて作製されたカソードフィルム表面の3倍拡大の光学像である。
図31はフィルムにある約4ミリメートルの長さの黒い筋を示す。
図32は乾燥PVDF粉末を用いて作られたカソードフィルム表面の3倍拡大の光学像である。
図32には黒い筋はみられない。それに応じて、
図23−
図32に示されるように、ジェットミル処理法が用いられて乾燥PVDFが活性炭素の存在下で分散するとき、表面欠陥の無いカソード電極フィルムが作製される。
【0119】
ここで用いられる見出しは、参照といくつかのセクションを示すことを目的に用いられる。これらの見出しはここに記載される概念の範囲を制限することを意図したものではない。そのような概念は本明細書全体で適用性を有し得る。
【0120】
前述の開示される実施の記述は、当業者ならば誰でも本発明を製造又は使用できるようにするために提供したものである。これらの実施に対する様々な改良は当業者にとって容易に想到しうるものであり、ここに定義される包括的な原理は、本発明の主旨や範囲から離れることなしに他の実施に適用できる。従って、本発明はここに示される実施形態に限られると意図されるものではなく、ここに開示されたその原理と優れた特質をもってして最大の範囲で認められるべきものである。
【0121】
上記において、様々な実施形態に適用できる本発明の優れた特質を指摘したが、スキルを有する者であれば、説明された装置や工程の形状や詳細について、様々な省略、置き換え、及び変更が、本発明の範囲から離れることなしに可能であることを理解するだろう。