(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は通常「アクセス可能」側と呼ばれる組立の片方側だけから構造物を通して設置する固定具に関する。この種の固定具は例えば航空機の構造体の組立の中で使用される。
【0002】
特に、本発明は公称直径Dの整列した孔を有する構造体の部品取付の固定具に関し、前記部品は公称厚みが最小厚から最大厚まで変化し、固定具は最小締付面Gminおよび最大締付面Gmaxを含み、
−ねじは一端に拡大された頭を、反対側に雄ねじ切部を含み、
−スリーブはねじ頭を受け入れるために拡大され、構造体の部品の第一面とコンタクトすることを目的とする頭と、円筒部およびねじの雄ねじ切部と組み合わされる雌ねじ切部を含み、雌ねじ切部はスリーブの本体内部の滑り部に隣接し、前記滑り部は公称厚みEを示し、変形しにくい領域がスリーブの頭に近接し、変形可能領域が変形しにくい領域に隣接しており、
−一般に「ブラインド」面と呼ばれる第一面と反対側の構造体の部品面とコンタクトさせるバルブへと変形可能部を半径方向に変形させることを容易にするために、スリーブの変形可能領域は変形しにくい領域の強度に比べて弱い強度を有している。
【0003】
「ブラインドリベット」とも呼ばれるこのタイプの固定具は例えば資料US3,236,143で知られており、固定具はさらに破断の喉の位置で破壊可能な把持部を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を読み取りやすくするために本発明の理解に必要な部品だけを表示している。同じ部品は他の図でも同じ記号を付けている。以降の説明で示すサイズは公称値とする。機械設計の慣例に従って公差、例えば0.1mm、はこれらサイズの全てまたはいくつかに適用される。
【0013】
図1から3を参照して本発明の実施例に従う固定具10はねじ12およびスリーブ30を含む。ねじ12は把持部14、破壊喉16、沈められた頭18、円筒形の幹20および雄ねじ切部22を含む。
【0014】
破壊喉16はねじ12の最小直径を示すようにサイズが決定され、所定の設置牽引応力に耐えることができ、所定のねじり応力によって破壊される。
【0015】
ねじ12はねじの沈められた頭18を受け入れるように広げられたカラー32および管状の幹34を含むスリーブ30の中へ小さな間隙で挿入される。構造体の中へ固定具10を設置する前では管状の幹34の外部表面は円筒形である。
【0016】
管状の幹34はカラーと反対側先端で雌ねじ切部36を有し、カラーと雌ねじ切部の間でその内部表面が円筒形で滑りやすい部分38、すなわち雌ねじが切られていない部分を有する。
図2の例では管状の幹の壁の公称厚みEは一定である。ねじ12の雄ねじ切部とスリーブ30の雌ねじ切部は補完的である。これらは航空機の固定具で広く使用されている規格AS8879に適合したねじである。
【0017】
固定具10の長さは組み立てる構造体の厚みに従い、その公称厚みは最小厚みと最大厚みの間で変化する。構造体の公称厚みの間隔は通常1/16インチ(1.5875mm)ピッチで変化する。従って固定具10は最小を締め付ける能力と最大を締め付ける能力を示し、構造体の公称値の最小と最大の間で変化する厚みを組み立てることができる。固定具が締付できる最小の厚みに対応する面は「グリップmin」または「最小締付面」と呼ばれ、図では「Gmin」の記号を付けている。固定具が締付できる最大の厚みに対応する面は「グリップmax」または「最大締付面」と呼ばれ、図では「Gmaxの記号を付けている。固定具上でGmaxとGminの距離は頭が沈められている場合(
図2)はカラー32の先端から、頭が突出している場合はカラーの下から測定される。
【0018】
スリーブ30の全長は連続して隣接する3つの領域に分割される。第一領域A(
図2)はカラー32および隣接する内部表面が滑りやすい管状の幹34の一部を含む。領域Aは変形しにくい。領域Aは大きくても固定具が組み立てることができる構造体の最小の厚み(Gmin)の長さまで伸びる。
【0019】
第二の領域B、いわゆる変形可能領域は滑りやすい内部表面を有する管状の幹34の残りに渡って伸びる。スリーブの領域Bは変形されて組み立てすべき構造物のブラインド側を支持するバルブを形成することを目的とする。バルブの形成を容易にするために領域Bは変形不可能領域の強度に比べて弱体化された強度を示さなければならない。弱体化は変形可能領域Bの硬度を減少させることによって得られる。その場合、変形が変形可能領域Bで選択的に実行されるように変形可能領域Bの硬度は変形不可能領域Aの硬度に比べて少なくとも20%小さくなければならず、その差異は実際に使用される材料に依存する。硬度の減少は例えば誘導装置を使用して局部的にリング状にアニーリングすることによって達成される。
【0020】
スリーブは硬度の異なる材料を溶接して形成することもできる。変形可能領域Bは変形不可能領域Aよりはより容易に変形できる材料製とする。
【0021】
強度の弱体化はスリーブの公称厚みの局部的な減少によっても得られ、例えばスリーブ内部の滑りやすい表面の一部分に肩部を実現してこの領域の長さに渡ってスリーブの厚みを減少させる。
【0022】
スリーブの領域Bは固定具10が設置されていない場合、ねじの滑りやすい幹22の残りの部分および雄ねじ切部24の一部を覆う。
【0023】
スリーブの第三領域Cは雌ねじ切部36全体に広がる。この領域はナットの役目をする。固定具10がまだ設置されていない場合、この領域Cはねじ12の雄ねじ切部22の終点部とコンタクトしている。
【0024】
図3は
図1および2の固定具10が組み立てすべき2つの構造体40,42に設置された状態を示す。把持部14は破壊喉16の位置で壊され、ねじの頭18およびスリーブのカラー32だけが保存され、全体として固定具の頭を形成し、構造体40のアクセス可能な表面44に予め設けられたさら孔に沈んでいる。スリーブ30の第一領域Aは構造体40,42中に完全に沈んでいる。スリーブの第二領域Bは変形され、バルブ48を含んでおり、バルブの1つの面は構造体42のアクセス可能な面44とは反対側のブラインド側46とコンタクトしている。固定具20,32の頭とバルブ48の間に働く応力が構造体40,42を組み立てた状態に維持可能にしている。スリーブの第三領域Cは設置位置では幹22に隣接するねじの雄ねじ切部24の一部分を覆っている。固定具は例えばスリーブの雌ねじ切部を変形させるか、またはねじの雄ねじ切部に制動産物を追加することによってかみ合ったねじ部が緩まないように機械的または化学的制動手段を含んでいると有効である。
【0025】
本発明による固定具10は構造体の公称直径Dの孔の中に所定の間隙で挿入される外径を有している。一端固定具10が変形されるとバルブ48は締付範囲全体に渡って孔の公称直径Dの少なくとも1.5倍の外径を有する。正しく形成されたバルブは
図3に示されている。バルブが正しく形成されなかった場合、かしめの危険および/または剥がれの危険が増加する。バルブはこの際ブラインド面46と角度αを形成する「傘」(
図4A,4B)の形状をする可能性がある。[MA1]支持表面は著しく減少し、このことはかしめの危険増大をもたらす。正しくないもう1つの形状は2つのバルブの形成であり(
図4C)、ブラインド面46上の押し付け面の直径が不足する。
【0026】
固定具10は例えば設置工具を使用して設置され、工具は最初はカラー32を構造体40に押し付けてスリーブ30を構造体中に維持しながら、ねじの把持部14を牽引する。[MA2]
【0027】
この牽引によってねじの雄ねじ切部22およびスリーブの雌ねじ切部36は構造体のブラインド面46の方向へ導かれる。[MA3]管状の幹の変形可能領域Bは変形してバルブ48を形成し、その1つの面はブラインド面46を押し付ける位置へ来る。
【0028】
第二ステップでねじに回転運動が伝達され、ねじはねじ頭20がスリーブのカラー32で支持されるまでスリーブ14の中へねじ込まれる。
【0029】
最後のステップでねじの把持部14を破壊して固定具10の設置を完了する。そのために、設置工具は同じ方向に回転を続け、構造体およびねじにますます大きな応力を加える。破壊喉16は構造体に最小の応力を引き起こすように所定のトルク以上で破壊するように設計されている。喉16は一端トルクの閾値が達成されると破壊し、ねじ頭20が構造体40のアクセス可能表面すれすれに留まる。[MA4]
【0030】
ねじは例えばチタン合金Ti6Al4Vで潤滑剤層で覆われ、スリーブは例えばパッシベーションされたA286タイプのステンレススチールである。変形可能領域Bは局部アニーリングで得られる。この領域の強度は約550MPaで一方第一および第三領域A,Cの強度は1200MPaである。ねじおよびスリーブ用の他の材料も選択できる。
【0031】
正しい形で孔の直径の1.5倍の直径のバルブを形成するために、出願人は変形可能領域Bの長さLは2つの式で定義される最小値と最大値の間の値でなければならないことを明らかにした。
【0032】
出願人はこのようにして構造体の所定の公称厚み用の孔の1.5倍の直径のバルブを形成するためには、最小厚みから最大厚みの構成の中で、変形可能領域Bの長さLは下記の式(1)に従う最小長さLminよりも大きくなければならないことを明らかにした。
Lmin = D/2 + 2E + (Gmax - Gmin), (1)
【0033】
出願人はまた変形可能領域Bの長さLが下記の式(2)に従う最大長Lmax未満の時、バルブの形状は正しく、再現性が良い事を明らかにした。
Lmax = (E / 0,092) (2)
【0034】
式(1)および(2)の関係でDは固定具10が挿入されるべき孔の公称直径であり、Eは変形前のスリーブ30の管状の幹34の変形可能領域Bの壁の公称厚みである。
【0035】
0.092はテストで明らかにされた値である。この値よりも小さい時は
図4Aおよび4Bの「傘」または2つのバルブの形成を引き起こす可能性のある変形可能領域の不安定性の危険が明らかとなった。
【0036】
例えば、公称直径6.35mmに対して厚み0.625mmで変形可能領域の長さLが7.286mmを示すスリーブは
図4Bに示すような傘形に変形する。実際式(1),(2)によれば変形可能領域の長さLはLmin=6.408mmとLmax=6.789mmの間になければならない。式(2)で定義された最大長より大きい長さ7.286mmは全表面が構造体の背面を押し付けるような正しいバルブを形成することができない。
【0037】
他の例では、特許US6868757に記載され、請求項1の前書きの特徴を有し、ERGOTHECHの商標で市販されているブラインド固定具は公称直径6.35mmに対して厚み0.51mmで破壊可能領域Bの長さLが4.11mmを示し、正しいバルブに変形するがバルブの直径は孔の公称直径の1.30倍である。実際、アニーリングの長さLは式(1)による必要な最小長さ6.045mmよりも小さい。
【0038】
バルブが構造体の最小の厚み上で形成されるためには変形可能領域Bは大きくても固定具の最小締付面Gminで開始しなければならない。そうでない場合、バルブは構造体のブラインド面から離れた場所で形成され、構造体部品の締め付けの機能を保証しない。
【0039】
固定具の最大締付面Gmaxを超えると孔の直径の1.5倍の大きさのバルブを形成するためにはスリーブの壁は少なくとも距離(D/2+2E)に渡って十分に変形可能でなければならない。
【0040】
変形可能領域の長さLが式(2)を満足しない場合、バルブ゛は正しく形成されない。バルブは例えば傘形または2つのバルブの形状となる。
【0041】
例えば、公称直径D=6.35mmで「グリップ8」の孔に挿入される直径6.32mmの固定具は、公称厚みが12.70mm(8/16インチ)を有する構造体の部品を組み立てるように設計されているが、最小締付能力Gminとして10.914mmおよび最大締付能力Gmaxとして12.898mmを有している。この固定具は従って構造体の隣接する2つの厚み範囲をカバーするためにグリップの差異1/16インチよりも大きい1.984mm(1/16インチ+1/64インチ)の締付範囲を示している。スリーブの公称厚みEは特にスリーブを変形させるために必要な力と構造体の中に固定具を設置した後に保持する力を十分維持するために必要なねじの直径との間の妥協を保証するために0.75mmが選択される。変形可能領域Bの長さLは従って
Lmin = (6,35 / 2) + 2 x 0,75 + 1,984 = 6,67 mmよりも大きく
Lmax = (0,75 / 0,092) = 8,152 mmよりも小さくなければならない。
【0042】
その変形可能領域Bが局部アニーリングを経験した固定具10の場合、最小締付面Gminから長さLに渡って硬度は十分に弱体化されていなければならず、Lは6.67mmと8.152mmの間で選択される。
【0043】
同じ外径、同じ厚みEで異なった長さのスリーブで異なった厚みの構造体を組み立てる2つの固定具10の変形可能領域Bの長さは全て同じ長さLを示すことに注目する必要がある。その理由はこの長さの最小値と最大値を決める事ができるサイズは孔の直径Dとスリーブの厚みだけだからである。これら2つの固定具の差異は変形可能領域Bの始まる点にあり、その点は大きくても固定具の最小締付面Gmin内にあり、その位置は固定具の長さに依存する。
【0044】
例えば前記の直径8の固定具10用として表1は締め付ける公称厚みの複数の例に対して最小締付面Gminの位置、変形可能領域Bの長さLminおよびLmaxを示す。
【0046】
直径8で異なる長さの複数の固定具で変形可能領域Bの長さが等しいものが存在することは可能である。
【0047】
図5に固定具10の最小締付面Gminからの距離としての変形可能領域の長さLを6.86mmとしてA286製のスリーブの硬度の勾配の例が示されている。
【0048】
図5の硬度のグラフは変形可能領域Bの中で約155HVの「低い」平らな部分および変形不可能領域AおよびCの中で2つの約405HVの「高い」平らな部分を示している。[MA5]低い平らな部分の長さは長さL未満であってよい。領域Bが実際に変形されるためには長さLに渡って硬度のレベルは十分に弱い必要がある。出願人はステンレススチールA286製のスリーブの変形可能領域Bは変形不可能領域Aの硬度の45%未満を示さなければならないことを明らかにした。変形可能領域Bは例えば局部アニーリングでスチールA286の硬度を約220HVに低下させて得られる。局部アニーリングは変形不可能領域Aの高い平らな部分と変形可能領域Bの低い平らな部分ならびに低い平らな部分と高い平らな部分Cの間に遷移領域を生成する。変形可能領域Bは式(1)および(2)で定義される最小値および最大値の間に含まれる長さLを有するからにはこれの傾斜は位置をずらすこともできるし、異なる傾斜を得ることもできる。
【0049】
材料A286の利点は局部アニーリングによってアニーリングされた領域の材料の硬度を大きく減少させることができる事である。変形可能領域Bの変形の際に、材料は冷間加工されて硬度は再度増加する。結果として形成されたバルブは構造体の部品に互いに引き離そうとする応力が働いたとき、構造体のブラインド面に対するバルブの押し付け面に加えられるせん断応力に対抗する十分な強度を示す。
【0050】
図5の硬度の値の出発点および傾斜はmmのオーダであり得るアニーリングプロセスによる許容誤差も考慮して明らかにされた。
【0051】
他の材料もスリーブ形成に使用できる。それは例えば1つまたは複数のチタン、1つまたは複数のチタン合金および溶接してスリーブを形成したチタンとチタンの合金の組み合わせである。チタンおよびチタン合金の利点は本質的に密度が小さい事、および電腐食に対して良好な耐久性を有することで、これによって各種材料中に設置することが可能になる。
【0052】
例えば、出願人はベータCチタン、言い換えると準安定ベータ型、で製造したスリーブの変形テストを実行した。この合金は融解点のすぐ上の温度範囲では相移転を示さない。それが理由でこの合金が選択された。局部アニーリングに高い温度、それも非常に高い温度を使用すると材料を十分に弱体化させ、スリーブの変形可能領域を変形できる可能性があることが仮定されていた。このようにして出願人はアニーリング温度範囲850℃〜1150℃がアニーリングされていない領域に比べて硬度が小さい変形可能領域を得ることができることを発見した。アニーリングされていない領域で平均硬度は470HVでアニーリングされた変形可能領域では硬度の値は約300HVでA286製スリーブより130から150HV大きい。ベータCチタン合金製のスリーブで変形可能領域の硬度が300HV以下で長さが式(1)と(2)の間で定義された範囲内で選択されたスリーブは固定具の締付最小能力に対応する最小厚みを示す構造体に挿入したとき大きなバルブを形成する。
【0053】
他の実施例では、「グリップ8」の構造体、すなわち公称厚みが12.70mm(8/16インチ)を有する構造体の部品を組み立てるために公称直径D=4.83 mm(6/32インチ)の孔に挿入される直径4.80 mmの固定具は、最小締付能力Gminとして10.914mmおよび最大締付能力Gmaxとして12.898mmを有している。従ってその固定具は1.984mm(1/16インチ+1/64インチ)の締付範囲を示している。直径6の固定具のスリーブの厚みEは0.58mmである。変形可能領域Bの長さLは従って
Lmin = (4,83 / 2) + 2 x 0,58 + 1,984 = 5,55 mmよりも大きく、
Lmax = (0,58 / 0,092) = 6,304 mmよりも小さい。
【0054】
固定具10の場合には変形可能領域Bの硬度は最小締付面Gminから延びる長さL上で十分に弱くなければならない。ここでLは5.55mmと6.304mmの間で選択される。
【0055】
本発明による固定具は構造的に上記に記述された唯一の例に制限されない。例えば固定具の頭は沈みこむ代わりに突起していてもよい。把持部は他の形状をしていても良いし、無くてもよい。その場合、固定具は例えば唯スリーブを固定してねじをスリーブの中にねじ込むだけで設置される。ねじは円筒形の幹を含まなくてもよく、頭の下から雄ねじ切の幹だけを含んでよい。
【0056】
スリーブ14は異なる材料を溶接した2つのスリーブ部品および第一部品の外部表面に圧縮喉を含んでよい。変形として、スリーブ14はスリーブの唯一の部品およびその外部表面に環状喉を含んでよい。
【0057】
同様にねじおよびスリーブの材料は前記の材料とは異なっていてよく、スリーブの異なる領域の厚みと硬度値はスリーブおよびねじの材料に応じて適合されなければならない。
【0058】
前記のように変形可能領域Bの強度は長さLに渡って変形可能領域Bの厚みを減少させることによって弱体化させることができ、長さLは式(1)および(2)で定義された最小値と最大値の間に含まれていなければならず、ここで壁の厚みEは変形可能領域Bの厚みである。