(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885888
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】足場設置方法及び足場設置構造
(51)【国際特許分類】
E04G 3/24 20060101AFI20210603BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20210603BHJP
E01D 11/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
E04G3/24 302H
E01D22/00 A
E01D11/00
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-30488(P2018-30488)
(22)【出願日】2018年2月23日
(65)【公開番号】特開2019-143425(P2019-143425A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】505440631
【氏名又は名称】本州四国連絡高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592185585
【氏名又は名称】株式会社ブリッジ・エンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】506122246
【氏名又は名称】エム・エムブリッジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】麓 興一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 和也
(72)【発明者】
【氏名】梶野 茂
(72)【発明者】
【氏名】前川 勉
(72)【発明者】
【氏名】徳重 雅史
(72)【発明者】
【氏名】吉山 純平
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−040189(JP,U)
【文献】
特開平01−097706(JP,A)
【文献】
特開2001−012074(JP,A)
【文献】
特開2004−270237(JP,A)
【文献】
特開平08−004277(JP,A)
【文献】
特開昭59−173407(JP,A)
【文献】
米国特許第05007501(US,A)
【文献】
保田雅彦ほか,明石海峡大橋における鋼構造物の設計施工,溶接学会誌,日本,一般社団法人溶接学会,1991年12月 5日,1991年60巻8号,p.642−p.650
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/00,3/24,3/30
E04G 21/14−21/16
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物における上下方向複数の足場設置箇所ごとに足場を設置する足場設置方法において、
所定の大きさを有する複数の足場ユニットを吊り下げて一部の足場設置箇所に幅方向に隣接して配列することにより足場を設置し、
前記足場設置箇所における作業が終了した後、各足場ユニットを一つまたは複数ずつ吊り下げて上方または下方に移動して上下方向の他の足場設置箇所に幅方向に隣接して配列することにより、上下方向の他の足場設置箇所に足場を設置するとともに、
足場ユニットの位置を互いに上下方向にずらすことにより、傾斜した足場設置箇所に沿うように足場ユニットが斜め状に隣接して配列された足場を設置する
ことを特徴とする足場設置方法。
【請求項2】
互いに異なった大きさを有する複数種類の足場ユニットを組み合わせて足場設置箇所ごとに足場を形成する
ことを特徴とする請求項1記載の足場設置方法。
【請求項3】
幅の異なる他の足場設置箇所に足場を移動する際に足場設置箇所の幅に応じて足場ユニットの数を増減する
ことを特徴とする請求項1または2記載の足場設置方法。
【請求項4】
前記各足場ユニットを一つまたは複数ずつ一つのクレーンで吊り下げて上下方向の他の足場設置箇所に順次設置する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の足場設置方法。
【請求項5】
前記構造物は、互いに橋軸直角方向に間隔をおいて配置された一対の塔柱と、各塔柱間に互いに上下方向に間隔をおいて配置された複数の斜材とを有する橋梁の主塔であって、
上下方向各位置の斜材ごとに足場を設置する
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の足場設置方法。
【請求項6】
前記構造物の各塔柱が下方から上方に向かって互いに間隔が狭くなるように傾斜することにより各斜材における足場設置箇所の幅が互いに異なる
ことを特徴とする請求項5記載の足場設置方法。
【請求項7】
構造物における上下方向複数の足場設置箇所ごとに足場が設置される足場設置構造において、
前記足場は、所定の大きさを有する複数の足場ユニットを吊り下げて一部の足場設置箇所に幅方向に隣接して配列することにより設置され、
各足場ユニットは、一つまたは複数ずつ吊り下げて上方または下方に移動して上下方向の他の足場設置箇所に幅方向に隣接して配列することにより、上下方向の他の足場設置箇所に設置可能に構成されるとともに、
前記足場は、足場ユニットの位置を互いに上下方向にずらすことにより、傾斜した足場設置箇所に沿うように足場ユニットが斜め状に隣接して配列されている
ことを特徴とする足場設置構造。
【請求項8】
前記足場は、互いに異なった大きさを有する複数種類の足場ユニットを組み合わせて足場設置箇所ごとに形成される
ことを特徴とする請求項7記載の足場設置構造。
【請求項9】
前記足場は、幅の異なる他の足場設置箇所に移動される際に足場設置箇所の幅に応じて足場ユニットの数を増減可能に構成されている
ことを特徴とする請求項7または8記載の足場設置構造。
【請求項10】
前記足場は、各足場ユニットが一つまたは複数ずつ一つのクレーンで吊り下げられて上下方向の他の足場設置箇所に順次設置されるように構成されている
ことを特徴とする請求項7、8または9記載の足場設置構造。
【請求項11】
前記構造物は、互いに橋軸直角方向に間隔をおいて配置された一対の塔柱と、各塔柱間に互いに上下方向に間隔をおいて配置された複数の斜材とを有する橋梁の主塔であって、
前記足場は上下方向各位置の斜材ごとに設置される
ことを特徴とする請求項7、8、9または10記載の足場設置構造。
【請求項12】
前記構造物の各塔柱が下方から上方に向かって互いに間隔が狭くなるように傾斜することにより各斜材における足場設置箇所の幅が互いに異なる
ことを特徴とする請求項11記載の足場設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば吊橋の主塔等、大型構造物の点検、補修、塗装等を行うための足場を設置する足場設置方法及び足場設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、海峡や河川等に架設される吊橋は、メインケーブルを支持する主塔を備えている。主塔は、通常一対の塔柱と、各塔柱間に配置される水平材及び斜材とから構成される。
【0003】
このような吊橋の主塔において、例えば斜材の塗装を塗り替える場合には、斜材に足場を設置して作業する必要がある。通常、吊橋の主塔のような大型構造物の斜材では、単管組みの足場を設置すると、膨大な数の足場の材料を高所で人力により組立及び解体することになる、このため、足場の設置及び撤去作業に多大な労力と時間を要し、足場の設置コストが高くなるという問題がある。
【0004】
一方、高所作業用の足場として、足場自体を施工部位の下方から作業箇所へ上昇させる昇降式足場が知られており(例えば、特許文献1参照)、上下方向に移動しながら作業する場合は、このような昇降式足場が適している。
【0005】
また、構造物の上方からクレーン等で吊り下げた作業用のゴンドラを昇降させることにより、上下方向任意の位置の作業箇所にゴンドラを移動させるようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−246894号公報
【特許文献2】実開平1−153050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前者の昇降式足場では、足場を移動自在に支持するガイドマストが必要となるが、ガイドマストの設置には一定の間隔で構造物とマストとを接続するつなぎ梁が必要になる。しかしながら、吊橋の主塔では、各斜材の部材間隔が大きく、このような昇降式足場を採用しようとした場合、つなぎ梁の間隔が長くなりすぎてガイドマストの設置が困難である。更に、吊橋によっては各塔柱が内側に傾斜しているものもあり、この場合は各塔柱の間隔が下方から上方に向って徐々に狭くなる。このため、昇降式足場のような一定の幅の足場を昇降させるものでは、作業領域の幅の変化に対応することができないという問題もある。
【0008】
また、後者のような吊り下げ式のものは、ガイドマストを用いてゴンドラを構造物に支持する必要がないので、構造物側の形状に依存することはないが、このようなゴンドラは構造物の点検や局部の補修等を短期間で部分的に行うために用いられるものであり、大型構造物の広範囲に亘って長期間使用する足場としては適していない。即ち、例えば主塔における斜材の全幅に亘る足場として使用するためには、長期間に亘って大型クレーンまたは複数のクレーンでゴンドラを高所から吊り下げておく必要があり、足場の設置コスト及び安全面で現実的ではないという問題がある。
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大型構造物に足場を設置する場合において、足場設置作業を効率よく行うことができるとともに、足場設置コストの低減及び安全性の向上を図ることのできる足場設置方法及び足場設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記目的を達成するために、構造物における上下方向複数の足場設置箇所ごとに足場を設置する足場設置方法において、所定の大きさを有する複数の足場ユニットを吊り下げて一部の足場設置箇所に幅方向に
隣接して配列することにより足場を設置し、前記足場設置箇所における作業が終了した後、各足場ユニットを一つまたは複数ずつ吊り下げて上方または下方に移動して上下方向の他の足場設置箇所に幅方向に
隣接して配列することにより、上下方向の他の足場設置箇所に足場を設置するとともに、足場ユニットの位置を互いに上下方向にずらすことにより、傾斜した足場設置箇所に沿うように足場ユニットが
斜め状に隣接して配列された足場を設置するようにしている。
【0011】
また、本発明は前記目的を達成するために、構造物における上下方向複数の足場設置箇所ごとに足場が設置される足場設置構造において、前記足場は、所定の大きさを有する複数の足場ユニットを吊り下げて一部の足場設置箇所に幅方向に
隣接して配列することにより設置され、各足場ユニットは、一つまたは複数ずつ吊り下げて上方または下方に移動して上下方向の他の足場設置箇所に幅方向に
隣接して配列することにより、上下方向の他の足場設置箇所に設置可能に構成されるとともに、前記足場は、足場ユニットの位置を互いに上下方向にずらすことにより、傾斜した足場設置箇所に沿うように足場ユニットが
斜め状に隣接して配列されている。
【0012】
これにより、足場を設置した足場設置箇所における作業が終了した後、各足場ユニットが一つまたは複数ずつ吊り下げられて上下方向の他の足場設置箇所に移動され、他の足場設置箇所に新たに足場が設置されることから、例えば足場の設置に必要な重機は各足場ユニットを吊り下げて移動させるための小型のクレーンのみとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、足場の設置に必要な重機は各足場ユニットを吊り下げて移動させるための小型のクレーンのみでよいので、大型重機の使用が困難な現場でも足場を設置することができる。この場合、予め工場や作業ヤード等で組み立てた足場ユニットを用いることにより、現場での足場の組立及び解体に要する工数を大幅に少なくすることができるとともに、工数減により足場設置の工期を短縮することもできる。また、地上で組み立てた足場ユニットをクレーンで設置及び移動することができるので、高所での人力による足場の組立及び解体作業を大幅に削減することができ、安全性の向上を図ることができる。更に、幅の異なる他の足場設置箇所に足場を移動する際に足場設置箇所の幅に応じて足場ユニットの数を増減することにより、例えば上下方向の位置によって幅が変化する足場設置箇所にも対応することができる。
また、各足場ユニットの位置を互いに上下方向にずらすことにより、傾斜した足場設置箇所に沿うように足場を設置するようにしたので、例えば吊橋の塔柱間に設けられた斜材であっても斜材の形状に応じた足場を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態を示す吊橋の主塔の正面図
【
図3】第2斜材部に足場を設置した状態を示す正面図
【
図10】第2斜材部から第3斜材部への足場ユニット移動手順を示す正面図
【
図11】第3斜材部に足場を設置した状態を示す正面図
【
図12】第4斜材部に足場を設置した状態を示す正面図
【
図13】第5斜材部に足場を設置した状態を示す正面図
【
図14】第2〜第5斜材部における足場ユニットの数を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至
図14は本発明の一実施形態を示すもので、例えば吊橋の点検、補修、塗装等を行うための足場を設置する足場設置方法及び足場設置構造を示すものである。尚、以下の説明における幅方向は吊橋の橋軸直角方向を示し、奥行方向は吊橋の橋軸方向を示す。
【0016】
同図に示す吊橋の主塔は、メインケーブル1aを支持する塔柱1を吊構造部2の橋軸直角方向両側にそれぞれ設けるとともに、複数の斜材3及び上下の水平材4によって塔柱1間を連結したものである。吊構造部2は床版2a及び補鋼桁2b等からなり、複数のワイヤーロープ1bによってメインケーブル1aから吊り下げられている。斜材3は塔柱1間をX状に交差するようにつなぐ構造であり、互いに上下方向に間隔をおいて設けられている。この場合、各斜材3は、吊構造部2の下方に一箇所、橋桁2の上方に四箇所設けられ、下方から順に第1斜材部S1 、第2斜材部S2 、第3斜材部S3 、第4斜材部S4 及び第5斜材部S5 とする。また、各塔柱1は互いに主塔中心に向かって傾斜しており、これにより各斜材部S1 〜S5 の幅が下方から上方に向かって徐々に狭くなっている。また、水平材4は、塔柱1を水平方向につなぐ構造であり、塔頂部及び吊構造部2の真下にそれぞれ配置されている。
【0017】
本実施形態においては、以下の足場ユニットを用いて足場10を設置する。尚、本実施形態では、複数の足場設置箇所である第2斜材部S2 〜第5斜材部S5 に順次足場を設置する場合を示す。
【0018】
足場10は、斜材3の交差部以外に配置される第1及び第2の足場ユニット11,12と、斜材3の交差部に配置される第3、第4及び第5の足場ユニット13,14,15を用いて構成される。
【0019】
第1及び第2の足場ユニット11,12は、
図5に示すように、各ユニット11,12の下端に配置された作業床10aと、作業床10aの幅方向両端及び奥行方向両端から上方に延びる複数の縦フレーム材10bとからなり、各縦フレーム材10bは、X状に交差する複数の補強部材10cと、水平方向に延びる複数の横フレーム材10dによって連結されている。作業床10aは、例えば金属製または木製の板状の床材を複数配列することにより形成される。第1及び第2の足場ユニット11,12の上部には奥行方向一方に延出する固定部材10eが設けられ、固定部材10eは斜材3の上面に固定されるようになっている。第1の足場ユニット11には幅方向に1つの作業床10aが設けられ、第2の足場ユニット12には幅方向に2つの作業床10aが設けられている。この場合、第2の足場ユニット12は、各作業床10a及びその上方部分が互いに上下方向にずれるように形成されている。また、第1及び第2の足場ユニット11,12では、各ユニット11,12の下端のみに作業床10aが設けられているが、作業床10aを上下複数段に設ける代わりに上下2段の階段10fを設け、作業者が階段10fにより斜材3に沿って上下方向に斜めに移動可能とするとともに、階段10fを作業床としても使用できるようになっている。
【0020】
第3〜第5の足場ユニット13〜15は、
図6に示すように、互いに上下方向に間隔をおいて配置された複数の作業床10aと、作業床10aの幅方向両端及び奥行方向両端から上方に延びる複数の縦フレーム材10bとからなり、各縦フレーム材10bは、X状に交差する複数の補強部材10cと、水平方向に延びる複数の横フレーム材10dによって連結されている。第3〜第5の足場ユニット13〜15の上部には奥行方向一方に延出する固定部材10eが設けられ、固定部材10eは斜材3の上面に固定されるようになっている。また、第3〜第5の足場ユニット13〜15は、それぞれ各作業床10aの数が上下方向に異なるように形成されている。第3の足場ユニット13は上下10段の作業床10aが幅方向に1つずつ設けられており、第4の足場ユニット14は上下8段の作業床10aが幅方向に1つずつ設けられ、第5の足場ユニット15は上下7段の作業床10aが幅方向に1つずつ設けられている。また、第3〜第5の足場ユニット13〜15には、作業者が各作業床10a間を上下方向に移動するための図示しない梯子または階段が設けられている。
【0021】
即ち、1つの作業床10aの幅をWとすると、
図5及び
図6に示すように、第1、第3、第4及び第5の足場ユニット11,13,14,15の幅はそれぞれWとなり、第2の足場ユニット12の幅は2Wとなる。
【0022】
次に、前記各足場ユニット11〜15を用いて各斜材3に足場10を設置する方法を説明する。尚、足場10を設置する前に、吊構造部2には路面の上方を覆う防護工5が設けられ、防護工5の上面は足場設置用の作業ヤードとして使用される。また、塔頂部の水平材4には足場ユニットを吊り上げるためのクレーン6が設置されている。
【0023】
まず、
図3に示すように第2斜材部S2 に足場10を設置する。その際、予め工場や防護工5上の作業ヤードで組み立てられた各足場ユニット11〜15を1つずつクレーン6で吊り上げて第2斜材部S2 の斜材3に固定する。例えば、第1の足場ユニット11を設置する場合、
図7に示すように第1の足場ユニット11の上端にクレーン6のワイヤ6aを連結して斜材3の奥行方向一方の面側に吊り上げた後、
図8に示すように第1の足場ユニット11を斜材3に向かって移動し、第1の足場ユニット11の固定部材10dを斜材3の上面に固定具7を介して固定する。続いて、
図9に示すように斜材3の奥行方向他方の面側に反対側の第1の足場ユニット11を吊り上げ、前述と同様にして斜材3の上面に固定する。この後、各第1の足場ユニット11の最下位の横フレーム材10d同士を横フレーム連結梁10gで連結するとともに、横フレーム連結梁10gに作業床10aを取り付けることにより、斜材3の側面(奥行方向両面)及び下面を囲んだ第1の足場ユニット11の設置が完了する。他の足場ユニット12〜15についても同様に設置する。また、各第1の足場ユニット11と各第2の足場ユニット12は、斜材3の傾斜に沿うように互いに上下方向にずれるように配置される。尚、以下の説明における足場ユニットの数とは、横フレーム連結梁10gで連結された奥行方向一対の足場ユニットを1つの足場ユニットとする数である。
【0024】
第2斜材部S2 に設置される各足場ユニット11〜15の数は、斜材3の交差部以外では、斜材3の塔柱1側の下部にそれぞれ第1の足場ユニット11が2つずつ、第2の足場ユニット12が2つずつ設置され、斜材3の塔柱1側の上部にはそれぞれ第1の足場ユニット11が2つずつ、第2の足場ユニット12が2つずつ設置される。その際、各第1の足場ユニット11は斜材3の塔柱1側に互いに横並びで配置され、各第2の足場ユニット11は斜材3の主塔中心側に互いに横並びで配置される。また、斜材3の交差部では、第3、第4及び第5の足場ユニット13,14,15がそれぞれ1つずつ主塔中心に対して対称に設置される。その際、第5の足場ユニット15が最も主塔中心側に配置され、第5の足場ユニット15の隣に第4の足場ユニット14が配置され、第4の足場ユニット15の隣に第3の足場ユニット13が配置される。
【0025】
次に、第2斜材部S2 における作業が終了した後は、第2斜材部S2 の足場ユニットを第3斜材部S3 に移動し、第3斜材部S3 に新たに足場10を設置する。その際、
図10に示すようにクレーン6によって各足場ユニット11〜15を個々に鉛直上方に吊り上げ、
図11に示すように第3斜材部S3 の斜材3の対応位置に設置する。ここで、第3斜材部S3 の上側の幅WU3 は、第2斜材部S2 の上側の幅WU2 よりも狭く、第2斜材部S2 と同じ幅の足場ユニットを配置することができないので、交差部以外の上側の斜材3には、塔柱1側の第1の足場ユニット11を左右1つずつ減らし、他の第1及び第2の足場ユニット11,12のみを第3斜材部S3 の上側に移動する。また、第3斜材部S3 の下側の幅WL3 も第2斜材部S2 の下側の幅WL2 よりも狭いが、交差部以外の下側の斜材3には、第2斜材部S2 と同じ幅の足場ユニットを設置可能であるため、下側の第1及び第2の足場ユニット11,12は全て第3斜材部S3 の下側に移動する。尚、交差部に設置される第3、第4及び第5の足場ユニット13,14,15は、第2〜第5斜材部S2 〜S5 で共通であるため、第2〜第5斜材部S2 〜S5 のいずれの足場設置においても数の変更はない。
【0026】
続いて、第3斜材部S3 における作業が終了した後は、第3斜材部S3 の足場ユニットを第4斜材部S4 に移動し、
図12に示すように第4斜材部S4 に新たに足場10を設置する。その際、前述と同様、クレーン6によって各足場ユニット11〜15を個々に鉛直上方に吊り上げ、第4斜材部S4 の斜材3の対応位置に設置する。ここで、第4斜材部S4 の上側の幅WU4 は第3斜材部S3 の上側の幅WU3 よりも狭いが、交差部以外の上側の斜材3には、第3斜材部S3 と同じ幅の足場ユニットを設置可能であるため、上側の第1及び第2の足場ユニット11,12は全て第4斜材部S4 の上側に移動する。また、第4斜材部S4 の下側の幅WL4 は、第3斜材部S3 の下側の幅WL3 よりも狭く、第3斜材部S3 の下側と同じ幅の足場ユニットを配置することができないので、交差部以外の下側の斜材3には、下側の塔柱1側の第1の足場ユニット11を左右1つずつ減らし、他の第1及び第2の足場ユニット11,12のみを第4斜材部S4 の下側に移動する。
【0027】
次に、第4斜材部S4 における作業が終了した後は、第4斜材部S4 の足場ユニットを第5斜材部S5 に移動し、
図13に示すように第5斜材部S5 に新たに足場10を設置する。その際、前述と同様、クレーン6によって各足場ユニット11〜15を個々に鉛直上方に吊り上げ、第5斜材部S5 の斜材3の対応位置に設置する。ここで、第5斜材部S5 の上側の幅WU5 は、第4斜材部S4 の上側の幅WU4 よりも狭く、第4斜材部S4 の下側と同じ幅の足場ユニットを配置することができないので、交差部以外の上側の斜材3には、上側の塔柱1側の第1の足場ユニット11を左右1つずつ減らし、他の第2の足場ユニット12のみを第5斜材部S5 に移動する。また、第5斜材部S5 の下側の幅WL5 も第4斜材部S4 の下側の幅WL4 よりも狭いが、交差部以外の下側の斜材3には、第4斜材部S4 と同じ幅の足場ユニットを設置可能であるため、下側の第1及び第2の足場ユニット11,12は全て第5斜材部S5 の下側に移動する。
【0028】
このように、本実施形態によれば、所定の大きさを有する複数種類の足場ユニット11〜15を吊り下げて一部の足場設置箇所(第2〜第5斜材部S2 〜S5 )ごとに幅方向に配列することにより足場10を設置し、足場10を設置した足場設置箇所における作業が終了した後、足場ユニット11〜15を1つずつ吊り下げて上下方向他の足場設置箇所に移動して幅方向に配列することにより、上下方向の他の足場設置箇所に新たに足場10を設置するようにしたので、足場10の設置に必要な重機は各足場ユニット11〜15を吊り下げて移動させるための小型のクレーン6のみであり、大型重機の使用が困難な現場でも足場10を設置することができる。この場合、予め工場や作業ヤード等で組み立てた足場ユニット11〜15を用いることにより、現場での足場の組立及び解体に要する工数を少なくすることができるとともに、工数減により足場設置の工期を短縮することもできる。また、地上で組み立てた足場ユニット11〜15をクレーン6で設置及び移動することができるので、高所での人力による足場の組立及び解体作業を大幅に削減することができ、安全性の向上を図ることができる。
【0029】
更に、互いに異なった大きさを有する複数種類の足場ユニット11〜15を組み合わせて足場設置箇所ごとに足場10を形成するようにしたので、各足場設置箇所の幅に応じた足場10を容易に設置することができる。
また、足場10の各足場ユニット11〜15のうち第1の足場ユニット11の数を減らして上方に移動することにより、幅の異なる他の足場設置箇所に足場10を設置するようにしたので、各塔柱1が主塔中心側に傾斜していることにより上下方向の位置によって幅が変化する足場設置箇所にも対応することができる。この場合、幅の小さい第1の足場ユニット11を足場設置箇所の幅調整用の足場ユニットとして設置し、幅の大きい第2の足場ユニット12を各足場設置箇所で供用される足場ユニットとして設置するようにしたので、足場10の幅を第1の足場ユニット11の数により調整することができるとともに、幅の調整範囲外では第2の足場ユニット12を用いて効率よく足場の移動を行うことができる。
【0030】
更に、各足場ユニット11〜15の位置を互いに上下方向にずらすことにより、傾斜した足場設置箇所に沿うように足場を設置するようにしたので、各塔柱1間に設けられた斜材3であっても斜材3の形状に応じた足場10を容易に形成することができる。
【0031】
尚、前記実施形態では、各足場ユニット11〜15を下方から上方に足場ユニットの数を減らしながら移動させるようにしたものを示したが、上方から下方に足場ユニットの数を増やしながら移動させるようにしてもよい。
【0032】
また、前記実施形態では、足場ユニット11〜15をクレーン6で1つずつ吊り下げて上方に移動させるようにしたものを示したが、足場ユニットの重量やクレーンの能力によっては足場ユニットを複数ずつ吊り下げて移動させることも可能である。
【0033】
更に、前記実施形態では、各塔柱1が主塔中心側に向かって傾斜したものを示したが、塔柱の傾斜していないもの、或いは塔柱間に水平材を用いた吊橋や斜張橋の主塔、更には橋梁以外の構造物にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…塔柱、2…吊構造部、3…斜材、10…足場、10a…作業床、11…第1の足場ユニット、12…第2の足場ユニット、13…第3の足場ユニット、14…第4の足場ユニット、15…第5の足場ユニット。