特許第6885889号(P6885889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885889
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   H04N1/00 C
   H04N1/00 127Z
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-36643(P2018-36643)
(22)【出願日】2018年3月1日
(62)【分割の表示】特願2016-28181(P2016-28181)の分割
【原出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-110446(P2018-110446A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2018年3月1日
【審判番号】不服2020-8561(P2020-8561/J1)
【審判請求日】2020年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】佐枝 政夫
【合議体】
【審判長】 五十嵐 努
【審判官】 樫本 剛
【審判官】 渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−138073(JP,A)
【文献】 特開2008−200898(JP,A)
【文献】 特開2012−104035(JP,A)
【文献】 特開2007−318519(JP,A)
【文献】 特開2012−37986(JP,A)
【文献】 特開2002−236572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を有する携帯型情報処理装置との間で近距離無線通信を行う近接通信部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記近接通信部を介した通信により通信可能範囲にある携帯型情報処理装置を認識する認識部と、
ジョブ設定を受信するジョブ設定部と、
通信可能な外部の機器からジョブの開始指示を受信してそのジョブを実行するジョブ制御部とを含み、
前記ジョブ設定部は、前記携帯型情報処理装置との間の近距離無線通信が確立した後に前記携帯型情報処理装置で設定が行われたジョブ設定を受信し、
前記ジョブ制御部は、実行待ちのジョブを削除すべき指示を前記携帯型情報処理装置から受信し、前記削除の指示が前記携帯型情報処理装置でジョブ設定が行われたジョブに対するものであれば削除する画像形成装置。
【請求項2】
画像形成装置においてジョブ設定画面を表示する操作部をさらに備え、
前記ジョブ設定部が受信するジョブ設定は、前記操作部に表示されるジョブ設定画面を用いて設定され、
前記ジョブ制御部は、ジョブの開始指示あるいはジョブの実行開始を待っているジョブを削除すべき指示を前記操作部から受信する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
携帯型情報処理装置との間で近距離無線通信が可能な画像形成装置を制御するコンピュータが実行するステップとして、
近距離無線通信により通信可能範囲にある携帯型情報処理装置を認識する認識ステップと、
ジョブ設定を受信するジョブ設定ステップと、
通信可能な外部の機器からジョブの開始指示を受信してそのジョブを実行するジョブ制御ステップと、を備え、
前記ジョブ設定ステップは、前記携帯型情報処理装置との間の近距離無線通信が確立した後に前記携帯型情報処理装置で設定が行われたジョブ設定を受信し、
前記ジョブ制御ステップは、実行待ちのジョブを削除すべき指示を前記携帯型情報処理装置から受信し、前記削除の指示が前記携帯型情報処理装置でジョブ設定が行われたジョブに対するものであれば削除する画像形成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯型情報処理装置との間で近距離無線通信を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人認証に近距離無線通信の技術を用いるものが普及している。具体的には、非接触ICカードを用いた社員証やおサイフケータイ(登録商標)などがある。なお、近距離無線通信は、広義には通信可能距離の短い無線通信を指すが、狭義には近接場型の無線通信(Near Field Communication、略してNFCともいう)を指す。NFCは、通信可能範囲(以下、フィールドともいう)が約1メートル〜数センチメートル程度で、例えばFeliCa(登録商標)やMIFARE(登録商標)などの規格がある。広義の近距離無線通信は、NFCの他にWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの規格を含む。この明細書で近距離無線通信は、Wi-FiやBluetoothなどを含む広義の意味で用いる。
【0003】
近年は、多数のスマートフォン、タブレットコンピュータあるいはモバイルコンピュータなどの携帯型情報処理装置が近距離無線通信の機能を備えている。そして、携帯型情報処理装置の処理能力が向上している。
【0004】
このような状況下で、デジタル複合機などの画像形成装置の使用許可にあたり、近距離無線通信機能を搭載した機器が保持している利用者毎の証明書情報に基づいてユーザ認証を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、印刷指示を受けた画像形成装置と、その近距離に位置する他の画像形成装置との間で近距離無線通信を行って双方で印刷を行うものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−155495号公報
【特許文献2】特開2012−238178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
携帯型情報処理装置の処理能力が向上しているにもかかわらず、画像処理装置の操作設定等に関してその処理能力を十分に活用しているとはいえなかった。
【0008】
例えば、コンビニエンスストア等のパブリックスペースに設置されたデジタル複合機は、不特定多数のユーザによって使用される。その場合、現在そのデジタル複合機がコピーやプリント等の処理(ジョブ)の処理中であれば、他のユーザは原則的にそのジョブが終わるまで待つ必要があった。具体例を挙げると、第1のユーザがデジタル複合機の操作パネルを用いてコピー等の設定を行っている間、第2のユーザは、コピージョブの設定を行うことができない。また、デジタル複合機が第1のユーザに係るコピーやプリントのジョブを既に開始している場合、第2のユーザはたとえ操作パネルでコピーの設定ができるとしても、第1のユーザに係る出力が完了するまではコピーの出力を得ることができない。
【0009】
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、近距離無線通信により外部の携帯型情報処理装置を用いたインタラクティブな操作を可能にする画像処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、表示部を有する携帯型情報処理装置との間で近距離無線通信を行う近接通信部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記近接通信部を介した通信により通信可能範囲にある携帯型情報処理装置を認識する認識部と、認識された携帯型情報処理装置の表示部にジョブ設定画面を表示させるための要求を、前記近接通信部を介して送信するジョブ設定部と、ジョブの開始指示に応答してそのジョブを実行するジョブ制御部とを含み、前記ジョブ設定部は、前記認識が行われた後前記ジョブ設定画面を用いたジョブ設定を、前記近接通信部を介して受信することにより前記携帯型情報処理装置からのジョブ設定を受付け、前記ジョブ制御部は、ジョブ設定を受付けたジョブについて開始指示を受付けることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
この発明において、ジョブ設定部は、ジョブ設定画面を用いたジョブ設定を、近接通信部を介して受信し、そのジョブ設定に係るジョブの設定完了の登録を認証の以降に前記携帯型情報処理装置から受付け、ジョブ制御部は、ジョブ設定を受付けたジョブについて開始指示を受付けるので、近距離無線通信を介してやりとり可能な携帯型情報処理装置を用いてユーザ認証だけでなくジョブ設定の操作が可能である。よって、複数のユーザが画像形成装置を同時に使用するときでもジョブ設定を効率的に行うことができる。
【0012】
例えば、コンビニエンスストア等のパブリックスペースに設置されたデジタル複合機を複数のユーザが使用するシーンを考える。それぞれのユーザが携帯するスマートフォン、タブレットコンピュータあるいはモバイルコンピュータ等の携帯型情報処理装置は、ユーザ認証やおサイフケータイによる料金の支払いが可能であるとする。即ち、NFC、Wi-FiあるいはBluetooth等の近距離無線通信を介してデジタル複合機と通信可能であるとする。
【0013】
この発明によれば、それらの携帯型情報処理装置の表示部にジョブ設定画面を表示させる。各ユーザは、携帯型情報処理装置のジョブ設定画面でジョブ設定を予め行う。そして、デジタル複合機が実行しているジョブが終了したとき、前記携帯型情報処理装置を例えばデジタル複合機にタッチしてNFCを介した通信を行う。あるいは他の方式の近距離無線通信を用いてデジタル複合機と通信を行う。このようにすれば、ユーザ認証やおサイフケータイによる料金の支払いのみならず、デジタル複合機のジョブ設定を携帯型情報処理装置により行うことができる。
【0014】
各ユーザは、携帯型情報処理装置を用いてスムーズに操作を行うことができるだけでなく、他のユーザがデジタル複合機の操作パネルを用いてジョブ設定を行うのを待つ必要がなくなる。デジタル複合機を設置した店舗等は、ユーザが操作設定だけのためにデジタル複合機を占有する時間を短縮できるので、デジタル複合機の稼働率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の像形成装置が外部の機器と通信する形態の一例を示す説明図である。
図2】この発明に係るデジタル複合機の構成を示すブロック図である。
図3】この発明のデジタル複合機11の操作部33に表示されるジョブ設定画面41の一例を示す説明図である。
図4】この発明の携帯型情報処理装置の表示部に表示されるジョブ設定画面の一例を示す説明図である。
図5】この発明の携帯型情報処理装置の表示部に表示されるジョブ設定画面の異なる例を示す説明図である。
図6】この発明の携帯型情報処理装置の表示部に表示される基づくジョブ状況画面の一例を示す説明図である。
図7】この発明の携帯型情報処理装置の表示部に表示されるジョブ設定確認画面の例を示す説明図である。
図8】この発明に係る制御部が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図9図8の処理の続きを示すフローチャートである。
図10図9の処理の続きを示すフローチャートである。
図11図10の処理の続きを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
【0017】
≪デジタル複合機の通信形態≫
この発明の画像形成装置の具体例としてデジタル複合機を考える。そして、そのデジタル複合機が外部の機器と通信する形態の一例につき説明する。
図1は、前記デジタル複合機が外部の機器と通信する形態の一例を示す説明図である。図1で、デジタル複合機11a、11b、11cはそれぞれこの発明の画像形成装置である。例えば、デジタル複合機11aはコンビニエンスストアの店舗Aに設置されている。デジタル複合機11bは、店舗Aと異なるコンビニエンスストア(店舗B)に設置されている。また、デジタル複合機11cは、学校の構内に設置されている。このように、パブリックスペースに設置され不特定多数の人が使用できるデジタル複合機が典型例である。ただし、この発明はパブリックスペースに設置された画像形成装置に限定されるものでない。オフィスのフロアに設置される画像形成装置にも適用可能である。要するに、近距離無線通信の機能を有する画像形成装置に適用可能である。
【0018】
例えば、デジタル複合機11aは、あるユーザが有するモバイルコンピュータ13aと近距離無線通信(例えばWi-Fiの規格に基づく無線LAN通信)により情報を遣り取りする。さらに、他のユーザが有するスマートフォン14aと近距離無線通信(例えばNFCの規格に基づく近接場型の無線通信)により情報を遣り取りする。また、別のユーザが有するタブレットコンピュータ15aと近距離無線通信(例えばBluetoothの規格に基づく無線通信)により情報を遣り取りする。同様に、デジタル複合機11bは、モバイルコンピュータ13b、スマートフォン14bあるいはタブレットコンピュータ15bと近距離無線通信を行う。また、デジタル複合機11cは、モバイルコンピュータ13c、スマートフォン14cあるいはタブレットコンピュータ15cと近距離無線通信を行う。
【0019】
さらに、デジタル複合機11a、11bおよび11cは、近距離無線通信とは異なる遠隔通信のネットワーク(例えば、インターネット)を介して外部のクラウドサーバー17と接続されている。デジタル複合機11a、11bおよび11cは、各装置の状態を表すステータス情報をクラウドサーバー17に送信する。ステータス情報は、デジタル複合機11a、11bおよび11cのそれぞれの状態を表す情報であって、例えば正常動作状態か否かの情報である。また、実行中、実行順待ちまたは開始指示待ち状態にあるジョブの種類(コピー、ファックス、写真サービス、プリントサービス、スキャンサービス等)と各ジョブが開始指示待ち、実行順待ちまたは実行中の何れの状態か(ジョブ状況)を含む。さらに、ジョブが開始指示待ち、実行順待ちまたは実行中の状態になった時刻、ジョブ設定の内容(例えばコピー枚数、プリント枚数、後処理の有無と種類等、片面/両面、特別機能の設定内容)を含んでいてもよい。なお、特別機能とは、例えばとじしろ、枠消去、中綴じといったような機能である。
【0020】
クラウドサーバー17は、複数の画像形成装置とネットワークで接続されて各画像形成装置の状態を知ることができるサーバーである。それぞれの画像形成装置のステータス情報に加え、それらの設置場所を格納する。設置場所の登録は、各画像形成装置を設置した作業者がクラウドサーバー17にアクセスして行う。
【0021】
≪画像形成装置の構成≫
この発明の画像形成装置の概略構成について説明する。図1のデジタル複合機11a、11bおよび11cに対応するものである。
図2は、この発明の画像形成装置であるデジタル複合機の構成を示すブロック図である。図2に示すデジタル複合機11は、図1に示すデジタル複合機11a、11bおよび11cに相当する。それらは同様の構成を有している。
【0022】
図2で、近接通信部21は、外部の携帯型情報処理装置との間で近距離無線通信を行う。近距離無線通信の具体的態様としてNFC、Wi-FiやBluetoothなどが挙げられるがこれらに限定されるものでない。また、それらのうち何れか一つの通信機能を有していればよいが、複数の通信に対応していてもよい。また、プリントサービスで、携帯型情報処理装置からのプリントデータを受信してもよい。
【0023】
制御部23は、具体的なハードウェア構成はコンピュータを中心としてメモリ、入出力回路および他の周辺回路から構成される。制御部23に係るコンピュータは、メモリに予め格納された制御プログラムを実行してデジタル複合機11を制御する。制御部23が担う代表的な機能として認識部25、ジョブ設定部27、ジョブ制御部29および画像制御部31を記載している。ただし、制御部23は、これらに属さない種々の処理も実行する。
【0024】
認識部25は、近接通信部21の通信可能な範囲内に携帯型情報処理装置が入るとその存在を認識して通信の確立を試みる。例えばBluetoothの通信機能を備えた携帯型情報処理装置がフィールドに入ったとき、デジタル複合機11とペアリングを行う。
以上は、近距離無線通信がBluetoothの場合の説明であるが、例えばWi-Fi規格の無線LAN通信でも、フィールドに携帯型情報処理装置が入ると、通信の確立を試みる。
【0025】
ジョブ設定部27は、通信が確立した携帯型情報処理装置からの要求に応答してジョブ設定画面を表示させるためのデータを送る。そして、そのジョブ設定画面を用いた操作によるジョブ設定を受付ける。
【0026】
前記要求は、例えば、ユーザが前記携帯型情報処理装置に予めジョブ設定用のアプリをインストールしておき、そのアプリの起動に応答して発せられる。あるいは、デジタル複合機11がジョブ設定用のWebサイトを提供し、通信確立した携帯型情報処理装置を用いてそのWebサイトにログインが完了したときに前記要求が発せられる。
【0027】
近距離無線通信がNFCの場合は、デジタル複合機11の予め定められた領域(例えば、操作パネルの一部の領域)にユーザが携帯型情報処理装置をタッチさせたとき、認識部25は通信を確立させる。同時に、ジョブ設定画面を表示させるためのデータをその携帯型情報処理装置に送信する。タッチの行為が、デジタル複合機11の操作にその携帯型情報処理装置を用いるというユーザの意志を示していると考えられるので、タッチと同時にジョブ設定画面を表示させる。
また、ジョブ設定部27は、デジタル複合機11の操作部33を用いたジョブ設定も受付ける。
ジョブ設定部27は、受付けたジョブ設定を送信元の携帯型情報処理装置別に格納する。操作部33によるジョブ設定は、それらと別に格納する。
【0028】
ジョブ制御部29は、ジョブ設定部27が受付けたそれぞれのジョブ設定に対するジョブ開始指示を待つ。開始指示を受けると、ジョブ制御部は、そのジョブの実行を開始する。ただし、先に実行中のジョブがある等、ハードウェア資源が使用できない場合は、そのジョブを実行待ちキューに登録する。実行待ちキューに登録されたジョブは、原則的に先入れ先出しの順で順番に実行される。なお、ユーザの操作により実行待ちキューのジョブを削除したり、順序を入れ換えたり、ジョブ設定を変更することも可能である。それらの操作は、操作部33を用いてユーザが行うこともできるが、ジョブ設定部27が該当するジョブを受付けた携帯型情報処理装置を用いて行うこともできる。
【0029】
また、ジョブ制御部29は、ジョブ開始指示状態にあるか、または実行待ちキューに登録されたジョブのジョブ設定を受付けた携帯型情報処理装置が、そのジョブのそのジョブの実行前に通信可能な近接距離から離れたとき、そのジョブを削除してもよい。あるいは、ジョブ制御部29は予め定められた期間が満了するまでそのジョブを保留の状態にしてもよい。そして、前記期間の満了前に前述の携帯型情報処理装置が通信可能な近接距離内に戻ったときはそのジョブを継続するが戻らないときはそのジョブを削除してもよい。
【0030】
なお、デジタル複合機11の構成およびジョブの種類によってはハードウェア資源が競合せずに同時並行処理できるものがある。例えば、ファックス送信とプリントサービスは同時並行処理できる可能性がある。スキャンサービスとプリントサービスも同様である。ジョブ制御部29は、これらの条件を考慮して実行待ちキューを管理する。
画像制御部31は、各ジョブについて画像形成の処理を制御する。
【0031】
操作部33は、デジタル複合機11の状態や設定をユーザに表示し、ユーザによる操作を受付ける。ハードウェアとしては、例えばタッチパネル付の液晶表示装置が適用される。液晶表示装置の他に、操作キーがあってもよい。コピー枚数や電話番号を入力するテンキーや、ジョブの開始指示を受付けるスタートキーなどである。
【0032】
遠隔通信部35は、図1のクラウドサーバー17との間で前述のステータス情報をはじめとするデータの通信を行う。また、プリントサービスで、ネットワークに接続されたホストからのプリントデータを受信する。
【0033】
画像形成部37は、コピー、ファックス、写真サービス、プリントサービス、スキャンサービス等のジョブに係る画像形成を行う。大別すると、原稿の読み取りに係るハードウェア資源、シートの印刷に係るハードウェア資源、画像データの処理や読み書きに係るハードウェア資源から構成される。
【0034】
≪近距離無線通信を用いた携帯型情報処理装置によるデジタル複合機の操作≫
続いて、この発明のデジタル複合機のユーザが携帯型情報処理装置を用いてデジタル複合機の操作および管理を行ういくつかの態様について説明する。
第1の態様として、携帯型情報処理装置を用いたジョブ設定について説明する。
図1のデジタル複合機11bとスマートフォン14bとがNFCの機能を備えており、互いに通信できるものとする。
デジタル複合機11bが待機中のとき、操作部33が備える液晶表示装置には初期画面が表示され、操作部33はジョブの設定および開始指示を受付ける。
【0035】
図3は、この発明のデジタル複合機11の操作部33に表示されるジョブ設定画面41の一例を示す説明図である。図3に示すジョブ設定画面41には、トップメニューとしてコピー、ファックス、写真サービス、プリントサービスおよびスキャンサービスの何れかのジョブ設定を選択する操作ボタンが配置されている。それぞれの操作ボタンが押されると、ジョブ設定部27は、その操作ボタンに対応するジョブのジョブ設定を行う画面にジョブ設定画面41を切り換える。
【0036】
なお、図3に示すジョブ設定画面41には、ステータス画面を表示する操作ボタンが配置されている。この操作ボタンが押されると、ジョブ制御部29は、ジョブの実行状況を表示するステータス画面にジョブ設定画面41を切り換える。そのステータス画面で、ジョブ制御部29は実行順待ち状態にあるジョブの削除または編集の指示を受付ける。さらに、近隣に設置されている他の画像形成装置の照会を受付ける。
【0037】
ユーザがスマートフォン14bを持ってデジタル複合機11bの予め定められた領域にタッチすると、近接通信部21を介した通信により認識部25はスマートフォン14bがフィールドにあることを認識する。スマートフォン14bが新たに認識されたことに応答して、ジョブ設定部27は、スマートフォン14bの表示部にジョブ設定画面を表示させるためのデータを、近接通信部21を介して送信する。そのデータは、例えばスマートフォン14bに予めインストールされたアプリの起動を要求するものであってもよい。あるいは、例えばスマートフォン14bに予めインストールされたWebブラウザを起動させかつアドオンを提供するものであってもよい。その場合、ジョブ設定画面はWebブラウザの上のアドオンとして表示部に表示されかつユーザの操作を受付ける。
【0038】
<コピーのジョブ設定>
図4および図5は、この発明の携帯型情報処理装置であるスマートフォン14bの表示部43に表示されるジョブ設定画面の一例を示す説明図である。図4に示すジョブ設定画面45aにはデザインが異なるものの図3と同じ機能の操作ボタンが表示されている。即ち、コピー、ファックス、写真サービス、プリントサービスおよびスキャンサービスの操作ボタンおよびステータス画面の操作ボタンである。コピー、ファックス、写真サービス、プリントサービスのうち何れかの操作ボタンが押されると、その操作が近接通信部21で受信される。
ジョブ設定部27は、その操作に応答して対応するジョブのジョブ設定を行う画面にジョブ設定画面45aを切り換えさせる。
【0039】
図5は、コピーのジョブ設定画面の例を示す。図5(a)に示すジョブ設定画面45bは、操作部33でコピージョブの設定を受付ける画面とデザインは異なるものの設定できる項目はほぼ同様である。即ち、コピー枚数の設定に用いる数値キー、カラーモード、コピー濃度、倍率、両面コピー、仕上げ、とじしろ、枠消去および各種設定(各種機能の設定画面に遷移する)である。また、右下隅には、ジョブの実行状況を表示するステータス画面にジョブ設定画面45bを切換えるボタンが配置されている。
【0040】
図5(b)に示すジョブ設定画面45cは、各種機能の設定画面の一例である。中とじ、大量原稿モード、1セット2コピー、表紙/合い紙、OHP合い紙、2in1/4in1、ブックコピー、タブコピー、カードスキャンの各種機能を選択するボタンが配置され、何れかのボタンが押されるとその機能を選択する。選択された機能に詳細設定がある機能はその詳細設定を行う画面に遷移する。
【0041】
ジョブ設定画面45b、45c上でコピーのジョブ設定を完了したユーザが、スマートフォン14bを持ってデジタル複合機11bに再びタッチすると、近接通信部21を介した通信によりジョブ設定のデータがスマートフォン14bからデジタル複合機11bへ送られる。ジョブ設定部27は、そのジョブ設定を受付けてメモリに格納する。コピージョブの場合、ジョブ制御部は、課金のための認証および操作部33に配置されたカラースタートキーまたは白黒スタートキー(いずれも図示せず)の押下を待つ。即ち、コピージョブの開始指示を待つ。なお、コピーやスキャンサービス、ファックス送信サービス等、いわゆるウォークアップジョブは、カラースタートキーまたは白黒スタートキーの押下をトリガにジョブの実行を開始するが、プリントジョブの場合は印刷データおよびジョブ設定のデータの受信がそれに代わるものである。
【0042】
カラースタートキーまたは白黒スタートキーの何れかが押されると、ジョブ制御部29は、押されたキーに応じてカラーコピーまたは白黒コピーのジョブを開始する。コピーのジョブに必要なハードウェア資源がすぐに使用できない場合は、そのジョブを実行待ちキューに登録し、ハードウェア資源が使用可能になり次第ジョブの実行を開始する。
【0043】
以上は、スマートフォン14bがフィールドが非常に狭いNFCでデジタル複合機11bと通信する場合の説明であるが、例えばWi-FiやBluetoothなどによる近距離無線通信では、NFCよりもフィールドが広い。また、NFCでもタッチするまで近接させなくても通信数センチメートル〜約1メートル程度の範囲内で通信させることも可能である。その場合、スマートフォン14bがデジタル複合機11bのフィールド内にあれば両者の間で随時ジョブ設定画面のデータやジョブ設定のデータを遣り取りできる。
【0044】
一般に、Wi-Fi等無線LANの近距離無線通信は、NFCに比べるとフィールドが広いが、ワイヤレスネットワークの選択やパスワード入力等の操作に要する手間があった。他方、NFCは、通信エリアは狭いが機器どうしが近接した距離で通信するので、画像形成装置と携帯型情報処理装置が一対一で認証できるという特徴があり、ユーザが認証設置をする手間の軽減ができる。なお、Bluetoothによる近距離無線通信は、無線LANとNFCの中間的なものといえる。初回はペアリングの操作を要するが、次からはフィールド内に入るだけで認証ができる。
【0045】
スマートフォン14bがフィールド内にあるとき、図4のジョブ設定画面45aまたは図5のジョブ設定画面45bで「ジョブ状況」の操作ボタンが押されると、その操作が近接通信部21で受信される。ジョブ制御部29は、その操作に応答してジョブの実行状況を表示するジョブ状況画面にジョブ設定画面41を切り換えさせる。ジョブ状況画面はステータス情報に基づく。スタータス情報は、ジョブ制御部29をはじめ制御部23が管理する情報であってデジタル複合機11bの状態を表す。
【0046】
なお、ジョブ設定画面45a、45bがインストールされたアプリあるいはWebブラウザのアドオンによって実行される場合、スマートフォン14bがフィールド内にないときにジョブ状況のボタンがタッチされたら、前記アプリまたはアドオンはデジタル複合機と通信できない旨のメッセージを表示してもよい。あるいはWebブラウザがWebサーバーであるデジタル複合機11bとの接続されていない旨のメッセージを表示してもよい。そのメッセージを見てユーザがフィールド内に戻る(NFCの場合はタッチする)と、データの通信が行われる。
【0047】
<ジョブ状況の確認とジョブの操作>
図6は、この発明の携帯型情報処理装置の表示部に表示される基づくジョブ状況画面の一例を示す説明図である。図6に示すように、ジョブ制御部は、実行中および実行順待ち状態にあるジョブをジョブ状況画面47に表示させる。「コピー中」の表示は実行中の状態を示し、「待機中」の表示は実行待ち状態を示している。さらに、ジョブ制御部29は表示されたジョブに関する操作を受付ける。
【0048】
例えば、図6のジョブ状況画面47で、実行中または待機中のジョブの何れかがタッチされて選択された状態で、「詳細」ボタンがタッチされると、その操作は近接通信部21を介してジョブ制御部29に伝えられる。ジョブ制御部29は、その操作に応答して選択されたジョブ設定の詳細をステータス情報の一つとしてスマートフォン14bへ送信する。スマートフォン14bは、前記ステータス情報に基づいて、ジョブ設定の内容を表示部43に表示する。
【0049】
図7は、この発明の携帯型情報処理装置の表示部に表示されるジョブ設定確認画面の例を示す説明図である。
スマートフォン14bでジョブ設定が行われかつ実行待ち状態のジョブについては、ジョブ設定の全部または一部について変更が可能である。実行中のジョブおよび他の携帯型情報処理装置または操作部33でジョブ設定が行われたジョブについては、ジョブ設定の確認のみが可能である。しかし、スマートフォン14bを用いてジョブ設定を変更することはできない。例外的に、用紙選択の変更は可能である。これは、デジタル複合機11bに装備されているサイズ以外の用紙がジョブ設定されている場合に、装備されている何れかのサイズで出力できるようにするためである。図7(a)は、ジョブ設定の確認のみが可能なジョブ設定確認画面49aを例示している。図7(b)は、ジョブ設定の変更が可能なジョブ設定確認画面49bを例示している。
図6のジョブ状況画面47で、「詳細」ボタンの右隣にはグレイアウトされた「優先」ボタンがあり、さらにその右隣には「中止/削除」ボタンがある。
【0050】
「優先」ボタンは、実行待ち状態のジョブのうち、スマートフォン14bでジョブ設定が行われたジョブを実行待ちジョブの先頭に移動させる。図6でグレイアウトされている理由は、選択されているジョブが実行中のジョブであるからである。また、スマートフォン14b以外でジョブ設定されたジョブが選択された場合もグレイアウトされる。
【0051】
「中止/削除」ボタンは、実行中の状態にあるジョブの場合はその実行を途中で中止させ、実行待ち状態にあるジョブの場合は実行待ちキューから削除する。ただし、中止/削除できるのは、スマートフォン14bでジョブ設定されたジョブである。
【0052】
<クラウドサーバーを用いた他機照会>
「他機照会」ボタンは、近隣に設置されている他の画像形成装置の照会する操作に用いる。図1に示すように、この実施形態でデジタル複合機11bは、ネットワーク通信を介してクラウドサーバー17に接続されている。クラウドサーバーは、複数台の画像形成装置と通信可能で各画像形成装置のステータス情報を取得している。
【0053】
スマートフォン14bで「他機照会」ボタンが押されると、その操作が近接通信部21を介して制御部23に伝えられる。制御部23は、遠隔通信部35を介してクラウドサーバー17に他の画像形成装置の照会を要求する。その要求に応じて、クラウドサーバー17は、各画像形成装置から取得したステータス情報に基づいて、近い位置にあって混んでいない他の画像形成装置の情報をデジタル複合機11bに返す。その情報を受けると、制御部23は、スマートフォン14bに転送する。
【0054】
以上のようにして、ユーザは、スマートフォン14bのジョブ状況画面からデジタル複合機11bの実行待ち状態にあるジョブの数が把握できる。そして、ジョブ実行までの待ち時間が長くなりそうなときは、他機照会キーを押す。すると、他機照会の要求がデジタル複合機11bを介してクラウドサーバー17に送信される。クラウドサーバー17は、要求を受けたデジタル複合機11bについて予め格納された設置場所の情報に基づいて、近隣に設置されている他の画像形成装置を検索する。検索の条件として、近隣に設置されているだけでなく、故障中でなくかつ現在、処理待ちのジョブが無いかあったとしても実行待ちジョブの処理時間が基準より短いと予想される装置を検索する。そして、該当する画像形成装置を設置場所の情報と共に要求のあった画像形成装置に送る。この場合は、デジタル複合機11bである。スマートフォン14bがGPS機能を備えていれば、ユーザはデジタル複合機11bを介してクラウドサーバー17から取得した他の画像形成装置の設置場所を用いた地図表示やナビゲーションのサービスを得ることができる。
【0055】
以上のように、他機照会に応じてクラウドサーバー17から他機の情報を得ることでユーザの待ち時間を減らし、クラウドサーバー17に接続された画像形成装置の全体の稼働率を上げることが可能になる。
【0056】
<フィールドの監視に基づくジョブの操作>
さらに、ジョブ制御部29は、ジョブ実行待ち状態の期間中、ジョブ設定を行ったスマートフォン14bがフィールド内に留まっているか否かを監視してもよい。そして、スマートフォン14bがフィールドの外に出た場合は、ユーザが離れたと判断して実行待ち状態にあるジョブを即座に削除してもよい。あるいはそのジョブの実行を保留しつつ一定期間監視を続け、期間満了までにスマートフォン14bがフィールド内に入ったときは、実行の保留を解くようにしてもよい。
【0057】
また、スマートフォン14bがフィールドの外に出た場合に実行待ちの前記ジョブを即座に削除するか一定期間留保してフィールド内に戻るのを監視するかの選択、および期間の長さの選択を、スマートフォン14bのアプリまたはアドオンで行えるようにしてもよい。
【0058】
ジョブ設定を受付けた後そのジョブの開始指示を待つ場合について、ジョブ制御部29は、ジョブ設定を行ったスマートフォン14bがフィールド内に留まっているか否かを監視してもよい。そして、スマートフォン14bがフィールドの外に出た場合は、ユーザが離れたと判断して開始指示待ちのジョブのジョブ設定を即座に削除してもよい。あるいはそのジョブ設定を保持しつつ一定期間監視を続け、期間満了までに開始指示を受付けなかった場合は、そのジョブ設定を削除してもよい。
【0059】
また、スマートフォン14bがフィールドの外に出た場合に開始指示待ちの前記ジョブを即座に削除するか一定期間留保して開始指示を待つかの選択、および期間の長さの選択を、スマートフォン14bのアプリまたはアドオンで行えるようにしてもよい。
【0060】
≪処理の流れ≫
ジョブ制御部29を含む制御部23の処理を説明する。図8図11は、この発明に係る制御部23が実行する処理の手順を示すフローチャートである。ただし、前記フローチャートはこの発明の特徴的な側面に着目しており、他の処理や表示部43の画面を切替えるための詳細は省略している。
【0061】
図8で、まず制御部23は、近接通信部21を介した通信により認識部が携帯型情報処理装置を新たに認識したかどうかを調べる(ステップS11)。新たに認識した携帯型情報処理装置がなければ(ステップS11のNo)、ルーチンはループする。ただし、処理はマルチタスク環境下で行われているので、実際にはループ中に他のタスクが並列的に実行される。
【0062】
新たに認識した携帯型情報処理装置があれば(ステップS11のYes)、制御部23は、その携帯型情報処理装置との通信を確立する(ステップS13)。
続いて、ジョブ設定部27としての制御部23は、近接通信部21を介してジョブ設定画面の要求を受けたか否かを調べる(ステップS15)。ジョブ設定画面の要求は、NFCで通信する携帯型情報処理装置がタッチされたときに受信する。あるいは、Wi-FiあるいはBluetooth等で通信する携帯型情報処理装置がフィールド内に入り、ユーザの操作によりアプリやジョブ設定用のWebページやアドオンが起動された場合等に受信される。
さらに、ジョブ設定画面が操作されて異なる画面に遷移する場合等にも要求を受ける。
【0063】
ジョブ設定画面の要求を受けた場合(ステップS15のYes)、ジョブ設定部27は、ジョブ設定画面を表示させるためのデータを要求のあった携帯型情報処理装置に送る。具体的は、要求に対する応答をアプリに送ったりWebページ表示用のデータを送ったりする。
その後、ルーチンはステップS15へ戻る。
【0064】
前記ステップS15で、ジョブ設定画面の要求を受けていないとき(ステップS15のNo)、ジョブ設定部27としての制御部23は、近接通信部21を介してジョブ設定を受信したか否かを調べる(ステップS21)。ジョブ設定の受信は、携帯型情報処理装置のジョブ設定画面で「送る」ボタンが操作されたときに行われる。
ジョブ設定を受信した場合(ステップS21のYes)、ジョブ制御部29は、受信したジョブ設定を送信元の携帯型情報処理装置毎にメモリに格納する(ステップS23)。
その後、ルーチンはステップS15へ戻る。
【0065】
前記ステップS21で、ジョブ設定を受信していないとき(ステップS21のNo)、続いて制御部23は、ジョブ設定部27としてジョブの開始指示を受信したか否かを調べる(図9のステップS25)。ジョブの開始指示は、コピー等のウォークアップジョブの場合は操作部33の図示しないカラースタートキーまたは白黒スタートキーが押下された操作に該当する。プリントジョブの場合は、印刷データおよびジョブ設定のデータの受信が開始指示に該当する。
ジョブの開始指示を受信した場合(ステップS25のYes)、ジョブ制御部29は、開始指示を受信したジョブを実行待ちキューに登録する(ステップS27)。その後、ルーチンはステップS15へ戻る。なお、ジョブ制御部29は、実行待ちキューに登録されたジョブをジョブの実行が終了するまで管理する。
【0066】
前記ステップS25で、ジョブの開始指示を受信していないとき(ステップS25のNo)、続いて制御部23は、近接通信部21を介してジョブ状況画面の要求を受けたか否かを調べる(ステップS31)。ジョブ状況画面の要求は、ジョブ状況ボタンがタッチされたときに受信する。あるいは、ジョブ状況画面47の詳細ボタン等が操作されて異なる画面に更新する場合等にも要求を受ける。
【0067】
ジョブ状況画面の要求を受けた場合(ステップS31のYes)、ジョブ設定部27は、ジョブ状況画面を表示させるためのデータを要求のあった携帯型情報処理装置に送る。具体的は、要求に対する応答をアプリに送ったりWebページ表示用のデータを送ったりする。
その後、ルーチンはステップS15へ戻る。
【0068】
前記ステップS31で、ジョブ状況画面の要求を受信していないとき(ステップS31のNo)、続いて制御部23は、近接通信部21を介してジョブ操作の指示を受けたか否かを調べる(ステップS35)。ジョブ操作の指示は、例えばジョブ状況画面47で優先ボタンや中止/削除ボタンが操作された場合等に受信する。
【0069】
ジョブ状況画面の要求を受けた場合(ステップS35のYes)、ジョブ設定部27は、指示に応じて対象ジョブの順序変更、中止/削除の処理を行う(ステップS37)。
その後、ルーチンはステップS15へ戻る。
【0070】
前記ステップS35で、ジョブ操作の指示を受信していないとき(ステップS35のNo)、続いて制御部23は、近接通信部21を介してジョブ設定変更の指示を受けたか否かを調べる(ステップS41)。ジョブ設定変更の指示は、例えばジョブ設定確認画面49bでカラー/白黒ボタン、両面コピーボタンあるいはコピー濃度ボタン等、ジョブ設定を変更するボタンが操作された場合等に受信する。
【0071】
ジョブ設定変更の指示を受信した場合(ステップS35のYes)、ジョブ設定部27は、指示に応じて対象ジョブのジョブ設定を変更する処理を行う(ステップS45)。
その後、ルーチンはステップS15へ戻る。
【0072】
前記ステップS41で、ジョブ設定変更の指示を受信していないとき(ステップS41のNo)、続いて制御部23は、近接通信部21を介して他機照会の要求を受けたか否かを調べる(図10のステップS47)。他機照会の要求は、例えば図6のジョブ状況画面47で他機照会ボタンが操作された場合に受信する。
【0073】
他機照会の要求を受信した場合(ステップS47のYes)、制御部23は、遠隔通信部35を介してクラウドサーバー17に他機照会の要求を送信する処理を行う(ステップS49)。
その後、ルーチンはステップS15へ戻る。
【0074】
前記ステップS47で、他機照会の要求を受信していないとき(ステップS47のNo)、続いて制御部23は、遠隔通信部35を介して他機照会の結果を受信したか否かを調べる(ステップS51)。他機照会の結果は、前記ステップS49の他機照会要求に応答してクラウドサーバー17から送られる。
【0075】
他機照会の結果を受信した場合(ステップS51のYes)、制御部23は、近接通信部21を介して携帯型情報処理装置に他機照会の結果を送る(ステップS53)。
その後、ルーチンはステップS15へ戻る。なお、携帯型情報処理装置の表示部43には、他機照会の結果が表示される(図示せず)。
【0076】
前記ステップS51で、他機照会の結果を受信していないとき(ステップS51のNo)、続いて制御部23は、認識部25として携帯型情報処理装置がフィールドから出ていないかどうかを調べる(ステップS55)。携帯型情報処理装置がフィールドから出ていると判断したとき(ステップS55のYes)の処理は、図11の処理として後述する。
携帯型情報処理装置がフィールドから出ていないと判断したとき(ステップS55のNo)、制御部23は、ジョブ開始指示待ちのままで予め定められた期間が満了していないかを調べる(ステップS57)。
【0077】
前記期間が満了した場合(ステップS57のYes)、制御部23は、ジョブ制御部29として対象のジョブ設定をメモリから削除する処理を行う(ステップS59)。
その後、ルーチンはステップS15へ戻る。
【0078】
前述のステップS55で、制御部23が、携帯型情報処理装置がフィールドから出ていると判断したとき(ステップS55のYes)、ジョブ制御部29は、その場合どのような対応が設定されているか調べる。即ち、フィールド外へ出た携帯型情報処理装置により登録されたジョブを即時削除するように設定がなされているか、予め定められた期間が満了した後にジョブを削除するように設定がなされているかを調べる(ステップS61)。
即時削除の設定がなされている場合、ジョブ制御部29は、対象のジョブを実行待ちキューから削除する(ステップS63)。
その後、ルーチンはステップS11へ戻る。
【0079】
一方、前述のステップS61で、予め定められた期間が満了した後にジョブを削除するように設定がなされている場合、ルーチンはステップS65へ進み、その期間が満了したか否かを調べる。期間が満了したら(ステップS65のYes)、ルーチンは前述のステップS63へ進み、ジョブ制御部29は、対象のジョブを実行待ちキューから削除する。
期間が満了していなければ(ステップS65のNo)、ジョブ制御部29は、対象のジョブの実行を開始しないように実行保留の状態にする。即ち、そのジョブは実行待ち状態を続け、他のジョブが追い超して実行を開始することを許容する(ステップS67)。
【0080】
その後、認識部25としての制御部23は、フィールド外へ出た携帯型情報処理装置が期間満了前にフィールドに戻ったかを調べる(ステップS69)。戻っていなければ(ステップS69のNo)、ルーチンは前述のステップS65へ進み、期間が満了するかあるいは携帯型情報処理装置がフィールド内へ戻るまでループする。
一旦フィールド外へ出た携帯型情報処理装置が期間満了前にフィールドに戻った場合(ステップS69のYes)、ジョブ制御部29は、該当のジョブについて実行保留の状態を解除する(ステップS71)。
【0081】
その後、ルーチンはステップS15へ戻る。実行保留を解除されたジョブは、実行待ちキューに登録されている他のジョブと同様に、順番が来るとジョブの実行を開始する。
以上が、制御部23が実行する処理のうち、この発明に特徴的な処理の流れである。
上述したこの発明の特徴を、幾つかの態様に分けて述べる。
【0082】
(実施の形態1)
この発明による画像形成装置は、表示部を有する携帯型情報処理装置との間で近距離無線通信を行う近接通信部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記近接通信部を介した通信により通信可能範囲にある携帯型情報処理装置を認識する認識部と、認識された携帯型情報処理装置の表示部にジョブ設定画面を表示させるための要求を、前記近接通信部を介して送信するジョブ設定部と、ジョブの開始指示に応答してそのジョブを実行するジョブ制御部とを含み、前記ジョブ設定部は、前記認識が行われた後前記ジョブ設定画面を用いたジョブ設定を、前記近接通信部を介して受信することにより前記携帯型情報処理装置からのジョブ設定を受付け、前記ジョブ制御部は、ジョブ設定を受付けたジョブについて開始指示を受付けることを特徴とする。
【0083】
この発明において、携帯型情報処理装置は、ユーザが携帯して認証および操作に係る処理を行うものである。その具体的な態様としては、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータおよびモバイルコンピュータが挙げられるが、これらに限定されるものでない。
【0084】
また、近接通信部は、携帯電話のCDMAやLTEなどの通信方式に代表される移動通信に比べて通信可能距離の短い無線通信方式で通信を行うためのインターフェイス回路を指す。その具体的な態様としては、例えば、Wi-Fi、BluetoothあるいはNFC等の通信規格に基づくものが挙げられるが、これらに限定されるものでない。
【0085】
さらにまた、認証情報は、予め携帯型情報処理装置に格納されていてもよく、ユーザが携帯型情報処理装置を操作して入力してもよく、あるいは携帯型情報処理装置がユーザ固有の特徴(例えば、生体的特徴)を捕捉してもよい。
【0086】
ジョブは、画像形成装置が入力データを処理して出力する一連の処理であって、例えばコピージョブ、プリントジョブ、スキャンジョブ、ファックス送信ジョブ、ファックス受信ジョブなどが挙げられる。
【0087】
また、ジョブ設定画面は、ジョブを実行するうえで必要な設定を行うための操作画面であって、例えばコピージョブにおけるコピー枚数、両面コピーか片面コピーかの選択、後処理の選択等の設定を行う画面である。
【0088】
さらにまた、ジョブの設定完了の登録は、ジョブの設定がジョブ制御部の管理下に置かれて開始指示待ちの状態になったことを指す。なお、開始指示待ち状態のジョブが開始指示を受けた後は、実行順待ちまたは実行中の状態に遷移する。実行順待ちの状態は、現在実行中の他のジョブがある等の理由による待ち状態であり、待ちの要因がなくなったら実行を開始する状態である。
【0089】
認証部、ジョブ設定部およびジョブ制御部の各機能は、メモリに予め格納された各機能に対応するプログラム(ソフトウェア)をコンピュータが読み込み、画像処理装置のハードウェア資源と協働した処理を行うことによって実現される。
【0090】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
前記ジョブ設定画面は、携帯型情報処理装置に予めインストールされたアプリが起動されて表示されてもよい。
ここで、前記要求は前記アプリを起動する要求であってもよい。
また、前記ジョブ設定画面は、携帯型情報処理装置に予めインストールされたウェブブラウザが起動されて表示されてもよい。
ここで、前記要求は前記ウェブブラウザの起動する要求であってもよい。
画像形成装置においてジョブ設定画面を表示する操作部をさらに備え、画像形成装置側の前記操作部に表示されるジョブ設定画面と、携帯型情報処理装置側の前記表示部に表示されるジョブ設定画面とは、画面のデザインが異なるが同じ機能に係る操作を受付けることが可能であってもよい。
さらにまた、ネットワークに接続された画像形成装置について設置場所およびステータスを格納する外部のクラウドサーバーと、前記ネットワークを介して通信する遠隔通信部をさらに備え、前記携帯型情報処理装置は、他の画像形成装置を検索する要求を前記ジョブ設定画面で受付け、受付けた要求を前記近接通信部へ送り、前記制御部は、前記携帯型情報処理装置から受信した前記要求を、前記遠隔通信部を介して前記クラウドサーバーへ送り、ジョブの処理時間が基準よりも短い他の画像形成装置であって、近隣に設置された他の画像形成装置についての情報を前記クラウドサーバーから受信し、受信した情報を前記携帯型情報処理装置へ送信して前記表示部に表示させてもよい。
ここで、前記表示部は前記情報に基づいて他の画像形成装置の設置場所を用いた地図またはナビゲーションを表示してもよい。
(実施の形態2)
前記近接通信部は、通信可能な近接距離内にある複数の携帯型情報処理装置と通信可能であり、前記ジョブ制御部は、登録されたジョブが開始指示待ち、実行順待ち、実行中の何れの状態かを含むステータス情報を各携帯型情報処理装置に送信し、各携帯型情報処理装置から開始指示待ちまたは実行順待ち状態にあるジョブの削除または編集の指示を受付けてもよい。
このようにすれば、ユーザは携帯型情報処理装置でジョブのステータスを確認できるだけでなく、ジョブの削除または編集をおこなうことができる。
【0091】
(実施の形態3)
前記ジョブ制御部は、各携帯型情報処理装置から実行順待ち状態にあるジョブの順序変更の指示を受付けてもよい。
このようにすれば、ユーザは携帯型情報処理装置でジョブのステータスを確認できるだけでなく、ジョブの実行順を変更できる。
【0092】
(実施の形態4)
前記ジョブ制御部は、開始指示待ち若しくは実行順待ち状態にあるジョブを登録した携帯型情報処理装置がそのジョブの実行前に通信可能な近接距離から離れたとき、そのジョブを削除するか、または予め定められた期間が満了するまで実行保留状態にし、期間満了前に前記携帯型情報処理装置が通信可能な近接距離内に戻ったときはそのジョブを再開し戻らないときはそのジョブを削除してもよい。
このようにすれば、実行待ち状態になったジョブを登録したユーザが何らかの事情でその場を離れてしまったときに、そのジョブが残ってしまうと入った不具合を回避することができる。
【0093】
(実施の形態5)
外部のサーバーと通信する遠隔通信部をさらに備え、前記ステータス情報は、正常動作状態か否かの情報を含み、前記ジョブ制御部は、前記ステータス情報と設置場所の情報を、前記遠隔通信部を介して前記サーバーに送信し、前記サーバーは、前記ステータス情報および設置場所情報を、他の画像形成装置から送信されたステータス情報および設置場所情報と共に格納し、前記ジョブ制御部は、正常動作状態でない場合または実行順待ち状態のジョブが予め定められた基準を超える状態の場合、通信可能な近接距離内にある各携帯型情報処理装置にその状態を送信し、かつ、前記サーバーに格納された情報を検索して正常動作状態かつ実行順待ち状態のジョブが予め定められた基準以下の状態にある他の画像形成装置の設置場所を各携帯型情報処理装置に提供するように制御してもよい。
このようにすれば、画像形成装置が正常動作状態でない場合やジョブ実行までに長い待ちがある場合に携帯型情報処理装置を用いて利用可能な他の画像形成装置の情報を入手できる。
この発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
【0094】
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0095】
11、11a、11b、11c:デジタル複合機、 13a、13b、13c:モバイルコンピュータ、 14a、14b、14c:スマートフォン、 15a、15b、15c:タブレットコンピュータ、 17:クラウドサーバー、 21:近接通信部、 23:制御部、 25:認識部、 27:ジョブ設定部、 29:ジョブ制御部、 31:画像制御部、 33:操作部、 35:遠隔通信部、 37:画像形成部、 41、45a、45b、45c:ジョブ設定画面、 43:表示部、 47:ジョブ状況画面、 49a、49b:ジョブ設定確認画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11