(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
油圧プレスには高出力化、高速化が求められている。高出力化は大形の油圧シリンダを使えば可能であるが、プレスを設置する建屋の大きさに制約がかかるので、油圧シリンダの寸法を大きくするには限界がある。油圧シリンダを大きくしないで所望の高出力化を図るには、高圧で油圧シリンダを作動させる高圧化を図るしかない。ただし、高圧化を行うと油漏れしやすいという問題につながる。
【0003】
一方、稼働率向上のため高速化も求められている。高圧化と高速化を同時に図るために、油圧シリンダを2本用い、大形油圧シリンダに小形シリンダのラム(子ラムともいう)を内蔵させる技術が開発された。小形シリンダは小容量の作動油で速く作動させられるため、油圧プレスの高速化が可能となる。
このような従来技術として、特許文献1,2がある。これら従来技術の基本構造と問題点を、
図10に基づき説明する。
【0004】
図10に示すように、プレスフレームを構成するクラウン100には、大径の孔101をあけてメインシリンダ110のシリンダ体111が挿入され固定されている。固定には、シリンダ下部のフランジ112を介してボルト止めする等の手段が用いられる。ところが、大きな孔101をあけるとクラウン100の強度が低下するので、クラウン外径を大きくする必要があり、プレス全体をコンパクト化することはできない。
【0005】
前記シリンダ体111内には主油室115が形成され、この主油室115にはメインラム113が摺動自在に挿入されている。シリンダ体111の下端とメインラム113の間には、パッキンボックス119が取付けられ液密にされている。そして、メインラム113の下端にスライド130が固定されている。メインラム113には中空の副油室114が形成され、この副油室114には子ラム121が挿入されている。子ラム121の上端は、メインシリンダ110のシリンダ体111の上端部に固定されている。この副油室114と子ラム121とでサブシリンダ120が構成されている。
【0006】
前記スライド130には引戻しシリンダ140が連結されている。クラウン100の上方にはタンク150が設置され、タンク150と主油室115との間の油路116には、プレフィルバルブPV1が設けられている。副油室114とタンク150の間の油路117には、プレフィルバルブPV2が設けられている。
主油室115への油路116には供給路161を介して操作弁V101とポンプPが接続され、副油室114への油路117には供給路162を介して操作弁V102と前記ポンプPが接続されている。前記引戻しシリンダ140へも操作弁V103を介して前記ポンプPが接続されている。
【0007】
この構造によれば、油圧プレスの操作は以下の要領で行われる。
無負荷下降においては、タンク150からプレフィルバルブPV1,PV2を経由して主油室115および副油室114に作動油が吸い込まれる。
負荷が小さい場合には、操作弁V102を開にすることにより、ポンプPが吐出した圧油をサブシリンダ120にのみ供給し高速下降を行わせる。なお、メインシリンダ110には、プレフィルバルブPV1を経由してタンク150から油を吸い込ませる。
【0008】
さらに、負荷が大きくなると、操作弁V101,V102を開にすると共に、プレフィルバルブPV1,PV2を閉にし、ポンプPが吐出した圧油をサブシリンダ120およびメインシリンダ110に供給する。これにより、高圧加圧が行われる。
上昇時には操作弁V101,V102を閉、操作弁V103を開、さらにプレフィルバルブPV1,PV2にパイロット圧を供給し開にして、かつ引戻しシリンダ140にポンプPから圧油を供給し、スライド130とメインラム113を上昇させる。なお、シリンダ内の油をプレフィルバルブPV1,PV2を介してタンク150に返油する。
【0009】
しかるに、上記従来技術の油圧プレスでは、つぎのような問題がある。
(1)このシリンダ構造では、主油室115への作動油給排は外部配管を用いて行うので、油漏れがしやすいという問題がある。
(2)主油室115の内部に高圧油が供給されるので、シリンダ体111とメインラム113の間に設けたパッキン119から油漏れが生じやすい。
(3)プレフィルバルブPV1は主油室115とタンク150との間で、スライドの無負荷下降時やスライド上昇時など高速作動させた場合には大量の作動油を通す必要があるので、大形のバルブを用いる必要がある。このため、油圧プレスのコンパクトに制約がかかるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、高圧化と高速化を達成しながら、コンパクトな油圧プレスを提供することを目的とする。また、油漏れが生じにくい油圧プレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明の油圧プレスは、メインシリンダが、シリンダ体と該シリンダ体のメイン油室に挿入されたピストンロッドとからなり、サブシリンダが、前記ピストンロッドの中心に形成されたサブ油室と、該サブ油室に挿入されかつ前記シリンダ体の中心に形成された子ラムとからなり、前記メインシリンダのピストンロッドがクラウンに固定され、前記メインシリンダのシリンダ体がクラウンに対し昇降自在であり、引戻しシリンダに連結されていることを特徴とする。
第2発明の油圧プレスは、第1発明において、前記シリンダ体が、中空のシリンダ胴部材と該シリンダ胴部材の底端を塞ぐように取付けたシリンダ底部材とからなり、前記シリンダ胴部材と前記シリンダ底部材とは、位置決めキーにより中心軸まわりの位置を決め、ボルトで結合されていることを特徴とする。
第3発明の油圧プレスは、第2発明において、前記シリンダ底部材がスライドを兼ねていることを特徴とする。
第4発明の油圧プレスは、第1または第2発明において、前記メインシリンダの前記シリンダ体の外周に嵌入した嵌入部材を設け、該嵌入部材に、アプライド側のガイド部材に案内されるシリンダ側ガイド部を形成していることを特徴とする。
第5発明の油圧プレスは、第4発明において、前記シリンダ側ガイド部は、上側ガイドと下側ガイドとからなり、前記上側ガイドは前記シリンダ体の上部に設けられ、前記下側ガイドは前記シリンダ体の下部に設けられていることを特徴とする。
第6発明の油圧プレスは、第5発明において、前記上側ガイドおよび前記下側ガイドのガイド面は、それぞれ対角位置にあるガイド面の延長線上であって前記シリンダ体の中心と概略一致する位置に配置されていることを特徴とする。
第7発明の油圧プレスは、第5または第6発明において、前記シリンダ側ガイド部の相手部材であるアプライト側ガイド材が前後左右のアプライトに取付けられており、各アプライト側ガイド材には、前記メインシリンダの仕様上の最下降位置よりも更に下降させた位置で前記シリンダ側ガイド部と干渉しない非干渉部が設けられていることを特徴とする。
第8発明の油圧プレスは、第1発明において、前記メインシリンダのヘッド側油室に通ずる第1内部油路と、前記サブシリンダのサブ油室に通ずる第2内部油路と、前記メインシリンダのロッド側油室に通ずる第3内部油路が、前記メインシリンダのピストンロッドとクラウンに形成されていることを特徴とする。
第9発明の油圧プレスは、第8発明において、前記メインシリンダのヘッド側油室に連通する第4内部油路とロッド側油室に連通する第5内部油路が前記シリンダ体に形成されており、前記第4内部油路と前記第5内部油路との間の連通を開閉する第1開閉弁が設けられていることを特徴とする。
第10発明の油圧プレスは、第8または第9発明において、前記サブシリンダのサブ油室と連通する第6内部油路が前記子ラムおよび前記シリンダ体に形成されており、前記メインシリンダのヘッド側油室に連通する第7内部油路が前記シリンダ体に形成されており、前記第6内部油路と前記第7内部油路との間を開閉する第2開閉弁が設けられていることを特徴とする。
第11発明の油圧プレスは、第8、第9または第10発明において、前記第2内部油路には、油圧源につながった外部油路が接続されており、前記第1内部油路とタンクとの間には該タンクからの作動油供給を許容する第1プレフィルバルブが介装され、前記第2内部油路と前記タンクとの間には前記タンクからの作動油供給を許容する第2プレフィルバルブが介装され、前記第3内部油路と前記タンクとの間には前記タンクからの作動油供給を許容する第3プレフィルバルブが介装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、クラウンにピストンロッドを固定するには強度低下をもたらす孔あけの必要がないのでクラウンを小形にでき、油圧プレスをコンパクトにできる。メインシリンダのシリンダ底部は、シリンダ内部から作用する圧力と下方からの鍛造力が作用して圧縮力のみ作用することから薄くすることができる。さらに、シリンダ体の底部でスライドを兼ねることができるので、コンパクト化ができる。メインシリンダのシリンダ体とピストンロッド間のシールは、シリンダ体の上端に取付けることができるので交換が容易にできる。
第2発明によれば、メインシリンダをシリンダ胴部材とシリンダ底部材との二部材に分けたので、加工が容易となり安価に製造ができる。
第3発明によれば、シリンダ底部材をスライドの機能を果たせる大きさと形状にすることで、スライドを有するプレスと同等の機能を果たせ、かつコンパクトな油圧プレスとすることができる。
第4発明によれば、メインシリンダのシリンダ体にガイド部を構成する嵌入部材を嵌める構成とすることで、シリンダ体の強度低下を招くことなくガイド機能を果たすことができる。
第5発明によれば、ガイド部を上側と下側に分けたことで上下方向の真直度を確保しやすくなる。また、ガイド構造の自由度が増え、解体が容易となる。
第6発明によれば、圧油によるシリンダ体の膨張が生じても、その影響でガイド隙間が小さくなることを防止することができる。
第7発明によれば、メインシリンダを仕様上の最下降位置よりも更に下降させるとシリンダ側ガイド部とアプライト側ガイド材とが干渉しなくなるので、メインシリンダの引き出しがフレームなどの大きな解体を要せずに行える。
第8発明によれば、メインシリンダとサブシリンダの各油室への作動油供給が第1,第2,第3の内部油路によって一体構造とみなせる部材の中に油路を構築したため配管レスとすることが可能で油漏れが生じなくなる。
第9発明によれば、メインシリンダのヘッド側油室とロッド側油室との間で第4内部油路と第5内部油路により作動油移動ができるので、ロッド側油室の圧力を低圧に保持でき、パッキンボックスからの外部への油漏れを防止できる。
第10発明によれば、サブシリンダのサブ油室とメインシリンダのヘッド側油室の間で第6内部油路と第7内部油路により作動油移動ができ配管レスとなるため、外部への油漏れを防止できる。
第11発明によれば、メインシリンダのヘッド側油室からの作動油の排出は主に第4、第5内部油路を通じて、ヘッド側油室からロッド側油室へ油を移動させることができるので、第1内部油路からの作動油給排は比較的少量でよく、第1プレフィルバルブも小形でよくなる。このため、油圧プレスのコンパクト化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明に係る油圧プレスは、油圧を用いて被成形品の成形加工を行うプレスである。被成形品の成形加工としては、加圧下限近傍での負荷が急激に上昇する樹脂成形や偏心荷重がほとんど作用しない軸対称品などの鍛造や成形等を例示できる。
図1に基づき、本発明が適用される油圧プレスAの基本構造をまず説明する。
【0016】
油圧プレスAは、公知のプレスと同様にベッド1とクラウン2とこれらを連結するアプライト3を備えている。なお、アプライト3を用いず適宜の形状のフレームを用いて油圧プレスAを構成してもよい。ベッド1の上面には、ボルスタ4が設けられている。
【0017】
クラウン2の上方には、プレフィルバルブやその他の付属機器を内蔵する機器格納部5が置かれ、更にその上方には作動油を貯えておくタンク6が設置されている。
成形用の油圧シリンダは、メインシリンダ10とサブシリンダ20からなる。メインシリンダ10は、シリンダ体11とピストンロッド15とからなる。サブシリンダ20はメインシリンダ10内に組み込まれているが、その構造は後述する。
【0018】
本発明において、特徴的なのは、ピストンロッド15がクラウン2に固定されており、シリンダ体11が昇降する構成にある。ピストンロッド15のロッド部上端のクラウン2への固定は、ボルト結合その他任意の手段が用いられる。また、シリンダ体11は公知の油圧プレスに必須のスライドを兼ねる部材であり、専用のスライドを設けていない点にも特徴がある。ただし、スライドをシリンダ体11の下面に取付けたものも、本発明に含まれる。
【0019】
前記クラウン2には引戻しシリンダ45,45が固定されていて、そのピストンロッド46はシリンダ体11に取付けたブラケット47に連結されている。この引戻しシリンダ45により下降後のシリンダ体11の引き戻しが行われる。
既述のごとく本発明の油圧プレスAには、スライドは使用されない。そのため、シリンダ体11の下端面に上側のダイホルダ7が取付けられる。前記ボルスタ4の上面には下側のダイホルダ8が取付けられる。
【0020】
つぎに、
図2に基づき、油圧プレスAの詳細を説明する。
メインシリンダ10は、既述のごとくシリンダ体11とピストンロッド15とからなる。シリンダ体11は底部が塞がれ、上部が開放されたメイン油室12を有する。ピストンロッド15はロッド部上端がクラウン2の下面に固定されており、ピストンロッド15がメイン油室12内に挿入されて摺動する。
【0021】
メインシリンダ10のメイン油室12は、ピストンロッド15のピストン部を境にしてヘッド側油室13とロッド側油室14とに分けられる。
シリンダ体11の上端開口部とピストンロッド15の外側面との間には、パッキンボックス18が取付けられている。このパッキンボックス18はシリンダ体11の上方に取付けられているので、交換が容易にできる。
【0022】
ピストンロッド15の中心部には軸方向に延びる空洞が形成され、この空洞がサブシリンダ20のサブ油室21となっている。一方、シリンダ体11の底部中心から軸方向に立上るように子ラム22が形成されている。子ラム22はサブ油室21に挿入されて摺動する。このサブ油室21と子ラム22とでサブシリンダ20が構成されている。なお、子ラム22とピストンロッド15は、図示していないがシールされている。
【0023】
サブシリンダ20の子ラム22は受圧面積が小さいため小出力しか出せないが、子ラム22の受圧面積が小さいため、子ラム22を高速下降させることができる。
メインシリンダ10のピストンロッド15は受圧面積が大きいため大出力を出せるが、ピストンロッド15の受圧面積が大きいことから、シリンダ体11を低速でしか下降させることができない。
しかし、メインシリンダ10とサブシリンダ20を組み合わせると、プレス工程のなかで、高速低加圧と低速高加圧を組み合わせることができる。
【0024】
つぎに、両シリンダ10,20の油室に作動油を供給する油路構成を説明する。
クラウン2の上部の機器格納部5内には、3個のプレフィルバルブ、すなわち第1プレフィルバルブPV1、第2プレフィルバルブPV2および第3プレフィルバルブPV3が設けられている。これら3個のプレフィルバルブPV1〜PV3にはそれぞれタンク6に外部油路で接続されている。なお、外部油路で接続されるのではなく、配管を無くしプレフィルバルブPV1〜PV3をタンク内に設置してもよい。
【0025】
なお、3個のプレフィルバルブPV1,PV2,PV3はいずれもタンク6からメインシリンダ10とサブシリンダ20側へ作動油供給を許容し、かつタンク6への作動油を送る方向の逆流を阻止する逆止弁機能をもっている。ただし、パイロット圧を作用させて逆止弁機能を解除することは可能であり、この場合、メインシリンダ10およびサブシリンダ20からタンク6への作動油返送が可能である。
【0026】
第1プレフィルバルブPV1には、メインシリンダ10のヘッド側油室13に通ずる第1内部油路31が接続され、この第1内部油路31はクラウン2とピストンロッド15を貫いて形成されている。第2プレフィルバルブPV2には、サブシリンダ20のサブ油室21に通ずる第2内部油路32が接続され、この第2内部油路32はクラウン2とピストンロッド15の上端部を貫いて形成されている。第3プレフィルバルブPV3には、メインシリンダ10のロッド側油室14に通ずる第3内部油路33が接続され、この第3内部油路33はクラウン2とピストンロッド15を貫いて形成されている。
【0027】
前記シリンダ体11には、メインシリンダ10のヘッド側油室13に連通する第4内部油路34とロッド側油室14に連通する第5内部油路35が形成されている。この第4内部油路34と第5内部油路35との間の連通を開閉する第1開閉弁V1も設けられている。第1開閉弁V1はシリンダ体11の外表面に取付けられており、直接、第4内部油路34と第5内部油路35につながっている。したがって、外部油路を設ける必要がない。
【0028】
子ラム22の中心にはサブシリンダ20のサブ油室21と連通する第6内部油路36が軸方向に延びるように形成され、かつシリンダ体11の底部にも延びて形成されている。また、シリンダ体11の底部にはメインシリンダ10のヘッド側油室13に連通する第7内部油路37が形成されている。この第6内部油路36と第7内部油路37との間を開閉する第2開閉弁V2も設けられている。第2開閉弁V2はシリンダ体11の外表面に取付けられており、直接、第6内部油路36と第7内部油路37につながっている。したがって、外部油路を設ける必要がない。
【0029】
前記第2内部油路32には、ポンプP(油圧源である。以下同じ)につながった外部油路41が接続されており、この外部油路41には主開閉弁V3と圧力計42も介装されている。
サブシリンダ20のサブ油室21には、ポンプPから吐出される圧油が外部油路41および第2内部油路32を通じて供給される。
また、メインシリンダ10のヘッド側油室13には、サブ油室21と第6内部油路36と第7内部油路37を介してポンプPから吐出される圧油が供給される。
【0030】
タンク6にはメインシリンダ10とサブシリンダ20の動作中の作動油不足を補うための作動油が貯えられている。
そして、メインシリンダ10のヘッド側油室13には、第1プレフィルバルブPV1を介してタンク6内の作動油が給排される。
サブシリンダ20のサブ油室21には、第2プレフィルバルブPV2を介してタンク6内の作動油が給排される。
メインシリンダ10のロッド側油室14には、第3プレフィルバルブPV3を介してタンク6内の作動油が給排される。
【0031】
つぎに
図3に基づき、シリンダ体11の構造を説明する。
メインシリンダ10のシリンダ体11は、
図2に示すような一体物でもよいのであるが、以下に示す分割型を採用することもできる。
図3は分割型シリンダ体11の一例を示している。
【0032】
図3に示すシリンダ体11は、中空のシリンダ胴部材11Aと該シリンダ胴部材11Aの底端を塞ぐように取付けたシリンダ底部材11Bとからなる。シリンダ胴部材11Aとシリンダ底部材11Bとは、半径方向は環状のインロウ51による嵌め合せで位置決めし、周方向は位置決めキー52で位置決めして、固定される。
【0033】
シリンダ胴部材11Aとシリンダ底部材11Bのインロウ51部分では、環状のパッキン53で液密にされ、かつ、シリンダ胴部材11Aの底端とシリンダ底部材11Bの上面との間にはOリング54が入れられ、液密にされている。
そして、シリンダ胴部材11Aとシリンダ底部材11Bとは、適宜の個所でボルトで結合されている。
【0034】
位置決めキー52の取付溝はシリンダ体11の中心に対し放射状に配置されている。この結果、位置決めキー52も中心対象放射状に配置され、中心軸まわりの周方向での胴部材11Aと底部材11B間の取付位置が固定する。このため、内部油路34,35のヘッド側油室13への接続が確実に行われる。また、シリンダの内圧による膨張が発生してもキー52を損傷することがない。
【0035】
上記のごとく、メインシリンダ10をシリンダ胴部材11Aとシリンダ底部材11Bからなる二分割構造にすると、それぞれの部材を個別に加工できるので、加工が容易となり安価に製造できる。
すなわち、シリンダ胴部材11Aは円筒部材なので、加工機による内面切削が容易となり、また内面研磨も可能となるので、ピストンロッド15との接触面を高精度に仕上げることができる。
シリンダ底部材11Bは基本形状が円形なので、加工は容易である。
【0036】
また、前記シリンダ底部材11Bをスライド機能を果せる大きさと形状にすることで、スライドを有するプレスと同等の機能を果すことができ、しかも油圧プレスAの構造をコンパクトにできる。
【0037】
つぎに、油圧プレスAのガイド構造を
図4に基づき説明する。
本発明の油圧プレスAでは、メインシリンダ10のシリンダ体11が昇降するので、ガイド構造はシリンダ体11とアプライト3との間に設けられる。このガイド構造は、シリンダ体11に取付けられるシリンダ側ガイド部62とアプライト3に取付けられるアプライト側ガイド材66とからなる。
シリンダ側ガイド部62は、直接シリンダ体11に取付けてもよいが、シリンダ体11に外装する別部材を介して間接的にシリンダ体11にシリンダ側ガイド部62を取付けてもよい。特許請求の範囲の記載は、この直接取付けと間接取付けを含む意味に解される。
【0038】
本実施形態の油圧プレスAでは、
図4(A),(B)に示すように、メインシリンダ10のシリンダ体11の外周に嵌入した嵌入部材61を設け、この嵌入部材61に前後左右4カ所のシリンダ側ガイド部62を形成している。なお、嵌入部材61は、
図1,
図4および
図5に示しているが、
図2および
図6〜
図9には示していない。
【0039】
図4に示すように、メインシリンダ10のシリンダ体11にガイド部を構成する嵌入部材61を嵌める構成とすることで、シリンダ体11の強度向上を図ることができる。
【0040】
各シリンダ側ガイド部62は、上側ガイド63と下側ガイド64とからなり、上側ガイド63は嵌入部材61の上部に設けられ、下側ガイド64は嵌入部材61の下部に設けられている。
嵌入部材61の上部はシリンダ体11の上部に対応する位置であり、嵌入部材61の下部はシリンダ体11の下部に対応する位置である。
このように、上下に分けた上側ガイド63と下側ガイド64を用いることで、シリンダ体11の上下方向の真直度を確実にガイドできるようになっている。
【0041】
上側ガイド63及び下側ガイド64は、嵌入部材61と一体に成形されていてもよく、嵌入部材61に溝を形成し、その溝に嵌入された組合せ構造としてもよい。また、嵌入部材61を、上側ガイド63及び下側ガイド64の高さ方向の厚みと略同じとし、上下分割構造にしてもよい。
【0042】
また、
図4(B)に示すように、後述するアプライト側ガイド材66のガイド材と摺動する上側ガイド63及び下側ガイド64のガイド面は、それぞれ対角位置にあるガイド面の延長線上であって、シリンダ体11の中心と概略一致する位置に配置されている。即ち、上側ガイド63及び下側ガイド64の左手前ガイド面と右奥ガイド面を結ぶ線と、右手前ガイド面と左奥ガイド面を結ぶ線の交点が概略シリンダ中心と一致するように配置される。このような配置とすることで、圧油によるシリンダ体11の膨張が生じても、その影響でガイド隙間が小さくなることを防止することができる。
【0043】
前記シリンダ側ガイド部62の相手部材であるアプライト側ガイド材66は、上側ガイド材67と下側ガイド材68とからなり、いずれもアプライト3に取付けられている。
シリンダ体11(または嵌入部材61)に取付けられた上側ガイド63は上側ガイド材67で案内され、シリンダ体11(または嵌入部材61)に取付けられた下側ガイド64は下側ガイド材68で案内される。
【0044】
上記のように、ガイド構造を上側と下側に分けたことで、ガイド構造の設計自由度が増え、またガイド構造の解体が容易となる。
【0045】
図5(A),(B)に示すように、前後左右4カ所のアプライト側ガイド材66、上側ガイド材67と下側ガイド材68にはシリンダ体11が通常のプレス動作ストローク、すなわち仕様上のプレス動作ストロークよりもさらに下降した位置でガイド部63,64と干渉しない非干渉部71,72が設けられている。
上側非干渉部71は上側ガイド材67と下側ガイド材68の間に切り欠き状に設けられており、下側非干渉部72は下側ガイド材68の下側に空間として設けられている。
【0046】
以上のごとき構造であるので、メインシリンダ10を仕様上の最下降位置よりも更に下降させるとシリンダ側ガイド部62とアプライト側ガイド材66が干渉しなくなるので、メインシリンダ10のプレス本体からの抜き取りが容易となり、フレームなどの大きな解体を要することもない。
【0047】
つぎに、本実施形態の油圧プレスAのプレス動作を説明する。
本実施形態のプレス動作には、(1)高速下降、(2)高速低圧加圧、(3)低速高圧加圧、および(4)上昇の4動作がある。
以下、順に説明する。
【0048】
(1)高速下降(
図6参照)
引き戻しシリンダ45のロッド側の油をタンク6に逃がすことにより、シリンダ体11は降下する。このとき、ヘッド側油室13には、第1内部油路31と第1プレフィルバルブPV1を通してタンク6から作動油が吸い込まれる。また、サブ油室21には、第2内部油路32と第2プレフィルバルブPV2を通して、タンク6から作動油が吸い込まれる。ロッド側油室14の作動油は、第2内部油路33と第3プレフィルバルブPV3を通してタンク6へ排油される。
このとき、第1開閉弁V1を開とするとロッド側油室14の作動油は、第4,第5内部油路34,35を通してヘッド側油室13に供給されるため、第1プレフィルバルブPV1の容量を小さくすることができる。
なお、上記のようにメインシリンダ10を自重落下させるのではなく、次に記載の高速低圧加圧モードで下降させても良い。
【0049】
(2)高速低圧加圧(
図7参照)
第1プレフィルバルブPV1にパイロット圧をかけて逆止弁機能を解除する。第2,第3プレフィルバルブPV2,PV3は閉じておく。
ポンプPからの作動油供給を続け、第2内部油路32を通じてサブ油室21へ圧油供給を続ける。
【0050】
ロッド側油室14内の作動油は第4,第5内部油路34,35を介してヘッド側油室13に返油される。この返油量では不足するため、第1プレフィルバルブPV1および第1内部油路31を介してタンク6内の作動油をヘッド側油室13に供給する。
このとき、子ラム22の受圧面積に油圧力を乗じた加圧力が発生するので、低圧加圧ができる。また、圧油の加圧を受けるのは受圧面積の小さい子ラム22だけなので高速下降ができる。
【0051】
(3)低速高圧加圧(
図8参照)
大加圧力が必要になったストローク時点で、第2開閉弁V2を開とする、第3プレフィルバルブPV3にはパイロット圧をかけて逆止弁機能を解除して開の状態にし、第1,第2プレフィルバルブPV1,PV2はパイロット圧をかけない定常状態にしておく。
ポンプPからの作動油供給を続け、第2内部油路32を通じてサブ油室21へ圧油供給を続ける。
【0052】
第2開閉弁V2を開とすると、第6,第7内部油路36,37を通じて圧油がヘッド側油室13へ供給される。このとき、子ラム22の受圧面積にヘッド側油室13の受圧面積を加えた全受圧面積に油圧力を乗じた加圧力が発生するので、高圧加圧ができる。ただし、ヘッド側油室13の受圧面の面積が大きいので低速となる。
このとき、第3プレフィルバルブPV3は逆止弁機能を解除されているので、ロッド側油室14の作動油は第3内部油路33と第3プレフィルバルブPV3を介してタンク6に返油される。
【0053】
(4)上昇(
図9参照)
加圧成形を終えた後、シリンダ体11は上昇させるが、この操作は引戻しシリンダ45で行われる。
第1,第2プレフィルバルブPV1,PV2は開とされ、第3プレフィルバルブPV3は定常状態のままとされる。引戻しシリンダ45でシリンダ体11を引き上げる。
【0054】
すると、ヘッド側油室13内の作動油は第1内部油路31および第1プレフィルバルブPV1を介してタンク6に返油される。サブ油室21内の作動油は、第2内部油路32と第2プレフィルバルブPV2を介してタンク6に返油される。
なお、第1開閉弁V1を開としておけば、ヘッド側油室13内から排出すべき油をタンク6だけでなくロッド側油室14に返油することもできる。
【0055】
上記プレス工程のうち、(2)高速低圧加圧から(3)低速高圧加圧への切替えは、シリンダ体11の下降位置の位置検出や、子ラム22内の圧力を圧力検出により行える。(3)低速高圧加圧から(4)上昇への切替えも同様である。
【0056】
つぎに、本実施形態の油圧プレスAにおける利点を説明する。
(1)油漏れ防止効果(その1)
本実施形態の油圧プレスAでは以下のように内部配管を用いており、外部配管を用いないので剛性が高く振動に強いため、油漏れ防止効果が高い。
a)メインシリンダ10の油室への作動油供給が第1から第3の内部油路31,32,33によって行われるので油漏れを防止できる。
b)メインシリンダ10のヘッド側油室13とロッド側油室14との間で第4内部油路34と第5内部油路35により作動油給排ができるので、油漏れを防止できる。
c)サブシリンダ20のサブ油室21とメインシリンダ10のヘッド側油室13の間で第6内部油路36と第7内部油路37により作動油給排ができ、油漏れを防止できる。
(2)油漏れ防止効果(その2)
本実施形態の油圧プレスAでは、メインシリンダ10のロッド側油室14には返油時の作動油が貯えられるだけで高圧がかからないので、外部漏れが発生する可能性がある唯一の摺動部であるパッキンボックス18からの油漏れが生じにくい。
【0057】
(3)コンパクト効果
本実施形態の油圧プレスAでは、以下の理由によりコンパクト化が実現できる。
a)クラウン2にピストンロッド15を固定するため、シリンダをクラウンに装着するための孔(
図10の符号101)を設ける必要がない。そのため、クラウン2を小形にでき、油圧プレスAをコンパクトにできる。
b)メインシリンダ10のシリンダ体11の底部でスライドを兼ねることができるので、専用のスライドを用いる必要がなく油圧プレスA全体のコンパクト化ができる。
c)メインシリンダ10のヘッド側油室13への作動油の供給は主に第4、第5内部油路34、35を通じて行えるので、第1内部油路31からの作動油供給は比較的少量でよく、第1プレフィルバルブPV1も小形でよくなる。このように第1プレフィルバルブPV1を通る作動油は、不足量補充と返油の場合だけなので、通過油量が小さくてすみ、小形のバルブを用いることができる。このため、油圧プレスAの上部構造をコンパクト化できる。