(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
本実施の形態の対象物移動装置は、取付対象に取り付けられ、キャリアプレートを移動させることにより、キャリアプレートに取り付けられる移動対象物を移動させる。対象物移動装置の移動対象物は、本実施の形態では、キャリアプレートに接続された、キャリアプレートとは別の物体であるが、キャリアプレートに一体的に接続したものであってもよい。
【0014】
本実施の形態では、取付対象は、車両のドアのインナーパネルとアウターパネルであり、対象物移動装置は、車両のドアのインナーパネルとアウターパネルとの間に取り付けられる。また、移動対象物は、ガラス窓であり、対象物移動装置は、車両のガラス窓を昇降する窓ガラス昇降装置、つまりウインドウレギュレータに適用される。
【0015】
本実施の形態では、移動対象物は窓ガラスであるので、窓ガラスが取り付けられるキャリアプレートの移動方向は、移動対象物である窓ガラスの昇降方向を基準として規定される上下方向である。
【0016】
なお、本実施の形態の対象物移動装置は、キャリアプレートを移動させる装置であれば、どのような装置に用いられてもよく、窓ガラス昇降装置以外のその他の装置に用いることができる。その他には、例えば、昇降移動する着座部を昇降させる装置に適用できる。また、対象物移動装置は、歩行の際に、下端に車輪のついたハンドルを車輪から所定長離間するように上下動させて、ハンドルを握る使用者を、着座状態から歩行可能な姿勢にさせて歩行を支援する歩行支援装置にも適用できる。
【0017】
<窓ガラス>
図1に示す窓ガラスWgは、対象物移動装置10の移動対象物であり、対象物移動装置10のキャリアプレート30、50に接続される。窓ガラスWgは、下端でキャリアプレート30、50に接続され、支持されている。窓ガラスWgは、キャリアプレート30、50の昇降に連動して昇降する。
【0018】
窓ガラスWgは、本実施の形態では、昇降することによりドア窓の開口部(図示省略)を開閉する。
【0019】
なお、窓ガラスWgは、本実施の形態では、キャリアプレート30、50とともに、駆動部20のドラム22による駆動力伝達部材80の巻き取り及び送り出しによって昇降するので、その移動量はキャリアプレート30、50の移動量と等しくなる。これにより、キャリアプレート30、50に接続される窓ガラスWgは姿勢を崩すことなく、昇降して窓を開閉することが可能である。
【0020】
[対象物移動装置10]
本実施の形態では、移動対象物は、上述したように、キャリアプレート30に接続された窓ガラスWgであり、キャリアプレート30、50は窓ガラスWgを支持している。
【0021】
対象物移動装置10の適用例がウインドウレギュレータの場合、キャリアプレート30、50の移動方向UDは、移動対象物である窓ガラスWgの昇降方向を基準として規定される。移動方向UDは、後述する案内部材60(ガイドレール62、64が延在する方向である。また、本実施の形態では、対象物移動装置10は、キャリアプレート30、50により窓ガラスWgを支持して昇降させるダブルリフト式のウインドウレギュレータに適用されているが、1つのキャリアプレートにより窓ガラスWgを支持して昇降させるシングルリフト式に適用されてもよい。
【0022】
対象物移動装置10は、
図1に示すように、駆動部20、キャリアプレート30、50、案内部材60、駆動力伝達部材(具体的にはケーブル)80、及び嵌合部材90(
図3等参照)を備える。
【0023】
[駆動部20]
駆動部20は、駆動力伝達部材(ケーブル)80を介してキャリアプレート30、50を昇降移動させる。
【0024】
駆動部20は、本実施の形態では、駆動力伝達部材80としてのケーブルを巻き取り繰り出すことでキャリアプレート30、50を移動させる。
【0025】
駆動部20には、駆動力伝達部材80の一端、つまり、本実施の形態における上昇用ケーブル80Bの一端と、下降用ケーブル80Cの一端が、それぞれ接続される。
【0026】
具体的には、駆動部20は、ハウジング21と、ドラム22と、電気的に駆動するモータ24と、ウォームギヤ等の動力伝達部(図示省略)とを有する。駆動部20は、動力伝達部(図示省略)を介してモータ24の回転運動をドラム22に伝達してドラムを回転させる。駆動部20は、モータ24を順方向と逆方向とに回転駆動し、この回転駆動によりドラム22が順方向と逆方向とに回転する。
【0027】
駆動部20は、本実施の形態では、平行に配置されたガイドレール62、64の間に位置するように、取付対象に取り付けられる。
【0028】
ハウジング21は、ドラム22、モータ24及び動力伝達部(図示省略)を収容する。
ドラム22は、モータ24の回転駆動において、正方向の回転と、逆方向の回転とを行う。ドラム22には、上昇用ケーブル80Bと下降用ケーブル80Cとが、互いに逆向きに巻かれて接続される。ドラム22は、順方向或いは逆方向の回転によって、上昇用ケーブル80Bを巻き込んでキャリアプレート50を介して連結ケーブル80Aを引っ張るか、下降用ケーブル80Cを巻き込んでキャリアプレート30を介して連結ケーブル80Aを引っ張る。ドラム22は、上昇用ケーブル80Bを巻き取るときには連結ケーブル80Aを介して下降用ケーブル80Cを繰り出し、下降用ケーブル80Cを巻き取るときには連結ケーブル80Aを介して上昇用ケーブル80Bを繰り出す。また、駆動部20は、ガイドレール62、64の一方に保持される構成としてもよい。
【0029】
[キャリアプレート30、50]
キャリアプレート30、50は、駆動力伝達部材80を介して駆動部20により移動され、移動対象物が接続されている場合、移動対象物を移動させる。本実施の形態においては、キャリアプレート30、50は、窓ガラスWgに接続し、窓ガラスWgを支持する。
【0030】
図2は、対象物移動装置10におけるキャリアプレートを示す背面図であり、
図3は、
図2のA―A線概略断面図である。また、
図4は、対象物移動装置10のキャリアプレート30、50と駆動力伝達部材80の取付構造の要部構成を示す部分分解斜視図であり、
図5は、同対象物移動装置のキャリアプレート30、50と駆動力伝達部材80の取付構造の要部構成を示す平断面図である。
【0031】
キャリアプレート30では、ガイド部32の下側のエンド収容部33Aに連結ケーブル80Aの他端82(後述するケーブルエンドとしての金属部88)が係止され、連結ケーブル80Aは、キャリアプレート30から上方に延在している。キャリアプレート30では、ガイド部32の上側のエンド収容部33Bに下降用ケーブル80Cの他端84(後述するケーブルエンドとしての金属部88)が係止され、下降用ケーブル80Cはキャリアプレート30から下方に延在している。
【0032】
キャリアプレート30は、移動対象物が取り付けられる取付部31と金属体(具体的には、ガイド部32)とを含む。なお、本実施の形態において、キャリアプレート30は、窓ガラスWgを移動自在に支持する強度を有する、例えば金属材料等の材料で形成される。
【0033】
取付部31は、本実施の形態では、窓ガラスWgを固定するガラス固定部であり、窓ガラスWgの下端部を固定する。取付部31は、例えば、ねじ孔であり、窓ガラスWgの下端に形成された貫通孔に挿入したねじを締結することにより窓ガラスWgを固定する。
【0034】
金属体は、駆動力伝達部材の金属部と間接的に係合して、駆動力伝達部材80を介して駆動部20の駆動力が伝達される。なお、キャリアプレート30の金属体は、駆動力伝達部材80と直接係合しない。
【0035】
キャリアプレート30の金属体は、駆動力伝達部材80の端部(連結ケーブル80Aの他端82、及び下降用ケーブル80Cの他端84)が係合されるガイド部32である。
【0036】
ガイド部32は、連結ケーブル80Aの他端82(金属部88)を収容するエンド収容部33Aと、下降用ケーブル80Cの他端84(金属部88)を収容するエンド収容部33Bとを有する。本実施の形態では、エンド収容部33Aは、ガイド部32において下側に配置され、エンド収容部33Bはガイド部32において上側に配置されている。なお、金属体は、エンド収容部33A、33Bを含み、キャリアプレート30の少なくとも一部を構成する構造であればよい。
【0037】
エンド収容部33Aには、連結ケーブル80Aの端部が挿入される案内溝34aが上方に延びるように連続して設けられている。エンド収容部33Bには、下降用ケーブル80Cの端部が挿入される案内溝34bが、案内溝34aと交差するように、下方に延びて連続して設けられている。これら案内溝34a、34bには、それぞれ、エンド収容部33A、33Bよりも径が小さく、連結ケーブル80A、下降用ケーブル80Cを挿通できるが、それぞれの他端(ケーブルエンド)は挿通できない。これにより、エンド収容部33A、33B内に連結ケーブル80A、下降用ケーブル80Cの他端を収容し、それぞれのケーブル自体を案内溝34a、34b内に配索すると、それぞれの他端がエンド収容部33A、33Bと案内溝34a、34bと連続する部位の縁部(ケーブル導出部34)に係合する。
【0038】
よって、エンド収容部33Aに、キャリアプレート30の上方に配索される連結ケーブル80Aの他端82が収容され、エンド収容部33Bにキャリアプレート30の下方に配索される下降用ケーブル80Cの他端84が収容された際に、連結ケーブル80A及び下降用ケーブル80Cは、互いに交差するように配索された状態で、キャリアプレート30から抜けないようにキャリアプレート30に係合する。
【0039】
また、ガイド部32は、キャリアプレート30がガイドレール62の延在方向に移動可能となるように、案内部材60であるガイドレール62に対して嵌合する。
【0040】
ガイド部32は、ガイドレール62の裏面側に突出する爪部324を有する。爪部324が、ガイドレール62の端部62aに嵌合することにより、キャリアプレート30は、ガイドレール62に延在方向に移動自在となる。
【0041】
ガイド部32がガイドレール62に嵌合した際に、ガイド部32のエンド収容部33A、33Bの開口部側の面321は、溝状のガイドレール62の底面であるレール本体62bに対向する位置に配置される。本実施の形態では、ガイド部32の開口部側の面321と、レール本体62bとの間に嵌合部材90(具体的には、嵌合部材90の板状本体部91)が配設される。
【0042】
なお、キャリアプレート50には、キャリアプレート30と同様に設けられたエンド収容部(図示省略)を介して、上昇用ケーブル80Bの他端が係止され、上昇用ケーブル80Bは、キャリアプレート50から上方に延在する。また、キャリアプレート50には、キャリアプレート30と同様に設けられたエンド収容部(図示省略)を介して、連結ケーブル80Aの一端が係止され、連結ケーブル80Aは、キャリアプレート50から下方に延在する。
【0043】
本実施の形態では、駆動力伝達部材80の一例であるケーブルによりキャリアプレート30、50が移動する構成としたが、これに限らず、1つの移動部材(キャリアプレート)が移動する構成としてもよい。
対象物移動装置10では、キャリアプレート30、50は、それぞれガイドレール62、64に嵌合し、ガイドレール62、64に案内されて、昇降移動する。
本実施の形態では、キャリアプレート30、50は、窓ガラスWgの下端部を離間する二箇所で保持するとともに、ガイドレール62、64に沿って窓ガラスWgの昇降方向に案内される。
キャリアプレート30、50は、ガイドレール62、64の一端側(
図1〜
図3では下端側)と他端側(
図1〜
図3では上端側)間で移動方向UDに移動し、移動対象物である窓ガラスWgを、離間する二箇所で保持しながら昇降方向に移動させる。
【0044】
[案内部材60(ガイドレール62、64)]
案内部材60は、キャリアプレート30、50を案内する。案内部材60は、本実施の形態では、2本のガイドレール62、64を有する。
ガイドレール62、64は、キャリアプレート30、50の移動を案内し、キャリアプレート30、50を移動可能にそれぞれ支持する。ガイドレール62、64は、キャリアプレート30、50を、ガイドレール62、64の軸周り方向に回転しないように支持する。ガイドレール62、64は、本実施の形態では、キャリアプレート30、50の移動方向UDに長く、ほぼ同一形状の横断面が長手方向に延びるレールである。例えば、ガイドレール62は、平断面視して凹状に形成され、端部62aに屈曲部を有する。端部62aに、キャリアプレート30を嵌合させて、キャリアプレート30をガイドレール62の長手方向に沿って上下移動可能に支持する。なお、ガイドレール64もガイドレール62と同様な構成を有し、キャリアプレート50の端部に、キャリアプレート50を嵌合させて、キャリアプレート50をガイドレール64の長手方向に沿って上下移動可能に支持する。ガイドレール62、64は、キャリアプレート30、50の移動方向UDに沿って互いに略平行に、配置される。
【0045】
なお、本実施の形態では、ガイドレール62、64の延在方向は、キャリアプレート30、50の上下方向への移動に合わせた上下方向である。本実施の形態では、キャリアプレート30、50の移動方向UDである上下方向が傾斜しているが、これに限らない。これらの移動方向UDは、移動対象物の移動方向に応じて、適宜設定することができる。また、ガイドレール62、64は、対象物移動装置10において、キャリアプレート30、50が上下方向に移動自在に設けられる構成であれば、無くてもよい。本実施の形態においては、第一のガイドレールと第二のガイドレールを有するが、第一ガイドレールのみであってもよい。ガイドレール64が第一ガイドレールのみである場合には、駆動部20は、第一ガイドレールの下端に設けられてもよく、ガイドレールの長手方向の中間位置に位置するように配置されてもよい。
【0046】
[方向転換部材41〜44]
方向転換部材41〜44は、駆動力伝達部材80の移動方向を転換する部材である。方向転換部材41〜44としては、例えば、転換方向に沿って駆動力伝達部材80を案内する弾性を有する樹脂製のガイド或いは、プーリ等が適用される。
【0047】
方向転換部材41、42は、キャリアプレート30の移動方向UDに離間して配置され、方向転換部材43、44は、キャリアプレート50の移動方向UDに離間して配置される。本実施の形態では、方向転換部材41、42は、ガイドレール62の上下端部にそれぞれ設けられている。また、方向転換部材43、44は、ガイドレール64の上下端部にそれぞれ設けられている。
【0048】
[駆動力伝達部材80]
駆動力伝達部材80は、キャリアプレート30に接続して駆動部20の駆動力をキャリアプレート30に伝達する。
駆動力伝達部材80は、駆動部20の駆動力を、キャリアプレート30に伝達することにより、キャリアプレート30を移動させる。
駆動力伝達部材80は、本実施の形態では、上述した連結ケーブル80A、上昇用ケーブル80Bおよび下降用ケーブル80Cを含む駆動力伝達部材80と、駆動力伝達部材80のケーブルエンドを構成する金属部88とを有する。金属部88は、真鍮等の鋳込みにより構成されたケーブルエンドであってもよい。
【0049】
駆動力伝達部材80は、キャリアプレート30を、移動方向UDに移動させるために、駆動部20の駆動力をキャリアプレート30に伝達する部材である。
駆動力伝達部材80は、駆動部20の駆動力により移動する。具体的には、駆動力伝達部材80は、駆動部20の駆動力を引っ張り力に変換して、キャリアプレート30、50を引っ張ったり、キャリアプレート30、50を押圧したりすることにより、キャリアプレート30を移動させるケーブルである。
駆動力伝達部材80は、駆動部20とキャリアプレート30、50とを接続する長尺の部材であり、駆動部20で発生する駆動力をキャリアプレート30、50に伝達する。
駆動力伝達部材80としては、例えば、金属素線及び樹脂繊維素線のうちの少なくとも一方を複数用いて撚り合わせたワイヤを用いることができる。
駆動力伝達部材80は、その方向が例えば方向転換部材41、42、43、44により転換されることが可能な可撓性を有する。
本実施の形態では、駆動力伝達部材80は、方向転換部材41、42、43、44に架設されている。
【0050】
上昇用ケーブル80Bは、駆動部20がキャリアプレート30、50を上昇側へ移動させる駆動力をキャリアプレート30、50に伝達する。具体的には、駆動力伝達部材80として、上昇用ケーブル80Bは、一端が駆動部20のドラム22に接続され、ガイドレール64の方向転換部材44に掛け回されてその配索方向がガイドレール64の下方に転換される。上昇用ケーブル80Bの他端はキャリアプレート50に接続されている。上昇用ケーブル80Bは、駆動部20の駆動により配索方向に巻き取り繰り出される。
上昇用ケーブル80Bは、キャリアプレート50と方向転換部材44との間と、方向転換部材44とドラム22との間とにおいて、張力を付与された状態で配置される。
下降用ケーブル80Cは、駆動部20がキャリアプレート30、50を下降側へ移動させる駆動力をキャリアプレート30,50に伝達する。
【0051】
下降用ケーブル80Cは、駆動部20のドラム22及びキャリアプレート30を連結するとともに、駆動部20の駆動力を、連結ケーブル80Aと上昇用ケーブル80Bに伝達する。下降用ケーブル80Cは、駆動部20の駆動力により上昇用ケーブル80Bがドラム22に巻き取られた際に繰り出され、上昇用ケーブル80Bが繰り出された際に巻き取られる。下降用ケーブル80Cは、一端がドラム22に接続され、ガイドレール62の下端に配置された方向転換部材41に掛け回されてその配索方向がガイドレール62の上方に転換される。下降用ケーブル80Cの他端84はキャリアプレート30に、下側から接続されている。下降用ケーブル80Cは、ドラム22と方向転換部材41との間、及び、キャリアプレート30と方向転換部材41との間において、張力を付与された状態で配置される。
【0052】
下降用ケーブル80Cは、上昇用ケーブル80Bがドラム22に巻き取られると、連結ケーブル80Aが方向転換部材42側から方向転換部材43側に移動し、キャリアプレート30を牽引する。下降用ケーブル80Cは、上昇用ケーブル80Bがドラム22から繰り出されると、ドラム22に巻き取られることにより、方向転換部材41側からドラム22側に移動し、キャリアプレート30を牽引する。
【0053】
駆動部20の駆動力は、駆動力伝達部材80を介してキャリアプレート30、50に伝達されて、移動対象物である窓ガラスWgを昇降させることになる。
【0054】
連結ケーブル80Aは、ガイドレール62、64の間で上昇用ケーブル80Bと交差するように配索されている。連結ケーブル80Aは、中間ケーブルとも呼ばれ、2つのキャリアプレート30、50の中間に配索されるケーブルであり、2つのキャリアプレート30、50を繋ぐ。連結ケーブル80Aの一端は、キャリアプレート50に接続され、キャリアプレートの上方に延びるように配置され、ガイドレール62の上端に位置する方向転換部材42に掛け回されてその配索方向が転換されている。方向転換部材42で配索方向が転換された連結ケーブル80Aは、ガイドレール64の下端に位置する方向転換部材43に掛け回されてその配索方向がガイドレール64の上方に転換される。連結ケーブル80Aの一端は、キャリアプレート50に、下側から接続されている。連結ケーブル80Aは、キャリアプレート30と方向転換部材42との間、方向転換部材42、43の間及び方向転換部材43とキャリアプレート50との間において、張力を付与された状態で配置されている。
【0055】
駆動力伝達部材80は、本実施の形態では、アウターケーシング内に摺動可能に配置されるインナーケーブルである。
【0056】
連結ケーブル80A、上昇用ケーブル80B及び下降用ケーブル80Cは、それぞれアウターケーシングの両端部から導出され、導出された端部で、キャリアプレート30、50、ドラム22に適宜接続される。
連結ケーブル80A、上昇用ケーブル80B及び下降用ケーブル80Cは、それぞれアウターケーシング(図示省略)に挿通され、両端部から連結ケーブル80A、上昇用ケーブル80B及び下降用ケーブル80Cがそれぞれ導出される。連結ケーブル80A、上昇用ケーブル80B及び下降用ケーブル80Cの端部には、それぞれ金属部88が設けられている。
このように駆動力伝達部材80は、駆動部20により上昇用ケーブル80Bがドラム22に巻き取られ繰り出されることにより、上昇用ケーブル80Bの配索方向への移動に追従して、連結ケーブル80Aを介して下降用ケーブル80Cも移動する。連結ケーブル80A、上昇用ケーブル80B及び下降用ケーブル80Cの移動によりキャリアプレート30、50は昇降する。
【0057】
[金属部88]
金属部88は、キャリアプレート30の金属体(本実施の形態では、ケーブル導出部34)と間接的に係合する。これにより、駆動力伝達部材80は、キャリアプレート30に駆動部20の駆動力を伝達可能に接続する。金属部88は、本実施の形態では、駆動力伝達部材80の端部に設けられるケーブルエンドであり、ケーブル本体の外径よりも大きい。
【0058】
[嵌合部材90]
図6は、電食抑制部を示す嵌合部材90の斜視図である。
嵌合部材90は、駆動力伝達部材80の金属部88とキャリアプレート30の金属体(ガイド部32)との接触を防止した状態でキャリアプレート30に嵌合する。
嵌合部材90は、電食抑制部92と、嵌合部94(
図4及び
図5参照)と、摺動部96とを有する。
電食抑制部92は、ガイド部32(特にケーブル導出部34)と金属部88との間に介在するように金属部88と係合する。電食抑制部92は、金属部88に係合して、金属体と金属部88とが接触した状態が継続し、互いの電位差による電食の発生を抑制する。連結ケーブル80A、上昇用ケーブル80B及び下降用ケーブル80Cのケーブルエンドである金属部88は、ケーブルに張力が加えられた状態で電食抑制部92を押圧し、金属体(特にエンド収容部33A、33Bの内周面)とは接触しない状態でエンド収容部33A、33Bに収容されている。
【0059】
嵌合部94は、キャリアプレート30と嵌合する。嵌合部94は、キャリアプレート30と嵌合して、駆動力伝達部材80の金属部88とキャリアプレート30の金属体(具体的にはケーブル導出部34)との接触を防止した状態にする構成であれば、どのように嵌合してもよい。本実施の形態では、嵌合部94は、ガイドレール62の端部62aに嵌合する爪部324に嵌合するように構成されている。
これにより、嵌合部材90は、キャリアプレート30に対して嵌合できるように特別な加工を施すこと無く、キャリアプレート30が移動しても、キャリアプレート30から外れないようキャリアプレート30に嵌合できる。また、ケーブルに加えられた張力がケーブルエンドである金属部88を介して、電食抑制部92をエンド収容部33A、33Bへと押圧するので、嵌合部材90はキャリアプレート30に固定されることができる。
【0060】
嵌合部材90は、ケーブル導出部34と金属部88との間で発生する電食を防ぐ材料であればどのような材料で形成されてもよく、例えば、ガイド部32がアルミダイキャスト製であり、金属部88が亜鉛ダイキャスト製であれば、クロメート処理された金属等でもよい。また、嵌合部材90は、ポリカーボネイト(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、フッ素樹脂(FR)等のエンジンリングプラスチックなどの樹脂により形成されてもよい。
【0061】
本実施の形態において、嵌合部材90は、キャリアプレート30のエンド収容部33A、33Bのエンド収容面とガイドレール62のレール本体62bとの間に配置される板状本体部91を有する。板状本体部91に突設された電食抑制部92がエンド収容部33A、33B内に挿入される。
【0062】
電食抑制部92は、
図6に示すように、先端側に凹状の切欠922が形成された板状体であり、切欠922内にケーブルが挿入される。電食抑制部92は、エンド収容部33A、33B内で、金属部88であるケーブルエンドと、エンド収容部33A、33Bにおけるケーブル導出部34との間に介在し、金属体であるケーブル導出部34と金属部88であるケーブルエンドとの直接的な接触を阻害している。電食抑制部92は、金属部88が当接する当接部と、エンド収容部33A、33Bの内周面と接触する接触部とを有し、接触部とエンド収容部33A、33Bの内周面とが接触した状態で、エンド収容部33A、33B内に金属部88が収容される空間が形成できるように構成されている。
【0063】
すなわち、本実施の形態では、嵌合部材90は、キャリアプレート30に取り付けるだけで、キャリアプレート30から上下にそれぞれ導出する連結ケーブル80A及び下降用ケーブル80Cのそれぞれのケーブルエンド(他端82、84)における電食を抑制できる。
キャリアプレート30では、上方に導出する連結ケーブル80Aと、下方に導出する下降用ケーブル80Cとを交差させた状態で、それぞれのケーブルエンドをエンド収容部33A、33B内に配置させて係合させる構成を有する。
また、嵌合部材90は、連結ケーブル80Aのケーブルエンド(金属部88)とエンド収容部33Aのケーブル導出部34との間、及び、下降用ケーブル80Cのケーブルエンド(金属部88)とエンド収容部33Bのケーブル導出部34との間にそれぞれ電食抑制部92が介在するように構成されている。
よって、嵌合部材90をキャリアプレート30に取り付けただけで、連結ケーブル80A及び下降用ケーブル80Cのそれぞれのケーブルエンドを、電位差の異なるキャリアプレート30の金属部分に接触しないように係合させることができる。
【0064】
本実施の形態における嵌合部材90は、キャリアプレート30と、キャリアプレート30の爪部324上に配置されたガイドレール62におけるレール本体62bの端部62aとの間に配置され、エンド収容部33A、33Bへの抜脱方向への移動を規制した状態で取り付けられている。また、嵌合部材90の摺動部96は、レール本体62bにおいてキャリアプレート30と摺動する部分に設けられているレール本体62bの面部との摺動性を向上することができる。
また、嵌合部材90の板状本体部91では、電食抑制部92が突設する面と逆側の面は、レール本体62bに対して摺動する摺動部96である。この摺動部96は、キャリアプレート30がガイドレール62の延在方向に沿って移動する際に、キャリアプレート30とともに移動する。
【0065】
図5に示すように、摺動部96は、キャリアプレート30に接触する部分の全面に亘って設けられ、これにより、嵌合部材90は、取り付けられるキャリアプレート30が移動しても、キャリアプレート30から外れることがない。また、嵌合部材90が樹脂製であれば、摺動部96も樹脂製となり、例えば、金属製としたガイドレール62との摺動性を高めることができる。
【0066】
[対象物移動装置10の作用と効果]
本実施の形態の対象物移動装置10によれば、キャリアプレート30、50を介して窓ガラスWgを上下に移動する。例えば、窓ガラスWgを上昇させる際には、駆動部20を駆動することにより、つまり、モータ24の駆動によりドラム22を回転することにより、上昇用ケーブル80Bを巻き取る。上昇用ケーブル80Bを巻き取ることにより、上昇用ケーブル80Bは、ドラム22側に移動し、上昇用ケーブル80Bの他端に接続されるキャリアプレート50は、上方に牽引され、上昇方向に移動する。これに伴い、キャリアプレート50に一端が接続される連結ケーブル80Aも牽引され、連結ケーブル80Aの他端82が接続されるキャリアプレート30も上方に牽引され、上昇方向に移動する。
【0067】
このとき、連結ケーブル80Aの他端82のケーブルエンドを構成する金属部88は、キャリアプレート30のエンド収容部33A内で、案内
溝34a側に牽引され、ケーブル導出部34側に張力を受けている。エンド収容部33A内では、金属部88とケーブル導出部34との間に嵌合部材90の電食抑制部92が介在するため、金属部88が上方に牽引されてケーブル導出部34側に移動しても、ケーブル導出部34に接触することがない。また、連結ケーブル80Aによりキャリアプレート30が上方に牽引されると、キャリアプレート30のエンド収容部33Bも上昇する。これによりエンド収容部33Bが、エンド収容部33B内の下降用ケーブル80Cの他端84のケーブルエンドを構成する金属部88に対して上昇方向に移動し、他端84のケーブルエンドを構成する金属部88は、エンド収容部33Bのケーブル導出部34に近づく方向に、電食抑制部92から力を受ける。
【0068】
他端84のケーブルエンドを構成する金属部88とエンド収容部33Bのケーブル導出部34との間には、嵌合部材90の電食抑制部92が介在する。
他端84のケーブルエンドを構成する金属部88とエンド収容部33Bのケーブル導出部34とは、それぞれ電食抑制部92を挟んで間接的に係合し、キャリアプレート30が上昇方向に移動すると、下降用ケーブル80Cも上方へ牽引される。このとき、ドラム22は、上昇用ケーブル80Bを巻き取るともに、下降用ケーブル80Cを繰り出すので、キャリアプレート30は、キャリアプレート50とともに円滑に上昇する。
【0069】
また、窓ガラスWgを下降させる際には、駆動部20を駆動することにより、つまり、モータ24の駆動によりドラム22を回転することにより、下降用ケーブル80Cを巻き取る。下降用ケーブル80Cを巻き取ることにより、下降用ケーブル80Cの一端側が、ドラム22側に移動する。これに伴い、キャリアプレート30に他端が接続される下降用ケーブル80Cも牽引され、連結ケーブル80Aの他端82が接続されるキャリアプレート30も下方に牽引され、下降方向に移動する。このとき、下降用ケーブル80Cの他端84のケーブルエンドを構成する金属部88は、キャリアプレート30のエンド収容部33B内で、案内
溝34b側に牽引され、ケーブル導出部34側に移動する。エンド収容部33B内では、他端84のケーブルエンドを構成する金属部88とケーブル導出部34との間に嵌合部材90の電食抑制部92が介在するため、金属部88が下方に牽引されてケーブル導出部34側に移動しても、ケーブル導出部34に接触することがない。このように他端84のケーブルエンドを構成する金属部88とケーブル導出部34とが非接触で間接的に係合した状態で、下降方向に移動し、キャリアプレート30は下方に牽引される。
【0070】
これに伴い、キャリアプレート30のエンド収容部33Aも下降する。これによりエンド収容部33Aは、エンド収容部33A内の連結ケーブル80Aの他端82のケーブルエンドを構成する金属部88に対して下降方向に移動し、エンド収容部33Aのケーブル導出部34は、他端82のケーブルエンドを構成する金属部88に近づく方向に移動する。
他端82のケーブルエンドを構成する金属部88とエンド収容部33Aのケーブル導出部34との間には、嵌合部材90の電食抑制部92が介在する。これにより、他端82のケーブルエンドを構成する金属部88とエンド収容部33Aのケーブル導出部34とは、それぞれ電食抑制部92を挟んで間接的に係合した状態で、キャリアプレート30が下降方向に移動し、連結ケーブル80Aは下方へ牽引される。このとき、ドラム22は、下降用ケーブル80Cを巻き取るともに、上昇用ケーブル80Bを繰り出すので、キャリアプレート30は、キャリアプレート50とともに円滑に下降する。
【0071】
これら電食抑制部92は、キャリアプレート30(キャリアプレート50も同様)に、嵌合部材90を嵌合するだけで、キャリアプレート30の移動方向に延びる2つのケーブルのケーブルエンドとの間での電食が防止された対象物移動装置10を実現できる。
このように本実施の形態によれば、異種金属の直接の接触を防止する嵌合部材90を簡単に取り付けることができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。