特許第6885905号(P6885905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885905
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】ハーネスの保護構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   B60R16/02 623V
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-167791(P2018-167791)
(22)【出願日】2018年9月7日
(65)【公開番号】特開2020-40450(P2020-40450A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2020年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼本 尚之
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/155238(WO,A1)
【文献】 特開2012−182898(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0069386(US,A1)
【文献】 特開2011−063147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルによって車室と仕切られたフロントコンパートメントにパワーユニットが収容され、一端が電源に接続されたハーネスがフロントコンパートメント内でパワーユニットの後方からダッシュパネルに沿って配設されたハーネスの保護構造であって、ハーネスを収容する保持空間を有する保護部材がフロントコンパートメント内でパワーユニットの後方に設けられ、保護部材の前側にハーネスを保持空間に対して出し入れするための開口が形成され、保護部材は、開口を挟んで対向配置された一対の中空状のリブを有し、リブの前側が後側より幅広く形成され、保護部材は、前方から衝撃が加わったときに開口を塞ぐように変形して、保持空間を確保する構造とされたことを特徴とするハーネスの保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンなどのパワーユニットが収容されたフロントコンパートメント内に配設されるハーネスの保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータおよびエンジンをパワーユニットとして使用するハイブリッド車などの車両では、車両の前部のフロントコンパートメントにエンジンや電子制御ユニットが収容され、車両の後部に電池ユニットなどの電源が搭載されている。電子制御ユニットと電源とは高電圧ハーネスによって接続される。高電圧ハーネスは、パワーユニットの後方からフロントコンパートメントと車室とを仕切るダッシュパネルに沿って配設され、ダッシュパネルから車室の下方を通って電源まで配設される。
【0003】
前面衝突時、パワーユニットが後方に向かって移動すると、高電圧ハーネスがパワーユニットとダッシュパネルとに挟まれて損傷することがある。そこで、高電圧ハーネスを保護するために、例えばダッシュパネルに高電圧ハーネスを収容する凹部を設け、凹部の周囲を補強部材で補強する。しかし、このようなダッシュパネルによる対策では、コストアップ、重量アップ、生産性の悪化になるとともに、前面衝突時に補強部材によってダッシュパネルが車室側に入り込みやすくなる。
【0004】
また、特許文献1に記載のように、高電圧ハーネスを位置決めする位置決め部を備えたガイド部材の一部が屈曲変形可能な形状とされ、前面衝突時にガイド部材の屈曲変形によって高電圧ハーネスが前後の部材に挟まれることのない安全スペースに導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−76745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のガイド部材では、高電圧ハーネスは、位置決め部により位置決めされているだけであり、外部に露出している。そのため、衝撃によって高電圧ハーネスが位置決め部から外れると、ガイド部材の一部が屈曲変形しても、高電圧ハーネスが他の部材に挟まれるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、前面衝突時に高電圧ハーネスなどのハーネスを外れないようにして、衝撃から保護できるハーネスの保護構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のハーネスの保護構造は、ダッシュパネルによって車室と仕切られたフロントコンパートメントにパワーユニットが収容され、一端が電源に接続されたハーネスがフロントコンパートメント内でパワーユニットの後方からダッシュパネルに沿って配設される。ハーネスを収容する保持空間を有する保護部材がフロントコンパートメント内に設けられ、保護部材は、ハーネスを保持空間に対して出し入れするための開口を有し、保護部材は、衝撃が加わったときに開口を塞ぐように変形して、保持空間を確保する構造とされる。
【0009】
前面衝突によって保護部材に衝撃が加わると、保護部材の一部が変形して、開口が塞がれる。保護部材の他の部分は変形しないので、保持空間は確保され、ハーネスは開口からはみ出さない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、衝撃を受けると、開口が塞がれるので、ハーネスは保護部材から外れず、ハーネスにパワーユニットが直接当たることを防止でき、ハーネスの保護を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の高電圧ハーネスの配線を示す図
図2】ダッシュパネルに固定された保護部材を示す図
図3】保護部材の断面図
図4】保護部材の斜視図
図5】衝撃を受けて変形した保護部材を示す図
図6】変形の形態が異なった保護部材を示す図
図7】他の形態の保護部材の斜視図
図8】衝撃を受けて変形した他の形態の保護部材を示す図
図9】他の形態の保護部材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態のハーネスの保護構造を有する車両における高電圧ハーネスの配線を図1に示す。ハイブリッド車両の前部に配置されたフロントコンパートメント1には、エンジン2、CVTなどのトランスミッション3、電子制御ユニット4、駆動モータ(図示せず)によって構成されるパワーユニット5が収容されている。エンジン2とトランスミッション3とは一体化され、電子制御ユニット4は、トランスミッション3の上方に配置される。パワーユニット5はフロントコンパートメント1のほぼ中央に配置される。
【0013】
フロントコンパートメント1の後方には車室6が形成され、フロントコンパートメント1と車室6とはダッシュパネル7によって仕切られる。車室6の後部シート8の下方に、高電圧バッテリ9が配置される。高電圧バッテリ9と電子制御ユニット4とは高電圧ハーネス10によって接続される。高電圧ハーネス10は、高電圧バッテリ9から車室6のフロントフロア11の下方を通り、ダッシュパネル7の下部に形成されたフロアトンネル前方開口12からフロントコンパートメント1内に配設される。フロントコンパートメント1内において、高電圧ハーネス10は、ダッシュパネル7に沿って上方に導かれ、電子制御ユニット4に接続される。なお、高電圧ハーネス10の外周はプロテクタで覆われている。
【0014】
図2に示すように、高電圧ハーネス10を位置決めするとともに、前面衝突時の衝撃から高電圧ハーネス10を保護する保護部材20が設けられる。保護部材20は、アルミニウムなどの金属製の一体成型品とされ、ダッシュパネル7に固定される。連通口12から立ち上がってダッシュパネル7に沿って配線された高電圧ハーネス10が保護部材20によって位置決めされる。
【0015】
図3、4に示すように、保護部材20は、互いに対向して配置された一対のリブ21から構成される。左右のリブ21は、前方に向かって立設され、高電圧ハーネス10の配線方向、ここでは上下方向に長く形成される。各リブ21は、中空状に形成され、リブ21の前側が後側よりも幅広く形成される。
【0016】
2つのリブ21の間には隙間があり、保護部材20の後側に、高電圧ハーネス10を収容する保持空間22が形成され、前側に、高電圧ハーネス10の出し入れのために保持空間22に連通する開口23が形成される。開口23は、後側に向かって徐々に狭く形成され、開口23の最小幅は、高電圧ハーネス10の径と同じかやや小さい。
【0017】
保護部材20は、パワーユニット5の後方に配置され、前面衝突時に前方にあるパワーユニット5が移動した場合、その進行方向上に位置する。ここで、保護部材20は、衝撃が加わったときに開口23が塞がれるように変形して、保持空間22を確保する構造とされる。具体的には、保護部材20は、開口23を塞ぐように変形する変形部25と、変形部25の変形に応じて高電圧ハーネス10を収容できる保持空間22を確保する保持部26とを備える。
【0018】
リブ21の前側が変形部25とされ、リブ21の後側が保持部26とされる。変形部25の前側では、前端に向かって細く形成され、変形部25の後側も保持部26に向かって細く形成される。保持部26の前後方向および左右方向の長さは、高電圧ハーネス10の径よりも大とされ、高電圧ハーネス10を収容可能な保持空間22が形成される。
【0019】
ここで、前面衝突によって保護部材20に前方から荷重がかかると、図5に示すように、変形部25の前側が押しつぶされる。また、変形部25の後側において、各リブ21が内側に折れ曲がって、開口23を塞ぐようにリブ21が座屈する。リブ21の前側が変形することにより、衝撃エネルギが吸収され、リブ21の後側は起立した状態を維持する。このように、リブ21が内側に倒れ込むことにより、開口23が塞がれて、保持部26は保持空間22を確保する。したがって、保護部材20に囲い込まれた高電圧ハーネス10は、開口23からはみ出すことがなく、パワーユニット5が高電圧ハーネス10に直接衝突し、高電圧ハーネス10が断線することを防げる。また、リブ21が変形する過程で衝撃エネルギが吸収されるので、ダッシュパネル7にリブ21を通じて衝撃がかからず、ダッシュパネル7が車室側に変形することを阻止できる。
【0020】
保護部材20の変形をコントロールするために、リブ21の外面には、複数のビード27が設けられる。ビード27は前後方向に長く形成され、各ビード27が上下方向に並んでいる。ビード27を設けることにより、リブ21が補強される。そのため、ビード27の前後方向の長さに応じて、リブ21の座屈する位置が決まる。図6に示すように、ビード27の前端に対応する位置において、リブ21は内側に折れ曲がり、変形の形態が異なる。このようにリブ21の変形をコントロールすることにより、保持空間22の大きさを設定でき、高電圧ハーネス10の太さに応じた保持空間22を確保できる。
【0021】
他の形態の保護部材20を図7に示す。保護部材20は、左右方向の一側が開口した凹形に形成される。保護部材20の前壁30と後壁31とは他側の側壁32によって一体化され、これらによって囲まれた空間が保持空間22とされる。左右方向の一側に開口23が形成される。前壁30の一側に、後方に向かって凹んだ遮蔽部33が設けられる。前壁30は片持ち支持されているので、前壁30に荷重がかかると、図8に示すように、前壁30の一側が後壁31に向かって移動することにより、前壁30が変形する。この変形により、遮蔽部33が後壁31に当接して、開口23が塞がれる。したがって、前壁30の一側が変形部25とされ、前壁30の他側と後壁31および側壁32とによって保持部26が構成される。
【0022】
遮蔽部33に対向する後壁31に、前壁30の変形を規制するストッパービード34が設けられる。一対のストッパービード34が左右方向に間隔をあけて配置される。ストッパービード34により、遮蔽部33は左右方向へのスライドが規制される。これにより、前壁30が他側に向かって折れ曲がるように変形することを防ぐことができ、保持空間22を確実に確保できる。
【0023】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。上記の保護構造を電気自動車、燃料電池自動車に適用してもよく、さらにエンジン車に適用してもよい。この場合、フロントコンパートメント1内のバッテリとフロントコンパートメント1後方に配置された電装品とが低電圧ハーネスによって接続される。また、ゴム、エラストマーなどの弾性部材を用いて保護部材20を形成してもよい。図9に示すように、開口23が前側に向かって先細になるように、左右の側壁35は互いに近づくように形成される。前面衝突によって荷重がかかると、側壁35の前側が押しつぶされるように変形して、開口23が塞がれるとともに、保持空間22にある高電圧ハーネス10が覆われる。側壁35によって高電圧ハーネス10が覆い隠されることにより、高電圧ハーネス10をパワーユニット5の衝突から保護できる。
【符号の説明】
【0024】
1 フロントコンパートメント
4 電子制御ユニット
5 パワーユニット
7 ダッシュパネル
10 高電圧ハーネス
20 保護部材
21 リブ
22 保持空間
23 開口
25 変形部
26 保持部
27 ビード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9