【実施例】
【0041】
下記の具体的実施例を通じて本発明をさらに述べる。これらの実施例は本発明を説明するためだけであり、本発明の保護範囲を制限するためではないことを理解すべきである。下記の事例中に具体条件の実験方法が記載されていなく、通常は一般の条件に従って実施する。特別の説明がない限り、全ての百分率と数は重量で計算する。
【0042】
本発明において使用する機器は、10Lの発酵タンク(上海保興生物設備有限公司製造)、15Lの発酵タンク(上海国強生化装備有限公司製造)、排気ガス質量分析器(アメリカExtrel社のMAX300−LG)、オンライン導電率測定器(メトラー・トレド社)である。
【0043】
本発明の実施例において使われるコエンザイムQ10を生産する菌種は紅色細菌(Rhodobacter sphaeroides)である。
【0044】
<実施例1:連続流加材料補充のプロセス>
(1)種の培養:無菌水で培養した斜め面を洗浄し、細胞10
8〜10
9個/Lの菌懸濁液を作る。その後10mLを容量500mL/1000mLの種瓶の中に移し、30℃、180〜250rpmの条件の下で22〜26時間培養すると種液が得られる。
【0045】
(2)発酵の培養:手順(1)で得られた種液を10Lの発酵タンクに接種し、接種量は10%であり、培養温度を29−33℃で、タンク内の圧力を0.03〜0.05MPaで維持する。酸素の供給は段階を分けて制御する方法を使用し、接種後の初期撹拌回転速度は500rpmであり、空気流量は6L/minである。接種後、成長延滞期が終わると共に、細菌母体の快速成長が始まり対数成長期に入り、OURがすぐ上がり、24時間の間、30−50mmol/L・hの間に維持し、回転速度は500−700rpmであり、タンク内に残る葡萄糖を0.5−2.0%の間に制御して110時間ほど培養する。この間に細菌母体の成長状況によってプロセスのパラメータを調整して葡萄糖の連続補充を開始し、酸素の消耗速度の変化によってプロセスのパラメータを調整すると共に導電率の変化によって材料補充培養基を流加する。
【0046】
発酵中酸素供給の制御:紅色細菌の発酵でコエンザイムQ10を製造する間に、大量の酸素供給は細菌母体の成長を効率的に促進することができるが、酸素が制限される場合、細菌母体の形態が変形になり、同時にコエンザイムQ10の合成がすぐ始まるため、紅色細菌の発酵でコエンザイムQ10を製造する間は段階を分けて酸素を供給する方法で調整を行う。10Lの発酵タンク中の発酵が開始した後に、細菌母体の成長に従って、OUR、CERが少しずつ増えることは、細菌母体の酸素消耗量が段々増え、酸素を20h溶解し1−5%まで下がり、OURとCERの成長が安定期間に入ることを示すが、細菌母体がまだ指数成長期にあり、細菌母体の量が成長を継続することは、細菌母体が既にその最大の呼吸強度に達していて、酸素の供給は既に制限要素になっていることを示す。段階を分けて酸素の供給を高めて細菌母体の成長を増やし、最後の段階で酸素の供給を下げてコエンザイムQ10の合成を促進し基質の消耗を下げる。0〜24時間に撹拌回転速度を500rpmに、空気流量を6L/minに制御する。細菌母体の成長に従ってOURが少しずつ安定状態に入り、30〜50mmol/L・hに達する。この段階では細菌母体はまだ指数成長期にあり、酸素の供給は既に制限条件になっている。撹拌回転速度と通気量を増やすことによって酸素供給レベルを向上し、24〜36時間の間、OURを50〜60mmol/L・hに維持し、36〜60時間の間、OURを60〜70mmol/L・hに維持し、細菌母体の成長を促進する。60時間後、この段階は徐々に安定期に入り、細菌母体の成長が止まり、コエンザイムQ10がすぐ合成して累積し、酸素の供給を少しずつ減らすことによってコエンザイムQ10比生産速度を高いレベルに維持させる。60〜90時間の間、OURを70〜90mmol/L・hに維持し、90〜100時間の間、OURを60〜80mmol/L・hに維持し、100時間後、OURを50〜60mmol/L・hに維持する。
【0047】
発酵中の材料補充プロセスの制御:紅色細菌でコエンザイムQ10を発酵する間に、基質の栄養濃度が細菌母体の成長と産物の累積に同時に影響し、発酵の間に培養基の栄養基質の消耗に従って導電率が下がり、細菌母体の成長環境が変わり、細菌母体の成長と代謝を発生する。一般の発酵工程においては、葡萄糖とリン酸カリウム塩のみ流加する。本材料補充のプロセスでは、一般のプロセスにおいて残糖と溶解リンによって葡萄糖とリン酸2水素カリウムを補充するほか、同時に細菌母体の増殖、発酵液中栄養基質の消耗、導電率の少しずつの低下に従って、導電率が15.0mS/cmまで下がったときに、材料補充培養基を流加する。材料補充培養基の配合は1Lの材料補充液の中に、酵母粉8〜12g、硫酸アンモニウム5〜10g、硫酸マグネシウム1〜2g、塩化ナトリウム3〜6g、リン酸2水素カリウム2〜4g、リン酸水素2カリウム2〜4g、塩化カルシウム1〜2g、ビオチン0.013〜0.025gであり、pH値7.0、材料補充基の導電率は13.5〜23mS/cmであり、培養基の加入速度を制御することによって導電率を10−20mS/cm範囲内に維持させる。
図2aにおける曲線Cはこの材料補充のプロセスにおける導電率の変化傾向を表し、全工程の残糖は0.5〜2.0%に維持され、110時間後に発酵が終わって力価が3350mg/Lに達する。
【0048】
<実施例2:連続流加材料補充のプロセス>
(1)種の培養:無菌水で培養した斜め面を洗浄し、10
8〜10
9個細胞/mLの菌懸濁液を作る。その後10mLを容量が500mL/1000mLの種瓶に移し、30℃、180−250rpmの条件で22−26時間培養する。
【0049】
(2)発酵培養:手順(1)で得られた種液を15Lの発酵タンクに接種し、接種量は10%であり、培養温度を29−33℃で、タンク内の圧力を0.03〜0.05MPaで維持する。酸素の供給は段階を分けて制御する方法を使用し、接種後の初期撹拌回転速度は500rpmであり、空気流量は9L/minである。接種後、成長延滞期が終わると共に、細菌母体の快速成長が始まり対数成長期に入り、OURがすぐ上がり、24時間の間、30−50mmol/L・hで維持し、回転速度は500−700rpmであり、タンク内に残る葡萄糖を0.5−2.0%の間に制御し、110時間ほど培養する。この間に細菌母体の成長状況によってプロセスのパラメータを調整して葡萄糖の連続補充を開始し、酸素の消耗速度の変化によってプロセスのパラメータを調整すると共に導電率の変化によって材料補充培養基を流加する。
【0050】
発酵中の酸素供給の制御は段階を分けて酸素を供給する方法で調整する。段階を分けて酸素の供給をすることによって細菌母体の成長を増やし、最後の段階で酸素の供給を減らすことによってコエンザイムQ10の合成を促し、基質の消耗を減少する。0〜24時間の間、撹拌回転速度を500rpmに、空気流量を9L/minに制御し、細菌母体の成長に従ってOURが少しずつ安定状態に入り、30〜50mmol/L・hに達する。この段階では細菌母体はまだ指数成長期にあり、酸素の供給は既に制限条件になっている。撹拌回転速度と通気量を増やすことによって酸素供給レベルを向上し、24〜36時間の間、OURを50〜60mmol/L・hに維持し、36〜60時間の間、OURを60〜70mmol/L・hに維持し、細菌母体の成長を促進する。60時間後、この段階は徐々に安定期に入り、細菌母体の成長が止まり、コエンザイムQ10がすぐ合成して累積し、酸素の供給を少しずつ減らすことによってコエンザイムQ10比生産速度を高いレベルに維持させる。60〜90時間の間、OURを70〜90mmol/L・hに維持し、90〜100時間の間、OURを60〜80mmol/L・hに維持し、100時間後、OURを50〜60mmol/L・hに維持する。
【0051】
発酵中の材料補充プロセスの制御:本材料補充のプロセスでは、一般のプロセスにおいて残糖と溶解リンによって葡萄糖とリン酸2水素カリウムを補充するほか、同時に細菌母体の増殖、発酵液中栄養基質の消耗、導電率の少しずつの低下に従って、導電率が15.0mS/cmまで下がったときに、材料補充培養基を流加する。材料補充培養基の配合は1Lの材料補充液の中に、酵母粉8〜12g、硫酸アンモニウム5〜10g、硫酸マグネシウム1〜2g、塩化ナトリウム3〜6g、リン酸2水素カリウム2〜4g、リン酸水素2カリウム2〜4g、塩化カルシウム1〜2g、ビオチン0.013〜0.025gであり、pH値7.0、材料補充基の導電率は13.5〜23mS/cmであり、培養基の加入速度を制御することによって導電率を10−20mS/cm範囲内に維持させる。全工程の残糖は0.5〜2.0%に維持され、110時間後に発酵が終わって力価が3420mg/Lに達する。
【0052】
<実施例3:分割材料補充のプロセス>
(1)種の培養:無菌水で培養した斜め面を洗浄し、10
8〜10
9個細胞/mLの菌懸濁液を作る。その後10mLを容量が500mL/1000mLの種瓶に移し、30℃、180−250rpmの条件で22−26時間培養する。
【0053】
(2)発酵培養:手順(1)で得られた種液を10Lの発酵タンクに接種し、接種量は10%であり、培養温度を29−33℃で、タンク内の圧力を0.03〜0.05MPaで維持した。酸素の供給は段階を分けて制御する方法を使用し、接種後の初期撹拌回転速度は500rpmであり、空気流量は6L/minである。接種後、成長延滞期が終わると共に、細菌母体の快速成長が始まり対数成長期に入り、OURがすぐ上がり、24時間の間、30−50mmol/L・hで維持し、回転速度は500−700rpmであり、タンク内に残る葡萄糖を0.5−2.0%の間に制御し、110時間ほど培養する。この間に細菌母体の成長状況によってプロセスのパラメータを調整して葡萄糖の連続補充を開始し、酸素の消耗速度の変化によってプロセスのパラメータを調整すると共に導電率の変化によって材料補充培養基を流加する。
【0054】
発酵中の酸素供給の制御は段階を分けて酸素を供給する方法で調整する。段階を分けて酸素の供給をすることによって細菌母体の成長を増やし、最後の段階で酸素の供給を減らすことによってコエンザイムQ10の合成を促し、基質の消耗を減少する。0〜24時間の間、撹拌回転速度を500rpmに、空気流量を9L/minに制御し、細菌母体の成長に従ってOURが少しずつ安定状態に入り、30〜50mmol/L・hに達する。この段階では細菌母体はまだ指数成長期にあり、酸素の供給は既に制限条件になっている。撹拌回転速度と通気量を増やすことによって酸素供給レベルを向上し、24〜36時間の間、OURを50〜60mmol/L・hに維持し、36〜60時間の間、OURを60〜70mmol/L・hに維持し、細菌母体の成長を促進する。60時間後、この段階は段々安定期に入り、細菌母体の成長が止まり、コエンザイムQ10がすぐ合成して累積し、酸素の供給を少しずつ減らすことによってコエンザイムQ10比生産速度を高いレベルに維持させる。60〜90時間の間、OURを70〜90mmol/L・hに維持し、90〜100時間の間、OURを60〜80mmol/L・hに維持し、100時間後、OURを50〜60mmol/L・hに維持する。
【0055】
発酵中の材料補充のプロセスは間欠式分割材料補充の方法を使用し、発酵の間にそれぞれ20、40、60時間のときに発酵液体積が20%の材料補充培養基を補充し、材料補充培養基の配合は、1Lの材料補充液中に酵母粉8〜12g、硫酸アンモニウム5〜10g、硫酸マグネシウム1〜2g、塩化ナトリウム3〜6g、リン酸2水素カリウム2〜4g、リン酸水素2カリウム2〜4g、塩化カルシウム1〜2g、ビオチン0.013〜0.025gであり、pH値7.0である。細菌母体の成長に従って、培養基質が消耗され、導電率が少しずつ下がり、毎回の材料補充の後に、導電率が大幅に上がり、その後少しずつ下がり、
図2aにおける曲線Bはこの材料補充の方法における発酵中の導電率の変化傾向を表している。全工程においての残糖は0.5〜2.0%に維持され、110時間後に発酵が終わり、力価が3013mg/Lに達する。
【0056】
<実施例4:対照例>
(1)種の培養:無菌水で培養した斜め面を洗浄し、10
8〜10
9個細胞/mLの菌懸濁液を作る。その後10mLを容量が500mL/1000mLの種瓶に移し、30℃、180−250rpmの条件で22−26時間培養する。
【0057】
(2)発酵培養:手順(1)で得られた種液を10Lの発酵タンクに接種し、接種量は10%であり、培養温度を29−33℃で、タンク内の圧力を0.03〜0.05MPaで維持した。酸素の供給は段階を分けて制御する方法を使用し、接種後の初期撹拌回転速度は500rpmであり、空気流量は6L/minである。接種後、成長延滞期が終わると共に、細菌母体の快速成長が始まり対数成長期に入り、OURがすぐ上がり、24時間の間、30−50mmol/L・hで維持し、回転速度は500−700rpmであり、タンク内に残る葡萄糖を0.5−2.0%の間に制御し、110時間ほど培養する。この間に細菌母体の成長状況によってプロセスのパラメータを調整して葡萄糖の連続補充を開始し、酸素の消耗速度の変化によってプロセスのパラメータを調整すると共に導電率の変化によって材料補充培養基を流加する。
【0058】
発酵中の酸素供給の制御は段階を分けて酸素を供給する方法で調整する。段階を分けて酸素の供給をすることによって細菌母体の成長を増やし、最後の段階で酸素の供給を減らすことによってコエンザイムQ10の合成を促し、基質の消耗を減少する。0〜24時間の間、撹拌回転速度を500rpmに、空気流量を9L/minに制御し、細菌母体の成長に従ってOURが少しずつ安定状態に入り、30〜50mmol/L・hに達する。この段階では細菌母体はまだ指数成長期にあり、酸素の供給は既に制限条件になっている。撹拌回転速度と通気量を増やすことによって酸素供給レベルを向上し、24〜36時間の間、OURを50〜60mmol/L・hに維持し、36〜60時間の間、OURを60〜70mmol/L・hに維持し、細菌母体の成長を促進する。60時間後、この段階は徐々に安定期に入り、細菌母体の成長が止まり、コエンザイムQ10がすぐ合成して累積し、酸素の供給を少しずつ減らすことによってコエンザイムQ10比生産速度を高いレベルに維持させる。60〜90時間の間、OURを70〜90mmol/L・hに維持し、90〜100時間の間、OURを60〜80mmol/L・hに維持し、100時間後、OURを50〜60mmol/L・hに維持する。
【0059】
発酵中の材料補充工程の制御:既存の培養プロセスを対照例として、発酵の間に発酵液中の残糖の量と溶解リンの濃度によって葡萄糖とリン酸カリウム塩を補充する。本対照例のプロセス工程において、細菌母体の成長に従って、基質が消耗され導電率が少しずつ下がっていく。
図2aにおける曲線Aは対照例材料補充のプロセスにおける導電率の変化傾向を表している。全工程の残糖は0.5〜2.0%に維持され、110時間後に発酵が終わり、力価が2843mg/Lに達する。
【0060】
既存のコエンザイムQ10の材料補充分割培養プロセスでは、段階を分けて酸素の供給を制御して細菌母体の成長とコエンザイムQ10の累積を向上している。
図1において、発酵中の撹拌回転速度と流量の調整をしたときのOUR、CERと導電率の変化状況を反映している。発酵の最初段階では、細菌母体の成長に従って、OUR、CERが少しずつ増えることは、細菌母体の酸素消耗量が徐々に増えることを表し、26時間後にOUR、CERの成長が安定状態に入り、導電率が細菌母体の基質の消耗および材料補充で発生した希釈によって徐々に下がるが、細菌母体がまだ指数成長期にあり、細菌母体の量がまだ増えていることは、細菌母体が既にその最大の呼吸強度に達していて、酸素の供給は既に制限要素になっていることを示す。同時に導電率の低下も、栄養濃度が消耗され、細菌母体生産環境の栄養の不均一を発生しやすいことを意味している。
【0061】
本発明者らは、10Lと15Lの実験タンクにおいて段階を分けて酸素の供給を制御するプロセスにおいて、それぞれの材料補充方法でオンライン導電率が基質濃度を反映して培養基を補充することがコエンザイムQ10の発酵に対して影響することを調査した。
図2a〜2cは、材料補充の方法によってのコエンザイムQ10発酵中における導電率、細菌濃度およびコエンザイムQ10濃度の変化を表している。
【0062】
発酵中に、細菌母体の成長、基質の消耗、材料補充で発生した基質の濃度の希釈が全て導電率の低下を発生している。
図2aからみると、分割材料補充と流加材料補充が両方とも基質濃度を安定させる役割を果たしていることが分かる。
【0063】
図2bからみると、発酵中における培養基を補充することによる細菌濃度への影響はそれほど著しくないことが分かる。特に発酵の前期と後期では、材料補充の方法によって発酵前期の濃度が少ししか上がらないため、培養基の補充が発酵の後期の状態に有利であることが分かる。
【0064】
図2cからみると、導電率が15mS/cmに下がってから培養基を流加し、基質濃度の安定性を維持することは発酵の中の後期の累積を著しく向上できることが分かる。
【0065】
上記の説明によると、コエンザイムQ10発酵の間は段階を分けた酸素供給および流加材料補充の酸素供給の方法で発酵工程を調整する。従って、発酵工程の成長段階と前期の合成段階では高いレベルの酸素供給で細菌母体の快速成長とコエンザイムQ10の快速開始を促進し、細菌母体が快速の消耗段階に入るときに培養基を流加して必要な栄養基質を補充し、細菌母体の成長環境を維持する。細菌母体が安定期に入ると、段階を分けて高いコエンザイムQ10比生産速度を維持して基質葡萄糖の消耗を減らす。この段階を分けての酸素供給および材料補充方法は、確実に生産菌の最良の生理学的な特性状態が得られ、コエンザイムQ10の生産コストを削減することができる。