特許第6885928号(P6885928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6885928オンラインでの酸素消耗速度と導電率の同時制御によるコエンザイムQ10の発酵製造プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885928
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】オンラインでの酸素消耗速度と導電率の同時制御によるコエンザイムQ10の発酵製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/66 20060101AFI20210603BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20210603BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20210603BHJP
【FI】
   C12P7/66 A
   !C12N1/00 D
   !C12N1/00 F
   !C12N1/20 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-512524(P2018-512524)
(86)(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公表番号】特表2018-530999(P2018-530999A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】CN2016102788
(87)【国際公開番号】WO2017071529
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年8月1日
(31)【優先権主張番号】201510703113.2
(32)【優先日】2015年10月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515162383
【氏名又は名称】上虞新和成生物化工有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】515058950
【氏名又は名称】浙江新和成股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】于 洪巍
(72)【発明者】
【氏名】呂 勇
(72)【発明者】
【氏名】李 永
(72)【発明者】
【氏名】陳 剣波
(72)【発明者】
【氏名】陳 召峰
(72)【発明者】
【氏名】李 偉鋒
(72)【発明者】
【氏名】張 紅梅
(72)【発明者】
【氏名】朱 永強
【審査官】 松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102876743(CN,A)
【文献】 特開平11−341947(JP,A)
【文献】 特開2004−008065(JP,A)
【文献】 特開平08−131161(JP,A)
【文献】 特開平10−201467(JP,A)
【文献】 特表2000−506387(JP,A)
【文献】 国際公開第03/069334(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103509728(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103509729(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103509816(CN,A)
【文献】 Appl. Biochem. Biotechnol.,米国,2010年,Vol.160, No.5,p.1441-1449
【文献】 Biotechnol. Bioeng.,2000年,vol.70, No.3,p.358-361
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンラインでの酸素消耗速度と導電率の同時制御によるコエンザイムQ10の発酵製造プロセスであって、
コエンザイムQ10を紅色細菌(Rhodobacter sphaeroides)が製造するときの発酵において、酸素消耗速度を30〜90mmol/L・hの間に制御し、それと共に導電率が10〜20mS/cmの間で安定し、細菌の成長とコエンザイムQ10の合成を促して累積を行い、
前記酸素消耗速度を撹拌速度と空気流量で調整し、前記導電率を流加材料補充または分割材料補充の方法で調整し、
前記流加材料補充または前記分割材料補充のときに使われる材料補充液の処方が、
材料補充液1Lで計算すると、酵母粉8〜12g、硫酸アンモニウム5〜10g、硫酸マグネシウム1〜2g、塩化ナトリウム3〜6g、リン酸2水素カリウム2〜4g,リン酸水素2カリウム2〜4g、塩化カルシウム1〜2g、ビオチン0.013〜0.025gであり、pH値7.0、材料補充培養基の導電率が13.5〜23mS/cmである、ことを特徴とするコエンザイムQ10の発酵製造プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のコエンザイムQ10の発酵製造プロセスであって、
種の培養で得たコエンザイムQ10の生産菌株を発酵培養基が入った発酵タンクに接種し、発酵に適する条件でコエンザイムQ10の生産菌株を培養し、培養中に前記酸素消耗速度と培養液の前記導電率を測定して、その測定の結果によって発酵条件の調整を行うことを特徴とするコエンザイムQ10の発酵製造プロセス。
【請求項3】
請求項2に記載のコエンザイムQ10の発酵製造プロセスであって、
前記発酵の過程が段階毎に分けられて行われ、その手順は、以下のステップ(1)〜(8)を含み、
(1)0〜24時間の間、撹拌回転速度を400rpmに、空気流量を9L/minに制御し、酸素消耗速度が低いレベルからすぐ30−50mmol/L・hに上昇した後に30−50mmol/L・hで維持し、導電率が高いレベルから7−16mS/cmまで下がるステップ、
(2)24〜36時間の間、撹拌回転速度を450rpmまで上げ、空気流量を9L/minで維持し、酸素消耗速度が50−60mmol/L・hであるステップ、
(3)36〜60時間の間、撹拌回転速度が450rpmで維持し、空気流量を16L/minまで増やし、酸素消耗速度が60−70mmol/L・hであるステップ、
(4)60〜90時間の間、撹拌回転速度を450rpmで維持し、空気流量を20L/minまで増やし、酸素消耗速度が70−90mmol/L・hであるステップ、
(5)90〜100時間の間、撹拌回転速度を400rpmに制御し、酸素消耗速度が70−90mmol/L・hであるステップ、
(6)100時間の後に、空気流量を16L/minに制御し、酸素消耗速度が50−60mmol/L・hであるステップ、
(7)固体液体分離の方法によって発酵液の中の微生物細胞を取り集めるステップ、
(8)微生物細胞から有機溶剤を利用してコエンザイムQ10を採取するステップ、
ステップ(2)〜(6)において、発酵液の導電率を10〜20mS/cmの間に維持することを特徴とするコエンザイムQ10の発酵製造プロセス。
【請求項4】
請求項2に記載のコエンザイムQ10の発酵製造プロセスであって、
前記発酵タンクの体積が、10L〜150mであることを特徴とするコエンザイムQ10の発酵製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発酵分野に関わり、さらに具体的にいうと、最適化された紅色細菌(Rhodobacter sphaeroides)等の微生物が発酵してコエンザイムQ10を製造する方法および関連する操作、制御のプロセス方法に関わり、代謝パラメータの酸素消耗速度と栄養供給指標の導電率の同時制御による発酵でコエンザイムQ10を製造する新しいプロセスである。
【背景技術】
【0002】
コエンザイムQ10(CoQ10)はユビキノン、ユビデカレノンとも呼ばれ、化学名は2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−デシルイソペンテニルベンゾキノンである。コエンザイムQ10は一つの代謝活性化剤であり、その生物活性はキノン環の酸化還元特性および側鎖の物理化学的性質から形成され、抗酸化性、遊離基(フリーラジカル)除去、有機体免疫力の向上、抗老化等の機能を持っている。臨床では、各種類の心臓病、癌、糖尿病、急性慢性肝炎、パーキンソン症等の治療に汎用され、また化粧品や抗老化の健康食品の面においても広く使われている。
【0003】
微生物発酵法でコエンザイムQ10を製造するのが国内外においてほとんどの製造方法であり、生物活性が高く、原材料の制限がないという特徴があり、菌株を選定して培養、発酵プロセス最適化等の方法で発酵の生産能力を向上することができる。しかし、生物発酵法には制御しにくいという特性があり、従来の発酵工程における制御パラメータ(pH、DO、細菌濃度、含有量等)が発酵の全体工程を正確的に反映、制御することが難しくなったため、さらに信頼性が高くて速度が速いパラメータを導入して発酵状態を反映させると共に、これらのパラメータを基に積極的かつ有効的な対策を講じて発酵の全体工程を制御する必要がある。
【0004】
報告されたコエンザイムQ10発酵に関連する技術研究において、遺伝子工程の技術改善によってコエンザイムQ10の生産レベルを向上する、または菌種誘発処理、簡単な窒素資源の最適化、製造中におけるリン酸塩の添加量等、単独の要素の調整実験を通して産物の合成に対する影響を見るのがほとんどである。製造中の糖の補充速度で発酵過程を制御、改善する特許文献も報告されている。これらの研究と技術は単独の要素からコエンザイムQ10の生産量の向上を研究しているため、ある程度の役割を果たしているが、根本的にコエンザイムQ10を生産した細菌母体動態の生理過程と栄養需要に対しての分析が不足であり、コエンザイムQ10の発酵に一番影響を与えている二つのパラメータ(酸素の消耗と栄養供給レベル)を調査、制御して生産能力を向上する目的を達成する適切な方法が発見できていない。
【0005】
報告された材料補充のプロセスにおいて、一般的には分割材料補充、または流加材料補充の方法で補充する。しかし、補充の時間および量は経験値、またはオフラインでサンプリングして基質の濃度を測定することによって決めるため、客観的には補充が遅れる、入れ過ぎおよび不足の現象を発生する可能性がある。導電率で発酵システムにおけるイオンの濃度を表すことができ、培養システムにおける細菌母体の栄養の消耗状況を直接反映することができる。特に無機イオンの消耗状況は、オンライン導電率電極で細菌母体の栄養に対する消耗レベルをリアルタイムに反映することを実現でき、材料補充プロセスの補充時間と補充速度の指標となることが実現された。今まで報告された発酵中の導電率は、発酵工程の変化のモニタのみに使われ、材料補充の制御をフィードバックすることはほとんどなかった。
【0006】
コエンザイムQ10を生産する細菌は時間によって酸素と栄養に対しての需要も異なり、製造中の酸素と栄養の供給レベルを合理的に制御すると、根本から発酵の全工程を制御することができ、また、工程の制御も簡単で、生産の安定を確保し、製造コストを削減することができる。
【0007】
特許CN102876743Aにおいて、オンラインでの酸素の消耗速度を段階分けして制御するプロセスが公開され、コエンザイムQ10の累積が著しく向上された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願公開第102876743号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決する技術問題は、酸素消耗速度OURと栄養供給パラメータの導電率を組み合わせ、同時に制御することによるコエンザイムQ10発酵の新しいプロセスを提供することにある。このプロセスは、発酵の全工程を参照するデータでコエンザイムQ10の発酵生産レベルを安定的に向上することができ、大規模の工業化生産に適用される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
オンラインでの酸素消耗速度と導電率をともに制御する、コエンザイムQ10の発酵生産のプロセスであり、コエンザイムQ10を菌株が製造するときの発酵において、酸素の消耗速度を30−150mmol/L・hの間で制御し、かつ導電率を5.0−30.0mS/cmの間で制御し、細菌母体の成長とコエンザイムQ10の合成および累積の開始を促進する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1には既存技術における、コエンザイムQ10の発酵プロセスの間のOUR、CER、DO、導電率、細菌濃度、撹拌速度、空気流量の時間による変化を示している。
図2a図2aには、実施例1(連続材料補充、曲線C)、実施例3(間欠的分割材料補充、曲線B)、実施例4(普通は葡萄糖とリン酸カリウム塩だけを補充する。曲線A)の三つの材料補充方法における時間による導電率の変化曲線を示している。
図2b図2bには、実施例1(連続材料補充、曲線C)、実施例3(間欠的分割材料補充、曲線B)、実施例4(普通は葡萄糖とリン酸カリウム塩だけを補充する。曲線A)の三つの材料補充方法における時間による細菌濃度の変化曲線を示している。
図2c図2cには、実施例1(連続材料補充、曲線C)、実施例3(間欠的分割材料補充、曲線B)、実施例4(普通は葡萄糖とリン酸カリウム塩だけを補充する。曲線A)の三つの材料補充方法における時間によるコエンザイムQ10濃度の変化曲線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは幅広くて深い研究を通じて、コエンザイムQ10の発酵中にオンラインでの酸素消耗速度(OUR)を制御し、発酵システムの安定的かつ高レベルの酸素消耗速度(30−150mmol/L・h)を維持し、材料補充で安定した導電率レベル(5.0−30.0mS/cm)を維持することによって、コエンザイムQ10の生産量を大幅に向上することができることを見出した。導電率は媒体中の電流伝達密度であり、反応溶液中のイオン濃度をある程度反映することができ、もし発酵液において導電率が微生物の栄養パラメータと環境指標を代表しているのであれば、適切な導電率は微生物の成長環境の安定を維持することができ、微生物の成長と産物の累積を確保する。OURは微生物の酸素消耗速度であり、微生物の酸素に対する需要量を正確に表すことができる。導電率とOURを共同で制御する新しい方法でコエンザイムQ10の生産菌種の快速成長と産物累積のための十分な栄養と酸素の提供を確保する。
【0013】
コエンザイムQ10を菌株が製造する発酵の間に、酸素の消耗速度を30〜90mmol/L・hの間に制御することが好ましい。
【0014】
コエンザイムQ10を菌株が製造する発酵の間に、発酵液の導電率を10−20mS/cmの間に制御することが好ましい。
【0015】
本発明において、上記の酸素消耗速度は撹拌速度と空気の流量で調整し、上記の導電率は流加材料補充(flow feeding)または分割材料補充(feed-batch)の方法で調整する。
【0016】
ここで、流加材料補充または分割材料補充時に使う材料補充液の配合は下記のとおりである。
【0017】
材料補充液1Lで計算すると、酵母粉8〜12g、硫酸アンモニウム5〜10g、硫酸マグネシウム1〜2g、塩化ナトリウム3〜6g、リン酸2水素カリウム2〜4g、リン酸水素2カリウム2〜4g、塩化カルシウム1〜2g、ビオチン0.013〜0.025gであり、pH値7.0、材料補充培養基の導電率は13.5〜23mS/cmである。
【0018】
本発明の発酵プロセスは下記の内容を含む。種の培養で得たコエンザイムQ10の生産菌株を発酵培養基が入った発酵タンクに接種し、発酵に適する条件でコエンザイムQ10の生産菌株を培養し、培養中に酸素の消耗速度と培養液の導電率を測定し、測定結果によって発酵条件の調整を行う。
【0019】
さらに、上記の発酵工程は段階を分けて行われ、その手順は下記の内容を含む。
(1)0〜24時間の間、撹拌回転速度を400rpmに、空気流量を9L/minに制御し、酸素消耗速度が低いレベルからすぐ30−50mmol/L・hに上昇した後に30−50mmol/L・hで維持し、導電率が高いレベルから7−16mS/cmまで下がる。
(2)24〜36時間の間、撹拌回転速度を450rpmまで上げ、空気流量を9L/minで維持し、酸素消耗速度が50−60mmol/L・hである。
(3)36〜60時間の間、撹拌回転速度を450rpmで維持し、空気流量を16L/minまで増やし、酸素消耗速度が60−70mmol/L・hである。
(4)60〜90時間の間、撹拌回転速度を450rpmで維持し、空気流量を20L/minまで増やし、酸素消耗速度が70−90mmol/L・hである。
(5)90〜100時間の間、撹拌回転速度を400rpmに制御し、酸素消耗速度が70−90mmol/L・hである。
(6)100時間の後に、空気流量を16L/minに制御し、酸素消耗速度が50−60mmol/L・hである。
【0020】
手順(2)〜(6)の中細菌母体の成長と培養基中の基質の消耗に伴って、導電率が下がり、培養基の導電率が15mS/cm以下になると、分割材料補充または流加材料補充を始め、発酵液の導電率を10−20mS/cmの間に維持させる。
【0021】
(7)固体液体分離の方法によって、発酵液の中の微生物細胞を取り集める。
(8)微生物細胞から有機溶剤を利用してコエンザイムQ10を採取する。
【0022】
上記発酵の間に、酸素の消耗速度を30−90mmol/L・hの間に、導電率を10〜20mS/cmの間に維持し、酸素消耗速度と導電率による材料補充を同時に制御するフィードバックによって、コエンザイムQ10の細菌母体の乾燥重量DCWの成長速度が0.8−1.0g/L・hとなり、コエンザイムQ10産物の合成速度が50−100mg/L・hとなる。
【0023】
本発明において記載される酸素消耗速度は下記の計算式で計算する。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
【数3】
【0027】
ここで、Fin:流入ガス流量(L/min)、V:発酵液体積(L)、C不活性in,CO2in,CCO2in:それぞれ流入ガス中の不活性ガス、酸素、二酸化炭素の質量分率、CO2out,CCO2out:それぞれ排出ガス中の酸素、二酸化炭素の質量分率、Pin:流入ガスの絶対圧力(Pa)、tin:流入ガスの温度(℃)、h:流入ガスの相対湿度(%)である。
【0028】
コエンザイムQ10発酵は酸素と基質を消耗する生産、発酵の工程で、酸素の供給と栄養の変化は細菌母体と産物の合成に重要な影響を与えている。本発明者らは10L、15L、40Lの発酵タンクにおいてOURを制御変数として段階を分けて酸素を供給するときに、葡萄糖とリン酸カリウム塩だけを流加する、葡萄糖とリン酸カリウム塩を流加するとともに分割して材料補充培養基を補足する、葡萄糖、リン酸カリウム塩、材料補充培養基を流加するという三つの材料補充の補足方法が発酵に対する影響を調査した。3つの供給モードが発酵に及ぼす影響および実験は、OURを制御変数として段階を分けて酸素の供給を制御し、最初は酸素の供給を高いレベルに維持させ、工程の後半は回転速度や通気量の低減で酸素の供給を下げ、同時に発酵中に材料補充を通じて導電率を安定な状態に維持させることは細菌母体の成長状態とコエンザイムQ10の合成速度を促進することができることを示した。
【0029】
このため、本発明者らはOURを酸素供給の制御変数として、導電率を栄養の制御変数として段階を分けた協同制御方法を提供し、最初の段階は高いレベルの酸素供給を維持して細菌母体の快速成長とコエンザイムQ10合成の快速開始を促進し、中後段階に回転速度と通気量を減らすことによって酸素の供給を下げ、細菌の呼吸代謝を制御することによって高い比生産速度と基質の転化率を維持することができる。全体の工程において材料の補充によって安定した導電率、安定した細菌母体の生産環境を維持して高いコエンザイムQ10の合成速度を確保することができる。
【0030】
発酵中に、酸素の供給は回転速度、通気量または基質の添加を通じて、発酵の排気ガスシステム中の酸素濃度と二酸化炭素の濃度を検出することによって上記の酸素消耗速度を算出し、栄養は導電率で材料補充を管理し、発酵中の酸素の供給と栄養のバランスの調整を実現する。
【0031】
<酸素消耗速度、導電率の制御>
本発明は、酸素消耗速度(OUR)を制御変数として導電率と協同で制御し段階を分けて酸素を供給する制御方法で、紅色細菌(Rhodobacter sphaeroides)等の微生物の発酵でコエンザイムQ10を製造する新しい制御プロセスである。本発明の実験は、発酵中における最初の段階での高いレベルの酸素供給と最後の段階での酸素供給の制限によって、発酵中における材料補充で安定した導電率を維持することによって、高い比生産速度と基質の転化率を維持することができ、コエンザイムQ10の生産率を大幅に向上し、基質の利用率を向上して原料の無駄を下げ、コストを削減することができることを示した。
【0032】
<生産菌株>
本発明の方法に適用されるコエンザイムQ10の菌株は特別の制限がなく、既存のコエンザイムQ10の生産菌株を使っても良い。通常の方法の改善または遺伝子工程方法の改善を応用した工程菌を使っても良い。代表的なものは生産菌最適化紅色細菌(Rhodobacter sphaeroides)で、保管番号はCGMCC No.5997、CGMCC No.5998、CGMCC No.5999である。
【0033】
上記の保管番号がCGMCC No.5997、CGMCC No.5998、CGMCC No.5999である菌株の保管会社は、全て中国微生物菌種保管管理委員会普通微生物センター(保管会社の住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号中国科学院微生物研究所。保管日付:2012年4月13日)である。
【0034】
特許CN103509718A、CN103509816A、CN103509729Aにおいて遺伝子工程方法で菌種を改善する方法が公開され、コエンザイムQ10の合成の生産菌を得た後に、通常のコエンザイムQ10の合成に適する条件で培養し、コエンザイムQ10を合成することができる。本研究では、プロセス条件を改善することによって、遺伝子方法改善後の菌種でさらに合成量の多いコエンザイムQ10が得られることが分かった。
【0035】
<培養基(培地)>
本発明の方法に使う種瓶培養基の配合には特別な制限がなく、各種の通常の培養基でも良い。1Lの培養基中に酵母粉1g、塩化アンモニウム1g、塩化ナトリウム1、クエン酸鉄0.0028g、リン酸2水素カリウム0.6g、リン酸水素2カリウム0.9g、硫酸マグネシウム0.25g、塩化カルシウム0.1gであり、pH値7.0である。
【0036】
上記発明の内容において種タンク培養基の配合は、1L培養基中に酵母粉1g、塩化アンモニウム1g、塩化ナトリウム1g、クエン酸鉄0.0028g、リン酸2水素カリウム0.6g、リン酸水素2カリウム0.9g、硫酸マグネシウム0.25g、塩化カルシウム0.1gであり、pH値7.0である。
【0037】
上記発明の内容において発酵タンク培養基の配合は、1L培養基中に酵母粉8g、塩化アンモニウム3g、塩化ナトリウム2.8g、クエン酸鉄0.005g、クエン酸鉄0.6g、リン酸水素2カリウム0.9g、硫酸マグネシウム12.55g、塩化カルシウム0.1gであり、pH値7.0である。
【0038】
発酵中に発酵液システムの導電率が合理範囲内に安定できることを確保するため、使用する材料補充培養基の配合は、1Lの材料補充液中に酵母粉8〜12g、硫酸アンモニウム5〜10g、硫酸マグネシウム1〜2g、塩化ナトリウム3〜6g、リン酸2水素カリウム2〜4g、リン酸水素2カリウム2〜4g、塩化カルシウム1〜2g、ビオチン0.013〜0.025gであり、pH値7.0、材料補充培養基の導電率は13.5〜23mS/cmである。
【0039】
上記発明の内容において発酵タンクの体積は10L〜200mで15L〜150mであることが好ましい。
【0040】
本発明のメリットは、
(1)コエンザイムQ10の発酵工程について全面的かつ正確な検査と分析を行い、発酵中に成長を制御する重要なパラメータOURと導電率に対してのデジタル制御が実現でき、プロセスの管理が簡単で、操作性が良く、生産効率を著しく向上した。
(2)本発明はコエンザイムQ10の生産量を効率よく向上し、製造コストを削減することができ、操作が簡単で、環境保護節約の特徴を有し、さらなる工業化の拡大と活用に有利である。
ことにある。
【実施例】
【0041】
下記の具体的実施例を通じて本発明をさらに述べる。これらの実施例は本発明を説明するためだけであり、本発明の保護範囲を制限するためではないことを理解すべきである。下記の事例中に具体条件の実験方法が記載されていなく、通常は一般の条件に従って実施する。特別の説明がない限り、全ての百分率と数は重量で計算する。
【0042】
本発明において使用する機器は、10Lの発酵タンク(上海保興生物設備有限公司製造)、15Lの発酵タンク(上海国強生化装備有限公司製造)、排気ガス質量分析器(アメリカExtrel社のMAX300−LG)、オンライン導電率測定器(メトラー・トレド社)である。
【0043】
本発明の実施例において使われるコエンザイムQ10を生産する菌種は紅色細菌(Rhodobacter sphaeroides)である。
【0044】
<実施例1:連続流加材料補充のプロセス>
(1)種の培養:無菌水で培養した斜め面を洗浄し、細胞10〜10個/Lの菌懸濁液を作る。その後10mLを容量500mL/1000mLの種瓶の中に移し、30℃、180〜250rpmの条件の下で22〜26時間培養すると種液が得られる。
【0045】
(2)発酵の培養:手順(1)で得られた種液を10Lの発酵タンクに接種し、接種量は10%であり、培養温度を29−33℃で、タンク内の圧力を0.03〜0.05MPaで維持する。酸素の供給は段階を分けて制御する方法を使用し、接種後の初期撹拌回転速度は500rpmであり、空気流量は6L/minである。接種後、成長延滞期が終わると共に、細菌母体の快速成長が始まり対数成長期に入り、OURがすぐ上がり、24時間の間、30−50mmol/L・hの間に維持し、回転速度は500−700rpmであり、タンク内に残る葡萄糖を0.5−2.0%の間に制御して110時間ほど培養する。この間に細菌母体の成長状況によってプロセスのパラメータを調整して葡萄糖の連続補充を開始し、酸素の消耗速度の変化によってプロセスのパラメータを調整すると共に導電率の変化によって材料補充培養基を流加する。
【0046】
発酵中酸素供給の制御:紅色細菌の発酵でコエンザイムQ10を製造する間に、大量の酸素供給は細菌母体の成長を効率的に促進することができるが、酸素が制限される場合、細菌母体の形態が変形になり、同時にコエンザイムQ10の合成がすぐ始まるため、紅色細菌の発酵でコエンザイムQ10を製造する間は段階を分けて酸素を供給する方法で調整を行う。10Lの発酵タンク中の発酵が開始した後に、細菌母体の成長に従って、OUR、CERが少しずつ増えることは、細菌母体の酸素消耗量が段々増え、酸素を20h溶解し1−5%まで下がり、OURとCERの成長が安定期間に入ることを示すが、細菌母体がまだ指数成長期にあり、細菌母体の量が成長を継続することは、細菌母体が既にその最大の呼吸強度に達していて、酸素の供給は既に制限要素になっていることを示す。段階を分けて酸素の供給を高めて細菌母体の成長を増やし、最後の段階で酸素の供給を下げてコエンザイムQ10の合成を促進し基質の消耗を下げる。0〜24時間に撹拌回転速度を500rpmに、空気流量を6L/minに制御する。細菌母体の成長に従ってOURが少しずつ安定状態に入り、30〜50mmol/L・hに達する。この段階では細菌母体はまだ指数成長期にあり、酸素の供給は既に制限条件になっている。撹拌回転速度と通気量を増やすことによって酸素供給レベルを向上し、24〜36時間の間、OURを50〜60mmol/L・hに維持し、36〜60時間の間、OURを60〜70mmol/L・hに維持し、細菌母体の成長を促進する。60時間後、この段階は徐々に安定期に入り、細菌母体の成長が止まり、コエンザイムQ10がすぐ合成して累積し、酸素の供給を少しずつ減らすことによってコエンザイムQ10比生産速度を高いレベルに維持させる。60〜90時間の間、OURを70〜90mmol/L・hに維持し、90〜100時間の間、OURを60〜80mmol/L・hに維持し、100時間後、OURを50〜60mmol/L・hに維持する。
【0047】
発酵中の材料補充プロセスの制御:紅色細菌でコエンザイムQ10を発酵する間に、基質の栄養濃度が細菌母体の成長と産物の累積に同時に影響し、発酵の間に培養基の栄養基質の消耗に従って導電率が下がり、細菌母体の成長環境が変わり、細菌母体の成長と代謝を発生する。一般の発酵工程においては、葡萄糖とリン酸カリウム塩のみ流加する。本材料補充のプロセスでは、一般のプロセスにおいて残糖と溶解リンによって葡萄糖とリン酸2水素カリウムを補充するほか、同時に細菌母体の増殖、発酵液中栄養基質の消耗、導電率の少しずつの低下に従って、導電率が15.0mS/cmまで下がったときに、材料補充培養基を流加する。材料補充培養基の配合は1Lの材料補充液の中に、酵母粉8〜12g、硫酸アンモニウム5〜10g、硫酸マグネシウム1〜2g、塩化ナトリウム3〜6g、リン酸2水素カリウム2〜4g、リン酸水素2カリウム2〜4g、塩化カルシウム1〜2g、ビオチン0.013〜0.025gであり、pH値7.0、材料補充基の導電率は13.5〜23mS/cmであり、培養基の加入速度を制御することによって導電率を10−20mS/cm範囲内に維持させる。図2aにおける曲線Cはこの材料補充のプロセスにおける導電率の変化傾向を表し、全工程の残糖は0.5〜2.0%に維持され、110時間後に発酵が終わって力価が3350mg/Lに達する。
【0048】
<実施例2:連続流加材料補充のプロセス>
(1)種の培養:無菌水で培養した斜め面を洗浄し、10〜10個細胞/mLの菌懸濁液を作る。その後10mLを容量が500mL/1000mLの種瓶に移し、30℃、180−250rpmの条件で22−26時間培養する。
【0049】
(2)発酵培養:手順(1)で得られた種液を15Lの発酵タンクに接種し、接種量は10%であり、培養温度を29−33℃で、タンク内の圧力を0.03〜0.05MPaで維持する。酸素の供給は段階を分けて制御する方法を使用し、接種後の初期撹拌回転速度は500rpmであり、空気流量は9L/minである。接種後、成長延滞期が終わると共に、細菌母体の快速成長が始まり対数成長期に入り、OURがすぐ上がり、24時間の間、30−50mmol/L・hで維持し、回転速度は500−700rpmであり、タンク内に残る葡萄糖を0.5−2.0%の間に制御し、110時間ほど培養する。この間に細菌母体の成長状況によってプロセスのパラメータを調整して葡萄糖の連続補充を開始し、酸素の消耗速度の変化によってプロセスのパラメータを調整すると共に導電率の変化によって材料補充培養基を流加する。
【0050】
発酵中の酸素供給の制御は段階を分けて酸素を供給する方法で調整する。段階を分けて酸素の供給をすることによって細菌母体の成長を増やし、最後の段階で酸素の供給を減らすことによってコエンザイムQ10の合成を促し、基質の消耗を減少する。0〜24時間の間、撹拌回転速度を500rpmに、空気流量を9L/minに制御し、細菌母体の成長に従ってOURが少しずつ安定状態に入り、30〜50mmol/L・hに達する。この段階では細菌母体はまだ指数成長期にあり、酸素の供給は既に制限条件になっている。撹拌回転速度と通気量を増やすことによって酸素供給レベルを向上し、24〜36時間の間、OURを50〜60mmol/L・hに維持し、36〜60時間の間、OURを60〜70mmol/L・hに維持し、細菌母体の成長を促進する。60時間後、この段階は徐々に安定期に入り、細菌母体の成長が止まり、コエンザイムQ10がすぐ合成して累積し、酸素の供給を少しずつ減らすことによってコエンザイムQ10比生産速度を高いレベルに維持させる。60〜90時間の間、OURを70〜90mmol/L・hに維持し、90〜100時間の間、OURを60〜80mmol/L・hに維持し、100時間後、OURを50〜60mmol/L・hに維持する。
【0051】
発酵中の材料補充プロセスの制御:本材料補充のプロセスでは、一般のプロセスにおいて残糖と溶解リンによって葡萄糖とリン酸2水素カリウムを補充するほか、同時に細菌母体の増殖、発酵液中栄養基質の消耗、導電率の少しずつの低下に従って、導電率が15.0mS/cmまで下がったときに、材料補充培養基を流加する。材料補充培養基の配合は1Lの材料補充液の中に、酵母粉8〜12g、硫酸アンモニウム5〜10g、硫酸マグネシウム1〜2g、塩化ナトリウム3〜6g、リン酸2水素カリウム2〜4g、リン酸水素2カリウム2〜4g、塩化カルシウム1〜2g、ビオチン0.013〜0.025gであり、pH値7.0、材料補充基の導電率は13.5〜23mS/cmであり、培養基の加入速度を制御することによって導電率を10−20mS/cm範囲内に維持させる。全工程の残糖は0.5〜2.0%に維持され、110時間後に発酵が終わって力価が3420mg/Lに達する。
【0052】
<実施例3:分割材料補充のプロセス>
(1)種の培養:無菌水で培養した斜め面を洗浄し、10〜10個細胞/mLの菌懸濁液を作る。その後10mLを容量が500mL/1000mLの種瓶に移し、30℃、180−250rpmの条件で22−26時間培養する。
【0053】
(2)発酵培養:手順(1)で得られた種液を10Lの発酵タンクに接種し、接種量は10%であり、培養温度を29−33℃で、タンク内の圧力を0.03〜0.05MPaで維持した。酸素の供給は段階を分けて制御する方法を使用し、接種後の初期撹拌回転速度は500rpmであり、空気流量は6L/minである。接種後、成長延滞期が終わると共に、細菌母体の快速成長が始まり対数成長期に入り、OURがすぐ上がり、24時間の間、30−50mmol/L・hで維持し、回転速度は500−700rpmであり、タンク内に残る葡萄糖を0.5−2.0%の間に制御し、110時間ほど培養する。この間に細菌母体の成長状況によってプロセスのパラメータを調整して葡萄糖の連続補充を開始し、酸素の消耗速度の変化によってプロセスのパラメータを調整すると共に導電率の変化によって材料補充培養基を流加する。
【0054】
発酵中の酸素供給の制御は段階を分けて酸素を供給する方法で調整する。段階を分けて酸素の供給をすることによって細菌母体の成長を増やし、最後の段階で酸素の供給を減らすことによってコエンザイムQ10の合成を促し、基質の消耗を減少する。0〜24時間の間、撹拌回転速度を500rpmに、空気流量を9L/minに制御し、細菌母体の成長に従ってOURが少しずつ安定状態に入り、30〜50mmol/L・hに達する。この段階では細菌母体はまだ指数成長期にあり、酸素の供給は既に制限条件になっている。撹拌回転速度と通気量を増やすことによって酸素供給レベルを向上し、24〜36時間の間、OURを50〜60mmol/L・hに維持し、36〜60時間の間、OURを60〜70mmol/L・hに維持し、細菌母体の成長を促進する。60時間後、この段階は段々安定期に入り、細菌母体の成長が止まり、コエンザイムQ10がすぐ合成して累積し、酸素の供給を少しずつ減らすことによってコエンザイムQ10比生産速度を高いレベルに維持させる。60〜90時間の間、OURを70〜90mmol/L・hに維持し、90〜100時間の間、OURを60〜80mmol/L・hに維持し、100時間後、OURを50〜60mmol/L・hに維持する。
【0055】
発酵中の材料補充のプロセスは間欠式分割材料補充の方法を使用し、発酵の間にそれぞれ20、40、60時間のときに発酵液体積が20%の材料補充培養基を補充し、材料補充培養基の配合は、1Lの材料補充液中に酵母粉8〜12g、硫酸アンモニウム5〜10g、硫酸マグネシウム1〜2g、塩化ナトリウム3〜6g、リン酸2水素カリウム2〜4g、リン酸水素2カリウム2〜4g、塩化カルシウム1〜2g、ビオチン0.013〜0.025gであり、pH値7.0である。細菌母体の成長に従って、培養基質が消耗され、導電率が少しずつ下がり、毎回の材料補充の後に、導電率が大幅に上がり、その後少しずつ下がり、図2aにおける曲線Bはこの材料補充の方法における発酵中の導電率の変化傾向を表している。全工程においての残糖は0.5〜2.0%に維持され、110時間後に発酵が終わり、力価が3013mg/Lに達する。
【0056】
<実施例4:対照例>
(1)種の培養:無菌水で培養した斜め面を洗浄し、10〜10個細胞/mLの菌懸濁液を作る。その後10mLを容量が500mL/1000mLの種瓶に移し、30℃、180−250rpmの条件で22−26時間培養する。
【0057】
(2)発酵培養:手順(1)で得られた種液を10Lの発酵タンクに接種し、接種量は10%であり、培養温度を29−33℃で、タンク内の圧力を0.03〜0.05MPaで維持した。酸素の供給は段階を分けて制御する方法を使用し、接種後の初期撹拌回転速度は500rpmであり、空気流量は6L/minである。接種後、成長延滞期が終わると共に、細菌母体の快速成長が始まり対数成長期に入り、OURがすぐ上がり、24時間の間、30−50mmol/L・hで維持し、回転速度は500−700rpmであり、タンク内に残る葡萄糖を0.5−2.0%の間に制御し、110時間ほど培養する。この間に細菌母体の成長状況によってプロセスのパラメータを調整して葡萄糖の連続補充を開始し、酸素の消耗速度の変化によってプロセスのパラメータを調整すると共に導電率の変化によって材料補充培養基を流加する。
【0058】
発酵中の酸素供給の制御は段階を分けて酸素を供給する方法で調整する。段階を分けて酸素の供給をすることによって細菌母体の成長を増やし、最後の段階で酸素の供給を減らすことによってコエンザイムQ10の合成を促し、基質の消耗を減少する。0〜24時間の間、撹拌回転速度を500rpmに、空気流量を9L/minに制御し、細菌母体の成長に従ってOURが少しずつ安定状態に入り、30〜50mmol/L・hに達する。この段階では細菌母体はまだ指数成長期にあり、酸素の供給は既に制限条件になっている。撹拌回転速度と通気量を増やすことによって酸素供給レベルを向上し、24〜36時間の間、OURを50〜60mmol/L・hに維持し、36〜60時間の間、OURを60〜70mmol/L・hに維持し、細菌母体の成長を促進する。60時間後、この段階は徐々に安定期に入り、細菌母体の成長が止まり、コエンザイムQ10がすぐ合成して累積し、酸素の供給を少しずつ減らすことによってコエンザイムQ10比生産速度を高いレベルに維持させる。60〜90時間の間、OURを70〜90mmol/L・hに維持し、90〜100時間の間、OURを60〜80mmol/L・hに維持し、100時間後、OURを50〜60mmol/L・hに維持する。
【0059】
発酵中の材料補充工程の制御:既存の培養プロセスを対照例として、発酵の間に発酵液中の残糖の量と溶解リンの濃度によって葡萄糖とリン酸カリウム塩を補充する。本対照例のプロセス工程において、細菌母体の成長に従って、基質が消耗され導電率が少しずつ下がっていく。図2aにおける曲線Aは対照例材料補充のプロセスにおける導電率の変化傾向を表している。全工程の残糖は0.5〜2.0%に維持され、110時間後に発酵が終わり、力価が2843mg/Lに達する。
【0060】
既存のコエンザイムQ10の材料補充分割培養プロセスでは、段階を分けて酸素の供給を制御して細菌母体の成長とコエンザイムQ10の累積を向上している。図1において、発酵中の撹拌回転速度と流量の調整をしたときのOUR、CERと導電率の変化状況を反映している。発酵の最初段階では、細菌母体の成長に従って、OUR、CERが少しずつ増えることは、細菌母体の酸素消耗量が徐々に増えることを表し、26時間後にOUR、CERの成長が安定状態に入り、導電率が細菌母体の基質の消耗および材料補充で発生した希釈によって徐々に下がるが、細菌母体がまだ指数成長期にあり、細菌母体の量がまだ増えていることは、細菌母体が既にその最大の呼吸強度に達していて、酸素の供給は既に制限要素になっていることを示す。同時に導電率の低下も、栄養濃度が消耗され、細菌母体生産環境の栄養の不均一を発生しやすいことを意味している。
【0061】
本発明者らは、10Lと15Lの実験タンクにおいて段階を分けて酸素の供給を制御するプロセスにおいて、それぞれの材料補充方法でオンライン導電率が基質濃度を反映して培養基を補充することがコエンザイムQ10の発酵に対して影響することを調査した。図2a〜2cは、材料補充の方法によってのコエンザイムQ10発酵中における導電率、細菌濃度およびコエンザイムQ10濃度の変化を表している。
【0062】
発酵中に、細菌母体の成長、基質の消耗、材料補充で発生した基質の濃度の希釈が全て導電率の低下を発生している。図2aからみると、分割材料補充と流加材料補充が両方とも基質濃度を安定させる役割を果たしていることが分かる。
【0063】
図2bからみると、発酵中における培養基を補充することによる細菌濃度への影響はそれほど著しくないことが分かる。特に発酵の前期と後期では、材料補充の方法によって発酵前期の濃度が少ししか上がらないため、培養基の補充が発酵の後期の状態に有利であることが分かる。
【0064】
図2cからみると、導電率が15mS/cmに下がってから培養基を流加し、基質濃度の安定性を維持することは発酵の中の後期の累積を著しく向上できることが分かる。
【0065】
上記の説明によると、コエンザイムQ10発酵の間は段階を分けた酸素供給および流加材料補充の酸素供給の方法で発酵工程を調整する。従って、発酵工程の成長段階と前期の合成段階では高いレベルの酸素供給で細菌母体の快速成長とコエンザイムQ10の快速開始を促進し、細菌母体が快速の消耗段階に入るときに培養基を流加して必要な栄養基質を補充し、細菌母体の成長環境を維持する。細菌母体が安定期に入ると、段階を分けて高いコエンザイムQ10比生産速度を維持して基質葡萄糖の消耗を減らす。この段階を分けての酸素供給および材料補充方法は、確実に生産菌の最良の生理学的な特性状態が得られ、コエンザイムQ10の生産コストを削減することができる。
図1
図2a
図2b
図2c