【実施例】
【0244】
第1マトリクス化合物の例示的実施例の、種々の双極子モーメントおよび還元電位を測定した。その結果を下記表4にまとめる。
【0245】
【表4】
【0246】
第2マトリクス化合物の例示的実施例の、種々の双極子モーメントを算出した。その結果を下記表5にまとめる。
【0247】
【表5】
【0248】
〔合成手法〕
化合物ETM−3([1,1’:4’,1''−テルフェニル]−3−イルビス(2−メチルナフタレン−1−イル)ボラン)の合成
【0249】
【化20】
【0250】
1.テトラキス(3−ブロモフェニル)スタンナン (段階1)
Sn(m−C
6H
4Br)
4:1,3−ジブロモベンゼン(5.89g、24.97mmol)を、60mLのエーテルに溶解させ、−50℃に冷却した。次に、nBuLiのヘキサン溶液(1.6M)を16.2mL(26.00mmol)滴下した。120分間攪拌した後、反応混合物を−78℃に冷却した。そして、0.73mL(6.25mmol)のSnCl
4を滴下した。混合物を室温にて12時間攪拌した後、20mLのHCl(1M)を加えた。そして、生成物をエーテルで抽出した(3×70mL)。有機層をH
2Oで洗浄し、MgSO
4で乾燥させた。減圧下で溶媒を除去した後、得られた油分に30mLの冷却したMeOHを加え、0〜5℃にて混合物を攪拌した。沈殿物を濾別して、冷却したMeOHで洗浄した(1×3mL)。減圧下で乾燥させた後、無色結晶の粉末であるSn(m−C
6H
4Br)
4を得た(3.70g、5.00mmol、収率:80%)。
M.p.119-120℃
IR (ATR): ν = 1553, 1456, 1382, 1188, 1081, 996, 771, 715, 681, 643 cm
-1
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ = 7.64-7.62 (m, 4H), 7.61-7.56 (m, 4H), 7.44 (d,
3J(H-H) = 7.3 Hz, 4H), 7.32 (t,
3J(H-H) = 7.6 Hz, 4H) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ = 139.1 (
2J(
119Sn-C) = 41.8 Hz, CH), 138.8 (
1J(
119Sn-C) = 528.2 Hz, Sn-C), 135.2 (
2J(
119Sn-C) = 35.2 Hz, CH), 133.0 (
4J(
119Sn-C) = 11.0 Hz, CH), 130.7 (
3J(
119Sn-C) = 55.0 Hz, CH), 124.2 (Br-C) ppm
MS: [M]
+ (0.1%) 739.7, [M-Br]
+ (0.1%) 660.8, [M-C
6H
4Br]
+ (20%) 584.8, [M-2C
6H
4Br]
+(7%) 429.8, [M-3C
6H
4Br]
+(27%) 274.9, PhSn (100) 196.9。
【0251】
2.(3−ブロモフェニル)ジクロロボラン (段階2)
BCl
3のヘキサン溶液50mL(1M、50.00mmol)に、−78℃にて、7.43g(10.00mmol)のSn(m−C
6H
4Br)
4を加えた。得られた混合物を、−78℃にて1時間攪拌し、さらに室温にて2日間攪拌した。ダイアフラムポンプで揮発成分(ヘキサン、SnCl
4および過剰量のBCl
3)を除去した(70〜75℃の油浴、40mbar)。その後、残渣を減圧下で蒸留して(105〜110℃の油浴/0.2mbar)、7.06g(29.70mmol、75%)の(3−ブロモフェニル)ジクロロボランを得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3): δ = 7.37 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.77 (ddd, J = 7.8, 2.1, 1.1 Hz, 1H), 8.06 (ddd, J = 7.8, 2.1, 1.1 Hz, 1H), 8.24 (dd, J = 2.1, 1.1 Hz, 1H) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ = 139.3 (CH), 137.8 (CH), 137.6 (B-C), 135.2 (CH), 129.9 (CH), 122.9 (Br-C) ppm.
11B NMR (192 MHz, CDCl
3) δ = 54.9 ppm。
【0252】
3.(3−ブロモフェニル)ビス(2−メチルナフタレン−1−イル)ボラン (段階3)
1-ブロモ-2-メチルナフタレン(90%、純化合物:3.60g、16.00mmol)4.00gをジエチルエーテル(80mL)に溶解させた溶液に、1.6MのnBuLiを11mL(17.6mmol)、−78℃にて15分間かけて滴下した。−78℃にて1時間攪拌し、さらに0℃にて2時間攪拌した後、得られた混合物を−78℃に冷却した。そしてこの混合物に、2.02g(8.50mmol)の(3−ブロモフェニル)ジクロロボランを、激しく攪拌しながら5分間かけて加えた。−78℃にて1時間攪拌した後、冷浴から取り出し、反応混合物を室温にて一晩さらに攪拌した。次に、反応混合物を5℃まで冷却し、5滴の濃塩酸でクエンチした。減圧下でエーテルを除去し、残留物を水(100mL)と混合し、CHCl
3で抽出した(3×70mL)。そして、有機層を水で洗浄し、塩化カルシウムで乾燥させた。段階3のボランを、石油エーテルを溶離液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、明黄色の固体を得た(1.65g、3.67mmol、45%)。
M.p. 157-158℃
IR (ATR): ν= 1592, 1505, 1421, 1389, 1225, 1192, 808, 743, 604, 510, 503 cm
-1
1H NMR (600 MHz, CDCl
3) δ = 7.86-7.79 (m, 4H), 7.61-7.53 (m, 4H), 7.37-7.28 (m, 5H), 7.18-7.11 (m, 3H), 2.24 (s, 6H, Me) ppm
13C NMR (150 MHz, CDCl
3): δ =148.4 (br s, B-C
Phenyl), 141.9 (br s, 2C, B-C
Naphthyl), 139.6 (2Cq), 139.2 (CH), 135.9 (2Cq), 135.6 (CH), 135.3 (CH), 131.8 (Cq), 131.7 (Cq), 130.1 (CH), 130.0 (CH), 129.9 (CH), 129.5 (CH), 129.4 (CH), 129.1 (CH), 129.0 (CH), 128.5 (CH), 128.4 (CH), 125.5 (2CH), 124.5 (2CH), 122.9 (C-Br), 23.8 (Me), 23.6 (Me) ppm
11B NMR (192 MHz, CDCl
3) δ = 74.3 ppm
MS: [M]
+ (12%) 448; [M - (1-メチルナフタレン)]
+ (17%) 306; [M - (1-メチルナフタレン) - Br]
+ (12%) 227; [1-メチルナフタレン)]
+(28%) 142。
【0253】
4.[1,1’:4’,1''−テルフェニル]−3−イルビス(2−メチルナフタレン−1−イル)ボラン (化合物ETM−3)
段階3のボラン、(90mg、0.20mmol)、Pd(PPh
3)
4(12mg、5mol%、0.01mmol)、1,1’−[ビフェニル]−4−イルホウ酸(48mg、0.24mmol)、Na
2CO
3(64mg、0.60mmol)、および1mLの水を加えたトルエン(15mL)の混合物を、15分間N
2バブリングして脱気した。次に、反応混合物を105〜110℃に加熱して、反応完了までTLCでモニタリングした(通常は8〜12時間)。溶媒を除去した後、残留物を10mLの水で稀釈し、3滴の濃塩酸で酸性条件にし、CHCl
3で抽出した(3×20mL)。そして、有機層を水で洗浄し、塩化カルシウムで乾燥させた。化合物ETM−3を、石油エーテルを溶離液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、白色の固体を得た(51mg、0.098mmol、49%)。
M.p. 180-181℃
Tg 87℃
IR (ATR): ν= 1591, 1506, 1420, 1384, 1224, 1189, 811, 740, 606, 512, 505 cm
-1
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ =7.85 (d, J = 8.3 Hz, 4H), 7.79-7.65 (m, 5H), 7.60-7.53 (m, 4H), 7.49-7.39 (m, 5H), 7.38-7.31 (m, 5H), 7.18 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.14 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 2.31 (s, 3H, Me), 2.30 (s, 3H, Me) ppm
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ =146.2 (br s, B-C
フェニル), 142.5 (br s, 2C, B-C
ナフチル), 140.6 (Cq), 140.1 (Cq), 140.0 (Cq), 139.9 (Cq), 139.5 (2Cq), 136.6 (CH), 136.2 (Cq), 136.1 (Cq), 136.0 (CH), 131.8 (Cq), 131.7 (Cq), 131.3 (CH), 129.9 (CH), 129.8 (2CH), 129.7 (CH), 129.2 (2CH), 128.8 (2CH), 128.6 (CH), 128.5 (CH), 128.4 (CH), 127.5 (2CH), 127.4 (2CH), 127.3 (CH), 127.0 (2CH), 125.3 (2CH), 124.4 (2CH), 23.9 (Me), 23.7 (Me) ppm
MS: [M]
+ (35%) 522; [M - (1-メチルナフタレン)]
+ (98%) 380; [M - (1-メチルナフタレン) - Ph + 2H]
+ (100%) 306; [1-メチルナフタレン)]
+(72%) 142。
【0254】
化合物ETM−7(ビス(2−メチルナフタレン−1−イル)(3−(フェナントレン−9−イル)フェニル)ボラン)の合成
【0255】
【化21】
【0256】
(3−ブロモフェニル)ビス(2−メチルナフタレン−1−イル)ボラン(段階3、2.00g、4.45mmol)、Pd(PPh
3)
4(0.26mg、5mol%、0.22mmol)、フェナントレン−9−イルホウ酸(1.19g、5.36mmol)、Na
2CO
3(1.40g、13.21mmol)、および22mLの水を加えたトルエン(306mL)の混合物を、1時間N
2バブリングして脱気した。次に、反応混合物を110℃に加熱して、反応完了までTLCでモニタリングした(29時間)。室温まで冷却した後、2層を分離させ、有機層を水で洗浄した(4×200mL)。さらに、有機層をNaDTCと共に2回攪拌して(2×15分間)、パラジウム残留物を除去した。水でもう1回洗浄した後、有機層を塩化カルシウムで乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(98:2)を溶離液とするカラムクロマトグラフィーによって粗生成物を精製し、白色固体を得た(950mg、1.74mmol、40%)。
HPLC-MS 97 %, GC-MS 99.6 % (m/z 546), Tg 102℃ (DSC 10 K/minで測定), 融点測定されず
1H NMR (500 MHz, CD
2Cl
2) δ = 8.78 (d, 1H), 8.68 (d, 1H), 7.93-7.82 (m, 6H), 7.82-7.76 (d, 1H), 7.76-7.70 (m, 1H), 7.68 (s, 1H), 7.66-7.55 (m, 6H), 7.55-7.48 (m, 1H), 7.48-7.39 (m, 2H), 7.39-7.33 (m, 2H), 7.33-7.22 (m, 3H), 2.38 (s,3H, Me), 2.35 (s, 3H, Me) ppm
13C NMR (125 MHz, CD
2Cl
2): δ = 146.5 (br, s B-C
フェニル), 143.1 (br, s, B-C
ナフチル), 141.0, 140.2 (d, J = 7.3Hz), 139.6, 139.0, 136.8 (d, J = 11.4Hz), 134.9, 132.6 (d, J = 3.8Hz), 132.0, 131.3, 131.0, 130.6, 130.4, 129.7, 129.1, 129.0, 128.1, 127.4, 127.2 (d, J = 8.0Hz), 127.0, 126.9, 125.9 (d, J = 6.2Hz), 125.1 (d, J = 1.7Hz), 123.4, 123.0, 24.2 (CH
3), 23.9 (CH
3) ppm。
【0257】
本明細書で言及した他の化合物は、既報に従って調製した。それぞれの化合物を調製するにあたって、各化合物を調製するための具体的な反応条件に、当業者の一般常識に基づいて若干の変更を加えうることを理解されたい。
【0258】
〔OLED作製の一般的手法〕
ボトム・エミッション型デバイスに関して(実施例1〜5、比較例1〜4)は、100nmのITOを備えている15Ω/cm
2のガラス基板(Corning Co.より入手)を、50mm×50mm×0.7mmに切断した。イソプロピルアルコールで5分間、次いで純水で5分間超音波洗浄し、UVオゾンで30分間さらに洗浄した。このようにして、第1電極を作製した。
【0259】
次に、(i)8重量%だけドープされている92重量%の正孔輸送マトリクス、および(ii)8重量%の2,2’,2''−(シクロプロパン−1,2,3−トリイリデン)トリス(2−(p−シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)を、ITO電極の上に真空蒸着させて、厚さ10nmのHILを形成させた。次に、正孔輸送マトリクスをHILの上に真空蒸着させて、厚さ120nmのHTLを形成させた。実施例1〜3および比較例1〜4では、ビフェニル−4−イル(9,9−ジフェニル−9H−フルオレン−2−イル)−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]−アミン(CAS 1242056-42-3)を正孔輸送マトリクスに用いた。実施例4、5では、N4,N4''−ジ(ナフタレン−1−イル)−N4,N4''−ジフェニル−[1,1’:4’,1''−テルフェニル]−4,4''−ジアミン(CAS 139255-16-6)を正孔輸送マトリクスに用いた。
【0260】
次に、EMLホストである97重量%のABH113(Sun Fine Chemicals)および3重量%の青色ドーパントを、HTLの上に堆積させて、厚さ20nmの青色発光EMLを形成させた。実施例1〜3および比較例1〜4では、NUBD370(Sun Fine Chemicals)を青色ドーパントとして用いた。実施例4、5では、NUBD005(Sun Fine Chemicals)を青色ドーパントとして用いた。
【0261】
次に、実施例1〜5および比較例1〜4に係るマトリクス化合物(表6を参照)を堆積させることによって、ドープされていない電子輸送層(ETL)を形成させた。次に、電子注入層(EIL)を形成させた。具体的には、(i)比較例1では、30重量%のLiQでドープされている、2−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール(CAS 561064-11-7)を、(ii)実施例1〜5および比較例2〜4では、30重量%のリチウムテトラ(1H−ピラゾール−1−イル)ボラート(Li−1)でドープされている、3−フェニル−3H−ベンゾ[b]ジナフト[2,1−d:1’,2’−f]ホスフェピン−3−オキシド(EIM−11)を、それぞれ堆積させて、表6に記載の層を形成させた。カソードは、10
−7mbarの超高真空で蒸着させた。すなわち、1または複数種類の金属を、速度0.1〜10nm/s(0.01〜1Å/s)での熱共蒸着を1回行って、厚さ5〜1000nmの均一なカソードを形成させた。100nmのアルミニウムによってカソードを形成した。
【0262】
デバイスをガラススライドに封入することによって、OLED積層体を環境条件から保護した。これに関しては、窪みを設けて、さらなる保護のためにゲッター材料も中に入れた。
【0263】
従来技術と比較した本発明の実施例の性能を評価するために、環境条件下(20℃)にて電流効率を測定した。電流電圧の測定にはKeithley 2400ソースメータを用い、単位:Vで記録した。ボトム・エミッション型では10mA/cm
2、トップ・エミッション型では15mA/cm
2にて測定した。較正済の分光光度計CAS140(Instrument Systems製)を用いて、CIE座標および光度(カンデラ)を測定した。デバイスの寿命(LT)は、環境条件(20℃)、15mA/cm
2にて、Keithley 2400ソースメータを用いて測定し、単位:時間で記録した。デバイスの光度は、較正済のフォトダイオードを用いて測定した。寿命(LT)は、「デバイスの光度が初期値の97%に減少するまでの時間」と定義した。
【0264】
外部効率(EQE)および出力効率(lm/W効率)にて光出力を測定した。測定は、ボトム・エミッション型デバイスでは10mA/cm
2で、トップ・エミッション型デバイスでは15mA/cm
2で、行った。
【0265】
効率(EQE、単位:%)を決定するために、較正済のフォトダイオードを用いてデバイスの光出力を測定した。
【0266】
出力効率(単位:lm/W)は、以下の工程により決定した:
(第1工程)Deutsche Akkreditierungsstelle(DAkkS)による較正を受けたアレイ分光光度計CAS140 CT(Instrument Systems製)を用いて、輝度(単位:平方メートル当たりカンデラ(cd/m
2))を測定した。
(第2工程)測定した輝度にπを乗じ、電圧および電流密度で除した。
【0267】
ボトム・エミッション型デバイスにおいては、発光は主としてLambertianであり、外部量子効率(EQE、単位:%)および出力効率(単位:lm/W)で定量化する。
【0268】
トップ・エミッション型デバイスにおいては、発光は前方方向に放射され、非Lambertianであり、微小な空洞からも大きく影響を受ける。そのため、外部量子効率(EQE)および出力効率(単位:lm/W)は、ボトム・エミッション型デバイスと比較して高くなる。
【0269】
〔本発明の技術的効果〕
(ボトム・エミッション型デバイス)
ボトム・エミッション型デバイスの性能における本発明の有利な効果は、表6から見て取れる。
【0270】
【表6】
【0271】
表6の比較例1では、アントラセン化合物であるADN(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、CAS 122648-99-1)を第1マトリクス化合物として試験している。
【0272】
【化22】
【0273】
テトラヒドロフラン中でのFc/Fc
+に対する還元電位は−2.44Vであり、双極子モーメントは0.01デバイである。第1マトリクス化合物の還元電位およびLUMO準位は、EMLホストのものと同じである。EILは、ベンゾイミダゾール化合物EIM−1および有機リチウム複合体LiQを含んでいる。出力効率は3.2lm/Wであった(表6)。
【0274】
比較例2では、第1マトリクス化合物であるADNを、ホスフィンオキシド化合物EIM−11および有機リチウム複合体Li−1を含んでいるEILと共に試験した。出力効率は4.1lm/Wに向上した。
【0275】
比較例3では、第1マトリクス化合物として、式(A)のトリアジン化合物4,4’−ビス(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)ビフェニル(CAS 266349-83-1)を試験した。
【0276】
【化23】
【0277】
テトラヒドロフラン中でのFc/Fc
+に対する還元電位は−2.03Vであり、双極子モーメントは0.03デバイであった。EILの組成は、比較例2と同じになるように選択した。出力効率は2lm/Wに低下した。EMLホストの還元電位およびLUMOを、ETLマトリクスの還元電位およびLUMOと比較したときのオフセットが非常に大きいと、出力効率に不利な影響が及ぼされることは明らかである。
【0278】
比較例4では、ETLマトリクスとして、ホスフィンオキシド化合物EIM−9を試験した。この化合物の、テトラヒドロフラン中でのFc/Fc
+に対する還元電位は−2.2Vであり、双極子モーメントは4デバイであった。したがってこの化合物は、本発明の意味における「極性化合物」である。EILの組成は、比較例2と同じになるように選択した。比較例2と比較すると、出力効率は比較例2の4.1Vから2.4Vに低下した(表6)。EMLマトリクスおよびETLマトリクス間の還元電位のオフセットが望ましい範囲であったとしても、ETLマトリクス化合物の双極子モーメントが高いと、出力効率は低下する。
【0279】
実施例1(表6)では、トリアリールボラン化合物ETM−3を、比較例2と同じEIL組成物と共に試験した。ETM−3の、テトラヒドロフラン中でのFc/Fc
+に対する還元電位は−2.33Vであり、双極子モーメントは2.5デバイ未満であった。出力効率は、4.1lm/Wから4.85lm/Wへと向上した。
【0280】
実施例2では、実施例1よりもLUMOが深いトリアリールボラン化合物を試験した。ETM−1の、テトラヒドロフラン中でのFc/Fc
+に対する還元電位は−2.31Vであり、双極子モーメントは0.14デバイであった。出力効率は、4.85lm/Wから6.1lm/Wへとさらに向上した。
【0281】
実施例3では、トリアジン化合物ETM−28を、比較例2と同じEIL組成物と共に試験した。テトラヒドロフラン中でのFc/Fc
+に対する還元電位は−2.17Vであり、双極子モーメントは1.76デバイであった。出力効率は、比較例2の4.1lm/Wから実施例3の5.3lm/Wへと向上した。
【0282】
実施例5では、ジベンゾ[c,h]アクリジン化合物ETM−15を、比較例2と同じEIL組成物と共に試験した。テトラヒドロフラン中でのFc/Fc
+に対する還元電位は−2.26Vであり、双極子モーメントは1.5〜2デバイであった。出力効率は、比較例2の4.1lm/Wから実施例5の5.7lm/Wへと向上した。
【0283】
実施例6では、トリス(2−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェノキシ)アルミニウム金属複合体ETM−34を、比較例2と同じEIL組成物と共に試験した。テトラヒドロフラン中でのFc/Fc
+に対する還元電位は−2.21Vであり、双極子モーメントは2.5デバイ以下であった。出力効率は、比較例2の4.1lm/Wから実施例6の4.9lm/Wへと向上した。
【0284】
要約すると、(i)9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(CAS 122648-99-1)の還元電位よりも正であり、4,4’−ビス(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)ビフェニル(CAS 266349-83-1)の還元電位よりも負であるような還元電位を有しており、(ii)双極子モーメントが0デバイ以上、2.5デバイ以下であるような、広範な第1マトリクス化合物類に関して、出力効率(lm/W効率)の著しい向上が達成された。
【0285】
他の態様は、2つ以上の発光層150を備えている有機発光ダイオード(OLED)に向けられている。例えば、2つ、3つまたは4つの発光層が存在していてもよい。2つ以上の発光層を備えている有機発光ダイオード(OLED)を、「タンデムOLED」または「積層OLED」とも表記する。
【0286】
他の態様は、1つ以上の有機発光ダイオード(OLED)を備えているデバイスに向けられている。有機発光ダイオード(OLED)を備えているデバイスとしては、例えば、ディスプレイまたはライティング・パネルが挙げられる。
【0287】
上記の明細書、特許請求の範囲および添付の図面に開示されている特徴点は、単独または任意の組み合わせのいずれであっても、本発明を種々の形態で実現する上で本質的でありうる。