特許第6885939号(P6885939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6885939センサ位置案内のためのデバイス、システム、方法及びコンピュータ・プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885939
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】センサ位置案内のためのデバイス、システム、方法及びコンピュータ・プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20210603BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20210603BHJP
   A61B 5/0255 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A61B5/11 120
   A61B5/11 110
   A61B5/113
   A61B5/0255 Z
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-523818(P2018-523818)
(86)(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公表番号】特表2018-537163(P2018-537163A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2016077481
(87)【国際公開番号】WO2017081284
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】15198149.5
(32)【優先日】2015年12月7日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/255,190
(32)【優先日】2015年11月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ,リチャード イー
(72)【発明者】
【氏名】アタラ,ルイス ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ミュールステッフ,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ボンヘルス,エドウィン ヘラルデュス ヨハニュス マリア
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0126822(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0195414(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0144451(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0214963(US,A1)
【文献】 Tomas Lukac et al.,Contactless Recognition of Respiration Phases Using Web Camera,2014 24th International Conference Radioelektronika,IEEE,2014年 6月16日,pages:1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ位置案内のためのデバイスであって:
少なくとも対象者の身体領域のうちの前記身体領域の動きを示す画像データを取得するように構成される画像データ入力部、
取得した画像データを分析し、前記身体領域における動きの強さを示すモーション・マップ及び/又は前記身体領域における拍動性の強さを示す拍動性マップと、呼吸及び/又は心拍速度を監視するウェアラブル・センサが配置されるべきでない場所を示す制約マップとを生成し、前記身体領域における動きの強さ及び/又は拍動性の強さに基づいて、呼吸及び/又は心拍により生じる最大の動きを示す前記身体領域の1つ以上の場所を決定するように構成されるアナライザ、及び
決定された前記1つ以上の場所及び前記制約マップに基づいて前記ウェアラブル・センサが配置されるべき場所を選択し、前記ウェアラブル・センサが前記対象者の身体に配置されるべき場所を示す案内情報を提供するように構成される案内出力部
を有するデバイス。
【請求項2】
前記対象者の身体の様々な場所に対する前記対象者の快適性を示す快適性レベル、及び/又は、個々の場所にウェアラブル・センサを配置する可能性を含む対象者関連データを取得するように構成される対象者データ入力部を更に有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記アナライザは、前記対象者の身体の様々な場所に対する前記対象者の快適性を示す快適性レベル、及び/又は、個々の場所にウェアラブル・センサを配置する可能性を、取得した画像データから決定するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記案内出力部は、決定された1つ以上の場所の中から最適な場所を前記動きの強さ及び前記快適性レベルに基づいて選択するように構成される、請求項又はに記載のデバイス。
【請求項5】
前記案内情報を受信し、前記案内情報に基づいて、選択された場所をユーザに指示するように構成されるユーザ・インタフェースを更に有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ユーザ・インタフェースは、選択された場所を画像の中で及び/又はテキスト形式で指示するように、特に、前記選択された場所を、前記対象者の身体の画像上の投影として見せるように構成されるディスプレイを有する、請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
取得した前記画像データから、前記対象者の呼吸及び/又は心拍速度を決定するように構成されるバイタル・サイン決定ユニットを更に有し、前記アナライザは、呼吸及び/又は心拍により生じる最大の動きを示す前記身体領域の1つ以上の場所を決定する際に、前記対象者の決定された呼吸及び/又は心拍速度を利用するように構成される、請求項に記載のデバイス。
【請求項8】
少なくとも対象者の身体領域の、前記身体領域の動きを示す前記画像データを取得するように構成される撮像ユニット、及び
取得した画像データに基づくセンサ位置案内のための請求項1に記載のデバイス
を有するセンサ位置案内のためのシステム。
【請求項9】
前記撮像ユニットは、カメラ、レンジ・カメラ、レーダー・デバイス、又はスキャナを有する、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記撮像ユニットは、前記対象者又はユーザが前記対象者の身体における選択された場所に前記センサを配置している場合に、画像データを取得するように構成され、前記システムは、前記センサが正しい選択された場所に配置されているか否かを、取得した前記画像データに基づいて検査する画像プロセッサを更に有する、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記対象者の身体上の選択された場所に、インジケータを投影するように構成される投影ユニットを更に有する、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
センサ位置案内のための方法であって:
少なくとも対象者の身体領域のうちの前記身体領域の動きを示す画像データを取得するステップ、
取得した画像データを分析し、前記身体領域における動きの強さを示すモーション・マップ及び/又は前記身体領域における拍動性の強さを示す拍動性マップと、呼吸及び/又は心拍速度を監視するウェアラブル・センサが配置されるべきでない場所を示す制約マップとを生成するステップ、
前記身体領域における動きの強さ及び/又は拍動性の強さに基づいて、呼吸及び/又は心拍により生じる最大の動きを示す前記身体領域の1つ以上の場所を決定するステップ、
決定された前記1つ以上の場所及び前記制約マップに基づいて前記ウェアラブル・センサが配置されるべき場所を選択するステップ、及び
前記ウェアラブル・センサが前記対象者の身体に配置されるべき場所を示す案内情報を提供するステップ
を有する方法。
【請求項13】
コンピュータで実行される場合に、請求項12に記載の方法のステップを前記コンピュータに実行させるコンピュータ・コード手段を有するコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ位置案内のため、特に、対象者の身体に、呼吸及び/又は心拍を監視するためのウェアラブル・センサを配置するために、対象者(例えば、患者、看護人、より一般的には人)又はユーザを案内するためのデバイス、システム及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブル・センサは、病院及び在宅ケアに加えて消費者のライフスタイル(例えば、スポーツ・モニタリング、子供の世話、高齢者の世話など)においても重要な役割を演じている。しかしながら、これらのセンサの多くは固定された身体の場所で使用される。センサの場所を変更すると、場合によっては、内在する生理学又はアーチファクトに対する感度に起因して、完全に異なる信号を提供する。
【0003】
例えば、呼吸速度は胸部上の加速度計を利用して評価されることが可能である。人々は様々に呼吸するので、呼吸は、1つより多い抵抗性又は誘導性のベルトを利用して睡眠検査でしばしば監視される。ある人は肋骨をより大きく広げ、ある人は横隔膜をより多く使う。人はそれぞれ呼吸に起因する動きを最大にする自身の最適な加速度計配置を有するであろう。
【0004】
呼吸はビデオから推定されることも可能である。人の胸部の動きは、呼吸速度を決定するために評価されることが可能である。しかしながら、ビデオに基づく呼吸運動だけでは、例えば通院患者に対して功を奏しないであろう。
【0005】
下記文献は、ビデオ・シーケンスから呼吸のフェーズを抽出する方法を開示している:
T. Luka´c, J. Pu´cik and L. Chrenko, "Contactless recognition of respiration phases using web camera," Radioelektronika (RADIOELEKTRONIKA), 2014 24th International Conference, Bratislava, 2014, pp. 1-4
【0006】
速度を求めるためのシングル・ステップ・ルーカス・カナデ法(A single-step Lucas-Kanade method for obtaining velocities)が実行され、トラッキング・ブロックの選択のためにピクセル・ブロックの信号対雑音比が算出される。ECGがウェブ・カメラの記録とともに同時に測定され、ECGから導出される呼吸が、開示される方法から導出される呼吸と比較される。
【発明の概要】
【0007】
本発明の課題は、対象者の身体に、呼吸及び/又は心拍速度を監視するためのウェアラブル・センサを最適に配置する場合に、対象者又は他のユーザを案内するデバイス、システム及び方法を提供することである。
【0008】
本発明の第1側面では、センサ位置案内のためのデバイスが提供され、デバイスは、
少なくとも対象者の身体領域のうちの身体領域の動き(特に、呼吸及び/又は心拍により生じる動き)を示す画像データを取得する画像データ入力部と、
前記身体領域における動きの強さ及び/又は拍動性の強さに基づいて、呼吸及び/又は心拍により生じる最大の動きを示す身体領域の1つ以上の場所を決定するために、取得した画像データを分析するアナライザと、
決定された1つ以上の場所の中から最適な場所を動きの強さに基づいて選択し、呼吸及び/又は心拍速度を監視するウェアラブル・センサが対象者の身体に配置されるべき最適な場所を示す案内情報を提供する案内出力部とを有する。
【0009】
本発明の別の側面では、センサ位置案内のためのシステムが提供され、システムは、
少なくとも対象者の身体領域の画像データであって呼吸及び/又は心拍により生じる身体領域の動きを示す画像データを取得する撮像ユニットと、
取得した画像データに基づくセンサ位置案内のためのデバイスとを有する。
【0010】
本発明の更に別の側面では、センサ位置案内のための対応する方法が提供される。
【0011】
本発明の更に別の側面では、コンピュータで実行される場合に、本願で開示される方法のステップをコンピュータに実行させるプログラムコード手段を有するコンピュータ・プログラムが提供されるだけでなく、プロセッサにより実行される場合に、本願で開示される方法を実行させるコンピュータ・プログラム・プロダクトを保存する非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体も提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項で規定される。請求項に係るシステム、方法、コンピュータ・プログラム及び記憶媒体は、請求項に係るデバイス(特に、従属請求項で規定されるもの及び本願で開示されるもの)に類似する及び/又は同一の好ましい実施形態を有することが、理解されるであろう。
【0013】
本発明は、ビデオ・カメラにより取得されるビデオのような画像データを利用して、最も大きな動きの地点を決定し、その地点を、ウェアラブル・センサを対象者の身体に取り付ける最適な位置として活用するアイディアに基づいている。従って、画像データは、一般に、呼吸及び/又は心拍により生じる動きを示すべきである。こうして、呼吸速度モニタリングのためのビデオ・カメラにより近辺の対象者に追従できない問題点、及び呼吸のビデオ・ベースのモニタリングに対する潜在的に貧弱なライティング(lighting)の問題点が、克服される。更に、病院又は医療センターで様々な患者各々に対して、センサに基づく呼吸速度モニタのための最適な配置、従って最適な信号品質が、達成されることが可能である。従って、最良な信号を得るために現在実行されているような、センサについての時間のかかる誤りやすい試行錯誤の配置法は、回避されることが可能であり、特定の対象者に特化された個別化されたセンサ配置が達成される。
【0014】
好ましい実施形態によれば、アナライザは、身体領域における動きの強さを示すモーション・マップ(a motion map)、及び/又は、身体領域における拍動性の強さを示す拍動性マップ(a pulsatility map)を生成することにより、取得した画像データを分析し、及び、モーション・マップ及び/又は拍動性マップを利用することにより、呼吸及び/又は心拍により生じる最大の動きを示す身体のうちの1つ以上の場所を決定するように構成される。そのようなモーション・マップ及び拍動性マップを取得するためのアルゴリズムは、画像処理及びバイタル・サイン・モニタリングの技術分野で一般的に知られている。
【0015】
好ましくは、案内出力部は、モーション・マップにおける動きの最強の地点、又は、拍動性マップにおける拍動の最強の地点を、最適な場所として選択するように構成される。本質的には、呼吸に基づく動き及び拍動に基づく動きのマップが取得される。例えば、パルス信号強度−対−呼吸を重み付けし、或いは、SNRを決定し、コスト関数を利用して最適位置を探すことにより、最適な場所が発見されることが可能である。測定される又は予め決定される身体モーション・マップが包含されることも可能である。デバイスは、ウェアラブル・センサが有効に機能しないような場合を示しても良い。
【0016】
デバイスは、対象者の身体の様々な場所に対する対象者の快適性を示す快適性レベル、及び/又は、個々の場所にウェアラブル・センサを配置する可能性、を含む対象者関連データを取得する対象者データ入力部を更に有しても良い。対象者関連データは、例えば、病院のデータベース又は電子ヘルス・レコードから取得され、例えば、インターネット、LAN又はWLANのようなネットワークを介してアクセスされても良い。
【0017】
代替的に、アナライザは、対象者の身体の様々な場所に対する対象者の快適性を示す快適性レベル、及び/又は、個々の場所にウェアラブル・センサを配置する可能性を、取得した画像データから決定するように構成されても良い。
【0018】
対象者の身体の特定の場所についての快適性レベルは、ウェアラブル・センサがその場所に配置される場合に、対象者にとって心地良くないか否か(及び選択的にどの程度そうであるか)を示しても良い。例えば、対象者が傷又は傷跡を有する場合、たとえその位置が最大の動きの観点から最適な位置であったとしても、そのような位置にセンサを配置することは痛みを伴うかもしれない。更に、快適性レベルは、特定の場所にセンサを配置することが不可能であるか否か(及び選択的にどの程度の広がりでそうであるか)を示しても良い。例えば、対象者が包帯を巻いている場合、そこにセンサを配置することは不可能であり、従ってその不可能であることが快適性レベルにより指示されることが可能である。従って、ウェアラブル・センサの最適な場所は、最大の動きと、アーチファクト及び/又は配置の問題点(例えば、身体の形状、包帯、傷など)との間でのトレードオフとして見出されても良い。別の実施形態では、快適性レベルを利用するのではなく、ウェアラブル・センサの配置に関する制約を反映する別のマップ(例えば、制約マップ)が使用されても良い。
【0019】
好ましくは、案内出力部は、決定された1つ以上の場所の中から最適な場所を運動の強さ及び快適性レベルに基づいて選択するように構成される。従って、上述したようなセンサの最適な配置に加えて、他の近辺の最適な場所が決定されても良く、他の近辺の最適な場所は、包帯、皮膚の損傷、或いは、快適性レベルに反映される他の類似する何らかの理由に起因して、センサが(動きの関連から)最も最適な場所には配置できないという状況において選択される。選択的に、事前に推奨される身体の場所が、1つ以上の場所を決定することに加えて使用されることが可能である。
【0020】
別の実施形態では、デバイスは、案内情報を受信し、案内情報に基づいて、選択された場所をユーザに指示するユーザ・インターフェースを更に有する。ユーザ・インタフェースは、例えば、選択された場所を画像の中で及び/又はテキスト形式で指示するディスプレイを有しても良い。これは、対象者及びユーザ(例えば、看護人又は介護者)が対象者の身体にセンサを最適に配置することを支援する。従って、ユーザ・インターフェースは、選択された場所を、対象者の身体の画像上の投影として見せるように構成されても良く、それにより、その特定の対象者にセンサを配置する場所を見えやすくする。
【0021】
更に別のデバイスは、取得した画像データから、対象者の呼吸及び/又は心拍速度を決定するバイタル・サイン決定ユニットを更に有し、アナライザは、呼吸及び/又は心拍により生じる最大の動きを示す、身体領域の1つ以上の場所を決定する際に、対象者の決定された呼吸及び/又は心拍速度を利用するように構成される。取得される画像データに示される動きは、呼吸及び心拍(脈)のみにより生じていることは仮定されず、なぜなら、例えば、しわ(wrinkles)や影などが測定を劣化させ得るからである。従って、呼吸及び/又は脈の検出は、この実施形態では、例えば、額、手、頬など(これらは、自動的に検出される)のような自由に見える皮膚の画像データ(好ましくは同じ撮像ユニットで取得されるもの)から取得される。この目的のため、リモート光電脈波センサ(remote photoplethysmography(PPG))の既知の原理が適用されることが可能である。取得される呼吸及び/又は心拍速度は、画像で検出される動きが呼吸及び/又は心拍により生じている場合に、一種の照合確認(cross-check)として使用され、例えば、呼吸及び/又は心拍を動きから導出し、それらを、リモートPPGを利用することで画像データから導出される呼吸及び/又は心拍と比較することにより、確認される。
【0022】
更に別の実施形態では、例えば、別個の呼吸及び/又は心拍速度センサを利用することにより取得されるような、呼吸及び/又は心拍速度に対する他のリファレンス信号が、この目的に使用されることが可能である。
【0023】
更に、実施形態では、所定の方法で、例えば所定の呼吸速度で呼吸するようにユーザを案内するために、ユーザ・インターフェースが使用されても良い。この場合、呼吸速度は既知であり、上述したように画像データにおける動きが呼吸により生じているか否かを検査するために使用されることが可能である。
【0024】
上述したように、画像データは撮像ユニットにより取得され、撮像ユニットは、カメラ(例えば、ビデオ・カメラ、RGBカメラ、ウェブ・カム等)、レンジ・カメラ、レーダー・デバイス又はスキャナ(例えば、レーザー・スキャナ)を含んでも良い。
【0025】
実施形態では、撮像ユニットは、対象者又はユーザが対象者の身体における選択された場所にセンサを配置している場合に、画像データを取得するように構成され、画像プロセッサは、センサが正しい選択された場所に配置されているか否かを、取得した画像データに基づいて検査するように提供される。そのような場合でなければ、センサの場所を正すために、対象者及び/又はユーザにフィードバックが速やかに与えられても良い。
【0026】
本システムは、対象者の身体上における選択された場所にインジケータを投影する投影ユニットを更に有しても良い。投影ユニットは、例えばレーザー・ポインタ、レーザー・ソース又はビーマー(beamer)であっても良く、インジケータは、ウェアラブル・センサが配置されるべき場所における、単に小さなスポット又は他のサイン(例えば、矢印又は十字)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のこれら及び他の側面は以下に説明される実施形態から明らかになり且つそれらを参照しながら説明される。
図1】本発明によるセンサ位置案内のためのシステム及びデバイスの実施形態の概略図。
図2】本発明によるセンサ位置案内のための方法の実施形態のフローチャートを示す図。
図3】本発明によるセンサ位置案内のためのシステム及びデバイスの別の実施形態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、対象者の身体における可能な最良の場所に、特に心拍及び/又は呼吸測定のために、ウェアラブル・センサ6を配置するために、対象者2(例えば、患者、高齢者又はアスリート)又はユーザ(例えば、看護人又は介護者)を案内するために、本発明によるセンサ位置案内のためのシステム1及びデバイス4の実施形態の概略図を示す。ウェアラブル・センサ6は、呼吸及び/又は心拍に起因する対象者の胸壁又は腹壁の動きを(好ましくは、3つの異なる次元で)監視するための加速度センサ(又は加速度計)であっても良く、その測定は、呼吸速度及び心拍数のような対象者のバイタル・サイン(又は生命兆候)の導出を可能にする。そのようなウェアラブル・センサの別の例は、ジャイロスコープ又はその他の動き感知デバイスであり、これらは対象者の身体に搭載される別の多機能デバイスに組み込まれても良い。心拍速度及び呼吸速度の評価を可能にするウェアラブル・センサの更に別の例は、反射率パルス・オキシメトリのセンサであり、これは酸化された血液によるフラッシング(flushing)に起因する皮膚の色変化を大まかに測定する。ウェアラブル・センサ6は、例えば、接着テープ又はベルトを利用して対象者の身体に取り付けられても良い。
【0029】
システム1は、呼吸及び/又は心拍により生じる身体領域の動きを示す少なくとも対象者の身体領域(例えば、対象者の胴体)の画像データを取得するための撮像ユニット3を有する。撮像ユニット3は、例えば、画像データを検出することが可能なカメラ、レーダー・デバイス又はスキャナ(例えば、レーザー・スキャナ)を含んでも良く、その画像データから所望の動きが取り出されることが可能である。システム1は、取得した画像データに基づくセンサ位置案内のためのデバイス4を更に有する。このデバイス4は、ハードウェア、ソフトウェア又はハード及びソフトウェアの混合で実現されても良く、例えば、プロセッサ又はコンピュータ上で動作するソフトウェアとして実現されても良く、ソフトウェアは別のデバイスに組み込まれても良い。例えば、提案されるデバイス4を実現するための対応するソフトウェアは、例えばスマートフォン、スマート・ウォッチ又はパルス・オキシメータのようなユーザ・デバイスにおけるアプリケーション・プログラム(「アプリ」)として提供されても良い。
【0030】
デバイス4は画像データ入力部40を有し、画像データ入力部40は、呼吸及び/又は心拍により生じる身体領域の動きを示す少なくとも対象者の身体領域の画像データを取得する。画像データは、撮像ユニット3から直接的に提供されても良いし(例えば、無線又は有線方式で送信されても良い)、或いは、ストレージ又はバッファから受信され又は取ってきても良い(例えば、ダウンロードされても良い)。画像データ入力部40は、従って、画像データを受信又は抽出するデータ・インターフェースとして実現されても良い。
【0031】
デバイス4はアナライザ41を更に有し、アナライザ41は、呼吸及び/又は心拍により生じる最大の動きを示す身体領域の1つ以上の場所を決定するために、取得された画像データを分析する。この目的のため、アナライザ41は、画像データ内での動き検出のための既知のアルゴリズムを利用しても良い。例示的な方法はアルゴリズムを含み、そのアルゴリズムは、バックグラウンド除去を実行し、或いは、差分に基づく時空間エントロピ画像(difference-based spatial temporal entropy image)によりフォアグランド動き検出を実行し、或いは、到来するビデオ画像をリファレンス画像と比較する。最大の動き信号(又は呼吸信号や心拍信号のような導出されるバイタル・サイン信号)対雑音比を何れが与えるかに依存して、最も大きな動きの地点は、最大変位又は最大速度となり得る。追加的な方法例は、様々なゲーム・システムで使用されるカメラのような、ライト・コーディング技術(light coding technology)を利用するレンジ・カメラを含む。
【0032】
デバイス4は、決定された1つ又は複数の場所の中から最適な場所を動きの大きさ(又は運動の強さ)に基づいて選択する案内出力部42を更に有する。更に、更にデバイスは、ウェアラブル・センサ6が対象者の身体に配置されるべき最適な場所を示す案内情報を提供する。案内情報は、例えば、看護人又は患者モニタにより使用されるデバイス又は病院コンピュータのような他の(外的な)エンティティに送付される情報であっても良く、その情報は、例えばウェアラブル・センサ6を配置する場所をユーザに指示するユーザ用命令として出力されるように、更に処理されてもよい。案内情報は、望まれるならば、上記の他のエンティティによって抽出されるように提供されても良い。
【0033】
最も大きく動く地点にウェアラブル・センサ6を配置した結果は、動き信号だけでなく導出されるバイタル・サイン信号においても改善された信号雑音比(SNR)となり、その結果最終的に、例えば運動アーチファクトに対する感度の低減に起因して、評価される呼吸速度及び/又は心拍数のような評価されるバイタル・サイン信号の高精度化をもたらす。
【0034】
有利な実施形態では、デバイス4はディスプレイ及び/又は拡声スピーカのようなユーザ・インタフェース43を有しても良く、ユーザ・インタフェースは案内情報を受信し、案内情報に基づいてユーザに決定された情報を指示する。ユーザ・インタフェース43は、例えば、決定された場所が画像の中で及び/又はテキスト形式で指示されるディスプレイを有しても良い。決定された場所は、例えば、対象者の身体の画像上での投影のように、ディスプレイ上に示されても良い。例えば、実際の対象者の画像が、或る画像として示され、或る画像の中では、例えば矢印により又は図形記号として、センサのために望まれる位置が指示されている。代替的に、位置が指示されている身体の全体的な(例えば図形)画像が示されても良く、或いは、インジケータ若しくはウェアラブル・センサ6の画像さえもが、例えば光又はレーザー・プロジェクタにより患者の身体上の選択された場所に投影されても良い。
【0035】
デバイスは、対象者関連データを取得する対象者データ入力部44を選択的に更に有していても良く、対象者関連データは、対象者の身体の様々な場所について、対象者の快適性(又は付け心地)を示す快適性レベル、及び/又は、個々の場所にウェアラブル・センサを配置する可能性を含む。対象者データ入力部44は、例えば病院の中央データベース5又は電子ヘルス・レコード又は一般的に何らかのルック・アップ・テーブルから、そのような対象者関連データを受信又は抽出するインターフェースであっても良い。対象者データ入力部44は、ユーザ及び/又は対象者が対象者関連データを入力することを許容する一種のユーザ・インターフェースであっても良い。そのような対象者関連データは、例えばウェアラブル・センサが対象者の身体に配置されるべき場所の情報であっても良いし、或いは、例えば傷又は傷跡又は包帯、又は対象者の何処かに配置される他の医療装置に起因して、配置できない場所の情報でさえあっても良い。更に、(個々の場所にウェアラブル・センサが配置された場合に、どの程度の心地良さ又は心地悪さとなるかを示す)快適性のレベルが提供されても良い。
【0036】
代替的に、アナライザ41は、センサの配置におけるそのような快適性レベル又は制約を、取得された画像データから決定するように構成される。例えば、傷、傷跡、包帯又はその他の器具を対象者が有している場所は、概して、画像処理方法を利用することにより検出されることが可能である。
【0037】
何れにせよ、案内出力部42は、ウェアラブル・センサの配置に関する最適な場所を、決定された1つ又は複数の場所の中から選択する場合に、運動の大きさ、追加的に快適性レベル又は配置制約を考慮して良い。従って、選択される「最適な」ソリューションは、運動の観点からは次善のソリューションであるかもしれないが、それでも従来の方法を上回る利点を提供する。測定された動きがウェアラブル・センサにとって小さすぎて、特定の患者に関してセンサの利用がアドバイスされないことも、起こり得る。
【0038】
別の実施形態では、撮像ユニット3は、対象者2又はユーザが対象者の身体における選択された場所にセンサ6を取り付けている場合に、画像データを取得するように構成される。これらの画像データは追加的な画像プロセッサ7に提供され、画像プロセッサは、取得された画像データに基づいて、センサ6が正しい選択された場所に配置されているか否かを検査する。センサ6が正しくない場所に在ることが検出された場合、センサ6の場所を正すために、例えばユーザ・インタフェース43によるテキスト警告又は音声信号のような対応するフィードバックが、対象者及び/又はユーザに速やかに与えられても良い。ここで、画像プロセッサ7は、デバイス4の一部分であっても良いし、或いは別個のエンティティ(又は存在)であっても良い。
【0039】
更に別の実施形態において、アナライザ41は、身体領域内の運動の強さを示すモーション・マップ、及び/又は、身体領域内の拍動性の強さを示す拍動性マップを生成することにより、取得した画像データを分析しても良い。モーション・マップ及び/又は拍動性マップは、呼吸及び/又は心拍により生じる最も大きな動きを示す、身体のうちの1つ以上の場所を決定するために使用されて良い。更に、案内出力部42は、モーション・マップにおける運動の最も強い地点、又は、拍動性マップにおける拍動の最も強い地点を、最適な場所として選択しても良い。モーション・マップは、一般に、様々な瞬間的な時点における対象物(例えば、画像特徴)の位置、速度及び加速度を表現しても良い。拍動性マップは、心拍により生じる血液量の変化を測定し、この場合において、拍動性は、取得された光吸収信号のAC/DC成分として決定される。
【0040】
図2は、本発明のセンサ位置案内方法100の一実施形態によるフローチャートを示す。第1ステップ101において、呼吸及び/又は心拍により生じる身体領域の動きを示す少なくとも対象者の身体領域の画像データが、取得される。第2ステップ102において、呼吸及び/又は心拍により生じる最大の動きを示す、身体領域のうちの1つ以上の場所を決定するために、取得された画像データが分析される。第3ステップ103において、決定された1つ以上の場所の中から最適な場所が運動の強さに基づいて選択される。第4ステップ104において、呼吸及び/又は心拍速度を監視するためのウェアラブル・センサが対象者の身体に配置されるべき最適な場所を示す案内情報が、提供される。
【0041】
図3は、本発明によるセンサ位置案内のためのシステム1’及び4’の別の実施形態の概略図を示し、この実施形態は、別個に及びその他の組み合わせで使用されても良い追加的な選択的な要素を有する。
【0042】
この実施形態では、システム1’は投影ユニット8を更に有する。案内情報に基づいて、例えばレーザー・ポインタ又はその他のプロジェクタのような投影ユニット8は、対象者の身体上の選択された場所に、インジケータ(例えば、光スポット、十字の印、矢印、ウェアラブル・センサの画像、又はその他の何らかのサイン)を投影する。この目的のため、投影ユニット8の投影方向は調節可能であり、対象者の身体の現在位置は既知であるべきであり、現在位置は撮像ユニット3により取得される画像から導出されることが可能である。対象者2又はユーザは、それを利用して、ウェアラブル・センサが最適に配置されるべき場所を直接的に見ることが可能である。レーザー・プロジェクタは、照準線、又はウェアラブル・センサを表す或る種の線を投影することが可能である。従って、ユーザは、対象者の画像に目を向けるのではなく、対象者に目を向けることが可能である。
【0043】
更に、デバイス4’は、以下の文献又は他の多くの文献に記述されているようなリモート光電脈波センサ(リモートPPG)を利用することにより、取得した画像データから、対象者の呼吸及び/又は心拍速度を決定するバイタル・サイン決定部45を有する:
Verkruysse et al., "Remote plethysmographic imaging using ambient light", Optics Express, 16(26), 22 December 2008, pp. 21434-21445。
【0044】
対象者についての決定された呼吸及び/又は心拍速度は、その後、呼吸及び/又は心拍速度により生じる最大の動きを示す身体領域の1つ以上の場所を決定するために、アナライザにより使用される。特に、その運動の分析により導出される呼吸及び/又は心拍速度が、リモートPPGを利用することにより画像データから導出される呼吸及び/又は心拍速度に対応するか否かが、検査される。速度が類似又は合致する場合、その運動は呼吸及び/又は心拍速度により生じていると考えられ、そうでなければ相違する。
【0045】
呼吸及び/又は心拍速度を導出する代わりに、別のリファレンス信号が、例えば対象者の身体に取り付けられる別のセンサ(例えば、パルス・オキシメータ、呼吸センサ等;図示せず)から取得されても良い。このリファレンス信号は、運動が呼吸及び/又は心拍により生じているか否かを検査する上記と同じ方法で、分析ユニットにより使用されることが可能である。
【0046】
更に別の実施形態では、ユーザ・インタフェース43は、所定の方法で、例えば所定の呼吸速度で呼吸するようにユーザを案内するために、呼吸ガイダンス信号を提供するために使用されても良い。この場合、呼吸速度は既知であり、その呼吸速度は、上述したように画像データにおける運動が呼吸により生じているか否かを分析ユニット41により検査するために使用されることが可能である。
【0047】
本発明は、ウェアラブル・センサが対象者の身体に取り付けられることになっている多くの様々な状況で適用されることが可能である。例えば、患者の特定の状況のための個別的な、患者の胸部又は腹部における可能な最良の場所に、加速度計に基づく呼吸モニタを、看護人又は介護専門家が配置することを支援しても良い。これは、最良の信号を提供し、欠落した又は不正確な呼吸速度に起因する誤ったアラームを潜在的に減らす。更に、応用分野は、周術期の状況、集中治療ユニット、及び病室内の患者の監視を含む。
【0048】
本発明は図面及び上記の記述により詳細に説明及び記述されてきたが、そのような説明及び記述は、例示的又は模範的であり、限定的ではないように解釈されるbできであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、請求項に係る発明を実施する当業者により理解され把握されることが可能である。
【0049】
特許請求の範囲において、「有する(comprising)」という言葉は他の要素又はステップを排除しておらず、「或る(“a” or “an”)」という不定冠詞的な用語は複数個尾を排除していない。単独の要素又は他のユニットが、請求項に列挙されている複数の事項の機能を充足しても良い。或る複数の事項が相互に異なる従属請求項で引用されているという単なるそれだけの事実は、これらの事項の組み合わせが有利に使用できないことを示してはいない。
【0050】
コンピュータ・プログラムは、他のハードウェアと一緒に又は他のハードウェアの一部として提供される光ストレージ媒体又はソリッド・ステート媒体のような適切な非一時的な媒体に保存/分散されても良いが、インターネット又はその他の有線若しくは無線の通信システムを介するような他の形態で分散されていても良い。
【0051】
特許請求の範囲における如何なる参照符号も、その範囲を限定するように解釈されるべきではない。
図1
図2
図3