特許第6885951号(P6885951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885951
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】ベローズ用内部軸受
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/00 20060101AFI20210603BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20210603BHJP
   F04B 53/14 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   F04B53/00 E
   F04B39/00 104C
   F04B39/00 103K
   F04B53/14 A
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-530722(P2018-530722)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2019-504240(P2019-504240A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】US2016067210
(87)【国際公開番号】WO2017106666
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年11月21日
(31)【優先権主張番号】62/269,524
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308025451
【氏名又は名称】グラコ ミネソタ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ローマン, ティモシー, エス.
(72)【発明者】
【氏名】クラファーキ, アンドリュー, ジェイ.
【審査官】 嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00879961(EP,A1)
【文献】 実開平06−047727(JP,U)
【文献】 特開昭59−175674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B39/00−39/16
F04B23/00−23/14
F04B53/00−53/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベローズチャンバと吸排チャンバとを取り囲むハウジングと、
第1部分が前記ベローズチャンバ内に延びるロッドと、
前記ハウジングに結合された第1端部と、前記ロッドに結合された第2端部とを有し、前記ロッドの第2部分を取り囲み、複数の折りたたみ部を備えるベローズと、
前記ベローズ内で前記ベローズと前記ロッドとの間に配設される軸受と、を備え、
前記ロッドに取り付けられるスリーブを更に備え、前記スリーブは、前記ロッドの一部を取り囲み、
前記軸受は、前記ベローズと前記スリーブとの間に配設され、前記スリーブに摺動可能に係合する、ことを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項2】
前記軸受は、前記ベローズの前記複数の折りたたみ部の1つと径方向に並んで配置されることを特徴とする請求項1に記載の往復動ポンプ。
【請求項3】
前記軸受は、スリットを有したスナップリングとして形成されることを特徴とする請求項1に記載の往復動ポンプ。
【請求項4】
前記軸受は、前記スリーブの外面の周りに延在することを特徴とする請求項に記載の往復動ポンプ。
【請求項5】
前記スリーブは、前記ベローズが前記スリーブに対して相対移動する際に、前記軸受に対して軸線方向に相対移動するように構成されることを特徴とする請求項に記載の往復動ポンプ。
【請求項6】
前記軸受は、耐摩耗性を有した材料からなることを特徴とする請求項1に記載の往復動ポンプ。
【請求項7】
前記耐摩耗性を有した材料は、熱可塑性物質からなることを特徴とする請求項に記載の往復動ポンプ。
【請求項8】
前記耐摩耗性を有した材料は、超高分子量ポリエチレンからなることを特徴とする請求項に記載の往復動ポンプ。
【請求項9】
ベローズチャンバと吸排チャンバとを取り囲むハウジングと、
第1部分が前記ベローズチャンバ内に延びるロッドと、
前記ロッドに取り付けられ、前記ロッドの一部を取り囲むスリーブと、
前記ハウジングに結合されると共に前記スリーブに結合され、前記スリーブの一部を取り囲み、複数の折りたたみ部を備えるベローズと、
前記ベローズと前記スリーブとの間に配設され、前記スリーブに摺動可能に係合する軸受と
を備えることを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項10】
前記スリーブは、前記ベローズが前記スリーブに対して相対移動する際に、前記軸受に対して軸線方向に相対移動するように構成されることを特徴とする請求項に記載の往復動ポンプ。
【請求項11】
前記軸受は、スリットを有したスナップリングとして形成されることを特徴とする請求項に記載の往復動ポンプ。
【請求項12】
前記軸受は、耐摩耗性を有した材料からなることを特徴とする請求項に記載の往復動ポンプ。
【請求項13】
前記耐摩耗性を有した材料は、熱可塑性物質からなることを特徴とする請求項12に記載の往復動ポンプ。
【請求項14】
前記耐摩耗性を有した材料は、超高分子量ポリエチレンからなることを特徴とする請求項13に記載の往復動ポンプ。
【請求項15】
ベローズチャンバと吸排チャンバとを取り囲むハウジングと、
第1部分が前記ベローズチャンバ内に延びるロッドと、
前記ロッドに取り付けられ、前記ロッドの一部を取り囲むスリーブと、
前記ベローズチャンバ内に設けられ、前記ハウジングに結合されると共に前記スリーブに結合され、前記スリーブの一部を取り囲み、複数の折りたたみ部を備えるベローズと、
前記ベローズが前記ロッド及び前記スリーブに接するのを防止するように配置される複数の軸受と
を備えることを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項16】
前記複数の軸受のそれぞれは、前記ベローズと前記スリーブとの間に配設され、前記スリーブに摺動可能に係合し、前記スリーブの外面の周りに延在し、前記スリーブに対して軸線方向に相対移動するように構成されることを特徴とする請求項15に記載の往復動ポンプ。
【請求項17】
前記スリーブの断面は、丸かど部のある丸かど形状を有し、
前記複数の軸受のそれぞれは、前記スリーブの丸かど形状の断面形状に適合するように構成されることを特徴とする請求項15に記載の往復動ポンプ。
【請求項18】
前記複数の軸受のそれぞれは、前記ベローズの内部空間に配置され、前記ベローズの前記複数の折りたたみ部の1つと径方向に並んで配置されることを特徴とする請求項15に記載の往復動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2015年12月18日付で出願された「ベローズ用内部軸受」と題する米国特許仮出願第62/269524号に基づき優先権を主張するものであり、当該米国特許仮出願における開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものである。
【0002】
本発明は、往復動ポンプに関するものであり、より具体的には、ベローズシールを有した往復動ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0003】
往復動ポンプにおいては、作業流体が、外部の空気などの別の流体に晒されるのを防止するため、ベローズを用いて非摺動の封止を形成する。往復動ポンプのポンプストロークが長くなるほど、ベローズに必要とされる非摺動の封止の距離も長くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より長いポンプストロークにベローズが適応するのに従い、ベローズは、より変形しやすくなり、最終的に、収縮した状態では不安定になる。このため、ベローズがポンプロッドに接するようになるまで、ベローズによじれが生じたり、曲げが生じたりする可能性がある。ポンプの通常作動の際のベローズとポンプロッドとの接触により、ベローズが摩滅して穴が開く可能性があり、ベローズに不具合が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
往復動ポンプは、ハウジングと、ロッドと、ベローズと、軸受とを備えている。ハウジングは、ベローズチャンバと吸排チャンバとを取り囲む。ロッドの第1部分は、ベローズチャンバ内に延びる。ベローズは、ハウジングに結合された第1端部と、ロッドに結合された第2端部とを備える。ベローズは、ロッドの第2部分を取り囲み、複数の折りたたみ部を備える。軸受は、ベローズ内でベローズとロッドとの間に配設される。
【0006】
往復動ポンプは、ハウジングと、ロッドと、スリーブと、ベローズと、軸受とを備えている。ハウジングは、ベローズチャンバと吸排チャンバとを取り囲む。ロッドの第1部分は、ベローズチャンバ内に延びる。スリーブは、ロッドに取り付けられ、ロッドの一部を取り囲む。ベローズは、ハウジングに結合されると共にスリーブに結合される。ベローズは、スリーブの一部を取り囲み、複数の折りたたみ部を備える。軸受は、ベローズとスリーブとの間に配設され、スリーブに摺動可能に係合する。
【0007】
往復動ポンプは、ハウジングと、ロッドと、スリーブと、ベローズと、複数の軸受とを備えている。ハウジングは、ベローズチャンバと吸排チャンバとを取り囲む。ロッドの第1部分は、ベローズチャンバ内に延びる。スリーブは、ロッドに取り付けられ、ロッドの一部を取り囲む。ベローズは、ハウジングに結合されると共にスリーブに結合される。ベローズは、スリーブの一部を取り囲み、複数の折りたたみ部を備える。複数の軸受は、ベローズがロッド及びスリーブに接するのを防止するように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ベローズ及びリリーフバルブを有する往復動ポンプの断面図である。
図2】ベローズ及びベローズ内に配設された軸受を有する往復動ポンプの一部を示す断面図である。
図3】往復動ポンプのスリーブの斜視図である。
図4】往復動ポンプの軸受の斜視図である。
図5】往復動ポンプのシールの斜視図である。
図6】3つの丸かど部のある断面形状を有した、図3の6−6線に沿うスリーブの断面図である。
図7】2つの丸かど部のある断面形状を有したスリーブの断面図である。
図8】4つの丸かど部のある断面形状を有したスリーブの断面図である。
図9】ベローズ内に配設された軸受を有する往復動ポンプの要部として、図2の9−9線で囲む部分を示す断面図である。
図10A】軸受の斜視図である。
図10B図10Aの10−10線に沿う軸受の断面図である。
図11】リリーフバルブの断面図である。
図12】リリーフバルブの分解斜視図である。
図13A】リリーフバルブの円錐状バルブエレメントの斜視図である。
図13B】円錐状バルブエレメントを有したリリーフバルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ポンプ(図1及び図2)]
図1及び図2は、往復動ポンプ10の断面図である。以下、図1及び図2について、まとめて説明する。
【0010】
往復動ポンプ10は、ハウジング12、ベローズチャンバ14を有するハウジング12の上部13、吸排チャンバ16を有するハウジング12の下部15、シリンダマニホールド17、ピストン18、スロートシール19、流出口20A、流出口20B、流入口22A、流入口22B、導管24、段部28と小径部29とを有するロッド26、スリーブ30、スリーブ30の外面32、カラー34、内部空間38と折りたたみ部40とを有するベローズ36、ナット42、軸受44、開口部48と通路50とを有するエンドキャップ46、軸受54、シール56、及びリリーフバルブ58を備えている。また、図1には、往復動ポンプ10を通る流体の流動Fも示されている。
【0011】
往復動ポンプ10は、塗料及びそれ以外の流体の少なくとも一方を送給するように構成されたベローズ式循環ポンプ機構を備えている。なお、本実施形態では、一例として塗料が用いられているが、これは単なる一例に過ぎず、塗料に代えて別の流体(水、オイル、溶剤など)を送給することも可能であると理解すべきである。非限定的な一実施形態において、往復動ポンプ10は、先行技術で知られている4ボールポンプのような、4ボール複動式ポンプである。非限定的な一実施形態において、往復動ポンプ10は、「密閉4ボール下段部」修理/パーツマニュアル(「密閉4ボール下段部」パーツ番号333022B、改訂B、グラコInc.、2016年5月)に記載されたポンプ機構を備えることが可能であり、参照によりその全てがここに組み入れられる。非限定的な別の実施形態において、往復動ポンプ10は、単動式ポンプ、またはベローズ付きもしくはベローズなしの別の形式の複動式ポンプとすることが可能である。
【0012】
ハウジング12は、硬質で、概ね円筒状の形状を有して封じられた管状部材となっている。ハウジング12は、鋼、アルミニウム、またはそれ以外の金属材料といった材料で形成することが可能である。ハウジング12の上部13は、ハウジング12の上端部分またはその近傍に位置するハウジング12の上側部分である。ベローズチャンバ14は、ハウジング12の上部13内の部屋である(図1に示すとおり)。ハウジング12の下部15は、ハウジング12の下端部分またはその近傍に位置するハウジング12の下側部分である。吸排チャンバ16は、ハウジング12の下部15内の部屋である(図1に示すとおり)。吸排チャンバ16は、当該吸排チャンバ16内の作業流体の調整及び移動を行うように構成される。シリンダマニホールド17は、当該シリンダマニホールド17内の作業流体の調整及び移動を行うために、硬質材料からなる部材によって構成される。ピストン18は、様々な組立部品からなり、吸排チャンバ16を介して作業流体の送給を行うように構成される。スロートシール19は、当該スロートシール19を越えて流体が移動しないように構成された高圧シールである。流出口20Aは、ハウジング12の上部13から延設された中空形状の管路であり、この流出口20Aを介し、ハウジング12から導管24へと流体が移動するように構成される。流出口20Bは、ハウジング12から延設された中空形状の管路であり、ハウジング12からハウジング12の外部へと流体が移動するように構成される。流入口22Aは、ハウジング12の上部13から延設された中空形状の管路であり、ハウジング12の外部からハウジング12のベローズチャンバ14内へと流体が移動するように構成される。流入口22Bは、ハウジング12から延設された中空形状の管路であり、導管24からハウジング12内へと流体が移動するように構成される。導管24は、中空の管路である。
【0013】
ロッド26は、中実の棒状部材である。ロッド26の上端部近傍には、当該ロッド26に段差として形成された段部28を有する。また、ロッド26は、小径部29を有しており、この小径部29は、これ以外のロッド26の部分の径より内側に入り込んだ径、即ち小さな径を有したロッド16の部位である。非限定的な一実施形態において、小径部29は、段部28の上方に位置する(図2に示すとおり)。スリーブ30は、硬質材料からなる円筒状、または管状部材である。外面32は、スリーブ30の外周面である。カラー34は、硬質材料からなるリングであって、当該カラー34をロッド26に取り付けるための形状または手段を有している。ベローズ36は、複数の折りたたみ部40を有した可撓性スリーブであり、これら折りたたみ部40は、ベローズ36の表面に沿って、山折り部と谷折り部とを交互に有することにより、ハウジング12のベローズチャンバ14内で、ベローズ36が伸縮できるようになっている。非限定的な一実施形態において、ベローズ36の素材は、ポリテトラフルオロエチレン、別のタイプのテトラフルオロエチレン、またはそれ以外の、耐摩耗性を有した材料とすることが可能である。ベローズ36の断面形状(図1及び図2には示さず)は、円形形状、または複数の丸かど部を有した丸かど形状とすることができる。
【0014】
ナット42は、硬質材料からなり、ネジ山が設けられたリング状部材である。軸受44は、超高分子量ポリエチレン、またはそれ以外のタイプの熱可塑性物質及びポリエチレンの少なくとも一方で形成される。エンドキャップ46は、硬質材料からなるディスクであり、当該エンドキャップ46に形成された様々な開口及び孔を有している。また、エンドキャップ46は、開口部48及び通路50を備える。開口部48は、エンドキャップ46を貫通する孔または通路であり、エンドキャップ46の底面からエンドキャップ46の上面にかけて上下方向(図2における上下の方向)に延設されている。通路50は、流体が移動する通路である。軸受54は、耐摩耗性のある表面を有した、硬質材料からなるリングである。シール56は、柔軟なシール面を有したリング状部材である。リリーフバルブ58は、往復動ポンプ10に対して出入りする流体の流れを調整するバルブである。
【0015】
流動Fは、往復動ポンプ10を通る流体の経路を示している。非限定的な一実施形態において、流動Fの流体は、塗料、オイル、ガス、水、作動液、溶剤、洗剤、またはそれ以外の産業用流体といった、気体または液体とすることができる。
【0016】
往復動ポンプ10は、モータに連結され、当該モータで駆動することができる。非限定的な一実施形態において、往復動ポンプ10は、空気モータ、油圧モータ、または電動モータに連結することができる。ハウジング12のベローズチャンバ14及び吸排チャンバ16は、ハウジング12の一部によって隔てられている。ピストン18は、ロッド26の下端部に取り付けられている。スロートシール19は、ロッド26がスロートシール19に対して相対的に上下動可能となるようにロッド26に装着され、ロッド26との間の封止を行う。また、スロートシール19は、ハウジング12の下部15の上端部に固定される。流出口20Aは、ハウジング12のベローズチャンバ14に連通している。また、流出口20Aは、導管24を介して流入口22Bに連通しており、導管24は、流出口20Aから流入口22Bへと流体を移動させるために、流出口20Aからハウジング12の流入口22Bまで延設されている。流入口22Aは、ハウジング12のベローズチャンバ14に連通している。また、流入口22Bは、ハウジング12の吸排チャンバ16に連通している。
【0017】
ロッド26は、エンドキャップ46の開口部48を貫通し、ハウジング12のベローズチャンバ14内に延びている。また、ロッド26の一部は、吸排チャンバ16内にも延びている。ロッド26は、丸かど部を有した断面形状により、エンドキャップ46内の軸受54と相互に作用することで、ロッド26と軸受54との間での相対的な回転が防止されるようになっている。スリーブ30は、当該スリーブ30がロッド26の一部を取り囲むようにして、ロッド26に結合されている。スリーブ30の一部は、ロッド26の段部28に当接している。スリーブ30は、ネジ止め式固定部材、ボルト、クリップ、または、それ以外の形式の機械的固定部材を用い、ロッド26に固定される。スリーブ30は、ロッド26の上から取り付けられ、ロッド26の段部28に係止した状態となっている。カラー34は、ロッド26の段部28にスリーブ30を当接させて保持した状態で、カラー34が、スリーブ30をロッド26に固定するようにして、スリーブ30の上方でロッド26に取り付けられている。また、カラー34は、ロッド26の小径部29に取り付けられる。非限定的な一実施形態において、カラー34は、ネジ止め機構、固定具、接着剤、または、それ以外で公知の取付手段を用い、ロッド26に取り付けられる。ロッド26及びスリーブ30は、軸受54を貫通して延設される。
【0018】
ベローズ36は、ナット42により、ロッド26及びスリーブ30に固定されており、ナット42が、ベローズ36の下端部をスリーブ30に押圧して密着させることにより、スリーブ30とベローズ36との間の相対的な回転運動が防止されるようになっている。また、ベローズ36は、エンドキャップ46とハウジング12の上部13との間に固定され、ベローズ36とハウジング12との間の相対的な回転運動が防止されるようになっている。軸受44は、ベローズ36内のスリーブ30に設けられており、それぞれの軸受44が、ベローズ36の折りたたみ部の1つと径方向に並んで配置されている。
【0019】
エンドキャップ46は、ハウジング12の上部13に配置されて固定されている。エンドキャップ46の一部を通過する通路50は、ベローズ36の内部空間38をリリーフバルブ58に連通する。エンドキャップ46とスリーブ30との間に介装されている軸受54は、スリーブ30に摺動可能に係合しており、ロッド26及びスリーブ30が、ハウジング12に対して出入りし、移動できるようになっている。軸受54は、エンドキャップ46の開口部48に密着して嵌合されている。軸受54の形状は、エンドキャップ46の開口部48の形状に適合するものとなっている。シール56は、エンドキャップ46とスリーブ30(またはロッド26)との間に介装されており、シール56により、ロッド26とエンドキャップ46との間での流体の移動を防止する。リリーフバルブ58は、エンドキャップ46に取り付けられており、螺合によりエンドキャップ46に組み付け可能となっている。また、リリーフバルブ58は、エンドキャップ46の通路50に連通する。
【0020】
非限定的な一実施形態において、往復動ポンプ10は、ベローズ36の第1端部をスリーブ30の第1端部に取り付けることによって組み立てが行われる。ベローズ36の第1端部は、ナット42を用い、ナット42がベローズ36の第1端部をスリーブ30に押し付けて密着させるようにして、ベローズ36をスリーブ30に固定することにより、スリーブ30の第1端部に取り付けられる。ベローズ36を取り付けたスリーブ30は、上方からロッド26の一部に装着され、ロッド26に固定される。このとき、スリーブ30がロッド26の段部28に当接するように、スリーブ30がロッド26に装着される。カラー34が、ロッド26の段部28に対してスリーブ30の一部を押し付けた状態で保持するようにして、スリーブ30の上方で、ロッド26に取り付けられる。スリーブ30は、ネジ止め式固定部材、ボルト、またはクリップを用いて、スリーブ30をロッド26に取り付けることにより、ロッド26に固定される。スリーブ30及びロッド26は、往復動ポンプ10のハウジング12内に挿入される。スリーブ30及びロッド26が組み付けられたエンドキャップ46は、少なくとも1つのネジ止め式固定部材を用い、往復動ポンプ10のハウジング12に固定される。ベローズ36の第2端部は、往復動ポンプ10のハウジング12のエンドキャップ46に取り付けられる。エンドキャップ46は、ネジ止め式固定部材を用いて往復動ポンプ10のハウジング12に固定される。
【0021】
往復動ポンプ10の作動の際、ロッド26は、ピストン28と共に、ハウジング12内で上下に往復動するように駆動される。ロッド26及びスリーブ30は、ハウジング12に対し、スリーブ30がロッド26と共に相対運動すると共に、スリーブ30がロッド26に対して静止した状態を維持するように取り付けられている。ハウジング12にはスロートシール19が取り付けられており、ベローズチャンバ14と吸排チャンバ16との間の流体の移動がスロートシール19によって規制されるようになっている。軸受54及びシール56は、ロッド26がハウジング12に対して出入りして往復動する際に、ロッド26とエンドキャップ46との間の封止を行う。ベローズ36とスリーブ30との結合により、スリーブ30とベローズ36との結合部分を介して作業流体がベローズ36の内部空間38に入り込むのを防止可能な固定的な封止が形成される。ベローズ36は、スリーブ30との間で非摺動の封止を形成し、往復動ポンプ10の作業流体が外部の空気に晒されるのを防止する。ロッド26が、ハウジング12内に向けて移動する際には、ベローズ36が伸張し、ベローズ36の長さが増大する。また、ロッド26が、ハウジング12の外に向けて移動する際には、ベローズ36が収縮し、ベローズ36の長さが減少する。
【0022】
スリーブ30を用いることにより、ロッド26を単一部材とすることが可能となり、ロッド26の強度及び信頼性を向上させることができる。このような往復動ポンプ10の構成により、ベローズ36の交換のために、往復動ポンプ10を完全に分解する必要がなくなる。エンドキャップ46とカラー34とをハウジング12から取り外せば、往復動ポンプ10の上端から、ベローズ36と共にスリーブ30を引き出すことができる。
【0023】
スリーブ30のもう1つの利点は、ロッド26を取り外さずに、往復動ポンプ10からスリーブ30とベローズ36とを取り外すことができることである。例えば、現場でベローズ36に不具合が生じた場合、ユーザは、カラー34を取り外し、エンドキャップ46を取り外して、スリーブ30とベローズ36とを往復動ポンプ10から取り外すことができる。その後、スリーブ30のベローズ36を交換してからロッド26に装着し、往復動ポンプ10に組み込む。後は、逆の手順で往復動ポンプ10を組み立てればよい。このように、ロッド26を取り外す必要がないので、ハウジング12の吸排チャンバ16の信頼性を低下させる可能性のあるロッド及びピストンシールへの接触は必要なくなることになる。
【0024】
[丸かど部を有するスリーブ(図3図8)]
図3は、スリーブ30の一実施形態を示す斜視図であって、スリーブ30は、ロッド軸線Aの周囲に配置された3つの丸かど部60を有した丸かど形状を有している。丸かど部60は、スリーブ30の製造工程で形成することが可能である。丸かど部60は、スリーブ30及び丸かど部60が単一部材となるように形成することが可能であるが、スリーブ30に丸かど部60を取り付けまたは固定するように構成することも可能である。スリーブ30の断面形状は、例えば、2つ、3つ、4つ、または更に多くの丸かど部というように、少なくとも2つの丸かど部を有した丸かど形状とすることができる(図6図8も参照)。
【0025】
軸受54、シール56、及びエンドキャップ46の開口部48は、スリーブ30の断面形状における丸かど形状に適合するように構成される。軸受54が、エンドキャップ46の開口部48に密着して嵌合し、スリーブ30が、軸受54内に密着して係合することにより、エンドキャップ46、軸受54、及びスリーブ30は、ハウジング12に対するスリーブ30の相対回転を防止するように構成される。
【0026】
既存の往復動ポンプの場合、作動時または組立時に、ポンプハウジングに対してポンプロッドが相対回転する可能性があり、これによって構造的に、または機能面で、ベローズを劣化させるおそれがある。既存の解決策は、平坦な側面及びコーナ径の小さいD字状断面のロッドを使用するものであるが、これは製造が困難であると共に、封止が困難になる可能性がある。
【0027】
スリーブ30の丸かど形状、及びこれに対応する軸受54、シール56、及びエンドキャップ46の開口部48の形状は、ハウジング12に対するスリーブ30の相対回転を防止するための回転防止機構を提供する。スリーブ30は、ハウジング12のエンドキャップ46に係合し、往復動ポンプ10の組立時または作動時において、スリーブ30が回転しないようにする。スリーブ30の丸かど形状は、往復動ポンプ10及びシール56が適正に機能する上で必要となる高い精度及び良好な表面仕上げをもって、スリーブ30に容易に研削して形成することが可能である。特に、3つの丸かど部を有した丸かど形状は、往復動ポンプ10におけるシール56など、往復動ベローズポンプ内の補助シールに適合する最小限のコーナ径をスリーブ30に確保しつつ、その3つの丸かど部により、内在する特性として芯出し特性をスリーブ30に与える。また、このスリーブ30の内在する芯出し特性は、ロッド26及びスリーブ30が丸かど形状であることにより、ベローズ36がロッド26及びハウジング12に対して自動的に芯出しされるという点で、ベローズ36にも及んでいる。
【0028】
回転防止の利点は、シール56によって、エンドキャップ46との間、及びロッド26との間に、封止された境界面が形成され、エンドキャップ46やロッド26との境界面を介して、流体がハウジング12の外に流出するのを防止することができることである。また、スリーブ30の丸かど形状の断面により、ロッド26及びスリーブ30の少なくとも一方をD字状断面とした場合に比べ、スリーブ30とエンドキャップ46との間に、より優れた封止を形成することが可能となるだけでなく、往復動ポンプ10のどの構成要素にもダメージを生じない状態で、ロッド26とハウジング12との間で、より大きなトルクを加えることが可能となる。
【0029】
図4は、往復動ポンプ10の軸受54の斜視図である。軸受54は、スリーブ30の丸かど形状に適合するように構成される。図4において、軸受54は、3つの丸かど部62を有して示されている。非限定的な別の実施形態として、軸受54は、2つ、4つ、または更に多くの丸かど部というように、3つより多い、または少ない丸かど部62を有した断面形状とすることが可能である。
【0030】
図5は、往復動ポンプ10のシール56の斜視図である。シール56は、スリーブ30の丸かど形状に適合するように構成される。図5において、シール56は、3つの丸かど部64を有して示されている。非限定的な別の実施形態として、シール56は、2つ、4つ、または更に多くの丸かど部というように、3つより多い、または少ない丸かど部64を有した断面形状とすることが可能である。
【0031】
既存のポンプの場合、ロッド及びこれに対応するシールは、ロッドとシールとの間で封止を行うのが難しい小さいコーナ径を有している。スリーブ30及びシール56の丸かど形状により、スリーブ30の丸かど部60の丸いコーナ外周面にシール56を適合させることが可能となり、既存のシール構造よりも確実な封止を、スリーブ30とシール56との間に得ることが可能となる。
【0032】
図6は、図3の6−6線に沿うスリーブ30の断面図である。スリーブ30は、3つの丸かど部60がある丸かど形状の断面を有している。丸かど部60は、スリーブ30を機械加工または製造する際に、スリーブ30と一体に形成される。非限定的な別の実施形態として、丸かど部60は、スリーブ30に取り付けるようにすることが可能である。上述したように、スリーブ30及びシール56の丸かど形状により、スリーブ30の丸かど部60の丸いコーナ外周面にシール56を適合させることが可能となり、スリーブ30とシール56との間に、確実な封止を得ることが可能となる。更に、スリーブ30の3つの丸かど部を有した丸かど形状は、往復動ポンプ10におけるシール56などの補助シールに適合する最小限のコーナ径を確保しつつ、内在する特性として芯出し特性をスリーブ30に与える。
【0033】
図7は、スリーブ30’の断面図である。スリーブ30’は、2つの丸かど部60’のある丸かど形状の断面を有している。2つの丸かど部60’を有して構成されるスリーブ30’は、ハウジング12のエンドキャップ46に係合し、往復動ポンプ10の組立時及び作動時に、スリーブ30’及びロッド26が回転しないようにする。
【0034】
図8は、スリーブ30”の断面図である。スリーブ30”は、4つの丸かど部60”のある丸かど形状の断面を有している。4つの丸かど部60”を有して構成されるスリーブ30”は、ハウジング12のエンドキャップ46に係合し、往復動ポンプ10の組立時及び作動時に、スリーブ30”及びロッド26が回転しないようにする。
【0035】
[軸受(図9図10A、及び図10B)]
図9は、図2の9−9線で囲んだ往復動ポンプ10の要部の断面図である。図9には、ハウジング12、ロッド26、スリーブ30、スリーブ30の外面32、ベローズ36、ベローズ36の内部空間38、折りたたみ部40、ナット42、及び軸受44が示されている。
【0036】
軸受44は、ベローズ36の内部空間38において、ベローズ36とスリーブ30との間に介装されている。軸受44は、スリーブ30の外面32の周囲に延在し、ベローズ36の折りたたみ部40と径方向で並んだ位置にあって、例えば、ロッド軸線Aから径方向に見て並んだ位置に配置される。軸受44は、スリーブ30に摺動可能に係合し、ベローズ36がスリーブ30に対して相対移動する際には、矢印Rで示すように、スリーブ30が軸受44に対して軸線方向に相対移動できるようになっている。例えば、ベローズ36が伸縮する際、折りたたみ部40のそれぞれは、ロッド26及びスリーブ30に対して軸線方向に相対移動する。ベローズ36が伸縮する際には、軸受44のそれぞれが折りたたみ部40の1つと径方向に並んで位置した状態で、軸受44のそれぞれが折りたたみ部40と共に移動する。
【0037】
軸受44は、ベローズ36が伸縮する際に、ベローズ36がロッド26に接触するのを防止するために設けられる。往復動ポンプ10の作動中、軸受44は、ロッド26上を上下動し、ベローズ36を支持すると共に、よじれたり異常変形したりしない状態にベローズ36を保持する。ベローズ36がよじれたり異常変形したりするのを防止することにより、ベローズ36を損傷する可能性のあるスリーブ30との接触に至らないようにベローズ36が保護される。ベローズ36の損傷を防止することにより、作業流体がベローズ36の内部空間に入り込むのを防止して、往復動ポンプ10に故障が生じるのを防止することができる。
【0038】
往復動ポンプ10における軸受44の数は、1または複数とすることができる。非限定的な一実施形態において、軸受44は、ベローズ36の内部空間38に沿って、互いに概ね等間隔で配置することが可能である。非限定的な別の実施形態として、軸受44は、ベローズ36及び往復動ポンプ10の長さや作動特性に対応し、均一な間隔パターンまたは不均一な間隔パターンで配置することが可能である。
【0039】
図10Aは、3つの丸かど部を有したスリーブ30に適合するように構成された軸受44の一実施形態を示す斜視図である。また、図10Bは、図10Aの10−10線に沿う軸受44の断面図である。以下、図10A及び図10Bについて、まとめて説明する。
【0040】
軸受44は、スナップリングであって、スリット66、隆起部68、及び内周面70を備えている。スリット66は、軸受44における切れ目の部分である。スリット66は、軸受44に形成された斜めの切れ目を含む。非限定的な別の実施形態として、スリット66は、傾斜した直線以外に、湾曲形状、ジグザグ形状、鋸歯状形状、またはそのほかの幾何学的形状といった面形状を有することも可能である。隆起部68は、軸受44の概ね径方向外方に延設された、軸受44の薄板状の部分である。隆起部68は、軸受44の一部として一体形成することが可能であり、また、軸受44に取り付けるようにすることも可能である。
【0041】
軸受44の内周面70は、スリーブ30の丸かど形状に適合するように形成された断面形状を有する軸受44の内側の面である。軸受44の内周面70の断面形状は、3つの丸かど部を有する丸かど形状とすることができる。非限定的な別の実施形態として、軸受44の内周面70の断面形状は、2つ、4つ、または更に多くの丸かど部を有した丸かど形状とすることができる。非限定的な更に別の実施形態として、軸受44の内周面70の断面形状は、例えば、円形などのように、丸かど形状以外の任意の形状とすることも可能である。本実施形態の内周面70の場合、軸受44の内周面70に、スリーブ30の3つの丸かど部を有した丸かど形状との3つの当接点が形成され、丸かど形状とされた内周面70の形状を変えずに、軸受44の軸線の位置が維持される。このような構成により、ロッド26及びスリーブ30の少なくとも一方と同軸状に軸受44を配置させることになる。
【0042】
スリット66により、軸受44の組み付けの際に、軸受44をベローズ36内に挿入することができるように、軸受44を変形させることが可能となる。スリット66により、軸受44の一部が分かれて内側に曲げることができるようになる。ベローズ36内への軸受44の組み付けの際、軸受44を内側に曲げることによって、軸受44の径を減少させる。軸受44が内側に曲げられているので、軸受44の有効径は減少している。減少した径の状態で、軸受44がベローズ36内に挿入される。ベローズ36の折りたたみ部40の1つと横並びになった時点で、軸受44の内側への曲げを解除し、軸受44の有効径を増大させる。軸受44の径が増大すると、軸受44は、ベローズ36の折りたたみ部40の1つに係止する。軸受44がベローズ36の折りたたみ部40の1つに係止するときには、隆起部68が、ベローズ36の折りたたみ部40の1つに入り込む。隆起部68がベローズ36の折りたたみ部40の1つに入り込んだ状態となることより、軸受44は、ベローズ36の折りたたみ部40の1つに対する所定位置で保持され、軸受44と折りたたみ部40との間の軸線方向の相対変位が防止される。ベローズ36が、ロッド26及びスリーブ30に沿って伸縮する際、軸受44は、ベローズ36の折りたたみ部40の1つと共に移動し、ベローズ36とスリーブ30との接触が防止される。
【0043】
非限定的なもう1つの実施形態として、軸受44は、ベローズ36の折りたたみ部の中に設けられた専用の受容溝を用いて、ベローズ36と接続することが可能である。この専用の受容溝は、軸受44を受容する溝を有したスリーブ状カラーによって設けることが可能である。専用受容溝の部材は、ベローズ36内に軸受44を組み込む前に、ベローズ36の折りたたみ部40内に、当該折りたたみ部40に沿って配置することができる。
【0044】
[リリーフバルブ(図11図12図13A、及び図13B)]
図11は、リリーフバルブ58の断面図である。また、図12は、リリーフバルブ58の分解斜視図である。以下、図11及び図12について、まとめて説明する。ここで、リリーフバルブ58は、往復動ポンプ10と共に用いられるものとして説明するが、非限定的な別の実施形態として、リリーフバルブ58は、ダイヤフラムポンプのような別の形式のポンプや、それ以外の静的に密封された組立体と共に用いることが可能である。
【0045】
リリーフバルブ58は、ハウジング72、流入口74、流出口76、第1チャンバ78、第2チャンバ80、通路81、側路82、第1バルブシート84、第2バルブシート86、バネ付勢チェックバルブ素子90とバネ92とを有した第1バルブエレメント88、及びバール96Aとボール96Bとを有した第2バルブエレメント94を備える。
【0046】
ハウジング72は、概ね円筒状の部材であり、第1チャンバ78、第2チャンバ80、流入口74、及び流出口76を備える。流入口74及び流出口76は、ハウジング72から外方に向けて延設された硬質材料からなる管状部分である。流入口74及び流出口76は、いずれも、固定または取付を行うための、螺合機構またはそれ以外の機構を備えることが可能である。第1チャンバ78及び第2チャンバ80は、液体または気体などの流体の移動を行うために、ハウジング72内に形成された部屋である。通路81は、ハウジング72の一部を通って延設された流体用通路である。側路82は、第2チャンバ80の壁に沿って、当該壁に形成されたスリット、切り欠き、または通路である。本実施形態において、第1バルブシート84及び第2バルブシート86は、シール面を有したOリングである。第1バルブエレメント88は、バネ付勢チェックバルブ素子90と、バネ92とを有する。バネ付勢チェックバルブ素子90は、バネ92に結合されたボールバルブ素子である。第2バルブエレメント94は、プラスチックのような浮揚性の高い素材からなるバール96A及びボール96Bを有する。非限定的な別の実施形態として、第2バルブエレメント94は、中空のボール、楕円体、円錐体、円筒体、またはそれ以外の形状の部材を1以上備えることが可能である。
【0047】
リリーフバルブ58の流入口74は、ハウジング12のエンドキャップ46に取り付けられ、エンドキャップ46内の通路50を介し、ベローズ36の内部空間38に連通している。第1チャンバ78は、第1バルブエレメント88及び第1バルブシート84を収容し、流入口74に連通すると共に、第2チャンバ80に連通する。第2チャンバ80は、第2バルブエレメント94及び第2バルブシート86を収容し、流出口76に連通すると共に、第1チャンバ78に連通する。通路81は、第1チャンバ78と第2チャンバ80とを連通させる。側路82は、第2チャンバ80の壁の一部に沿って延設される。第1バルブシート84は、第2チャンバ80とは反対側の方の第1チャンバ78の端部に配置され、ハウジング72内の、流入口74と第1バルブエレメント88との間に配設されている。第1バルブシート84は、第1バルブエレメント88が第1バルブシート84に接する状態となったときに、第1バルブエレメント88との間で封止を形成するように構成された形状を有している。
【0048】
第2バルブシート86は、第1チャンバ78とは反対側となる第2チャンバ80の端部に配置され、ハウジング72内の、流出口76と第2バルブエレメント94との間に配設されている。第2バルブシート86は、第2バルブエレメント94が第2バルブシート86に接する状態となったときに、第2バルブエレメント94との間で封止を形成するように構成された形状を有している。バネ付勢チェックバルブ素子90は、第1チャンバ78内に配置される。第1バルブエレメント88のバネ92は、第1バルブシート84に向けてバネ付勢チェックバルブ素子90を付勢し、第1バルブシート84とは反対側となる第1チャンバ78の端部において、ハウジング72に結合されている。第2バルブエレメント94は、第2チャンバ80内に配設され、第2チャンバ80内で支障なく移動することができるように、第2チャンバ80内に収容されている。第2バルブエレメント94は、ハウジング72により、第2チャンバ80の中心軸線に対応する位置に配置されるようになっている。
【0049】
既存のポンプの場合、ベローズは、非摺動の封止を形成して、作業流体が外の空気に晒されないようにするために用いられる。好ましくない流体の漏洩を防止するため、補助シールを用い、ベローズで取り囲まれるポンプロッドの封止を行うことが可能である。しかしながら、補助シールは、ベローズの後部を封止し、ベローズが伸縮する際にベローズが内部の空気を出し入れすることはできない。これにより、ベローズに繰り返しの疲労や変形を引き起こす可能性がある。スクリーンまたは網を設けた単純な通気孔をベローズと補助シールとの間に設けた場合、この通気孔を介して空気が流入可能になると共に、作業流体が通気孔を介して流出する可能性があり、ベローズが破損した場合には、ポンプが作動を継続できなくなってしまう。
【0050】
バネ付勢チェックバルブ素子90を有した第1バルブエレメント88は、流体がベローズ36の内部空間から出て、バネ付勢チェックバルブ素子90を通過できるようにする一方で、流体がリリーフバルブ58を通ってベローズ36の内部空間内に入り込むのを防止することができるように構成されている。また、バネ付勢チェックバルブ素子90を有した第1バルブエレメント88は、実質的に大気圧を上回ろうとするベローズ36内の圧力を、ベローズ36の外に逃がして、往復動ポンプ10の通常の作動中に、ベローズ36の内部空間38が加圧されることがないようにする。ベローズチャンバ14内の圧力が大気圧を下回る場合には、第1バルブエレメント88を第1バルブシート84に押し付けた状態に維持することにより、ベローズ36が破損した後、第1バルブエレメント88によってポンプ作動が維持される。ベローズ36の内部空間38は、往復動ポンプ10の吸入動作により、ベローズ36に不具合がある間は、大気圧より低下した圧力となる可能性がある。
【0051】
第2バルブエレメント94は、空気などの低粘度の流体を、リリーフバルブ58から逃がすことができるようにするために用いられるが、往復動ポンプ10から流出しようとしてリリーフバルブ58に流入する作業流体の場合には、作業流体中で第2バルブエレメント94が浮き上がってバルブシート86に押し付けられる。このため、リリーフバルブ58からの液体の流出は遮断され、流体は、ベローズ36の内部空間38内から出ることができなくなる。但し、第2バルブエレメント94は、第2バルブエレメント94より高密度の流体だけに持ち上げられるので、第2チャンバ80内に液体が存在する場合だけ、遮断がなされ、即ち閉じることになる。このような構成により、第1チャンバ78のバネ付勢チェックバルブ素子90が、ベローズ36の内部空間38から空気を排出させることが可能となり、ベローズ36に不具合が生じた場合は、第2バルブエレメント94により、作業流体がリリーフバルブ58から流出するのを防止することが可能となる。
【0052】
非限定的な一実施形態において、リリーフバルブ58の第2バルブエレメント94は、ボール96A及びボール96Bのように、2つの中空のプラスチック製ボールとすることが可能である。非限定的な別の実施形態において、第2バルブエレメント94の数、大きさ、形状、及び素材は、必要とされる浮力や流動特性に応じて選定することができる。中空のプラスチック製ボールの特徴の一つは、リリーフバルブ58の第1バルブエレメント88を介してベローズ36から空気を排出しているときに問題を生じる可能性のある液体が存在する場合に、リリーフバルブ58内で浮揚して封止を行う程度に極めて軽量なものとして構成することができる点にある。排出している空気が急速に移動すると、ボール96A及びボール96Bが持ち上がり、第2バルブシート86に押し付けられて封止がなされ、空気を排出することができなくなる可能性がある。第2バルブエレメント94を持ち上げて第2バルブシート86に当接させる可能性のある、このような空気の排出の際の問題に対応するため、ハウジング72に形成された側路82により、第2バルブエレメント94をハウジング72の中心に保持したままで、第2バルブエレメント94を迂回する空気の通り道を提供している。側路82により、第2バルブエレメント94を通過または迂回する空気の通り道が得られる。
【0053】
ベローズ36に不具合または破損がある間、リリーフバルブ58の構成により、空気が往復動ポンプ10内に流入するのを防止すると共に、作業流体が往復動ポンプ10を駆動しないようにする。リリーフバルブ58は、往復動ポンプ10が正常に作動しているときに、ベローズ36の内部空間38の圧力が過剰に上昇するのを防止し、ベローズ36が破損していて、ベローズチャンバ14内の圧力が大気圧を下回る場合には、空気がベローズ36の内部空間38に流入するのを防止し、ベローズ36の内部空間38、またはハウジング12のベローズチャンバ14内の圧力が大気圧を上回る場合には、液体が往復動ポンプ10から押し出されるのを防止する。
【0054】
図13Aは、別の実施形態として、リリーフバルブ58の第2バルブエレメント94’を示す斜視図である。また、図13Bは、第2バルブエレメント94’有したリリーフバルブ58の断面図である。以下、図13A及び図13Bについて、まとめて説明する。
【0055】
第2バルブエレメント94’は、円錐状の形状を有し、高い浮揚性のある素材で形成されている。図13Aに示すように、上端部分には、バルブシート86に係合して封止を生成し、第2チャンバ80からリリーフバルブ58を出ようとする液体の移動を防止するように設定された形状を有している。図11及び図12に基づき説明した第2バルブエレメント94と同様に、第2バルブエレメント94’は、ハウジング72に形成された側路82と組み合わせて用いられ、空気が第2チャンバ80を通過して移動しないようにする第2バルブエレメント94’を通過または迂回できるようにして、リリーフバルブ58から流出する空気のために、第2バルブエレメント94’がリリーフバルブ58を閉じてしまうのを防止する。
【0056】
具体的な実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であると共に、均等物で本発明の各構成要素を置き換えることが可能であることが当業者に理解されよう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況やものを本発明の教示に適合させるための様々な変形が可能である。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内に包含される全ての態様を含むものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B