(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0031】
1.医療用縫合針
医療用縫合針は、例えば、目視下、顕微鏡下、内視鏡画像下で、生体組織等の縫合対象物に、一方側から他方側および他方側から一方側の双方向に向かって糸を通すことができる医療用双方向縫合装置の縫合針として用いられる。本明細書では単に「縫合針」と称することがある。
【0032】
糸状物は、医療用として使用される縫合糸であり、単糸、編糸であってもよく、外径は一般な縫合糸で使用される径であれば適宜選択可能である。また、糸状物は、分解性材料により形成されていてもよい。糸状物の長さは、手術の邪魔にならない程度に十分に長いことが望ましく、20cm以上200cm以下が好ましい。例えば、TSSでは、縫合糸が体外から硬膜まで往復できる長さに、医師が患者の体外で縫合糸にノットを作製するのに十分な長さを加えた長さが好まれ、TSSで好ましい糸状物の長さは、具体的には、70cm以上150cm以下である。
【0033】
まず、
図1〜
図3を参照して、縫合針が用いられる縫合装置Dの全体構成について説明する。
図1、
図2は、それぞれ本発明に係る縫合装置Dの側面図、内部を示す側面図であり、
図3は遠位側を拡大した側面図を表す。
図1〜
図3に示すように、縫合装置Dは遠近方向を有している。本発明において、装置Dの近位側とは使用者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向(すなわち処置対象側の方向)を指す。また、装置Dの上側とは、
図1の上側を指し、下側とは上側の反対側(すなわち
図1の下側)を指す。
本発明の縫合針1は、前記遠近方向に延在しており、先端が遠位側にある針機構2を有する。針機構2の遠位側には縫合対象物に穿刺する穿刺部11が好ましく設けられる。縫合装置Dの遠位側には、糸状物保持部材30が設けられている。糸状物保持部材30は、縫合装置Dの遠位側で糸状物を保持するものである。
図1〜
図3では、縫合針1(針機構2)と糸状物保持部材30は、中空形状に形成されている筐体50に保持されている。
図1〜
図3では、針機構2が中空状の針部材10を有している例を示したが、この態様に限定されるものではない。筐体50の近位側には、使用者が手で把持するハンドル部53が設けられていてもよい。装置Dには、近位側に操作部が設けられている。
図1では縫合針1、糸状物保持部材30をそれぞれ操作するための第1操作部61、第3操作部63が設けられている。装置Dの使用時には、
図3に示すように縫合針1を近位側に移動させた状態で、縫合針1と糸状物保持部材30の間に縫合対象物100を位置させる。操作部を操作して、糸状物70を掛けた縫合針1を遠近方向に移動させて縫合対象物100を貫通させたり、糸状物保持部材30で糸状物70を保持するといった操作を適宜組み合わせて行う。これにより、縫合対象物100の近位側から遠位側、或いは遠位側から近位側に向かって縫合することができる。
【0034】
(1)針機構
針機構は、縫合対象物である硬膜等の生体組織に糸状物を通すために用いられる機構である。針機構は、1つの部材から構成されていてもよく、複数の部材を組み合わせることによって構成されていてもよい。本発明に係る針機構は、糸状物が通る通路と、通路の一方側に設けられる出入口部と、通路の他方側に設けられる終端部と、を有している。このため、糸状物の中途部を針機構の出入口部から通路に挿入して通路や終端部に掛けることによって、糸状物を針機構の軸方向に折り返した状態で通路内に留まらせることができる。また、糸状物の中途部を通路内に留まらせた状態で、針機構と糸状物を縫合対象物よりも遠位側に移動させた後、針機構だけを近位側に移動させることによって、縫合対象物よりも遠位側に糸状物の折り返し部を配置することができる。このような糸状物の折り返し部が形成されることによって、縫合対象物の遠位側では糸状物を保持しやすくなる。
【0035】
本発明の縫合針は、糸状物を針機構の通路に通すという簡便な操作で縫合対象物よりも遠位側に糸状物の折り返し部を形成することができ、縫合対象物の遠位側での糸状物の保持を容易にすることができる。また、従来の縫合装置のように針の把持位置を変更したり、部材同士を密着させながら針を移動させる必要がないため安全である。さらに、縫合対象物を直接把持する必要がないため、人体に対して低侵襲である。
【0036】
縫合対象物が生体組織の場合には、装置の可動域が限られている。例えば、内視鏡下で硬膜を縫合する際には、内視鏡の挿入方向の都合上、硬膜の近位側のみを観察しながら作業を行う必要がある。このため、縫合位置を確認できるように、針機構の先端が遠位側に設けられる。針機構の遠位側に穿刺部が設けられることが好ましく、針機構の遠位端部に設けられることが好ましい。穿刺部は、遠位側に向かって尖った1つもしくは複数の鋭利先端を持つ様に形成されていればよく、例えば、遠位側に向かって断面積が減少するように形成されていてもよく、テーパ状に形成されていてもよい。また、穿刺部は外径が一定であってもよい。針機構には遠位端部が1つ設けられていてもよく、複数設けられていてもよい。針機構が複数の部材から構成される場合、一の部材にのみ穿刺部が設けられていてもよく、複数の部材に穿刺部が設けられてもよい。
【0037】
針機構は、装置の遠近方向に移動可能に好ましく配される。針機構を近位側から遠位側に移動させることによって、針機構よりも遠位側に配置されている縫合対象物に針機構を刺すことができる。縫合対象物に穿刺している針機構を近位側に移動させることによって、針機構を縫合対象物から抜くことができる。針機構は、遠近方向に延在しているものであり、少なくとも遠位端部が遠近方向に延在していることが好ましく、全体として遠近方向に延在していることがより好ましい。
【0038】
針機構の長さは、例えばTSSに使用する場合には鼻腔から下垂体までの距離である2cm以上30cm以下程度に設定できる。
【0039】
針機構は、直線状、曲線状であってもよく、それらの組み合わせや折り曲げ部を有していてもよい。また、針機構を構成する部材は中空状であってもよく、中実状であってもよい。
【0040】
針機構の外径は、一般的な縫合針で使用される径であれば特に限定されないが、例えば、0.05mm以上1.5mm以下であることが好ましい。針機構が中空状の針部材である場合、針部材の肉厚は、例えば0.01mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0041】
針機構の材質は、生体適合性と生体組織等の対象物を穿刺可能な強度を有していることが好ましく、例えば、ステンレス等の金属材料や樹脂材料が好ましく、特に抗錆性や加工の容易性の観点からステンレスであることが好ましい。
【0042】
針機構は、術者の手元側に設けられる第1操作部61に接続されていてもよく、例えば、針機構の近位側に接続されている針支持部材65を介して第1操作部61に接続されていてもよい。また、その他の部材を1つあるいは複数介して第1操作部61に接続されていてもよい。
【0043】
通路は、針機構の側面から見たときに現われている部分であり、糸状物が通る部分である。したがって、例えば中空状の針機構の側面に現われていない内腔は本発明における通路としては定義されない。通路の形状は、例えば、直線状や曲線状またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0044】
出入口部は、針機構の通路に糸状物を通すための出入り口として機能する部分である。出入口部は通路の一方側に設けられる。縫合対象物の近位側のみを観察しながら作業を行う場合に、縫合対象物の遠位側で糸状物を保持しやすくするために、出入口部は針機構の遠位端部(より好ましくは遠位端)に設けられていることが好ましい。
【0045】
終端部は、通路の他方側に設けられる部分であり、例えば、針機構を遠位側または近位側に移動させたときに通路内に糸状物を留めることができる。
【0046】
通路の大きさは一定でもよく、幅広部や幅狭部が設けられていてもよい。針機構の軸方向において、通路の長さは、例えば、0.1mm以上100mm以下の範囲に設定できる。通路の大きさは、針機構において、遠位側に向かって大きくなるように形成されていてもよい。ここで、通路の大きさとは通路の延在方向と垂直な断面における最大径を意味し、通路の長さとは通路の延在方向における長さを意味する。
【0047】
出入口部や通路の大きさは、糸状物を通すことができる大きさを有していれば特に制限されないが、例えば、糸状物の過度な変形や切断を防止するために、針機構の出入口部や通路の大きさは糸状物の外径よりも大きいことが好ましい。ここで、出入口部の大きさとは、通路の延在方向と垂直な断面における最大径を意味する。また、出入口部の大きさは、特に限定されず、通路の長さよりも大きくてもよく、小さくてもよい。
【0048】
針機構は、出入口部、通路、終端部の少なくともいずれか1つを狭める捕捉部を有することが好ましい。より好ましくは、針機構は、通路または出入口部を狭める捕捉部を有する。捕捉部によって糸状物を保持しやすくなるため、針機構の移動中に糸状物が針機構から外れることを抑制できる。
【0049】
(実施の形態1)
図4〜
図7を用いて、針機構2(2A)が、中空状であり、出入口部が遠位端に設けられている針部材10(10A)の例について説明する。針部材10Aには、遠位端部が2つ設けられている。
図4は針機構2Aの側面図を表し、
図5は、
図4に示した針機構2Aの遠位側を拡大した斜視図を表し、
図6は、
図4に示した針機構2Aの遠位側を拡大した側面図を表し、
図7は
図4に示した針機構2Aを遠位側から見た正面図を表す。
【0050】
図4〜
図7において、針機構2Aは針部材10Aから構成されているため、通路13が針部材10Aに形成されている。通路13は、針機構2Aの軸方向に沿って延在していることが好ましい。
図4〜
図7に示した針部材10の通路13は針部材10の軸方向に沿って延在している。このため、針部材10を軸方向に動かすことで、通路13内に位置する糸状物70を針部材70の遠近方向に移動させることができる。
図6に示すように、通路13が針部材10の軸心Cを通っていることが好ましい。これにより、糸状物70が安定して保持される。出入口部12は針部材10の遠位端に設けられているため、内視鏡下で遠位側が見えない状況でも針部材10の通路13内に糸状物70を導きやすい。
【0051】
針部材10が中空状の場合、遠位端部は複数設けられることが好ましく、中でも2つ設けられることが好ましい。この場合、遠位端部では遠位側に向かって先細りになっている形状(いわゆるツインピーク形状)であることがより好ましい。
図4〜
図6に示すように、針部材10の外径は一定であってもよい。その場合、通路13内への糸状物70の挿通を容易にするためには、遠位側に向かって通路13の大きさが増加することが好ましい。
【0052】
通路13は、針機構2Aの軸方向に対して垂直な方向に貫通していることが好ましい。
図5〜
図7に示すように、通路13が、針部材10の軸方向に対して垂直な方向に貫通していることがより好ましい。針部材10の遠位側から見て、通路13が、針部材10の軸方向に対して垂直な方向に貫通していることがさらに好ましい。これにより、縫合対象物の遠位側では糸状物70の折り返し部71が形成されやすくなるため、針部材10や糸状物保持部材によって糸状物70を保持しやすくなる。
【0053】
針部材10に通路13が形成され、針部材10の側面には開口が設けられる。針部材10の遠位端部が2つになるように通路13が形成されて、針部材10の側面に2つの開口が設けられる場合、針部材10の周方向において、一方の開口と他方の開口が針部材10の軸心Cを挟んで互いに対向していることが好ましい。針部材10の側面に設けられる開口は、針部材10の長軸方向を中心軸として回転対称に配置されていてもよい。これにより、糸状物70の折り返し部71を左右対称の形状に形成することができるため、縫合対象物の遠位側で糸状物70を保持しやすくなる。
【0054】
針機構2Aは、出入口部12よりも近位側に終端部14が設けられていてもよい。針部材10は、出入口部12よりも近位側に終端部14が設けられていてもよい。これにより、針部材10を近位側から遠位側に移動させるときに、糸状物70が終端部14に引っ掛かるため通路13内に糸状物70が留まりやすくなる。
【0055】
針部材10による糸状物70の保持および解除は、以下説明する内筒部材と組み合わせることによって行うことが好ましい。すなわち、針機構2Aが、針部材10Aと、針部材の内側に設けられる内筒部材20を有していることが好ましい。
【0056】
図8、
図9は、それぞれ本発明に係る内筒部材20の側面図、遠位側を拡大した斜視図を表し、
図10は、本発明に係る針機構2Aの遠位側における斜視図を表し、
図11〜
図13は、本発明に係る針機構2Aの側面図(一部断面図)を表す。
【0057】
図10に示すように、針機構2Aが中空状であり、出入口部12が遠位端に設けられている針部材10を有し、捕捉部15が、針部材10の内側に設けられ、針部材10に対して回転する内筒部材20であることが好ましい。針部材10に対して、内筒部材20が回転することによって針部材10の出入口部12または通路13は内筒部材20に覆われて狭くなる。その結果、狭くなった出入口部12または通路13に糸状物70を保持することができる。
【0058】
内筒部材20の外径は、針部材10の内径よりも小さければよく、例えば、0.02mm以上1.5mm以下に設定することができる。
【0059】
内筒部材20の肉厚は、例えば、0.01mm以上0.5mm以下に設定することができる。
【0060】
内筒部材20の材質は、針部材10と同様に、例えば、ステンレス等の金属材料や樹脂材料が好ましく、特に抗錆性や加工の容易性の観点からステンレスであることが好ましい。
【0061】
内筒部材20は、遠位端まで延在している開口21を有していることが好ましい。
図10において、内筒部材20の側部(外周面)に開口21が設けられている。これにより、内筒部材20の遠位端から開口21に糸状物70を掛けることができる。
【0062】
針部材10に対して内筒部材20を回転させることにより、針部材10の出入口部12または通路13と、内筒部材20の側部に設けられる開口21の重なる領域の形状や大きさを変更することができる。
図11、
図12、
図13はそれぞれ針部材10に対して内筒部材20を0度、40度、70度回転させた状態を示している。
図11に示すように、内筒部材20を回転させない状態、すなわち回転角度が0度のときに、針部材10の出入口部12または通路13と、内筒部材20の開口21が重なるように形成されていることが好ましい。出入口部12または通路13と、内筒部材20の開口21が重なった領域の遠位側から糸状物70を通路13内に導くことができる。
【0063】
図12に示すように、針部材10に対して内筒部材20を回転させると、針部材10の出入口部12または通路13の一部が内筒部材20により覆われて、針部材10の出入口部12および通路13の一部が狭まる。これにより、針部材10の出入口部12または通路13の狭まった部分で糸状物70を保持できる。
【0064】
図13に示すように、さらに針部材10に対して内筒部材20を回転させると、針部材10の出入口部12または通路13と、内筒部材20の開口21が重なる領域はより一層小さくなる。針部材10の出入口部12または通路13が狭まるため、糸状物70は針部材10と内筒部材20によって挟まれて保持される。
【0065】
糸状物70の保持の解除は、針部材10に対して内筒部材20を逆回転することにより、回転角度を小さくすればよい。
【0066】
本例では、内筒部材20を0度から70度回転させることで、糸状物70を針部材10と内筒部材20によって挟んで保持する例を示したが、回転角度は、これに限定されること無く、0度より大きく180度より小さければいかなる角度でもよく、30度以上90度以下であることがより好ましい。
【0067】
針部材10に対して内筒部材20を回転させることによって糸状物70の保持および解除を容易に行うために、内筒部材20は
図9に示すような開口21を有していることが好ましい。すなわち、内筒部材20の開口21は、遠位領域21Aと、遠位領域21Aとつながっており遠位領域21Aよりも近位側の近位領域21Bとを有しており、内筒部材20の周方向における遠位領域21Aの幅は、近位領域21Bの幅よりも小さいことが好ましい。これにより、針部材10に対して内筒部材20を回転させたときに、内筒部材20の遠位領域21Aが、近位領域21Bより先に針部材10に全体が覆われる。このため、近位領域21Bに存在する糸状物70が、回転の最中に針部材10の出入口部12を通過し抜け出ることを防ぐことができる。
【0068】
内筒部材20の開口21の形状は糸状物70を挿入可能であれば特に限定されず、開口21を側面から見て、三角形、四角形等の多角形状、円形状、楕円形状、またはこれらの組み合わせにすることができる。
図9では、開口21は、長方形状の遠位領域21Aと長方形状の近位領域21Bとを組み合わせた形状である。
【0069】
内筒部材20の開口21の形状は、糸状物70の脱落防止の観点から、
図9に示す長方形状の遠位領域21Aと長方形状の近位領域21Bとを組み合わせた形状であることが好ましい。また、加工の容易性の観点からは、1つの長方形状であることが好ましい。
【0070】
内筒部材20の開口21の数は、1つ以上であることが好ましく、2つ以上がより好ましい。特に、内筒部材20の開口21の数は、針部材10の開口の数と同じであることが好ましい。針部材10がツインピーク形状である場合には、針部材10の開口と内筒部材20の開口21が重なる領域を設けるために、内筒部材20の開口21の数も2つであることが好ましい。
【0071】
糸状物70の変形や切断を防止するために、内筒部材20の開口21の最小径は糸状物70の外径よりも大きいことが好ましい。
【0072】
図示していないが、針部材10に対する内筒部材20の回転角度を制御するために、内筒部材20に固定部が設けられていてもよい。固定部としては、例えば、内筒部材20の外側に凸部が設けられて、針部材10の内側に内筒部材20の凸部と係合する溝が設けられてもよい。
【0073】
(実施の形態2)
図14を用いて、実施の形態2に係る針機構2(2B)について説明する。
図14は、針機構2Bの側面図を表し、
図15は、
図14に示した針機構2Bの変形例を示す側面図を表す。
【0074】
針機構2Bは、中実状に形成されており、遠位端部が1つ設けられている針部材10(10B)を有している。出入口部12、通路13および終端部14が、針部材10に設けられている。
図14に示した出入口部12は、針部材10の遠位端よりも近位側に設けられている。この場合、出入口部12は、針部材10の側部に設けられることが好ましい。その結果、
図14に示す針部材10には1つの遠位端部が設けられている。通路13は針部材10の径方向に沿って延在している。
【0075】
針部材10が中実状であり、捕捉部15が、針機構2B(針部材10B)の出入口部12または通路13を狭めるために突出している部分(以下、単に「突起」という)であってもよい。
図14では、突起16は針部材10の近位側に向かって突出しているが、針部材10の遠位側に向かって突出していてもよい。突起16は通路13の延在方向と垂直な方向に向かって突出していることが好ましい。突起16が形成されている部分で糸状物70が保持されるため、糸状物70が脱落することを防ぐ。
【0076】
突起16は、通路13の大きさの5分の1以上の大きさを有していることが好ましく、より好ましくは4分の1以上、さらに好ましくは3分の1以上の大きさである。
【0077】
突起16の形状は、例えば、多角柱状、円錐形状や角錐形状等の錐形状、円錐台形状や角錐台形状等の錐台形状、半球形状や半楕円球状に形成することができる。
【0078】
突起16は、糸状物70と接触して、糸状物70が傷付くことを抑制するために、円錐台形状、半球形状、半楕円球形状等の丸みを帯びた形状に形成されていることが好ましい。
【0079】
図15では、突起16の代わりに通路13が狭くなっている幅狭部17が捕捉部15として設けられている。
図15では、幅狭部17が通路13の終端部14側および終端部14に設けられているが、幅狭部17は出入口部12、通路13、終端部14の少なくともいずれか1つに設けられていればよい。
【0080】
幅狭部17は、
図15では階段形状に形成され、その通路13の大きさは急激に小さくなっているがこれに限定されず、徐々に縮小していくテーパ形状を採用していてもよい。
【0081】
幅狭部17における通路13の大きさは、糸状物70の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、幅狭部17で糸状物70を挟んで強固に保持することが可能となり、糸状物70が通路13から脱落することを抑制できる。
【0082】
以上のとおり、針部材10に突起16または幅狭部17を捕捉部15として設けることによって、実施の形態1で説明したように他の部材を組み合わせなくても、針部材10単体で糸状物70の保持および解除ができる。
【0083】
(実施の形態3)
図16を用いて、実施の形態3に係る針機構2(2C)について説明する。
図16は、針機構2Cの側面図を表す。針機構2Cは、中実状に形成されており、遠位端部が2つ設けられている針部材10(10C)を有している。
図16に示した中実状の針部材10は、出入口部12が、針部材10の遠位端に設けられている。通路13は、針部材10の軸方向に沿って延在している。実施の形態2と比較して、通路13の道のりを長くとることができるため、糸状物70は通路13から脱落しにくい。針部材10は、遠位端部(穿刺部11)の外径が遠位端に向かって小さくなっている。通路13が針部材10の軸心Cを通るように形成されており、針部材10には遠位端部が2つ設けられている。
【0084】
図16では、捕捉部15が針部材10の通路13の径方向内方に向かって突出している突起16(16A、16B)である。出入口部12側に設けられている突起16Aは装置Dの下側に向かって突出しており、終端部14側に設けられている突起16Bは、装置Dの上側に向かって突出している。突起16が複数設けられる場合、突起16の突出方向が反対向きに形成されていることが好ましい。これにより、糸状物70を強固に保持することができる。意図しない糸状物70の通路13からの脱落を抑制するために、突起16は出入口部12と通路13のそれぞれに少なくとも1つずつ設けられてもよい。図示していないが、突起の代わりに幅狭部が設けられてもよい。
【0085】
(実施の形態4)
図17〜
図18を用いて、実施の形態4に係る針機構2(2D)について説明する。
図17は、針機構2Dの遠位側を拡大した斜視図を表し、
図18は
図17に示した針機構2Dの側面図を表す。針機構2Dは、異なる方向に延在した形状の複数の通路13が形成されている針部材10(10D)を有している。
【0086】
通路13は、針部材10の軸方向に沿って延在している区間13Aと、針部材10の軸方向と垂直な方向に沿って延在している区間13Bとが組み合わせられている。区間13Aの近位端部に区間13Bが接続されることによって、区間13A、13Bが連通している。区間13Bの一方側に出入口部12が設けられており、区間13Bの他方側が、区間13Aの一方側と接続されている。区間13Aの他方側には終端部14が設けられている。
【0087】
糸状物70を針部材10の通路13の区間13Bから区間13Aへ移動させることにより、糸状物70を保持することができる。また、糸状物70を針部材10の通路13の区間13Aから区間13Bに移動させることにより、糸状物70の保持の解除をすることができる。
【0088】
糸状物70を掛けた針部材10を遠位側に移動させるときには、糸状物70を区間13Aと区間13Bの接続部分に引っ掛けることができる。一方、針部材10を近位側に移動させるときには、糸状物70を区間13Aの遠位端部(すなわち、終端部14)に引っ掛けることができる。
図17〜
図18では、区間13Aと区間13Bが1つずつ設けられているが、区間13A、区間13Bはそれぞれ単数または複数設けられていてもよい。また、区間13Aの近位端部に区間13Bが接続されている例を示したが、区間13Aの遠位端部に区間13Bが接続されてもよい。
【0089】
実施の形態4の針部材10においても、実施の形態2、3と同様に突起や幅狭部が設けられてもよい。特に、出入口部12が設けられる区間13Bは、終端部14が設けられている区間13Aと比較して糸状物70が脱落するリスクがあるため、突起や幅狭部は区間13Bに設けられていることが好ましい。他方、糸状物70をスムーズに通路13に導くためには、終端部14が設けられている区間に捕捉部15が設けられてもよい。
【0090】
(実施の形態5)
図19〜
図22を用いて、実施の形態5に係る針機構2(2E)について説明する。
図19は、本発明に係る針機構2Eの遠位側を拡大した斜視図を表し、
図20は、
図19に示した針機構2Eを遠位側から見た正面図を表し、
図21、
図22は、それぞれ
図19に示した針機構2Eを第1の側面、第2の側面から見た側面図を表す。針機構2(2E)は、中実状であり、遠位端部が4つ設けられている針部材10(10E)を有している。針部材10の遠位端部は、遠位側に向かって通路が大きくなっている。糸状物70を留めるための通路13は、側面からみて4つの開口18が形成されている。
図21に示すように第1の側面から見た場合、穿刺部11よりも近位側において、針部材10の通路13は一定の大きさを有している。他方、
図22に示すように第2の側面から見た場合、通路13が狭くなっている幅狭部17がある。
【0091】
なお、第1の側面と、第2の側面とは、針部材10の軸方向に垂直な方向から見た場合に、90度異なる位置であることが好ましい。
【0092】
遠位端部を4つ有する、いわゆる4ピーク形状の針部材10において、周方向に隣り合う開口18の形状が異なるものであることが好ましい。また、糸状物70を掛けやすくするためには、針部材10の軸心Cを挟んで対向している開口18の形状が同一であることが好ましい。
【0093】
第1の側面から見た開口18Aの最小幅が、第2の側面から見た開口18Bの最小幅よりも大きいことが好ましい。糸状物70を掛ける開口18を変えることによって、糸状物70の保持の強弱を変えることができる。例えば、糸状物70が針部材10から脱落しにくい近位側から遠位側への縫合では第1の側面から見える開口18Aに糸状物70を掛けて、糸状物70が針部材10から脱落する可能性がある遠位側から近位側への縫合では第2の側面から見た開口18Bを用いることにより、縫合方向に応じて糸状物70の保持の強度を変えることが可能となる。つまり、
図20に示すように、針部材10を遠位側からみて、通路13が十字状に形成されていることが好ましい。
【0094】
図21に示す針部材10は、第1の側面から見た開口18Aに糸状物70を掛けることで、糸状物70を開口18Aに保持して遠位側に前進することができる。針部材10が近位側に後退することにより、糸状物70の保持が解除される。糸状物70を針部材10に巻きつけて保持を強固にするために、針部材10の前進の前に、針部材10を長軸方向を中心軸として所定角度回転させてもよい。
図22に示す針部材10は、第2の側面から見た近位側の開口18Bに糸状物70を掛けることで、糸状物70を開口18Bに保持して後退することができる。第2の側面から見た近位側の開口18Bの遠位端に糸状物70が接触して、糸状物70を保持することができる。このとき、第2の側面から見た開口18Bに幅狭部17が設けられていれば、糸状物70を強固に保持することができるため、針部材10を後退させても針部材10の開口18から糸状物70が抜けにくくなる。糸状物70の保持の解除は、開口18の側面から糸状物70を抜くか、糸状物70を開口18の遠位側に移動させることにより行う。糸状物70を針部材10に巻きつけて保持を強固にするために、針部材10の後退の前に、針部材10の長軸方向を中心軸として所定角度回転させてもよい。
【0095】
(実施の形態6)
図23〜
図28を用いて、実施の形態6に係る針機構2(2F)について説明する。針機構2Fは、中空部材22(22F)と、中空部材22Fの内側に設けられており、中空部材22Fに対して軸方向に進退可能な内挿部材25(25F)とを有している。
図23〜
図24はそれぞれ中空部材22Fの遠位側の側面図と斜視図を表す。
図25〜
図26はそれぞれ内挿部材25Fの遠位側を示す側面図および斜視図を表す。
図27〜
図28は実施の形態6に係る針機構2Fの側面図(一部断面図)を表す。
【0096】
通路13、出入口部12および終端部14が、中空部材22Fに設けられており、出入口部12が中空部材22Fの遠位端にあり、捕捉部15が、通路13の近位端部であることが好ましい。このように捕捉部15を形成することによって、針機構2Fにより糸状物70を保持することができる。また、内挿部材25Fを針機構2Fの軸方向に進退させることによって、糸状物70の保持を解除することができる。
【0097】
実施の形態1のうち、内筒部材20を有する針機構2Aは、内筒部材20を回転させることによって糸状物70を保持および解除するのに対し、実施の形態6では中空部材22Fの通路13の近位端部で糸状物70を保持し、内挿部材25Fにより糸状物70の保持を解除する点で異なっている。
【0098】
図23〜
図24に示した針機構2Fの通路13は、中空部材22Fの軸方向に沿って延在している。このため、中空部材22Fを軸方向に動かすことで、通路13内に位置する糸状物70を相対的に移動させることができる。
図23〜
図24に示すように、通路13が中空部材22Fの軸心Cを通っていることが好ましい。これにより、糸状物70が安定して保持される。出入口部12は中空部材22Fの遠位端に設けられているため、内視鏡下で遠位側が見えない状況でも中空部材22Fの通路13内に糸状物70を導きやすい。
【0099】
中空部材22Fの遠位端部は複数設けられることが好ましく、中でも2つ設けられることが好ましい。この場合、中空部材22Fの遠位端部では遠位側に向かって先細りになっている形状(いわゆるツインピーク形状)であることがより好ましい。
図23〜
図24に示すように、中空部材22Fの外径は一定であってもよい。その場合、通路13内への糸状物70の挿通を容易にするためには、遠位側に向かって通路13の幅が大きくなっていることが好ましい。なお、通路13の幅は近位側に向かって狭くなっているため、糸状物70は通路13の近位端部で保持される。すなわち、
図27に示す針機構2Fでは、捕捉部15が通路13の近位端部によって構成される。
【0100】
図23に示すように、通路13が、中空部材22Fの軸方向に対して垂直な方向に貫通していることが好ましい。これにより、縫合対象物の遠位側では糸状物70の折り返し部が形成されやすくなるため、針部材10や糸状物70保持部材によって糸状物70を保持しやすくなる。
【0101】
通路の形状は、特に限定されず、通路が軸方向に対して傾斜することによって狭くなっていてもよく、階段状に幅が変化することで狭くなっていてもよい。また、通路が軸方向に傾斜している場合、複数箇所で傾斜角度が変化していてもよく、また、傾斜角度が一定でなくてもよい。
【0102】
内挿部材25Fは、中空部材22Fの内側に設けられる。内挿部材25Fの形状は、円柱状や角柱状等の中実状や、円筒状や多角筒状等の中空状であることが好ましく、針機構2Fの強度を高めるためには中実状であることがより好ましい。
【0103】
内挿部材25Fの先端部の形状は、捕捉部15で保持された糸状物70を遠位側に押し出すことができれば、特に限定されないが、
図25〜
図26に示すように、先端が1箇所尖った針形状であることが好ましい。その場合、内挿部材25Fの先端は、内挿部材25Fの径方向の最外方に位置していることが好ましい。内挿部材25Fが針形状であれば、内挿部材25Fは縫合対象に容易に穿刺することができる。針形状の内挿部材25Fで縫合対象を穿刺した場合、ツインピーク形状の針機構で穿刺した場合と比較して、縫合対象物から穿刺くずが発生、脱落しにくくなる。ここで、穿刺くずの脱落とは針機構2Fによって穿刺される、すなわち切り取られる、縫合対象(例えば硬膜)の切断部分が、縫合対象から完全に切り取られ離脱することを意味する。糸状物70と針機構2Fの付近に穿刺くずが脱落すると、縫合作業時に針機構2Fや糸状物70の動きを妨げる要因となるため、針形状の内挿部材25Fで縫合対象を穿刺した方が有利である。
【0104】
内挿部材25Fの遠位端部を針形状にするために、内挿部材25Fの遠位端部には傾斜部26が設けられていてもよい。傾斜部26は、医療用の縫合針と同様の傾斜角度を有していればよく、傾斜部26は、中空部材22Gの軸方向に対して5度以上、8度以上、10度以上、15度以下、または20度以下傾斜していることが好ましい。
【0105】
中空部材22Fや内挿部材25Fは、実施の形態1〜5の針部材10や内筒部材20と同様に、ステンレス等の金属材料や樹脂材料から構成されることが好ましい。
【0106】
図27〜
図28を用いて、針機構2Fによって糸状物70を把持する方法を説明する。糸状物70の一部を針機構2Fの遠位側に配置し、針機構2Fを遠位側に移動させることで、糸状物70が出入口部12を通過する。さらに、針機構2Fを遠位側に移動させることで、
図27に示すように通路13内に糸状物70を進入させ、終端部14に向かって糸状物70を圧入することで、通路13の近位端部で糸状物70を保持することができる。糸状物70を終端部14に圧入する方法としては、糸状物70の2箇所を固定し、その2箇所の間を把持するように針機構2Fを動かす方法や、糸状物70を針機構2Fの通路13内に挿入した後、糸状物70を針機構2Fで挟んで一方側を固定し、他方側を引張る方法が挙げられる。
【0107】
糸状物70の保持の解除は、
図28に示すように、針機構2Fに対して内挿部材25Fを遠位側に移動させ、内挿部材25Fの先端部で糸状物70を遠位側に押し出すことにより行える。このとき、内挿部材25Fは、中空部材22Fに対して回転させないことが好ましい。
【0108】
次に説明する実施の形態7〜9では、針機構2が、遠位端部に傾斜部23を有する中空部材22と、該中空部材22の内側に設けられており、中空部材22の軸を中心とする回転動作と中空部材22の軸方向への移動動作の少なくともいずれか一方の動作が可能な内挿部材25とを有し、出入口部12が、傾斜部23よりも近位側に設けられている例を示す。傾斜部23は、実施の形態6に記載の中空部材22Fと同様に構成することができる。出入口部12を傾斜部23よりも近位側に設けることにより、糸状物70を傾斜部23の側面に沿って出入口部12に誘導しやすくなるため、糸状物70を保持しやすくなる。
【0109】
(実施の形態7)
図29〜
図35を用いて、実施の形態7に係る針機構2(2G)について説明する。
図29〜
図30は中空部材22Gの遠位側の側面図および斜視図を表す。
図31〜
図32は、内挿部材25(25G)の遠位側を示す側面図および斜視図を表す。
図33〜
図35は、針機構2Gの遠位側を示す側面図(一部断面図)を表す。
【0110】
図29〜
図30に示す中空部材22Gの遠位端部には溝部24が設けられている。中空部材22Gの溝部24によって、糸状物70を保持するための出入口部12、通路13および終端部14の少なくとも一部を構成することができ、例えば、溝部24の遠位側に出入口部12を設けることができる。
【0111】
中空部材22Gの溝部24の深さは、糸状物70の直径以上の深さであれば特に限定されないが、加工の容易性、針機構の強度、糸状物70の保持のしやすさの観点から中空部材22Gの半径以下であることが好ましい。中空部材22Gの溝部24の幅は、糸状物70の直径以上であれば、特に限定されないが、加工の容易性や中空部材22Gの強度の観点から糸状物70の直径の2倍以上、または3倍以上であることが好ましい。ここで、中空部材22Gの溝部24の深さは径方向に沿った長さを指し、溝部24の幅は溝部24を上から見たときに軸方向と垂直な方向における長さを指す。
【0112】
中空部材22Gにおいて、溝部24は、底壁24A、遠位側壁24Bおよび近位側壁24Cの3つの内壁で形成されている。中空部材22Gの製造容易性の観点から、遠位側壁24Bと近位側壁24Cは、
図30に示すように針機構2Gの軸方向に対して垂直に形成されていることが好ましい。また、径方向において、近位側壁24Cが、遠位側壁24Bよりも外側に高く形成されていることが好ましい。これにより、糸状物70が針機構2Gの近位側から意図せずに脱落することを防げる。
【0113】
中空部材22Gの遠位端部には傾斜部23が設けられている。実施の形態7において、傾斜部23は、縫合対象を穿刺する部分として機能する。中空部材22Gにおいて、溝部24よりも遠位側に傾斜部23が設けられていることが好ましい。このように傾斜部23と溝部24を配置することによって、傾斜部23の側面に糸状物70を沿わせることで、糸状物70を溝部24に誘導しやすくなり、スムーズに保持することができる。また、傾斜部23の近位端と溝部24の遠位端の段差(すなわち溝部24を構成する近位側壁24C)に糸状物70を掛けることができる。
【0114】
内挿部材25Gは、中空部材22Gの内側に設けられており、中空部材22Gの軸を中心とする回転動作と中空部材22Gの軸方向への移動動作の少なくともいずれか一方の動作が可能なものである。中空部材22Gに対して内挿部材25Gを軸方向に移動または回転させることによって、針機構2に通路13を形成することができる。また、内挿部材25Gの軸方向の位置や回転角度を調整することによって、通路13や出入口部12の幅を狭めることができる。すなわち、
図33に示す針機構2Gにおいて、捕捉部15は、中空部材22Gと内挿部材25Gによって構成されている。
【0115】
内挿部材25Gの形状は、実施の形態6に記載の内挿部材25Gと同様に構成とすることができるが、針機構2Gの強度の確保および糸状物70を強固に保持する観点からは、内挿部材25Gの形状は、中実状であることが好ましい。
【0116】
図33〜
図35を用いて、針機構Gによって糸状物70を把持する方法を説明する。軸方向において、内挿部材25Gを中空部材22Gの溝部24よりも近位側に移動させておく。このとき、針機構2Gを遠位側から見て、内挿部材25Gの先端と中空部材22Gの先端が、針機構2Gの軸心Cを挟んで対向するように配置されていることが好ましい。これにより、通路13や出入口部12を糸状物70を保持しやすい適切な幅に調整しやすくなる。
【0117】
糸状物70の一部を針機構2Gよりも遠位側に配置し、針機構2Gを遠位側に移動させることによって、糸状物70の一部は、中空部材22Gの傾斜部23に誘導されて、溝部24によって構成される出入口部12に到達する。さらに中空部材22Gを遠位側に移動させることで、糸状物70は通路13内に進入する。次いで、内挿部材25Gを遠位側に移動させると、内挿部材25Gの傾斜部27によって通路13の幅が狭まる。
図33に示すように、溝部24の底壁24A、遠位側壁24Bおよび内挿部材25Gの傾斜部27の3箇所で糸状物70を挟むことによって糸状物70を保持することができる。
【0118】
図34に示すように、中空部材22Gに対して内挿部材25Gを近位側に移動させることで糸状物70の保持を解除することができる。さらに糸状物70を容易に保持解除するためには、中空部材22Gに対して内挿部材25Gを近位側に移動させた後、内挿部材25Gを回転させ、
図35に示すように、内挿部材25Gを再度遠位側に移動させることが好ましい。これにより、内挿部材25Gの傾斜部26によって糸状物70を遠位側に押し出すことができる。中空部材22Gに対して内挿部材25Gを近位側に移動させずに、内挿部材25Gを回転させ、内挿部材25Gを再度遠位側に移動させてもよい。糸状物70を内挿部材25Gによって押し出さずに、縫合装置全体の移動等によって、糸状物70の保持を解除する場合、内挿部材25Gは、糸状物70の保持のみを行う。その場合、内挿部材25Gの回転動作または軸方向への移動動作のいずれか片方のみによって、糸状物70を保持することができる。
【0119】
(実施の形態8)
図36〜
図41を用いて、実施の形態8に係る針機構2(2H)について説明する。
図36〜
図37はそれぞれ中空部材22(22H)の遠位側の側面図および斜視図を表す。
図38〜
図39はそれぞれ内挿部材25Hの遠位側の側面図および斜視図を表す。
図40〜
図41は、針機構2Hの遠位側を示す側面図(一部断面図)を表す。
【0120】
図36〜
図37に示すように、中空部材22Hの遠位端部には傾斜部23が設けられている。中空部材22Hの傾斜部23は、縫合対象を穿刺する部分として機能する。傾斜部23の構成としては、実施の形態7で挙げた構成を採用することができる。
【0121】
図38〜
図39に示すように、内挿部材25Hの遠位端部には溝部27が設けられていることが好ましい。内挿部材25Hの溝部27によって、糸状物70を保持するための出入口部12、通路13および終端部14の少なくとも一部を構成することができる。
【0122】
内挿部材25Hの溝部27の深さは、糸状物70の直径以上の深さであれば特に限定されないが、加工の容易性や針機構の強度や糸状物70の保持のしやすさの観点から中空部材22Hの半径以下であることが好ましい。内挿部材25Hの溝部27の幅は、糸状物70の直径以上であれば、特に限定されないが、加工の容易性や針機構の強度の点から糸状物70の直径の3倍以上、または5倍以上であることが好ましく、8倍以下、または10倍以下であることが好ましい。
【0123】
内挿部材25Hの溝部27は、底壁27A、遠位側壁27Bおよび近位側壁27Cの3つの内壁で形成されている。溝部27の遠位側壁27Bと近位側壁27Cは、
図38に示すように針機構2Hの軸方向に対して垂直に形成されていてもよく、針機構2Hの軸方向に対して傾斜するように形成されていてもよい。
【0124】
中空部材22Hの傾斜部23の近位端よりも近位側には半円筒部28が設けられていることが好ましい。中空部材22Hの長軸を水平方向にした側面視において、半円筒部28は、傾斜部23の近位端から始まる部分であることが好ましい。当該側面視において、半円筒部は中空部材22Hの長軸に沿った直線状であることが好ましく、軸方向に対して傾斜する直線状、曲線状であってもよい。針機構2Hの軸方向において、中空部材22Hの半円筒部28から内挿部材25Hの溝部27と該溝部27よりも遠位部分を露出させることによって、針機構2に通路13を形成することができる。ここで露出とは、半円筒部28の近位端より遠位側に、内挿部材25Hの溝部27が配置された状態をいい、内挿部材25Hの遠位側壁27Bと半円筒部28の近位側壁28Cとが面する場合(
図40)、面しない場合(
図41)の両方を含む。また、内挿部材25Hの軸方向の位置や回転角度を調整することによって、通路13や出入口部12の幅を狭めることができる。すなわち、針機構2Hにおいて、捕捉部15は、中空部材22Hと内挿部材25Hによって構成されている。
【0125】
図39に示すように、内挿部材25Hは、遠位側に扁平部29を有していてもよい。その場合、扁平部29に溝部27が設けられていることが好ましい。中空部材22Hに対して内挿部材25Hを回転させることによって、針機構2には通路13が形成されなくなるため、糸状物70の保持を容易に解除することができる。
【0126】
扁平部29の厚さは、内挿部材25Hの最大外径よりも小さいことが好ましく、より好ましくは内挿部材25Hの最大外径の4分の3以下、さらに好ましくは3分の2以下の大きさであることが好ましい。扁平部29の厚さは、内挿部材25Hの軸方向において一定であってもよく、遠位端に向かって減少してもよい。
【0127】
軸方向において、内挿部材25Hの扁平部29は、中空部材22Hの半円筒部28以下の長さを有していることが好ましい。これにより、中空部材22Hに対して内挿部材25Hを回転させたときに、内挿部材25Hの溝部よりも遠位部分が半円筒部28から露出する高さが低くなるため、糸状物70をスムーズに保持解除することができる。なお、露出する高さとは、半円筒部28の軸方向に平行な平面と、扁平部29の露出した部分の内、半円筒部28の軸方向に平行な平面から最も遠い点、との距離のことである。内挿部材25Hの溝部よりも遠位部分が半円筒部28から露出する高さを低くするためには、内挿部材25Hの遠位側壁27Bと半円筒部28の近位側壁28Cとが面しないように、あるいは、面する部分を小さくするように内挿部材を回転させる。
【0128】
図40〜
図41を用いて、針機構2Hによって糸状物70を把持する方法を説明する。軸方向において、内挿部材25Hを中空部材22Hの溝部24よりも近位側に移動させる。または、内挿部材25Hの溝部24の遠位端よりも遠位部分を、中空部材22Hの半円筒部28の近位端よりも遠位側に配置する。このとき、内挿部材25Hの溝部よりも遠位部分が半円筒部28から露出する高さを極力低くし、糸状物70を半円筒部28に誘導しやすいように、内挿部材25Hを中空部材22Hに対して回転させることが好ましい。すなわち、内挿部材25Hの溝部24の深さ方向が、半円筒部28の軸方向に平行な平面と平行になるように回転させることが好ましい。
【0129】
糸状物70の一部を針機構2Hよりも遠位側に配置し、針機構2Hを遠位側に移動させることによって、糸状物70の一部は、中空部材22Hの傾斜部23に誘導されて、中空部材22Hの半円筒部28の近位端における軸方向に垂直な面である近位側壁28Cに引っ掛かる。次いで、内挿部材25Hを、中空部材22Hに対して回転させて、内挿部材25Hの溝部よりも遠位部分が半円筒部28から露出する高さをより高くすると、中空部材22Hと内挿部材25Hによって通路13が形成される。すなわち、内挿部材25Hの溝部24の深さ方向が、半円筒部28の軸方向に平行な平面と垂直になるように回転させると、中空部材22Hと内挿部材25Hによって通路13が形成される。さらに中空部材22Hを遠位側に移動させると通路13の幅が狭まる。
図40に示すように、内挿部材25Hの溝部27の遠位側壁27Bと、中空部材22Hの半円筒部28の近位側壁28Cの2箇所で糸状物70を挟むことによって糸状物70を保持することができる。
【0130】
図41に示すように、中空部材22Hに対して内挿部材25Hを回転させて、内挿部材25Hの溝部27よりも遠位部分が半円筒部28から露出する高さを低くすると、糸状物70が針機構2Hから保持解除される。すなわち、内挿部材25Hの溝部24の深さ方向が、半円筒部28の軸方向に平行な平面と平行になるように回転させると、糸状物70が針機構2Hから保持解除される。
【0131】
(実施の形態9)
図42〜
図47を用いて、実施の形態9に係る針機構2(2I)について説明する。針機構2(2I)は、中空部材22(22I)と、中空部材22Iの内側に設けられている内挿部材25(25I)とを有している。中空部材22Iと内挿部材25Iにはそれぞれ溝部24、27が設けられている。
図42〜
図43はそれぞれ中空部材22Iの遠位側の側面図および斜視図を表す。
図44は、内挿部材25Iの遠位側の斜視図を表す。
図45〜
図47は、実施の形態9に係る針機構2(2I)の遠位側を拡大した側面図(一部断面図)を表す。
【0132】
図42〜
図43に示すように、中空部材22Iの遠位端部には傾斜部23が設けられている。また、
図44に示すように、内挿部材25Iの遠位端部にも傾斜部26が設けられている。中空部材22Iの傾斜部23と内挿部材25Iの傾斜部26の構成としては、実施の形態7で挙げた構成を採用することができる。
【0133】
軸方向において、中空部材22Iの傾斜部23の長さと、内挿部材25Iの傾斜部26の長さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。傾斜部23、26の少なくともいずれか一方が、縫合対象物に穿刺する部分として機能すればよい。
図45〜
図47では、中空部材22Iの傾斜部23が、内挿部材25Iの傾斜部26よりも軸方向に長く形成されている。
【0134】
また、中空部材22Iの傾斜部23と、内挿部材25Iの傾斜部26は、傾斜角度が同じであってもよく、異なっていてもよい。これらの傾斜角度は、例えば、45度以上、60度以上、70度以上であってもよく、85度以下、または80度以下であっても許容される。
図45〜
図47では、傾斜部23の傾斜角度が、傾斜部26の傾斜角度よりも小さい例を示している。
【0135】
実施の形態7〜8では中空部材22と内挿部材25のいずれか一方に溝部が設けられていたのに対して、実施の形態9では中空部材22Iと内挿部材25Iの両方にそれぞれ溝部24、27が設けられている点で異なっている。また、実施の形態7〜8では中空部材22または内挿部材25の溝部24、27の近位側壁(24C、27C)および遠位側壁(24B、27B)が、針機構2の軸方向に対して垂直に形成されていたのに対して、実施の形態9では、溝部を構成する側壁が針機構2の軸方向に対して傾斜するように形成されている点で異なっている。
【0136】
中空部材22Iの溝部24の深さや幅は、実施の形態7の中空部材22Iと同様に設定することができる。また、内挿部材25Iの溝部27の深さや幅は、実施の形態8の内挿部材25Iと同様に設定することができる。
【0137】
中空部材22Iの溝部24を構成する遠位側壁24Bと近位側壁24Cの少なくともいずれか一方が軸方向に対して傾斜していることが好ましい。また、内挿部材25Iの溝部27の遠位側壁27Bと近位側壁27Cの少なくともいずれか一方が軸方向に対して傾斜していることが好ましい。このように中空部材22Iまたは内挿部材25Iの溝部の内壁を傾斜させることによって、糸状物70の保持および解除を行いやすくなる。
【0138】
中空部材22Iは、溝部24の遠位側壁24Bと近位側壁24Cのいずれか一方が軸方向に対して傾斜しており、他方が軸方向に対して垂直であることが好ましい。同様に、内挿部材25Iも、溝部27の遠位側壁27Bと近位側壁27Cのいずれか一方が軸方向に対して傾斜しており、他方が軸方向に対して垂直であることが好ましい。このように溝部の遠位側壁と近位側壁の傾斜角度を調整することによって、糸状物70の保持および解除を行いやすくなる。
【0139】
図45〜
図47に示すように、中空部材22Iの溝部24の遠位側壁24Bが軸方向に対して遠位側に傾斜しており、内挿部材25Iの溝部27の近位側壁27Cが軸方向に対して近位側に傾斜していることが好ましい。その場合、中空部材22Iの溝部24の近位側壁24Cと、内挿部材25Iの溝部27の遠位側壁27Bが、それぞれ軸方向に対して垂直に形成されていることが好ましい。対向する中空部材22Iの溝部24の近位側壁24Cと、内挿部材25Iの溝部27の遠位側壁27C、つまり軸方向に対して垂直に形成されている2つの側壁によって糸状物70を挟んで保持すれば、針機構2Iから糸状物70が脱落することを抑制できる。一方、対向する中空部材22Iの溝部24の遠位側壁24Bと、内挿部材25Iの溝部27の近位側壁27C、つまり、軸方向に対して傾斜している2つの側壁によって、通路13の幅が径方向の内方に向かって狭くなる。このため、糸状物70が径方向の外方に押し出されやすくなり、針機構2Iから糸状物70を保持解除しやすくなる。中空部材22Iに対する内挿部材25Iの軸方向の位置や回転角度を調整することによって、通路13や出入口部12の幅を狭めることができる。すなわち、針機構2Iにおいても、捕捉部15は中空部材22Iと内挿部材25Iによって構成されている。
【0140】
図45〜
図47を用いて、針機構2Iによって糸状物70を保持および解除する方法を説明する。軸方向および周方向において、中空部材22Iの溝部24と内挿部材25Iの溝部27が重なるように配置する。
【0141】
糸状物70の一部を針機構2Iよりも遠位側に配置し、針機構2Iを遠位側に移動させることによって、糸状物70の一部は、中空部材22Iの傾斜部に誘導されて、中空部材22Iの溝部24と内挿部材25の溝部27によって構成される出入口部12に到達する。さらに中空部材22Iを遠位側に移動させることで、
図45に示すように、糸状物70は中空部材22Iの溝部24と内挿部材25Iの溝部27によって構成される通路13内に進入する。次いで、内挿部材25Iを、中空部材22Iに対して近位側に移動させる。
図46に示すように、中空部材22Iの溝部24の近位側壁24Cと内挿部材25Iの溝部27の遠位側壁27Bで糸状物70を挟むことによって糸状物70を保持することができる。
【0142】
図47に示すように、中空部材22Iに対して内挿部材25Iを遠位側に移動させると、傾斜している中空部材22Iの溝部24の遠位側壁24Bと、内挿部材25Iの溝部27の近位側壁27Cによって形成される通路13の幅が狭くなり、糸状物70は針機構2Iの外に押し出される。このようにして糸状物70の保持を解除することができる。
【0143】
実施の形態6では、中空部材22に出入口部12、通路13および終端部14が形成されている構成例を示した。また、実施の形態7〜9では、中空部材22と内挿部材25によって出入口部12、通路13および終端部が形成されている構成例を示した。図示していないが、内挿部材25に出入口部12、通路13および終端部14が形成されていてもよい。いずれの態様でも糸状物70を保持および解除することができる。
【0144】
上記ではTSSでの硬膜の縫合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、手術の種類や縫合対象物(すなわち、生体組織の種類)は適宜選択できる。例えば、開頭手術・開腹手術・開胸手術といったあらゆる手術位置において、また内視鏡や顕微鏡の使用の有無にも限定されずに使用できる。さらに、本発明は、操作部を医師等の人間での操作を例に説明したが、これに限定されずマニピュレータを持つロボットを用いて操作できる。上記生体組織としては、例えば、硬膜・くも膜・胸膜・心膜・腹膜等の膜組織のみに限定されず、皮膚・血管・肺・心臓・消化管・骨・筋等のあらゆる生体組織を含むことができる。
【0145】
本願は、2016年8月23日に出願された日本国特許出願第2016−163086号に基づく優先権の利益を主張するものである。2016年8月23日に出願された日本国特許出願第2016−163086号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。