(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸素化物が、イソブチルアルデヒドを含み、前記酸素化物流を処理することが、前記イソブチルアルデヒドのイソブチルアルコールまたはジイソブチルエーテルへの水素化を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
ステップ(d)の後に、前記アルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせを含む流れをガソリンに添加することをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
前記少なくとも3個の炭素原子を有するアルコール及びエーテルの少なくとも40%が、前記少なくとも3個の炭素原子を有するアルコール及びエーテルの総重量に基づいて分岐している、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0020】
概して、本発明は、中〜高アルカン含量のオレフィン流をヒドロホルミル化し、さらにヒドロホルミル化生成物の少なくとも一部を処理してガソリン添加剤を生成することを含む方法に関する。本明細書で論じる他の利点に加えて、いくつかの実施形態の特別な利点は、気体流(オレフィン、シンガス)を、高圧ガスまたは液化ガス輸送容器またはガスパイプラインではなく、従来のトラック及び鉄道車両による輸送に好適な液体燃料流(アルコール、ガソリン/アルコールブレンド)に転化することである。
【0021】
元素周期律表及びその中の種々のグループへの全ての言及は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,72nd Ed.(1991−1992)CRC Press,at page I−11.に掲載された版のものである。
【0022】
反対の記述、または文脈からの暗示がない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての試験方法は、本願の出願日時点で最新のものである。米国特許実務のために、参照されるあらゆる特許、特許出願、または公開の内容は、その全体が参照により組み込まれ(または、その相当する米国版が、同じように参照により組み込まれ)、特に、定義の開示(本開示において具体的に示されるいかなる定義とも矛盾しない程度に)、及び当技術分野における一般知識に関して、参照により組み込まれる。
【0023】
本明細書に使用されるとき、「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は、同義に使用される。用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、及びこれらの変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲内に現れる場合、限定的な意味を持たない。したがって、例えば、「1つの(a)」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、この組成物が、「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むことを意味すると解釈することができる。
【0024】
また本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)を含む。本発明の目的で、当業者の理解と同様に、数値範囲は、その範囲内に含まれる全ての可能な部分範囲を含み、それを補助することを意図していることが理解されよう。例えば、1から100までの範囲は、1.01から100まで、1から99.99まで、1.01から99.99まで、40から60まで、1から55までなどを伝えることを意図している。また、本明細書では、特許請求の範囲におけるそのような記載を含む数値範囲及び/または数値は、「約」という用語を含むように読むことができる。このような場合、「約」という用語は、本明細書に記載されている数値と実質的に同じ数値範囲及び/または数値を指す。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「ppmw」は、重量百万分率を意味する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「N/I比」または「N/I」は、ノルマルアルデヒド(N)対、分岐(メチル基)がアルデヒド部分の隣に(に対してα位で)生じる、分岐異性体(I)の比を指す。この用語は、一般に、水素部分と対比してCO部分が結合する末端オレフィンの炭素を指し、オレフィン中に存在する分岐には関係しない。例えば、プロピレンはn−ブチルアルデヒド(N異性体)及びイソブチルアルデヒド(I異性体)を生成する。
【0027】
「トン」はメートルトンを意味するため、1時間当たり2トンは1時間当たり2000kgであり、換言すれば工業規模のプロセスである。もちろん、供給速度への言及は、プロセスの通常の動作中に適用可能なものに対するものである。メンテナンス及び他の理由のためのプロセスの操作停止は、本発明の範囲に影響を与えることなく起こり得る。
【0028】
本発明の目的で、「炭化水素」という用語は、少なくとも1つの水素原子及び少なくとも1つの炭素原子を有する全ての許容可能な化合物を含むことが意図されている。また、このような許容可能な化合物は、1つ以上のヘテロ原子を有してもよい。広範な態様において、許容可能な炭化水素としては、非環式(ヘテロ原子を有するまたは有さない)及び環式、分岐状及び非分岐状、炭素環式及び複素環式、芳香族ならびに非芳香族の有機化合物が挙げられ、これらは、置換されていても、非置換であってもよい。
【0029】
本明細書に使用されるとき、「置換」という用語は、別途示されない限り、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことが企図される。広範な態様において、許容可能な置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分岐状及び非分岐状、炭素環式及び複素環式、芳香族、ならびに非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば、炭素数が1〜20個またはそれ以上、好ましくは1〜12の範囲であり得る、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ならびにヒドロキシ、ハロ、及びアミノが挙げられる。許容可能な置換基は、1つ以上であってもよく、同じかまたは適切な有機化合物の場合には異なっていてもよい。本発明は、決して、有機化合物の許容可能な置換基により限定されることを意図するものではない。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ヒドロホルミル化」という用語は、限定するものではないが、1つ以上の置換または非置換オレフィン化合物または1つ以上の置換または非置換オレフィン化合物を含む反応混合物を1つ以上の置換または非置換アルデヒドまたは1つ以上の置換または非置換アルデヒドを含む反応混合物に転化することを含む、許容される全ての不斉及び非対称ヒドロホルミル化プロセスを含むことが意図される。
【0031】
用語「反応流体」、「反応媒体」及び「触媒溶液」は、本明細書では互換的に使用され、限定するものではないが、混合物であって、(a)金属有機リン配位子錯体触媒、(b)遊離有機リン配位子、(c)反応で形成されるアルデヒド生成物、(d)未反応反応物質、(e)前記金属有機リン配位子錯体触媒及び前記遊離有機リン配位子のための溶媒、ならびに任意に、(f)反応で形成された1種以上のリン酸性化合物(同種または異種であってもよく、これらの化合物は処理装置表面に付着したものを含む)及び(g)有機リン配位子分解生成物例えば、加水分解生成物及び/または対応する酸化物を含む、混合物が含まれ得る。反応流体は、限定するものではないが、(a)反応域内の流体、(b)分離域への途中の流体ストリーム、(c)分離域内の流体、(d)反応域内の流体流、(e)反応域または分離域から回収された流体、(f)触媒処理ステップ(例えば、水性緩衝液での処理、PCT公開パンフレットWO2015/153070に記載されているアルカノールアミンの水溶液による処理など)を経た回収された流体(g)反応域または分離域に戻された処理流体、(h)外部クーラー内の流体、及び(i)配位子分解生成物及びそれらの塩、を包含する。
【0032】
本発明の実施形態は、オレフィンをガソリン添加剤としての使用に好適なアルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせに転化するプロセスに関する。「ガソリン」という用語は、当業者の理解に合致した方法で本明細書中にて使用され、例えばモーター燃料を含む。
【0033】
米国の政府規制では、ガソリンなどの自動車燃料は、燃料がエンジンで燃焼したときに大気に放出される特定の有害廃棄副生成物の生成を避けるように処方されることが要求されている。これらの規制は、オレフィン及び芳香族化合物の削減に向けられており、そのような目標を実現するためには、酸素の存在を必要とする。ガソリンへの酸素化物の添加は、現在義務づけられている排出基準に合致するレベルに炭化水素及び一酸化炭素排出ガスを低減することを意図している。
【0034】
アルコールは、燃料のオクタン価を高めるためにガソリンなどの自動車燃料に長く添加されてきた。エタノールは、特に、未燃焼の炭化水素及び一酸化炭素燃焼副生成物を低減するのに有効なレベルで使用される場合、モーター燃料添加剤としてのその使用を制限する特性を有する。製品のコストがガソリン添加剤としてのアルコールの経済的使用を可能にするのに十分低い程度に脱水されたエタノールは、アルコールが燃料中で混合しない原因となる量の水を依然として含む。結果として、エタノール添加剤は、特定の周囲温度条件下で炭化水素燃料から分離する傾向にある。さらに、貯蔵中のガソリンは、大気から追加の量の水を蓄積し得る。追加の水へのガソリンのこの曝露は、燃料からのアルコールの相分離を引き起こす可能性がある。
【0035】
共溶媒を添加してC1及びC2アルコールの燃料からの相分離を防止することができる。ターシャリーブチルアルコール(TBA)は、自動車燃料用のC1及びC2添加剤とともに使用されている共溶媒の例である。
【0036】
本明細書に開示されているプロセスからのアルコール、エーテルまたはそれらの組み合わせがガソリンに添加される場合、ルコール、エーテル、または組み合わせを、他のモーター燃料添加剤と一緒に、他のモーター燃料添加剤を添加する前に、及び/または他のモーター燃料添加剤を添加した後、加えることができることを理解するべきである。
【0037】
モーター燃料添加剤として使用される現在の酸素化物には、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)、及びターシャルアミルメチルエーテル(TAME)が含まれる。これらの製品は、高価であり、MTBE及びTAMEの製造のためのメタノール、またはETBEの調製のためのエタノール、の輸入が必要であることが分かっている。メタノールまたはエタノールは、精製プロセスにおいて従来から製造されている製品ではなく、したがって添加剤のコストを増加させる。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、低純度のオレフィン流をロジウムヒドロホルミル化触媒とともに使用してヒドロホルミル化生成物を形成し、次いで粗製アルデヒド生成物を水素化して、酸素化物含量を増加させるためにガソリン添加剤として使用するのに好適なアルコール、エーテルまたはそれらの組み合わせにする、プロセスを提供する。特定の実施形態では、低級オレフィン流から高分岐のアルコールを生成するための高活性な低N/Iヒドロホルミル化条件(例えば、低N/Iアルデヒド比に対して選択的である配位子の利用を含む)の使用は、有価なかつ非常に有効な燃料添加剤を生成するであろう。
【0039】
一実施形態によれば、オレフィンを、ガソリン添加剤としての使用に好適である、アルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせに転化するための本発明のプロセスは、(a)供給流を受け取ることであって、前記供給流が、2〜5個の炭素原子を有する1種以上のオレフィンを前記供給流の重量に基づいて80重量%までの量で含む、供給流を受け取ることと、(b)触媒の存在下で前記供給流をヒドロホルミル化して、前記供給流からの前記オレフィンの少なくとも80%を酸素化物に転化させることと、(c)ステップ(b)からの生成物流を、酸素化物流と、未反応オレフィン、不活性成分、触媒、及び残存酸素化物を含む流れとに分離することと、(d)前記酸素化物流を処理して、複数の前記酸素化物を、少なくとも3個の炭素原子を有するアルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つに転化させることと、を含み、少なくとも3個の炭素原子を有する前記アルコール及びエーテルの少なくとも25重量%が、少なくとも3個の炭素原子を有する前記アルコール及びエーテルの総重量に基づいて分岐しており、前記アルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせが、ガソリン添加剤としての使用に好適である。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記供給流中のオレフィンの少なくとも90%が、ステップ(b)の前記ヒドロホルミル化において酸素化物に転化される。前記供給流中のオレフィンの少なくとも95%が、いくつかの実施形態では、ステップ(b)の前記ヒドロホルミル化において酸素化物に転化される。
【0041】
いくつかの実施形態では、供給流は、供給流の総重量に基づいて少なくとも50重量%のプロピレンを含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の総重量に基づいて少なくとも60重量%のプロピレンを含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の総重量に基づいて少なくとも70重量%のプロピレンを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、供給流は、供給流の総重量に基づいて少なくとも50重量%のエチレンを含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の総重量に基づいて少なくとも60重量%のエチレンを含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の総重量に基づいて少なくとも70重量%のエチレンを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、供給流は、供給流の総重量に基づいて少なくとも50重量%のブテンを含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の総重量に基づいて少なくとも60重量%のブテンを含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の総重量に基づいて少なくとも70重量%のブテンを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、供給流は、供給流の重量に基づいて2〜5個の炭素原子を有する少なくとも50重量%のオレフィン(オレフィンの混合物を含む)を含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の重量に基づいて2〜5個の炭素原子を有する少なくとも55重量パーセントのオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、エチレン、プロピレン及び/またはブテンは、供給流の総重量に基づいて供給流の少なくとも60%を構成する。
【0045】
いくつかの実施形態では、供給流は、ガス状オレフィン流中に見出されるアルカン及び他の不活性成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、供給流は、供給流の重量に基づいて少なくとも15重量%のアルカンを含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の重量に基づいて少なくとも20重量%のアルカンを含む。いくつかの実施形態では、供給流は、供給流の重量に基づいて少なくとも30重量%のアルカンを含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の重量に基づいて少なくとも35重量%のアルカンを含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の重量に基づいて50重量%までのアルカンを含む。供給流は、いくつかの実施形態では、供給流の重量に基づいて45重量%までのアルカンを含む。いくつかの実施形態では、供給流は、供給流の重量に基づいて40重量%までのアルカンを含む。
【0046】
供給流は、それぞれ0〜1000ppmwまでの、またはそれ以上の範囲の濃度で、メチルアセチレン、プロパジエン、ブタジエン及び1−及び2−ブチンのような多価不飽和不純物を含有してもしなくてもよい。このような不純物は、ヒドロホルミル化の前に供給原料から除去する必要がある場合としない場合がある。このような不純物を除去する必要がある場合には、例えば、PCT公開番号WO2014/209736A1に開示されているように、アルカンを形成するために水素との反応のような当該技術分野において周知の方法によって除去することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)における供給流をヒドロホルミル化することにより、オレフィンの少なくとも80%が供給流から酸素化物に転化される。いくつかの実施形態において、ステップ(b)における供給流をヒドロホルミル化することにより、オレフィンの少なくとも90%が供給流から酸素化物に転化される。いくつかの実施形態では、ステップ(b)における供給流をヒドロホルミル化することにより、オレフィンの少なくとも95%が供給流から酸素化物に転化される。ステップ(b)において実施することができるヒドロホルミル化に関するさらなる詳細を以下に示す。例えば、いくつかの実施形態において、ステップ(b)におけるヒドロホルミル化は、アミンの存在下で行うことができる。別の例として、特定の触媒は、本発明のいくつかの実施形態によるヒドロホルミル化に特に有用である。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、特に活性である(例えば、ロジウム原子ベースで0.5回転/秒より大きい反応速度を有する)ロジウム系触媒を使用することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、分離ステップ(c)は、以下により詳細に説明するように、ストリッピングガス気化器を使用して実施することができる。例えば、供給ガスが不活性成分またはアルカンを含むいくつかの実施形態では、供給流からのそのような不活性成分またはアルカンまたは未反応オレフィンまたはシンガスは、分離を容易にするのに使用することができる。いくつかの実施形態では、触媒溶液から望ましくない酸性配位子副生成物を除去し、配位子及び触媒の安定性を改善/維持するために、未反応オレフィン、不活性物質、触媒、及びステップ(c)からの残存酸素化物を含む流れを水性緩衝液で処理することができる。
【0049】
以下により詳細に議論されるように、ステップ(c)における酸素化物流はアルデヒドを含む。このようなアルデヒドの例を以下に記載する。いくつかの実施形態において、ステップ(c)における酸素化物の少なくとも80重量%は、ステップ(b)におけるヒドロホルミル化によって形成される。
【0050】
いくつかの実施形態では、アルデヒドのような、ステップ(c)の酸素化物流中の酸素化物を処理して、複数の酸素化物をアルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせに転化することができる。例えば、いくつかの実施形態において、ステップ(d)による酸素化物流を処理する工程は、酸素化物のアルコールへの水素化を含む。別の例として、いくつかの実施形態では、酸素化物はイソブチルアルデヒドを含み、酸素化物流を処理することは、イソブチルアルデヒドの、イソブチルアルコールまたはジイソブチルエーテルへの水素化を含む。いくつかの実施形態では、ステップ(c)の酸素化物流からの酸素化物の少なくとも一部はエステルに転化される。このようなエステルの一例はブチルブチレートである。
【0051】
いくつかの実施形態では、ステップ(d)の酸素化物流を処理することは、水を除去することをさらに含む。いくつかの実施形態では、特に、アルコール及びエーテルを含む流れをガソリンに供給すべき場合に、水を除去することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、ステップ(d)の後にアルコール及びエーテルの少なくとも一部を除去することを含む。この方法は、例えば、直鎖アルコールを除去することによって分岐アルコール成分を増加させるために使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスによって提供されるアルコール及び/またはエーテルをガソリンに添加することができる。例えば、除去された直鎖アルコールは、他の用途のために提供することができ、分岐状アルコール及び/またはエーテルは、ガソリンに提供することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、ステップ(d)からのアルコールの少なくとも90%が、3〜6個の炭素原子を有するアルコールを含む。
【0054】
上記のように、低級オレフィン流から高分岐アルコールを生成するための、高活性、低N/Iヒドロホルミル化条件の使用は、有価で非常に有効な燃料添加剤を製造することができる。いくつかの実施形態において生成される少なくとも3個の炭素原子を有するアルコール及びエーテルの少なくとも25%は、少なくとも3個の炭素原子を有するアルコール及びエーテルの総重量に基づいて分岐している。いくつかの実施形態において、少なくとも3個の炭素原子を有するアルコール及びエーテルの少なくとも40%は、少なくとも3個の炭素原子を有するアルコール及びエーテルの総重量に基づいて分岐している。分岐の程度は、周知の従来のガスクロマトグラフィー(GC)によって容易に決定される。本明細書で使用されるアルコールの重量組成は、保持時間及び検出器応答係数を決定するためにアルコール標準で較正された従来のGCカラムを使用する、試料の従来のGC分析によって決定される。直鎖及び分岐状のアルコール重量パーセントの適切な合計を実施して、組成及び分岐の程度を得ることができる。
【0055】
本発明の目的のために、「n−」または「直鎖」アルコールは、構造中に分岐を有さず、したがって1つの−CH
3部分のみを含有するアルコールである。直鎖アルコールには、例えば、n−プロパノール、n−ブタノール、及びn−ペンタノールが含まれる。「分岐状」アルコールは、アルコールからのアルキル鎖に隣接するかまたは離れているかに関わらず、構造中に分岐を有する。分岐状アルコールの例には、イソブタノール、2−メチルブタノール、及び2,2−ジメチルプロパノールが含まれる。分岐が特にアルコールまたはアルデヒド部分の隣に位置する場合、その物質は例えばイソブタノール中にあるような「イソ」と呼ばれる。
【0056】
ここで、本発明のプロセスによるヒドロホルミル化ステップに移ると、供給流中のオレフィンに加えて、他の反応物には、水素及び一酸化炭素が含まれ、これらを触媒の存在下でオレフィンと反応させる。水素及び一酸化炭素は、石油分解法及び精製操作を含む、任意の好適な供給源から得ることができる。シンガス混合物が、水素及びCOの好ましい供給源である。
【0057】
(合成ガスに由来する)シンガスとは様々な量のCO及びH
2を含有するガス混合物に付与される名称である。生成方法は周知である。典型的には、水素及びCOがシンガスの主成分であるが、シンガスは、CO
2、ならびにN
2及びArといった不活性ガスを含有してもよい。H
2とCOとのモル比は大きく変動するが、通常は、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1の範囲である。シンガスは市販されており、燃料源として、または他の化学物質を生成するための中間体として多用される。化学的生成に最も好ましいH
2:COのモル比は、3:1〜1:3であり、通常、ほとんどのヒドロホルミル化用途では約1:2〜2:1にすることが目標とされる。
【0058】
ヒドロホルミル化プロセスで用いることができる置換または非置換オレフィン不飽和反応物質としては、2〜5個、好ましくは3〜4個の炭素原子を含有する、光学活性(プロキラル及びキラル)ならびに非光学活性(アキラル)オレフィン不飽和化合物の両方が挙げられる。これらの化合物は、米国特許第7,863,487号に詳細に記載されている。そのようなオレフィン不飽和化合物は、末端または内部で不飽和であってもよく、直鎖、分岐鎖または環状構造、ならびにオレフィン混合物であってもよい。
【0059】
有利なことに、ヒドロホルミル化プロセスでは溶媒が用いられる。過度にヒドロホルミル化プロセスに干渉しない任意の好適な溶媒を使用することができる。実例として、ロジウム触媒ヒドロホルミル化プロセスに好適な溶媒としては、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号、同第5,312,996号、及び同第5,929,289号に開示されるものが挙げられる。好適な溶媒の非限定的な例としては、飽和炭化水素(アルカン)、芳香族炭化水素、水、エーテル、アルデヒド、ケトン、ニトリル、アルコール、エステル、及びアルデヒド縮合生成物が挙げられる。溶媒の具体的な例としては、テトラグリム、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、キシレン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ブチルアルデヒド、及びベンゾニトリルが挙げられる。また、有機溶媒は、飽和限界まで溶存水を含有することができる。例示的な好ましい溶媒としては、ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)、炭化水素(例えば、トルエン)、ニトロ炭化水素(例えば、ニトロベンゼン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF))、ならびにスルホランが挙げられる。ロジウム触媒ヒドロホルミル化プロセスでは、一次溶媒として、生成しようとする所望のアルデヒド生成物に対応するアルデヒド化合物、及び/またはより高沸点のアルデヒド液体縮合副生成物、例えば、米国特許第4,148,830号及び同第4,247,486号に記載のように、ヒドロホルミル化プロセス中にインサイチュで生成され得るようなものを用いるのが好ましい場合がある。一次溶媒は、通常、最終的には、連続プロセスという性質のため、アルデヒド生成物及び高沸点アルデヒド液体凝縮副生成物(重質物)の両方を含むことになる。溶媒の量は、特に重要ではなく、反応媒体に所望な程度の遷移金属濃度を付与するのに十分であればよい。典型的には、溶媒の量は、反応流体の総重量に基づいて、約5重量パーセント〜約95重量パーセントの範囲である。溶媒の混合物を用いてもよい。
【0060】
このようなヒドロホルミル化反応に利用可能な例示的な金属−有機リン配位子錯体の例としては、金属−有機リン配位子錯体触媒が挙げられる。これらの触媒ならびにそれらの調製方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書に記載される特許に開示されているものが含まれる。一般に、このような触媒は、予備形成またはインサイチュで形成でき、有機リン配位子、一酸化炭素、及び場合によっては水素と錯体結合している金属が含まれる。配位子錯体種は、単核性、二核性、及び/または多核性の形態で存在してもよい。しかしながら、触媒の正確な構造は分かっていない。
【0061】
金属−有機リン配位子錯体触媒は、光学活性または非光学活性であり得る。金属としては、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)から選択される、第8、第9、及び第10族金属、ならびにこれらの混合物を挙げることができ、好ましい金属は、ロジウム、コバルト、イリジウム、及びルテニウムであり、より好ましくはロジウム、コバルト、及びルテニウムであり、とりわけロジウムである。これらの金属の混合物を用いてもよい。金属−有機リン配位子錯体及び遊離有機リン配位子を構成する許容される有機リン配位子は、モノ−、ジ−、トリ−有機リン配位子を含み、好ましくは非キレート配位子である。配位子の混合物を、金属−有機リン配位子錯体触媒及び/または遊離配位子において用いてもよく、そのような混合物は、同じかまたは異なってもよい。
【0062】
金属−有機リン配位子錯体触媒の配位子及び/または遊離配位子として機能し得る有機リン化合物は、アキラル(光学不活性)またはキラル(光学活性)タイプであってもよく、当技術分野において周知である。アキラル有機リン配位子が好ましい。
【0063】
本発明において有用な好ましい有機リン配位子は、高反応性の触媒を生成する。これらの配位子は、好ましくは、トリアリールホスフィン、ジアリールアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、トリオルガノホスファイト、ジオルガノホスファイトなどである。一般に、リン原子間の分離が10原子より大きいか、またはリン原子が単一の金属原子にキレート化するのを妨げない限り、配位子は多座ではない。
【0064】
得られる有機リン配位子−金属触媒は、ロジウム原子ベースで0.5回転/秒より大きい反応性を有するべきである。いくつかの実施形態では、得られた有機リン配位子−金属触媒は、ロジウム原子ベースで1回転/秒より大きい反応性を有する。
【0065】
金属−有機リン配位子錯体触媒の配位子として働き得る有機リン配位子の中には、モノオルガノホスファイト、ジオルガノホスファイト及びトリオルガノホスファイト化合物のような有機ホスファイトがある。このような有機リン配位子及び/またはそれらの調製方法は、当技術分野において周知である。
【0066】
代表的なモノオルガノホスファイトとしては、式:
【0068】
を有するものを挙げることができ、式中、R
10は、4〜40個またはそれ以上の炭素原子を含有する置換または非置換の三価炭化水素ラジカル、例えば、三価非環式及び三価環式ラジカル、例えば、三価アルキレンラジカル、例えば、1,2,2−トリメチロールプロパン等に由来するもの、または三価シクロアルキレンラジカル、例えば、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン等に由来するものを表す。このようなモノオルガノホスファイトは、例えば、米国特許第4,567,306号においてさらに詳細な記載を見つけることができる。
【0069】
代表的なジオルガノホスファイトとしては、式:
【0071】
を有するものを挙げることができ、式中、R
20は炭素原子数4〜40個またはそれ以上の置換または非置換の二価炭化水素基を表し、Wはフッ化物または1〜18個またはそれ以上の炭素原子を含む置換もしくは非置換アルコキシまたはアリールオキシ部分を表す。
【0072】
上記式(II)中のWで表される代表的な置換及び非置換の一価炭化水素基には、アルコキシ基、アリールオキシ基、またはフルオライド基が含まれ、R
20で表される代表的な置換及び非置換の二価炭化水素基には二価の非環式基及び二価の芳香族基が含まれる。例示的な二価非環式ラジカルには、例えば、アルキレン、アルキレン−オキシ−アルキレン、アルキレン−S−アルキレン、シクロアルキレンラジカル、及びアルキレン−NR
24−アルキレンが挙げられ、式中、R
24は、水素または置換もしくは非置換の一価炭化水素ラジカル、例えば、1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルである。より好ましい二価非環式ラジカルは、例えば、米国特許第3,415,906号及び同第4,567,302号等により詳細に開示されているような二価アルキレンラジカルである。例示的な二価芳香族ラジカルには、例えば、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、アリーレン−オキシ−アリーレン、アリーレン−NR
24−アリーレン(式中、R
24は、上記に定義したとおりである)、アリーレン−S−アリーレン、及びアリーレン−S−アルキレン等が挙げられる。より好ましくは、R
20は、例えば米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、及び同第4,835,299号等により詳細に開示されているような二価芳香族ラジカルである。好ましいジ有機ホスファイトの例は、4,8−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−[2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メトキシフェノキシ]−2,10−ジメトキシ−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンである。
【0073】
代表的なより好ましいクラスのジオルガノホスファイトは、式:
【0075】
のものであり、式中、Wは上記で定義したとおりであり、各Arは同じかまたは異なり、置換または非置換アリール基を表し、各yは同じかまたは異なり、0または1の値であり、Qは−C(R
33)
2−、−O−、−S−、−NR
24−、Si(R
35)
2及び−CO−からなる群から選択され、各R
33は同じかまたは異なり、水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、トリル及びアニシルであり、R
24は前記と同義であり、各R
35は同じかまたは異なり、水素またはメチルラジカルを表し、mは0または1の値を有する。このようなジオルガノホスファイトは、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、及び同第4,835,299号により詳細に記載されている。
【0076】
代表的なトリオルガノホスファイトとしては、式:
【0078】
を有するものを挙げることができ、式中、各R
46は、同じかまたは異なり、かつ置換もしくは非置換の一価炭化水素ラジカル、例えば、1〜24個の炭素原子を含有し得る、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、及びアラルキルラジカルである。例示的なトリ有機ホスファイトとしては、例えば、トリアルキルホスファイト、ジアルキルアリールホスファイト、アルキルジアリールホスファイト、トリアリールホスファイト等が挙げられ、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、ブチルジエチルホスファイト、ジメチルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)メチルホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)シクロヘキシルホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルホスファイト、トリス(3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)フェニルホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)(4−スルホニルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。このようなトリオルガノホスファイトは、例えば米国特許第3,527,809号及び同第4,717,775号においてより詳細に記載されている。
【0079】
上記の式(I)〜(IV)の有機ホスファイトのR
10、R
20、W、X、Q、及びArラジカルのいずれかは、所望であれば、本発明の方法の所望の結果に過度に悪影響を及ぼさない1〜30個の炭素原子を含む任意の適切な置換基で置換されていてもよい。アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びシクロヘキシル置換基のような対応する炭化水素ラジカルに加えて前記ラジカル上に存在し得る置換基は、例えば−Si(R
35)
3のようなシリルラジカル、−N(R
15)
2のようなアミノラジカル; − アリール−P(R
15)
2のようなホスフィンラジカル;−C(O)R
15のようなアシルラジカル−OC(O)R
15のようなアシルオキシラジカル、−−CON(R
15)
2及び−N(R
15)COR
15のようなアミドラジカル、−SO
2R
15のようなスルホニルラジカル、−OR
15のようなアルコキシラジカル、−SOR
15のようなスルフィニル基、−P(O)(R
15)
2のようなホスホニル基、ならびにハロ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシルラジカル等が挙げられ、各R
15ラジカルはそれぞれ1〜18個の炭素原子を有する同一または異なる1価の炭化水素ラジカル(例えば、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びシクロヘキシルラジカル)を表し、但し、N(R
15)
2のようなアミノ置換基において、各R
15は一緒になって、窒素原子を有する複素環式ラジカルを形成する2価の架橋基をも表すことができ、C(O)N(R
15)
2及び−N(R
15)COR
15のようなアミド置換基において、Nに結合している各R
15は、水素であってもよい。特定の所与の有機ホスファイトを構成する置換または非置換の炭化水素ラジカルのいずれも同じであっても異なっていてもよいことを理解されたい。
【0080】
より具体的に例示的な置換基としては、第一、第二及び第三アルキルラジカル例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、アミル、sec−アミル、t−アミル、イソ−オクチル、デシル、オクタデシル等、アリールラジカル例えばフェニル、ナフチル等、アラルキルラジカル例えばベンジル、フェニルエチル、トリフェニルメチル等、アルカリールラジカル例えばトリル、キシリル等、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキシルエチル等の脂環式ラジカル、アルコキシラジカル例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ、−OCH
2CH
2OCH
3、−O(CH
2CH
2)
2OCH
3、−O(CH
2CH
2)
3OCH
3等、アリールオキシラジカル例えばフェノキシ等、ならびにシリルラジカル例えば−Si(CH
3)
3、−Si(OCH
3)
3、−Si(C
3H7)
3等、アミノラジカル例えば−NH
2、−N(CH
3)
2、−NHCH
3、−NH(C
2H
5)等、アリールホスフィンラジカル例えば−P(C
6H
5)
2等、アシルラジカル例えば−C(O)CH
3、−C(O)C
2H
5、−C(O)C
6H
5等、カルボニルオキシラジカル例えば−C(O)OCH
3等、オキシカルボニルラジカル例えば−O(CO)C
6H
5等、アミドラジカル例えば−CONH
2、−CON(CH
3)
2、−NHC(O)CH
3等、スルホニルラジカル例えば−S(O)
2C
2H
5等、スルフィニルラジカル例えば−S(O)CH
3等、スルフィジルラジカル例えば−SCH
3、−SC
2H
5、−SC
6H
5等、ホスホニルラジカル例えば−P(O)(C
6H
5)
2、−P(O)(CH
3)
2、−P(O)(C
2H
5)
2、−P(O)(C
3H
7)
2、−P(O)(C
4H
9)
2、−P(O)(C
6H
13)
2、−P(O)CH
3(C
6H
5)、−P(O)(H)(C
6H
5)等が挙げられる。
【0081】
そのような有機ホスファイト配位子の特定の例示的な例には、以下が含まれる:2−t−ブチル−4−メトキシフェニル(3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメトキシ−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル)ホスファイト、メチル(3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメトキシ−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジイル)ホスファイト、及び亜リン酸の[1,1′−ビフェニル]−2,2′−ジイルテトラキス[2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メトキシフェニル]エステル。
【0082】
本開示のプロセスにおいて使用可能な好ましいトリオルガノホスフィン配位子は、3つのアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリールアルキルラジカル、またはそれらの組み合わせに共有結合した1つのリン原子を含む任意の有機化合物を含む。トリオルガノホスフィン配位子の混合物も使用することができる。代表的な有機モノホスフィンとしては、式:
【0084】
を有するものを挙げることができ、式中、各R
29、R
30及びR
31は同一でも異なっていてもよく、4〜40個またはそれ以上の炭素原子を含む置換または非置換アルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルを表す。このようなトリオルガノホスフィンは、例えば、US3,527,809及びUS4,283,562においてより詳細に記載され、スルホン化誘導体はUS4,248,802に記載されているのを見出すことができ、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。例示的なトリアリールホスフィン配位子は、トリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリ(p−ビフェニル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(m−クロロフェニル)−ホスフィン、p−N、N−ジメチルアミノフェニルビス−フェニルホスフィンなどである。ジシクロヘキシルフェニル−ホスフィン及びシクロヘキシルジフェニルホスフィンが好ましい混合−アルキルアリールホスフィンである。トリフェニルホスフィン、すなわち式IIの化合物であって、各R
29、R
30及びR
31がフェニルであるものは、好ましいオルガノモノホスフィン配位子の例である。以前に指摘したように、反応は過剰の遊離のトリオルガノホスフィンを含む液体の影響を受ける。
【0085】
高活性触媒を使用することの所望の結果として、C3以上のオレフィンの観察されたアルデヒド異性体比(N/I)は低くなる傾向がある。オクタン価は分岐状酸素化物の方が高いので、これは低い反応性のオレフィン供給物をより反応性のある触媒と反応させることの思いがけない結果である。特に、シス/トランス2−ブテンのような内部オレフィンは、ヒドロホルミル化の前にオレフィンの異性化が起こらない限り、枝分かれ酸素化物を生成する。上記の配位子は、高い(>15)N/I比を生成しないので、高分岐ガソリン添加剤に加工するために高分岐酸素添加物を生成するのが好ましい。例えば、2−ブテンは主に2−メチルブチルアルデヒドを生成し、これは水素化されたときメチル分岐を含む2−メチルブタノールを生成する。
【0086】
イソブテンのような分岐オレフィンは、本質的に完全に枝分かれした酸素化物を生成するので、好ましいオレフィン成分である。例えば、イソブテンは主として3−メチルブチルアルデヒドを生成し、水素化すると3−ブタノールが得られる。イソブチレンを使用する他の技術とは対照的に、ヒドロホルミル化はかなりの量の2,2−ジメチルプロピオンアルデヒドまたは(オレフィン中に存在しない限り)第四級炭素を含む任意の種を生成しない。三級及び四級炭素を有する材料は、低い生分解性を有することが知られている。ガソリン添加剤として使用される三級及び四級炭素を有する部分の例としては、MTBE及びt−ブタノールが挙げられる。本発明のいくつかの実施形態は、このような材料の製造及び使用を有利に回避する。いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、1重量%未満の四級炭素を含む酸素化物流を提供する。
【0087】
本発明の好ましい触媒は、一酸化炭素及びトリアリールホスファイト配位子と錯体化したロジウムを含む。最も望ましい触媒は、塩素のような金属結合したハロゲンを含まず、水素、一酸化炭素及びロジウム金属と錯体を形成したトリアリールホスファイトを含有し、前記液体に可溶性の反応条件下で安定である触媒を生成する。
【0088】
ロジウムは、好ましくは予め形成された触媒、例えば安定な結晶性固体、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート(Rh(acac))として液体に導入される。ロジウムは、インサイチュで触媒に転化される前駆体形態として液体に導入することができる。そのような前駆体の形態の例は、ロジウムカルボニルトリフェニルホスフィンアセチルアセトネート、Rh
2O
3、Rh
4(CO)
12、Rh
6(CO)
16,及びロジウムハイドリドカルボニル−トリス(トリフェニルホスフィン)、RhH(CO)(PPh
3)
3である。反応媒体中に活性種を提供する触媒化合物及びそれらの調製は、当該技術分野で知られている、Brown et al.,Journal of the Chemical Society,1970,pp.2753−2764参照。
【0089】
一般に、最適触媒濃度は、プロピレンなどのα−オレフィンの濃度に依存する。例えば、プロピレン濃度が高いほど、反応器の所与のサイズにおいてアルデヒド生成物に所与の転化率を達成するために使用され得る触媒濃度がより低いことが通常である。先行技術は分圧と濃度が関連していると教示しており、高いプロピレン分圧の使用は液体からの「オフガス」(ベント)中のプロピレンの割合を増加させる。存在する可能性のあるプロパンの一部を除去するために、液体の再循環前に生成物回収域からガス流の一部をパージすることが必要な場合があるので、「オフガス」のプロピレン含量が高いほど、プロパンパージ流中に失われるプロピレンが多くなる。したがって、プロパンパージ流中に失われたプロピレンの経済的価値とより低い触媒濃度に関連する資本節約とのバランスをとることが必要である。本発明では、より高い通気損失は、より希薄な供給物の関数として生じるが、供給物が従来技術によって考慮されるものよりも低い値を有するので、それらの懸念される経済的な不利益は、現在のところ軽減されると認識される。さらに、本明細書で使用される高活性触媒は、通気孔内の未転化オレフィンの損失を低減すると同時に、ガソリン添加剤用途においてより有価な分岐状酸素化物のより高い割合を生成する。
【0090】
金属−有機リン配位子錯体触媒は、均質または不均質形態であってもよい。例えば、予備形成されたロジウムヒドリド−カルボニル−有機リン配位子触媒を調製し、ヒドロホルミル化反応混合物に導入してもよい。より好ましくは、ロジウム−有機リン配位子錯体触媒は、活性触媒をインサイチュで形成するために反応媒体に導入することができるロジウム触媒前駆体から誘導することができる。活性触媒のインサイチュ形成のために、例えば、ロジウム触媒前駆体、例えば、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、Rh
2O
3、Rh
4(CO)
12、Rh
6(CO)
16、Rh(NO
3)
3等を有機リン配位子とともに反応混合物に導入することができる。好ましい実施形態において、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートは、ロジウム前駆体として用いられ、有機リン配位子を含む溶媒の存在下で反応して、活性触媒をインサイチュ形成するために過剰量の(遊離)有機リン配位子とともに反応器に導入される触媒のロジウム−有機リン配位子錯体前駆体を形成する。いずれにしても、一酸化炭素、水素、及び有機リン配位子は、全て金属と錯化可能な配位子であり、ヒドロホルミル化反応で使われる条件下で反応混合物中に活性金属−有機リン配位子触媒が存在することは、十分である。カルボニル及び有機リン配位子は、ヒドロホルミル化プロセスの前またはヒドロホルミル化プロセス中にインサイチュでのいずれかにおいてロジウムと錯化することができる。
【0091】
実例として、好ましい触媒前駆体組成物は、可溶性ロジウムカルボニルオルガノホスファイト配位子錯体前駆体、溶媒、及び任意選択的に、遊離オルガノホスファイト配位子から本質的になる。好ましい触媒前駆体組成物は、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、有機溶媒、及びオルガノホスファイト配位子の溶液を形成することによって、調製することができる。有機リン配位子は、一酸化炭素ガスの発生により証明されるように、ロジウムアセチルアセトネート錯体前駆体のカルボニル配位子のうちの1つを容易に置き換える。
【0092】
したがって、金属−有機リン配位子錯体触媒は、有利には、一酸化炭素及び有機リン配位子と錯体化した金属を含み、前記配位子は、キレート化及び/または非キレート化様式で金属に結合(錯体化)される。
【0093】
触媒の混合物を用いてもよい。反応流体中に存在する金属−有機リン配位子錯体触媒の量は、用いるのに所望される所与の金属濃度をもたらし、例えば上述の特許に開示されるもの等、少なくとも関与する特定のヒドロホルミル化プロセスを触媒するのに必要な金属触媒量を基準に供給するのに必要な最小限の量とするだけでよい。一般に、反応媒体中の遊離金属として計算して、10ppmw〜1200ppmwの範囲の触媒金属、例えばロジウムの濃度が、大抵のプロセスには十分なはずであるが、通常、好ましくは10〜500ppmwの金属、より好ましくは、25〜350ppmwの金属が用いられる。
【0094】
金属−有機リン配位子錯体触媒に加えて、反応媒体中に遊離有機リン配位子(すなわち、金属と錯化していない配位子)が存在してもよい。遊離配位子の重要性は、US3,527,809、GB1,338,225及びBrown et al.,supra.,pages 2759 and 2761に教示されている。遊離有機リン配位子は、本明細書で使用可能なものとして上記で考察し、上記で定義した任意の有機リン配位子に相当し得る。遊離有機リン配位子は、用いられる金属−有機リン配位子錯体触媒の有機リン配位子と同じであることが好ましい。しかしながら、このような配位子は、全ての所与のプロセスにおいて同じである必要はない。本発明のヒドロホルミル化プロセスには、反応媒体中の金属1モル当たり0.1モル以下〜100モル以上の遊離有機リン配位子が関与し得る。好ましくは、ヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中に存在する金属1モル当たり1〜80モルの有機リン配位子の存在下で実行される。より好ましくは、アリールホスフィンの場合、金属1モル当たり3〜70モルのアリールホスフィン配位子が使用される。該有機リン配位子の量は、存在する金属に結合(錯化)する有機リン配位子の量と、存在する遊離有機リン配位子の量との合計である。所望される場合、例えば、反応媒体中の所定濃度の遊離配位子を維持するために、ヒドロホルミル化プロセスの反応媒体に、随時、任意の好適な方法で追加の有機リン配位子を供給してもよい。
【0095】
有機ホスファイトが使用される場合、それは全反応混合物の重量を基準にして約0.05〜約30重量%の範囲で存在し、好ましくはロジウム1モル当たり少なくとも3モル、好ましくは少なくとも5モルを提供するのに十分な量で存在するモル、最も好ましくは少なくとも10モルの遊離トリアリールホスファイトを提供するのに十分な量で存在する。
【0096】
一般に、溶液中の過剰の過剰な有機リン配位子は、より低いN/I比及びしばしばより反応性の触媒を与える。極端に低い過剰配位子は、ロジウムの喪失及び他の副反応の危険にさらすので、少なくとも3モル、好ましくは5モル以上の遊離有機リン配位子が反応流体中に存在するように注意する。
【0097】
ヒドロホルミル化プロセス及びそれらの操作のための条件は、一般に周知である。ヒドロホルミル化生成物は、非対称であっても非対称でなくてもよく、好ましい生成物は非対称でなく、任意のバッチ式、連続式または半連続式で実施することができ、所望の触媒液及び/またはガス再循環操作を含むことができる。
【0098】
再循環手順は、一般に、ヒドロホルミル化反応器、すなわち反応域から触媒及びアルデヒド生成物を含有する液体反応媒体の一部分を連続的または断続的のいずれかで取り出し、米国特許第5,430,194号及び同第5,681,473号に開示されるような複合膜を使用して、またはより従来的かつ好ましい蒸留方法、すなわち、別個の蒸留域において、適宜、常圧、減圧、または高圧下における1つ以上の段階での蒸留分離(例えば、米国特許第5,288,918号に開示されるように、不揮発性金属触媒含有残留物は反応域に再循環される)により、アルデヒド生成物をそこから回収することを伴う。揮発した物質の凝縮、及び例えばさらなる蒸留による分離及びさらなる回収は、任意の慣用の方法で行うことができ、所望により、さらなる精製及び異性体分離のために粗製アルデヒド生成物を通過させることができ、例えば、オレフィン出発物質及びシンガスは、ヒドロホルミル化域(反応器)に任意の所望の方法で再循環させることができる。そのような膜分離の回収された金属触媒含有ラフィネート、またはそのような気化分離の不揮発性金属触媒含有残留物は、所望される任意の従来的な方法でヒドロホルミル化域(反応器)へと再循環され得る。
【0099】
好ましい実施形態において、ヒドロホルミル化反応流体には、少なくともいくらかの量の4種の異なる主要な成分または構成成分、すなわち、アルデヒド生成物、金属−有機リン配位子錯体触媒、遊離有機リン配位子、及び該触媒及び該遊離配位子の溶媒を含む、任意の対応するヒドロホルミル化プロセスから得られた任意の流体が含まれる。ヒドロホルミル化反応混合物組成物は、ヒドロホルミル化プロセスに故意に用いられるか、該プロセス中にインサイチュで形成されるかのいずれかである、追加の成分を含み得るか、または通常含むことになる。このような追加成分の例には、未反応オレフィン出発物質、一酸化炭素及び水素ガス、及びオレフィン出発物質に対応する飽和炭化水素及び/または未反応異性化オレフィン、配位子分解化合物、及び高沸点液体アルデヒド縮合副生成物のようなインサイチュ形成副生成物、ならびに使用される場合には、他の不活性共溶媒型材料または炭化水素添加剤を含む。
【0100】
ヒドロホルミル化プロセスの反応条件は、光学活性及び/または非光学活性アルデヒドを製造するために従来使用されている任意の適切なタイプのヒドロホルミル化条件を含み得る。用いられるヒドロホルミル化反応条件は、所望されるアルデヒド生成物の種類により決定されるであろう。例えば、ヒドロホルミル化プロセスの水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物の全ガス圧は、1〜69,000kPaの範囲であってもよい。しかしながら、一般には、プロセスは、14,000kPa未満、より好ましくは3,400kPa未満の水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物の全ガス圧で操作されるのが好ましい。最小全圧は、主に、所望の反応速度を得るのに必要な反応物質の量により限定される。より具体的には、ヒドロホルミル化プロセスにおける一酸化炭素の分圧は、好ましくは1〜6,900kPa、より好ましくは21〜5,500kPaであり、一方で水素の分圧は、好ましくは34〜3,400kPa、より好ましくは69〜2,100kPaである。一般に、H
2ガス:COガスのモル比は、1:10〜100:1以上であり得、より好ましいモル比は1:10〜10:1である。
【0101】
一般に、ヒドロホルミル化プロセスは、任意の操作可能な反応温度で行うことができる。有利なことに、ヒドロホルミル化プロセスは、−25℃〜200℃、好ましくは50℃〜120℃の反応温度で行われる。
【0102】
ヒドロホルミル化プロセスは、1つ以上の好適な反応器、例えば、固定床反応器、流動床反応器、連続撹拌槽反応器(CSTR)、またはスラリー反応器といったものを用いて行うことができる。反応器の最適な細部及び形状は、使用される反応器の種類に依存するであろう。用いられる反応域は、単一容器であってもよく、または2つ以上の別個の容器を含んでもよい。用いられる分離域は、単一容器であってもよく、または2つ以上の別個の容器を含んでもよい。本明細書に用いられる反応域(複数可)及び分離域(複数可)は、同じ容器または異なる容器中存在し得る。例えば、反応蒸留及び反応性膜分離のような反応分離技術が反応域(複数可)で起こることがある。
【0103】
ヒドロホルミル化プロセスは、必要に応じて、消費されていない出発物質の再循環によって行うことができる。反応は、単一の反応域または複数の反応域で、直列または並列に行うことができる。反応ステップは、出発物質の一方を他方に漸増的に添加することによって行うことができる。さらに、反応ステップは、出発物質の共同添加と組み合わせてもよい。出発物質は、直列の反応域のそれぞれまたは全てに添加することができる。完全な転化が望ましくないかまたは得られない場合、出発材料は、例えば蒸留によって生成物から分離され、次いで出発材料は再循環される前に反応域に戻されるかまたは蒸留によって濃縮される。実際には、希薄供給物では、操作は、燃料ヘッダに通気された未反応オレフィン及びアルカンを用いたシングルパス操作で、シンガスの生成に使用されるか、またはフレアされて行われることが好ましい。いくつかの実施形態では、未反応のオレフィン及びアルカンを精製供給原料として使用することができる。精製所に返却されると、未反応のアルカンは、例えば、精製所の運転を強化またはバランスさせるために使用され得る。
【0104】
ヒドロホルミル化プロセスは、ガラスライニングされたステンレス鋼または類似のタイプの反応装置のいずれかで行われてもよい。反応域は、不適切な温度変化を制御するか、または起こり得るあらゆる「制御不能の」反応温度を防ぐために、1つ以上の内部及び/または外部熱交換器を備えていてもよい。
【0105】
本発明のヒドロホルミル化プロセスは、1つ以上のステップまたは段階で行うことができる。反応ステップまたは段階の正確な数は、資本費用と、高い触媒選択性、活性、寿命、及び操作性の容易さ、ならびに問題の出発物質の内因性反応性、及び反応条件に対する出発物質及び所望の反応生成物の安定性を達成する最良の妥協点により決定される。
【0106】
一実施形態では、本発明に有用なヒドロホルミル化プロセスは、例えば、米国特許第5,728,893号に記載されているような多段反応器中で行うことができる。このような多段反応器は、容器当たり1つ以上の理論的反応段階を生成する内部の物理的障壁を用いて設計することができる。
【0107】
一般に、連続的にヒドロホルミル化プロセスを実施することが好ましい。連続的なヒドロホルミル化プロセスは当該技術分野において周知である。連続プロセスは、シングルパスモードで実施することができ、すなわち、未反応オレフィン出発物質及び気化アルデヒド生成物を含む蒸気混合物を、アルデヒド生成物が回収される液体反応混合物から除去し、メークアップオレフィン出発物質、一酸化炭素及び水素は、未反応オレフィン出発物質を再循環させることなく、次のシングルパスのために液体反応媒体に供給される。そのようなタイプの再循環手順は、当該技術分野において周知であり、例えば、US4,148,830に開示されているような、所望のアルデヒド反応生成物から分離された金属有機リン錯体触媒流体の液体再循環、またはガス再循環、例えばUS4,247,486に開示されているような方法、ならびに必要に応じて液体及びガス再循環手順の両方の組み合わせが含まれる。最も好ましいヒドロホルミル化プロセスは、連続液体触媒再循環プロセスを含む。適切な液体触媒再循環手順は、例えば、米国特許第4,668,651号、同第4,774,361号、同第5,102,505号、及び同第5,110,990号に開示されている。
【0108】
一実施形態では、アルデヒド混合物は、そのアルデヒド混合物が、例えば溶媒抽出、結晶化、蒸留、気化、拭き取りフィルム蒸発、流下液膜蒸発、相分離、ろ過、またはそれらの任意の組み合わせなどのような任意の適切な方法によって製造される、粗反応混合物の他の成分から分離されてもよい。アルデヒド生成物は、国際公開第88/08835号に記載されるように捕獲剤の使用により形成されるため、粗反応混合物から除去することが望ましい場合がある、アルデヒド混合物を、粗反応混合物中の他の構成成分から分離するための1つの方法は、例えば、米国特許第5,430,194号及び同第5,681,473号に記載される、膜分離によるものである。
【0109】
上記のように、反応混合物から所望のアルデヒドを回収することができる。例えば、米国特許第4,148,830号及び第4,247,486号に開示された回収技術を使用することができる。例えば、連続液体触媒再循環プロセスでは、反応域から除去された液体反応混合物(アルデヒド生成物、触媒などを含む)、すなわち反応流体の部分は、分離域、例えば気化器/分離器に通すことができ、ここで、所望のアルデヒド生成物は、蒸留によって、1つ以上の段階で、減圧下または加圧下で、液体反応流体から凝縮され、生成物レシーバー中に回収され、必要に応じてさらに精製される。液体反応混合物中の残りの非揮発性触媒は、必要に応じて、任意の従来の方法で例えば蒸留によって凝縮したアルデヒド生成物からそれらの分離後に任意の水素及び一酸化炭素とともに、他の揮発性物質例えば、未反応オレフィンが液体反応中に溶解した、反応器に戻して再循環させることができる。一般に、有機リン配位子及び反応生成物の分解を避けるために、減圧下及び低温下で触媒含有反応混合物から所望のアルデヒドを分離することが好ましい。
【0110】
より具体的には、金属−有機リン錯体触媒含有反応流体からの所望のアルデヒド生成物の蒸留及び分離は、所望される任意の好適な温度で行うことができる。一般に、このような蒸留は比較的低い温度、例えば150℃未満、より好ましくは50℃〜140℃の範囲の温度で行われることが好ましい。また、このようなアルデヒド蒸留は、低沸点アルデヒド(例えば、C
4〜C
6)が含まれる場合にはヒドロホルミル化中に、または高沸点アルデヒド(例えば、C
7以上)が関与する場合には真空下で使用される全ガス圧よりも実質的に低い減圧下で行われることが一般に好ましい。例えば、ヒドロホルミル化反応器から取り出した液体反応生成物媒体を減圧させて、この時点では反応域、例えば、気化器/分離器の反応媒体中に存在するより低い合成ガス濃度を有する、液体媒体中に溶解した未反応ガスの実質的な部分を揮発させ、所望されるアルデヒド生成物を蒸留することが、慣習となっている。一般に、真空から最大で340kPaの全ガス圧までの範囲の蒸留圧が、ほとんどの目的に対して十分なはずである。
【0111】
米国特許第6,100,432号及びPCT公開WO2010/003073号は、触媒溶液からの生成物の蒸留を達成するために必要な温度を低下させるためのストリッピングガス気化器を用いる利点を教示している。特に、これらの参考文献は、より高分子量のアルデヒド及び未反応オレフィン及びシンガスをストリッピングガスとして使用することに焦点を当てている。本発明の供給物中の高レベルのアルカンの存在は、含有されたアルカンをストリッピングガスとして使用することによって気化器の温度を低下させるのに有用であることが分かった。ストリッピングガスとして使用される高レベルのアルカンの利点は、先行技術によって認識されたとは考えられていない。ある場合には、含まれるアルカンがストリッピングの任務を実行するのに十分であり、再循環が必要とされる場合はほとんどないので、再循環ブロワは必要でないことがある。
【0112】
気化器におけるより低い温度の重要性は、これらの過酷な条件下で典型的に存在する反応物(オレフィン、シンガス)の濃度が低いために増加する。触媒の配慮及び配慮がない場合、気化器中のロジウムの損失(通常はコロイド状または不溶性の金属として)が実質的な活性損失で観察されることがある。このロジウム及び/または触媒活性の損失は、通常、色の変化、触媒溶液の原子吸光分析によるロジウムのアカウンタビリティーの喪失、及び転化損失(しばしば、オレフィン分圧の上昇、気化した生成物の減少、またはヘッドスペースのGC分析によって観察される)を伴う。
【0113】
1種以上の反応物の存在は、過酷な気化器条件下で触媒を安定化させるのに役立つことが見出されている。例えば、ホスフィン系触媒は、オレフィンの不存在下では不安定になる傾向があり、ホスファイト系触媒は、一酸化炭素の蒸発における分解に対して脆弱になる。ホスファイト系触媒を安定化するための気化器のためのシンガスのストリッピングガスへの添加は、国際出願PCT/US15/061332に教示されている。したがって、気化器へ供給されるストリッピングガス中に新鮮なまたは未反応のシンガスを有することは、亜リン酸塩ベースの触媒をさらに安定化するために使用することができる。同様に、気化器に供給されるストリッピングガス中のかなりの量の未反応オレフィンは、ホスフィンベースの触媒で観察されるロジウム触媒の失活を緩和するのに役立ち得る。ホスフィンベースのロジウム触媒を使用する場合、触媒失活を回避するためにオレフィンの転化率を100%にすることを試みないことが重要である(例えば、米国特許第5,728,893号参照)。
【0114】
ストリッピングガスの供給源の1つとして、ヒドロホルミル化反応器の通気孔(特に、直列の最後の反応域)を用いることにより、さらなる利点が見出され得る。一般に、この通気孔は、システムから不活性成分及び過剰のシンガスまたは未反応のオレフィンをパージするために使用される。同様に、ノックアウトポット通気孔及び/または中圧下流通気孔を使用することができる。これは、過酷な気化器条件における触媒の安定性を助けるためにシンガスまたは未反応オレフィンを維持する利点を有する。特に、これらの通気孔は既に高圧及び高温であり、アルデヒドが豊富である(したがって、蒸発損失を軽減するのに役立つ)。
【0115】
例示的な非光学活性アルデヒド生成物には、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−メチル1−ブチルアルデヒド、3−メチルブチルアルデヒド、ヘキサナール及びヒドロキシヘキサナールが含まれる。供給物中の多価不飽和物は、ブタン−1,4−ジアルデヒド、ペンタン−1,5−ジアルデヒド、2−メチル)ブタン−1,4−ジアルデヒド、(2−メチル)ペンタン−1,5−ジアルデヒド及びペンタン−1,6−ジアルデヒドを含む。
【0116】
これらの希薄オレフィン流に用いられるヒドロホルミル化条件は、先行技術の精製された流れと比較してしばしばより激しい。これらの過酷なヒドロホルミル化条件は、典型的には、反応域及び分離域における温度及び接触時間がより長い。これらの条件は、重質成分(heavy)生成を促進する傾向があり、そのため、触媒溶液中に重質成分が蓄積するのを避けるために、より苛酷な気化条件(より高い温度、より低い圧力)が必要となる。さらに、加水分解またはアルコール分解(しばしば酸の蓄積によって促進される)からの配位子分解は、これらの条件下で増加する。ロジウムにより促進される副反応(例えば、配位子破壊)もまた観察される。ロジウムクラスター形成及びコロイド形成が観察され、これは不活性ロジウム種につながる。これらの要因の全てが、触媒の失活及び配位子の損失(特に加水分解可能な亜リン酸塩について)を促進する。
【0117】
意外にも、有機窒素化合物がヒドロホルミル化反応流体に添加されると、触媒活性の損失の速度を減少させることが見出されている。正確な理論または機構的論述に束縛されることを望まないが、トリオルガノリン促進金属ヒドロホルミル化触媒の触媒活性における遭遇する遅い損失は、少なくとも部分的に、その反応生成物流体からのアルデヒド生成物の分離及び回収に用いられるような過酷な条件に起因すると考えられている。例えば、トリアリールホスフィン促進ロジウム触媒が、気化器中で起こるような高温及び低一酸化炭素分圧のような過酷な条件下に置かれた場合、この触媒は、そのような条件への長時間の暴露下でも沈殿し易い不活性またはより活性の低いロジウム種が形成される可能性が最も高いため、触媒は時間とともに加速ペースで失活することが見出されている。このような証拠はまた、ヒドロホルミル化条件下で、ロジウム、トリアリールホスフィン、一酸化炭素及び水素の錯体を含むと考えられる活性触媒は、分離中に存在するような過酷な条件、例えば気化の際にその配位した一酸化炭素配位子の少なくとも一部を失い、上記のような触媒的に不活性なまたはより活性の低いロジウム種を形成するための経路を提供する、という見解と一致している。US5,731,472及びUS2015/0376101に開示されているように、遊離複素環式窒素化合物は、失われた一酸化炭素配位子の置換配位子として働き、気化器に存在するような過酷な条件下でのそのような分離中に金属、トリアリールホスフィン、複素環式窒素化合物及び水素の錯体を含む中性中間金属、例えばロジウム種を形成し、このような触媒不活性なまたはより低い活性のロジウム種の形成を防止または最小化する、と考えられている。このような連続的な液体再循環ヒドロホルミル化の過程を通じての触媒活性の維持またはその失活の最小化は、反応器中の前記中性中間体ロジウム種(すなわち、ヒドロホルミル化反応域)からの活性触媒の再生によるものであり、関与する特定のヒドロホルミル化プロセスの一部である。反応器内のより高いシンガス圧力ヒドロホルミル化条件下で、金属、例えばロジウム、トリアリールホスフィン、一酸化炭素及び水素を含む活性触媒錯体は、反応物シンガスの一部の一酸化炭素が置換された結果として再生されると考えられている。すなわち、ロジウムに対する配位子親和性の強い一酸化炭素は、上記のように気化分離中に形成された再循環中性中間ロジウム種のより弱結合した複素環式窒素配位子を置換して、ヒドロホルミル化反応帯における活性触媒を改質する。亜リン酸塩でも同様の現象が起こりうる。いずれにしても、中間ロジウム種の生成及び/または活性触媒の再生に関する特定のメカニズムにかかわらず、本発明によるそのような遊離の複素環式窒素化合物の使用が考慮されれば十分であるアルデヒド生成物をその反応生成流体から気化分離する際に遭遇するような過酷な条件に起因する、トリオルガノリン促進金属、例えばロジウム、ヒドロホルミル化触媒の触媒活性損失を防止または最少化するための優れた手段である。
【0118】
この用途に適した複素環式窒素化合物には、ジアゾール、トリアゾール、ジアジン及びトリアジンが含まれる。これらは、例えば、US5,731,472に記載されている。そのようなジアジン化合物の例は、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどである。最も好ましい複素環式窒素化合物はベンズイミダゾール及びベンズトリアゾール誘導体であり、そのほとんどがベンズイミダゾール及びベンズトリアゾールである。
【0119】
したがって、本明細書で使用可能な遊離の複素環式窒素化合物は、それらの製造方法として周知の化合物であり、多くの場合、市販されている。さらに、任意の所与のヒドロホルミル化プロセスにおいて、一度にただ1つの遊離複素環式窒素化合物を使用することが好ましいが、所望であれば、2つ以上の異なる遊離複素環式窒素化合物の混合物を、任意の所与の方法において用いることもできる。適切な置換及び非置換複素環式窒素化合物の例には、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,1996に記載されている許容される置換及び非置換複素環式窒素化合物が含まれ、その関連部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
さらに、本発明の任意の所与の方法において使用可能なこのような遊離の複素環式窒素化合物の量は、触媒の不活性化の結果として起こることが判明しているような触媒失活の少なくともある程度の最小化の基礎を提供するのに必要な最小量アルデヒド生成物の気化分離などの過酷な条件の間に遊離の複素環式窒素化合物が存在しない場合には、本質的に同じ条件下で同一の金属触媒ヒドロホルミル化プロセスを使用する。蒸留されるべきヒドロホルミル化反応生成物流体の総重量に基づいて、約0.001〜約10重量%またはそれ以上の範囲のそのような遊離の複素環式窒素化合物の量は、ほとんどの目的にとって十分であるべきである。当然のことながら、アルデヒド生成物がヒドロホルミル化生成物流体から蒸留されると、その中の非揮発成分の濃度、例えば、それに応じて触媒及び遊離の複素環式窒素化合物が増加する。したがって、遊離の複素環式窒素化合物の上限量は、主として、アルデヒド生成物のこのような気化分離の後に得られる非揮発性液体ロジウム触媒含有残渣の溶解限度、すなわち所望のアルデヒド生成物の蒸留除去によって支配される。本明細書で使用可能なそのような遊離複素環式窒素化合物のそのような量は、使用される特定のロジウム触媒及びアルデヒド生成物を回収するための蒸留温度、ならびに特定の遊離複素環式窒素化合物自体にもある程度依存する。一般に、本発明の金属−有機ホスフィン触媒を含有する生成物流体からの所望のアルデヒド生成物の蒸留中に存在する好ましい微量の遊離複素環式窒素化合物は、蒸留されるヒドロホルミル化反応生成物流体の総重量に基づいて、約0.05〜約5重量%の範囲であり得る。
【0121】
アルデヒド生成物が蒸留されるべき反応生成物流体に本発明で使用可能な遊離の複素環式窒素化合物を添加することは、所望の任意の適切な方法で行うことができる。例えば、遊離の複素環式窒素化合物は、反応域から取り出されたヒドロホルミル化反応生成物流体に、アルデヒド生成物の蒸留の前または途中の任意の時点で添加することができる。しかしながら、使用するように選択された遊離の複素環式窒素化合物は、ヒドロホルミル化反応それ自体に実質的に有害な影響を与えてはならないので、遊離の複素環式窒素化合物を反応域中のヒドロホルミル化反応媒体に直接添加し、全ヒドロホルミル化プロセスにわたって、溶液中に残すことができる。実際、遊離の複素環式窒素化合物がヒドロホルミル化プロセスの開始時に存在するように、使用される前駆体触媒溶液に遊離の複素環式窒素化合物を添加することが望ましい場合がある。
【0122】
反応流体中に存在し得る有機窒素化合物の量は、典型的には、反応流体1リットル当たり少なくとも0.0001モルの遊離有機窒素化合物の濃度を提供するのに十分である。一般に、有機窒素化合物対全有機リン配位子のモル比(遊離有機リン配位子として結合または存在するかどうか)は、少なくとも0.01:1、さらにより好ましくは少なくとも0.5:1である。有機窒素化合物:有機リン配位子のモル比が1:1〜5:1であれば、ほとんどの目的に十分であるはずである。
【0123】
主に加水分解可能な有機リン配位子、例えば有機ホスファイトで観察されるさらなる問題は、最終的に亜リン酸に至る酸触媒加水分解である。有機ホスファイト配位子の加水分解を防止及び/または減少させ、金属−有機ホスファイト配位子錯体を失活させるために、抽出系などの緩衝水溶液を使用することは周知であり、例えば、米国特許第5,744,649号、第5,741,944号及び第5,741,942号及びPCT公報WO2013/184350号に記載されている。ヒドロホルミル化系におけるそれらの調製及び使用のためのこのような緩衝系及び/または方法は、当技術分野で周知である。緩衝液の混合物を用いてもよい。
【0124】
他の酸低減法、例えば、米国特許出願公開第2003/0018220号及び第2012/0172630号、及びPCT公報第WO2014/051975A1号に記載されているエポキシド付加のような他の酸低減法を用いることもできる。トリアルカノールアミンのような水溶性アミンの添加も、PCT公報WO2015/153070A1に記載されているように使用することができる。
【0125】
反応流体からのリン酸化合物の除去が成功したことは、ヒドロホルミル化反応媒体中に存在する有機リン配位子の分解(消費)速度を測定することにより判定することができる。消費速度は、広い範囲、例えば、1日当たり1リットル当たり<0.6グラム〜5グラムまで変動し、加水分解を自己触媒レベル以下に保つために配位子のコストと処理頻度との間の最良の妥協によって支配される。好ましくは、水性緩衝溶液処理は、ヒドロホルミル化反応媒体中に存在する所望の有機リン配位子の消費が許容可能な速度、例えば1日当たり1リットル当たり<0.5グラム、より好ましくは1日当たり1リットル当たり<0.1グラム、最も好ましくは1日当たり1リットルあたり<0.06グラム、維持されるような方法で行われる。リン酸性化合物の水性緩衝液への中和及び抽出が進むにつれて、緩衝液のpHは徐々に低下する。
【0126】
抽出プロセスは、連続的に、バッチモードで、または「必要に応じて」行うことができる。例えば、気化器からの再循環ラインから採取されたスリップ流を処理して、再循環ラインに戻して反応域に送ることができる。あるいは、反応器内容物全体を、定期的な停止中に定期的なバッチ抽出で処理することができる。
【0127】
ステップ(c)における生成物−触媒分離ステップの後、得られた粗酸素化物流を脱気してアルコールへの水素化に供する前に未反応のCOを除去する。粗アルデヒドは、脱気プロセスに応じて未反応オレフィン及びアルカンを依然として含んでいてもよいが、これらは次の処理ステップである水素化において許容され得る。
【0128】
水素化は、慣用の触媒を用いた慣用の方法により行うことができる。水素化触媒は、ニッケル、銅、銅/亜鉛、クロム、白金、パラジウム、コバルト、ロジウム、及び/またはモリブデン及びそれらの混合物を使用する、典型的には遷移金属ベースの触媒を担持している。還元金属酸化物(例えば、CuO及びZnO)及び硫化モリブデン触媒も使用することができる。担体は、典型的には、カーボン、シリカ、アルミナ、及びシリカ−アルミナである。典型的なプロセスは、米国特許第4,960,960号及び第5,093,535号に記載されている。例えば、気相水素化または液相水素化プロセス(または両方を直列で含む)を用いてアルコール混合物を製造することができる。一般に、エーテル及びエステルは、ステップ(b)ヒドロホルミル化中に形成されるが、このような反応は、しばしば水素化の間にも観察される。得られるアルコールの他の用途とは対照的に、そのような誘導体の存在は、ガソリン添加剤中の水素化された流れの使用に有害ではない。このように、より過酷な水素化条件またはより安価な水素化触媒は、高い転化率を達成し、未反応アルデヒドの再循環を最小にするために有利に使用することができる。エステル及びエーテルはガソリン添加剤の用途に有用であるため、大規模な精製及び再循環は不要であり、したがって資本及びエネルギーコストを節約する。
【0129】
図1A及び
図1Bは、本発明の一実施形態によるプロセスを実行するためのシステムを示すフローシートを示す。本明細書で開示される本発明のプロセスの他の実施形態を実行するために、他のシステム、機器構成、及び流れを利用できることを理解するべきである。これに関して、以下の
図1A及び1Bを検討する際にいくつかの代替構成が開示されているが、同様に本発明の実施形態と考えられる他の代替も可能である。
【0130】
図1Aから出発して、オレフィン含有供給流(1)及び合成ガス供給流(2)は、1つ以上の反応器(B1)または単一の多段反応器に供給される。反応器(B1)内の触媒の存在下で、ヒドロホルミル化反応が起こる。合流反応器生成物及び触媒(4)を分離ユニット(B3)に供給し、そこで触媒(5)を供給物(7)に含まれる反応生成物及び未反応成分から分離する。ヒドロホルミル化触媒(5)は反応器(B1)に連続的に再循環される。供給物に含まれる反応生成物及び未反応成分から触媒を容易に分離するために、ストリッピングガス(6)を任意に分離ユニット(B3)に供給することができる。あるいは、ヒドロホルミル化反応器(B1)からの排気ガス(3)を、単独でまたはストリッピングガス(6)と組み合わせて分離装置(B3)に供給し、ストリッピングガスとして使用することができる。
【0131】
分離ユニット(B3)を出たガス流(7)は凝縮器(B4)を通過して非凝縮流(8)及び主としてヒドロホルミル化生成物(9)からなる流れを提供する。
【0132】
分離ユニット(B3)からの非凝縮流(8)は、低圧通気流として制御源に直接送給できる。任意に、いくつかの実施形態では、分離ユニット(B3)からの非凝縮流(8)は、圧縮機(B2)を用いて高圧通気流(11)に加圧することができる。この流れ(11)は、アルカンが回収され、他の精製作業に再循環されるか、または化学製品として販売され得る追加の設備(図示せず)に送給され得る。流れ(11)はまた、高圧通気流として制御源に送ることもできる。流れ(11)がかなりの量の未反応オレフィンを含む場合、流れの一部または全部を流れ(10)で示すようにさらなる処理のためにヒドロホルミル化反応器(B1)に送り返すことができる。この流れ(11)またはその一部はまた、分離ユニット(B3)に供給して、触媒(図示せず)からのヒドロホルミル化生成物の分離を容易にするためのストリッピングガスとして使用することもできる。
【0133】
主としてヒドロホルミル化生成物(9)を含む流れは、
図1Bに関連して詳細に説明するように、ガソリン用の酸素化物添加剤へのさらなる処理のために下流に送られる。必要であれば、さらなる処理ステップ(図示せず)の前にこの流れから不純物を除去することができる。
【0134】
ここで
図1Bを参照すると、主として
図1Aのヒドロホルミル化生成物(9)と水素流(14)を含む流れが1つ以上の水素化反応器(B6)に供給される。1つ以上の水素化反応器(B6)に続いて、生成物流(15)を任意に冷却し、次いで蒸留塔(B8)に供給される前に、セパレータ(B7)中で主に水素化生成物(17)を含む流れと、未反応水素、未反応酸素化物、他の未反応成分及び生成物(16)を含む流れとに、分離することができる。蒸留塔(B8)では、水(19)及び低沸点不純物(18)が、ガソリンの燃料添加剤としての使用を意図した酸素化物生成物流(20)から分離される。この流れ(20)は、主としてアルコール、エーテル、エステル、及びそれらの組み合わせを含む。図示されていないが、後続のステップにおけるこの流れのさらなる処理が可能であり、ガソリンプールへの添加前に酸素化物生成物の一部が除去される可能性がある。
図1Bに示す水素化フローシートは、アルデヒドをアルコール及び他の水素化生成物に転化するために使用することができるほんの1つの選択肢であり、決して別の処理可能性を制限することを意味するものではない。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0136】
一般手順
直列に接続された2つの1リットルステンレス鋼製撹拌槽反応器からなる液体再循環反応器システムを用いる。各反応器は、垂直方向に載置された撹拌機と、反応器の底部付近に配置された円管形スパージャ(circular tubular sparger)とを備える。各スパージャは、所望のガス流を提供し、反応器内の液体に混合するのに十分な数及びサイズの複数の孔を含む。スパージャは、オレフィン及び/またはシンガスを反応器に供給するために使用され、また、未反応ガスを各反応器に再循環させるためにも使用することができる。各反応器は、反応器の温度を制御する手段として、シリコーンオイルシェルを有する。反応器1及び2はさらに、未反応ガスを輸送するためのラインならびにアルデヒド生成物及び触媒を含有する一部分の溶液を反応器1から反応器2へと排出させるためのラインを介して接続されている。したがって、反応器1の未反応オレフィンは、さらに、反応器2でヒドロホルミル化される。各反応器は、所望の液体レベルを維持するための液体レベルコントローラを有する。反応器2は、未反応ガスを除去するための通気口を有する。
【0137】
反応溶液の一部分は、反応器2から、常圧で加熱容器を有する気化器へと継続的に排出される。気化器から得られた蒸気/液体流は気化器の底部に位置する気液分離器に送られ、気化したアルデヒドは液体反応溶液の不揮発性成分から分離される。気化したアルデヒド生成物を凝縮させ、生成物受容器に収集する。液体レベルコントローラは、気化器内の液体レベルを制御する。未反応のアルデヒド、重質物及び触媒を含有する気化器からの液体は、反応器1に再循環される。
【0138】
実施例1及び比較例:低純度のプロピレン供給物(純度72モル%)を用いて、ロジウム及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトからなる触媒の転化率及び触媒安定性を調べるために、上記装置を用いた。安定な操作を確立した後、反応器及び気化器の条件を、表1に示す。安定な操作を確立し、確認し、触媒の安定性を評価するために、試験期間は1週間以上であった。ロジウムの損失は、触媒溶液の原子吸光(AA)測定によって決定した。後で同じ触媒溶液を高純度プロピレン供給物(99.8モル%)に使用して、同等の反応器条件で操作する低純度供給物との直接比較を可能にした。
【0139】
【表1】
【0140】
このデータは、より高純度のポリマーグレードのプロピレン供給物が、所望の生成物分離を達成するために、低純度プロピレン供給物(90℃)と比較してより高い気化器温度(104℃)を必要とすることを示している。先行研究は、気化器におけるより高い生成物−触媒分離温度が、クラスタリングによるロジウムのより高い損失をもたらすことを示している。より低い純度のプロピレンの場合、プロパン供給物の存在は、ガスストリッピング効果を介して生成物/触媒分離を促進し、より低い気化器作動温度、したがって実質的により低い触媒分解速度を可能にする。さらに、上記のデータは、低純度のプロピレン供給物が、アルコールに転化されたときにガソリン添加剤としての使用に好適であり得る低N/I比を有するアルデヒド流に転化できることを示す。
(態様)
(態様1)
オレフィンを、ガソリン添加剤としての使用に好適であるアルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせに転化するためのプロセスであって、前記プロセスは、
(a)供給流を受け取ることであって、前記供給流が、2〜5個の炭素原子を有する1種以上のオレフィンを前記供給流の重量に基づいて80重量%までの量で含む、供給流を受け取ることと、
(b)触媒の存在下で前記供給流をヒドロホルミル化して、前記供給流からの前記オレフィンの少なくとも80%を酸素化物に転化させることと、
(c)ステップ(b)からの生成物流を、酸素化物流と、未反応オレフィン、不活性成分、触媒、及び残存酸素化物を含む流れとに分離することと、
(d)前記酸素化物流を処理して、複数の前記酸素化物を、少なくとも3個の炭素原子を有するアルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つに転化させることと、を含み、
少なくとも3個の炭素原子を有する前記アルコール及びエーテルの少なくとも25重量%が、少なくとも3個の炭素原子を有する前記アルコール及びエーテルの総重量に基づいて分岐しており、前記アルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせが、ガソリン添加剤としての使用に好適である、プロセス。
(態様2)
前記供給流が、少なくとも50%のプロピレンを含む、態様1に記載のプロセス。
(態様3)
ステップ(c)における前記酸素化物流が、アルデヒドを含む、態様1〜2のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様4)
前記酸素化物流を処理することが、前記酸素化物のアルコールへの水素化を含む、態様1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様5)
前記酸素化物が、イソブチルアルデヒドを含み、前記酸素化物流を処理することが、前記イソブチルアルデヒドのイソブチルアルコールまたはジイソブチルエーテルへの水素化を含む、態様1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様6)
エチレン、プロピレン、及びブテンが、前記供給流の総重量に基づいて、前記供給流の少なくとも50%を構成する、態様1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様7)
ステップ(d)の後に、前記アルコール及びエーテルの少なくとも一部を除去することをさらに含む、態様1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様8)
ステップ(d)の後に、前記アルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせを含む流れをガソリンに添加することをさらに含む、態様1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様9)
ステップ(d)からの前記アルコールの少なくとも90%が、3〜6個の炭素原子を有するアルコールを含む、態様1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様10)
前記少なくとも3個の炭素原子を有するアルコール及びエーテルの少なくとも40%が、前記少なくとも3個の炭素原子を有するアルコール及びエーテルの総重量に基づいて分岐している、態様1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様11)
前記触媒が、ロジウムと、トリオルガノホスファイト、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、2,6−ジ−
t−ブチル−4−メチルフェニル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、または4,8−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−[2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メトキシフェノキシ]−2,10−ジメトキシ−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンのうちの少なくとも1つと、を含む、態様1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様12)
前記供給流が、ロジウム原子ベースで0.5回転/秒より大きい反応性を有するロジウム系触媒を使用して、ヒドロホルミル化される、態様1〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様13)
前記供給流が、1種以上のアルカンを含み、前記分離ステップ(c)中、前記供給流からのアルカンは、前記分離を容易にするか、または前記分離ステップ(c)は、前記供給流からのアルカンが使用されて、前記分離を容易にするストリッピングガス気化器を含む、態様1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様14)
前記供給流が、前記供給流の重量に基づいて、少なくとも15重量%のアルカン、または少なくとも20重量%のアルカン、または少なくとも30重量%のアルカン、または少なくとも35重量%のアルカンを含む、態様13に記載のプロセス。
(態様15)
前記供給流中のオレフィンの少なくとも90%が、ステップ(b)の前記ヒドロホルミル化において、酸素化物に転化される、態様1〜14のいずれか1項に記載のプロセス。