特許第6885977号(P6885977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6885977地図データのデータ構造及び車両運転制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885977
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】地図データのデータ構造及び車両運転制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/32 20060101AFI20210603BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20210603BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20210603BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20210603BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   G01C21/32
   G09B29/00 Z
   G08G1/0968
   G08G1/16 C
   B60W40/04
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-30076(P2019-30076)
(22)【出願日】2019年2月22日
(65)【公開番号】特開2020-134376(P2020-134376A)
(43)【公開日】2020年8月31日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】598088871
【氏名又は名称】株式会社NTTデータオートモビリジェンス研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 政彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 伸
【審査官】 武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/129172(WO,A1)
【文献】 特開2017−100659(JP,A)
【文献】 特開2005−182191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/32
B60W 40/04
G08G 1/0968
G08G 1/16
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転を制御する車両運転制御装置であって、
コンピュータにより構成され、道路を表す道路情報と、前記道路情報にて表される道路を車両が走行する際に遵守すべき交通ルールを表す法文を特定する法文特定情報と、が対応付けられた構造の地図データを取得する処理ユニットを有し、
前記処理ユニットは、
前記車両の走行位置を表す走行位置情報を取得する走行位置取得手段と、
前記地図データから前記走行位置取得手段により取得された走行位置情報にて表される走行位置を含む道路を表す道路情報に対応する法文特定情報を取得する法文特定情報取得手段と、
前記法文特定情報取得手段により取得された法文特定情報にて特定される法文にて表される交通ルールに基づいた運転制御を実行する交通ルール対応制御手段と、を有し、
前記交通ルール対応制御手段は、
法文特定情報に対応して設けられ、その法文特定情報にて特定される法文にて表される交通ルールに従った車両の運転に係るルールベース制御を行うユニットを有し、
前記法文特定情報取得手段にて法文特定情報が取得されたときに、その法文特定情報に対応する前記ルールベース制御を行うユニットを起動させて、前記交通ルールに基づいた運転制御を行う、車両運転制御装置。
【請求項2】
前記地図データは、前記道路情報にて表される道路の前記法文にて表される前記交通ルールが適用される場所及びその場所に至るまでの車両走行方向手前の所定領域を含むルール関係領域に前記法文特定情報が対応付けられた構造を有し、
前記法文特定情報取得手段は、
前記地図データから前記走行位置取得手段にて取得された走行位置情報にて表される前記車両の走行位置を含むルール関係領域に対応した法文特定情報を取得するものであり、
前記交通ルール対応制御手段は、
前記車両が前記ルール関係領域を走行する間、前記法文特定情報にて特定される法文にて表される交通ルールが適用される場所に前記車両が達したか否かを監視し、前記交通ルールが適用される場所に前記車両が達したときに、前記ルールベース制御を行うユニットによる運転制御を実行する、請求項1記載の車両運転制御装置。
【請求項3】
前記交通ルールを表す法文は、道路交通法の法文である、請求項1または2記載の車両運転制御装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行する道路を表す道路情報を含む地図データのデータ構造及びその地図データを用いて車両の運転制御を行う車両運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、道路交通環境等の環境に応じた動作を行って自立走行する自動運転車両が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような自動運転車両では、搭載された制御ユニット(ECU:コンピュータ)が、種々のセンサからの検出情報に基づいて環境(例えば、走行車線、前方車両との車間距離、交差点での信号の状態、路面の状態、障害物の存否等)に関する情報を取得し、その取得された環境に応じた動作(例えば、直進走行、右折、左折、停止、減速、車線変更、停止等)がなされるように制御を行なう。そして、前記自動運転車両は、その制御ユニット(コンピュータ)による制御に従った動作を行うことによって自律走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−165393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した車両の運転制御は、制御ユニット(ECU:コンピュータ)が、種々のセンサ(カメラ、レーダ等も含む)からの検出情報に基づいて環境に応じた運転がなされるように動力系、制動系、操舵系等の制御を行うものである。しかし、車両の適正な運転制御を行うためには、車両の環境に関する膨大な情報を取得して処理しなければならない。このため、実用化には、いかに多くの情報を高速に処理して適正な制御を短時間で行わなければならないか等、多くの問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、車両の運転制御の負担を軽減することができるような情報提供可能な地図データのデータ構造を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、そのような地図データを取得して車両の運転制御を行う車両運転制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る地図データのデータ構造は、道路を表す道路情報を含み、コンピュータにて用いられる地図データのデータ構造であって、前記道路情報に対応付けられ、前記道路情報にて表される道路を車両が走行する際に遵守すべき交通ルールを表す法文を特定する法文特定情報であって、前記コンピュータによる前記道路情報にて表される道路を走行する車両のその特定される法文の内容に従った制御に用いられる法文特定情報を含む構成となる。
【0008】
このような構成によれば、コンピュータは、地図データを取得すると、当該車両の走行位置を含む道路を表す道路情報に対応した法文特定情報を取得することができる。これにより、そのコンピュータを搭載する車両では、取得された法文特定情報により特定される法文が表す交通ルールに従った運転制御が可能になる。
【0009】
本発明に係る地図データのデータ構造において、前記道路情報にて表される道路の前記法文にて表される前記交通ルールが適用される場所及びその場所に至るまでの車両走行方向手前側の所定領域を含むルール関係領域に前記法文情報が対応付けられた、構成とすることができる。
【0010】
このような構成によれば、コンピュータは、地図データを取得することにより、当該車両の走行位置を含む道路における交通ルールが適用される場所を含むルール関係領域に対応した前記交通ルールを表す法文を特定する前記法文特定情報を取得することができる。これにより、そのコンピュータを搭載する車両では、その車両が前記ルール関係領域内を走行する際に、前記法文特定情報にて特定される法文が表す交通ルールが適用される場所に達した時点で、その交通ルールに従った運転制御が可能になる。
【0011】
本発明に係る地図データベースのデータ構造において、前記交通ルールを表す法文は、道路交通法の法文である、構成とすることができる。
【0012】
このような構成によれば、前記道路において、車両の道路交通法の法文で表される交通ルールに従った運転制御が可能になる。
【0013】
本発明に係る車両運転制御装置は、車両の運転を制御する車両運転制御装置であって、コンピュータにより構成され、道路を表す道路情報と、前記道路情報にて表される道路を車両が走行する際に遵守すべき交通ルールを表す法文を特定する法文特定情報と、が対応付けられた構造の地図データを取得する処理ユニットを有し、前記処理ユニットは、前記車両の走行位置を表す走行位置情報を取得する走行位置取得手段と、前記地図データから前記走行位置取得手段により取得された走行位置情報にて表される走行位置を含む道路を表す道路情報に対応する法文特定情報を取得する法文特定情報取得手段と、前記法文特定情報取得手段により取得された法文特定情報にて特定される法文にて表される交通ルールに基づいた運転制御を実行する交通ルール対応制御手段と、を有し、前記交通ルール対応制御手段は、法文特定情報に対応して設けられ、その法文特定情報にて特定される法文にて表される交通ルールに従った車両の運転に係るルールベース制御を行うユニットを有し、前記法文特定情報取得手段にて法文特定情報が取得されたときに、その法文特定情報に対応する前記ルールベース制御を行うユニットを起動させて、前記交通ルールに基づいた運転制御を行う構成となる。
【0014】
このような構成によれば、車両に搭載された処理ユニット(コンピュータ)は、走行位置情報を取得すると、取得した地図データから、その走行位置情報で表される車両の走行位置を含む道路を表す道路情報に対応した法文特定情報を取得する。この法文特定情報で特定される法文が表す交通ルールは、前記走行位置を含む道路を走行する際に遵守すべき交通ルールであって、処理ユニットは、その交通ルールに従った運転制御を行う。
【0015】
本発明に係る車両運転装置において、前記地図データは、前記道路情報にて表される道路の前記法文にて表される前記交通ルールが適用される場所及びその場所に至るまでの車両走行方向手前の所定領域を含むルール関係領域に前記法文特定情報が対応付けられた構造を有し、前記法文特定情報取得手段は、前記地図データから前記走行位置取得手段にて取得された走行位置情報にて表される前記車両の走行位置を含むルール関係領域に対応した法文特定情報を取得するものであり、前記交通ルール対応制御手段は、前記車両が前記ルール関係領域を走行する間、前記法文特定情報にて特定される法文にて表される交通ルールが適用される場所に前記車両が達したか否かを監視し、前記交通ルールが適用される場所に前記車両が達したときに、前記ルールベース制御を行うユニットによる運転制御を実行するものである、構成とすることができる。
【0016】
このような構成によれば、車両に搭載された処理ユニット(コンピュータ)は、走行位置情報を取得すると、取得した地図データから、その走行位置情報で表される車両の走行位置を含む道路のルール関係領域に対応した法文特定情報を取得する。この法文特定情報で特定される法文が表す交通ルールは、前記走行位置を含む道路を走行する際に遵守すべき交通ルールであって、処理ユニットは、車両が前記ルール関係領域を走行して、その交通ルールが適用される場所に前記車両が達したときに、前記交通ルールに従った運転制御を実行する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る地図データのデータ構造によれば、その地図データを取得することにより、各道路において遵守すべき交通ルールを特定する交通ルール特定情報を取得することができるので、その交通ルール特定情報にて特定される交通ルールに従った車両の運転制御が可能になる。その結果、運転制御の負担を低減させることができる。
【0018】
また、本発明に係る車両運転制御装置によれば、各道路において、地図データ上で当該道路を表す道路情報に対応付けられた交通ルール特定情報にて特定される交通ルールに従って車両の運転制御が行われるようになるので、各道路における運転制御の負担がより低減されたものとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る地図データベースのデータ構造を示す図である。
図2図2は、交差点に接続する道路に対応付けられた道路交通法の法文を特定する条項番号の一例を示す図である。
図3図3は、道路交通法第43条の内容及び道路交通法第43条で引用される道路交通法第36条第2項の内容を示す図である。
図4図4は、道路交通法第43条の適用場面の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る車両運転制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の一形態に係る地図データのデータ構造を概念的に示す図である。図1において、地図データ100は、例えば、車両等に搭載される記憶機器や、クラウド等のネットワーク上のサーバに格納され、コンピュータが直接記憶機器に、また、通信機器を介してサーバにアクセスすることにより取得することができる。この地図データ100は、リンク層110、レーン層120及び道路形状層130の階層構造となっている。この階層構造は、デジタル道路地図の構造として公知のものである。リンク層110は、道路をノードとノードに接続するリンク(線)との組み合わせで表現した層である。ノードは、交差点、その他道路網表現上の結節点に対応し、リンク(線)は、ノードとノード間の道路区間に対応する。レーン層120は、道路の各車線(レーン)を線(中心線または走行の目安線)及び面(走行可能な領域)で表現したものである。道路形状層130は、各道路の形状を表している。この地図データベース100では、リンク層110、レーン層120及び道路形状層13の各階層の情報により、車両が走行する道路を表す道路情報が構成される。
【0022】
地図データ100は、更に、交通ルール特定層140を備えている。この交通ルール特定層140は、前述した3つの層、リンク110、レーン層120及び道路形状層130の情報で構成される道路情報にて表される道路を車両が走行する際に遵守すべき交通ルールである道路交通法(以下、適宜、道交法という)の法文を特定する条項番号(交通ルール特定情報:法文特定情報)を表している。地図データ100は、上述したように対応付けられた4つの階層の構造をとることにより、リンク層110、レーン層120及び道路形状層130の3つの層の情報で構成される道路情報に、交通ルール特定層140のその道路情報にて表される道路を車両が走行する際に遵守すべき道交法の法文を特定する条項番号が対応付けられた構造(道路・ルール対応構造)を有することになる。
【0023】
地図データ100の前述した4層構造(道路・ルール対応構造)により、例えば、図2に示すように、交差点に接続する道路R1を表す道路情報には、その道路R1を車両が走行する際に遵守すべき道路交通法の法文(第7条、第18条、第35条、第36条、第38条、第43条)を特定する条項番号(7、18、34、35、36、38、43)が対応付けられることになる。なお、各条項番号は、次のような交通ルールの法文を特定する。
7:信号機の信号に従う義務(道交法第7条)
18:左側寄り通行等(道交法第18条)
34:左折又は右折(道交法第34条)
35:指定通行区分(道交法第35条)
36:交差点における他の車両との関係等(道交法第36条)
38:横断歩道などにおける歩行者等の優先(道交法第38条)
43:指定場所における一時停止(道交法第43条)
【0024】
道路情報と条項番号との更に具体的な対応関係について、例えば、道交法第43条を例に説明する。道交法法第43条は、図3に示すように、車両は、交通整理が行われていない交差点又はその手前の直近において、一時停止をしなければならないこと、及び、道交法第36条第2項を準用して、その交通整理の行われていない交差点においては、優先道路である交差道路を通行する車両等の進行を妨害してはならないこと、という交通ルールを定めている。この道交法第43条の法文は、交差点に接続する道路の当該交差点及びその近傍の場所において車両に適用される。
【0025】
地図データ100は、交通ルール特定層140の道交法第43条の条項番号(43)を、単に交差点に接続する道路を表す道路情報に対応付けるというのではなく、例えば、図4に示すように、交差点ISCに接続する道路R1(3つの階層110、120、130の情報で構成される道路情報で表される)の、道交法第43条が適用される場所である交差点ISC又はその手前の直近及びその場所にいたるまでの車両走行方向の所定領域を含むルール関係領域Erに対応付ける構造(領域・ルール対応構造)となっている。
【0026】
例えば、車両に搭載され、上述した構造の地図データ100を取得したコンピュータは、
当該車両の走行位置を含む道路を表す道路情報(3つの階層110、120、130で表される情報)に対応した道交法の条項番号を取得することができる。これにより、そのコンピュータを搭載する車両では、道路を走行する際に取得された条項番号で特定される道交法の法文(条文)の内容に従った運転制御が可能になる。
【0027】
更に、具体的には、図4に示すように、交差点ISCに接続する道路R1を走行する車両のコンピュータは、当該車両の走行位置を含む道路(道路情報にて表される)の特にルール関係領域Erに進入したときに、その道路のルール関係領域Erに対応した道交法第43条を特定する条項番号「43」を取得することができる。そして、その条項番号にて特定される道交法の法文(道交法第43条)の内容に従った上述したような運転制御を行うことができる。例えば、道交法第43条の内容に従って、交通整理が行われていない交差点の直近において、一時停止をするための運転制御、あるいは、交差道路を通行する車両の進行を妨害しない運転制御を行うことができる。
【0028】
車両に搭載され、上述したような運転制御を行う車両運転制御装置は、例えば、図5に示すように、構成される。
【0029】
図5において、この車両運転制御装置は、運転制御用のECU10(処理ユニット:コンピュータ)を有している。ECU10は、それぞれプログラムに従って処理を実行する、認識プロセス部11、判断プロセス部12及び制御プロセス部13を有している。認識プロセス部11は、車両に搭載されたカメラ、ミリ波レーダ、LIDR(レーザスキャナ)、GNSS/INS(全球測位衛星システム/慣性航法システム)等の各種センサを含むセンサ群20からの情報を取得し、車両の状況や車両外部の環境状況を認識する。判断プロセス部12は、認識プロセス部11での認識結果に基づいて運転制御実行のための各種判断を行う。制御プロセス部13は、判断プロセス部11での判断に従って、車両運転のための、アクセル、制動、操舵等に係る各種アクチュエータを含むアクチュエータ群30の制御を行う。
【0030】
地図データ100は、クラウド上のサーバまたは車両に搭載された記憶機器に格納されている。車両に搭載されたナビゲーションシステム150は、地図データ100を利用して、設定された目的地までの経路探索を所定のアルゴリズムに従って実行する。ナビゲーションシステム150は、経路探索により得られた現在位置から前記目的地までの車両が走行する道路(経路)についての地図データであるルートデータ(4階層構造:図1参照)を取得する。そして、ナビゲーションシステム150は、センサ群20から取得される車両の走行位置データと、前記ルートデータとに基づいて、車両を前記目的地まで案内するための処理を行う。
【0031】
ECU10は、ナビゲーションシステム150から前記ルートデータ及び走行位置データ(走行位置情報)を取得する機能(走行位置取得手段)を有している。また、ECU10は、前記ルートデータ(4階層構造:図1参照)を参照して、走行位置データで表される走行位置が、条項番号が対応付けられたルール関係領域Erに進入している場合に、前記ルートデータから前記ルール関係領域Erに対応付けられた条項番号(交通ルール特定情報:法文特定情報)を取得する機能(交通ルール特定情報取得手段)を有している。ECU10に含まれる判断プロセス部12及び制御プロセス部13は、提供される条項番号で特定される道交法の法文で表される交通ルールに基づいた判断・制御を実行する機能(ルールベース制御:交通ルール対応制御手段)を有している。
【0032】
例えば、図4に示すように、交通整理が行われていない交差点ISCに接続する道路R1を走行する車両Vc1がその交差点ISCに近づいている状況での、車両Vc1に搭載された車両運転制御装置の動作について説明する。
【0033】
車両運転制御装置のECU10では、例えば、認識プロセス部11がセンサ群20からの各情報に基づいて車両Vc1の状態(車速、進行方向、傾き等)や環境(路肩線、標識、障害物等)を認識し、その認識結果に基づいて判断プロセス部12が車両Vc1の状態や環境を判断して、その判断結果に基づいて、制御プロセス部13が車両Vc1のアクセル、制動、操舵、それぞれについてのアクチュエータの駆動制御を行う。これにより、車両Vc1は、道路R1をその認識した路肩線に沿って所定の速度で交差点ISCに向かって走行していく。
【0034】
その過程で、ECU10は、車両Vc1の走行位置が道路R1のルール関係領域Erに進入したタイミングにて、道路R1に係るルートデータ(4階層構造:図1参照)からそのルール関係領域Erに対応付けられた条項番号「43」を取得する。そして、判断プロセス部12及び制御プロセス部13の道交法第43条の交通ルールに基づいたルールベース制御のユニットが起動される。
【0035】
すると、ECU10において、センサ類20からの情報に基づいた認識プロセス部11での認識結果に基づいて、判断プロセス部12が、一時停止の道路標識の有無、停止線の有無、それぞれが無い場合に、交差点ISCの直前(交差点ISCから所定距離)であるか否か、の判断(道交法第43条における「交通整理が行われていない交差点又はその手前の直近において」の判断)を行う。そして、一時停止の道路標識や停止線が存在すると判断されれば、その判断結果に基づいて、道路標識や停止線の直前で車両Vc1が停止するように(道交法第43条における「一時停止しなければならない」の動作)、制御プロセス部13が制動に係るアクチュエータ30を制御する。また、前記道路標識や停止線が認識されされずに、交差点ISCの直前位置(所定位置)に車両Vc1が達したことが判断される(道交法第43条における「交通整理が行われていない交差点又はその手前の直近において」の判断)と、車両Vc1が停止するように(道交法第43条における「一時停止しいなければならない」の動作)、制御プロセス部13が制動に係るアクチュエータ30を制御する。
【0036】
その後、判断プロセス部12は、センサ群20かの情報に基づいた認識プロセス部11による認識結果に基づいて、道路R1に交差する優先道路R2、R3を通行する車両があるか否かを判断する。そして、判断プロセス部12が、優先道路R2、R3を通行する車両Vc2、Vc3の存在を判断すると、制プロセス部13は、車両Vc1が停止状態を維持するように(道交法第43条における「交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない」の動作)、制動に係るアクチュエータ30の制御を維持する。更に、判断プロセス部12が、優先道路R2、R3を通行する車両Vc2、Vc3が存在しないと判断すると(道交法第43条における「交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない」条件が満たされたと判断すると)、制動プロセス部13は、制動を解除して車両Vc1がルートデータに従って直進、左折、または右折するように、制動、アクセル、操舵に係るアクチュエータ30を制御する。
【0037】
上述したような運転制御装置によれば、各道路において、地図データ100上で当該道路を表す道路情報(リンク層110、レーン層120、道路形状層130)に対応付けられた条項番号(交通ルール特定情報)にて特定される道交法の法文の内容(交通ルール)に従って車両の運転制御が行われるようになるので、各道路における運転制御の負担がより低減されたものとなり得る。特に、車両が道路に設定されたルール関係領域Erに進入するまで、前記道交法の法文の条件の判断(例えば、道交法第43条の「交通整理が行われていない交差点又はその手前の直近において」の判断)を行わなくて済むので、運転制御の負担を更に低減されたものとすることができる。
【0038】
上述した例では、道交法第43条の場合について説明した、これに限定されず、道交法の他の法文の内容に基づいた運転制御についても、同様の手法により、実現することができる。
【0039】
また、交通ルールは、道交法に限られず、地域固有で定められたルールであっても、今後制定される法律に定められるルールであってもよい。
【0040】
交通ルールに従った運転制御は、前述したような交通ルールに基づいたルールベース制御に限定されず、例えば、AI等を用いた他の手法に従った運転制御であってもよい。
【0041】
なお、本発明は、前述した実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から除外するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る地図データのデータ構造は、車両の運転制御の負担を軽減することができるという効果を有し、車両が走行する道路を表す道路情報を含む地図データのデータ構造として有用である。
【符号の説明】
【0043】
10 ECU(コンピュータ)
11 認識プロセス部
12 判断プロセス部
13 制御プロセス部
20 センサ群
30 アクチュエータ群
100 地図データベース
110 リンク層
120 レーン層
130 道路形状層
140 交通ルール特定層
150 ナビゲーションシステム
図1
図2
図3
図4
図5