特許第6885988号(P6885988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6885988長い角度行程を有する撓み支承体を有する計時器発振器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885988
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】長い角度行程を有する撓み支承体を有する計時器発振器
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/04 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   G04B17/04
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-114362(P2019-114362)
(22)【出願日】2019年6月20日
(65)【公開番号】特開2020-3487(P2020-3487A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2019年7月5日
(31)【優先権主張番号】18179623.6
(32)【優先日】2018年6月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ・ディ ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−リュック・エルフェ
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ガンデルマン
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ウィンクレ
(72)【発明者】
【氏名】バティスト・イノー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・レショー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・マテー
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・クランジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ファーヴル
【審査官】 佐々木 祐
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02998800(EP,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0234354(US,A1)
【文献】 特開2018−084577(JP,A)
【文献】 特開2018−081094(JP,A)
【文献】 特開2016−118548(JP,A)
【文献】 米国特許第03628781(US,A)
【文献】 特開2017−142246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の剛性支持要素(4)と第2の中実慣性要素(5)との間に、撓み支承体を備える機械式計時器発振器(100)であって、前記撓み支承体は、2以上の1の可撓性条片(31;32)を含み、前記第1の可撓性条片(31;32)は、前記第2の中実慣性要素(5)を支持し、前記第2の中実慣性要素を静止位置に戻すように構成し、前記第2の中実慣性要素(5)は、発振平面内で前記静止位置回りに角度を付けて発振するように構成し、前記2つの第1の可撓性条片(31;32)は、互いに接触せず、前記発振平面上の前記第1の可撓性条片(31;32)の突出部は、前記静止位置において、交差点で交差し、前記交差点に近接して又は前記交差点を通って、前記第2の中実慣性要素(5)の回転軸が前記発振平面に直交して通過し、前記第1の剛性支持要素(4)及び前記第2の中実慣性要素(5)内の前記第1の可撓性条片(31;32)の埋め込み点は、前記発振平面に平行な2つの条片方向(DL1、DL2)を画定し、各前記条片(31;32)は、縦横比RA=H/Eを有し、Hは、長さLに沿った前記発振平面及び前記条片(31、32)の伸長部の両方に直交する前記条片(31、32)の高さであり、Eは、前記長さLに沿った前記発振平面内の、前記条片(31、32)の前記伸長部に直交する前記条片(31、32)の厚さである、機械式計時器発振器(100)において、前記縦横比RA=H/Eは、各前記条片(31;32)に対し10未満であることを特徴とする、機械式計時器発振器(100)。
【請求項2】
前記発振器(100)は、前記第1の可撓性条片のうち、第1の条片方向(DL1)で延在する主条片(31)としての第1の数N1個の前記第1の可撓性、及び、前記第1の可撓性条片のうち、第2の条片方向(DL2)で延在する副条片(32)としての第2の数N2個の前記第1の可撓性を含み、前記第1の数N1及び第2の数N2はそれぞれ、2以上であることを特徴とする、請求項1に記載の機械式発振器(100)。
【請求項3】
前記第1の数N1は、前記第2の数N2に等しいことを特徴とする、請求項2に記載の機械式発振器(100)。
【請求項4】
前記発振器は、第1の条片方向(DL1)に延在する1つの前記主条片(31)及び第2の条片方向(DL2)に延在する1つの前記副条片(32)から形成した少なくとも1つの対を含むこと、並びに各対において、前記主条片(31)は、向きに関する点を除いて、前記副条片(32)と同一であることを特徴とする、請求項2に記載の機械式発振器(100)。
【請求項5】
前記発振器は、第1の条片方向(DL1)に延在する1つの前記主条片(31)及び第2の条片方向(DL2)に延在する1つの前記副条片(32)からそれぞれ形成した前記対のみを含むこと、並びに各対において、前記主条片(31)は、向きに関する点を除いて、前記副条片(32)と同一であることを特徴とする、請求項4に記載の機械式発振器(100)。
【請求項6】
前記発振器は、第1の条片方向(DL1)に延在する1つの前記主条片(31)及び第2の条片方向(DL2)に延在する複数の前記副条片(32)から形成した少なくとも1つの群の条片を含むこと、並びに各前記群の条片において、前記主条片(31)の弾性挙動は、向きに関する点を除いて、前記複数の副条片(32)から得られた弾性挙動と同一であることを特徴とする、請求項2に記載の機械式発振器(100)。
【請求項7】
前記第1の条片(31、32)は、まっすぐな条片であることを特徴とする、請求項1に記載の機械式発振器(100)。
【請求項8】
前記発振平面に平行な前記2つの条片方向(DL1;DL2)は、前記静止位置において、前記2つの条片方向(DL1;DL2)の間に、前記発振平面上に突出する状態の頂点角度αを形成し、前記交差点(P)の位置は、比率X=D/Lによって規定し、Dは、前記発振平面上の、前記第1の剛性支持要素(4)内の前記条片(31;32)の前記埋め込み点の1つの突出部と前記交差点(P)との間の距離であり、Lは、前記発振平面上の、伸長部における前記条片(31;32)の突出部の全長であること、及び前記埋め込み点比率(D1/L1;D2/L2)は、両端を含む0.15から0.49の間、又は両端を含む0.51から0.85の間に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の機械式計時器発振器(100)。
【請求項9】
前記頂点角度(α)は、50°以下であること、及び前記埋め込み点比率(D1/L1;D2/L2)は、両端を含む0.25から0.75の間に含まれることを特徴とする、請求項8に記載の機械式発振器(100)。
【請求項10】
前記頂点角度(α)は、40°以下であること、及び前記埋め込み点比率(D1/L1;D2/L2)は、両端を含む0.30から0.70の間に含まれることを特徴とする、請求項9に記載の機械式発振器(100)。
【請求項11】
前記頂点角度(α)は、35°以下であること、及び前記埋め込み点比率(D1/L1;D2/L2)は、両端を含む0.40から0.60の間に含まれることを特徴とする、請求項10に記載の機械式発振器(100)。
【請求項12】
前記頂点角度(α)は、30°以下であることを特徴とする、請求項1に記載の機械式発振器(100)。
【請求項13】
前記頂点角度(α)及び前記比率X=D/Lは、関係h1(D/L)<α<h2(D/L)を満たし、
0.2≦X<0.5の場合、
h1(X)=116−473×(X+0.05)+3962×(X+0.05)3−6000×(X+0.05)4であり、
h2(X)=128−473×(X−0.05)+3962×(X−0.05)3−6000×(X−0.05)4であり、
0.5<X≦0.8の場合、
h1(X)=116−473×(1.05−X)+3962×(1.05−X)3−6000×(1.05−X)4であり、
h2(X)=128−473×(0.95−X)+3962×(0.95−X)3−6000×(0.95−X)4であることを特徴とする、請求項1に記載の機械式発振器(100)。
【請求項14】
前記発振器(100)の質量中心は、前記発振器(100)の静止位置において、間隔(ε)だけ前記交差点(P)から離れ、前記間隔(ε)は、前記発振平面上の前記条片(31、32)の前記突出部の前記全長(L)の10%から20%の間に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の機械式発振器(100)。
【請求項15】
前記間隔(ε)は、前記発振平面上の前記条片(31、32)の前記突出部の前記全長(L)の12%から18%の間に含まれることを特徴とする、請求項14に記載の機械式発振器(100)。
【請求項16】
前記第1の条片(31、32)、及び前記第1の条片(31、32)の埋め込み点は、一緒に枢動体(1)を画定し、前記枢動体(1)は、前記発振平面上に突出する状態で、前記交差点(P)を通過する対称軸(AA)に対して対称であることを特徴とする、請求項1に記載の機械式発振器(100)。
【請求項17】
前記静止位置において、前記第2の中実慣性要素(5)の前記質量中心は、前記発振平面上に突出する状態で、前記枢動体(1)の前記対称軸(AA)上に位置することを特徴とする、請求項16に記載の機械式発振器(100)。
【請求項18】
前記第2の中実慣性要素(5)の前記質量中心は、前記発振平面上に突出する状態で、前記第2の中実慣性要素(5)の回転軸に対応する前記交差点(P)から非ゼロ距離にあり、前記非ゼロ距離は、前記発振平面上の、前記条片(31、32)の前記突出部の前記全長(L)の0.1倍から0.2倍の間に含まれることを特徴とする、請求項17に記載の機械式発振器(100)。
【請求項19】
請求項1に記載の少なくとも1つの機械式発振器(100)を含む計時器ムーブメント(1000)。
【請求項20】
請求項19に記載の少なくとも1つの計時器ムーブメント(1000)を含む時計(2000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式計時器発振器に関し、機械式計時器発振器は、第1の剛性支持要素、第2の中実慣性要素、及び前記第1の剛性支持要素と前記第2の中実慣性要素との間に少なくとも2つの第1の可撓性条片を備え、少なくとも2つの第1の可撓性条片は、前記第2の中実慣性要素を支持し、前記第2の中実慣性要素を静止位置に戻すように構成し、前記第2の中実慣性要素は、発振平面内で前記静止位置回りに角度を付けて発振するように構成し、前記2つの第1の可撓性条片は、互いに接触せず、発振平面上の第1の可撓性条片の突出部は、静止位置において、交差点で交差し、交差点にすぐ近接して又は交差点を通って、前記第2の中実慣性要素の回転軸が前記発振平面に直交して通過し、前記第1の剛性支持要素及び前記第2の中実慣性要素内の前記第1の可撓性条片の埋め込み点は、前記発振平面に平行である2つの条片方向を画定する。
【0002】
本発明は、少なくとも1つのそのような機械式発振器を含む計時器ムーブメントにも関する。
【0003】
本発明は、少なくとも1つのそのような計時器ムーブメントを含む時計にも関する。
【0004】
本発明は、撓み支承体を備える計時器のための機械式発振器の分野に関し、撓み条片は、可動要素を保持し、戻す機能を実施する。
【背景技術】
【0005】
機械式計時器発振器において、特に可撓性条片を有する撓み支承体を使用することは、シリコン及びシリコン酸化物等の微細加工可能な材料を展開するMEMS、LIGA等の方法によって可能になり、これらの方法は、経時的に一定である弾性、並びに温度及び湿気等の外因に対し高い不感受性を有する構成要素をかなり再現可能に作製することを可能にする。同じ出願人による、欧州特許出願第1419039号又は同第16155039号に開示されるもの等の撓み枢動体は、特に、従来のてんぷ枢動体及び通常これに関連付けられるひげぜんまいに代わるものである。枢動摩擦を除くことも、発振器の品質計数を実質的に増大させる。しかし、撓み枢動体は、一般に、約10°から20°に制限された角度行程を有し、てんぷ/ひげぜんまいの通常の300°の振幅と比較するとかなり小さく、このことは、撓み枢動体と、適切な動作保証には大きな角度行程を必要とする従来の脱進機機構、特にスイスレバー等の通常の停止部材とを直接組み合わせることができないことを意味する。
【0006】
国際クロノメトリ会議(International Chronometry Congress)、スイス、モントルー、2016年9月28及び29日、M.H.Kahrobaiyanのチームが、論文「Gravity insensitive flexure pivots for watch oscillators」においてこの角度行程の増大について初めて述べたが、想定される複雑な解決策は等時性ではないと思われる。
【0007】
同じ出願人、SWATCH GROUP RESEARCH & DEVELOPMENT Ltd名義の欧州特許出願第3035127A1号は、音叉によって形成した少なくとも1つの共振器による時間基準を備える計時器発振器を開示しており、計時器発振器は、少なくとも2つの発振移動部品を含み、前記移動部品は、可撓性要素によって前記発振器内に含まれる接続要素に固定され、可撓性要素の形状は、前記接続要素に対して決定位置を有する仮想枢動軸を決定し、前記それぞれの移動部品は、前記仮想枢動軸回りに発振し、前記移動部品の質量中心は、静止位置において、前記それぞれの仮想枢動軸と一致する。少なくとも1つの移動部品のため、前記可撓性要素は、2つの平行平面において互いにある距離で延在する交差弾性条片から形成され、可撓性要素の方向は、関連する移動部品の前記仮想枢動軸において、前記平行平面の1つに突出する状態で交差する。
【0008】
GRIB名義の米国特許出願第3628781A号は、音叉構造を提供するため、固定基準平面に対して一対の可動要素の回転運動を高める、二重片持ちばり構造の形態の音叉を開示しており、音叉は、少なくとも2つの同様の細長い弾性屈曲可能部分を有する第1の弾性変形可能体、及び離間関係で前記弾性変形可能体の第1の前記それぞれの剛性部分を厳密に固着する手段を備え、前記屈曲可能部分のそれぞれの端部は、前記要素の拡大剛性部分とそれぞれ一体であり、第1の前記剛性部分は、基準平面を画定するように固定され、第2の前記剛性部分は、第1の弾性変形可能体及び第2の弾性変形可能体に対して回転運動を高めるように弾性的に支持され、第2の弾性変形可能体は、第1の弾性変形可能体に実質的に同一であり、音叉の歯のそれぞれは、前記弾性変形可能体の1つの自由端を備える。
【0009】
CSEM名義の欧州特許出願第2911012A1号は、計時器のための回転発振器を開示しており、回転発振器は、発振器を計時器内に組み立て可能にすることを目的とする支持要素、てんぷ、支持要素をてんぷに接続し、てんぷに戻りトルクを付与することができる複数の可撓性条片、及びてんぷと一体に組み付けるリムを備える。複数の可撓性条片は、少なくとも2つの可撓性条片を備え、少なくとも2つの可撓性条片は、発振器の平面に直交する第1の平面で配置した第1の条片、及び発振器の平面に直交し、第1の平面と交差する第2の平面で配置した第2の条片を有する。第1の条片及び第2の条片は、同一形状を有し、発振器の発振形状軸は、第1の平面及び第2の平面の交差によって画定され、この発振形状軸は、第1の条片及び第2の条片をそれぞれの長さの8分の7で交差させる。
【0010】
PATEK PHILIPPE名義の欧州特許出願第2998800A2号は、可撓性枢動体を有する計時器構成要素を開示しており、可撓性枢動体は、少なくとも1つの第1の弾性条片によって接続した第1の剛性部分及び第2の剛性部分を画定する第1の一体構造部品、並びに少なくとも1つの第2の弾性条片によって接続した第3の剛性部分及び第4の剛性部分を画定する第2の一体構造部品を含み、第1の一体構造部品及び第2の一体構造部品は、第1の剛性部分及び第3の剛性部分が互いに一体であり、第2の剛性部分及び第4の剛性部分が互いに一体であるように互いに組み立てられる。少なくとも1つの第1の弾性条片及び少なくとも1つの第2の弾性条片は、接触せずに交差し、第1の剛性部分及び第3の剛性部分に対する第2の剛性部分及び第4の剛性部分の仮想回転軸を画定する。この構成要素は、支承体を含み、支承体は、第2の剛性部分及び第4の剛性部分と一体であり、ある軸回りに移動する要素の回転を案内することを目的とし、この軸は、仮想回転軸とは別個であり、仮想回転軸に実質的に平行である。
【0011】
ETA Manufacture Horlogere、スイス名義の欧州特許出願第3130966A1号は、機械式計時器ムーブメントを開示しており、機械式計時器ムーブメントは、少なくとも1つの香箱、香箱によって一端で駆動される歯車セット、及びてんぷ/ひげぜんまいの形態の共振器を有する局部発振器の脱進機機構、及び計時器ムーブメントのフィードバック・システムを含む。脱進機機構は、歯車セットのもう一方の端部で駆動される。フィードバック・システムは、2つの発振器の速度を比較する速度比較器と組み合わせた少なくとも1つの正確な基準発振器、及び測度比較器の比較結果に基づいて共振器を減速又は加速させる局部発振器共振器を調整する機構を含む。
【0012】
ETA SA Manufacture Horlogere Suisse名義のスイス特許出願第709536A2号は、計時器調整機構を開示しており、平面に対して少なくとも枢動運動で移動するように組み付けた計時器調整機構は、歯車列を介して駆動トルクを受け取るように構成したがんぎ車、及び第1の弾性戻り手段によって前記板に接続した第1の剛性構造を備える第1の発振器を備える。この調整機構は、第2の発振器を含み、第2の発振器は、第2の弾性戻り手段によって前記第1の剛性構造体に接続した第2の剛性構造体を備え、前記がんぎ車内に含まれる相補形支承手段と協働するように構成した支承手段を含み、前記がんぎ車は、前記第1の発振器及び前記第2の発振器を前記歯車列と同期させる。
【0013】
参照により本明細書に組み込まれる、同じ出願人による欧州特許出願第17183666号は、大型角度行程を有する枢動体を開示している。約25°から30°の条片の間の角度、及び条片の長さの約45%に位置する交差点を使用し、回転軸に対して共振器の質量中心をずらすことによって、大きな角度行程(最大40°以上)にわたり良好な等時性及び位置不感受性を同時に得ることが可能である。角度行程を最大化する一方で良好な平面外剛性を維持するため、条片は、より薄いがより高さが高く作製される。高い縦横比の値、即ち、高い比率の条片高さ対厚さを使用すると、理論的には有利であるが、実際には、大きな角度振幅と同時に、背反曲率の抑制が観察され、共振器の等時性を損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願第14199039号
【特許文献2】欧州特許出願第16155039号
【特許文献3】欧州特許出願第3035127A1号
【特許文献4】米国特許出願第3628781A号
【特許文献5】欧州特許出願第2911012A1号
【特許文献6】欧州特許出願第2998800A2号
【特許文献7】欧州特許出願第3130966A1号
【特許文献8】スイス特許出願第709536A2号
【特許文献9】欧州特許出願第17183666号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】国際クロノメトリ会議(International Chronometry Congress)、スイス、モントルー、2016年9月28及び29日、M.H.Kahrobaiyanのチーム、論文「Gravity insensitive flexure pivots for watch oscillators」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、撓み支承体を有する機械式発振器を展開することを提案し、機械式発振器の角度行程は、既存の脱進機機構に適合し、機械式発振器の撓み支承体は、あらゆる変形とは無関係に規則的に挙動する。
【0017】
回転撓み支承体を有するこの共振器は、以下の特性:
−高い品質計数;
−大きな角度行程;
−良好な等時性;
−空間内での高い位置不感受性
を有さなければならない。
【0018】
撓み支承体が、発振平面に平行な平面内に突出する状態で交差する条片を有し、前記条片が、固定質量及び移動質量を結合するという特定のケースを考慮すると、枢動体の可能な角度行程θは、一方の、固定質量及び交差点における条片の埋め込み点からの距離Dと、もう一方の、2つの相対する埋め込み点の間の伸長部における同じ条片の全長Lとの間の関係X=D/Lに依存する。M.H.Kahrobaiyanチームの上述の著書は、ここでは90°である交差点において、所与の頂点角度αを有する所与の対の条片の場合、この可能な角度行程θがX=D/L=0.5であると最大であり、実質的に対称な曲線ではこの値から急激に減少することを示している。しかし、そのような交差条片枢動体は、X=D/L=0.5であってα=90°である場合、等時性ではない。
【0019】
したがって、本発明は、条片の交差点における頂点角度αの値と、比率X=D/Lの値との間の有利な組合せの範囲を調査し、等時性の枢動体、及び条片のそれぞれの縦横比の最適な値を得るようにする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的で、本発明は、請求項1に記載の機械式発振器に関する。
【0021】
特に、本発明は、2つの不等式:0.15≦(X=D/L)≦0.85及びα≦60°を同時に満たす枢動体を有する等時性発振器を得ることができることを示す。
【0022】
当然、α=0°の構成は、条片はもはや突出する状態で交差せず、互いに平行であるため、除外する。
【0023】
本発明は、少なくとも1つのそのような機械式発振器を含む計時器ムーブメントにも関する。
【0024】
本発明は、そのような計時器ムーブメントを含む時計にも関する。
【0025】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】機械式発振器の第1の変形形態の概略斜視図であり、機械式発振器は、細長い形状の第1の剛性支持要素を含み、第1の剛性支持要素をムーブメント等の板に取り付けるため、第1の剛性支持要素に、2つの独立した可撓性条片によって第2の中実慣性要素が懸架され、可撓性条片は、前記第2の慣性要素の発振平面上に突出する状態で交差し、第2の慣性要素は、標準的ながんぎ車を有する従来のスイスレバー脱進機と協働する。
図2図1の発振器の概略斜視図である。
図3図1の発振器の条片の交差軸を通る概略断面図である。
図4図2の概略詳細図であり、条片交差点と、共振器の質量中心の突出部との間のずれを示し、このずれの詳細は、以下で説明する異なる変形形態に同様に適用可能である。
図5】グラフであり、このグラフは、横軸上に、一方の、固定質量及び交差点における条片の埋め込み点からの距離Dと、もう一方の、2つの相対する埋め込み点の間の同じ条片の全長Lとの間に比率X=D/Lを有し、縦軸上に、可撓性条片の交差点の頂点角度を有する。グラフは、2つの上側曲線及び下側曲線を破線で画定し、上側曲線及び下側曲線は、等時性を保証するこれらのパラメータの間の許容可能な領域の境界を画定する。実線曲線は、有利な値を示す。
図6図1と同様の、機械式発振器の第2の変形形態の図であり、細長い形状の第1の剛性支持要素は、固定構造体に対しても可動であり、第2のセットの可撓性条片により、第3の剛性要素によって支持され、第2のセットの可撓性条片は、第1の可撓性条片と同様に配置され、第2の慣性要素も、従来の脱進機機構(図示せず)と協働するように構成する。
図7図6の発振器の概略平面図である。
図8図1の発振器の条片の交差軸を通る概略断面図である。
図9】そのような共振器を有するムーブメントを含む時計を表すブロック図である。
図10】可撓性条片を有する支承体の概略斜視図であり、可撓性条片は、固定構造体と慣性要素との間に突出する状態で交差する。
図11図10と同様の、理論的な撓み支承体の図であり、各条片は、図10の条片の縦横比よりも高い縦横比を有する。
図12図10と同様の、本発明による撓み支承体の図であり、この撓み支承体は、弾性的に戻る点で図11の理論的支承体と同等であるが、より多数の条片を有し、各条片は、10未満の縦横比を有する。この変形形態では、第1の型の2つの基本条片は、第1の方向で重ねられ、突出する状態で第2の型の2つの基本条片を交差し、第2の型の2つの基本条片も、第2の方向で重ねられ、延在する。
図13図12と同様の、本発明による別の撓み支承体の図であり、4つの条片は、交互に配置される。
図14図12と同様の、本発明による更に別の撓み支承体の図であり、4つの条片は、第1の方向の第1の型の2つの基本条片を含み、第1の型の2つの基本条片は、第2の型の2つの基本条片の側面に位置し、第2の型の2つの基本条片は、第2の方向に重なり、延在する。
図15図12と同様の、本発明による別の撓み支承体の図であり、この撓み支承体は、6つの条片を含み、3つの単位で重なる。
図16図13と同様の、本発明による別の撓み支承体の図であり、6つの条片は、交互に配置される。
図17図14と同様の、本発明による別の撓み支承体の図であり、8つの条片は、2つの基本条片の第1の重なり及び第2の重なりを含み、第1の方向の第1の型の2つの基本条片は、第2の型の4つの基本条片の側面に位置し、第2の型の4つの基本条片は、第2の方向に重なり、延在する。
図18図12と同様の、奇数の条片を有する、本発明による更に別の撓み支承体の図であり、5つの条片は、第1の方向の第1の型の2つの基本条片、及び第2の型の3つの基本条片を含み、第1の型の2つの基本条片は、第2の型の3つの基本条片の側面に位置し、第2の型の3つの基本条片は、第2の方向に重なり、延在する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
したがって、本発明は、少なくとも1つの第1の剛性支持要素4及び第2の中実慣性要素5を備える機械式計時器発振器100に関する。この発振器100は、第1の剛性支持要素4と第2の中実慣性要素5との間に少なくとも2つの第1の可撓性条片31、32を含み、少なくとも2つの第1の可撓性条片31、32は、第2の中実慣性要素5を支持し、第2の中実慣性要素5を静止位置に戻すように構成される。この第2の中実慣性要素5は、発振平面内で前記静止位置回りに角度を付けて発振するように構成される。
【0028】
2つの第1の可撓性条片31及び32は、互いに接触せず、静止位置において、発振平面上での第1の可撓性条片31及び32の突出部は、交差点Pにおいてすぐ近接して交差し、交差点Pに又は交差点を通して、発振平面に直交する第2の中実慣性要素5の回転軸が通過する。以下で説明する全ての形状要素は、別段に記載されていない限り、停止した発振器の静止位置にあると見なすべきである。
【0029】
図1から図4は、2つの第1の可撓性条片31、32によって接続した第1の剛性支持要素4及び第2の中実慣性要素を有する第1の変形形態を示す。
【0030】
第1の剛性支持要素4及び第2の中実慣性要素5における第1の可撓性条片31、32の埋め込み点は、2つの条片方向DL1、DL2を画定し、条片方向DL1、DL2は、発振平面に平行であり、条片方向DL1とDL2との間に、発振平面上に突出する状態で頂点角度αを形成する。
【0031】
交差点Pの位置は、比率X=D/Lによって定義され、Dは、発振平面上の、第1の剛性支持要素4における第1の条片31、32の埋め込み点の1つの突出部と、交差点Pとの間の距離であり、Lは、発振平面上の、関係する条片31、32の突出部の全長である。また、比率D/Lの値は、0から1の間に含まれ、頂点角度αは、70°以下である。
【0032】
有利には、頂点角度αは、60°以下であり、同時に、各第1の可撓性条片31、32に対し、埋め込み点比率D1/L1、D2/L2は、両端を含む0.15から0.85の間に含まれる。
【0033】
特に、図2から図4でわかるように、発振器100の質量中心は、その静止位置において、ずれεだけ交差点Pから離れ、ずれεは、発振平面上の、条片31、32の突出部の全長Lの10%から20%の間に含まれる。またより詳細には、ずれεは、発振平面上の、条片31、32の突出部の全長Lの12%から18%の間に含まれる。
【0034】
より詳細には、図示のように、第1の条片31、32及びこれらの埋め込み点は、一緒に枢動体1を画定し、枢動体1は、発振平面上に突出する状態で交差点Pを通る対称軸AAに対して対称である。
【0035】
より詳細には、静止位置において、枢動体1が発振平面上に突出する状態で対称軸AAに対して対称である場合、第2の中実慣性要素5の質量中心は、枢動体1の対称軸AA上に位置する。突出部において、この質量中心は、交差点Pと一致しても、一致しなくてもよい。
【0036】
より更に詳細には、図2から図4からわかるように、第2の中実慣性要素5の質量中心は、第2の中実慣性要素5の回転軸に対応する交差点Pから非ゼロ距離に位置する。
【0037】
特に、第2の中実慣性要素5の質量中心は、発振平面上に突出する状態で、枢動体1の対称軸AA上に位置し、条片31、32の発振平面上の突出部の0.1倍から0.2倍の全長Lの間に含まれる交差点Pからの非ゼロ距離で位置する。
【0038】
より詳細には、第1の条片31及び32は、まっすぐな条片である。
【0039】
より更に詳細には、頂点角度αは、50°以下、又は40°以下、又は35°以下、又は30°以下である。
【0040】
より詳細には、図5からわかるように、埋め込み点比率D1/L1、D2/L2は、両端を含む0.15から0.49の間、又は両端を含む0.51から0.85の間に含まれる。
【0041】
図5の実施形態によれば、一変形形態では、より詳細には、頂点角度αは、50°以下であり、埋め込み点比率D1/L1、D2/L2は、両端を含む0.25から0.75の間に含まれる。
【0042】
一変形形態では、より詳細には、図5の実施形態によれば、頂点角度αは、40°以下であり、埋め込み点比率D1/L1、D2/L2は、両端を含む0.30から0.70の間に含まれる。
【0043】
一変形形態では、より詳細には、図5の実施形態によれば、頂点角度αは、35°以下であり、埋め込み点比率D1/L1、D2/L2は、両端を含む0.40から0.60の間に含まれる。
【0044】
有利には、図5からわかるように、頂点角度α及び比率X=D/Lは、関係:
h1(D/L)<α<h2(D/L)
を満たし、但し、
0.2≦X<0.5の場合、
h1(X)=116−473×(X+0.05)+3962×(X+0.05)3−6000×(X+0.05)4であり、
h2(X)=128−473×(X−0.05)+3962×(X−0.05)3−6000×(X−0.05)4であり、
0.5<X≦0.8の場合、
h1(X)=116−473×(1.05−X)+3962×(1.05−X)3−6000×(1.05−X)4であり、
h2(X)=128−473×(0.95−X)+3962×(0.95−X)3−6000×(0.95−X)4である。
【0045】
より詳細には、特に図示の非限定実施形態では、第1の可撓性条片31及び32は、同じ長さL及び同じ距離Dを有する。
【0046】
より詳細には、第1の可撓性条片31及び32の埋め込み点の間で、これらの第1の可撓性条片31及び32は同一である。
【0047】
図6から図8は、機械式発振器100の第2の変形形態を示し、第1の剛性支持要素4は、発振器100内に含まれる固定構造体に対して直接的又は間接的に可動であり、第1の可撓性条片31、32と同様に配置した2つの第2の可撓性条片33、34による第3の剛性要素6によって支持される。
【0048】
より詳細には、図示の非限定実施形態では、発振平面上での第1の可撓性条片31、32及び第2の可撓性条片33、34の突出部は、同じ交差点Pで交差する。
【0049】
別の特定の実施形態(図示せず)では、静止位置において、枢動体1が対称軸AAに対して対称である場合、第1の可撓性条片31、32及び第2の可撓性条片33、34の突出部は、発振平面上に突出する状態で、両方が枢動体1の対称軸AA上に位置する2つの個別の点において発振平面上で交差する。
【0050】
より詳細には、第1の剛性支持要素4及び第3の剛性要素6と第2の可撓性条片33、34との埋め込み点は、発振平面に平行である2つの条片方向を画定し、第2の可撓性条片33、34の間に、発振平面上に突出する状態で、第1の可撓性条片31と32との間の頂点角度αと同じ二等分線を有する頂点角度を形成する。より更に詳細には、第2の可撓性条片33、34のこれら2つの方向は、第1の可撓性条片31、32と同じ頂点角度αを有する。
【0051】
より詳細には、第2の可撓性条片33、34は、図の非限定例のように、第1の可撓性条片31、32と同一である。
【0052】
より詳細には、静止位置において、枢動体1が発振平面上に突出する状態で対称軸AAに対して対称である場合、第2の中実慣性要素5の質量中心は、枢動体1の対称軸AA上に位置する。
【0053】
同様に、特に静止位置において、枢動体1が対称軸AAに対して対称である場合、第1の剛性支持要素4の質量中心は、発振平面上に突出する状態で枢動体1の対称軸AA上に位置する。
【0054】
特定の変形形態では、静止位置において、枢動体1が、発振平面上に突出する状態で対称軸AAに対して対称である場合、第2の中実慣性要素5の質量中心及び第1の剛性支持要素4の質量中心は、枢動体1の対称軸AA上に位置する。より更に詳細には、第2の中実慣性要素5の質量中心及び第1の剛性支持要素4の質量中心の突出部は、枢動体1の対称軸AA上で一致する。
【0055】
そのように重なった枢動体に関して図示する特定の構成は、発振平面上への第1の可撓性条片31、32及び第2の可撓性条片33、34の突出部は、同じ交差点Pで交差し、交差点Pは、第2の中実慣性要素5の質量中心の突出部にも対応するか、又は少なくとも第2の中実慣性要素5の質量中心の突出部に可能な限り近い。より詳細には、この同じ点は、第1の剛性支持要素4の質量中心の突出部にも対応する。より更に詳細には、この同じ点は、発振器100全体の質量中心の突出部にも対応する。
【0056】
この重なる枢動構成の特定の変形形態では、静止位置において、枢動体1が対称軸AAに対して対称である場合、第2の中実慣性要素5の質量中心は、発振平面上に突出する状態で枢動体1の対称軸AA上に位置し、交差点からの非ゼロ距離は、第2の中実慣性要素5の回転軸に対応し、この非ゼロ距離は、ずれを伴って条片33、34の発振平面上の突出部の全長Lの0.1倍から0.2倍の間に含まれ、このずれは、図2から図4のずれεと同様である。
【0057】
同様に、特に、枢動体1が対称軸AAに対して対称である場合、第2の中実慣性要素5の質量中心は、発振平面上に突出する状態で、剛性支持要素4の回転軸に対応する交差点から非ゼロ距離で枢動体1の対称軸AA上に位置し、この非ゼロ距離は、発振平面上の、条片31、32の突出部の全長Lの0.1倍から0.2倍の間に含まれる。
【0058】
同様に、特に、枢動体1が対称軸AAに対して対称である場合、第1の中実慣性要素4の質量中心は、発振平面上に突出する状態で、第2の中実慣性要素5の回転軸に対応する交差点Pからの非ゼロ距離で枢動体1の対称軸AA上に位置する。特に、この非ゼロ距離は、発振平面上の、条片33、34の突出部の全長Lの0.1倍から0.2倍の間に含まれる。
【0059】
同様に、特に、枢動体1が対称軸AAに対して対称である場合、第1の剛性支持要素4の質量中心は、発振平面上の突出部において、枢動体1の対称軸AA上に、第1の剛性支持要素4の回転軸に対応する交差点から非ゼロ距離で位置し、この非ゼロ距離は、発振平面上の、条片31、32の突出部の全長Lの0.1倍から0.2倍の間に含まれる。
【0060】
同様に、特に、第1の剛性支持要素4の質量中心は、枢動体1の対称軸AA上に、交差点Pから非ゼロ距離で位置し、交差点Pは、条片33、34の発振平面上の突出部の0.1倍から0.2倍の全長Lの間に含まれる。
【0061】
より詳細には、図の変形形態からわかるように、枢動体1が発振平面上に突出する状態で枢動軸AAに対して対称である場合、静止位置における発振器100の質量中心は、対称軸AA上に位置する。
【0062】
より詳細には、第2の中実慣性要素5は、枢動体1が対称軸AAに対して対称である場合、枢動体1の対称軸AAの方向に細長い。このことは、例えば、図1から図4のケースにあてはまり、このケースでは、慣性要素5は、長いアームを有する従来のてんぷが固着される基部を含み、このてんぷは、円弧内にリム区分又は慣性ブロックを備える。この目的は、枢動体の対称軸回りの外部の角加速度の影響を最小にするためである。というのは、条片が、わずかな角度αのため、この軸回りに低い回転剛性を有するためである。
【0063】
本発明は、MEMS又はLIGA又は同様の方法により、微細加工可能な材料又は少なくとも部分的に非晶質の材料から作製した、条片及び中実構成要素を接合する一体構造の実施形態に好適である。特に、シリコン実施形態の場合、発振器100は、有利には、可撓性シリコン条片にシリコン二酸化物を添加することにより、温度補償型である。一変形形態では、条片は、例えば、溝等に埋め込んで組み付けることができる。
【0064】
図6から図9の場合のように、有利ではあるが非限定的な変形形態を構成する、不要な運動を互いに相殺するような配置を選択するケースでは、2つの枢動体が直列にある場合、質量中心を回転軸上に置くことができる。しかし、2つの枢動体を直列に有するそのような配置及びそのような発振器機能を選択する必要はなく、回転軸上に質量中心を配置する必要はないことに留意されたい。当然、図示の実施形態は、特定の形状の位置合わせ又は対称構成に対応するが、異なる他の2つの枢動体、又は異なる交差点若しくは位置の合わない質量中心を有する他の2つの枢動体の上部に1つの枢動体を置くこと、又はより多くの数のセットの条片を直列に実装することも可能であり、介在する質量は、てんぷの振幅を更に増大させることは明らかである。
【0065】
図示の変形形態では、全ての枢動軸、条片交差点及び質量中心は、同一平面上であり、このことは、特に有利であるが、非限定的なケースである。
【0066】
本発明は、いずれの場合も30°を超える長い角度行程を得ることを可能にし、角度行程は、50°又は更には60°にさえ達することができ、これにより、全ての通常の型の機械式脱進機、即ち、スイスレバー脱進機、デテント脱進機、同軸脱進機又はその他の脱進機と組み合わせて角度行程を適合させることを理解されたい。
【0067】
条片の高い縦横比値の理論上の使用に等しい実用的な解決策を決定することも、問題である。
【0068】
この目的で、本発明は、単一条片を複数の基本条片と取り替えることによって、条片を長手方向に更に分割し、複数の基本条片の組み合わせた挙動は、等しく、基本条片のそれぞれは、閾値に限定した縦横比を有する。したがって、各基本条片の縦横比は、単一基準条片と比較して低減し、最適な等時性及び位置不感受性を達成する。
【0069】
各条片31、32は、縦横比RA=H/Eを有し、Hは、長さLに沿った発振平面及び条片31、32の伸長部の両方に直交する条片31、32の高さであり、Eは、長さLに沿った発振平面内の、条片31、32の伸長部に直交する条片31、32の厚さである。
【0070】
本発明によれば、縦横比RA=H/Eは、各条片31、32に対し10未満である。より詳細には、この縦横比は、8未満である。また、可撓性条片31、32の総数は、厳密には2以上である。
【0071】
より詳細には、発振器100は、第1の条片方向DL1で延在する主条片31と呼ばれる1番の第1の条片N1、及び第2の条片方向DL2で延在する副条片32と呼ばれる2番の第1の条片N2を含み、1番N1及び2番N2は、2以上である。
【0072】
より詳細には、1番N1は、2番N2に等しい。
【0073】
より更に詳細には、発振器100は、第1の条片方向DL1で延在する1つの主条片31、及び第2の条片方向DL2で延在する1つの副条片32から形成した少なくとも一対を含む。また、各対において、主条片31は、向きに関する点を除いて副条片32と同一である。
【0074】
特定の変形形態では、発振器100は、第1の条片方向DL1に延在する1つの主条片31及び第2の条片方向DL2に延在する1つの副条片32からそれぞれ形成した対しか含まず、各対において、主条片31は、向きに関する点を除いて副条片32と同一である。
【0075】
別の変形形態では、発振器100は、第1の条片方向DL1で延在する1つの主条片31、及び第2の条片方向DL2で延在する複数の副条片32から形成した少なくとも1つの群を含む。また、各ケースにおいて、条片の各群では、主条片31の弾性挙動は、向きに関する点を除き、複数の副条片32の組合せから得た弾性挙動と同一である。
【0076】
1つの可撓性条片の挙動は、その縦横比RAに依存するが、挙動は、可撓性条片に付与される曲率値にも依存することにも留意されたい。可撓性条片の偏向曲線は、特に埋め込み点において、縦横比の値及び局所的な曲率半径の値の両方に依存する。このことが、平面突出する条片の対称構成が好ましく採用される理由である。
【0077】
本発明は、少なくとも1つのそのような機械式発振器100を含む計時器ムーブメント1000に関する。
【0078】
本発明は、少なくとも1つのそのような計時器ムーブメント1000を含む時計2000にも関する。
【0079】
適切な作製方法は、以下の様々な種類の枢動体について、以下の動作を実施することにある:
図12の概略図による枢動体AABBに関し、
a.例えば、限定はしないが、2つのSOIウエハ組立体から得た、少なくとも4つの層を有する基板を使用し;
b.AAを得るため、DRIE方法によって前面をエッチングし、特に、2つの層をエッチングして一体にし;
c.BBを得るため、DRIE方法によって裏面をエッチングし、特に、2つの層をエッチングして一体にし;
d.埋め込み酸化物をエッチングすることによって、4つの層を部分的に分離する。
【0080】
DRIE(深掘り反応性イオン・エッチング)法の高い精度は、非常に良好な左右の位置合わせを保証する光学的な位置合わせシステムのため、5マイクロメートル以下でのかなり高度な配置及び位置合わせ精度を保証する。当然、選択した材料に応じて、同様の方法を実施することができる。
【0081】
AAABBB型構造を得るため、より多数の層を有する基板、例えば、2つのSOI基板を組み立てることによって、特に、6つの利用可能な層を有する基板を実装することが可能である。
【0082】
同じAABB型枢動体を得る一変形形態は、以下のことにある:
a.2つの層を有する2つの規格のSOI基板を使用し;
b.第1の基板に対し、Aを得るため前面をDRIEエッチングし、Aを得るため裏面をDRIEエッチングし;
c.第2の基板に対し、Bを得るため前面をDRIEエッチングし、Bを得るため裏面をDRIEエッチングする。作業b及びcの代替として、前面及び裏面エッチングを実施せず、1つのステップで、第1の基板及び第2の基板上の2つの層を通じてエッチングすることが可能である。
d.AABBを得るため、2つの基板のウエハ間(wafer−to−wafer)接合を実施するか、又は個々の構成要素の部品間(part−to−part)組み立てを実施する。この場合、形状の正確な位置合わせは、当業者に周知の様式のウエハ間接合機械の仕様又は部品間方法に関連付けられる。
【0083】
図13の図によるABAB型枢動体の場合、
a.2つの層を有する2つの規格のSOI基板を使用し;
b.第1の基板に対し、Aを得るため前面をDRIEエッチングし、Bを得るため裏面をDRIEエッチングし;
c.第2の基板に対し、Aを得るため前面をDRIEエッチングし、Bを得るため裏面をDRIEエッチングし;
d.ABABを得るため、2つの基板のウエハ間接合を実施するか、又は個々の構成要素の部品間組み立てを実施する。上記のように、形状の正確な位置合わせは、ウエハ間接合機械の仕様又は部品間方法に関連付けられる。
【0084】
条片の数及び利用可能な機器に応じて、方法の多くの他の変形形態を実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
4 第1の剛性支持要素
5 第2の中実慣性要素
31 第1の可撓性条片
32 第1の可撓性条片
100 機械式計時器発振器
1000 計時器ムーブメント
2000 時計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18