特許第6885994号(P6885994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885994
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】トンネル防災システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/46 20150101AFI20210603BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20210603BHJP
   G08B 29/06 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   H04B3/46
   G08B17/00 L
   G08B29/06
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-152418(P2019-152418)
(22)【出願日】2019年8月23日
(62)【分割の表示】特願2015-153017(P2015-153017)の分割
【原出願日】2015年8月3日
(65)【公開番号】特開2020-10359(P2020-10359A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】杉山 泰周
【審査官】 鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−248951(JP,A)
【文献】 特開2014−157440(JP,A)
【文献】 特開平11−283168(JP,A)
【文献】 特開2012−242330(JP,A)
【文献】 特開2012−145418(JP,A)
【文献】 特開昭62−021347(JP,A)
【文献】 特開2002−042263(JP,A)
【文献】 特開平05−153243(JP,A)
【文献】 特開平06−266990(JP,A)
【文献】 特開2004−312354(JP,A)
【文献】 実開平05−043300(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/46
G08B 17/00
G08B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災受信盤からトンネル内に引き出した信号回線に端末機器を接続して監視するトンネル防災システムに於いて、
前記信号回線に流れる電流値を測定可能に接続され、測定した電流値が所定の閾値以上であるか又は前記所定の閾値を超えた場合に電流値異常と判定して電流値異常信号を外部の設備に送信して警報させる回線電流監視手段を設け
前記回線電流監視手段は、前記電流値異常と判定した場合に、前記電流値の測定を中断することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項2】
防災受信盤からトンネル内に引き出した信号回線に端末機器を接続して監視するトンネル防災システムに於いて、
前記信号回線に流れる電流値を測定可能に接続され、測定した電流値が所定の閾値以下であるか又は前記所定の閾値を下回る場合に、電流値異常と判定して電流値異常信号を外部の設備に送信して警報させる回線電流監視手段を設け、
前記回線電流監視手段は、前記電流値異常と判定した場合に、前記電流値の測定を中断することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、測定した前記信号回線に流れる電流値を記録することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項4】
請求項1又は2記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、前記防災受信盤又は前記外部の設備による所定の復旧操作を検出した場合に、前記電流値異常の警報を解除することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項5】
請求項3又は4記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、前記防災受信盤又は前記外部の設備による所定の復旧操作を検出した場合に、前記信号回線に流れる電流値の測定を再開することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、前記所定の閾値として前記信号回線単位に電流値異常と判定する閾値を設定し、複数の信号回線の何れかで前記電流値異常と判定した場合に、当該電流値異常と判定した信号回線の閾値を変更して、変更前に比べて当該電流値異常と判定し難くなるようにすることを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、複数の信号回線の何れかで電流値異常と判定した場合、当該電流値異常と判定した信号回線を電流値の測定対象から除外することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れかに記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、前記信号回線の電流値と共に所定の環境条件を測定し、測定した前記信号回線の電流値及び前記環境条件に応じて前記電流値異常を判定することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項9】
請求項8記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、前記所定の環境条件の測定結果に基づき、前記電流値異常を判定する前記所定の閾値を変更することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項10】
請求項9記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、前記所定の環境条件の測定結果に基づき、前記電流値異常と判定する前記所定の閾値を所定の期間、変更することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項11】
請求項10記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、季節又は一日の時間帯における前記所定の環境条件の測定結果に基づき、前記電流値異常と判定する前記所定の閾値を前記季節又は一日の時間帯に応じて変更することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項12】
請求項9又は11記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、前記所定の閾値を所定の基準閾値として予め設定し、前記所定の環境条件の測定結果から高温多湿と判定した場合に前記基準閾値をそれより高い閾値に変更し、前記所定の環境条件の測定結果から低温乾燥と判定した場合に前記基準閾値をそれより低い閾値に変更することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項13】
請求項1乃至5の何れかに記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、同一の前記信号回線について所定回数継続して前記電流値異常と判定した場合に、前記外部の設備に前記電流値異常信号を送信して警報させることを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項14】
請求項1乃至5の何れかに記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、所定周期毎に前記信号回線の電流値を測定し、前記所定周期毎の前記信号回線の電流値測定で電流値異常と判定した場合は、当該電流値異常と判定された前記信号回線について、前記所定周期より短い周期毎に、前記信号回線の電流値を測定することを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項15】
請求項1乃至5の何れかに記載のトンネル防災システムに於いて、前記回線電流監視手段は、前記電流値異常と判定した場合に、前記電流値異常信号を前記外部の設備に送信して警報させ、その後、所定時間を経過した場合に、前記警報を解除させることを特徴とするトンネル防災システム。
【請求項16】
防災受信盤からトンネル内に引き出した信号回線に端末機器を接続して監視するトンネル防災システムに於いて
前記信号回線流れる電流値を測定可能に接続され、測定した電流値が上限閾値以上であるか若しくは前記上限閾値を超えた場合、又は下限閾値以下であるか若しくは前記下限閾値を下回る場合に、前記電流値異常と判定して電流値異常信号を外部の設備に送信して警報させる回線電流監視手段を設け、
前記回線電流監視手段は、前記電流値異常と判定した場合に、前記電流値の測定を中断することを特徴とするトンネル防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に設置した通報装置や検知器等の端末機器を防災受信盤に接続してトンネル内の異常を監視するトンネル防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用施設が設置されている。
【0003】
このような非常用施設としては、火災の監視と通報のため火災検知器、手動通報装置、非常電話が設けられ、また火災の消火や延焼防止のために消火栓装置が設けられ、更にト
ンネル躯体やダクト内を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧などが設置され、これらの非常用施設の端末機器を監視制御する防災受信盤を設けることで、トンネル防災システムを構築している。
【0004】
防災受信盤と端末機器で構成するトンネル防災システムは、R型伝送方式とP型直送方式に大別される。R型伝送方式は、伝送回線にアドレスを設定した火災検知器等の端末機器を接続し、伝送制御により端末機器単位に検知と制御を行う個別管理を可能とする。P型直送方式は、端末機器の種別に応じて所定の区画単位に分け、区画単位に引き出した信号回線に同一区画に属する複数の端末機器を接続し、信号回線単位に検知と制御を行う。
【0005】
R型伝送方式のトンネル防災システムは、端末機器による検知や制御が個別にできるため、機能及び管理面で様々な利点がある。一方、P型直送方式のトンネル防災システムは、火災検知器に伝送制御機能を設ける必要がなく、また、伝送距離が長くなっても中継増幅盤を設ける必要がないことから、R型伝送方式と比較してシステム構成が簡単で安価である。
【0006】
トンネル防災システムとしては、R型伝送方式とP型直送方式のメリットとデメリット、トンネル長や車両の交通量等を考慮して、R型伝送方式又はP型直送方式のトンネル防災システムを構築するようにしている。
【0007】
ところで、P型直送方式のトンネル防災システムにあっては、手動通報装置、消火栓起動装置、ダクト温度検知器等の端末機器は、操作又は検知による信号出力部を無電圧a接点スイッチとして構成し、防災受信盤から引き出された信号回線に無電圧a接点スイッチを接続している。無電圧a接点スイッチは通常監視状態でオフしており、操作や検知動作によりオンして無電圧接点信号を出力する。
【0008】
具体的には、防災受信盤側から信号回線の一方にプルアップ抵抗を介して電源電圧を印加しており、無電圧a接点スイッチがオフした定常監視状態では、信号回線に消費電流は殆ど流れず、防災受信盤から見た信号回線間の電源電圧は略電源電圧に保たれている。無
電圧a接点スイッチがオンすると信号回線に電流が流れ、防災受信盤から見た信号回線間の電圧は略零ボルトに低下し、防災受信盤は信号回線の消費電流の増加又は信号回線間の電圧低下を検出して端末機器の操作又は検知を示す受信信号を制御部に出力する。
【0009】
例えば手動通報装置からの火災通報信号であれば、防災受信盤は、火災表示、端末側の応答ランプの点灯制御、手動通報区画表示、消火ポンプ起動信号の出力といった制御動作を行うと共に、遠方監視制御設備、テレビ監視設備、可変式道路情報板設備、トンネル換気設備、照明設備等の外部設備に火災通報信号を送信して所定の対処制御を行わせるようにしている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−246962号公報
【特許文献2】特開平11−128381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、このような従来のP型直送方式のトンネル防災システムにあっては、端末機器を接続している信号回線(外線ケーブル)の経年劣化等により絶縁低下が進み、端末機器を接続している信号回線に通常監視状態で想定される以上の電流が流れ、防災受信盤は端末機器の操作又は検知動作による信号受信と判断して警報動作を行うと共に、遠方監視制御設備、テレビ監視設備、可変式道路情報板設備、トンネル換気設備、照明設備等の他設備を連動し、トンネルを通行止めにすることが度々生じている。
【0012】
この問題を解決するため、防災受信盤で無電圧a接点スイッチを設けた端末機器を接続した信号回線に流れる電流を、例えば1日1回というように定期的に測定して記録し、更に、測定した電流が所定の閾値を超えた場合に信号回線の電流値異常を判定して警報し、更に、防災受信盤から遠方監視制御設備へ信号回線の電流値異常信号を送信して警報することが考えられている。
【0013】
このように防災受信盤に信号回線の電流値を測定記録して絶縁劣化を監視する機能を設けた場合、電流値異常が発生して警報が行われても、直ぐに電流値異常を起こした信号回線を交換して障害を復旧するような保守管理は行わず、電流値の測定記録を見て信号回線の絶縁劣化の進み具合を判断しながら信号回線の交換工事等を立案して対応することとなり、信号回線の交換による障害復旧にはある程度の期間を必要とする。
【0014】
しかしながら、電流値異常が判定されて警報が出されると、定期的に電流測定を行う毎に電流値異常が判定されて防災受信盤及び遠方監視制御設備で警報出力が繰り返し行われ、その都度、警報出力に対する対処が必要となり、トンネルの監視業務に支障を来たす問題がある。
【0015】
本発明は、端末機器を接続した信号回線の電流を定期的に測定して電流値異常が警報されても、電流値異常の警報に煩わされることなく回線電流の測定記録を継続して絶縁劣化の状況を適確に判断可能とするトンネル防災システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
トンネル防災システム1
本発明は、防災受信盤からトンネル内に引き出した信号回線に端末機器を接続して監視するトンネル防災システムに於いて、
信号回線に流れる電流値を測定可能に接続され、測定した電流値が所定の閾値以上であるか又は所定の閾値を超えた場合に電流値異常と判定して電流値異常信号を外部の設備に送信して警報させる回線電流監視手段を設け
回線電流監視手段は、電流値異常と判定した場合に、電流値の測定を中断することを特徴とする。
【0017】
(トンネル防災システム2)
本発明は、防災受信盤からトンネル内に引き出した信号回線に端末機器を接続して監視するトンネル防災システムに於いて、
信号回線に流れる電流値を測定可能に接続され、測定した電流値が所定の閾値以下であるか又は所定の閾値を下回る場合に、電流値異常と判定して電流値異常信号を外部の設備に送信して警報させる回線電流監視手段を設け、
回線電流監視手段は、電流値異常と判定した場合に、電流値の測定を中断することを特徴とする。
【0018】
回線電流監視手段は、測定した前記信号回線に流れる電流値を記録する。
【0019】
回線電流監視手段は、防災受信盤又は外部の設備による所定の復旧操作を検出した場合に、電流値異常の警報を解除する。
【0020】
回線電流監視手段は、防災受信盤又は外部の設備による所定の復旧操作を検出した場合に、信号回線に流れる電流値の測定を再開する。
【0021】
(閾値の変更)
回線電流監視手段は、所定の閾値として回線単位に電流値異常を判定する閾値を設定し、複数の信号回線の何れかで電流値異常と判定した場合に、当該電流値異常と判定した信号回線の閾値を変更して、変更前に比べて当該電流値異常と判定し難くなるようにする。
【0022】
(電流値測定のマスク)
回線電流監視手段は、複数の信号回線の何れかで電流値異常と判定した場合、当該電流値異常と判定した信号回線を電流値の測定対象から除外する。
【0023】
(環境条件に関連した電流値異常の判定)
回線電流監視手段は、信号回線の電流値と共に所定の環境条件を測定し、測定した信号回線の電流値及び環境条件に応じて電流値異常を判定する。
【0024】
(環境条件による閾値変更)
回線電流監視手段は、所定の環境条件の測定結果に基づき、電流値異常を判定する所定の閾値を変更する。
【0025】
(環境条件の時間的変化に応じた閾値変更)
回線電流監視手段は、所定の環境条件の測定結果に基づき、電流値異常と判定する所定の閾値を所定の期間、変更する。
【0026】
(季節や一日の時間帯に応じた閾値変更)
回線電流監視手段は、季節又は一日の時間帯における所定の環境条件の測定結果に基づき、電流値異常と判定する所定の閾値を季節又は一日の時間帯に応じて変更する。
【0027】
(高温多湿と低温乾燥に応じた閾値変更)
回線電流監視手段は、所定の閾値を所定の基準閾値として予め設定し、所定の環境条件の測定結果から高温多湿と判定した場合に基準閾値をそれより高い閾値に変更し、所定の環境条件の測定結果から低温乾燥と判定した場合に基準閾値をそれより低い閾値に変更する。
【0028】
(電流値異常が所定回数継続したら外部通報)
回線電流監視手段は、同一の信号回線について所定回数継続して電流値異常と判定した場合に、外部の設備に電流値異常信号を送信して警報させる。
【0029】
(電流値異常が出たら周期を短くして電流値を測定記録)
回線電流監視手段は、所定周期毎に信号回線の電流値を測定し、所定周期毎の信号回線の電流値測定で電流値異常と判定した場合は、該電流値異常と判定された信号回線について、所定周期より短い周期毎に、信号回線の電流値を測定する。
【0030】
(上位設備への通報と通報停止)
回線電流監視手段は、電流値異常と判定した場合に、電流値異常信号を外部の設備に送信して警報させ、その後、当該通報から所定時間を経過した場合に、警報を解除させる。
【0031】
(トンネル防災システム3)
本発明は、防災受信盤からトンネル内に引き出した信号回線に端末機器を接続して監視するトンネル防災システムに於いて、
信号回線に流れる電流値を測定可能に接続され、測定した電流値が上限閾値以上であるか若しくは前記上限閾値を超えた場合、又は下限閾値以下であるか若しくは前記下限閾値を下回る場合に、前記電流値異常と判定して電流値異常信号を外部の設備に送信して警報させる回線電流監視手段を設け、
回線電流監視手段は電流値異常と判定した場合に、前記電流値の測定を中断することを特徴とする。

【発明の効果】
【0032】
(電流値異常の復旧操作による効果)
本発明は、防災受信盤からトンネル内に引き出した信号回線に通報装置及び検知器を含む端末機器を接続して監視するトンネル防災システムに於いて、所定周期毎に端末機器を接続した信号回線に流れる電流値を測定して記録し、測定した電流値が所定の閾値以上又は閾値を超えた場合に電流値異常と判定して警報すると共に電流値異常信号を外部の上位設備に送信して警報させ、防災受信盤又は上位設備による復旧操作を検出した場合に、電流値異常を解除して所定周期毎の電流値測定を再開する回線電流監視手段を設けるようにしたため、一度、電流値異常が発生して警報が出されても、復旧操作を行うことで、継続して電流値の警報を測定記録することができ、記録した電流値の変化から信号回線の絶縁劣化の傾向を判断して適切に対処可能とする。
【0033】
(閾値の変更による効果)
また、回線電流監視手段は、回線単位に電流値異常を判定する閾値を設定し、電流値異常と判定した場合に、当該電流値異常と判定しないように閾値を変更するようにしたため、一度、電流値異常が発生して警報が出されても、この電流値異常と判定しないように例えば閾値をそれより高い値に変更することで、変更した閾値により電流値異常と判定されるまでは電流値異常の警報が出されることはなく、電流値異常の警報に煩わされることなく継続して電流値を測定記録することができ、記録した電流値の変化から信号回線における絶縁劣化の傾向を判断して適切に対処可能とする。
【0034】
(電流値測定のマスクによる効果)
また、回線電流監視手段は、複数の信号回線の何れかで電流値異常と判定した場合、電流値異常と判定した信号回線の電流値の測定を抑止するようにしたため、電流値異常が判定された信号回線を測定対象から除外することで、特定の信号回線に絶縁劣化が起きても、他の信号回線の電流値の測定記録を継続できる。
【0035】
(環境条件に関連した電流値異常の判定による効果)
また、回線電流監視手段は、信号回線の電流値と共に所定の環境条件を測定し、測定した環境条件に関連して電流値異常を判定し、例えば、回線電流監視手段は、環境条件として温度と湿度の何れか一方又は両方を測定し、温度と湿度の何れか一方又は両方に応じて電流値異常を判定する閾値を変更し、具体的には、回線電流監視手段は、所定の基準閾値を予め設定し、温度及び湿度から高温多湿と判定した場合に基準閾値をそれより高い閾値に変更し、温度及び湿度から低温乾燥と判定した場合に基準閾値をそれより低い閾値に変更するようにしたため、例えば高温多湿といった環境条件により一時的に絶縁劣化が発生した場合、環境条件の変化に応じて閾値を変更することで、電流値異常と判定されることが回避され、不要な警報出力を未然に抑止することを可能とする。
【0036】
(環境条件の時間的変化に応じた閾値変更による効果)
また、回線電流監視手段は、記環境条件と電流値の時間的な測定結果に基づき、電流値異常を判定する記閾値を時間的に変更、例えば温度と湿度の何れか一方又は両方と電流値の時間的な測定結果に基づき、電流値異常を判定する閾値を時間的に変更するようにしたため、温度又は湿度と電流値の測定結果となるログを人為的に確認し、例えば高温多湿となって電流値が増加する傾向にある6月から9月は閾値を高い値に変更し、また、一日の時間帯で気温が高めとなる例えば10時から18時までの時間帯は閾値を高めに変更し、環境条件の時間的な変化に応じて閾値を変更することで、電流値異常と判定されることが回避され、不要な警報出力を未然に抑止することを可能とする。
【0037】
(電流値異常が所定回数継続した場合の上位通報による効果)
また、回線電流監視手段は、電流値異常と所定回数継続して判定した場合に上位設備に電流値異常信号を送信して警報させるようにしたため、環境条件の変化等により一時的な信号回線の絶縁劣化が起きても、絶縁劣化が継続しない限り、電流値異常と判定しても上位設備として例えば遠方監視制御設備等に電流値異常信号は送信されず、一過性の要因による電流値異常に対し不必要な警報を抑止することを可能とする。
【0038】
(電流値異常が発生した場合に周期を短くして電流値を測定記録する効果)
また、回線電流監視手段は、所定周期毎の信号回線の電流値測定で電流値異常と判定した場合、所定周期より短い所定の第2周期毎に、信号回線の電流値を測定して記録するようしたため、例えば1日1回の所定周期毎の電流値測定で電流値異常と判定した場合、それより短い例えば1時間毎の第2周期に変更することで、電流値異常と判定した信号回線の電流値を短い時間間隔で測定記録して、絶縁劣化による電流値の変化をより正確に把握して対処することを可能とする。
【0039】
(上位設備への通報と通報停止による効果)
また、回線電流監視手段は、電流値異常と判定した場合に、信号回線情報を含めた電流値異常信号を上位設備に送信して警報させ、当該通報から所定時間を経過した場合に電流値異常信号の送信を停止して警報を解除させるようにしたため、防災受信盤で信号回線の電流値異常と判定されて警報が出力されても、外部の上位設備となる例えば遠方監視制御設備では、所定時間の間のみ電流値異常の警報が出力されるだけであり、電流値異常の警報状態が継続して管理業務に支障を来たすことを回避可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】トンネル防災システムの概要を示した説明図
図2】トンネル防災システムの機能構成の概略を示したブロック図
図3】P型伝送部の詳細を示したブロック図
図4】電流測定部の詳細を示した回路ブロック図
図5】電流値異常の警報を復旧操作により解除する回線電流監視制御の第1実施形態を示したフローチャート
図6】閾値変更により電流値異常の警報を解除する回線電流監視制御の第2実施形態を示したフローチャート
図7】電流値異常の回線の電流値測定をマスクする回線電流監視制御の第3実施形態を示したフローチャート
図8】環境条件に応じた閾値により電流値異常を判定する回線電流監視制御の第4実施形態を示したフローチャート
図9】電流値異常が所定回数を超えた場合に上位設備に通報する回線電流監視制御の第5実施形態を示したフローチャート
図10】電流値異常と判定した場合に測定周期を短くして電流値を測定記録する回線電流監視制御の第6実施形態を示したフローチャート
図11】電流値異常と判定した場合に一定時間だけ上位設備に通報して警報させる回線電流監視制御の第7実施形態を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0041】
[トンネル防災システムの概要]
図1はトンネル防災システムの概要を示した説明図である。図1に示すように、自動車専用道路のトンネルとして、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bが構築され、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bは避難連絡坑2でつながっている。
【0042】
上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って例えば25メートル又は50メートル間隔で火災検知器16を設置している。火災検知
器16は左右25メートル又は50メートルとなる両側に監視エリアを設定し、火災による炎を検出して火災発報する。
【0043】
また、上り線トンネル1aと下り線トンネル1b内のトンネル長手方向の監視員通路の内部にはダクトを形成して配管やケーブルを敷設しており、このダクト内に所定間隔でダクト内温度検知器18を設置している。ダクト内温度検知器18はケーブル火災等によるダクト内の温度上昇を検出し、接点手段として機能する無電圧a接点スイッチのオンにより温度検知信号を出力する。
【0044】
また、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の監視員通路の壁面に沿って例えば50メートル間隔で消火栓装置20と自動弁装置22を設置している。
【0045】
消火栓装置20は消火栓扉内にノズル付きホースを収納しており、火災時には消火栓扉を開いてノズル付きホースを引き出し、消火栓弁開閉レバーを開操作すると消火用水が放水され、また、消火栓弁開閉検出スイッチがオンして消火ポンプを起動させる。また、消火栓装置20には消火器扉を設け、その中に消火器を収納している。
【0046】
また、消火栓装置20には消防隊が使用する給水栓が設けられ、これに合わせて消防隊員が操作するポンプ起動スイッチを設けている。更に、消火栓装置20には通報装置扉を設けており、通報装置扉には手動通報装置(発信機)を設けている。このため消火栓装置20は端末機器として、発信機、消火栓弁開閉検出スイッチ、及びポンプ起動スイッチを備えており、それぞれ接点手段として機能する無電圧a接点スイッチのオンにより火災通報信号、消火栓検出信号又はポンプ起動信号を出力する。
【0047】
なお、消火栓弁開閉検出スイッチとポンプ起動スイッチは、同じポンプ起動信号を出力するシステム的には同一のスイッチであることから、以下、消火栓弁開閉検出スイッチ(ポンプ起動スイッチを含む)として説明する場合がある。また、手動通報装置は、消火栓装置20以外に、非常電話ボックス内にも設置しているが、以下の説明では、消火栓装置20に設けた手動通報装置を代表として説明する。
【0048】
自動弁装置22は水噴霧設備を構成しており、作動用電動弁の遠隔開制御により主弁を開駆動し、トンネル壁面の上部の長手方向に設置した複数の水噴霧ヘッドから消火用水を放水してトンネル躯体を火災から防護する。このため自動弁装置22は端末機器として作動用電動弁を備えている。
【0049】
トンネル内に設置している火災検知器16、ダクト内温度検知器18、消火栓装置20、及び自動弁装置22などの端末機器を接続してトンネル内の異常を監視するため、監視センター等に防災受信盤10を設置している。
【0050】
防災受信盤10からは上り線トンネル1aと下り線トンネル1b内に、トンネル長手方向に分割した所定の区画毎にP型の信号回線12を複数本引き出し、トンネル内に設置した火災検知器16を接続している。
【0051】
また、防災受信盤10からは上り線トンネル1aと下り線トンネル1b内に、トンネル内を長手方向に分割した区画と、端末機器の種別とに分けて、P型の信号回線12を複数本引き出し、火災検知器16以外の端末機器として、消火栓装置20に設けた手動通報装置、消火栓弁開閉検出スイッチ(ポンプ起動スイッチを含む)、ダクト内温度検知器18等の端末機器を接続している。
【0052】
P型の信号回線12は信号線とコモン線で構成し、消火栓装置20の手動通報装置、消火栓弁開閉検出スイッチ、ポンプ起動スイッチ、及びダクト内温度検知器18の各々に設けた無電圧a接点スイッチを接続した場合は、それぞれの操作又は検知動作により無電圧a接点スイッチをオンして回線電流を流すことで、火災通報信号、ポンプ起動信号、温度検知信号を防災受信盤10に送るようにしている。
【0053】
またトンネルの非常用施設としては、火災検知器16、消火栓装置20及び自動弁装置22以外に、消火ポンプ設備24、ダクト用の冷却ポンプ設備25、IG子局設備26、換気設備28、警報表示板設備30、ラジオ再放送設備32、テレビ監視設備34及び照明設備36等を設けており、IG子局設備26をデータ伝送回線で接続する点を除き、それ以外の設備はP型の信号回線12により防災受信盤10に個別に接続している。ここで、IG子局設備26は、防災受信盤10と外部に設けた上位設備である遠方監視制御設備27とをネットワークを経由して結ぶ通信設備である。
【0054】
換気設備28は、トンネル内の天井側に設置しているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル内の空気にエネルギーを与えて、トンネル長手方向に換気の流れを起こす設備である。
【0055】
また、警報表示板設備30は、トンネル内の利用者に対して、トンネル内の異常を、電光表示板に表示して知らせる設備である。ラジオ再放送設備32は、トンネル内で運転者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。テレビ監視設備34は、火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握するための設備である。照明設備36はトンネル内の照明機器を駆動して管理する設備である。
【0056】
[防災受信機の構成]
図2はトンネル防災システムの機能構成の概略を示したブロック図である。図2に示すように、防災受信盤10は制御部40を備え、制御部40は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、AD変換ポートを含む各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0057】
制御部40に対しては、トンネル内に設置した各種の端末機器をP型の信号回線12により接続したP型伝送部42を設け、また、制御部40に対しスピーカ、ブザー、警報表示灯等を備えた警報部44、液晶ディスプレイ等を備えた表示部46、各種スイッチを備えた操作部48を設け、更に、換気設備28、警報表示板設備30、ラジオ再放送設備32、テレビ監視設備34、照明設備36、消火ポンプ設備24及び冷却ポンプ設備25をP型の信号回線12により個別に接続したP型伝送部52を設けている。
【0058】
制御部40にはプログラムの実行により実現される機能として、監視制御手段70と回線電流監視手段72を設けている。監視制御手段70はトンネル内に設置した火災検知器16、ダクト内温度検知器18、消火栓装置20及び自動弁装置22等の端末機器からの検知信号や操作信号に基づき、所定の監視制御を行う。
【0059】
監視制御手段70は、例えば消火栓装置20に設けた手動通報装置の操作による火災通報信号を受信した場合、警報部44により主音響鳴動を行うと共に表示部46に火災表示と手動通報区画表示を行い、また消火栓装置20に応答信号を送信して応答ランプを点灯し、更に、ポンプ起動信号を消火ポンプ設備24に出力して消火ポンプを起動する。更に、監視制御手段70は他設備に対する制御として、IG子局設備26を介して遠方監視制御設備27に火災通報信号を送信して警報させる制御、テレビ監視設備34により火災通報区画を表示する制御、警報表示板設備30により手動通報区画の火災通報を表示する制
御、換気設備28により手動通報区画を換気する制御、照明設備36により手動通報区画を照明する制御等を行う。
【0060】
また、監視制御手段70は、ダクト内温度が上昇してダクト内温度検知器18から温度検知信号を受信した場合、冷却ポンプ設備25にポンプ起動信号を出力し、ダクト内に設置したヘッドから散水してダクト内を冷却する制御を行う。
【0061】
回線電流監視手段72は、手動通報装置、消火栓弁開閉検出スイッチ、ポンプ起動スイッチ、ダクト内温度検知器18を含む無電圧a接点スイッチを備えた端末機器を接続した信号回線12の電流値を所定周期毎、例えば1日1回の周期で測定してメモリに記憶し、測定した電流値が所定の閾値以上又は所定の閾値を超えた場合に電流値異常を判定して警報すると共に電流値異常信号をIG子局設備26を介して外部の上位設備となる遠方監視制御設備27に送信して警報させる制御を行う。
【0062】
また、回線電流監視手段72は、信号回線12の電流値異常を判定して警報した状態で、操作部48による復旧操作又は遠方監視制御設備による復旧操作の通知信号を検出した場合に、電流値異常による警報を解除して所定周期毎の電流値測定を再開する制御を行う。この制御は、後の説明で明らかにする回線電流監視手段72による回線電流監視制御の第1実施形態となる。
【0063】
[P型伝送部]
図3は防災受信盤に設けたP型伝送部の詳細を示したブロック図である。図3に示すように、P型伝送部42には、トンネル内に設置している端末機器の区画に対応して複数の区画モジュール60を設けており、例えば最初の区画モジュール60に対応したトンネル内の区画には、その右側に代表して示す消火栓装置20とダクト内温度検知器18を複数台配置している。
【0064】
消火栓装置20には無電圧a接点スイッチを備えた端末機器として、手動通報装置(発信機)54、消火栓弁開閉検出スイッチ56及びポンプ起動スイッチ58を設けている。
【0065】
区画モジュール60には、手動通報装置54に対応して回線受信部62aを設け、消火栓弁開閉検出スイッチ56とポンプ起動スイッチ58に対応して回線受信部62bを設け、ダクト内温度検知器18に対応して回線受信部62cを設けている。
【0066】
回線受信部62aから引き出した信号回線12aには、複数の消火栓装置20に設けた複数の手動通報装置54を並列接続している。このため同じ区画に属する複数の手動通報装置54の何れかの押し釦操作により無電圧a接点スイッチがオンすると、回線電流が流れることで回線受信部62aが火災通報信号を受信し、区画を特定した火災通報信号を制御部40に出力する。
【0067】
また、回線受信部62bから引き出した信号回線12bには、複数の消火栓装置20に設けた複数の消火栓弁開閉検出スイッチ56とポンプ起動スイッチ58のそれぞれを並列接続している。ここで、消火栓弁開閉検出スイッチ56とポンプ起動スイッチ58は、火災に関連する操作に基づきポンプ起動信号を出力するものであり、ポンプ起動操作手段として共通していることから同じ種別としており、このため同種の端末機器として同じ信号回線12bに並列接続している。
【0068】
このため利用者が消火栓装置20のノズル付きホースを引き出して消火栓弁開閉レバーを操作した場合に、消火栓弁開閉検出スイッチ56がオンして回線電流が流れることで回線受信部62bがポンプ起動信号を受信し、区画を特定したポンプ起動信号を制御部40
に出力する。また、消防隊員が消火栓装置20の扉を開いて給水栓に消防ホースを接続し、ポンプ起動スイッチ58をオン操作した場合にも、回線電流が流れることで回線受信部62bがポンプ起動信号を受信し、区画を特定したポンプ起動信号を制御部40に出力する。
【0069】
更に、回線受信部62cから引き出した信号回線12cには、同一区画に設けたダクト内温度検知器18を並列接続している。このため同じ区画に属する複数のダクト内温度検知器18の何れかによりダクト内の検出温度が所定の閾値温度以上となった場合に無電圧a接点スイッチをオンし、回線電流が流れることで回線受信部62cが温度検知信号を受信し、区画を特定したダクト火災検知信号を制御部40に出力する。
【0070】
区画モジュール60に設けた回線受信部62a〜62cに対しては電流測定部64a〜64cを設けている。電流測定部64a〜64cは信号回線12a〜12cの各々に流れる電流値を検出した電流値検出信号をセレクタ部65に入力している。セレクタ部65は図2の制御部40に設けた回線電流監視手段72により1日1回の周期となる所定の測定タイミングで制御信号を受け、区画モジュール60に入力している信号回線に対応した電流値検出信号を順次選択して制御部40のAD変換ポートに出力し、回線電流監視手段72はAD変換ポートに入力したアナログ電流値をデジタル電流値に変換して読み込んでメモリに記憶することで、各信号回線の電流値を周期的に測定記録している。
【0071】
図4図3のP型伝送部に設けた電流測定部の詳細を示した回路ブロック図であり、1つの信号回線を例にとって示している。図4に示すように、防災受信盤10からは引き出された信号線Lとコモン線Cからなる信号回線12には、端末機器14に設けた無電圧a接点スイッチ68及び終端抵抗15を並列に接続しており、通常監視状態で無電圧a接点スイッチ68は図示のようにオフしている。
【0072】
信号回線12の信号線Lは抵抗66により電源電圧+Vcの電源ラインにプルアップ接続しており、コモン線Cは接地接続している。このため端末機器14の無電圧a接点スイッチ68がオフしている定常監視状態では、信号回線12の信号線Lとコモン線Cの間の回線電圧VLは電源電圧+Vcとなっており、この回線電圧VLが回線受信部62に入力している。
【0073】
信号回線12に接続している端末機器14の何れかの無電圧a接点スイッチ68がオンすると、信号線Lとコモン線Cの間の回線電圧VLは略零ボルトに低下する。回線受信部62には回線電圧VLが零ボルト付近に低下した場合にオンするスイッチング回路を備えており、スイッチング回路のオンにより受信信号を制御部40に出力する。
【0074】
電流測定部64は、抵抗66により電源ラインにプルアップした信号線Lとコモン線Cの間の回線電圧VLを電流検出信号VLとして検出する回路であり、抵抗値をR、終端抵抗15の抵抗値をRs、信号回線12の絶縁抵抗をZとすると、無電圧a接点スイッチ68がオフしているときに信号回線12に流れる電流Iは次式となる。
【0075】
【数1】
【0076】
ここで、(RS//Z)は、並列抵抗値
【0077】
【数2】
【0078】
を表す。このため電流検出信号(回線電圧)VLは、
【0079】
【数3】
【0080】
となり、回線電流Iに比例して増加する電流検出信号(回線電圧)VLが得られる。
【0081】
信号回線12の絶縁劣化が起きると、絶縁抵抗Zが低下し、これにより信号回線12を流れる電流Iが増加し、電流検出信号(回線電圧)VLも増加する。
【0082】
電流測定部64で検出された、回線電圧(電流検出信号)VLはセレクタ部65に入力され、所定の測定タイミングで他の電流検出信号と共にセレクタ部65から順次読み出され、AD変換ポートから読み込んだ電流検出値VLに基づき、制御部40の回線電流監視手段72は、
I=(Vc−VL)/R (式3)
として電流値Iを求めて記録すると共に、所定の閾値と比較して信号回線の絶縁劣化による電流値異常と判定して警報することになる。
【0083】
また、電流測定部64の他の実施例として、抵抗66によるプルアップ接続点に続く信号線L側に電流検出抵抗を挿入接続し、電流に比例した電流検出抵抗の両端に発生する電流検出電圧をセレクタ部65に入力し、所定の測定タイミングで他の電流検出信号と共にセレクタ部65から順次読み出し、制御部40の回線電流監視手段72により、AD変換ポートから電流検出値として読み込んで記録すると共に、所定の閾値と比較して信号回線の絶縁劣化による電流値異常を判定して警報するようにしても良い。
【0084】
[回線電流監視制御の第1実施形態]
図5は電流値異常の警報を復旧操作により解除する回線電流監視制御の第1実施形態を示したフローチャートである。図2の制御部40に設けた回線電流監視手段72による回線電流監視制御の第1実施形態は、前述したように、電流値異常を判定して警報すると共に電流値異常信号を遠方監視制御設備27に送信して警報させ、警報中に防災受信盤10又は遠方監視制御設備27による復旧操作を検出した場合に、電流値異常による警報状態を解除して所定周期毎の電流値測定を再開するようにしたことを特徴とする。
【0085】
図5に示すように、回線電流監視手段72は、ステップS1で例えば1日1回の所定刻となる回線電流測定タイミングへの到達を判別すると、ステップS2に進んで回線番号NをN=1に初期化し、続いてステップS3で図3に示したセレクタ部65の制御によるN=1で決まる最初の信号回線の電流値を測定してメモリに記憶する記録を行う。
【0086】
続いてステップS4で測定した電流値が所定の閾値以上か否か(又は閾値を超えたか否か)を判定し、電流値が所定の閾値以上となることを判別した場合はステップS5に進んで信号回線の絶縁劣化による電流値異常と判定し、防災受信盤10の警報部44による音響警報と表示部46による警報表示を行い、更に、ステップS7に進み、IG子局設備26を介して外部の遠方監視制御設備27に電流値異常信号を送信して警報させる。ステップS4で電流値が閾値未満の場合はステップS5〜S7の処理はスキップする。
【0087】
続いて、回線番号Nが最大値Nmaxに達するまでは、ステップS9で回線番号Nを1つ増加してステップS3からの処理を繰り返す。全ての信号回線の電流値の測定記録と電流値異常の判定が済むとステップS10に進み、現在、電流値異常を警報中か否か判別し、警報中を判別した場合はステップS11に進み、防災受信盤10による直接の異常復旧操作又は遠方監視制御設備27による遠方の異常復旧操作の有無を判別する。
【0088】
ステップS11で直接又は遠方による異常復旧操作を判別するとステップS12に進み、電流値異常の警報を復旧して警報状態を解除し、ステップS1に戻って次の回線電流の測定タイミングを待つ。
【0089】
このような回線電流監視制御の第1実施形態によれば、一度、電流値異常が発生して警報が出されても、防災受信盤10又は遠方監視制御設備27により復旧操作作を行うことで警報状態が解除され、継続して電流値を測定記録することができ、記録した電流値の変化から信号回線の絶縁劣化の傾向を判断して適切に対処可能とする。
【0090】
[回線電流監視制御の第2実施形態]
図6は閾値変更により電流値異常の警報を解除する回線電流監視制御の第2実施形態を示したフローチャートである。図2の回線電流監視手段72による回線電流監視制御の第2実施形態は、回線単位に電流値異常を判定する閾値を設定し、電流値異常と判定した場合に、当該電流値異常と判定しないように閾値を変更するようにしたことを特徴とする。
【0091】
図6に示すように、回線電流監視手段72によるステップS21〜S32の処理は、図5のステップS1〜S12の処理と同じになることから説明は省略する。
【0092】
回線電流監視手段72は、ステップS31で直接又は遠方による異常復旧操作を判別するとステップS32に進み、電流値異常の警報を復旧して警報状態を解除し、続いてステップS33に進み、電流値異常と判定した信号回線に設定している閾値を読出して表示部46に表示し、ステップS34で操作部48による閾値変更操作を判別するとステップS35で現在の閾値を電流値異常と判定しないように変更する。
【0093】
この閾値の変更は、現在の閾値をそれより大きな閾値に変更する。この閾値を増加する変更は、現在の閾値に所定の閾値増加値を加算しても良いし、1以上の所定の係数を乗算しても良い。但し、閾値の増加に対し上限値を決めており、それ以上の増加は行わない。
【0094】
続いてステップS36で全ての電流値異常の信号回線について閾値変更の処理を行うまではステップS33からの処理を繰り返し、これが終了するとステップS21に戻って次
の回線電流の測定タイミングを待つ。
【0095】
このような回線電流監視制御の第2実施形態によれば、一度、電流値異常が発生して警報が出されても、この電流値異常を判定しないように例えば閾値をそれより高い値に変更することで、変更した閾値により電流値異常が判定されるまでは電流値異常の警報が出されることはなく、電流値異常の警報に煩わされることなく継続して電流値を測定記録することができ、記録した電流値の変化から信号回線における絶縁劣化の傾向を判断して適切に対処可能とする。
【0096】
[回線電流監視制御の第3実施形態]
図7は電流値異常の回線の電流値測定をマスクする回線電流監視制御の第3実施形態を示したフローチャートである。図2の回線電流監視手段72による回線電流監視制御の第3実施形態は、複数の信号回線の何れかで電流値異常を判定した場合、電流値異常と判定した信号回線の電流値の測定を抑止するマスク処理を行うことを特徴とする。
【0097】
図7に示すように、回線電流監視手段72によるステップS41,S42及びS44〜S53の処理は、図5のステップS1〜S12の処理と同じになり、新たにステップS43の処理が加わっている。
【0098】
回線電流監視手段72は、ステップS43において、前回までの処理で電流値異常と判定した信号回線か否か判別しており、電流値異常と判定していない信号回線の場合はステップS44〜S48の処理により、信号回線の電流値を測定して記録すると共に測定した電流値を閾値と比較して電流値異常の有無を判定し、電流値異常と判定した場合は防災受信盤10及び遠方監視制御設備27で電流値異常の警報出力を行う。
【0099】
これに対しステップS43で電流値異常を判定済みの信号回線を判別するとステップS44〜S48の処理をスキップすることで、その信号回線に対する電流値の測定と記録は行わず、電流値異常と判定した信号回線は監視対象から除外するマスク処理を行う。
【0100】
このような回線電流監視制御の第3実施形態によれば、電流値異常と判定された信号回線を測定対象から除外することで、特定の信号回線に絶縁劣化が起きても、他の信号回線の電流値の測定記録を継続できる。
【0101】
[回線電流監視制御の第4実施形態]
図8は環境条件に応じた閾値により電流値異常を判定する回線電流監視制御の第4実施形態を示したフローチャートである。図2の回線電流監視手段72による回線電流監視制御の第4実施形態は、信号回線の電流値と共に所定の環境条件、例えば温度及び湿度を測定し、温度及び湿度に応じて電流値異常を判定する閾値を変更することを特徴とする。
【0102】
回線電流監視手段72による環境条件に応じた閾値の変更は、例えば、所定の基準閾値を予め設定し、温度及び湿度から高温多湿と判定した場合に基準閾値をそれより高い閾値に変更し、温度及び湿度から低温乾燥と判定した場合に基準閾値をそれより低い閾値に変更する。
【0103】
図8に示すように、回線電流監視手段72は、ステップS61で所定の回線電流測定タイミングへの到達を判別すると、ステップS62に進んでトンネル内に設置した温度検出器により温度を測定すると共に湿度検出器により湿度を測定して取り込む。
【0104】
続いてステップS63に進み、ステップS62で測定して取り込んだ温度及び湿度に応じて電流値異常を判定する閾値を変更する。この閾値変更は、環境条件として夏場の高温
多湿となる環境条件では、信号回線12の絶縁劣化が起きやすいことから、基準閾値をそれより高い閾値に変更し、環境条件に起因した一時的な絶縁劣化により電流値異常と判定して警報しないようにできる。
【0105】
続いてステップS64〜S74の処理を行うが、この処理は図5のステップS2〜S12と同じになることから、その説明は省略する。
【0106】
なお、環境条件に応じて閾値を変更する回線電流監視制御の第4実施形態の変形例として、回線電流監視手段72は、記環境条件と電流値の時間的な測定結果に基づき、電流値異常を判定する閾値を時間的に変更するようにしても良い。
【0107】
この場合、回線電流監視手段72は、例えば温度又は湿度と電流値の測定結果となるログを人為的に確認し、例えば高温多湿となって電流値が増加する傾向にある例えば6月から9月は基準閾値を高い閾値に変更し、また、一日の時間帯で気温が高めとなる例えば10時から18時までの時間帯は基準閾値を高い閾値に変更し、このように環境条件の時間的な変化に応じて閾値を変更することで、電流値異常の判定を回避し、不要な警報出力を未然に抑止することを可能とする。
【0108】
ここで、環境条件の時間的変化に対応した閾値の変更は、季節や一日の時間帯に対応して時間的に変化する閾値を予め記憶しておくことで、時間の経過に応じて自動的に閾値を変更設定しても良いし、手動操作により閾値を時間的に変更しても良い。
【0109】
[回線電流監視制御の第5実施形態]
図9は電流値異常が所定回数を超えた場合に上位設備に通報する回線電流監視制御の第5実施形態を示したフローチャートである。図2の回線電流監視手段72による回線電流監視制御の第5実施形態は、信号回線の電流値異常を所定回数継続して判定した場合に前記上位設備に電流値異常信号を送信して警報させることを特徴とする。
【0110】
図9に示すように、回線電流監視手段72によるステップS81〜S87の処理は図5のステップS1〜S6の処理と同じになることから説明は省略する。
【0111】
S81〜S87の処理により全ての信号回線の電流値の測定記録と電流値異常の判定を行ってステップS89に進むと、同一の信号回線について電流値異常の判定が所定回数以上継続しているか否か判別し、継続回数が所定回数未満の場合はステップS90をスキップして遠方監視制御設備27への電流値異常信号の送信は行わず、ステップS89で電流値異常が所定回数以上継続したことを判別するとステップS90に進み、この段階で初めて遠方監視制御設備27に電流値異常信号の送信により通報して警報させる。
【0112】
これに続くステップS91〜S93の処理は図5のステップS10〜S12と同じになることから説明を省略する。
【0113】
このような回線電流監視制御の第5実施形態によれば、環境条件の変化等により一時的な信号回線の絶縁劣化が起きても、絶縁劣化が継続しない限り、電流値異常と判定しても遠方監視制御設備27等に電流値異常信号は送信されず、一過性の要因による電流値異常に対し不必要な警報を抑止することを可能とする。
【0114】
[回線電流監視制御の第6実施形態]
図10は電流値異常が所定回数を超えた場合に上位設備に通報する回線電流監視制御の第6実施形態を示したフローチャートである。図2の回線電流監視手段72による回線電流監視制御の第6実施形態は、電流値異常と判定した場合に測定周期を短くして電流値を
測定記録するようにしたことを特徴とする。
【0115】
図10に示すように、回線電流監視手段72は、ステップS101で例えば1日1回の所定時刻となる回線電流測定の第1タイミングへの到達を判別すると、ステップS102で回線番号NをN=1に初期設定し、続いてステップS103〜S109の処理を行うが、この処理は図5のステップS3〜S9の処理と同じになることから説明は省略する。
【0116】
続いて、回線電流監視手段72は、信号回線12の電流値測定と電流値異常の判定結果から、ステップS110で電流値異常の信号回線がある場合はステップS111に進み、ステップS101と同様に1日1回の第1測定タイミングか否か判別し、そうでない場合はステップS112に進み、第1測定タイミングの周期より短い例えば1時間に1回の第2測定タイミングか否か判別し、第2測定タイミングへの到達を判別するとステップS113に進み、電流値異常を判定している信号回線の電流値を測定して記録し、ステップS114で全ての電流値異常を判定した信号回線の測定が済むまでステップS113の処理を繰り返す。
【0117】
続いて、ステップS115,S116の処理を行うが、これは図5のステップS11,S12と同じになることから説明は省略する。
【0118】
このような回線電流監視制御の第6実施形態によれば、例えば1日1回の所定周期毎の電流値測定で電流値異常と判定した場合、それより短い第2周期に変更することで、電流値異常を判定した信号回線の電流値を短い時間間隔で測定記録して、絶縁劣化による電流値の変化をより正確に把握して対処することを可能とする。
【0119】
[回線電流監視制御の第7実施形態]
図11は電流値異常と判定した場合に一定時間だけ上位設備に通報して警報させる回線電流監視制御の第7実施形態を示したフローチャートである。図11の回線電流監視手段72による回線電流監視制御の第7実施形態は、信号回線の電流値異常と判定した場合に、信号回線情報を含めた電流値異常信号を遠方監視制御設備27に送信して警報させ、所定時間を経過した場合に電流値異常信号の送信を停止して遠方監視制御設備27での電流値異常の警報を解除させることを特徴とする。
【0120】
図11に示すように、回線電流監視手段72によるステップS121〜S126の処理は図5のステップS1〜S6の処理と基本的に同じになるが、図5のステップS6に対応した図11のステップS126の処理にあっては、電流値異常の警報を防災受信盤10では行うが、この段階では電流値異常信号を遠方監視制御設備27に送信せず、電流値異常の警報は行わない点で相違する。
【0121】
遠方監視制御設備27は、ステップS121〜S128の処理が済んでステップS129に進み、電流値異常の信号回線がある場合にはステップS130で遠方監視制御設備27に対し回線情報を含む電流値異常信号を送信し、遠方監視制御設備27で回線情報を含む電流値異常を警報出力させる。
【0122】
続いてステップS131で遠方監視制御設備27側で電流値異常の警報に対し対応可能な所定時間の経過を判別するとステップS132に進み、遠方監視制御設備27への電流値異常信号の送信を停止し、警報出力を解除させる。
【0123】
続いて、ステップS133,S134の処理を行うが、これは図5のステップS11,S12と同じになることから説明は省略する。
【0124】
このような回線電流監視制御の第7実施形態によれば、防災受信盤10で信号回線について電流値異常と判定されて警報が出力されても、外部の上位設備となる例えば遠方監視制御設備27では、所定時間の間のみ電流値異常の警報が出力されるだけであり、電流値異常の警報状態が継続して複数のトンネルを集中監視している遠方監視制御設備27での管理業務に支障を来たすことを回避可能とする。
【0125】
[本発明の変形例]
(端末機器)
上記の実施形態は、絶縁劣化による電流値を測定して監視する信号回線に接続した端末機器として、手動通報装置、消火栓弁開閉検出スイッチ、ポンプ起動スイッチ、ダクト内温度検知器を例にとっているが、無電圧a接点スイッチを防災受信盤からの信号回線に接続している端末機器であれば、それ以外の適宜の端末機器が含まれる。
【0126】
(信号回線の断線監視)
また、上記の実施形態は、信号回線の測定電流値が絶縁劣化により所定の閾値以上又は上限の閾値を超えた場合に電流値異常と判定しているが、通常監視状態で信号回線に流れている消費電流に対し、それより低い所定の下限の閾値を設定し、測定電流値が下限の閾値以下又は下限の閾値を下回った場合に電流値異常と判定して警報するようにしても良い。このように下限の閾値以下又は下回るような電流値異常は信号回線の断線障害を検出して警報することになる。
【0127】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0128】
1a:上り線トンネル
1b:下り線トンネル
10:防災受信盤
12:信号回線
14:端末機器
16:火災検知器
18:ダクト内温度検知器
20:消火栓装置
22:自動弁装置
24:消火ポンプ設備
25:冷却ポンプ設備
26:IG子局設備
27:遠方監視制御設備
28:換気設備
30:警報表示板設備
32:ラジオ再放送設備
34:テレビ監視設備
36:照明設備
40:制御部
42,52:P型伝送部
44:警報部
46:表示部
48:操作部
54:手動通報装置
56:消火栓弁開閉検出スイッチ
58:ポンプ起動スイッチ
60:区画モジュール
62:回線受信部
64:電流測定部
65:セレクタ部
68:無電圧a接点スイッチ
70:監視制御手段
72:回線電流監視手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11