(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の特性パラメータが、レンズに入射する光の所定の波長範囲における、濃度の理論値を実際値が上回っている領域の面積と、濃度の理論値を実際値が下回っている領域の面積の差である、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の切換装置。
前記所定の特性パラメータが、レンズに入射する光の所定の波長範囲における、濃度の理論値を実際値が上回っている領域の面積と、濃度の理論値を実際値が下回っている領域の面積の差である、
請求項7から請求項9の何れか1項に記載の切換方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施形態を通じて本開示を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須とは限らない。
【0020】
特許請求の範囲、明細書、図面、及び要約書には、著作権による保護の対象となる事項が含まれる。著作権者は、これらの書類の何人による複製に対しても、特許庁のファイル又はレコードに表示される通りであれば異議を唱えない。ただし、それ以外の場合、一切の著作権を留保する。
【0021】
(実施形態)
以下の実施形態では、理解を容易とするため、カメラボディ及びカメラレンズの双方にNDフィルタが設けられているカメラについて、NDフィルタ切換制御を行うという前提で、本開示を詳述する。しかしながら、これにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。例えば、カメラレンズ側のみに複数のNDフィルタが設けられている場合等を、本願は排除するものではない。
【0022】
図1は、本開示の切換処理を行うカメラ100の外観図である。カメラ100は、カメラボディ1とカメラレンズ2を備える。カメラボディ1とカメラレンズ2は、互いに着脱可能なものであっても、着脱不能な一体式のものであってもよい。
【0023】
カメラ100は、例えば一眼レフカメラやコンパクトデジタルカメラ等であってよい。カメラ100は、無人航空機(UAV)に支持されることが可能なカメラであってもよい。カメラ100は、ジンバル装置に支持されることが可能なカメラであってもよい。ただし、カメラの種類はこれらに限定されない。
【0024】
図2は、本開示のNDフィルタの切換処理を行うカメラ100の構造図である。まず、カメラボディ1側の構成を説明する。カメラボディ1は、撮像制御部10と、撮像素子11と、メモリ12と、操作部13と、表示部14と、機械式NDフィルタ15と、切換制御部16とを備える。シャッタ駆動部やゲイン制御部、フラッシュ等の、追加の構成を備えてもよい。
【0025】
撮像制御部10は、CPUやMPU等のマイクロプロセッサ、MCU等のマイクロコントローラなどにより構成されていてよい。撮像制御部10は、カメラ100による撮像を制御する。また、撮像制御部10は、露光時間、絞り(アイリス)などの撮像条件を決定する。撮像制御部10は、撮像素子11に撮像の指示を送信してよい。
【0026】
カメラレンズ2を通って入射した光は、撮像素子11の撮像面上に結像する。撮像素子11は、撮像面上に結像した光学像を光電変換し、画像信号として出力する。撮像素子11には、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型MOS)イメージセンサが用いられてよい。
【0027】
撮像制御部10は、入力された画像信号に対し、アナログデジタル変換を行って画像データを生成してよい。撮像制御部10は、シェーディング補正、色補正、輪郭強調、ノイズ除去、ガンマ補正、ディベイヤ、圧縮等の各種の画像処理を行ってよい。
【0028】
メモリ12は、各種データや画像データ等を記憶する記録媒体である。メモリ12は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体でよく、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリなどであってよい。メモリ12は、カメラボディ1から取り外し可能に設けられてよい。メモリ12は、撮像制御部10が撮像素子11等を制御するのに必要なプログラム等を格納してよい。メモリ12は、例えば、シャッタスピードS、F値、ISO感度、ND値を基に露光量を算出するための露光制御情報を保持してよい。ISO感度は、ゲインに対応する値である。ND値は減光フィルタによる減光度を表す。露光制御情報は、AEアルゴリズムを含む。
【0029】
操作部13は、例えばカメラボディ1に設けられたボタンやスイッチ、十字キー等の、ユーザによる操作を受け付けるインタフェースであってよい。表示部14は、表示部14は、カメラボディ1の背面に設けられたモニタ等の、ユーザにカメラ側からの情報を提示するためのインタフェースであってよい。
【0030】
機械式NDフィルタ15は、入射する光の量を制限する減光を行う。本実施例においては、機械式NDフィルタ15は、切換制御部16の制御の下、フィルタの挿抜が可能である。かかる機械式NDフィルタ15については、
図4に基づいて後述する。
【0031】
次に、カメラレンズ2側の構成を説明する。カメラレンズ2は、レンズ群21およびレンズ駆動部22、レンズ制御部23、メモリ24、磁石式NDフィルタ25、コイル26を備える。絞りや絞り駆動部等の、追加の構成を備えてもよい。
【0032】
レンズ群21は、被写体からの光を集光して撮像素子11に結像する。レンズ群21は、フォーカスレンズ、ズームレンズ、像振れ補正用レンズ等を含む。レンズ群21は、レンズ駆動部22によって駆動される。レンズ駆動部22はモータ(図示せず)を有し、撮像制御部10からの制御信号を入力すると、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含むレンズ群21を光軸方向に移動させてよい。レンズ駆動部22は、ズームレンズを移動させてズーム倍率を変更するズーミング動作を行う場合、レンズ群21を収容する鏡筒を前後方向に伸縮させてよい。
【0033】
レンズ制御部23は、カメラボディ1の撮像制御部10の制御の下、レンズ駆動部22、メモリ24、コイル26等を制御してよい。
【0034】
メモリ24は、レンズ群21や磁石式NDフィルタ25等を制御するための各種データを記憶する記録媒体である。メモリ24は、例えば、シャッタスピードS、F値、ISO感度、ND値を基に露光量を算出するための露光制御情報を保持してよい。ISO感度は、ゲインに対応する値である。ND値は減光フィルタによる減光度を表す。露光制御情報は、AEアルゴリズムを含んでよい。また、メモリ24は、使用されている磁石式NDフィルタ25のND値や、磁石式NDフィルタ25の挿抜状態を示す情報等を保持してよい。
【0035】
磁石式NDフィルタ25は、入射する光の量を制限する減光を行う。本実施形態においては、磁石式NDフィルタ25は、コイル26による切換制御の下、フィルタの挿抜が可能である。かかる磁石式NDフィルタ25については、
図3に基づいて後述する。
【0036】
図3は、カメラレンズ2が備える磁石式NDフィルタ25の構成例を示す図であり、
図3(a)は、磁石式NDフィルタ25が光軸上に挿入されている状態を、
図3(b)は、磁石式NDフィルタ25が光軸上に挿入されていない状態を、それぞれ示している。
【0037】
図3に示すように、フィルタ251が、支持体252に固定されている。支持体252の、フィルタ251とは反対側には、磁石253が設けられている。支持体252の、フィルタ251と磁石253との間に、軸254が設けられている。かかる構成を有する磁石式NDフィルタ25は、軸254を中心に回動可能である。
【0038】
磁石式NDフィルタ25の、磁石253の近傍には、コイル26(
図2参照)が配置されている。レンズ制御部23の制御の下、コイル26に流す電流を切換えることにより、コイル26に磁力が発生する。このコイル26の磁力と磁石253の磁力とにより、磁石式NDフィルタ25は、軸254を中心にして、
図3(a)および
図3(b)に示したように回動する。例えばこのような構成により、磁石式NDフィルタ25が光軸上に挿入されているオン状態(
図3(a))と、磁石式NDフィルタ25が光軸上に挿入されていないオフ状態(
図3(b))とを切換えることができる。
【0039】
磁石式NDフィルタ25が備えるフィルタ251は、例えばND2、ND4、ND16等のND値を有している。ND2の場合は光量を2分の1に、ND4の場合は光量を4分の1に、ND16の場合は光量を16分の1に、それぞれ減光することができる。
【0040】
磁石式NDフィルタ25の枚数は1枚とは限らない。例えばカメラレンズ2の光軸上に、NDフィルタを複数枚、並べて配置することができる。
【0041】
図4は、カメラボディ1が備える機械式NDフィルタ15の構成例を示す図であり、
図4(a)は、機械式NDフィルタ15が光軸上に挿入されている状態を、
図4(b)は、機械式NDフィルタ15が光軸上に挿入されていない状態を、それぞれ示している。
【0042】
図4に示すように、機械式NDフィルタ15は、支持体151と、ガイド152と、ギア153と、モータ154とを備える。ガイド152は、カメラの光軸と直交する方向(
図4の上下方向)に延びている。支持体151の両端には歯1511が設けられている。この歯1511がギア153と噛み合っており、ギア153はモータ154によって駆動される。なお、モータ154はステッピングモータであってよい。支持体151は、モータ154の動力によって、ガイド152に沿うように、カメラの光軸と直交する方向(
図4の上下方向)に移動する。
【0043】
支持体151は、透明ガラス155とフィルタ156とを、前記光軸と直交する方向に並ぶように支持している。よって、透明ガラス155とフィルタ156も、モータ154の動力によって、ガイド152に沿うように、カメラの光軸と直交する方向(
図4の上下方向)に移動する。
【0044】
例えばこのような構成により、フィルタ156が光軸上に挿入されているオン状態(
図4(a))と、フィルタ156が光軸上に挿入されていないオフ状態(
図4(b))とを切換えることができる。
【0045】
機械式NDフィルタ15が備えるフィルタ156は、例えばND2、ND4、ND16等のND値を有している。ND2の場合は光量を2分の1に、ND4の場合は光量を4分の1に、ND16の場合は光量を16分の1に、それぞれ減光することができる。
【0046】
なお、
図4(b)においては、透明ガラス155が光軸上に挿入されている。機械式NDフィルタ15において、この透明ガラス155を設けない場合、フランジバック分の光路長が変化してしまう。これを防止するため、透明ガラス155を設ける。
【0047】
また、機械式NDフィルタ15は、ステッピングモータであるモータ154を駆動する時間も必要となる為、
図3を参照して前述した磁石式NDフィルタ25の方が、
図4に示した機械式NDフィルタ15よりも、オン状態とオン状態との間の切換え速度が速い。
【0048】
図5は、本開示による、磁石式NDフィルタ25(
図3)および機械式NDフィルタ15(
図4)の切換処理を説明するフロー図である。
図6は、切換処理の表による説明図である。以下、
図5及び
図6に基づいて、本開示によるNDフィルタの切換処理について詳述する。
【0049】
前提条件として、以下の実施形態においては、カメラ100は複数のNDフィルタを備えているとする。具体的には、カメラボディ1は最大2枚の機械式NDフィルタ15を光軸上に選択的に挿入可能であり、カメラレンズ2も最大2枚の磁石式NDフィルタ25を光軸上に選択的に挿入可能であるとする。なお、挿入可能なフィルタの枚数や挿入するための構成は、これに限定されない。
【0050】
ここで、NDフィルタを挿さない場合、すなわち減光が無い場合をND1と表現する。ユーザが自身のカメラ100で撮影をする際、このユーザが所望する全濃度を、仮にND16であるとする。カメラボディ1側の最大2枚のNDフィルタ、および、カメラレンズ2側の最大2枚のNDフィルタを用いて、全濃度16とするには、挿入するNDフィルタの組み合わせパターンは複数存在する。たとえば、カメラボディ1側でND2のフィルタを2枚挿入し、カメラレンズ2側でND2のフィルタを2枚挿入すれば、その全濃度は2×2×2×2=16となり、ユーザの望む全濃度にすることができる。また、カメラボディ1側でND4のフィルタを2枚挿入し、カメラレンズ2側でNDフィルタを挿入しないようにすれば、その全濃度は、4×4×1×1=16となり、ユーザの望む全濃度にすることが出来る。
【0051】
このように、ユーザが所望する全濃度を得る為には、使用するNDフィルタの組み合わせには複数のパターンが存在する。しかし、その複数パターンのうちのどの組み合わせを採用すれば良いのかを自動的に決定するのは困難である。また、例えばカメラ100が無人航空機のジンバルに支持されているものであった場合、そのカメラ100は無人航空機と共に空中にあり、空撮等に用いられる。刻々と変わる空撮環境の中で、前記複数パターンのうちの1つを選択するのも困難である。そこで、本開示においては、NDフィルタの最適な組み合わせを自動的に決定し、ユーザが所望の全濃度で適切にNDフィルタを適用できるように、例えば下記のような切換処理を行う。
【0052】
図5に示したステップS102で、撮像制御部10が、使用可能なNDフィルタのID情報を取得する。例えば、カメラボディ1が備える機械式NDフィルタ15や、カメラレンズ2が備える磁石式NDフィルタ25のID情報を取得する。NDフィルタの物理的な付け換えが行われることもあるが、このID取得ステップS102により、現在使用可能なNDフィルタのND値、種類、枚数等を、カメラ100が認識できることになる。なお、理解を容易とするため、本例においては、各ステップの処理主体(処理部)は撮像制御部10であるという前提で説明している。しかし処理主体は撮像制御部10には限られず、例えばカメラ100を支持する無人航空機(UAV)が備えるUAV制御部等が処理主体となっても良い。また、取得したID情報を、カメラレンズ2のメモリ24や、カメラボディ1のメモリ12に記憶してもよい。
【0053】
ステップS104で、撮像制御部10が、使用可能なNDフィルタによって構成し得るNDフィルタの組み合わせパターンを作成(取得)する。この組み合わせパターンを含んだ表を例示しているのが、
図6Aである。この例では、組み合わせの全パターンを作成している。
【0054】
図6Aに示した表の中で、組み合わせパターンに相当するのは、項目「Lens」と項目「Body」の部分である。項目「Lens」はカメラレンズ2を示している。項目「Body」はカメラボディ1を示している。項目「Lens」の中のサブ項目「ND−a」及び「ND−b」は、カメラレンズ2に挿入する事が可能なNDフィルタのND値(濃度)を示している。項目「Body」の中のサブ項目「ND−A」及び「ND−B」は、カメラボディ1に挿入することが可能なNDフィルタのND値(濃度)を示している。
【0055】
ステップS106で、撮像制御部10が全濃度を算出する。
図6Aの表に付加されている項目「全濃度」は、前記組み合わせパターンにおける、NDフィルタの組み合わせにより得られるND値(濃度)を示している。この全濃度は、ユーザが所望するND値に対応し得る。
図6Aの表に付加されている項目「挿入枚数」は、その組み合わせに必要なNDフィルタの挿入枚数である。
【0056】
図6Aのデータ部分の第8行目(組み合わせ8)に基づいて例示を行う。カメラレンズ2側の「ND−a」のフィルタとしてND2のフィルタを挿入し、「ND−b」のフィルタとしてND4のフィルタを挿入する。カメラボディ1側の「ND−A」のフィルタとしてND2のフィルタを挿入し、「ND−B」については、NDフィルタを挿入しない(
図4の例では、透明ガラス155を挿入する)。このようなNDフィルタの組み合わせであれば、全体としてのND値(全濃度)は、2×4×2×1=16となる。ここで、NDフィルタを挿さない場合、すなわち減光が無い場合をND1としているので、当該組み合わせについての、NDフィルタの挿入枚数は3枚となる。
【0057】
以上のように、ステップS104でNDフィルタの組み合わせパターンを作成し、ステップS106で、その組み合わせについての全濃度を算出している。しかし、この態様以外の処理でもよい。例えば、ステップS104で取得する組み合わせパターンは、全部のパターンでなくともよい。必要となる全濃度が予めわかっている場合は、その全濃度に対応するパターンのみを取得することができる。
【0058】
また、挿入枚数の計算は、行わなくともよい。さらには、
図6Aに示しているような項目を備えた表データを事前に作成して、メモリ12やメモリ24等に保存しておき、必要に応じてそのデータを撮像制御部10がメモリ等から取得してもよい。
【0059】
ここで、
図6Aを再び参照すると、作成した組み合わせパターンの中に、全濃度が16となるNDフィルタの組み合わせを示す行が3つ(組み合わせ8、組み合わせ11、組み合わせ14)あることがわかる。カメラを有するユーザが全濃度16となるNDフィルタを所望している場合に、適切なフィルタの組み合わせを自動的に決定する為には、この3つの組み合わせ(組み合わせ8、組み合わせ11、組み合わせ14)の中から、最適な組み合わせを選ぶ必要がある。
【0060】
そこで、本開示によるNDフィルタの切換処理においては、取得した組み合わせパターンに含まれる各組み合わせについて、特性パラメータを取得し、取得した特性パラメータに基づいて、適切な組み合わせを選択する。その為の処理の一例が、
図5のステップS108〜S112に記載されている。
【0061】
ステップS108において、撮像制御部10の制御の下、取得済みの組み合わせパターンを全濃度の低い順にソートする。なお、全濃度の高い順にソートしてもよい。このソート処理によって、
図6Aに示した表に含まれる、同じ全濃度を有する行同士が隣接するように、グループ化がなされる(
図6BのグループA〜G)。
【0062】
続いて、ステップS110で、撮像制御部10が、全濃度の重複している組み合わせから成る各グループ(グループAからグループG)の中から、使用する組み合わせを絞り込む処理を行う。この絞り込み処理は、所定の特性パラメータの値を取得した上で、この特性パラメータの良いものを選択する。一つの実施例としては、特性パラメータは、レンズに入射する光の波長と、そのNDレンズの組み合わせに係る光の透過率の積であってよく、この場合、撮像制御部10は、グループ内の、前述の積の値が最大となる組み合わせを選択する(そのような組み合わせに絞り込む)。なお、レンズに入射する光の波長と、そのNDレンズの組み合わせに係る光の透過率の積を、第1の特性パラメータと表記する。
【0063】
続いて、ステップS112で、撮像制御部10が、絞り込まれた組み合わせにA、B、C等のラベルを付ける。
図6Bに示した表は、ステップS112までが終了した状態を示している。
【0064】
例えば、ユーザがカメラ100のND値(全濃度)を16に設定したい場合、
図6Cに抜き出されているように、ラベルが付与された組み合わせ11を使用すればよい。すなわち、撮像制御部10がカメラレンズ2およびカメラボディ1を制御して、組み合わせ11となるように、NDフィルタの適用(NDフィルタを光軸上に挿入すること、NDフィルタの切換え)を行う。
【0065】
上述の特性パラメータの値は、撮像制御部10の制御の下、必要になる都度、動的に算出してよい。例えば、NDフィルタがカメラ100に対して取り付け、取り外し可能である場合、ステップS102で、使用可能なNDフィルタの変動をカメラ100が認識した後に、特性パラメータの値を、実際に光を検出しつつ、動的に算出してよい。また、レンズの各組み合わせについての特性パラメータを予め測定しておき、測定値をメモリ12、24等に保存しておいてもよい。この測定値の保存が、製品の工場出荷時に行われてもよい。予め測定された測定値を、カメラを支持する無人飛行機のUAV制御部等に接続されたメモリ等に保存しておいてもよい。
【0066】
以上のように、本開示の切換処理を行うことで、同じ全濃度を有するNDフィルタの組み合わせの中でも、特性パラメータの最適な組み合わせをカメラ100側で自動的に決定し、所望の濃度でNDフィルタを適用できるようにすることができる。
【0067】
ここで、ステップS110の絞り込み処理で用いることが可能な、特性パラメータの他の例について説明する。
図7は、特性パラメータの他の例を説明する図である。
図7に示した表の横軸は、入射する光の波長である。一例として、所定の波長範囲を450nmから650nmとする。表の縦軸は、その波長の入射光に対する、NDレンズの実際のND値(濃度)である。表の実線で示された曲線が、カメラレンズ2側に挿入されたND4のレンズの、実際の濃度値(レンズ側ND)を示し、破線で示された曲線が、カメラボディ1側に挿入されたND4のレンズの、実際の濃度値(ボディ側ND)を示している。
【0068】
ND4のレンズの濃度は、前記所定の波長範囲における、どの波長の入射光に対しても常に1/4(25%)となるのが理想である。しかし実際のレンズの濃度は、
図7の曲線が示しているように、どの波長に対しても一定の値となるわけではなく、理論値(25%)に対して誤差が生じる。
【0069】
そこで、理論値と実際値との間の誤差に基づいて、特性パラメータを定義することができる。例えば、所定の波長範囲(
図7の例では450nmから650nm)における、濃度の理論値(25%)と実際値(表に示した曲線)との間の誤差を示す面積S1およびS2(
図7の斜線部)に基づいて、特性パラメータを定義することができる。なお、面積S1および面積S2は、濃度の理論値を示す線と、濃度の実際値を示す線とによって形成される領域の面積である。
【0070】
上記の面積S1およびS2が小さいならば、そのフィルタは、理論値に対する誤差の少ない良質なフィルタであると解釈することができる。よって
図7の例では、カメラレンズ2側NDフィルタ(実線)とカメラボディ1側NDフィルタ(破線)とが、いずれも公称ND4のフィルタであったとしても、カメラレンズ2側のNDフィルタ(実線)の方が好適なフィルタであると評価できる。そこで、理論値に対する誤差がより少ないNDフィルタを優先的に使用することができるように、特性パラメータを決定することが考えられる。すなわち、ある組み合わせに含まれるNDフィルタについて、それぞれ、所定の波長範囲(
図7の例では450nmから650nm)における、濃度の理論値(25%)と実際値(表に示した曲線)との間の誤差を示す面積を、
図7に例示したように計算する(面積S1+面積S2)。所定の波長範囲における、濃度の理論値と実際値との間の誤差を示す面積(面積S1+面積S2)は、濃度の理論値を示す線と、濃度の実際値を示す線とによって形成される領域の面積である。そして、ある組み合わせに含まれる全てのNDフィルタについて、上記の面積を合算したものを、第2の特性パラメータとして使用することができる。
【0071】
ステップS110において第2の特性パラメータを用いる場合、撮像制御部10は、全濃度の重複している組み合わせから成る各グループ(グループAからグループG)の中から、第2の特性パラメータの値が最小となる組み合わせを選択する(そのような組み合わせに絞り込む)。
【0072】
なお、特性パラメータになり得る値の候補は、上述のものには限られない。例えば
図6Aに示されている「挿入枚数」を、特性パラメータとして用いることも可能である。この場合、
図6Bの表の、同一の全濃度を有するグループの中から、挿入枚数の最も少ないものをそれぞれ絞り込んで、ラベル付けする(ステップS110、S112)。そして、ラベル付けされた組み合わせを使用して、NDフィルタを切換える。
【0073】
また、特性パラメータとして、NDフィルタの抜き差しの応答性(応答速度)を用いることも可能である。たとえば、
図6Bの表の、同一の全濃度を有するグループの中から、「そのフィルタの組み合わせでNDフィルタを挿入する場合に必要な処理時間の一番少ないもの」をそれぞれ選択して、ラベル付けする(ステップS110、S112)。そして、ラベル付けされた組み合わせを使用して、NDフィルタを切換える。ここで、上述のように、カメラレンズ2が備える磁石式NDフィルタ25は、カメラボディ1が備える機械式NDフィルタ15よりも切換え速度が速い。従ってこの場合、磁石式NDフィルタ25を含む組み合わせについて、優先的にラベル付け(ステップS110、S112)がなされるであろう。
【0074】
そのほか、濃度の理論値を実際値が上回っている領域(
図7の斜線部領域S1)と、濃度の理論値を実際値が下回っている領域(
図7の斜線部領域S2)の面積の差を、特性パラメータとして用いることも可能であろう。理論値と実際値の誤差の上ぶれ、下ぶれのバランスを整える、という観点からの一例である。
【0075】
なお、
図5に示したステップS110、S112において、上述のような複数の特性パラメータを複合的に用いてラベル付けを行っても良い。例えば、同一の全濃度を有するNDフィルタの組み合わせが複数あり、第1の特性パラメータ(例えば上述の、波長×透過率)の値が最も良い組み合わせが複数パターン存在する場合、さらに挿入枚数等の第2の特性パラメータも用いて、さらに絞り込みを行ってラベル付けをしても良い。
【0076】
次に、NDフィルタとして、可変式のNDフィルタを用いた場合について説明する。
図8は、カメラボディ1に設置する可変式NDフィルタ17の構成例を説明する図であり、
図8(a)がオモテ側、
図8(b)がウラ側を示している。可変式NDフィルタ17は、
図4に示した機械式NDフィルタ15と同様に、支持体171と、ガイド172と、ギア173と、モータ174とを備える。ガイド172は、カメラの光軸と直交する方向(
図8の上下方向)に延びている。支持体171の両端には歯1711が設けられている。この歯1711がギア173と噛み合っており、ギア173はモータ174によって駆動される。なお、モータ174はステッピングモータであってよい。支持体171は、モータ174の動力によって、ガイド172に沿うように、カメラの光軸と直交する方向(
図8の上下方向)に移動する。
【0077】
支持体171は、透明ガラス175と、2枚のフィルタ176および177とを、前記光軸と直交する方向に並ぶように支持している。よって、透明ガラス175、および、フィルタ176、177も、モータ174の動力によって、ガイド172に沿うように、カメラの光軸と直交する方向(
図4の上下方向)に移動する。
【0078】
一例として、フィルタ176はND4のフィルタであり、フィルタ177はND16のフィルタである。ただし、この値には限定されない。
【0079】
例えば上述の構成により、フィルタ176、177が光軸上に挿入されているオン状態と、フィルタ176、177が光軸上に挿入されていないオフ状態とを切換えることができる。さらに、このフィルタのND値を固定ではなく可変とすることができる。
【0080】
図9は、上記の可変式NDフィルタを備えた本開示のカメラ101の構造を示す図である。カメラレンズ2側の構成については、
図2に示したカメラ100と同様である。カメラ101のカメラボディ1は、
図2に示したカメラ100が備える構成の他に、可変式NDフィルタ17と、電圧調整部18と、挿抜検出スイッチ19とを備えている。撮像制御部10の制御の下、挿抜検出スイッチ19がフィルタの挿抜を検出する。また、撮像制御部10の制御の下、電圧調整部18が電圧を調整し、可変式NDフィルタ17が備えるモータ174を駆動させる。このような構成により、可変式NDフィルタ17は、そのND値を変化させることができる。
【0081】
図10は、手動で挿抜できるタイプの可変式NDフィルタ示す図である。
図10に示してあるようなカード式のNDフィルタを、ユーザが手動でカメラが有するスロットに挿入することができる。
【0082】
上記のような可変式NDフィルタ17や、
図10で示した手動挿抜タイプのNDフィルタを用いた場合であっても、本開示の上述の切換制御を行うことにより、全濃度毎に、適切なフィルタの組み合わせを自動的に決定することができる。実際、
図5に示したステップS102で、NDフィルタの変動をカメラ側で認識することができる。従って、ステップS104において、可変式NDフィルタが取り得るND値も考慮して、組み合わせパターンを作成すればよい。
【0083】
図11は、本開示のNDフィルタの切換処理を行うカメラ100、101を、無人航空機3やジンバル装置4にマウントした状態を示す図である。本開示のNDフィルタ切換処理を行うカメラ100、101は、無人航空機3が備えるジンバル31や、ジンバル装置4にマウントするための接続部を備えていてよい。
【0084】
図11に示した無人航空機3は、カメラ100、101による撮影時には空中を飛んでいるため、ユーザは直接NDフィルタの抜き差し操作をすることができない。また、
図12に示したようなジンバル装置4は、ユーザが両手でアームを把持している。つまり、両手がふさがっているため、直接NDフィルタの抜き差し操作をすることができない。そのような場合であっても、本開示のNDフィルタ切換処理を行うことにより、複数あるNDフィルタの組み合わせの中から、最適な組み合わせを装置が自動的に決定して、NDフィルタを適用することができる。
【0085】
以上、本開示を実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載からも明らかである。
【0086】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現可能である。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「先ず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。