【実施例】
【0186】
実施例I
マウス免疫グロブリン遺伝子のヒト化
【0187】
ヒトおよびマウス細菌人工染色体(BAC)を使用して、マウス免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖遺伝子座のヒト化のための13の異なるBACターゲティングベクター(BACvec)を操作して作製した。表1および2は、マウス免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖遺伝子座のヒト化にそれぞれ利用したすべてのBACvecを構築するために行った工程の詳細な説明を示すものである。
【0188】
ヒトおよびマウスのBACの同定。
【0189】
BACライブラリーを用いてスポットしたフィルターのハイブリダイゼーションにより、またはマウスBACライブラリーDNAプールのPCRスクリーニングにより、免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖遺伝子座の5’および3’端にわたるマウスBACを同定した。対象となる領域に対応するプローブを使用して、標準条件下でフィルターをハイブリダイズした。対象となる標的領域に隣接するユニークなプライマーペアを使用してPCRによりライブラリープールをスクリーニングした。同じプライマーを使用する追加のPCRを行って、所与のウェルをデコンボリュートし、対象となる対応するBACを単離した。BACフィルターとライブラリープールの両方を129SvJマウスES細胞(Incyte Genomics/Invitrogen)から生成した。全免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖遺伝子座をカバーするヒトBACを、BACライブラリー(Caltech B、CもしくはDライブラリーおよびRPCI−11ライブラリー、Research Genetics/Invitrogen)を用いてスポットしたフィルターのハイブリダイゼーションとPCRベースの方法によるヒトBACライブラリープール(Caltechライブラリー、Invitrogen)のスクリーニングによるか、またはBAC末端配列データベース(Caltech D libraty、TIGR)の使用によるかの、いずれかによって同定した。
【0190】
BACvecの構築(表1および2)。
【0191】
細菌相同組換え(BHR)を記載されている(Valenzuelaら、2003;Zhang,Y.ら(1998)A new logic for DNA engineering using recombination in Escherichia coli、Nat Genet 20、123−128)とおりに行った。殆どの場合、PCR由来ホモロジーボックスのクローン化カセットへのライゲーション、続いてライゲーション産物のゲル単離、そして標的BACを保有するBHRコンピテント細菌へのエレクトロポレーションによって線状断片を生成した。適切な抗生物質ペトリ皿での選択の後、正しく組換えられたBACを、両方の新規接合部にわたってのPCR、続いてパルスフィールドゲルでの制限酵素分析(Schwartz,D.C.and Cantor,C.R.(1984)Separation of yeast chromosome−sized DNAs by pulsed field gradient gel electrophoresis.Cell 37、67−75)、そしてヒト配列全域にわたって分布するプライマーを使用するPCRによるスポットチェックによって同定した。
【0192】
3工程の逐次的BHR工程を用いて、免疫グロブリン重鎖遺伝子座の最初のヒト化工程のための3hV
H BACvecを構築した(
図4Aおよび表1)。第一工程(工程1)では、ヒト親BACのヒトV
H1−3遺伝子セグメントから上流に、マウス免疫グロブリン重鎖遺伝子座と相同性の領域(HB1)と細菌にカナマイシン耐性をおよび動物細胞にG418耐性を付与する遺伝子(kanR)と部位特異的組換え部位(例えば、loxP)とを含有するカセットを導入した。第二工程(工程2)では、最後のJ
Hセグメントから直ぐ下流に、マウス免疫グロブリン重鎖遺伝子座と相同性の第二の領域(HB2)と細菌にスペクチノマイシンに対する耐性を付与する遺伝子(specR)とを含有する第二のカセットを導入した。この第二工程は、J
H6から下流のヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座配列とBACベクタークロラムフェニコール耐性遺伝子(cmR)とを欠失させることを含んだ。次に、第三工程(工程3)では、最初の2工程の間に付加されたI−CeuI部位を使用して二重改変ヒトBAC(B1)を線形化し、2つの相同性領域(HB1およびHB2)によるBHRによってマウスBAC(B2)に組み込んだ。第一(cm/kan)、第二(spec/kan)および第三(cm/kan)工程のための薬剤選択は、所望の産物に特異的であるように設計した。制限酵素での消化後にパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)により改変BACクローンを分析して、適切な構築物を決定した(
図4B)。
【0193】
同様に、重鎖およびκ軽鎖遺伝子座のヒト化のために12の追加のBACvecを操作して作製した。場合によっては、選択マーカーの注意深い配置と共に、BHRによる両方の親BACvecへの稀な制限酵素認識部位導入による、BHRの代わりにBACライゲーションを行って、2つの大きなBACを結合した。これにより、特定の薬剤マーカーの組み合わせでの選択の際に、所望のライゲーション産物の生残が可能になった。稀な制限酵素での消化後のライゲーションによって得た組換えBACを、BHRによって得たものと同様に(上に記載したように)同定し、スクリーニングした。
【0194】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0195】
【表2】
【0196】
胚性幹(ES)細胞の改変およびマウスの産生。
【0197】
記載されている(Valenzuelaら、2003)ようなVELOCIGENE(登録商標)遺伝子工学法を用いて、ES細胞(F1H4)ターゲティングを行った。胚盤胞(Valenzuelaら、2003)または8細胞注入(Poueymirouら、2007)のいずれかによる改変ES細胞からのマウスの誘導は、記載されているとおりであった。PCRベースのアッセイでプローブとプライマーのユニークなセットを用いてES細胞またはマウスからのDNAをスクリーニグすることにより、標的ES細胞およびマウスを確認した(例えば、
図3A、3Bおよび3C)。すべてのマウス研究は、Regeneronの施設内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee:IACUC)によって監督され、承認された。
【0198】
核型分析および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)。
【0199】
核型分析は、Coriell Cell Repositories(Coriell Institute for Medical Research、ニュージャージー州カムデン)によって行われた。FISHは、標的ES細胞を用いて、記載されている(Valenzuelaら、2003)とおりに行った。マウスBAC DNAまたはヒトBAC DNAのいずれかに対応するプローブを、ニック翻訳(Invitrogen)により蛍光標識dUTPヌクレオチドスペクトルオレンジまたはスペクトルグリーン(Vysis)で標識した。
【0200】
免疫グロブリン重鎖可変遺伝子遺伝子座。
【0201】
重鎖遺伝子座の可変領域のヒト化は、VELOCIGENE(登録商標)遺伝子工学技術(例えば、米国特許第6,586,251号明細書およびValenzuelaら、2003参照)を用いて、9工程の逐次的工程で、すべてのV
H、D
HおよびJ
H遺伝子セグメントを含有する約3百万塩基対(Mb)の連続するマウスゲノム配列を、等価ヒト遺伝子セグメントを含有する約1Mbの連続するヒトゲノム配列で直接置換することによって達成した(
図1Aおよび表1)。
【0202】
J
H遺伝子セグメントと定常領域遺伝子の間のイントロン(J−Cイントロン)は、転写エンハンサー(Neuberger,M.S.(1983)Expression and regulation of immunoglobulin heavy chain gene transfected into lymphoid cells.EMBO J 2、1373−1378)、その後にアイソタイプスイッチ中の組換えに必要な単純リピート領域(Kataoka,T.ら(1980)Rearrangement of immunoglobulin gamma 1−chain gene and mechanism for heavy−chain class switch、Proc Natl Acad Sci U S A 77,919−923)を含有する。マウス内でのヒト化重鎖遺伝子座の効率的発現およびクラススイッチ両方を保存するために、マウス重鎖イントロンエンハンサーおよびスイッチドメインを維持するようにヒトV
H−D
H−J
H領域とマウスC
H領域の間の接合部(近位接合部)を選択した。合成オリゴヌクレオチドによって駆動される細菌相同組換えを用いるVELOCIGENE(登録商標)遺伝子工学法(上記)の使用により、すべての置換においてこのおよび後続の接合部の正確なヌクレオチド位置が実現可能であった。このようにして、近位接合部を最後のJ
H遺伝子セグメントから約200bp下流に配置し、遠位接合部を、ヒト遺伝子座の最も5’側のV
H遺伝子セグメントの数百上流、かつJ558.55としても公知のマウスV
H1−86遺伝子セグメントから約9kb下流に配置した。前記マウスV
H1−86(J558.55)遺伝子セグメントは最遠位重鎖可変遺伝子セグメントであり、このセグメントは、C57BL/6マウスでは偽遺伝子であるが、標的129対立遺伝子において不十分なRSS配列であるにもかかわらず潜在的に活性であると報告されている。前記マウス重鎖遺伝子座の遠位端は、報告によれば、遺伝子座発現および/または再構成を調節する制御要素を含有し得る(Pawlitzkyら、2006)。
【0203】
ヒト免疫グロブリンDNA配列のマウスへの第一の挿入は、約75kbのマウスホモロジーアームを使用して、3つのV
H、27すべてのD
Hおよび9つのJ
Hヒト遺伝子セグメントを含有するヒト重鎖遺伝子座の144kbの近位端をマウスIgH遺伝子座の近位端に挿入し、相伴って16.6kbのマウスゲノムを欠失させることによって達成した(工程A、
図2A;表1および3、3hV
H)。この大きな144kb挿入および随伴する16.6kb欠失を単一の工程(工程A)で行い、この工程は0.2%の頻度で行われた(表3)。欠失マウス配列内のおよび欠失マウス配列に隣接するプローブならびに挿入ヒト配列内のプローブを使用する天然対立遺伝子の喪失(loss−of−native−allele:LONA)アッセイ(Valenzuelaら、2003)により、正しくターゲティングされたES細胞にスコアを付けし、全挿入にわたって複数のプローブを使用して大きなヒト挿入物の完全性を検証した(
図3A、3Bおよび3C)。多ラウンドの逐次的ES細胞ターゲティングが予想されたので、この工程およびすべての後続の工程で標的ES細胞クローンを核型分析(上記)に付し、20のうち少なくとも17のスプレッドにおいて正常な核型を示すクローンのみを後続の工程に用いた。
【0204】
工程Aからの標的ES細胞をBACvecで再ターゲティングし、それにより、重鎖遺伝子座の遠位端に19kb欠失を生じさせた(工程B、
図2A)。工程BのBACvecは、工程AのBACvecに含有されているネオマイシン耐性遺伝子(neo)とは対照的にハイグロマイシン耐性遺伝子(hyg)を含有した。これら2つのBACvecからの耐性遺伝子は、同じ染色体へのターゲティング成功により、該2つの耐性遺伝子ばかりでなくV
H1−86以外のすべてのマウスV
H遺伝子セグメントおよびDQ52以外のすべてのD
H遺伝子セグメントを含有するおおよそ3Mbのマウス重鎖可変遺伝子遺伝子座をloxP部位に隣接させるように、ならびにDQ52およびすべてのマウスJ
H鎖遺伝子セグメントが工程Aにおいて欠失されるように設計した。同じ染色体上に二重にターゲティングされたES細胞クローンを、3hV
H近位カセットを高G418においてホモ接合性にさせること(Mortensen,R.M.ら(1992)Production of homozygous mutant ES cells with a single targeting construct.Mol Cell Biol 12:2391−2395)および遠位hygカセットの運命を追跡することによって同定した。loxP部位が隣接するような手法で改変された4Mb以下のサイズのマウスセグメントは、薬剤選択不在の場合でさえ、高効率(約11%以下)でのCREリコンビナーゼの一過的発現によりES細胞において首尾よく欠失した(Zheng,B.ら(2000)Engineering mouse chromosomes with Cre−loxP: range, efficiency, and somatic applications.Mol Cell Biol 20:648−655)。同様の手法で、本発明者らは、一過的CRE発現後に8%のES細胞クローンにおいて3Mb欠失を実現した(工程C、
図2A、表3)。欠失マウス配列のいずれかの末端におけるプローブ、ならびにneoおよびhygの喪失、および唯一残存するloxP部位を含有する欠失点にわたるPCR産物の出現を用いるLONAアッセイによって欠失にスコアを付けた。さらに、蛍光in situハイブリダイゼーションによって欠失を確認した(データを示さない)。
【0205】
各工程が210kb以下のヒト遺伝子配列の正確な挿入を含む、VELOCIGENE(登録商標)遺伝子工学法を用いる一連の5工程(工程E〜H、
図2B)で、ヒト重鎖可変領域の残部を3hV
H対立遺伝子に付加させた。各工程について、各新たなBACvecの近位端を前の工程の最遠位ヒト配列とオーバーラップするように設計し、各新たなBACvecの遠位端は、工程Aにおいて使用したのと同じ遠位マウス相同領域を含有した。工程D、FおよびHのBACvecはneo選択カセットを含有したが、工程EおよびGのものは、hyg選択カセットを含有し、したがって、G418とハイグロマイシンの間で交互に選択した。工程Dにおけるターゲティングを、3hV
Hハイブリッド対立遺伝子の遠位loxP部位にわたるユニークなPCR産物の喪失によってアッセイした。工程EからIについてのターゲティングは、前の選択カセットの喪失によってアッセイした。最後の工程(工程I、
図2B)では、Frt部位(McLeod,M.ら(1986)Identification of the crossover site during FLP−mediated recombination in the Saccharomyces cerevisiae plasmid 2 microns circle.Mol Cell Biol 6、3357−3367)が隣接するneo選択カセットを、一過的FLPe発現(Buchholz,F.ら(1998)Improved properties of FLP recombinase evolved by cycling mutagenesis.Nat Biotechnol 16、657−662)によって除去した。工程D、EおよびGについてのBACvecのヒト配列は、2つの親ヒトBAC各々に由来したが、工程FおよびHからのヒト配列は、単一のBACからのものであった。挿入ヒト配列にわたって複数のプローブを使用して、ヒト配列の保持を工程ごとに確認した(上記したとおり、例えば
図3A、3Bおよび3C)。各工程で、正常な核型および生殖細胞系の潜在力を有するクローンのみを次の工程に進めた。最後の工程からのES細胞は、9種の逐次的操作(表3)の後、依然として生殖細胞系に寄与することができた。重鎖対立遺伝子の各々についてホモ接合性のマウスは、生育可能であり、健常であるように見え、および本質的に野生型の体液性免疫系を実証した(実施例3参照)。
【0206】
【表3】
【0207】
免疫グロブリンκ軽鎖可変遺伝子遺伝子座。
【0208】
重鎖のものに類似した手法で、すべてのVκおよびJκ遺伝子セグメントを含有する約3Mbのマウス配列を、近位ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントを含有する約0.5Mbのヒト配列で直接置換することにより、8工程の逐次的工程でκ軽鎖可変領域をヒト化した(
図1B;表2および4)。
【0209】
ヒトκ軽鎖遺伝子座の可変領域は、800kbスペーサーによって隔てられた2つのほぼ同一の400kbリピートを含有する(Weichhold,G.M.ら(1993)The human immunoglobulin kappa locus consists of two copies that are organized in opposite polarity、Genomics 16:503−511)。これらのリピートは非常に類似しているので、近位リピートを使用することによりマウスにおいてほぼすべての遺伝子座多様性を再現することができる。さらに、遠位リピートを欠くκ軽鎖遺伝子座の天然ヒト対立遺伝子が報告されている(Schaible,G.ら(1993)The immunoglobulin kappa locus: polymorphism and haplotypes of Caucasoid and non−Caucasoid individuals、Hum Genet 91:261−267)。約3Mbのマウスκ軽鎖可変遺伝子配列は、約0.5Mbのヒトκ軽鎖可変遺伝子配列で置換されて、すべてのマウスVκおよびJκ遺伝子セグメントが、近位ヒトVκおよびすべてのヒトJκ遺伝子セグメントで有効に置き換えられた(
図2Cおよび2D;表2および4)。重鎖遺伝子座について実施例1において記載する方法とは対照的に、任意のヒト配列を付加する前に3工程のプロセスですべてのVκおよびJκ遺伝子セグメントを含有する全マウスVκ遺伝子領域を欠失させた。最初、neoカセットを可変領域の近位端に導入した(工程A、
図2C)。次に、hygカセットをκ遺伝子座の遠位端に挿入した(工程B、
図2C)。残存する3MbのマウスVκ領域と共に両方の耐性遺伝子の欠失がCRE処理により誘導されるように、loxP部位を各選択カセットの中に再び置いた(工程C、
図2C)。
【0210】
重鎖について用いた方法(実施例1参照)に類似した方法を用いて、150kb以下のヒト免疫グロブリンκ軽鎖配列を1工程で挿入して、免全疫グロブリンκ軽鎖可変領域を含有する約480kbサイズのヒトゲノム断片を4工程の逐次的工程(
図2D;表2および4)で挿入した。最後のハイグロマイシン耐性遺伝子を一過的FLPe発現によって除去した。重鎖と同様に、いずれの工程後にも、標的ES細胞クローンを全ヒト挿入物の完全性、正常な核型および生殖細胞系の潜在性について評価した。κ軽鎖鎖対立遺伝子の各々についてホモ接合性のマウスが産生され、健常であることおよび正常な外観のものであることが判明した。
【0211】
【表4】
【0212】
実施例II
複数のヒト化免疫グロブリン対立遺伝子の組み合わせによる完全ヒト化マウスの産生
【0213】
幾つかの箇所に、実施例1に記載したようなヒト免疫グロブリン重鎖またはκ軽鎖可変レパートリーの一部分を保有するES細胞を微量注射し、得られたマウスを交配させて、ヒト生殖細胞系免疫グロブリンレパートリーの徐々に大きな断片(fraction)を有するVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスの複数のバージョンを生み出した(表5;
図5Aおよび5B)。VELOCIMMUNE(登録商標)1(V1)ヒト化マウスは、18のヒトV
H遺伝子セグメントおよびすべてのヒトD
HおよびJ
H遺伝子セグメントを、16のヒトVκ遺伝子セグメントおよびすべてのヒトκ遺伝子セグメントと併せて有する。VELOCIMMUNE(登録商標)2(V2)ヒト化マウスおよびVELOCIMMUNE(登録商標)(V3)ヒト化マウスは、合計39のV
Hおよび30のVκおよび80のV
Hおよび40のVκをそれぞれ保有する増加した可変レパートリーを有する。マウスV
H、D
HおよびJ
H遺伝子セグメント、ならびにVκおよびJκ遺伝子セグメントをコードするゲノム領域は完全に置換されたていたので、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスにより産生される抗体が、マウス定常領域に連結されたヒト可変領域を含有する。マウスλ軽鎖遺伝子座は、全てのバージョンのVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスにおいてインタクトなままであり、様々なVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化κ軽鎖遺伝子座の発現効率についてのコンパレータとして役立つ。
【0214】
免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖両方のヒト化について二重にホモ接合性のマウスを、実施例1で記載した対立遺伝子のサブセットから産生させた。二重ホモ接合型マウスを産生するための交配コースの間に観察されたすべての遺伝子型は、大体メンデル比で発生した。ヒト重鎖対立遺伝子の各々についてホモ接合性の雄後代は、妊性低減を示した。妊性低減はマウスADAM6活性の喪失に起因した。マウス重鎖可変遺伝子遺伝子座は、2つのはめ込んだ機能的ADAM6遺伝子(ADAM6aおよびADAM6b)を含有する。マウス重鎖可変遺伝子遺伝子座のヒト化の間、挿入されたヒトゲノム配列は、ADAM6偽遺伝子を含有した。マウスADAM6は、妊性に要求され得、それ故、ヒト偽遺伝子の存在にもかかわらず、ヒト化重鎖可変遺伝子遺伝子座におけるマウスADAM6遺伝子の欠如が、これらのマウスにおける妊性の低減をもたらした可能性がある。実施例7〜9は、欠失したマウスADAM6遺伝子がヒト化重鎖可変遺伝子遺伝子座へと正確な配置で戻されること、およびヒト化重鎖免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスにおける野生型レベルの妊性の回復を記載する。
【0215】
【表5】
【0216】
実施例III
ヒト化免疫グロブリン遺伝子を有するマウスにおけるリンパ球集団
【0217】
3つの異なるバージョンのVELOCIMMUNE(登録商標)マウスにおける成熟B細胞集団をフローサイトメトリーによって評価した。
【0218】
簡単に言うと、標準的な方法を用いて、骨髄、脾臓および胸腺からの細胞懸濁液を作製した。BD Pharmingen FACS染色緩衝液中5×10
5細胞/mLで細胞を再懸濁させ、抗マウスCD16/32(BD Pharmingen)でブロッキングし、適切な抗体カクテルで染色し、BD CYTOFIX(商標)で固定し、これらの作業はすべて製造業者の指示に従って行った。最終細胞ペレットを0.5mL染色緩衝液に再懸濁させ、BD FACSCALIBUR(商標)およびBD CELLQUEST PRO(商標)ソフトウェアを使用して分析した。すべての抗体(BD Pharmingen)を質量希釈/カクテルで調製し、0.5mg/10
5細胞の最終濃度まで添加した。骨髄(A〜D)染色用の抗体カクテルは、次のとおりであった:A:抗マウスIgM
b−FITC、抗マウスIgM
a−PE、抗マウスCD45R(B220)−APC;B:抗マウスCD43(S7)−PE、抗マウスCD45R(B220)−APC;C:抗マウスCD24(HSA)−PE;抗マウスCD45R(B220)−APC;D:抗マウスBP−1−PE、抗マウスCD45R(B220)−APC。脾臓および鼠蹊リンパ節(E〜H)染色用の抗体カクテルは、次のとおりであった:E:抗マウスIgM
b−FITC、抗マウスIgM
a−PE、抗マウスCD45R(B220)−APC;F:抗マウスIg、λ1、λ2、λ3軽鎖−FITC、抗マウスIgκ軽鎖−PE、抗マウスCD45R(B220)−APC;G:抗マウスLy6G/C−FITC、抗マウスCD49b(DX5)−PE、抗マウスCD11b−APC;H:抗マウスCD4(L3T4)−FITC、抗マウスCD45R(B220)−PE、抗マウスCD8a−APC。結果を
図6に示す。
【0219】
ホモ接合型VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスの脾臓またはリンパ節から単離したリンパ球をマーカーB220およびIgMの表面発現について染色し、フローサイトメトリーを用いて分析した(
図6)。試験したすべてのバージョンのVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスにおけるB220
+IgM
+成熟B細胞集団のサイズは、それらが含有するV
H遺伝子セグメントの数にかかわらず、実質的に野生型マウスのものと同一であった。加えて、ホモ接合性ハイブリッドヒト化免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含有するマウスも、正常マウス免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座を有するが3つしかV
H遺伝子セグメントを有さないマウス、またはホモ接合性ハイブリッドヒト化κ軽鎖と正常マウス免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含有するマウスでさえも、その末梢区画に正常な数のB220
+IgM
+細胞を有した(示さず)。これらの結果は、ヒト可変遺伝子セグメントおよびマウス定常領域を有するキメラ遺伝子座が、成熟B細胞区画に十分に集合できることを示している。さらに、重鎖またはκ軽鎖遺伝子座のいずれかにおける可変遺伝子セグメントの数、およびしたがって抗体レパートリーの理論的多様性は、成熟B細胞の野生型集団を産生する能力と相関しない。対照的に、ランダムに組み込まれた完全ヒト免疫グロブリン導入遺伝子および不活性化マウス免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスは、これらの区画に低減数のB細胞を有し、その欠損の重度は、導入遺伝子に含まれている可変遺伝子セグメントの数に依存する(Green,L.L.およびJakobovits,A.(1998)Regulation of B cell development by variable gene complexity in mice reconstituted with human immunoglobulin yeast artificial chromosomes、J Exp Med 188:483−495)。これは、「in situ遺伝子ヒト化」戦略が、「ノックアウト・プラス・トランスジェニック」アプローチで実現されるランダムに組み込まれる導入遺伝子とは基本的に異なる機能的帰結をもたらす結果となることの証拠となる。
【0220】
対立遺伝子排除および遺伝子座選択
【0221】
対立遺伝子排除(maintain allelic exlusion)を維持する能力を、異なるバージョンのヒト化免疫グロブリン重鎖遺伝子座についてヘテロ接合性のマウスで調査した。
【0222】
129S6/SvEvTacおよびC57BL/6NTacヘテロ接合胚に由来するF1 ES系列(F1H4(Valenzuelaら、2003))で免疫グロブリン遺伝子座のヒト化を行った。ヒト重鎖生殖細胞系可変遺伝子配列を129S6対立遺伝子にターゲティングする。この対立遺伝子はIgM
aハプロタイプを保有するが、未改変マウスC576BL/6N対立遺伝子はIgM
bハプロタイプを有する。IgMのこれらの対立遺伝子形態は、IgM
aまたはIgM
b対立遺伝子において見出される多型に特異的な抗体を使用してフローサイトメトリーにより区別することができる。
図6(最下段)に示されているように、各バージョンのヒト化重鎖遺伝子座についてヘテロ接合性のマウスにおいて同定されたB細胞は、単一の対立遺伝子、IgM
a(ヒト化対立遺伝子)またはIgM
b(野生型対立遺伝子)のいずれか、しか発現しない。これは、対立遺伝子排除に関与する機序が、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスにおいてインタクトであることの証拠となる。加えて、ヒト化対立遺伝子(IgM
a)について陽性のB細胞の相対数は、存在するV
H遺伝子セグメントの数に大体比例する。ヒト化免疫グロブリン遺伝子座は、18のヒトV
H遺伝子セグメントを有するVELOCIMMUNE(登録商標)1ヒト化ヘテロ接合体マウスではB細胞のおおよそ30%において発現し、ならびに39および80のヒトV
H遺伝子セグメントをそれぞれ有するVELOCIMMUNE(登録商標)2および3(示さず)ヒト化ヘテロ接合体マウスではB細胞の50%において発現する。注目に値することとして、ヒト化マウス対立遺伝子を発現する細胞の、野生型マウス対立遺伝子を発現する細胞に対する比(VELOCIMMUNE(登録商標)1ヒト化マウスについては0.5およびVELOCIMMUNE(登録商標)2ヒト化マウスについては0.9)は、ヒト化遺伝子座に含有される可変遺伝子セグメント数の、野生型遺伝子座に含有される可変遺伝子セグメントの数に対する比(VELOCIMMUNE(登録商標)1ヒト化マウスについては0.2およびVELOCIMMUNE(登録商標)2ヒト化マウスについては0.4)より大きい。これは、対立遺伝子選択の確率が、1つもしくは他の染色体のランダム選択と任意の特定のVセグメントRSSのランダム選択の間の中間であることを示している。さらに、一方の対立遺伝子が組み換えに利用できるようになり、その過程を完了し、組換えを遮断し、その後、他方の対立遺伝子が利用能になるB細胞が、すべてではないが、一部存在し得る。加えて、ハイブリッドヒト化重鎖遺伝子座または野生型マウス重鎖遺伝子座のいずれかに由来する表面IgM(sIgM)を有する細胞の一様な分布は、該ハイブリッド遺伝子座が正常レベルで動作している証拠である。対照的に、ランダムに組み込まれたヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、野生型マウス免疫グロブリン遺伝子座との競合が不十分である(Bruggemann,M.ら(1989)A repertoire of monoclonal antibodies with human heavy chains from transgenic mice.PNAS 86、6709−6713;Greenら(1994);Tuaillon,N.ら(1993)Human immunoglobulin heavy−chain minilocus recombination in transgenic mice:gene−segment use in mu and gamma transcripts、Proc Natl Acad Sci USA 90:3720−3724)。これは、さらに、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスによって産生される免疫グロブリンが、「ノックアウト・プラス・トランスジェニック」アプローチによって作製されるマウスにおけるランダムに組み込まれた導入遺伝子によって産生されるものとは機能的に異なることの証拠となる。
【0223】
129S6またはC57BL/6Nでは、非ヒト化κ軽鎖遺伝子座に対するヒト化κ軽鎖遺伝子座の対立遺伝子排除の調査にCκ領域の多型を利用できない。しかし、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスすべてが野生型マウスλ軽鎖遺伝子座を有するので、ヒト化κ軽鎖遺伝子座の再構成および発現がマウスλ軽鎖発現を防止できるかどうかを観察することが可能である。マウスλ軽鎖を発現する細胞の数に対するヒト化κ軽鎖を発現する細胞の数の比は、κ軽鎖遺伝子座に挿入されたヒトVκ遺伝子セグメントの数にかかわらず、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスでは野生型マウスと比べて比較的不変であった(
図6、上から三段目)。加えて、二重陽性(κ+λ)細胞数の増加は無く、このことから、ハイブリッドκ軽鎖遺伝子座での生産的組換えが、マウスλ軽鎖遺伝子座の組換えの適切な抑制をもたらす結果となることが示された。対照的に、ランダムに組み込まれたκ軽鎖導入遺伝子と−野生型マウスλ軽鎖遺伝子座ではなく−不活性化されたマウスκ軽鎖遺伝子座を含有するマウスは、λ/κ比の劇的増大を示す(Jakobovits、1998)。これは、導入されたκ軽鎖導入遺伝子が、かかるマウスでは十分に機能しないことを意味する。これは、さらに、「ノックアウト・プラス・トランスジェニック」マウスによって作製されるものと比較してVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスによって作製される免疫グロブリンにおいて観察される異なる機能的帰結の証拠となる。
【0224】
B細胞発生。
【0225】
VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスにおける成熟B細胞集団は、(上に記載したように)野生型マウスのものと似ているため、早期B細胞分化の欠陥を成熟B細胞集団の増殖によって補償することが可能である。フローサイトメトリーを用いてB細胞集団を分析することによって、様々なB細胞分化段階を調査した。表6は、特定の細胞表面マーカーを使用して、野生型同腹子と比較したVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスにおける、FACSにより定義した各B細胞系列の細胞の画分の比を示すものである。
【0226】
早期B細胞発生は骨髄で起こり、異なるB細胞分化段階は、細胞表面マーカー発現のタイプおよび量の変化によって特徴づけられる。これらの表面発現における差異は、細胞内部の免疫グロブリン遺伝子座で起こる分子の変化と相関する。プロB細胞からプレB細胞への移行には機能的重鎖タンパク質の再構成および発現の成功が必要であるが、プレBから成熟B期への移行は、κまたはλ軽鎖の正しい再構成および発現によって支配される。したがって、B細胞分化段階間の非効率的移行は、所与の段階のB細胞の関連集団の変化によって検出することができる。
【0227】
【表6】
【0228】
いずれのVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスにおいてもB細胞分化に大きな欠陥は認められなかった。VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスにおいて、ヒト重鎖遺伝子セグメントの導入はプロBからプレBへの移行に影響を及ぼすようには見えず、またヒトκ軽鎖遺伝子セグメントの導入はプレBからBへの移行に影響を及ぼさない。これは、ヒト可変領域およびマウス定常領域(constant)を保有する「逆キメラ」免疫グロブリン分子が、B細胞シグナル伝達および共受容体分子に関連して正常に機能して、マウス環境で適切なB細胞分化をもたらすことを実証している。対照的に、ランダムに組み込まれた免疫グロブリン導入遺伝子および不活性化された内因性重鎖またはκ軽鎖遺伝子座を含有するマウスでは、B細胞分化中の異なる集団間のバランスが様々な程度に摂動される(GreenおよびJakobovits(1998))。
【0229】
実施例IV
ヒト化免疫グロブリンマウスにおける可変遺伝子レパートリー
【0230】
脾細胞およびハイブリドーマ細胞を含む複数の源からのヒト可変領域の逆転写酵素・ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスのヒト化抗体レパートリーにおけるヒト可変遺伝子セグメントの使用量を分析した。可変領域配列、遺伝子セグメント使用量、体細胞超変異、および再構成可変領域遺伝子セグメントの接合部多様性を決定した。
【0231】
簡単に言うと、TRIZOL(商標)(Invitrogen)またはQiagen RNEASY(商標)Mini Kit(Qiagen)を使用して1×10
7〜2×10
7脾細胞または約10
4〜10
5ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出し、SUPERSCRIPT(商標)III One−Step RT−PCRシステム(Invitrogen)を使用してマウス定常領域特異的プライマーでプライミングした。重鎖とκ軽鎖の両方についてのヒト可変領域の各ファミリーのためのプールされたリーダープライマーとペアで上述の3’定常特異的プライマーを個々に使用して、各試料からの2〜5μLのRNAを用いて反応を行った。試薬およびプライマーの容量、およびRT−PCR/PCR条件は、製造業者の指示に従って行った。プライマー配列は、複数の源の基づいた(Wang,X.およびStollar,B.D.(2000)Human immunoglobulin variable region gene analysis by single cell RT−PCR、J Immunol Methods 244:217−225;Ig−primer sets、Novagen)。適宜、プールされたファミリー特異的フレームワークプライマーと第一の反応で使用したのと同じマウス3’免疫グロブリン定常特異的プライマーとを用いて第二のネステッドPCR反応を行った。各反応からのアリコート(5μL)をアガロース電気泳動によって分析し、MONTAGE(商標)Gel Extraction Kit(Millipore)を使用してアガロースから反応生成物を精製した。TOPO(商標)TA Cloning System(Invitrogen)を使用して精製生成物をクローニングし、エレクトロポレーションによりDH10β大腸菌(E.coli)細胞に形質転換した。各形質転換反応から個々のクローンを選択し、2mLのLBブロス培養液(LB broth culture)中で抗生物質選択しながら一晩37℃で成長させた。キットベースアプローチ(Qiagen)により細菌培養物からプラスミドDNAを精製した。
【0232】
免疫グロブリン可変遺伝子の使用量。
【0233】
ABI 3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)を用いて、重鎖クローンとκ軽鎖クローン両方のプラスミドDNAをT7リバースプライマーまたはM13リバースプライマーのいずれかで配列決定した。生配列データをSEQUENCHER(商標)(v4.5、Gene Codes)にインポートした。各配列をコンティグに組み立て、IMGT V−Quest(Brochet,X.ら(2008)IMGT/V−QUEST:the highly customized and integrated system for IG and TR standardized V−J and V−D−J sequence analysis.Nucleic Acids Res 36:W503−508)検索機能を用いてヒト免疫グロブリン配列にアラインして、ヒトV
H、D
H、J
HおよびVκ、Jκセグメント使用量を同定した。体細胞超変異および組換え接合部分析のために配列を生殖細胞系配列と比較した。
【0234】
RAG相補性(Chen,J.ら(1993)RAG−2−deficient blastocyst complementation: an assay of gene function in lymphocyte development、Proc Natl Acad Sci USA 90:4528−4532)による最初の重鎖改変(3hV
H−CREハイブリッド対立遺伝子、
図2Aの最下部)を含有するES細胞からマウスを産生させ、脾細胞RNAからcDNAを調製した。挿入されたヒト遺伝子セグメント内でのV(D)J組換えおよびその後のマウスIgM定常ドメインまたはIgG定常ドメインのいずれかへのスプライシングによって生ずることになる予測キメラ重鎖mRNAに特異的なプライマーセット(上記)使用して、そのcDNAを増幅させた。これらのcDNAクローンに由来する配列(示さず)は、正しいV(D)J組換えがヒト可変遺伝子配列内で発生したこと、再構成されたヒトV(D)J遺伝子セグメントがインフレームでマウス定常ドメインへと正しくスプライシングしたこと、およびクラススイッチ組換えが発生したことを実証した。後続のハイブリッド免疫グロブリン遺伝子座のmRNA産物のさらなる配列分析を行った。
【0235】
同様の実験で、免疫していない野生型およびVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスからのB細胞をフローサイトメトリーによりB220およびIgMまたはIgGの表面発現に基づいて分離した。B220
+IgM
+または表面IgG
+(sIgG
+)細胞をプールし、RT−PCR増幅およびクローニング(上記)の後にV
HおよびVκ配列を得た。非免疫VELOCIMMUNE(登録商標)1ヒト化マウス(表7)およびVELOCIMMUNE(登録商標)3ヒト化マウス(表8)からの1セットのRT−PCR増幅cDNAにおける代表的な遺伝子使用量を記録した(
*不完全RSS(defective RSS);†欠けているか偽遺伝子)。
【0236】
【表7-1】
【0237】
【表7-2】
【0238】
【表8-1】
【0239】
【表8-2】
【0240】
表7および8に示したように、機能的ヒトV
H、D
H、J
H、VκおよびJκ遺伝子セグメントのほぼすべてが利用される。この実験のVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスでは検出されなかったが記載した機能的可変遺伝子セグメントのうちの幾つかは、不完全組換えシグナル配列(RSS)を保有すると報告されており、それ故、発現することは期待されないことになる(Feeney,A.J.(2000)Factors that influence formation of B cell repertoire、Immunol Res 21:195−202)。ナイーブレパートリーと免疫レパートリーの両方から単離された、様々なVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスからの免疫グロブリン配列の幾つかの他のセットの分析は、これらの遺伝子セグメントの使用量を、より低い頻度においてではあるが示した(データを示さない)。集合体遺伝子使用量データは、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスが含有するすべての機能的ヒトV
H、D
H、J
H、VκおよびJκ遺伝子セグメントが、様々なナイーブおよび免疫レパートリーにおいて観察されることを示した(データを示さない)。ヒトV
H7−81遺伝子セグメントは、ヒト重鎖遺伝子座配列の分析で同定されている(Matsuda,F.ら(1998)The complete nucleotide sequence of the human immunoglobulin heavy chain variable region locus、J Exp Med 188:2151−2162)が、全VELOCIMMUNE(登録商標)3ヒト化マウスゲノムの再配列決定により確認したところ、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスには存在しない。
【0241】
抗体の重および軽鎖の配列が、特に再構成可変ドメイン内の短鎖ポリペプチドセグメントにおいて、例外的な可変性を示すことは公知である。これらの領域は、超可変領域または相補性決定領域(CDR)として公知であり、抗体分子の構造内に抗原の結合部位を作る。介在ポリペプチド配列は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。重鎖と軽鎖の両方に3つのCDR(CDR1、CDR2、CDR3)および4つのFR(FR1、FR2、FR3、FR4)がある。1つのCDR(CDR3)は、このCDRがV
H、D
HおよびJ
H遺伝子セグメントとVκおよびJκ遺伝子セグメントの両方の組換えによって作られ、抗原と遭遇する前に相当量のレパートリー多様性を生じさせる点でユニークである。この接合は、エキソヌクレアーゼ活性によるヌクレオチド欠失と末端デオキシヌクレオチヂルトランスフェラーゼ(TdT)による非テンプレートコード付加(non−template encoded addition)の両方のため正確ではなく、それ故、組換え過程の結果として新規配列を可能とする。FRは、全体としては可変領域の高い変異性のため実質的な体細胞変異を示すことができるが、しかし、可変性は、可変領域全域に均等に分布されない。CDRは、抗原結合を可能にする、抗体分子の表面に集中および局在する高可変領域である。接合部多様性を実証する、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスからの選択された抗体のCDR3接合部周囲の重鎖および軽鎖配列を、
図7Aおよび7Bにそれぞれ示す。
【0242】
図7Aに示すように、非テンプレートコードヌクレオチド付加(N−付加)が、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスからの抗体におけるV
H−D
H接合とD
H−J
H接合の両方において認められ、これは、ヒトセグメントに関するTdTの正しい機能を示している。V
H、D
HおよびJ
Hセグメントの、該セグメントの生殖細胞系カウンターパートと比較しての終点は、エンドヌクレアーゼ活性も発生したことを示している。重鎖遺伝子座とは異なり、ヒトκ軽鎖再構成は、VκおよびJκセグメントの組換えによって形成されるCDR3でのTdT付加が殆どまたは全く示さない(
図7B)。これは、プレB細胞からB細胞への移行のときの軽鎖再構成中にマウスにおけるTdT発現の欠如に起因すると予想される。再構成ヒトVκ領域のCDR3で観察される多様性は、主として、組換え事象中にエキソヌクレアーゼ活性によって導入される。
【0243】
体細胞超変異。
【0244】
体細胞超変異と呼ばれるプロセスにより、胚中心反応中に再構成免疫グロブリン遺伝子の可変領域にさらなる多様性が加えられる。体細胞変異可変領域を発現するB細胞は、濾胞樹状細胞によって提示される抗原への接近について他のB細胞と競合する。抗原に対してより高い親和性を有するこれらのB細胞は、末梢へと出ていく前にさらに増殖し、クラススイッチされる。それ故、スイッチされたアイソタイプを発現するB細胞は、典型的に抗原に遭遇し、胚中心反応を経たものであり、ナイーブB細胞に比べて増加した変異数を有する。さらに、主としてナイーブsIgM
+B細胞からの可変領域配列は、抗原選択を受けたsIgG
+B細胞からの可変配列より相対的に少ない変異を有すると予想されよう。
【0245】
免疫していないVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスからのsIgM
+もしくはsIgG
+B細胞または免疫したマウスからのsIgG
+B細胞からの、ランダムV
HまたはVκクローンからの配列を、その生殖細胞系可変遺伝子セグメントと比較し、生殖細胞系配列に対する変化に注釈を付けた。得られたヌクレオチド配列をコンピュータで翻訳し、アミノ酸変化をもたらす変異にも注釈を付けた。すべての可変領域からデータを照合し、所与の位置での変化率を算定した(
図8)。
【0246】
図8に示すように、免疫していないVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスからのsIgG
+B細胞に由来するヒト重鎖可変領域は、同じ脾細胞プールからのsIgM
+B細胞に比べてより多くのヌクレオチドを示し、免疫したマウスに由来する重鎖可変領域は、さらに多くの変化を示す。変化の数は、フレームワーク領域に比べて相補性決定領域(CDR)において増えており、これは抗原選択を示す。ヒト重鎖可変領域からの対応するアミノ酸配列も、IgMに比べてIgGのほうが有意に多い変異の数、および免疫したIgGほうがさらにいっそう多い数を示す。これらの変異もまた、フレームワーク配列と比較してCDR内においてのほうが頻度が高いようであり、これは、抗体がin vivoで抗原選択されたことを示唆している。ヌクレオチド変異数とアミノ酸変異数の同様の増加が、免疫したマウスからのIgG
+B細胞に由来するVκ配列に見出される。
【0247】
VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスにおいて観察された遺伝子使用量および体細胞超変異は、これらのマウスにおいて、存在する本質的にすべての遺伝子セグメントが、完全機能性逆キメラ抗体を形成するように再構成できることを実証している。さらに、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウス由来抗体は、マウス免疫系内で、親和性選択および成熟に至るよう充分に関与して、その標的抗原を効果的に中和できる完全成熟ヒト抗体を作製する。VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスは、複数のクラスの抗原への頑強な免疫応答を開始することができ、その結果、高親和性でもあり治療使用に好適でもある広範なヒト抗体の利用がもたらされる(データを示さない)。
【0248】
実施例V
リンパ系構造および血清アイソタイプの分析
【0249】
H&Eで染色した野生型またはVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスからの組織試料の脾臓、鼠蹊リンパ節、バイエル板および胸腺の全体構造を光学顕微鏡法によって調査した。野生型およびVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスから採集した血清中の免疫グロブリンアイソタイプのレベルを、LUMINEX(商標)技術を用いて分析した。
【0250】
リンパ系器官構造。
【0251】
リンパ系組織の構造および機能は、造血細胞の正しい発生に一部依存する。B細胞発生または機能の欠陥は、リンパ系組織の構造の変化として示され得る。染色組織切片の分析により、野生型マウスとVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスの間に二次リンパ系器官の外観の有意差は特定されなかった(データを示さない)。
【0252】
血清免疫グロブリンレベル。
【0253】
各アイソタイプの発現レベルは、野生型マウスとVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスで類似している(
図9A、9Bおよび9C)。これは、可変遺伝子セグメントのヒト化が、クラススイッチまたは免疫グロブリン発現および分泌に明白な有害作用を及ぼさず、したがって、これらの機能に必要なすべての内因性マウス配列を明白に維持することを実証している。
【0254】
実施例VI
ヒト化免疫グロブリンマウスにおける免疫および抗体産生
異なるバージョンのVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスを抗原で免疫して、外来抗原攻撃に対する体液性応答を調査した。
【0255】
免疫およびハイブリドーマ開発。
【0256】
VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスおよび野生型マウスをタンパク質、DNA、DNAとタンパク質の組み合わせ、または抗原を発現する細胞の形態の抗原で免疫することができる。典型的には、動物に3週間ごとに合計2から3回、追加免疫する。各抗原を追加免疫後、各動物から血清試料を採集し、血清力価決定により抗原特異的抗体応答について分析する。融合前に、必要に応じて5μgのタンパク質またはDNAの融合前最終追加免疫を、腹腔内注射および/または静脈内注射によってマウスに施した。脾細胞を回収し、電気融合チャンバ内で製造業者の提案プロトコル(Cyto Pulse Sciences Inc.、メリーランド州グレンバーニー)に従ってAg8.653骨髄腫細胞に融合させる。培養の10日後、ELISAアッセイ(Harlow,E.およびLane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Press、New York)を用いてハイブリドーマを抗原特異性についてスクリーニングする。あるいは、免疫したVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスから抗原特異的B細胞を直接単離し、本明細書に記載のものを含む標準的な技術を用いてスクリーニングして、対象となる抗原に特異的なヒト抗体を得る。
【0257】
血清力価決定。
【0258】
動物抗抗原血清応答をモニターするために、各追加免疫の約10日後に血清試料を採集し、抗原特異的ELISAを用いてその力価を決定する。簡単に言うと、Nunc MAXISORP(商標)96ウエルプレートを2μg/mLの抗原で一晩、4℃で被覆し、それをウシ血清アルブミン(Sigma、ミズーリ州セントルイス)でブロッキングする。3倍希釈系列の血清試料を1時間、室温でプレートに結合させる。その後、0.05%Tween−20を含有するPBSでそのプレートを洗浄し、全IgG力価についてはHRP結合体化ヤギ抗マウスFc(Jackson Immuno Research Laboratories,Inc.、ペンシルバニア州ウエストグローヴ)をまたはアイソタイプ特異的力価についてはビオチン標識アイソタイプ特異的ポリクローナル抗体もしくは軽鎖特異的ポリクローナル抗体(SouthernBiotech Inc.)をそれぞれ使用して結合IgGを検出する。ビオチン標識抗体については、プレート洗浄後、HRP結合体化ストレプトアビジン(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を添加する。BD OPTEIA(商標)(BD Biosciences Pharmingen、カリフォルニア州サンディエゴ)などの比色基質を使用してすべてのプレートを顕色させる。1Mリン酸で反応を停止させた後、450nmでの光吸収を記録し、Graph PadからのPRISM(商標)ソフトウェアを使用してデータを分析する。バックグラウンドシグナルの2倍のシグナルを得るために必要な希釈度を力価と定義する。
【0259】
1つの実験では、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスをヒトインターロイキン−6受容体(hIL−6R)で免疫した。hIL−6Rで免疫したVELOCIMMUNE(登録商標)および野生型マウスについての血清力価の代表セットを
図10Aおよび10Bに示す。
【0260】
VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスおよび野生型マウスは、同様の力価範囲でIL−6Rに対する強い応答を開始した(
図10A)。VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化コホートおよび野生型コホートからの数匹のマウスは、単回抗原追加免疫後に最大応答に達した。これらの結果は、この抗原に対する免疫応答強度および動態は、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスおよび野生型マウスにおいて同様であったことを示す。これらの抗原特異的抗体応答をさらに分析して、血清中で見出される抗原特異的抗体の特定のアイソタイプを調査した。VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化群と野生型群の両方が主としてIgG1応答を惹起した(
図10B)。これは、体液性応答中のクラススイッチが各タイプのマウスにおいて同様であることを示唆している。
【0261】
溶液中の抗原への抗体結合の親和性決定。
【0262】
抗原に対する抗体結合親和性を決定するために、ELISAベースの溶液競合アッセイが典型的に設計される。
【0263】
簡単に言うと、順化培地中の抗体を、0から10mg/mLの範囲の抗原タンパク質の希釈系列とプレミックスする。次に、その抗体と抗原の混合物の溶液を2から4時間、室温で、結合平衡に達するまでインキュベートする。次に、その混合物中の遊離抗体の量を、定量的サンドイッチELISAを用いて測定する。PBS溶液中の1μg/mLの抗原タンパク質で一晩、4℃で96ウェルMAXISORB(商標)プレート(VWR、ペンシルバニア州ウエストチェスター)を被覆し、その後、BSAでの非特異的ブロッキングを行う。次に、その抗体−抗原混合物溶液をこれらのプレートに移し、その後、1時間インキュベートする。次に、そのプレートを洗浄緩衝液で洗浄し、プレートに結合した抗体をHRP結合体化ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体試薬(Jackson Immuno Research Lab)で検出し、BD OPTEIA(商標)(BD Biosciences Pharmingen、カリフォルニア州サンディエゴ)などの比色基質を使用して顕色させた。1Mリン酸で反応を停止させた後、450nmでの光吸収を記録し、Graph PadからのPRISM(商標)ソフトウェアを使用してデータを分析する。溶液中の抗原の濃度に対するシグナルの依存度を4パラメータフィット分析で分析し、IC
50(溶液中に抗原が存在しない抗体試料からのシグナルの50%低減を達成するために必要な抗原濃度)として報告する。
【0264】
1つの実験では、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスをhIL−6Rで免疫した(上記のとおり)。
図11Aおよび11Bは、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスおよび野生型マウスからの抗hIL6R抗体についての親和性測定値の代表セットを示すものである。
【0265】
免疫したマウスに3回目の抗原追加免疫を施した後、ELISAにより血清力価を決定する。選択した野生型マウスコホートおよびVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスコホートから脾細胞を単離し、Ag8.653骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを形成し、選択下で成長させた(上記のとおり)。産生された合計671の抗IL−6Rハイブリドーマのうち、236は、抗原特異的抗体を発現することが判明した。抗原陽性ウェルから回収した培地を使用して、溶液競合ELISAを用いて抗原への結合の抗体親和性を決定した。VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウス由来の抗体は、溶液中の抗原への結合に関して広範な親和性を示す(
図11A)。さらに、236の抗IL−6Rハイブリドーマのうちの49は、in vitroバイオアッセイにおいてIL−6の受容体への結合を遮断することが判明した(データを示さない)。さらに、これらの49の抗IL−6R遮断抗体は、野生型マウスの並行免疫に由来する遮断抗体のものと同様の範囲の高い溶液親和性を示した(
図11B)。
【0266】
実施例VII
マウスADAM6ターゲティングベクターの構築
VELOCIGENE(登録商標)遺伝子工学技術(上記)を用いて、マウスADAM6aおよびADAM6b遺伝子のヒト化重鎖遺伝子座への挿入のためのターゲティングベクターを構築して、Dr.Fred Alt(Havard University)から入手した細菌人工染色体(BAC)929d24を改変した。マウスADAM6aおよびADAM6b遺伝子を含有するゲノム断片と、ヒト化重鎖遺伝子座のヒトV
H1−2遺伝子セグメントとヒトV
H6−1遺伝子セグメントの間にあるヒトADAM6偽遺伝子(hADAM6Ψ)の標的欠失のためのハイグロマイシンカセットとを含有するように、929d24 BAC DNAを操作して作製した(
図12)。
【0267】
先ず、マウスADAM6b遺伝子と約800bpの上流(5’)配列と約4800bpの下流(3’)配列とを含有するゲノム断片を929d24 BACクローンからサブクローニングした。マウスADAM6a遺伝子と約300bpの上流(5’)配列と約3400bpの下流(3’)配列とを含有する第二のゲノム断片を、別途、929d24 BACクローンからサブクローニングした。マウスADAM6b遺伝子およびADAM6a遺伝子を含有する2つのゲノム断片を、Frt組換え部位が隣接するハイグロマイシンカセットにライゲートして、ターゲティングベクター(マウスADAM6ターゲティングベクター、
図20;配列番号3)を作製した。ヒト化重鎖遺伝子座へのライゲーションのためにマウスADAM6b遺伝子に続いてそのターゲティングベクターの5’末端上およびマウスADAM6a遺伝子に続いてその3’末端上に異なる制限酵素認識部位を操作して作製した(
図12の下部)。
【0268】
マウス重鎖遺伝子座の、ヒト重鎖遺伝子座での置換を含有するBACクローンには、マウスADAM6ターゲティングベクターの後続のライゲーションのために、ヒト化遺伝子座のヒトV
H1−2遺伝子セグメントとヒトV
H6−1遺伝子セグメントの間にあるヒトADAM6偽遺伝子を含む別の改変を施した(
図13)。
【0269】
簡単に言うと、loxP組換え部位が隣接するネオマイシンカセットを、ヒトV
H1−2遺伝子セグメントの3’(hADAM6Ψに対して5’)およびヒトV
H6−1遺伝子セグメントの5’(hADAM6Ψに対して3’;
図13の中央参照)の位置に、ヒトゲノム配列を含有するホモロジーアームを含有するように、操作して作製した。このターゲティング構築物の挿入部位の場所は、ヒトADAM6偽遺伝子の約1.3kb5’側かつ約350bp3’側であった。このターゲティング構築物にマウスADAM6ターゲティングベクターと同じ制限酵素認識部位も含めて、ヒトADAM6偽遺伝子の欠失を含有する改変BACクローンとマウスADAM6ターゲティングベクターの間での後続のBACライゲーションを可能にした。
【0270】
両方の構築物に由来するBAC DNAの消化後、そのゲノム断片を互いにライゲートして、マウスADAM6aおよびADAM6bヌクレオチド配列を含む、異所に配置されたゲノム配列を含有するヒト化重鎖遺伝子座を含有する、操作して作製したBACクローンを構築した。ヒト化重鎖遺伝子座内のヒトADAM6遺伝子の欠失と、ES細胞へのマウスADAM6aおよびADAM6b配列の挿入のための最終のターゲティング構築物は、5’から3’へ、ヒトV
H1−2遺伝子セグメントの3’の約13kbのヒトゲノム配列を含有する5’ゲノム断片;マウスADAM6b遺伝子の下流の約800bpのマウスゲノム配列;マウスADAM6b遺伝子;マウスADAM6b遺伝子の上流の約4800bpのゲノム配列;5’Frt部位;ハイグロマイシンカセット;3’Frt部位;マウスADAM6a遺伝子の下流の約300bpのマウスゲノム配列;マウスADAM6a遺伝子;マウスADAM6a遺伝子の上流の約3400bpのマウスゲノム配列;そしてヒトV
H6−1遺伝子セグメントの5’の約30kbのヒトゲノム配列を含有する3’ゲノム断片を含有した(
図13の下部)。
【0271】
操作して作製したBACクローン(上記)を使用して、ヒト化重鎖遺伝子座を含有するマウスES細胞をエレクトロポレートして、ヒト化重鎖遺伝子座内にマウスADAM6aおよびADAM6b配列を含む、異所に配置されたマウスゲノム配列を含む改変ES細胞を作製した。ヒト化重鎖遺伝子座内に異所性マウスゲノム断片を含有する陽性ES細胞を、TAQMAN(商標)プローブを使用する定量的PCRアッセイ(Lie,Y.S.およびPetropoulos,C.J.(1998)Advances in quantitative PCR technology: 5’nuclease assays.Curr Opin Biotechnol 9(1):43−48)によって同定した。ヒト化重鎖遺伝子座の改変部分の外側の上流および下流領域を、該改変領域内に配置したプライマーおよびプローブを使用してPCRにより確認して、ヒト化重鎖遺伝子座内の異所性マウスゲノム配列の存在およびハイグロマイシンカセットの存在を確認した。上流挿入点にわたるヌクレオチド配列には、次のものが含まれ、これは、該挿入点の上流のヒト重鎖ゲノム配列と、該挿入点に存在するマウスゲノム配列に隣接して連結されている(下のカッコ内に入っている)I−Ceu I制限酵素認識部位とを示すものである:(CCAGCTTCAT TAGTAATCGT TCATCTGTGG TAAAAAGGCA GGATTTGAAG CGATGGAAGA TGGGAGTACG GGGCGTTGGA AGACAAAGTG CCACACAGCG CAGCCTTCGT CTAGACCCCC GGGCTAACTA TAACGGTCCT AAGGTAGCGA G)GGGATGACAG ATTCTCTGTT CAGTGCACTC AGGGTCTGCC TCCACGAGAA TCACCATGCC CTTTCTCAAG ACTGTGTTCT GTGCAGTGCC CTGTCAGTGG(配列番号4)。標的領域の3’端の下流挿入点にわたるヌクレオチド配列には、次のものが含まれ、これは、マウスゲノム配列と、該挿入点の下流のヒト重鎖ゲノム配列に隣接して連結されている(下のカッコ内に入っている)PI−Sce I制限酵素認識部位とを示すものである:(AGGGGTCGAG GGGGAATTTT ACAAAGAACA AAGAAGCGGG CATCTGCTGA CATGAGGGCC GAAGTCAGGC TCCAGGCAGC GGGAGCTCCA CCGCGGTGGC GCCATTTCAT TACCTCTTTC TCCGCACCCG ACATAGATAAAGCTT)ATCCCCCACC AAGCAAATCC CCCTACCTGG GGCCGAGCTT CCCGTATGTG GGAAAATGAA TCCCTGAGGT CGATTGCTGC ATGCAATGAA ATTCAACTAG(配列番号5)。
【0272】
上に記載した標的ES細胞をドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)マウスの工学的作製方法(例えば、米国特許第7,6598,442号、同第7,576,259号および同第7,294,754号参照)により8細胞期マウス胚に導入した。マウスADAM6aおよびADAM6b配列を含む異所性マウスゲノム配列を含有するヒト化重鎖遺伝子座を保有するマウスを、該ヒト化重鎖遺伝子座内のマウスADAM6aおよびADAM6b遺伝子の存在を検出する対立遺伝子アッセイ(Valenzuelaら、2003)の改良法を用いる遺伝子型解析によって同定した。
【0273】
マウスADAM6aおよびADAM6b遺伝子を含有するヒト化重鎖遺伝子座を保有するマウスをFLPeデリーターマウス系統(例えば、Rodriguez,C.I.ら(2000)High−efficiency deleter mice show that FLPe is an alternative to Cre−loxP.Nature Genetics 25:139−140参照)と交配させて、例えばES細胞期でまたは胚で除去されないターゲティングベクターによって導入された一切のFRT化(FRTed)ハイグロマイシンカットを除去した。必要に応じて、ハイグロマイシンカセットをマウス内に保持した。
【0274】
子を遺伝子型解析し、マウスADAM6aおよびADAM6b配列を含む異所性マウスゲノム断片を含有するヒト化重鎖遺伝子座についてヘテロ接合性の子を、マウスADAM6遺伝子発現および妊性の特徴づけのために選択した。
【0275】
実施例VIII
ADAM6レスキューマウスの特徴づけ
フローサイトメトリー。
【0276】
ヒト重およびヒトκ軽鎖可変遺伝子遺伝子座についてホモ接合性(H/κ)の25週齢の3匹のマウスと、ヒト重鎖遺伝子座の両方の対立遺伝子内にマウスADAM6aおよびADAM6b遺伝子をコードする異所性マウスゲノム断片を有するヒト重およびヒトκ軽鎖についてホモ接合性(H/κ−A6)の18〜20週齢の3匹のマウスを、BD LSR II System(BD Bioscience)でのFACsによるリンパ球細胞集団の同定および分析のために屠殺した。リンパ球を特定の細胞系列についてゲートし、B細胞発生の様々な段階を経る発達について分析した。動物から採集した組織としては、血液、脾臓および骨髄が挙げられる。EDTAが入っているBDマイクロテイナーチューブ(BD Biosciences)に血液を採集した。ウシ胎仔血清とピルビン酸ナトリウムとHEPESと2−メルカプトエタノールと非必須アミノ酸とゲンタマイシンとを補充した完全RPMI培地でフラッシュすることにより大腿骨から骨髄を採集した。血液、脾臓および骨髄調製物からの赤血球を塩化アンモニウム系溶解緩衝液(例えば、ACK溶解緩衝液)で溶解し、その後、完全RPMI培地で洗浄した。
【0277】
細胞集団を染色するために、様々な組織源からの1×10
6細胞を氷上で10分間、抗マウスCD16/CD32(2.4G2、BD Biosciences)と共にインキュベートし、その後、下記の抗体カクテルの1つまたは組み合わせで30分間、氷上で標識した。
【0278】
骨髄:抗マウスFITC−CD43(1B11、BioLegend)、PE−ckit(2B8、BioLegend)、PeCy7−IgM(II/41、eBioscience)、PerCP−Cy5.5−IgD(11−26c.2a、BioLegend)、APC−eFluor780−B220(RA3−6B2、eBioscience)、A700−CD19(1D3、BD Biosciences)。
【0279】
末梢血および脾臓:抗マウスFITC−κ(187.1、BD Biosciences)、PE−λ(RML−42、BioLegend)、PeCy7−IgM(II/41、eBioscience)、PerCP−Cy5.5−IgD(11−26c.2a、BioLegend)、APC−CD3(145−2C11、BD)、A700−CD19(1D3、BD)、APC−eFluor780−B220(RA3−6B2、eBioscience)。標識された抗体と共にインキュベートした後、細胞を洗浄し2%ホルムアルデヒドで固定した。データ収集をLSRIIフローサイトメーターで行い、FlowJoで分析した。代表H/κおよびH/κ−A6マウスからの結果を
図14〜18に示す。
【0280】
結果は、H/κ−A6マウスのB細胞が、骨髄および末梢区画においてH/κマウスと同様の様式でB細胞発生段階を経て発達すること、それらが末梢に入ると正常な成熟パターンを示すことを実証している。H/κ−A6マウスは、H/κマウスと比較して増大したCD43
intCD19
+細胞集団を明示した(
図16B)。これにより、H/κ−A6マウスにおける、マウスADAM6aおよびADAM6b配列を含む異所性マウスゲノム断片を含有するヒト化重鎖遺伝子座からIgM発現の促進を示すことができる。末梢では、H/κ−A6マウスのBおよびT細胞集団は、正常であり、H/κマウスと同様であるようである。
【0281】
精巣の形態および精子の特徴づけ。
【0282】
ヒト化免疫グロブリン重鎖可変遺伝子座を有するマウスにおける不妊性が、精巣および/または精子産生の欠陥に起因するかどうかを決定するために、精巣の形態および精巣上体の精子含有量を調査した。
【0283】
簡単に言うと、1群につき5匹のマウスの2つの群(群1:ヒト重鎖およびκ軽鎖可変遺伝子遺伝子座についてホモ接合性のマウス、mADAM6
−/−;群2:ヒト重鎖可変遺伝子遺伝子座についてヘテロ接合性およびκ軽鎖可変遺伝子遺伝子座についてホモ接合性のマウス、mADAM6
+/−)から精巣をインタクトな精巣上体と共に切開し、計量した。次に、その検体を固定し、パラフィンに包埋し、切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシン(HE)染色剤で染色した。精巣切片(マウス1匹につき2つの精巣、合計20)を形態の欠陥および精子産生の証拠について調査し、一方、精巣上体切片を精子の存在について調査した。
【0284】
この実験では、mADAM6
−/−マウスとmADAM6
+/−マウスとの間で精巣重量の差も形態の差も観察されなかった。すべての遺伝子型において、精巣および精巣上体の両方において、精子が観察された。これらの結果は、マウスADAM6aおよびADAM6b遺伝子の不在が、精巣形態の検出可能な変化をもたらさないこと、ならびにマウスにおいてこれら2つの遺伝子の存在下および不在下で精子が産生されることを確証する。したがって、雄ADAM6
−/−マウスの妊性の欠陥が低い精子産生量に起因する可能性は低い。
【0285】
精子の運動能および移動。
【0286】
他のADAM遺伝子ファミリーメンバーが無いマウスは、精子の運動能または移動の欠陥に起因して不妊性である。精子の移動は、子宮から卵管に進む精子の能力と定義され、通常、マウスの受精に必要である。マウスADAM6aおよびADAM6bの欠失がこのプロセスに影響を及ぼすかどうかを決定するために、mADAM6
−/−マウスにおける精子の移動を評価した。精子の運動能もまた検査した。
【0287】
簡単に言うと、(1)ヒト重鎖可変遺伝子遺伝子座についてヘテロ接合性およびヒトκ軽鎖可変遺伝子遺伝子座についてホモ接合性のマウス(ADAM6
+/−);(2)ヒト重鎖可変遺伝子遺伝子座についてホモ接合性およびヒトκ軽鎖可変遺伝子遺伝子座についてホモ接合性のマウス(ADAM6
−/−);(3)ヒト重鎖可変遺伝子遺伝子座についてホモ接合性および野生型κ軽鎖についてホモ接合性のマウス(ADAM6
−/−mκ);および(4)野生型C57BL/6マウス(WT)の精巣から精子を得た。検査により精子数または総合的精子運動能に重大な異常は認められなかった。すべてのマウスについて、卵丘細胞分散(cumulus dispersal)が観察された。これは、各精子試料がin vitroで卵丘細胞に侵入して透明帯を結合できることを示していた。これらの結果は、ADAM6
−/−マウスが、卵丘に侵入して透明帯を結合し得る精子を有することを確証する。
【0288】
in vitroでのマウス卵子の受精(IVF)を、上記のマウスからの精子を使用して行った。IVFの翌日にADAM6
−/−についてやや少ない数の卵割胚が存在し、卵子に結合した精子の低減数も観察された。これらの結果は、ADAM6
−/−マウスからの精子が、卵子に曝露されると、卵丘に侵入して透明帯を結合し得ることを確証する。
【0289】
もう1つの実験では、子宮から卵管を通って移動するADAM6
−/−マウスからの精子の能力を精子移動アッセイで決定した。
【0290】
簡単に言うと、5匹の過排卵雌マウスの第一の群を5匹のADAM6
−/−雄とともに用意した。5匹の過排卵雌マウスの第二の群を5匹のADAM6
+/−雄とともに用意した。これらの交配ペアを交配について観察し、交配の5から6時間後、分析のためにすべての雌から子宮および付属の卵管を除去し、フラッシュした。フラッシュ溶液を卵子について点検して排卵を検証し、精子数を得た。精子移動を2つの異なる方法で評価した。第一に、両方の卵管を子宮から除去し、食塩水でフラッシュし、確認された一切の精子を計数した。卵子の存在も排卵の証拠として書き留めた。第二に、卵管を子宮に付属したまま残し、両方の組織を固定し、パラフィンに包埋し、切片にして染色した(上記のとおり)。切片を子宮内の精子の存在についても、両方の卵管における精子の存在についても調査した。
【0291】
5匹のADAM6
−/−雄と交配させた雌については、卵管からのフラッシュ溶液中に精子が殆ど見つからなかった。5匹のADAM6
+/―雄と交配させた5匹の雌の卵管からのフラッシュ溶液は、5匹のADAM6
−/−雄と交配させた5匹の雌の卵管からのフラッシュ溶液中に存在するものより約25から30倍多い精子レベル(平均、n=10卵管)を示した。
【0292】
子宮および卵管の組織学的切片を調製した。その切片を子宮および卵管(colliculus tubarius)においての精子の存在について調査した。卵管および子宮の組織学的切片の検査により、ADAM6
−/−マウスと交配させた雌マウスについては子宮では精子を認めるが卵管では認められないことが明らかにされた。さらに、ADAM6
−/−マウスと交配させた雌からの切片により、精子が子宮卵管境界(UTJ)で認められないことが明らかになった。ADAM6
+/−マウスと交配させた雌からの切片では、UTJおよび卵管において精子が同定された。
【0293】
これらの結果は、ADAM6aおよびADAM6b遺伝子を欠いているマウスがin vivo移動欠陥を示す精子を作ることを確証する。すべての場合、精子が子宮内に観察された。これは、交配および精子放出は正常に行われたようであるが、精子数または組織学的観察のいずれかによって測定すると、交配後に卵管内で精子は殆どまたは全く観察されなかったことを示していた。これらの結果は、ADAM6aおよびADAM6b遺伝子を欠いているマウスが、子宮から卵管への移動不能を示す精子を産生することを確証する。精子が子宮卵管境界(uterine−tubule junction)を越えて、卵子が受精する卵管へと移動することができないため、この欠陥は不妊性をもたらすようである。纏めると、これらの結果のすべてが、マウスADAM6遺伝子は、正常移動能を有する精子を子宮から出て子宮卵管境界および卵管を通って移動するように方向づけ、そうして卵子に近づいて受精事象を実現するという仮説の支持に向けられる。ADAM6がこれを実現する機序は、前記ADAM6タンパク質の作用によって方向づけられる(directly)こともあり、または下に記載するような、精子細胞における他のタンパク質、例えば他のADAMタンパク質、との協調発現により方向づけられることもある。
【0294】
ADAM遺伝子ファミリー発現。
【0295】
ADAMタンパク質の複合体が、成熟中の精子の表面に複合体として存在することは公知である。他のADAM遺伝子ファミリーメンバーが無いマウスは、精子が成熟するにつれてこの複合体を喪失し、成熟精子において複数のADAMタンパク質の低減を示す。ADAM6aおよびADAM6b遺伝子の欠如が、他のADAMタンパク質に対して同様に影響を及ぼすかどうかを決定するために、精巣(未熟精子)および精巣上体(成熟中の精子)からのタンパク質抽出物のウエスタンブロットを分析して、他のADAM遺伝子ファミリーメンバーの発現レベルを決定した。
【0296】
この実験では、4匹のADAM6
−/−マウスおよび4匹のADAM6
+/−マウスからのタンパク質抽出物を分析した。その結果は、ADAM2およびADAM3の発現が影響を受けないことを精巣抽出物中で示した。しかし、ADAM2とADAM3の両方が、精巣上体抽出物中では劇的に低減していた。これは、ADAM6
−/−マウスの精液中のADAM6aおよびADAM6bの不在が、精子が成熟するにつれて他のADAMタンパク質(例えば、ADAM2およびADAM3)の発現およびおそらく機能に対して直接影響を及ぼし得ることを明示する。これは、ADAM6aおよびADAM6bが、精子の表面にADAMタンパク質複合体の部分として存在し、そのことが正しい精子移動にとって極めて重要であり得ることを示唆している。
【0297】
実施例IX
ADAM6レスキューマウスにおけるヒト重鎖可変遺伝子使用法
【0298】
TAQMAN(商標)プローブを使用する定量的PCRアッセイ(上記のとおり)によりマウスADAM6aおよびADAM6b遺伝子を欠いている(mADAM6
−/−)か、マウスADAM6aおよびADAM6b遺伝子をコードする異所性ゲノム断片を含有する(ADAM6
+/+、実施例1を参照のこと)かのいずれかの、ヒト重およびκ軽鎖可変遺伝子遺伝子座についてホモ接合性のマウスについて、選択ヒト重鎖可変遺伝子使用量を決定した。
【0299】
簡単に言うと、マウスCD19 Microbeads(Miltenyi Biotec)を使用してmADAM6
−/−マウスおよびADAM6
+/+マウスの脾臓からのCD19
+B細胞を精製し、RNEASY(商標)Mini kit(Qiagen)を使用して全RNAを精製した。RNase不含DNaseオンカラム処理剤(Qigaen)を使用してゲノムRNAを除去した。First Stand cDNA Synthesisキット(Invitrogen)を使用して約200ngのmRNAをcDNAに逆転写し、その後、ABI 7900 Sequence Detection System (Applied Biosystems)を使用してTAQMAN(商標) Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)で増幅した。各遺伝子の相対発現をマウスκ定常(mCκ)に正規化した。表9は、この実験に使用したセンス/アンチセンス/TAQMAN(商標)MGBプローブの組み合わせを示すものである。
【0300】
【表9】
【0301】
この実験では、分析した試料において4つすべてのヒトV
H遺伝子の発現が観察された。さらに、発現レベルは、mADAM6
−/−マウスとADAM6
+/+マウスの間で類似するものであった。これらの結果は、改変部位に対して遠位にあるヒトV
H遺伝子(V
H3−23およびV
H1−69)および改変部位に対して近位にあるヒトV
H遺伝子(V
H1−2およびV
H6−1)の両方ともすべてが、機能的に発現するヒト重鎖を形成するように組み換えることができた。これらの結果は、ヒト重鎖ゲノム配列に挿入されたマウスADAM6aおよびADAM6b配列を含む異所性ゲノム断片が、その遺伝子座内でのヒト重鎖遺伝子セグメントのV(D)J組換えに影響を及ぼさなかったこと、およびこれらのマウスが、通常の様式でヒト重鎖遺伝子セグメントを組換えて、機能的重鎖免疫グロブリンタンパク質を産生することができることを明示している。
【0302】
実施例X
選択されたヒト軽鎖可変領域と会合するヒト重鎖可変領域の同定
【0303】
単一の再構成されたヒト生殖系列軽鎖を抗原特異的ヒト抗体からのヒト重鎖と共発現させることができるか否かを判定するために、in vitro発現系を構築した。
【0304】
遺伝子改変マウスでヒト抗体を生成する方法は、公知である(例えば、US6,596,541を参照、Regeneron Pharmaceuticals、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウス)。VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウス技術は、マウスが抗原刺激に応じてヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を生成するように、内因性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結されたヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有する遺伝子改変マウスの生成を含む。VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスから生成される抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAは、完全にヒトである。最初に、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体が単離される。下記のように、抗体は、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特徴付けされ、選択される。マウス定常領域は所望のヒト定常領域で置換され、非IgMアイソタイプ、例えば野生型または改変されたIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4を含む完全にヒトの抗体が生成される。選択される定常領域は具体的な用途によって異なることができるが、高親和性抗原結合および標的特異性特性は可変領域に存在する。
【0305】
VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスを、血管形成を促進する増殖因子(抗原C)で免疫し、当技術分野で認められる標準技術を用いて抗原特異的ヒト抗体を単離し、V遺伝子の使用について配列決定をした。選択された抗体をヒト重鎖および軽鎖定常領域にクローニングし、69個の重鎖を以下の3つのヒト軽鎖の1つとの対合のために選択した:(1)ヒトκ定常領域に連結された関連κ軽鎖、(2)ヒトκ定常領域に連結された再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5、または(3)ヒトκ定常領域に連結された再構成されたヒト生殖系列Vκ3−20Jκ1。重鎖および軽鎖の各対を、標準技術を用いてCHO−K1細胞に共トランスフェクトした。上清中の抗体の存在は、ELISAアッセイで抗ヒトIgGによって検出された。各重鎖/軽鎖対について抗体力価(ng/ml)を決定し、様々な再構成された生殖系列軽鎖による力価を、親の抗体分子(すなわち、関連軽鎖と対になった重鎖)で得られた力価と比較し、天然の力価の百分率を計算した(表10)。V
H:重鎖可変遺伝子。ND:現在の実験条件下で発現は検出されない。
【0306】
【表10-1】
【0307】
【表10-2】
【0308】
類似した実験では、VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスをいくつかの異なる抗原で免疫し、抗原特異的ヒト抗体の選択された重鎖を、様々な再構成されたヒト生殖系列軽鎖と対合するそれらの能力について試験した(前記の通り)。この実験で用いた抗原には、コレステロールホメオスタシスに関与する酵素(抗原A)、グルコースホメオスタシスの調節に関与する血清ホルモン(抗原B)、血管形成を促進する増殖因子(抗原C)および細胞表面レセプター(抗原D)が含まれた。抗原特異的抗体は各免疫群のマウスから単離され、重鎖および軽鎖可変領域がクローニングされ、配列決定された。重鎖および軽鎖の配列から、V遺伝子の使用が決定され、選択された重鎖はそれらの関連軽鎖または再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5領域と対にさせられた。各重鎖/軽鎖対を、CHO−K1細胞に共トランスフェクトし、上清中の抗体の存在はELISAアッセイで抗ヒトIgGによって検出した。各重鎖/軽鎖対について抗体力価(μg/ml)を決定し、様々な再構成されたヒト生殖系列軽鎖による力価を、親の抗体分子(すなわち、関連軽鎖と対になった重鎖)で得られた力価と比較し、天然の力価の百分率を計算した(表11)。V
H:重鎖可変遺伝子。Vκ:κ軽鎖可変遺伝子。ND:現在の実験条件下で発現は検出されない。
【0309】
【表11-1】
【0310】
【表11-2】
【0311】
これらの実験から得られた結果は、様々な遺伝子ファミリーからの体細胞変異高親和性重鎖は、再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5およびVκ3−20Jκ1領域と対合することができ、細胞から正常な抗体分子として分泌させることができることを示す。表10に示すように、親の抗体の関連軽鎖と比較して、抗体力価は、再構成されたヒトVκ1−39Jκ5軽鎖と対にした場合、約61%(69中42個)の重鎖で増加し、再構成されたヒトVκ3−20Jκ1軽鎖と対にした場合、約29%(69中20個)の重鎖で増加した。重鎖の約20%(69中14個)について、親の抗体の関連軽鎖と比較して、再構成されたヒト生殖系列軽鎖の両方が発現の増加を付与した。表11に示すように、再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5領域は、親の抗体の関連軽鎖と比較して、様々な異なるクラスの抗原に特異的ないくつかの重鎖の発現の増加を付与した。親の抗体の関連軽鎖と比較して、重鎖の約35%(15/43)で抗体力価は2倍を超えて増加した。2つの重鎖(315および316)では、増加は親の抗体と比較して10倍を超えていた。親の抗体の関連軽鎖と比較して発現の増加を示した全ての重鎖の中で、ファミリー3(V
H3)の重鎖は、他の重鎖可変領域遺伝子ファミリーと比較してより多く提示されている。これは、再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5およびVκ3−20Jκ1軽鎖と対合するヒトV
H3重鎖の好ましい関係を示す。
【0312】
実施例XI
再構成されたヒト生殖系列軽鎖遺伝子座の生成
【0313】
マウスゲノム細菌人工染色体(BAC)クローン302g12および254m04(Invitrogen)を改変するために、VELOCIGENE(登録商標)遺伝子操作技術(例えば、米国特許第6,586,251号およびValenzuelaら(2003年)High−throughput engineering of the mouse genome coupled with high−resolution expression analysis、Nature Biotech.21巻(6号):652〜659頁を参照)を用いて、様々な再構成されたヒト生殖系列軽鎖ターゲッティングベクターが作製された。これらの2つのBACクローンを用いて、ゲノム構築物を単一の再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域を含むように操作し、内因性κ可変および連結遺伝子セグメントを欠失させるために事前に改変しておいた内因性κ軽鎖遺伝子座に挿入した。
【0314】
再構成されたヒト生殖系列軽鎖ターゲッティングベクターの構築
【0315】
当技術分野で認められる標準の分子生物学技術を用いて、3つの異なる再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域を作製した。これらの3つの領域を構築するために用いたヒト可変遺伝子セグメントには、再構成されたヒトVκ1−39Jκ5配列、再構成されたヒトVκ3−20Jκ1配列および再構成されたヒトVpreBJl5配列が含まれた。
【0316】
マウスVκ3−7遺伝子のエクソン1(リーダーペプチドをコードする)およびイントロン1を含むDNAセグメントを、新規DNA合成(Integrated DNA Technologies)によって作製した。天然に存在するBlpI制限酵素部位までの5’非翻訳領域の一部が含まれた。ヒトVκ1−39およびVκ3−20遺伝子のエクソンを、ヒトゲノムBACライブラリーからPCR増幅した。フォワードプライマーは、マウスVκ3−7遺伝子のイントロン1のスプライス受容部位を含む5’伸長部を有した。ヒトVκ1−39配列のPCRのために用いられたリバースプライマーは、ヒトJκ5をコードする伸長部を含んでいたが、ヒトVκ3−20配列のPCRのために用いられたリバースプライマーはヒトJκ1をコードする伸長部を含んでいた。ヒトVpreBJλ5配列は、新規DNA合成(Integrated DNA Technologies)によって作製した。スプライスドナー部位を含むヒトJκ−Cκイントロンの一部を、プラスミドpBS−296−HA18−PISceIからPCR増幅した。フォワードPCRプライマーは、ヒトJκ5、Jκ1またはJλ5配列のいずれかの一部をコードする伸長部を含んでいた。リバースプライマーは、イントロンにおいて事前に操作されたPI−SceI部位を含んでいた。
【0317】
マウスVκ3−7エクソン1/イントロン1、ヒト可変軽鎖エクソンおよびヒトJκ−Cκイントロン断片を重複伸長PCRによって一つにまとめ(sew)、BlpIおよびPI−SceIで消化し、ヒトVκ3−15可変遺伝子セグメントからのプロモーターを含むプラスミドpBS−296−HA18−PISceIにライゲーションした。プラスミドpBS−296−HA18−PISceI内のloxedハイグロマイシンカセットを、NotIおよびAscI部位が隣接するFRTedハイグロマイシンカセットで置換した。このプラスミドのNotI/PI−SceI断片を、マウスJκ−Cκイントロンの一部、マウスCκエクソン、およびマウスES細胞での相同組み換えのために3’相同性アームを提供したマウスκ遺伝子座の下流のゲノム配列の約75kbを含んでいた改変マウスBAC 254m04にライゲーションした。次にこのBACのNotI/AscI断片を、FRTedネオマイシンカセットおよびマウスES細胞での相同組み換えのための内因性κ遺伝子座の上流のゲノム配列の約23kbを含んでいた改変マウスBAC 302g12にライゲーションした。
【0318】
再構成されたヒト生殖系列Vκ1ー39Jκ5ターゲッティングベクター(
図19)
【0319】
ターゲッティングベクターへのクローニングのために、操作軽鎖挿入物の5’末端および3’末端に制限酵素部位を導入した:5’末端にAscI部位、3’末端にPI−SceI部位。5’AscI部位および3’PI−SceI部位の中で、5’から3’までのターゲッティング構築物は、マウスBACクローン302g12から得られた内因性マウスκ軽鎖遺伝子座の5’側配列を含む5’相同性アーム、FRTedネオマイシン耐性遺伝子、ヒトVκ3−15プロモーターを含むゲノム配列、マウスVκ3−7可変遺伝子セグメントのリーダー配列、マウスVκ3−7可変遺伝子セグメントのイントロン配列、再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5領域のオープンリーディングフレーム、ヒトJκ−Cκイントロンの一部を含むゲノム配列、ならびにマウスBACクローン254m04から得られた内因性マウスJκ5遺伝子セグメントの3’側配列を含む3’相同性アームを含んでいた(
図19、中央)。内因性マウスκ軽鎖遺伝子座の上流および最も3’側のJκ遺伝子セグメントの下流(例えば、内因性3’エンハンサー)の遺伝子および/または配列は、ターゲッティング構築物によって改変されていなかった(
図19を参照)。操作されたヒトVκ1−39Jκ5遺伝子座の配列を、配列番号59に示す。
【0320】
再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域中の配列に位置するプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、BAC DNAへの再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5領域のターゲッティング挿入を確認した。簡潔には、マウスVκ3−7リーダー配列の3’側イントロン配列は、プライマーULC−m1F(AGGTGAGGGT ACAGATAAGT GTTATGAG;配列番号60)およびULC−m1R(TGACAAATGC CCTAATTATA GTGATCA;配列番号61)で確認した。再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5領域のオープンリーディングフレームは、プライマー1633−h2F(GGGCAAGTCA GAGCATTAGC A;配列番号62)および1633−h2R(TGCAAACTGG ATGCAGCATA G;配列番号63)で確認した。ネオマイシンカセットは、プライマーneoF(GGTGGAGAGG CTATTCGGC;配列番号64)およびneoR(GAACACGGCG GCATCAG;配列番号65)で確認した。再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5領域を発現するキメラマウスを生成するための改変ES細胞を形成するために、マウスES細胞をエレクトロポレーションするために、次にターゲッティングBAC DNAを用いた。
【0321】
内因性遺伝子座に挿入された操作されたVκ1−39Jκ5軽鎖領域に特異的なプローブを用いるTAQMAN
TMスクリーニングおよび核型分析によって、陽性のES細胞クローンを確認した。簡潔には、ネオマイシンマーカー遺伝子の中で結合するプローブneoP(TGGGCACAAC AGACAATCGG CTG;配列番号66)、マウスVκ3−7リーダー配列の3’側のイントロン配列中で結合するプローブULC−m1P(CCATTATGAT GCTCCATGCC TCTCTGTTC;配列番号67)、および再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5オープンリーディングフレーム中で結合するプローブ1633h2P(ATCAGCAGAA ACCAGGGAAA GCCCCT;配列番号68)。生殖系列Vκ1−39Jκ5軽鎖領域を発現する同腹仔を生ませるために、雌性マウスに移植するために、次に陽性のES細胞クローンを用いた。
【0322】
あるいは、再構成されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5軽鎖領域を有するES細胞は、ターゲッティング構築物によって導入されたFRTedネオマイシンカセットを除去するために、FLPを発現する構築物でトランスフェクトされる。任意選択で、ネオマイシンカセットは、FLPリコンビナーゼを発現するマウスを繁殖させることによって除去される(例えば、US6,774,279)。任意選択で、ネオマイシンカセットは、マウスで保持される。
【0323】
再構成されたヒト生殖系列Vκ3−20Jκ1ターゲッティングベクター(
図20)
【0324】
同じように、再構成されたヒト生殖系列Vκ3−20Jκ1領域を発現する操作軽鎖遺伝子座を、5’から3’にかけて、マウスBACクローン302g12から得られた内因性マウスκ軽鎖遺伝子座の5’側配列を含む5’相同性アーム、FRTedネオマイシン耐性遺伝子、ヒトVκ3−15プロモーターを含むゲノム配列、マウスVκ3−7可変遺伝子セグメントのリーダー配列、マウスVκ3−7可変遺伝子セグメントのイントロン配列、再構成されたヒト生殖系列Vκ3−20Jκ1領域のオープンリーディングフレーム、ヒトJκ−Cκイントロンの一部を含むゲノム配列、ならびにマウスBACクローン254m04から得られた内因性マウスJκ5遺伝子セグメントの3’側配列を含む3’相同性アームを含むターゲッティング構築物を用いて作製した(
図20、中央)。操作されたヒトVκ3−20Jκ1遺伝子座の配列を、配列番号69に示す。
【0325】
再構成されたヒト生殖系列Vκ3−20Jκ1軽鎖領域中の配列に位置するプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、BAC DNAへの再構成されたヒト生殖系列Vκ3−20Jκ1領域のターゲッティング挿入を確認した。簡潔には、マウスVκ3−7リーダー配列の3’側イントロン配列は、プライマーULC−m1F(配列番号60)およびULC−m1R(配列番号61)で確認した。再構成されたヒト生殖系列Vκ3−20Jκ1領域のオープンリーディングフレームは、プライマー1635−h2F(TCCAGGCACC CTGTCTTTG;配列番号70)および1635−h2R(AAGTAGCTGC TGCTAACACT CTGACT;配列番号71)で確認した。ネオマイシンカセットは、プライマーneoF(配列番号64)およびneoR(配列番号65)で確認した。再構成されたヒト生殖系列Vκ3−20Jκ1軽鎖を発現するキメラマウスを生成するための改変ES細胞を形成するために、マウスES細胞をエレクトロポレーションするために、次にターゲッティングBAC DNAを用いた。
【0326】
内因性κ軽鎖遺伝子座に挿入された操作されたVκ3−20Jκ1軽鎖領域に特異的なプローブを用いるTaqman
TMスクリーニングおよび核型分析によって、陽性のES細胞クローンを確認した。簡潔には、ネオマイシンマーカー遺伝子の中で結合するプローブneoP(配列番号66)、マウスVκ3−7リーダー配列の中で結合するプローブULC−m1P(配列番号67)、およびヒトVκ3−20Jκ1オープンリーディングフレーム中で結合するプローブ1635h2P(AAAGAGCCAC CCTCTCCTGC AGGG;配列番号72)。雌性マウスに移植するために、陽性のES細胞クローンを次に用いた。ヒト生殖系列Vκ3−20Jκ1軽鎖領域を発現する同腹仔。
【0327】
あるいは、ヒト生殖系列Vκ3−20Jκ1軽鎖領域を有するES細胞は、ターゲッティング構築物によって導入されたFRTedネオマイシンカセットを除去するために、FLPを発現する構築物でトランスフェクトされてもよい。任意選択で、ネオマイシンカセットは、FLPリコンビナーゼを発現するマウスを繁殖させることによって除去されてもよい(例えば、US6,774,279)。任意選択で、ネオマイシンカセットは、マウスで保持される。
【0328】
再構成されたヒト生殖系列VpreBJl5ターゲッティングベクター(
図21)
【0329】
同じようにして、再構成されたヒト生殖系列VpreBJl5領域を発現する操作軽鎖遺伝子座を、5’から3’にかけて、マウスBACクローン302g12から得られた内因性マウスκ軽鎖遺伝子座の5’側配列を含む5’相同性アーム、FRTedネオマイシン耐性遺伝子、ヒトVκ3−15プロモーターを含むゲノム配列、マウスVκ3−7可変遺伝子セグメントのリーダー配列、マウスVκ3−7可変遺伝子セグメントのイントロン配列、再構成されたヒト生殖系列VpreBJλ5領域のオープンリーディングフレーム、ヒトJκ−Cκイントロンの一部を含むゲノム配列、ならびにマウスBACクローン254m04から得られた内因性マウスJκ5遺伝子セグメントの3’側配列を含む3’相同性アームを含むターゲッティング構築物を用いて作製した(
図21、中央)。操作されたヒトVpreBJl5遺伝子座の配列を、配列番号73に示す。
【0330】
再構成されたヒト生殖系列VpreBJλ5領域軽鎖領域中の配列に位置するプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、BAC DNAへの再構成されたヒト生殖系列VpreBJλ5領域のターゲッティング挿入を確認した。簡潔には、マウスVκ3−7リーダー配列の3’側イントロン配列は、プライマーULC−m1F(配列番号60)およびULC−m1R(配列番号61)で確認した。再構成されたヒト生殖系列VpreBJλ5領域のオープンリーディングフレームは、プライマー1616−h1F(TGTCCTCGGC CCTTGGA;配列番号74)および1616−h1R(CCGATGTCAT GGTCGTTCCT;配列番号75)で確認した。ネオマイシンカセットは、プライマーneoF(配列番号64)およびneoR(配列番号65)で確認した。再構成されたヒト生殖系列VpreBJλ5軽鎖を発現するキメラマウスを生成するための改変ES細胞を形成するために、マウスES細胞をエレクトロポレーションするために、次にターゲッティングBAC DNAを用いた。
【0331】
内因性κ軽鎖遺伝子座に挿入された操作されたVpreBJλ5軽鎖領域に特異的なプローブを用いるTAQMAN
TMスクリーニングおよび核型分析によって、陽性のES細胞クローンを確認する。簡潔には、ネオマイシンマーカー遺伝子の中で結合するプローブneoP(配列番号66)、マウスIgVκ3−7リーダー配列の中で結合するプローブULC−m1P(配列番号67)、およびヒトVpreBJλ5オープンリーディングフレーム中で結合するプローブ1616h1P(ACAATCCGCC TCACCTGCAC CCT;配列番号76)。生殖系列軽鎖領域を発現する同腹仔を生ませるために、雌性マウスに移植するために、次に陽性のES細胞クローンを用いる。
【0332】
あるいは、再構成されたヒト生殖系列VpreBJl5軽鎖領域を有するES細胞は、ターゲッティング構築物によって導入されたFRTedネオマイシンカセットを除去するために、FLPを発現する構築物でトランスフェクトされる。任意選択で、ネオマイシンカセットは、FLPリコンビナーゼを発現するマウスを繁殖させることによって除去される(例えば、US6,774,279)。任意選択で、ネオマイシンカセットは、マウスで保持される。
【0333】
実施例XII
単一の再構成されたヒト軽鎖を発現するマウスの生成
【0334】
上記のターゲッティングES細胞をドナーES細胞として用い、VELOCIMOUSE(登録商標)法によって8細胞期マウス胚に導入した(例えば、米国特許第7,294,754号およびPoueymirouら(2007年)F0 generation mice that are essentially fully derived from the donor gene−targeted ES cells allowing immediate phenotypic analyses Nature Biotech.25巻(1号):91〜99頁を参照)。特有な再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域の存在を検出する対立遺伝子アッセイ(Valenzuelaら、上記)の改変型を用いる遺伝子タイピングによって、操作されたヒト生殖系列Vκ1−39Jκ5軽鎖領域、Vκ3−20Jκ1軽鎖領域またはVpreBJλ5軽鎖領域を独立して有するVELOCIMICE(登録商標)を同定する。
【0335】
再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域の発現を特徴付けするために、仔を遺伝子タイピングし、特有な再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域についてヘテロ接合またはホモ接合である仔を選択する。
【0336】
フローサイトメトリー。
【0337】
共通軽鎖マウスの正常抗体レパートリーでの再構成されたヒト軽鎖領域の発現は、共通軽鎖マウスの脾細胞および末梢血での免疫グロブリンκおよびλの発現の分析によって検証した。野生型(n=5)、Vκ1−39Jκ5共通軽鎖ヘテロ接合体(n=3)、Vκ1−39Jκ5共通軽鎖ホモ接合体(n=3)、Vκ3−20Jκ1共通軽鎖ヘテロ接合体(n=2)、およびVκ3−20Jκ1共通軽鎖ホモ接合体(n=2)マウスの収集された脾臓および末梢血からの細胞懸濁液を標準の方法によって作製し、蛍光標識抗体(BD Pharmigen)を用いてCD19
+、Igl
+およびIgκ
+で染色した。
【0338】
簡潔には、抗マウスCD16/CD32(クローン2.4G2、BD Pharmigen)と共に1×10
6個の細胞を氷上で10分間インキュベートし、続いて氷上で30分間に以下の抗体カクテルで標識した:APCコンジュゲート抗マウスCD19(クローン1D3、BD Pharmigen)、PerCP−Cy5.5コンジュゲート抗マウスCD3(クローン17A2、BioLegend)、FITCコンジュゲート抗マウスIgκ(クローン187.1、BD Pharmigen)、PEコンジュゲート抗マウスIgλ(クローンRML−42、BioLegend)。染色の後、細胞を洗浄し、2%ホルムアルデヒドで固定した。LSRIIフローサイトメーターでデータ取得を実施し、FlowJo
TMで分析した。ゲーティング:総B細胞(CD19
+CD3
−)、Igκ
+B細胞(Igκ
+Igl
−CD19
+CD3
−)、Igl
+B細胞(Igκ
−Igl
+CD19
+CD3
−)。血液および脾細胞試料から集めたデータは、類似した結果を示した。表12は、Igl
+、Igκ
+またはIgl
+Igκ
+である各群からの1匹の代表的なマウスの末梢血からの陽性CD19
+B細胞百分率を示す。野生型(WT)、およびVκ1−39Jκ5またはVκ3−20Jκ1共通軽鎖についてホモ接合のマウスからの末梢血中のCD19
+B細胞の百分率は、
図22に示す。
【0339】
【表12】
【0340】
共通軽鎖発現。
【0341】
定量的PCRアッセイ(例えばTAQMAN
TM)を用いて、ヘテロ接合およびホモ接合のマウスで、各共通軽鎖(Vκ1−39Jκ5およびVκ3−20Jκ1)の発現を分析した。
【0342】
簡潔には、製造業者の仕様に従ってマウスCD19ミクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて、野生型、対応するヒト重鎖およびκ軽鎖可変領域遺伝子座によるマウス重鎖およびκ軽鎖可変領域遺伝子座の置換についてホモ接合のマウス(Hκ)、ならびに各再構成されたヒト軽鎖領域についてホモ接合およびヘテロ接合のマウス(Vκ1−39Jκ5またはVκ3−20Jκ1)の脾臓からCD19
+B細胞を精製した。製造業者の仕様に従ってRNeasy
TM Miniキット(Qiagen)を用いてCD19
+B細胞から全RNAを精製し、RNアーゼを含まないDNaseオンカラム処理(Qiagen)を用いてゲノムRNAを除去した。First Stand cDNA Synthesisキット(Invitrogen)を用いて200ngのmRNAを逆転写してcDNAにし、生じたcDNAをTaqman
TM Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)で増幅した。(1)両共通軽鎖についてのVκ−Jκ接合部、(2)Vκ遺伝子単独(すなわちVκ1−39およびVκ3−20)、および(3)マウスCκ領域にわたるプライマーおよびTaqman
TM MGBプローブを用いるABI 7900 Sequence Detection System(Applied Biosystems)を用いて、全ての反応を実施した。表13は、このアッセイのために使用されたプライマーおよびプローブの配列を示す。相対的発現は、マウスCκ領域の発現に対して標準化した。結果を、
図23A、23Bおよび23Cに示す。
【0343】
【表13】
【0344】
抗原特異的共通軽鎖抗体。
【0345】
内因性マウスκ軽鎖遺伝子座にVκ1−39Jκ5またはVκ3−20Jκ1共通軽鎖のいずれかを有する共通軽鎖マウスをβガラクトシダーゼで免疫して、抗体力価を測定した。
【0346】
簡潔には、製造業者の指示に従って、βガラクトシダーゼ(Sigma)をTITERMAX
TMアジュバント(Sigma)中で乳化した。野生型(n=7)、Vκ1−39Jκ5共通軽鎖ホモ接合体(n=2)およびVκ3−20Jκ1共通軽鎖ホモ接合体(n=5)を、100μgのβガラクトシダーゼ/TITERMAX
TMによる皮下注射で免疫した。50μgのβガラクトシダーゼ/TITERMAX
TMによる3週間隔で2回の皮下注射によってマウスを追加免疫した。第2の追加免疫の後、製造業者の指示に従って後眼窩放血を用いて麻酔下マウスから血清分離管(BD Biosciences)に血液を収集した。抗βガラクトシダーゼのIgM抗体またはIgG抗体を測定するために、4℃で一晩、ELISAプレート(Nunc)を1μg/mLのβガラクトシダーゼでコーティングした。過剰な抗原を洗い流した後に、室温で1時間、1%BSAを有するPBSでブロックした。血清の系列希釈物をプレートに加え、室温で1時間インキュベートしてから洗浄した。次に、室温で1時間、プレートをHRPコンジュゲート抗IgM(Southern Biotech)または抗IgG(Southern Biotech)と一緒にインキュベートした。さらなる洗浄の後、プレートをTMB基質(BD Biosciences)で発色させた。反応を1N硫酸で停止させ、Victor X5プレートリーダー(Perkin Elmer)を用いてOD
450を読み取った。GRAPHPAD
TM Prismでデータを分析し、バックグラウンドより2倍高い血清の希釈としてシグナルを計算した。結果を
図24Aおよび24Bに示す。
【0347】
この実施例に示すように、Vκ1−39Jκ5およびVκ3−20Jκ1共通軽鎖マウスの脾臓および末梢の両方のコンパートメントでのκ/λ B細胞の比は、野生型に近いパターンを示した(表12および
図22)。しかし、VpreBJλ5共通軽鎖マウスはより少ない末梢B細胞を示した(その約1〜2%が操作されたヒト軽鎖領域を発現する(データは示さず))。内因性κ軽鎖遺伝子座からのVκ1−39Jκ5およびVκ3−20Jκ1の再構成されたヒト軽鎖領域の発現レベルは、ヒトVκおよびJκ遺伝子セグメントによるマウスVκおよびJκ遺伝子セグメントの完全な置換を有する内因性κ軽鎖遺伝子座と比較して上昇した(
図23A、23Bおよび23C)。VpreBJλ5の再構成されたヒト軽鎖領域の発現レベルは、ヘテロ接合マウスおよびホモ接合マウスの両方で内因性κ軽鎖遺伝子座からの類似した高い発現を示した(データは示さず)。このことは、マウスのλ、κまたは両方の内因性軽鎖遺伝子座との直接的競合で、単一の再構成されたヒトV
L/J
L配列が、内因性κ軽鎖遺伝子座から野生型に勝るレベルの発現を生じさせ、正常な脾臓および血液のB細胞頻度をもたらすことができることを示す。さらに、ヒトVκ1−39Jκ5またはヒトVκ3−20Jκ1配列のいずれかを有する操作されたκ軽鎖遺伝子座の存在は、マウスによってよく許容された。そしてこれは、免疫応答の体液性構成要素の軽鎖レパートリーのかなりの部分を占めることによって、野生型のように機能するようである(
図24Aおよび24B)。
【0348】
実施例XIII
単一の再構成されたヒト生殖系列軽鎖を発現するマウスの繁殖
【0349】
この実施例は、複数の遺伝子改変免疫グロブリン遺伝子座を有する複数の遺伝子改変マウス系統を作製するために、本明細書に記載される共通軽鎖マウスのいずれか1つと繁殖させることができる他のいくつかの遺伝子改変マウス系統を記載する。
【0350】
内因性Igλノックアウト(KO)。
【0351】
操作された軽鎖遺伝子座の使用を最適化するために、再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域の1つを有するマウスを、内因性λ軽鎖遺伝子座に欠失を含む別のマウスと繁殖させる。この様式において、得られる子孫は、それらの唯一の軽鎖として、実施例11に記載される再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域を発現する。繁殖は、当技術分野で認められる標準技術によって、あるいは商業的な繁殖家(例えば、Jackson Laboratory)によって実施される。操作された軽鎖遺伝子座、および内因性λ軽鎖遺伝子座の欠失を有するマウス系統は、特有な軽鎖領域の存在および内因性マウスλ軽鎖の非存在についてスクリーニングされる。
【0352】
ヒト化内因性重鎖遺伝子座。
【0353】
操作されたヒト生殖系列軽鎖遺伝子座を有するマウスは、ヒト重鎖可変遺伝子の遺伝子座による内因性マウス重鎖可変遺伝子の遺伝子座の置換を含むマウスと繁殖させられる(US6,596,541を参照;VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウス、Regeneron Pharmaceuticals,Inc.)。VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスは、マウスが抗原刺激に応じてヒト重鎖可変領域およびマウス重鎖定常領域を含む抗体を生成するように、内因性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結されたヒト重鎖可変領域を含むゲノムを含む。抗体の重鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結させる。DNAは次に、抗体の完全なヒトの重鎖を発現することが可能な細胞で発現される。
【0354】
ヒトVH遺伝子座による内因性マウスV
H遺伝子座の置換、および内因性κ軽鎖遺伝子座に単一の再構成されたヒト生殖系列V
L領域を有するマウスが得られる。目的の抗原による免疫に際して、単一のヒト軽鎖(ヒトV
LおよびマウスC
L)と体細胞変異重鎖(ヒトV
HおよびマウスC
H)を含むリバースキメラ抗体が得られる。抗体を発現するB細胞のV
HおよびV
Lヌクレオチド配列を同定し、完全にヒトの抗体を、適する発現系でV
HおよびV
Lヌクレオチド配列をヒトC
HおよびC
Lヌクレオチド配列と融合させることによって作製する。
【0355】
実施例XIV
ヒト重鎖および再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域を発現するマウスからの抗体の生成
【0356】
操作されたヒト軽鎖領域を含むマウスを、他の内因性Ig遺伝子座(実施例12に記載の)の改変および欠失を含む様々な所望の系統へ繁殖させた後、選択されたマウスを目的の抗原で免疫することができる。
【0357】
一般に、単一の再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域の1つを含むVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスは抗原でチャレンジされ、リンパ細胞(B細胞など)が動物の血清から収集される。不死のハイブリドーマ細胞系を調製するためにリンパ細胞を骨髄腫細胞系と融合させ、そのようなハイブリドーマ細胞系は、ヒト可変重鎖および再構成されたヒト生殖系列軽鎖を含む抗体(これは、免疫のために用いる抗原に特異的である)を生成するハイブリドーマ細胞系を同定するためにスクリーニングおよび選択される。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプ定常領域に連結させる。内因性マウス配列の存在および内因性遺伝子座に存在するあらゆるさらなるシス活性エレメントのために、各抗体の単一の軽鎖は体細胞変異することがある。これは、単一の軽鎖および多様な重鎖配列を含む抗原特異的レパートリーにさらなる多様性を加える。生じるクローニングされた抗体配列は、CHO細胞などの細胞でその後発現される。あるいは、抗原特異的キメラ抗体または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAは、抗原特異的リンパ球から直接的に同定される。
【0358】
最初に、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体が単離される。上記のように、抗体は、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特徴付けされ、選択される。体細胞変異したヒト重鎖および本発明の再構成されたヒト生殖系列軽鎖領域に由来する単一の軽鎖を含む完全なヒトの抗体を生成するために、マウス定常領域は所望のヒト定常領域で置換される。適するヒト定常領域には、例えば野生型または改変型のIgG1またはIgG4が含まれる。
【0359】
ヒトV
H、D
HおよびJ
H遺伝子セグメントによる内因性マウス重鎖遺伝子座の置換、ならびに操作された生殖系列Vκ1−39Jκ5ヒト軽鎖領域または操作された生殖系列Vκ3−20Jκ1ヒト軽鎖領域(上記)による内因性マウスκ軽鎖遺伝子座の置換を含むVELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスの別々のコホートを、ヒト細胞表面レセプタータンパク質(抗原E)で免疫した。抗原Eは、3〜4日おきの6回の連続的な注射でマウスの後ろの足蹠に直接投与する。注射の前に、2から3マイクログラムの抗原Eを10μgのCpGオリゴヌクレオチド(カタログ♯tlrl−modn−ODN1826オリゴヌクレオチド;InVivogen、SanDiego、CA)および25μgのAdju−Phos(リン酸アルミニウムゲルアジュバント、カタログ♯H−71639−250;Brenntag Biosector、Frederikssund、Denmark)と混合する。屠殺の3〜5日前に与えられる最終抗原リコールの前に、合計6回の注射を与える。4回目および6回目の注射の後に血液を収集し、抗体免疫応答を標準の抗原特異的イムノアッセイによってモニタリングする。
【0360】
所望の免疫応答が達成されるとき、脾細胞を収集し、それらの生存能力を保存し、ハイブリドーマ細胞系を形成するためにマウス骨髄腫細胞と融合させる。抗原E特異的な共通軽鎖抗体を生成する細胞系を同定するために、ハイブリドーマ細胞系をスクリーニングし、選択する。この技術を用いて、いくつかの抗抗原E特異的な共通軽鎖抗体(すなわち、ヒト重鎖可変ドメイン、同じヒト軽鎖可変ドメインおよびマウス定常ドメインを有する抗体)が得られる。
【0361】
あるいは、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれるU.S.2007/0280945A1に記載されるように、抗抗原E共通軽鎖抗体は、骨髄腫細胞との融合なしに抗原陽性B細胞から直接的に単離される。この方法を用いて、いくつかの完全なヒトの抗抗原E共通軽鎖抗体(すなわち、ヒト重鎖可変ドメイン、操作されたヒトVκ1−39Jκ5軽鎖か操作されたヒトVκ3−20Jκ1軽鎖領域のいずれか、およびヒト定常ドメインを有する抗体)が得られた。
【0362】
この実施例の方法に従って生成された例示的な抗抗原E共通軽鎖抗体の生物学的特性は、以下に詳細に記載される。
【0363】
実施例XV
抗原特異的共通軽鎖抗体での重鎖遺伝子セグメントの使用
【0364】
生成されたヒト抗抗原E共通軽鎖抗体の構造を分析するために、重鎖抗体可変領域をコードする核酸をクローニングし、配列決定をした。抗体の核酸配列および予測されたアミノ酸配列から、操作されたヒトVκ1−39Jκ5軽鎖か操作されたヒトVκ3−20Jκ1軽鎖領域のいずれかを含む免疫VELOCIMMUNE(登録商標)ヒト化マウスから得られた、選択された共通軽鎖抗体の重鎖可変領域(HCVR)について、遺伝子使用を特定した。結果を表14および15に示す。それらは、ヒトVκ1−39またはヒトVκ3−20に由来する軽鎖だけから軽鎖を発現するマウスを使用するとき、様々な再構成のために、本発明によるマウスが様々なヒト重鎖遺伝子セグメントから抗原特異的共通軽鎖抗体を生成することを示す。2、3、4および5ファミリーのヒトV
H遺伝子セグメントは、様々なヒトD
HセグメントおよびヒトJ
Hセグメントと再構成されて、抗原特異的抗体を与えた。
【0365】
【表14-1】
【0366】
【表14-2】
【0367】
【表15】
【0368】
実施例XVI
Luminex
TMアッセイによる抗原特異的共通軽鎖抗体のブロック能力の判定
ビーズベースのアッセイで、抗原Eに対する98個のヒト共通軽鎖抗体を、抗原Eへの抗原Eの天然のリガンド(リガンドY)の結合をブロックするそれらの能力について試験した。
【0369】
抗原Eの細胞外ドメイン(ECD)を2つのmycエピトープタグおよび6×ヒスチジンタグとコンジュゲートさせ(抗原E−mmH)、MES緩衝液中の20μg/mLの濃度でカルボキシル化マイクロスフェアにアミンカップリングさせた。混合液を室温で2時間インキュベートし、続いて1MトリスpH8.0でビーズ非活性化を行い、続いて0.05%(v/v)のTween−20を含むPBSで洗浄した。次にビーズを2%(w/v)BSA(Sigma−Aldrich Corp.、St.Louis、MO)を含むPBS(Irvine Scientific、Santa Ana、CA)でブロックした。96穴フィルタープレート中で、抗原E特異的共通軽鎖抗体を含む上清を緩衝液で1:15に希釈した。抗体上清と同じ媒質成分による模擬上清を含む陰性対照を調製した。抗原E標識ビーズを上清に加え、4℃で一晩インキュベートした。ビオチン化リガンドYタンパク質を0.06nMの最終濃度まで加え、室温で2時間インキュベートした。抗原E−myc−myc−6His標識ビーズに結合したビオチン化リガンドYの検出を、ストレプトアビジンとコンジュゲートされたR−フィコエリトリン(Moss Inc、Pasadena、MD)で判定し、続いてLuminex
TMフローサイトメトリーベースのアナライザーで測定した。リガンドYのない試料のバックグラウンド平均蛍光強度(MFI)を、全ての試料から引いた。ブロック百分率は、各試料のバックグラウンドを引いたMFIを調整された陰性対照値で割り、100を掛け、生じた値を100から引くことによって計算された。
【0370】
同様の実験において、抗原Eに対する同じ98個のヒト共通軽鎖抗体を、リガンドY標識ビーズへの抗原Eの結合をブロックするそれらの能力について試験した。
【0371】
簡潔には、MES緩衝液に希釈した20μg/mLの濃度で、リガンドYをカルボキシル化マイクロスフェアにアミンカップリングさせた。混合液を室温で2時間インキュベートし、続いて1MトリスpH8でビーズの非活性化を行い、続いて0.05%(v/v)のTween−20を含むPBSで洗浄した。次にビーズを2%(w/v)BSA(Sigma−Aldrich Corp.、St.Louis、MO)を含むPBS(Irvine Scientific、Santa Ana、CA)でブロックした。96穴フィルタープレート中で、抗原E特異的共通軽鎖抗体を含む上清を緩衝液で1:15に希釈した。抗体上清と同じ媒質成分による模擬上清を含む陰性対照を調製した。ビオチン化抗原E−mmHを0.42nMの最終濃度まで加え、4℃で一晩インキュベートした。リガンドY標識ビーズを次に抗体/抗原E混合物に加え、室温で2時間インキュベートした。リガンドYビーズに結合したビオチン化抗原E−mmHの検出は、ストレプトアビジンとコンジュゲートされたR−フィコエリトリン(Moss Inc、Pasadena、MD)で判定し、続いてLuminex
TMフローサイトメトリーベースのアナライザーで測定した。抗原Eのない試料のバックグラウンド平均蛍光強度(MFI)を、全ての試料から引いた。ブロック百分率は、各試料のバックグラウンドを引いたMFIを調整された陰性対照値で割り、100を掛け、生じた値を100から引くことによって計算された。
【0372】
表16および17は、両方のLuminex
TMアッセイで試験された全98個の抗抗原E共通軽鎖抗体のブロック百分率を示す。ND:現在の実験条件下で判定されない。
【0373】
【表16-1】
【0374】
【表16-2】
【0375】
【表16-3】
【0376】
【表17-1】
【0377】
上記の第一のLuminex
TM実験では、Vκ1−39Jκ5操作軽鎖を含む80個の共通軽鎖抗体を、抗原E標識ビーズへのリガンドY結合をブロックするそれらの能力について試験した。これらの80個の共通軽鎖抗体のうち、68個は>50%のブロックを示し、12個は<50%のブロック(6個は25〜50%のブロック、6個は<25%のブロック)を示した。Vκ3−20Jκ1操作軽鎖を含む18個の共通軽鎖抗体については、12個は抗原E標識ビーズへのリガンドY結合の>50%のブロックを示し、6個は<50%のブロック(3個は25〜50%のブロック、3個は<25%のブロック)を示した。
【0378】
上記の第二のLuminex
TM実験では、Vκ1−39Jκ5操作軽鎖を含む同じ80個の共通軽鎖抗体を、リガンドY標識ビーズへの抗原Eの結合をブロックするそれらの能力について試験した。これらの80個の共通軽鎖抗体のうち、36個は>50%のブロックを示し、44個は<50%のブロック(27個は25〜50%のブロック、17個は<25%のブロック)を示した。Vκ3−20Jκ1操作軽鎖を含む18個の共通軽鎖抗体については、1個はリガンドY標識ビーズへの抗原Eの結合の>50%のブロックを示し、17個は<50%のブロック(5個は25〜50%のブロック、12個は<25%のブロック)を示した。
【0379】
表16および17のデータは、表14および15に記載される再構成が、その関連受容体抗原EへのリガンドYの結合を様々な程度の効力でブロックした抗抗原E特異的共通軽鎖抗体を生成したことを証明し、このことは、抗原Eに関して重複するおよび重複しないエピトープ特異性を有する抗体を含む表14および15の抗抗原E共通軽鎖抗体と矛盾しない。
【0380】
実施例XVII
ELISAによる抗原特異的共通軽鎖抗体のブロック能力の判定
【0381】
ELISAアッセイにおいて、抗原Eに対するヒト共通軽鎖抗体を、リガンドYコーティング表面への抗原Eの結合をブロックするそれらの能力について試験した。
【0382】
リガンドYをPBSに希釈した2μg/mLの濃度で96穴プレートにコーティングし、一晩インキュベートし、続いて0.05%Tween−20を含むPBSで4回洗浄した。次にプレートを0.5%(w/v)BSA(Sigma−Aldrich Corp.、St.Louis、MO)を含むPBS(Irvine Scientific、Santa Ana、CA)によって室温で1時間ブロックした。別々のプレート中で、抗抗原E共通軽鎖抗体を含む上清を緩衝液で1:10に希釈した。抗体の同じ成分を有する模擬上清を、陰性対照として用いた。抗原E−mmH(上記)を0.150nMの最終濃度まで加え、室温で1時間インキュベートした。次に、リガンドYを含むプレートに抗体/抗原E−mmH混合物を加え、室温で1時間インキュベートした。リガンドYに結合した抗原E−mmHの検出は、抗ペンタ−His抗体とコンジュゲートさせた西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Qiagen、Valencia、CA)で判定し、硫酸によって中和されるテトラメチルベンジジン(TMB)基質(BD Biosciences、San Jose、CA)を用いる標準の比色応答によって発色させた(develop)。吸光度をOD450で0.1秒間読み取った。抗原Eのない試料のバックグラウンド吸光度を、全ての試料から引いた。ブロック百分率は、各試料のバックグラウンドを引いたMFIを調整された陰性対照値で割り、100を掛け、生じた値を100から引くことによって計算された。
【0383】
表18および19は、ELISAアッセイで試験された全98個の抗抗原E共通軽鎖抗体のブロック百分率を示す。ND:現在の実験条件下で判定されない。
【0384】
【表18-1】
【0385】
【表18-2】
【0386】
【表19】
【0387】
この実施例に記載されているように、リガンドYコーティング表面への抗原Eの結合をブロックするそれらの能力を試験された、Vκ1−39Jκ5操作軽鎖を含む80個の共通軽鎖抗体のうち、22個は>50%のブロックを示し、58個は<50%のブロック(20個は25〜50%のブロック、38個は<25%のブロック)を示した。Vκ3−20Jκ1操作軽鎖を含む18個の共通軽鎖抗体については、1個はリガンドYコーティング表面への抗原Eの結合の>50%のブロックを示し、17個は<50%のブロック(5個は25〜50%のブロック、12個は<25%のブロック)を示した。
【0388】
これらの結果はまた、抗原Eに関して重複するおよび重複しないエピトープ特異性を有する抗体を含む抗原E特異的共通軽鎖抗体プールと矛盾しない。
【0389】
実施例XVIII
抗原特異的共通軽鎖抗体についてのBIACORE
TM親和性判定
【0390】
BIACORE
TMT100機器(GE Healthcare)を用いるSPR(表面プラズモン共鳴)によって、選択された抗体上清の平衡解離定数(K
D)を判定した。全てのデータは、ランニング緩衝液および試料緩衝液の両方としてHBS−EP(10mM Hepes、150mM NaCl、0.3mM EDTA、0.05%界面活性剤P20、pH7.4)を用いて25℃で得られた。標準のアミンカップリング化学を用いて高密度の抗ヒトFc抗体で事前に誘導体化させたCM5センサーチップ表面で、抗体を粗製上清試料から捕捉した。捕捉工程中、合計3分間、上清を3μL/分の流速で抗ヒトFc表面全域に注入した。捕捉工程の後に、35μL/分の流速で2分間の、ランニング緩衝液または100nMの濃度の分析物の注入が続いた。捕捉された抗体からの抗原の解離を、6分間モニタリングした。捕捉された抗体は、10mMグリシン、pH1.5の短時間注入によって除去した。緩衝液注入からのセンサーグラムを分析物センサーグラムから引き、それによって捕捉表面からの抗体の解離に起因するアーチファクトを除くことによって、全てのセンサーグラムをダブルリファレンス(double reference)とした。BIAcore
TM T100評価ソフトウェアv2.1を用いて、各抗体の結合データを、マストランスポートを有する1:1結合モデルにあてはめた。結果を表20および21に示す。
【0391】
【表20-1】
【0392】
【表20-2】
【0393】
【表21】
【0394】
表14および15に示す再構成を含む共通軽鎖抗体の結合親和性は様々であり、ほとんど全てはナノモル濃度範囲のK
Dを示す。親和性データは、高親和性で、クローン選択され、体細胞変異している表14および15に記載の再構成された可変ドメインの組合せ会合から生じる共通軽鎖抗体と矛盾しない。前に示すデータと合わせると、表14および15に記載される共通軽鎖抗体は、抗原Eの上の1つまたは複数のエピトープに特異性を示す、多様な高親和性抗体の集合を含む。
【0395】
実施例XIX
Luminex
TMアッセイによる抗原特異的共通軽鎖抗体の結合特異性の判定
選択された抗抗原E共通軽鎖抗体を、抗原EのECDおよび抗原E ECDバリアントに結合するそれらの能力について試験した(例えば、そのアミノ酸残基の約10%がヒトタンパク質と異なる、カニクイザルオルソログ(Mf抗原E);ECDのC末端から最後の10アミノ酸を欠く抗原Eの欠失変異体(抗原E−ΔCT);ならびにリガンドYとの相互作用が疑われる位置にアラニン置換を含む2つの変異体(抗原E−Ala1および抗原E−Ala2))。抗原Eタンパク質はCHO細胞で生成され、各々はmyc−myc−His C末端タグを含んでいた。
【0396】
結合試験のために、抗mycモノクローナル抗体(MAb 9E10、ハイブリドーマ細胞系CRL−1729
TM;ATCC、Manassas、VA)で共有結合コーティングされた1×10
6個のマイクロスフェア(Luminex
TM)ビーズと一緒での室温で2時間のインキュベーションによって、1mLの培養培地からの抗原E ECDタンパク質またはバリアントタンパク質(上記)を捕捉した。次に、ビーズを使用前にPBSで洗浄した。抗抗原E共通軽鎖抗体を含む上清を緩衝液で1:4に希釈し、96穴フィルタープレートに加えた。抗体のない模擬上清を、陰性対照として用いた。捕捉された抗原Eタンパク質を含むビーズを次に抗体試料に加え(ウェルにつき3000個のビーズ)、4℃で一晩インキュベートした。次の日、試料ビーズを洗浄し、結合した共通軽鎖抗体をR−フィコエリトリンとコンジュゲートさせた抗ヒトIgG抗体で検出した。ビーズの蛍光強度(約100個のビーズを各抗原Eタンパク質への各抗体試料の結合について計数した)は、Luminex
TMフローサイトメトリーベースのアナライザーで測定し、ビーズ/抗体相互作用につき少なくとも100個の計数されたビーズの中央蛍光強度(MFI)を記録した。結果を表22および23に示す。
【0397】
【表22-1】
【0398】
【表22-2】
【0399】
【表22-3】
【0400】
【表23】
【0401】
抗抗原E共通軽鎖抗体上清は、抗原E−ECDに連結されたビーズへの高特異的結合を示した。これらのビーズについては、陰性対照模擬上清は、抗原E−ECDビーズ試料と組み合わせたときは無視できるシグナル(<10MFI)をもたらしたが、抗抗原E共通軽鎖抗体を含む上清は、強い結合シグナルを示した(98個の抗体上清については2627の平均MFI;91/98の抗体試料についてはMFI>500)。
【0402】
抗原EのECDの上の異なるエピトープを同定する選択された抗抗原E共通軽鎖抗体の能力の測定手段として、バリアントに対する抗体の相対的結合を判定した。天然の抗原E−ECD結合試験について上で記載したように、全4つの抗原Eバリアントを抗myc Luminex
TMビーズに捕捉し、相対的な結合比(MFI
バリアント/MFI
抗原E−ECD)を判定した。表21および22に示す98個の試験された共通軽鎖抗体上清について、平均比(MFI
バリアント/MFI
抗原E−ECD)は各バリアントで異なり、ビーズ上でのタンパク質の様々な捕捉量を反映しているようである(抗原E−ΔCT、抗原E−Ala1、抗原E−Ala2およびMf抗原Eについてそれぞれ0.61、2.9、2.0および1.0の平均比)。各タンパク質バリアントについて、98個の試験された共通軽鎖抗体のサブセットの結合は、大きく低減された結合を示し、このことは、所与のバリアントを特徴付けた変異への感度を示した。例えば、共通軽鎖抗体試料の19個は、<8%のMFI
バリアント/MFI
抗原E−ECDでMf抗原Eに結合した。この群の多くは高いか適度に高い親和性の抗体(5個はK
D<5nM、15個はK
D<50nM)を含むので、この群の低いシグナルは、低い親和性からではなく、天然の抗原E−ECDと所与のバリアントとの間の配列(エピトープ)の差への感度から生じるようである。
【0403】
表14および15に記載される共通軽鎖抗体が、抗原Eの上の複数のエピトープを特異的に認識する抗原E特異的共通軽鎖抗体の多様な群を表すことを、これらのデータは証明する。
(項目1) マウスであって、該マウスの生殖系列において:
(a)重鎖定常領域遺伝子に作動可能に連結される少なくとも1つの再構成されていないヒトV、少なくとも1つの再構成されていないヒトD、および少なくとも1つの再構成されていないヒトJセグメントを含むヒト化免疫グロブリン重鎖可変遺伝子座;
(b)軽鎖定常領域遺伝子に作動可能に連結される1つ以下または2つ以下の再構成されたヒト軽鎖V/J配列を含むヒト化免疫グロブリン軽鎖可変遺伝子座;および
(c)マウスADAM6タンパク質をコードする異所性核酸配列またはそのオルソログもしくはホモログもしくは機能的断片
を含むマウス。
(項目2) 前記マウスADAM6タンパク質をコードする核酸配列またはそのオルソログもしくはホモログもしくは機能的断片が前記免疫グロブリン重鎖可変遺伝子座以外の遺伝子座に存在する、項目1に記載のマウス。
(項目3) 前記重鎖定常領域遺伝子がマウス遺伝子である、項目1に記載のマウス。
(項目4) 前記軽鎖定常領域遺伝子がマウス遺伝子である、項目1に記載のマウス。
(項目5) ヒト化重鎖免疫グロブリン可変遺伝子座およびヒト化軽鎖免疫グロブリン可変遺伝子座を含むマウスであって、該マウスが単一の軽鎖を発現し、該マウスが雄マウスにおいて機能するADAM6遺伝子をコードする異所性核酸配列を含む、マウス。
(項目6) 前記ヒト化重鎖免疫グロブリン遺伝子座が内因性マウス重鎖定常領域遺伝子に作動可能に連結されている、項目5に記載のマウス。
(項目7) 前記単一の軽鎖が、軽鎖定常遺伝子に作動可能に連結される1つ以下の軽鎖V遺伝子セグメントおよび軽鎖J遺伝子セグメントをコードする免疫グロブリン軽鎖可変遺伝子遺伝子座からコードされる、項目5に記載のマウス。
(項目8) 前記単一の軽鎖が、前記マウスの前記生殖系列における免疫グロブリン軽鎖可変遺伝子遺伝子座に由来し、該遺伝子座が軽鎖定常遺伝子に作動可能に連結される、該生殖系列中の1つ以下の再構成された軽鎖V/J遺伝子セグメントをコードする、項目5に記載のマウス。
(項目9) 前記異所性核酸配列が雄マウスにおいて機能するマウスADAM6タンパク質をコードするか、マウスADAM6タンパク質の断片をコードする、項目5に記載のマウス。
(項目10) 前記異所性核酸配列が内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子座内ではない位置に存在する、項目5に記載のマウス。
(項目11) 遺伝子改変マウスであって、複数の異なるIgG重鎖を発現し、該複数の異なるIgG重鎖の各々がヒト可変ドメインを含み、前記複数の異なるIgG重鎖の各々が単一のヒト免疫グロブリンV遺伝子セグメントに由来するヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインをコードする軽鎖配列と会合しており、該マウスが雄マウスにおいて機能するADAM6タンパク質をコードする異所性核酸配列を含む、遺伝子改変マウス。
(項目12) 前記マウスが、雄マウスにおいて機能するADAM6タンパク質またはその断片を発現し、該ADAM6タンパク質またはその断片が前記異所性核酸配列から発現される、項目11に記載のマウス。
(項目13) マウス細胞であって、以下:
重鎖定常遺伝子に作動可能に連結されるヒト化重鎖免疫グロブリン可変遺伝子遺伝子座;
軽鎖定常遺伝子に作動可能に連結される1つ以下または2つ以下の軽鎖V遺伝子セグメントを含むヒト化軽鎖免疫グロブリン遺伝子座;および
ADAM6タンパク質またはその断片をコードする異所性核酸配列であって、該ADAM6タンパク質またはその断片が雄マウスにおいて機能する、異所性核酸配列
を含む、マウス細胞。
(項目14) 前記異所性核酸配列がマウスADAM6タンパク質をコードする、項目13に記載のマウス細胞。
(項目15) 前記重鎖定常遺伝子が非ヒト重鎖定常遺伝子である、項目13に記載のマウス。
(項目16) 前記軽鎖定常遺伝子が非ヒト軽鎖定常遺伝子である、項目13に記載のマウス。
(項目17) 前記1つ以下または2つ以下(no more that two)の軽鎖V遺伝子セグメントが再構成されたV/J遺伝子セグメントに存在する、項目13に記載のマウス。
(項目18) ヒト重鎖V遺伝子セグメントに由来する免疫グロブリン重鎖可変ドメインを含むキメラ免疫グロブリン重鎖;ならびに
(a)再構成されたヒトVκ1−39/J配列、
(b)再構成されたヒトVκ3−20/J配列、または
(c)その組み合わせ;
に由来する軽鎖を発現するマウスB細胞であって、
該重鎖可変ドメインが定常領域と融合されており、該軽鎖可変ドメインが定常領域と融合されており、該B細胞が異所性ADAM6核酸配列を含む、マウスB細胞。
(項目19) 前記重鎖可変ドメインと融合される前記定常ドメインがマウス定常領域を含む、項目18に記載のマウスB細胞。
(項目20) 前記軽鎖可変ドメインと融合される前記定常領域がマウス定常領域およびヒト定常領域から選択される、項目18に記載のマウスB細胞。