特許第6886021号(P6886021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886021
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】医用装置を滅菌する方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/08 20060101AFI20210603BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20210603BHJP
   C09K 15/08 20060101ALI20210603BHJP
   A61L 29/12 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A61L29/08
   A61L2/08 100
   C09K15/08
   A61L29/08 100
   A61L29/12
【請求項の数】20
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-529691(P2019-529691)
(86)(22)【出願日】2017年8月9日
(65)【公表番号】特表2019-531843(P2019-531843A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2017070249
(87)【国際公開番号】WO2018029279
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2019年4月3日
(31)【優先権主張番号】16001766.1
(32)【優先日】2016年8月9日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516045573
【氏名又は名称】テレフレックス、ライフ、サイエンシーズ、アンリミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】TELEFLEX LIFE SCIENCES UNLIMITED COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】519046786
【氏名又は名称】デンゼル、マクバーニー
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】デンゼル、マクバーニー
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド、ジョン、ケリー
(72)【発明者】
【氏名】モーガン、ティアニー
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08147769(US,B1)
【文献】 特表2000−508931(JP,A)
【文献】 特表2008−539840(JP,A)
【文献】 特表2002−530158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/00
C09K 15/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能的コーティング剤を備えたすぐに使える医用装置を製造する方法であって、
・少なくともその機能的コーティング剤を備えた医用装置を、その機能的コーティング剤の劣化を防ぐか遅延させる組成物と接触させるステップと、
・前記医用装置および前記組成物を放射線によって滅菌するステップと、を含み、
前記組成物は、没食子酸または没食子酸と脂肪族C1〜C16アルコールとのエステル反応生成物から選択される酸化防止剤と、多価アルコールから選択されるエンハンサ溶液とを備える、方法。
【請求項2】
前記エンハンサ溶液がエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、またはグリセロールから選択され、前記組成物の全重量を基準として、0.1〜49.8重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
機能的コーティング剤を備えたすぐに使える医用装置を製造する方法であって、
・少なくともその機能的コーティング剤を備えた医用装置を、その機能的コーティング剤の劣化を防ぐか遅延させる組成物と接触させるステップと、
・前記医用装置および前記組成物を放射線によって滅菌するステップと、を含み、
前記組成物は、没食子酸または没食子酸と脂肪族C1〜C16アルコールとのエステル反応生成物から選択される酸化防止剤と、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩から選択される化合物とを備える、方法。
【請求項4】
カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩から選択される前記化合物が、前記組成物の全重量を基準として、0.1〜10重量パーセントである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化防止剤が、前記組成物の全重量を基準として、0.001〜5重量パーセントである、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記酸化防止剤が没食子酸プロピルである、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記酸化防止剤が、前記組成物の全重量を基準として、0.001〜1重量パーセントである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、水または油を基剤とした基礎液、または、脂質媒質、またはその組み合わせをさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記組成物の水性溶液が、蒸留水、脱イオン水、逆浸透水、濾水、または食塩水から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水性溶液が、組成物中に、組成物の全重量を基準として、50〜99.9重量パーセントの量で存在する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、安定剤および/または緩衝液を含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記緩衝液のpHが2.0〜7.4である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
放射線滅菌中の放射線のエネルギ線量が、1〜50kGyの範囲内にある、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
放射線滅菌中の放射線のエネルギ線量が、15〜45kGyの範囲内にある、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
放射線滅菌中の放射線のエネルギ線量が、25〜45kGyの範囲内にある、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
以下のステップを含む、請求項1から15のいずれかに記載の方法:
・医用装置を設けること;
・医用装置を少なくとも部分的に機能的コーティング剤で被覆すること;
・機能的コーティング剤の劣化を防止するか遅延させる組成物に医用装置を接触させることによって、医用装置の機能的コーティング剤を活性化させること;
・医用装置および組成物を耐蒸発性の包装容器に包装すること。
【請求項17】
前記医用装置が、カテーテル(1;21)を含む、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記機能的コーティング剤が、親水性コーティング剤である、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記カテーテル(1;21)が、カテーテル・シャフト(2;22)を含み、カテーテル・シャフト(2;22)は少なくともその挿入可能な長さ部に沿って親水性コーティング剤で被覆されており、伸縮式スリーブ(7;27)によって堅固に包囲されており、伸縮式スリーブ(7;27)および/またはカテーテル(1;21)は液密の閉止部が遠位端(5;25)と近位端(6;26)にあるので、前記伸縮式スリーブ(7;27)またはカテーテル・シャフト(2;22)にある任意の液体は、液密の閉止部が破壊されない限り、伸縮式スリーブ(7;27)およびカテーテルに残存する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19に記載の方法における、前記組成物を含む湿潤剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能的コーティング剤を用いた、すぐに使える医用装置を製造する方法に関し、この方法は、少なくともその機能的コーティング剤を備えた医用装置を、その機能的コーティング剤の劣化を防ぐか遅延させる組成物と接触させるステップと、その医用装置および組成物を放射線によって滅菌するステップとを含む。
【0002】
特に、血管、消化器官、および尿路系など、体内に挿入したり体内から除去したりしやすくするために、医用装置を潤滑剤でその外面に被覆することがよく知られている。このような平滑潤滑性はまた、挿入または除去中の組織損傷を最小限に抑えるためにも望ましい。通常、医用装置は親水性コーティング剤を備えていてもよく、この上に潤滑液が塗布されるので、親水性コーティング剤が活性化してその平滑潤滑性が高まる。潤滑液はコーティング剤が乾燥してなくなるのを防止するものであり、それによって、コーティング剤の平滑潤滑性が維持される。潤滑液の例は、水、水と有機溶剤との混合物、体液、および、生理学的な浸透圧を有する食塩水などの食塩の水溶液を含む。
【0003】
医用装置は使用の直前に湿らすことが可能であり、または、潤滑液に保存しておくことも可能である。特に、すぐに使える医用装置を提供することが望ましく、親水性コーティング剤を備えたこの医用装置は、滅菌用包装容器に入れられている。滅菌用包装容器は、コーティング剤を濡らしまままにし、それによって平滑性を保つのに十分な潤滑液を含む。このようなすぐに使える医用装置は、ユーザによっては利便性が高い、というのは、この医用装置は使用前の準備段階が不要なためである。
【0004】
オートクレービングや放射線などの医用装置への適した滅菌技術は、当業者にはよく知られている。滅菌中、反応中間体が生成される可能性があり、これは医用装置の親水性コーティング剤を腐食するおそれがある。さらに、大部分の親水性コーティング剤は、そのコーティング剤が長期間保存され、かつ/またはオートクレービングや放射線を使用した滅菌後では、その保水性と平滑潤滑性とを失う。
【0005】
国際特許公開第WO−A−00/30696号は、親水性コーティング剤を備える医用装置を放射線照射により滅菌する方法を記載している。親水性ポリマーを湿潤液に添加することによって、保水性を増大させることが可能で、摩擦係数を低く保つことができることがわかった。
【0006】
国際特許公開第WO−A−2007/137669号は、以下から選択される化合物の使用を記載している:脂肪族化合物、脂環式化合物、および、放射線、特にγ−放射線または電子線(電子ビーム)放射線などの放射線の照射によって滅菌される親水性コーティング剤を保護するための酸化防止剤。
【0007】
国際特許公開第WO−A−2013/017547号は、湿潤液の使用に関するものであり、この湿潤液は、0から4.9重量パーセント(wt%)の水分量を含み、100度を超える沸点と、500ミリパスカル秒(mPaxs)未満の粘度を有する。
【0008】
国際特許公開第WO−A−2006/037321号は、すぐに使える形態の湿潤した親水性コーティング剤を有する医用装置に関する。湿潤した親水性コーティング剤は、親水性ポリマーを含むコーティング組成物と、水および1つ以上の潤滑剤を含む湿潤剤とを含む。
【0009】
国際特許公開第WO−A−2006/117372号は、放射線を使用した、湿潤した親水性コーティング剤を有する医用装置の滅菌に関する。滅菌前に親水性ポリマーを貯蔵媒体に添加すると、医用装置が水中に保存されるときに高保水性および低摩擦を維持することがわかった。
【0010】
国際特許公開第WO−A−2011/076217号は、親水性コーティング剤を有し、低分子多価アルコールおよび個別の緩衝剤を備える膨潤媒質と接触する間に滅菌されている医用装置と、その一式を滅菌する方法とを開示している。そのpHは、4から7.4の範囲内である。さらに、アスコルビン酸を安定剤として添加してもよいが、それは、基質や、親水性コーティング剤のタイプや、ガンマ線照射量に依存する。
【0011】
国際特許公開第WO−A−2010/003419号は、親水性コーティング剤を有し、親水性ポリマーおよび個別の緩衝剤を有する液体と接触する間に滅菌されている医用装置と、医用装置を滅菌する方法とを開示している。
【0012】
国際特許公開第WO−A−2012/085107号は、湿潤液を含む親水性カテーテルアセンブリに関する。この湿潤液は、好ましくは、滅菌水または食塩水などの水性溶液である。
【0013】
国際特許公開第WO−A−2008/151074号は、放射線滅菌に適する医用装置用の潤滑剤を開示している。
【0014】
国際特許公開第WO−A−00/47494号は、湿潤すると摩擦が低減する被膜面を有する医用装置を含む保管用包装容器に関する。
【0015】
国際特許公開第WO−A−2007/065721号および国際特許公開第WO−A−2007/065722号は、硬化すると親水性コーティング剤になる親水性コーティング剤の組成物を記載している。高分子電解質を親水性コーティング剤の組成物に含め、そこから平滑潤滑性コーティング剤を作成すると、持効性があり乾燥時間が改善された平滑潤滑性コーティング剤を得ることができることがわかった。
【0016】
しかし、上記に引用した先行技術の組成物は極めて特別であり、限られたグループの親水性コーティング剤にのみ使用可能である。さらに、親水性コーティング剤または基礎液に応じて、その組成物にある特別な成分を選択する必要がある。
【0017】
本発明の目的は、機能的コーティング剤を備えたすぐに使える医用装置を製造する方法を提供することであり、この方法によって、先行技術の問題点を克服し、かつ、滅菌中に劣化せず、加水分解安定度を有する機能的コーティング剤を備えた医用装置となるので、湿潤した医用装置の意図する貯蔵寿命中に高品質が得られる。さらに、本方法および本方法で使用される組成物は、無毒性であり、調製し易く、放射線で滅菌可能であり、廉価で費用対効果が高く、様々な機能的コーティング剤に対して有用である。
【0018】
本目的は、カルボキシメチルセルロース(CMC)あるいはその誘導体または塩、および/または没食子酸またはその誘導体から選択される酸化防止剤を備える組成物を使用して達成される。また本目的は、没食子酸または没食子酸と脂肪族C1〜C16アルコールとのエステル反応生成物から選択される酸化防止剤と、多価アルコールから選択されるエンハンサ溶液とを備える組成物を使用して達成される。さらに本目的は、没食子酸または没食子酸と脂肪族C1〜C16アルコールとのエステル反応生成物から選択される酸化防止剤と、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩から選択される化合物とを備える組成物を使用して達成される。
【0019】
本目的は、さらに、カルボキシメチルセルロースあるいはその誘導体または塩、および/または没食子酸またはその誘導体から選択される酸化防止剤を備える組成物を含む湿潤剤の使用によって達成される。また本目的は、没食子酸、没食子酸のエステル誘導体、没食子酸のアミド誘導体、または没食子酸のオキサジアゾール誘導体から選択される酸化防止剤と、エンハンサ溶液とを備える組成物を含む湿潤材の使用によって達成される。さらに本目的は、没食子酸、没食子酸のエステル誘導体、没食子酸のアミド誘導体、または没食子酸のオキサジアゾール誘導体から選択される酸化防止剤と、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩から選択される化合物とを備える組成物を含む湿潤材の使用によって達成される。
【0020】
好ましい実施形態は、従属請求項2から19に記載されている。
【0021】
本発明によるこの方法によれば、異なる親水性コーティング系、ゲル、および材料基質を備えた、様々なすぐに使える医用装置を製造することができる。本発明による組成物のさらなる成分変化によって、溶解性安定度およびコーティング安定度に関連する湿潤剤の性能をさらに向上させることができる。
【0022】
組成物は湿潤剤として使用され、この湿潤剤は、医用装置の機能的コーティング剤を活性化させるので、所望の機能的コーティング剤の低摩擦特性を得ることができる。
【0023】
機能的コーティング剤の劣化を防止するか遅延させる組成物に医用装置を接触させることは、組成物を浸潤するか噴霧するか蒸発させ、医用装置を蒸発した組成物と接触させることによって達成してもよい。
【0024】
さらに、本発明による本方法で使用される組成物が、無毒性であり、調製し易く、放射線によって滅菌可能である。さらに、組成物は基礎液に関係なく、様々な異なる湿潤剤で使用可能である。湿潤剤が基礎液を含み、組成物がさらなる成分を含んでいてもよい。予想外に、本発明の組成物は、エネルギーレベルの高い放射線照射でも、放射線の露光中に形成される反応種によって、医用装置の機能的コーティング剤の劣化を防止したり遅延させたりする。
【0025】
機能的コーティング剤を備えた医用装置が放射線によって滅菌される場合、高反応中間体が水から、たとえば、・OH,HO+や過酸化物(HO/O),Hから形成可能である。これらの反応部分は、医用装置のコーティング剤に有害な反応物を生じさせる可能性がある。本発明の方法で使用される組成物は、コーティング剤よりも放射線照射による水から形成される反応部分により反応する。さらに、本発明の方法で使用される組成物は、コーティング剤のポリマーに形成される可能性のある遊離基を不活性化させることが可能であり、それによって、制御不可能で、かつ/または過剰なコーティング剤の架橋、および/またはコーティング剤のポリマー鎖の切断、および/または基体からの層剥離を防止する。
【0026】
本発明の方法で使用される組成物は、コーティングされた基質、すなわち医用装置がこの組成物を含む湿潤環境を受けるかさらされる場合に、高放射線レベルを受けたあらゆるタイプの機能的コーティングに高度の保護剤として作用するように配合されている。さらに、本発明による組成物が保護剤として作用するので、医用装置の機能的コーティング剤は、UV開始剤、熱、ガンマ線、X線、または電子線を介して架橋によって形成可能である。本発明の組成物は特定のコーティング材料や硬化系に限られず、任意の機能的コーティング剤に使用可能である。
【0027】
さらに、本発明による組成物はまた、加水分解に対して、特に長期間の加水分解に対して、高度の保護剤として作用するように配合されている。本発明による湿潤剤は、放射線からの低感度の(水化)高分子相互侵入網目のようなゲルを保護するのに特に適しており、また、加水分解安定性をもたらす。
【0028】
本発明による方法は、組成物と、この組成物を含み、移動性で液体状態にある湿潤剤とを使用する。好ましくは、この湿潤剤は、完全に溶解した没食子酸またはエステル、没食子酸のアミドまたはオキサジアゾール誘導体、および/またはカルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩を含む水溶性の湿潤剤であり、医用装置のコーティング剤の遊離親水性ポリマー鎖と密接に接触する。本発明による本方法で使用される組成物は、移動性であり、コーティング剤の表面に浮遊している。
【0029】
本発明の組成物によって、放射線照射および加水分解の両方から機能的コーティング剤の劣化を防止したり遅延させたりすることができる。特に、本発明の組成物および湿潤剤は、たとえば軽度に架橋されたゲル網目のようなゲル網目などのポリマーや親水性コーティング剤さえも、水溶性の環境下や極度の照射条件下で保護可能である。本発明の組成物および湿潤剤はさらに、湿潤した被膜製品の意図する貯蔵寿命中にさらなる加水分解安定性をもたらす。
【0030】
本発明の組成物は、カルボキシメチルセルロースあるいはその誘導体または塩、および/または没食子酸またはその誘導体から選択される酸化防止剤を備えていてもよい。
【0031】
没食子酸は以下の構造を有する安息香酸である:
【0032】
【化1】
【0033】
国際純正および応用化学連合(IUPAC)名は、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸である。
【0034】
本方法の変形では、本方法で使用される組成物の没食子酸の誘導体が、没食子酸のエステル誘導体、アミド誘導体、またはオキサジアゾール誘導体である。
【0035】
「没食子酸のエステル誘導体」という用語は、アルコールと没食子酸とのエステル反応生成物を示す。「没食子酸のアミド誘導体」という用語は、アミンと没食子酸との反応生成物を示す。「没食子酸のオキサジアゾール誘導体」という用語は、オキサジアゾールと没食子酸との反応生成物を示す。
【0036】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた好ましい実施形態では、本方法で使用される組成物にある没食子酸のエステル誘導体が、没食子酸と脂肪族C1〜C16アルコールとの反応生成物、より好ましくは、没食子酸と脂肪族C1〜C12アルコールの反応生成物である。より好ましくは、没食子酸のエステル誘導体が、没食子酸プロピル、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸オクチル、および没食子酸ラウリル、またはその混合物から選択され、特に、没食子酸のエステル誘導体が没食子酸プロピルである。
【0037】
「脂肪族アルコール」という用語は、飽和直鎖アルコールまたは飽和分岐鎖アルコールを示す。
【0038】
没食子酸プロピルは没食子酸とプロパノールの反応生成物であり、以下の構造を有する:
【0039】
【化2】
【0040】
他の汎用名は以下の通りである:没食子酸n−プロピル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸プロピル、没食子酸プロピルエステル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、3,4,5−トリヒドロキシベンゼン−1−プロピルカルボキシラート、CAS番号121−79−9。
【0041】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた好ましい実施形態では、本発明の方法で使用される組成物において、没食子酸のアミド誘導体が、没食子酸N,N−ジメチルアミド、没食子酸ナフチルアミド、またはその混合物から選択される。
【0042】
没食子酸オキサジアゾール誘導体は、以下の構造物を有する:
【0043】
【化3】
【0044】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた好ましい実施形態では、本発明の方法で使用される組成物において、没食子酸またはその誘導体が、組成物の全重量を基準として、0.001〜5重量パーセントであり、より好ましくは、0.01〜2重量パーセントであり、最も好ましくは0.05〜0.5重量パーセント、特に0.1〜0.2重量パーセントである。これは、没食子酸またはその誘導体のみが組成物にあり、カルボキシメチルセルロースがない場合である。
【0045】
カルボキシメチルセルロース(CMC)はセルロース誘導体であり、セルロース主鎖を形成するグルコピラノースモノマーのヒドロキシル基のいくつかはカルボキシメチル基(−CH−COOH)に置換される。これはナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースナトリウムとしてしばしば使用される。
【0046】
カルボキシメチルセルロースは、以下の構造物を有する:
【0047】
【化4】
【0048】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた好ましい実施形態では、組成物がカルボキシメチルセルロースの塩を含み、より好ましくは、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を含む。上述の構造式のカルボキシメチルセルロースナトリウムRの構造式は、CHCONaである。他の汎用名は、カルボキシメチルセルロース、Na−CMC、セルロースガム、ナトリウムCMCであり、CAS番号9004−32−4である。
【0049】
ナトリウムCMCの化学式は[C(OH)(OCHCOONa)であり、nは重合度である。xは1.50〜2.80、yは0.2から1.50、x+yは3.0である(yは置換度)。
【0050】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせたさらなる好ましい実施形態では、カルボキシメチルセルロースまたはその誘導体または塩が、組成物の全重量を基準として、0.1〜10重量パーセントであり、より好ましくは、0.2〜7重量パーセントであり、特に好ましくは0.2〜5重量パーセント、特に1〜5重量パーセントである。好ましくは、カルボキシメチルセルロースがナトリウム塩として、すなわちNa−CMCとして存在する。
【0051】
なお、さらなる実施形態では、組成物がカルボキシメチルセルロースあるいはその誘導体または塩、および没食子酸またはその誘導体から選択される酸化防止剤を備え、没食子酸の誘導体は、没食子酸のエステル誘導体、アミド誘導体、またはオキサジアゾール誘導体から選択され、好ましくは没食子酸プロピルである。この場合、没食子酸またはその誘導体が組成物にあり、それは組成物の全重量を基準として、0.001〜1重量パーセントであり、より好ましくは、0.01〜0.5重量パーセントであり、特に0.02〜0.2重量パーセントである。
【0052】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた好ましい実施形態では、本発明の方法で使用される組成物が、水または油を基剤とした基礎液、または、脂質媒体、またはその組み合わせをさらに含む。
【0053】
「水性溶液」という用語は、その主成分として水を有する任意の溶液であり、すなわち、水の分量が、水溶液の全重量を基準として少なくとも50重量パーセントある。
【0054】
「油性溶液」とい用語は、1つ以上の油を含む溶液を示す。好ましくは、油性溶液は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、および/またはポリビニルアルコールを含む。精油が、油性溶液を基準として0.5重量パーセントまで含まれていてもよい。油性溶液を使用する場合、油性溶液が、全組成物を基準として49.8重量パーセントまであってもよい。
【0055】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた好ましい実施形態では、本方法で使用される組成物の水性溶液が、蒸留水、脱イオン水、逆浸透水、濾水、または食塩水から選択される。より好ましくは、水性溶液が食塩水であり、特に、生理学的な浸透圧を備えた食塩水である。
【0056】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせたさらに好ましい実施形態では、水性溶液が本方法で使用される組成物中に、組成物の全重量を基準として、50〜99.99重量パーセントであり、より好ましくは、85〜99.8重量パーセントであり、特に85〜94重量パーセントである。
【0057】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせたさらに好ましい実施形態では、本方法で使用される組成物の水性溶液が、生理学的な浸透圧を備えた食塩水である。食塩水が、組成物中に、組成物の全重量を基準として、85〜94重量パーセントの量で存在する。
【0058】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた好ましい実施形態では、本発明の方法で使用される組成物が、医用装置の少なくとも滅菌中および滅菌後に、機能的コーティング剤の中、かつ/または周囲に、懸濁液として存在する。「周囲」という用語は、本明細書ではコーティング剤の「近傍に」という意味を有する。
【0059】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせたさらに好ましい実施形態では、本発明の方法で使用される組成物が、安定剤、エンハンサ溶液、および/または緩衝液をさらに含む。
【0060】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせたさらに好ましい実施形態では、安定剤が以下から選択される:ポリビニルピロリドン(PVP)などのポリラクタム、ポリウレタン、アクリル酸とメタクリル酸のホモポリマーおよび共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、無水マレイン酸系共重合体や、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、およびポリヌクレオチドなどのポリエステル、ビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリカルボン酸、ポリアミド、ポリ無水物、ポリホスファゼンや、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースや、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、ゼラチン、キチン、ヘパリン、デキストランなどの他の多糖類や、コラーゲン、フィブリン、エラスチン、およびアルブミンなどのポリペプチド/蛋白質。これらのうち、PVPが特に好ましい。
【0061】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせたさらに好ましい実施形態では、安定剤が、本発明の本方法で使用される組成物中に、組成物の全重量を基準として、0.1〜40重量パーセントであり、より好ましくは、3〜20重量パーセントであり、最も好ましくは4〜12重量パーセントであり、特に7〜12重量パーセントである。
【0062】
没食子酸およびその誘導体は、溶解性が限られているので、エンハンサ溶液を本発明の方法で使用する組成物に添加してもよい。上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた好ましい実施形態では、エンハンサ溶液が多価アルコールから選択され、より好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、特にプロピレングリコールである。
【0063】
特定の条件および濃度では、カルボキシメチルセルロースまたはその誘導体や塩、および/または没食子酸のエステルが、時間と共に溶液から再結晶するかもしれない。特に上述の濃度の安定剤が添加されると、再結晶は起こらず、溶液の均質性が保たれる。
【0064】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせたさらに好ましい実施形態では、エンハンサ溶液、好ましくはプロピレングリコールが、本発明の組成物中に、組成物の全重量を基準として、0.1〜49.8重量パーセントであり、より好ましくは、1〜20重量パーセントであり、特に2〜10重量パーセントである。
【0065】
上記の通り、没食子酸のエステルは溶解度が限られており、たとえば没食子酸プロピルの溶解度は3.5mg/mlである。さらに、溶解速度は常温では低速である。プロピレングリコールなどの多価アルコールを添加すると、加熱する必要なく、その溶解速度は顕著に増大する。上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた好ましい実施形態では、プロピレングリコールに対する水または食塩水の重量比は、1.0:0.3〜1.0:1.3であり、好ましくは1.0:0.7である。
【0066】
湿潤剤は45℃以上まで加熱されると、没食子酸プロピルの混和性が増大する。しかし、没食子酸プロピルは冷却後に溶液から沈殿し、針状で格子状の構造に似た下位構造体を形成する。プロピレングリコールの添加によって、溶液の温度上昇の必然性が防止されたりなくなったりする。化合物を上昇した温度で溶液に添加することで、過飽和溶液、すなわち、通常の常温条件下よりも溶解し易い化合物を多く含む溶液を生成することが可能である。過飽和溶液を冷却すると、溶解した化合物が溶液から沈殿することが可能である。プロピレングリコールを添加すると、温度上昇は不要となる、というのは、プロピレングリコールがその化合物に対する溶液溶解度を増大させるからである。したがって、プロピレングリコールの添加によって、没食子酸またはその誘導体が低温の周囲温度で溶解することができる。
【0067】
グリセロールを用いると、没食子酸プロピルを完全に溶解するために、溶液にある程度の熱を加える必要があり得る。さらに、一連の混合ステップと、すべての化合物の濃度と温度が一定のままである場合の没食子酸プロピルの相対溶解に関するその効果とは、以下の通りである:
・プロピレングリコールを没食子酸プロピルに添加し、ついで、食塩水または蒸留水を添加すること:高速反応(没食子酸プロピルの高速溶解)
・ 食塩水/蒸留水を没食子酸プロピルに添加し、ついで、プロピレングリコールを添加すること:低速反応(没食子酸プロピルの低速溶解)
・プロピレングリコールを食塩水/蒸留水に添加し、ついで、没食子酸プロピルを添加すること:高速反応(没食子酸プロピルの高速溶解)
・プロピレングリコールの代わりにグリセロールを使用すること:低速反応(没食子酸プロピルの低速溶解)。
【0068】
多価アルコール、たとえばプロピレングリコールは、抗菌抗真菌剤として付加的に機能し、したがって、本発明の方法で使用される組成物に抗菌抗真菌性が発揮される。
【0069】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた別の実施形態では、緩衝液のpHが、2.0〜7.4であり、より好ましくは3.0〜6.5であり、特に3.0〜4.0である。緩衝液が添加されて、pHに関する溶液安定度が生成され、没食子酸のエステルが再結晶化するのを防止する。適切な緩衝液は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、3‐ヒドロキシプロピオン酸、2‐3‐ジヒドロキシプロピオン酸、グルコン酸、安息香酸、ケイ皮酸、乳酸、マンデル酸、グリコール酸、フェニル酢酸、クロロ安息香酸、ナフトエ酸、トルイル酸、アセツル酸などのモノカルボン酸類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、およびフマル酸などのジカルボン酸類;クエン酸や1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などのトリカルボンサン類およびテトラカルボン酸;トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アミノ安息香酸、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、グルタチオン、N−フェニルグリシン、カルノシン、ナイアシンなどのアミノ酸類;アミノスルホン酸;フッ化水素酸、シアン酸、および亜硝酸などの無機酸類を含む。
【0070】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせた別の実施形態では、本発明の本方法で使用される組成物が、没食子酸プロピルを0.01〜2%重量パーセント、PVPを0.1〜40%重量パーセント、プロピレングリコールを0.1〜49.8%重量パーセント含んでいてもよく、より好ましくは、没食子酸プロピルを0.05〜0.5%重量パーセント、PVPを3〜20%重量パーセント、プロピレングリコールを1〜20%重量パーセント含んでいてもよく、特に没食子酸プロピルを0.1〜0.2%重量パーセント、PVPを4〜12%重量パーセント、プロピレングリコールを2〜10%重量パーセント含んでいてもよい。特に好ましいのは、没食子酸プロピルを0.1〜0.2%重量パーセント、PVPを4〜12%重量パーセント、プロピレングリコールを2〜10%重量パーセントとpHが4〜5の緩衝液を含む組成物である。
【0071】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせたさらに別の実施形態では、本発明による組成物が、組成物の全重量を基準として、カルボキシメチルセルロースナトリウムを0.1〜10重量パーセント、没食子酸プロピルを0〜1重量パーセント、プロピレングリコールを1〜20重量パーセント含み、より好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムを0.2〜7重量パーセント、没食子酸プロピルを0.01〜1重量パーセント、プロピレングリコールを1〜15重量パーセント含み、特に、カルボキシメチルセルロースナトリウムを0.2〜5重量パーセント、没食子酸プロピルを0.02〜0.2重量パーセント、プロピレングリコールを2〜10重量パーセント含む。特に好ましいのは、組成物の全重量を基準として、カルボキシメチルセルロースナトリウムを0.2〜2重量パーセント、没食子酸プロピルを0.02〜0.2重量パーセント、プロピレングリコールを2〜10重量パーセントと、pHが4〜5の緩衝液を含む組成物である。あるいは、特に好ましいのは、組成物の全重量を基準として、カルボキシメチルセルロースナトリウムを2〜5重量パーセント、没食子酸プロピルを0重量パーセント、プロピレングリコールを2〜10重量パーセントと、pHが4〜5の緩衝液を含む実施形態の組成物である。
【0072】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせたさらに好ましい実施形態では、本発明の方法で使用される組成物が、銀塩などの抗菌剤、ポビドンヨードなどの許容性ヨウ素原料、グルコン酸、アセテート、塩酸塩などのクロルヘキシジン塩、または塩化ベンザルコニウムなどの第4級抗菌剤や、他の防腐剤や抗生物質をさらに含む。抗菌剤の存在によって、感染のリスクが低下する。本発明による組成物は、尿素、塩化ナトリウム、および/または任意の塩または有機の低分子量組成物などの浸透圧増加剤をさらに含んでいてもよく、この組成物はコーティング剤のイオン強度をほぼ生理学的範囲にまで調節するのに生理学的に許容可能であり非刺激性であり、好ましくは、コーティング剤が使用中には等張である。本発明による組成物はまた、保存剤や、抗菌剤や抗血栓剤などの薬剤、または可塑剤を含んでいてもよい。
【0073】
上記および下記の実施形態のいずれかを組み合わせたさらなる実施形態では、放射線滅菌中の放射線のエネルギ線量が1〜50kGy、好ましくは15〜45kGy、より好ましくは25〜45kGyの範囲内にある。50kGyまでの高放射線エネルギでさえも、本発明の方法で使用される組成物は、放射線の露光中に形成される反応種によって、医用装置の機能的コーティング剤の劣化を防止したり遅延させたりする。
【0074】
さらなる変形例によると、本方法は付加的に以下のステップを含む:
・医用装置を設けること;
・医用装置を少なくとも部分的に機能的コーティング剤で被覆すること;
・ 機能的コーティング剤の劣化を防止するか遅延させる組成物に医用装置を接触させることによって、医用装置の機能的コーティング剤を活性化させること;
・医用装置および組成物を耐蒸発性の包装容器に包装すること。
【0075】
本方法のさらなる変形例では、医用装置がカテーテルである。本方法により製造され、機能的コーティング剤を有する医用装置が、たとえば、医療用チューブ、ガイドワイヤ、カニューレ、ステント、ステントグラフト、吻合コネクタ、合成パッチ、リード線、ニードル、センサ、外科用器械、血管形成バルーン、創傷ドレーン、シャント、チューブ、注入スリーブ、尿道インサート、ペレット、インプラント、血液酸素付加装置、ポンプ、人工血管、血管アクセスポート、心臓弁、弁輪形成リング、縫合糸、外科用クリップ、外科用ステープル、ペースメーカ、埋め込み式除細動器、神経刺激器、矯正器具、脳脊髄液シャント、埋め込み式薬剤ポンプ、脊髄ケージ、人工椎間板、髄核、耳管、眼内レンズの置換装置、低侵襲性外科手術で使用するチューブなど、人体の血管の内壁や眼の外表面などの体組織に対して可動な任意の装置であり得るとしても、医用装置は内部照明カテーテルなどの、たとえば心臓血管カテーテルや間欠性カテーテルのカテーテルであるのが好ましい。
【0076】
好ましくは、機能的コーティング剤が親水性コーティング剤である。しかし、「機能的コーティング剤」という用語はまた、抗血栓性コーティング剤、ゲルコーティング剤、親水性ポリマーコーティング剤、ポリビニルアルコールコーティング剤、コンタクトレンズ用コーティング剤、特に薬剤送達システムで使用される、ヒドロゲル、セルロースエーテル、ポビドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸共重合体、ポリ乳酸−ポリグリコライド共重合体(PGLA)などの水系可溶性ポリマーコーティング剤、またはその誘導体を含む。
【0077】
本方法のさらなる変形例では、カテーテルが、カテーテル・シャフトを含み、カテーテル・シャフトは少なくともその挿入可能な長さ部に沿って親水性コーティング剤で被覆されており、伸縮式スリーブによって堅固に包囲されており、伸縮式スリーブおよび/またはカテーテルは液密の閉止部が遠位端と近位端にあるので、伸縮式スリーブまたはカテーテル・シャフトにある任意の液体は、閉止部が破壊されない限り、伸縮式スリーブおよびカテーテルに残存する。この場合、親水性コーティング剤を活性化するのに少量の組成物/湿潤剤で済み、親水性コーティング剤が保管中に湿潤状態のままであることが確実となる。
【0078】
本発明の組成物は、医用装置の機能的コーティング剤の劣化を防止したり遅延させたりすることが可能である。本発明の組成物は、無毒性の組成物から簡単に調製可能であり、放射線滅菌中に使用可能である。医用装置の滅菌中に使用する場合、本発明の組成物の存在によって、放射線の露光中に発生する反応種が医用装置の機能的コーティング剤を劣化させることがなくなる。
【0079】
さらに、本発明による組成物はまた、加水分解の対価を防止したり遅延させたりすることも可能であり、特に湿潤環境において適している。
【0080】
以下の実施例は、本発明をさらに記載するものである。
【0081】
実施例
【0082】
没食子酸プロピル溶液の一般的調製手順:
【0083】
没食子酸プロピルはわずかに水に溶解するが、プロピレングリコールを添加すると、没食子酸プロピルの溶解度が増大する。プロピレングリコールは水に対して親和性が高く、またコスト面から有効なグリセロールの代替添加剤でもある。
【0084】
1. 標準的な使い捨てピペットを使用して、プロピレングリコールまたはグリセロール5gを200mlのガラスビーカーに入れた。
【0085】
2. ついで、0.9重量パーセントの食塩水10g(9g/L塩化ナトリウム溶液)をプロピレングリコールまたはグリセロールに添加した。
【0086】
3. 0.01〜0.5gの没食子酸プロピルをビーカーに加え、蒸留水または0.9重量パーセントの食塩水(9g/L塩化ナトリウム溶液)を100mlの溶液になるまで加えた。
【0087】
4. そのビーカーを手に取り、内容物を約2分間やさしく攪拌し、混合を促進して、結果として没食子酸プロピルが溶解するのを視認した。この食塩水または水をプロピレングリコールまたはグリセロールでプレミックスする割合によって、ビーカーを加熱する必要なく没食子酸プロピルを完全に溶解させる方法が発揮される。しかし、グリセロールを用いると、没食子酸プロピルを完全に溶解するために、溶液にある程度の熱を加える必要があり得る。グリセロールを蒸留水/水/食塩水に添加すると溶解度および没食子酸プロピルの溶解速度が増すが、プロピレングリコールよりも明らかに非効果的である。そのために、グリセロールを使用する場合には熱を加える必要があり、特に、比較的高濃度の没食子酸プロピル(0.15〜0.5重量パーセントの没食子酸プロピル)が考えられる。
【0088】
5. ポリビニルピロリドン(PVP;Sigma Aldrich社;K60,HO中45パーセント)、Tween20および80(Sigma Aldrich社より提供される非イオン薬)などの界面活性剤、緩衝液(pH4.00(20℃)、すなわちMerck Chemicals KGaA社より提供されるクエン酸/水酸化ナトリウム/塩化水素)などの他の添加剤が、没食子酸プロピルの混合後に任意選択的に添加されてもよい。
【0089】
6. 磁気攪拌棒をビーカーに入れて、そのビーカーを磁気攪拌器(IKA RT5 Magnetic Stirrer)に入れた。設定温度をゼロにして、回転速度を撹拌器の3マークと4マークの間に設定した。内容物をゆっくりと1時間攪拌し、均質な溶液を得た。
【0090】
化合物量を以下の表1−5に示す。
【0091】
カルボキシメチルセルロース(CMC)溶液の一般的調製手順:
【0092】
カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na−CMC)のプレミックスの調製:
【0093】
1.脱イオン水100gを計量し、ガラスビーカーに注入した。
【0094】
2.Na−CMCの必要量を表6および7によって特定し、計量した。
【0095】
3. 水を磁気攪拌器に入れ、攪拌機を80度に設定し、Na−CMC粉末の分散および溶解を促進した。
【0096】
4. Na−CMCを水に溶解するまでゆっくりと2〜3時間かかけて添加した(混合時間はCMCの必要量に応じて大きく短縮してもよい)。
【0097】
5. 溶液の撹拌を維持しながら、混合物を冷却して常温まで冷却することができた。
【0098】
6. 混合物が冷却したら、緩衝液5g(pH4)を添加し、撹拌を15〜30分継続した。
【0099】
湿潤剤のプレミックスの調製:
【0100】
1. 表6および7に従って、正確な量の没食子酸プロピルを計量し、100mlのガラスビーカーに入れた。
【0101】
2. ポリプロピレングリコール5gを、没食子酸プロピルを含むガラスビーカーに添加した。
【0102】
3. 短い間隔で、食塩水9.5mlを、没食子酸プロピルおよびポリプロピレングリコールの混合物を含むガラスビーカーに添加した。
【0103】
4. 没食子酸プロピルが液状の混合物内で溶解が視認できるまで、ガラスビーカーおよびその内容物を手で2分間撹拌した。
【0104】
5. 混合物を超音波撹拌に関する表6で特定する場合、食塩水を没食子酸プロピルとポリプロピレングリコールの混合物に9.5ml添加した直後に、この100mlのガラスビーカー(全成分を含む)を30秒間超音波槽に入れた。
【0105】
プレミックスの結合:
【0106】
1.湿潤剤プレミックスをCMCプレミックスに添加した。
【0107】
2.内容物を加熱せずに磁気攪拌器を用いて撹拌した。
【0108】
3.2時間撹拌可能であった。
【0109】
Tween20および80(Sigma Aldrich社より提供される非イオン薬)などの界面活性剤、緩衝液(pH4.00(20℃)、またはMerck Chemicals KGaA社より提供されるクエン酸/水酸化ナトリウム/塩化水素)などの添加剤が、Na−CMCおよび/または食子酸プロピルの混合後に任意選択的に添加されてもよい。
【0110】
検体の一般的調製手順:
【0111】
テスト用に、3.0mmのIDのついた直径4.5mmの押出しポリマーシャフトを選択した。これらのシャフトは浸潤され硬化されており、ポリマー製のチューブ基体に沿って均一に親水性コーティングされる。コーティングの完全性にばらつきをなくすために、コーティング剤を浸潤しUV硬化する同じ処理パラメータを確実に維持するのが重要である。この一連の試験に使用するシャフトの材料は、ポリウレタンブロック共重合体および可塑化ポリ塩化ビニルであった。このシャフトをカッティングマットに配置し、ポリマーコーティングされたチューブを鋭利な刃で約200mmの長さに切断した。シャフトの遠位端を、その遠位端が近位端と区別できる角度にカットした(遠位端では、コーティングがわずかに厚くなり、カットした角度によって摩擦試験者に情報が提供される)。すべての操作と摩擦試験に用意されたすべての試料の切断ステップの間、ラテックス製の手袋を身に着けて試料基体の表面の汚染を防止した。
【0112】
摩擦試験(摩擦係数−COF):
【0113】
1. プロトコルテストのプログラムオプションを選択して、テストパラメータにアクセスした。
【0114】
2.以下の情報をそのプログラムに入力した:
a.締付け力=300g
b.テスト速度=180mm/分
c.テスト距離=60mm
d.繰り返す摩擦テストサイクル=25
e.速度=3cm/秒
【0115】
3. コーティングされた検体の内腔に対して適切な直径のステンレス鋼のマンドレルを検体に完全に挿入した。チューブを清浄平坦切断部を備える部位に鉗子で配置した(摩擦テスト機の水槽に対向する角度付きチューブ切断部)。
【0116】
4. 締付けパッドはHarland社から供給されている60 DURO(Part Number 102149)であった。
【0117】
5. このテストアセンブリを較正後にHarland社の摩擦テスターFTS 5000に装着した。
【0118】
6. コーティングされた検体および鉗子がテスト前に水に沈むように、容器を水で所定のマークまで充填した。その検体のクランプ部は水の外にあるが、検体の角度付きカット端部は水中に沈んだ。
【0119】
7.30秒後にテストを開始し、コーティング剤が確実に完全に水和した。
【0120】
8. クランプにかかった力を、経時的な重量グラムを示すグラフとして、自動的に記録した。
【0121】
9. テストが完了すると、平均重量グラムと最大重量グラムの読みが、機器に示された。
【0122】
10. 平均重量グラムの読みを300グラムで割ることによって、COFを計算した。
【0123】
11. 各テスト後、湿潤した布を使用して、パッドに蓄積した可能性のある残りのコーティング剤を除去した。
【0124】
略語:
【0125】
PG=粉体としてSigma Aldrich社から供給される没食子酸プロピル
Na−CMC=カルボキシメチルセルロースナトリウム
PPG=プロピレングリコール
DW=蒸留水
【0126】
緩衝液:
【0127】
HPCEグレードの緩衝液であって、pH値が4.0、25度で20nM濃度のクエン酸ナトリウム(Sigma Aldrich社から供給)
【0128】
結果:
【0129】
実施例1:没食子酸プロピル溶液
【0130】
a)コーティングの完全性に関するグリセロールの効果
【0131】
【表1】
【0132】
b)コーティングの完全性に関するPG濃度の効果
【0133】
【表2】
【0134】
c)コーティングの完全性に関するPG濃度の効果
【0135】
【表3】
【0136】
d)コーティングの完全性に関するPPG濃度の効果
【0137】
【表4】
【0138】
e)コーティングの完全性に関するキャリア溶液の効果
【0139】
【表5】
【0140】
テスト結果よりわかるように、没食子酸プロピルがないと、摩擦係数(COF)は没食子酸プロピルがある場合よりも極めて高い。さらに、COFはサイクル数が増えると増加する。没食子酸プロピルがあると、COFは低くほぼ一定である(表2、表3)。
【0141】
さらに、さらに添加剤を添加するかキャリア溶液および/またはpHを選択することによって、COFが調整可能である。
【0142】
実施例2:CMC溶液:
【0143】
没食子酸プロピル(PG)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na−CMC)系の調合物を開発してさらに湿潤剤の性能を強化した。試料をポリプロピレングリコールで調製し、緩衝液の内容物を研究中にわたり一定に維持して、主となる安定化材料成分、すなわち没食子酸プロピルおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの影響を証明した。
【0144】
水和した試料を45kGyのガンマ線照射量で露光させたあと、コーティング剤のコーティング完全性および加水分解安定性をテストした。湿潤剤の主な目的は、滅菌サイクル中に水和した親水性コーティング剤を保護することであり、次に、コーティング剤に、実際の貯蔵寿命製品の指標を反映する加水分解安定性をもたらすことである。
【0145】
エイジングを加速させるために被覆した水和試料を15日間(T15)および30日間(T30)それぞれエイジング温度50度でさらした後に、25回の摩擦サイクルにわたりコーティングの摩擦安定性を分析することによって、コーティング剤の加水分解安定性を評価した。試料すべてを45kGyの照射量で露光した。露光直後の時間ゼロ(T0)では、コーティング完全性に関して、ガンマ照射の絶縁効果を得ている。
【0146】
【表6】
【0147】
45kGyの露光後水和状態での50度15日後、データが示すのはPGが調合物内にさらなる安定性をもたらしていることである。試料1と3とを比較すると、調合物は同じであるが、試料3は超音波振動して没食子酸プロピル(PG)の溶解が促進し、溶液およびコーティング剤中のPGの効能が向上している。試料3と5とを比較すると、PG0.1wt%およびCMC0.1wt%の提案が、露光後の被覆安定性および生成試料のエイジングには十分である。
【0148】
45kGyの露光後水和状態での50度30日後、データは以下を強調している:
・濃度が0.2wt%のPGは十分な安定度だけをもたらす(試料2)。
・超音波撹拌によって、PG溶解能が向上する(試料1および3)。
・比較的低比率である1:1のPG対Na−CMCは、十分なコーティング安定性を発揮する(試料4)。
【0149】
さらなる開発は、調合物中のNa−CMCの割合の増加に集中していた。以下の結果は、2wt%および5wt%の濃度のNa−CMCとPGの影響の評価を記述している。
【0150】
【表7】
【0151】
45kGyで露光後のT0では、すべての調合物が最適なコーティング剤の摩擦特性を示した。45kGyの露光後水和状態での50度15日後、すべての調合物が最適なコーティング剤の摩擦特性を示した。45kGyの露光後水和状態での50度30日後、すべての調合物が最適なコーティング剤の摩擦特性を示した。
【0152】
Na−CMCはコーティング剤に優れた安定度を発揮し、低濃度のPGと共同して使用して、表6および7で得られた結果に示すようなコーティング安定性をさらに改善する。
【0153】
以下に、本発明の方法で製造される機能的コーティング剤を備えたすぐに使える医用装置と、その方法とを、図面を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0154】
図1】本発明の方法で使用された、すぐに使える医用装置の第1の実施形態を示す図である。
図2図1の医用装置の詳細図である。
図3】本発明の方法で使用された、すぐに使える医用装置の第2の実施形態を示す図である。
図4図3の医用装置の詳細図である。
【0155】
図1では、本発明の方法で使用された、すぐに使える医用装置の第1の実施形態が示されている。第1の実施形態のすぐに使える医用装置は、間欠性カテーテル留置で使用されるカテーテル1である。カテーテル1は、遠位端5にカテーテル先端部3を備えたカテーテル・シャフト2と、近位端6に漏斗4とを含む。カテーテル・シャフト2は、親水性コーティング剤によって、少なくともその挿入可能な長さに沿って覆われている。カテーテル・シャフト2は、伸縮式スリーブ7によって包囲されている。近位端6で、伸縮式スリーブ7がカテーテル・シャフト2に固定されている。伸縮式スリーブはまた、漏斗に固定可能である。遠位端5で、カテーテル1が導入補助具8を備える。導入補助具8はカテーテル・シャフト2にスライド可能に配置されている。それは、導入補助具8が楽にカテーテル軸部を上下にスライド可能であるということを意味する。伸縮式スリーブ7の遠位端は、導入補助具8に固定されている。プラグ9が導入補助具の端部に挿入可能であり、カテーテル・シャフト7から離れて配置されているので、プラグ9と導入補助具8との間を液密に接続または閉止する。プラグ9は、好ましくはT字形をしている。さらに、プラグ9は、湿潤剤を有するリザバーを備えていてもよく、湿潤剤は上述のような組成物を含む。漏斗4は、キャップ10を備え、キャップ10はヒンジ11を介して漏斗4に接続されている。漏斗4およびキャップ10を備えたカテーテル1の遠位端6を、図2により詳細に示す。明確化するために、スリーブを図2には示していない。液密に閉止するように、キャップ10が漏斗4に差し込まれている。湿潤剤がプラグ9を介して伸縮式スリーブ7に挿入される。プラグ9および導入補助具8aならびに漏斗4およびキャップ10によって、液密に閉止されるので、湿潤剤が伸縮式スリーブ7および/またはカテーテル・シャフト2の中に残存し、かつ伸縮式スリーブ7の外側ならびに漏斗4の外側は乾燥したままであり、ユーザが簡単に把持することができる。このカテーテル・セットは、ついで、耐蒸発性の包装容器(図示せず)に配置可能である。
【0156】
図3は、本発明の方法で使用された、すぐに使える医用装置の第2の実施形態を示す図である。第2の実施形態では、すぐに使える医用装置はまた、間欠性カテーテル留置で使用されるカテーテル21である。カテーテル21は、遠位端25にカテーテル先端部23を備えたカテーテル・シャフト22と、近位端26に漏斗24とを含む。カテーテル・シャフト2は、親水性コーティング剤によって、少なくともその挿入可能な長さに沿って覆われている。カテーテル・シャフト22は、伸縮式スリーブ27によって包囲されている。伸縮式スリーブ27の近位端はカテーテル21の近位端26に接続されている。伸縮式スリーブ27は、カテーテル・シャフト22または漏斗24のどちらかに直接的に固定可能である。伸縮式スリーブ27の遠位端29は、カテーテル・シャフト22にスライド可能に配置されている導入補助具28に接続されている。伸縮式スリーブ27が伸縮しカテーテル/シャフト22が露出するように導入補助具28はカテーテル・シャフト22上で押し戻される。カテーテル・シャフト22および伸縮式スリーブ27が上に配置されているカテーテル21は、耐蒸発性包装容器30内に配置されている。さらに、上述のような組成物を備えた湿潤剤が、包装容器30に挿入される。
【0157】
両実施形態では、カテーテル・シャフト2、22が、親水性コーティング剤および機能的コーティング剤によって、少なくともその挿入可能な長さに沿って覆われている。カテーテル・シャフト2、22の挿入可能な長さは、カテーテルが使用されると尿道に挿入されるカテーテル・シャフトの長さである。さらに、両実施形態では、湿潤剤がカテーテル・シャフト2、22の親水性コーティング剤と接触し、活性化させる。湿潤剤は、カルボキシメチルセルロースあるいはその誘導体または塩、および/または没食子酸またはその誘導体から選択される酸化防止剤を備えた、上述のような組成物を含む。
【0158】
以下において、上述のカテーテル1、21を製造する方法を記載する。第1のステップでは、カテーテル先端部3、23、および漏斗4、24を有するカテーテル・シャフト2、22が製造される。その後、カテーテル・シャフト2、22が、親水性コーティング剤で被覆される。伸縮式スリーブ7,27がカテーテル・シャフト2,22の周りに配置され、カテーテル1、21の近位端で、カテーテル・シャフト2、22または漏斗4、24に接続される。カテーテル1、21の遠位端で、導入補助具8、28がカテーテル・シャフト2、22にスライド可能に配置され、伸縮式スリーブ7、27の遠位端に接続される。
【0159】
第1の実施形態では、漏斗4がキャップ10およびプラグ9で閉止されており、湿潤剤が中に含まれており、導入補助具8に接続されている。完成したアセンブリが、ついで、耐蒸発性の包装容器(図示せず)に配置される。湿潤剤は、上述のような組成物を含む。湿潤剤が、カテーテル・シャフト2の親水性コーティング剤と接触するようになり、それによって、親水性コーティングが活性化される。完成した包装容器が、ついで、たとえばガンマ線照射などの放射線を受ける(第1ページ、第2段落から最終段落を参照)ので、すべての成分が滅菌される。湿潤剤が上述のような組成物を備えるので、滅菌中および保管中の親水性コーティング剤の劣化が回避される。
【0160】
第2の実施形態では、カテーテル・シャフト22、カテーテル先端部23、漏斗24、および伸縮式スリーブ27を備えたカテーテル21は、耐蒸発性包装容器30内に配置されている。漏斗24および導入補助具8は開口している。さらに、上述のような組成物を備えた湿潤剤が、包装容器30に添加される。湿潤剤が、カテーテル・シャフト22の親水性コーティング剤と接触するようになり、それによって、親水性コーティングが活性化される。その後、包装容器全体が、たとえばガンマ線照射などの放射線滅菌を受けるので、すべての成分が滅菌される。
【0161】
両実施形態では、放射線滅菌中の放射線のエネルギ線量が1〜50kGy、好ましくは15〜45kGy、より好ましくは25〜45kGyの範囲内にある。
図1
図2
図3
図4