(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6886054
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】RFIDタグ
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20210603BHJP
G06K 19/073 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
G06K19/077 304
G06K19/073 090
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-23550(P2020-23550)
(22)【出願日】2020年2月14日
【審査請求日】2020年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102739
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】松川 智子
(72)【発明者】
【氏名】森 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】前田 喬弘
【審査官】
境 周一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2020/0110977(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2020/0160004(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第107103354(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 1/00−21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグを構成し電流が通過しうる部位の少なくとも一部を複数のピースに分割してあり、
分割された前記ピースは、基材と、前記基材から脱離可能であるカバーとによって囲まれていることで前記部位として必要な形態を保持されており、
前記カバーを脱離させると前記部位の少なくとも一部が前記複数のピースに分離されるRFIDタグ。
【請求項2】
上記複数のピースが、10ピース以上である請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記複数のピースが、個々が不規則な形状である請求項1または2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記複数のピースが、個々が規則的な形状である請求項1または2に記載のRFIDタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、不正な再利用をできなくするRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、RFID(radio frequency identifier)タグが様々な物品の管理に用いられている。多数の物品を管理するにあたっては、RFIDタグを含んだラベルを対象となる物品に貼りつけることが一般的に行われている。貼りつけられたRFIDタグには、商品の識別情報や値段など、多くの情報が記録されている。RFIDタグを非接触で読み取れば、対象となる物品について人の目で確認することなく、RFIDタグに記録された識別情報に対応するものとして処理されるシステムも多い。このため、一の物品に貼りつけられたRFIDタグを、他の物品に貼りつけて再利用できると、システムを欺いて不正な利用が可能になってしまう。単純なRFIDタグではこのような不正利用が可能である場合も多い。
【0003】
これに対して、一旦剥がすと破壊されるRFIDタグが様々に検討されている。例えば
図7及び
図8に示すようなRFIDタグが提案されている。RFIDタグ2を、取り付けるべき対象物1に取り付けた断面図を
図7(a)に、平面図を
図7(b)に示す。RFIDタグ2はメモリなどを含む半導体チップ5と、外部からの磁気に応じて電流を発生させる回路となるアンテナ6とを有する。RFIDタグ2の全体はカバー3で覆われている。ただし、半導体チップ5の対象物1側の一部のみに接着剤層4が形成されている。すなわち、半導体チップ5の対象物1側の面の一部だけが強固に対象物1と接着されており、残りの部位は対象物1からわずかに浮いた状態となっている。半導体チップ5の上にはアンテナ6が配されており、半導体チップ5の周囲に伸びている。このRFIDタグ2のカバー3を取り外し、RFIDタグ2を再利用すべく対象物1から取り外そうとすると、接着剤層4によって強固に接着された部分とそうでない部分との境界に応力が集中する(
図8)。これにより、破断点Pで半導体チップ5やアンテナ6が破壊され、RFIDタグ2として動作しなくなる。
【0004】
また、
図9(a)の分解構成図に示すようなRFIDタグ2aも提案されている。RFIDタグ2aは、台座層7aとカバー層7bとの間に、半導体チップ部8aとアンテナ部8bとを格納する。台座層7aは接着剤層4aにより全体が強固に対象物1に固定される。半導体チップ部8aが接着剤層4bにより台座層7aに固定される。一方、アンテナ部8bは接着剤層4cによりカバー層7bに固定される。半導体チップ部8aとアンテナ部8bとは、取り付け時には一体となっている。だが、カバー層7bを外そうとすると、カバー層7bに強固に固定されたアンテナ部8bのみがカバー層7bとともに剥がれるが、半導体チップ部8aは台座層7aに強固に固定されているため、半導体チップ部8aとアンテナ部8bとの間の境界線で回路が破断される(
図9(b))。これにより、RFID2aは動作しなくなる。
【0005】
さらに、特許文献1には大電流によってアンテナコイルの一部を断線させることで再利用不可能にさせるRFIDタグが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-211646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、これらのRFIDタグは破壊、あるいは分断される箇所が一か所に集中している。このため、破断された線に沿って二つの部品を精確に接合したり、破断した点の回路を接合したりすると、破壊したはずのRFIDタグを再利用できてしまう可能性が残っていた。
【0008】
そこでこの発明は、一旦剥がすと再利用が不可能になるまで破壊されるRFIDタグを提供し、不正利用をより強固に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、
RFIDタグを構成し電流が通過しうる部位の少なくとも一部を複数のピースに分割してあり、
分割された前記ピースは、基材と、前記基材から脱離可能であるカバーとによって囲まれていることで前記部位として必要な形態を保持されており、
前記カバーを脱離させると前記部位の少なくとも一部が前記複数のピースに分離されるRFIDタグにより上記の課題を解決した。
【0010】
すなわち、個々のピースは、粘着剤や接着剤、あるいは穴を空けて固定具で留めるなどといった固定手段を設けるのではなく、基材とカバーとに囲まれた格納すべきスペースである格納部に格納されているだけで、前記カバーを外せば必要な形態を保持できなくなり分割された個々のピースに分離される。当該部位が複数のピースに分かれると、それら個々のピースの境界線をすべて元通りに接合しなおして固定しようとするには膨大な作業の手間がかかるため、不正な再利用をすることが困難になる。
【0011】
上記複数のピースとは、具体的には10ピース以上であると好ましく、基本的には多いほど好ましい。ピースが多数に分かれているほど、不正な再利用がしにくくなる。また、少なくとも1つのピースの最短幅は1mm以下であると好ましい。大きなピースのままだと復旧されやすいため、できるだけ細かくピースが区切られていることが望ましい。
【0012】
前記部位を個々のピースに分割する形状としては、個々のピースを不規則な形状で分割されていてもよいし、短冊状や格子状のように規則的な形状で分割されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明により、一旦カバーをはがしたRFIDタグは、RFIDの機能を発揮させるために必要となる電流が通過しうる部位が、再利用が事実上不可能となるまで分割されるので、これらを補修して不正な再利用される事態を的確に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)この発明の第一の実施形態にかかるRFIDタグの断面図、(b)(a)の平面図
【
図2】(a)この発明の第二の実施形態にかかるRFIDタグの断面図、(b)(a)の平面図
【
図3】この発明の第三の実施形態にかかるRFIDタグの断面図
【
図4】この発明の第四の実施形態にかかるRFIDタグの断面図
【
図5】(a)第一の実施形態にかかるRFIDタグのカバーを外した断面図、(b)(a)のばらした後の概念図
【
図6】(a)第二の実施形態にかかるRFIDタグのカバーを外した断面図、(b)(a)のばらした後の概念図
【
図7】(a)従来の破壊可能なRFIDタグの例の断面図、(b)(a)の平面図
【
図9】(a)従来の別の破壊可能なRFIDタグの例の分解構成図、(b)(a)を破壊した際の断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明について具体的な実施形態とともに詳細に説明する。この発明は、不正な再利用が困難であるように一部の部位が分割されたRFIDタグである。
【0016】
この発明の第一の実施形態にかかるRFIDタグ11を
図1に示す。
図1(a)に断面図を、
図1(b)に平面図を示す。
【0017】
RFIDタグ11は、少なくともデータが記録された半導体チップ16と、電波を受信して電流を流す無線通信用のアンテナ15とを有する。電波を発するリーダライタ(図示せず)からの電波により、半導体チップ16に記録されたデータを読み込むことが可能である。データは固有の識別符号でもよいし、分類のための符号でもよいし、その他書き換え可能な情報であってもよく、特に限定されない。上記の無線の周波数や規格は特に限定されない。以下の説明ではRFIDタグ11として非接触型のタグを例として説明するが、接触型のタグであっても本発明は実施可能である。
【0018】
半導体チップ16に繋がるアンテナ15は、半導体チップ16の周囲に回路を構成している。アンテナ15の配線の形状は特に限定されない。図では半導体チップ16の周囲全体がアンテナ15で占められている形態を例として挙げているが、周囲の一部だけがアンテナ15であってもよい。また、図では、半導体チップ16とアンテナ15の高さを揃えているが、アンテナ15の上に半導体チップ16が乗った形態でもよい。
【0019】
この発明にかかるRFIDタグ11は、アンテナ15の少なくとも一部が、複数のピース15a(15b)に分割されている。分割されている部分が全体に占める割合は多い方がよく、アンテナ15の全部が分割されていると最も好ましい。この実施形態では、個々のピース15aはパズルのように独自の形状をしており、それらが正確に配置されながら保持されることで、アンテナ15を構成している。なお、ここではアンテナ15の金属配線部分を分割した実施形態を示しているが、基板となる樹脂板の上に金属配線部分を有しており、樹脂板ごと金属配線を分割してピース15aとする形態であってもよい。
【0020】
上記のアンテナ15を分割した複数のピース15aは、より多くの個数のピース15aに分割されていることが好ましい。好ましくは10個以上のピース15aに分かれているとよく、20個以上のピース15aに分かれているとより好ましい。ピース15aの分割された個数が多いほど、破壊された後に修復して不正使用することが困難になる。一方、分割の数が多い分には特に限定されない。ただし、あまりに細かいと正確に配置した状態で保持することが難しくなる。
【0021】
個々のピース15aは、細かいほど好ましい。ピース15aが大きいと集めて再構築しやすくなるためである。具体的には、最小幅が1mm以下であると好ましい。一方、最大幅は特に限定されない。ピース15aの最小幅が十分に小さければ、最大幅が大きくても再構築は困難である。もちろん、最大幅も小さいほど好ましい。
【0022】
また、個々のピース15aの形状は特に限定されない。
図1では曲線によって分割されており、個々のピースの形状が不規則な実施形態を示している。いわゆるパズルのような形状である。曲線ではなく直線で分割されていてもよい。ただし、再構築を困難にしようとするならば、個々のピースの形状は短冊状や格子状のような規則的な形状で、なおかつ個々のピースが区別できない方が望ましい。すなわち、パズルとして見たときに、組み立てようとする難度が高いほど望ましい。アンテナ15を格子状のピース15bに分割した第二の実施形態であるRFIDタグ11aを
図2に示す。このように個々のピース15bが判別できないと、事実上再度組み立てることはほぼ不可能になる。
【0023】
これらの半導体チップ16と、その周辺に配置されたアンテナ15を構成する個々のピース15a,15bは、RFIDタグ11,11a自体に対して粘着剤や接着剤で固定されていない。RFIDタグ11,11aの外周は基材13とカバー12とで覆われている。基材13の対象物10に取り付けるべき側には接着剤層14が設けられ、カバー12の外周部分も接着剤層14に対して固定されている。
【0024】
なお、基材13aがカバー12の全体と同じ大きさにまで広がっていてもよい。すなわち、接着剤層14は、基材13aの対象物10側の全範囲を覆うように形成されている。このRFIDタグ11bの第三の実施形態の断面図を
図3に示す。この場合、基材13aの周辺部にはカバー12aと接着させておくための接着剤層18が設けられている。
【0025】
図示しないが、RFIDタグ11を対象物10に取り付けるまでは、接着剤層14の対象物10に取り付けるべき側の面は剥離紙で覆っておく。対象物10に取り付ける際に、上記剥離紙を接着剤層14からはがして、接着剤層14側から対象物10の表面に貼り付けることで、RFIDタグ11は対象物10に対して固定される。
【0026】
基材13及びカバー12の構成としては、紙や樹脂フィルム、またはそれらを合わせたシートなどの電波を透過する素材を適宜採用することができる。これらは接着剤層14の他はいずれも粘着剤や接着剤を表面に露出させておらず、半導体チップ16及びピース15a,15bとの間で強固に接着されてはいない。
【0027】
カバー12には外側(取り付け時に露出する側をいう)に向けて凹んだ格納部17が形成されている。アンテナ15は、基材13とカバー12とによって囲まれた格納部17に格納されることで、ピース15aがまとまって形態を保持している。ただし、個々のピース15aはカバー12に対しても基材13に対しても、粘着剤や接着剤で固定されているわけではない。また、釘やピンのような部品でカバー12や基材13に固定されているわけでもない。格納部17はピース15aを揃えてアンテナ15として動作する配置に保持できる形状となっている。
図1及び
図2に示す実施形態では、格納部17は平べったい直方体状の内部空間を構成している。ただし、本願発明としては格納部17の形状は直方体状に限るものではなく、ピース15aが格納部17内部で変形したり位置がずれたりすることがないように、精密に保持できるものであればよい。
【0028】
また、他の実施形態として、アンテナ15は基材13bとカバー12bとによって囲まれているが、カバー12bではなく、基材13b側に格納部19が設けられていてもよい。このRFIDタグ11cの第四の実施形態の断面図を
図4に示す。この格納部19は、基材13bの対象物10側が凹んで形成されている。基材13bの対象物10側が接着剤層14で覆われている。一方、基材13bの外周部分には、接着剤層18aが設けられている。この接着剤層18aが基材13bにカバー12bを固定することで、ピース15a,15bを格納部19に収容したまま保持している。
【0029】
これらのピース15a,15bはカバー12,カバー12a,カバー12bによって保持されているだけである。このため、RFIDタグ11,11a,11b,11cを取り外そうとしてカバー12,12a,12bの一辺が接着剤層14,18,18aからはがれると、ピース15a,15bは格納部17、19から解放される。第一及び第二の実施形態における開放状態を
図5(a)、
図6(a)にそれぞれ示す。これに力をかけたり傾けたりするだけで、ピース15a,15bはばらばらになって落下する。第一及び第二の実施形態における落下状態を
図5(b)、
図6(b)にそれぞれ示す。このようになると並べなおして修復することはほぼ不可能になるので、不正な再利用をされることはない。第三、第四の実施形態ではカバー12a,12bの剥がし方が異なるものの、同様の結果が得られる。
【0030】
なお、カバー12,12a,12bだけが外れるようにするため、接着剤層14,18,18aは取り付ける対象物10の表面の性状に合わせて、強固に接着する素材を選択するとよい。
【符号の説明】
【0031】
1 対象物
2,2a RFIDタグ
3 カバー
4,4a,4b,4c 接着剤層
5 半導体チップ
6 アンテナ
7a 台座層
7b カバー層
8a 半導体チップ部
8b アンテナ部
10 対象物
11,11a、11b,11c RFIDタグ
12,12a,12b カバー
13,13a、13b 基材
14,18,18a 接着剤層
15 アンテナ
15a,15b ピース
16 半導体チップ
17、19 格納部
P 破断点
【要約】
【課題】一旦剥がすと再利用が不可能になるまで破壊されるRFIDタグを提供し、不正利用をより強固に防止する。
【解決手段】RFIDタグ11を構成し電流が通過しうるアンテナ15の少なくとも一部を複数のピース15aに分割してあり、分割されたピース15aは、基材13と、基材13から脱離可能であるカバー12とによって囲まれていることで前記アンテナとして必要な形態を保持されたRFIDタグ11とする。カバー12を脱離させるとアンテナ15の少なくとも一部が前記複数のピース15aに分離されて、再構築しての不正利用が不可能となる。
【選択図】
図1