特許第6886072号(P6886072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6886072
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20210603BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20210603BHJP
   G05F 1/70 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   H02M7/49
   H02M7/48 L
   G05F1/70 L
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-504048(P2020-504048)
(86)(22)【出願日】2019年8月9日
(86)【国際出願番号】JP2019031673
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 順平
(72)【発明者】
【氏名】土谷 多一郎
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/198331(WO,A1)
【文献】 特開2015−12725(JP,A)
【文献】 特開2015−154585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00−7/98
G05F 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位変換器を直列接続して構成されたアームを備える電力変換器と、
前記電力変換器を制御する制御装置とを備え、
前記複数の単位変換器の各々は、
複数のスイッチング素子、および第1の直流ラインと第2の直流ラインとの間に電気的に接続された第1のコンデンサを含む主回路と、
前記制御装置から受信した制御信号に従って前記複数のスイッチング素子を制御するように構成された制御回路と、
前記第1のコンデンサの電圧を降圧して電源電圧を生成し、前記電源電圧を前記制御回路へ供給する電源と、
前記主回路と前記電源との間に配置され、抵抗値が可変の限流抵抗回路とを備え、
前記限流抵抗回路の抵抗値は、第1の値と、前記第1の値よりも低い第2の値とのいずれかに切替可能であり、
前記電源は、
前記第1の直流ラインと前記第2の直流ラインとの間に電気的に接続された第2のコンデンサと、
前記第1の直流ラインと前記第2の直流ラインとの間に電気的に接続された過充電抑制回路と、
前記第1の直流ラインと前記第2の直流ラインとの間に電気的に接続され、前記第2のコンデンサの電圧を前記電源電圧に変換するように構成された電源回路と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第2のコンデンサの電圧の大きさに応じて、前記過充電抑制回路を制御する過充電抑制制御回路と、
前記複数のスイッチング素子のすべてを非導通に固定するゲートブロック状態であるか否か、および前記第1のコンデンサの電圧の大きさに応じて、前記限流抵抗回路の抵抗値を切り替える抵抗切替回路とを含み、
前記抵抗切替回路は、前記ゲートブロック状態のときには、前記第1のコンデンサの電圧の大きさに係らず、前記限流抵抗回路の抵抗値を前記第2の値に切り替える、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記アーム内のすべての前記単位変換器を同時に前記ゲートブロック状態、または前記ゲートブロック状態ではない状態に設定する、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記限流抵抗回路は、
直列に接続された第1の抵抗素子および第2の抵抗素子と、
前記第2の抵抗素子と並列に接続されたスイッチとを備え、
前記抵抗切替回路は、前記ゲートブロック状態であるか否か、および前記第1のコンデンサの電圧の大きさに応じて、前記スイッチをオンまたはオフに設定する、請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記抵抗切替回路は、
前記スイッチがオンの状態で、前記第1のコンデンサの電圧が上昇しているときには、前記第1のコンデンサの電圧が第1の閾値以上となったときに、前記スイッチをオフに切替え、
前記スイッチがオフの状態で、前記第1のコンデンサの電圧が下降しているときには、前記第1のコンデンサの電圧が第2の閾値以下となったときに、前記スイッチをオンに切替え、
前記ゲートブロック状態のときには、前記第1のコンデンサの電圧の大きさに係らず、前記スイッチをオンに設定し、
前記第1の閾値と前記第2の閾値とは、同一または相違する、請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第2の閾値は、前記第1の閾値よりも小さい、請求項4記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1の閾値および前記第2の閾値の大きさは、前記電力変換装置が起動後、前記複数のスイッチング素子がスイッチング動作する前において前記第1のコンデンサの電圧が安定する電圧である初期安定電圧と、前記第1のコンデンサの制御目標電圧との間である、請求項4または5記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1の閾値および前記第2の閾値の大きさは、前記制御回路が必要とする電力と前記電源が消費する電力との和と、前記スイッチがオフの状態における前記制御回路への供給電力とが一致するときの前記第1のコンデンサの電圧の値以上である、請求項4または5記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第2の閾値の大きさは、前記制御回路が必要とする電力と前記電源が消費する電力との和と、前記スイッチがオフの状態における前記制御回路への供給電力とが一致するときの前記第1のコンデンサの電圧と同一である、請求項5記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記スイッチは、前記電力変換装置が起動後、前記第のコンデンサの電圧が定められた値以上となるまでは、オフである、請求項4〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記電力変換装置が起動後、前記第のコンデンサの電圧が前記定められた値に達したときに、前記電源を機能させるための制御電源が起動し、前記スイッチがオンとなる、請求項9記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関し、より特定的には、少なくとも1つの主回路給電方式の単位変換器を直列接続して構成された電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、STATCOM(Static Synchronous Compensator)などの自励式無効電力補償装置、BTB(Back to Back)システムなどの直流送電システム、および、モータドライブインバータなどにおいては、モジュラー・マルチレベル変換器(MMC:Modular Multilevel Converter)の適用が検討されている(たとえば、国際公開第2007/025828号(特許文献1)参照)。
【0003】
MMCは、複数の単位変換器を直列に接続して構成されている。単位変換器は、スイッチング素子と直流コンデンサとを有する主回路を備える。単位変換器内のスイッチング素子がスイッチング動作することによって、直流コンデンサの電圧が出力端子へ出力される。スイッチング素子としては、一般的に、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの導通/非導通の制御が可能な半導体スイッチング素子が用いられる。
【0004】
単位変換器は、主回路に加え、MMC全体を制御する上位の制御装置と連携して主回路のスイッチング素子の導通/非導通を制御するための制御回路および電源を備える。電源は、主回路で生成した電力を基に制御回路に電源電圧を供給する。これは、主回路給電方式と呼ばれる。
【0005】
一般に、このような構成のMMCにおいて、主回路の直流コンデンサの直流電圧を限流抵抗により降圧して、電源への入力電圧が生成される。電源内部に設けられたコンデンサには、この入力電圧に応じた電力が一時的に蓄えられる。電源はこの入力電圧をさらに降圧した電源電圧を制御回路に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/025828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、直列接続された複数の単位変換器の直流コンデンサの電圧にアンバランスが有る場合に、複数の単位変換器のスイッチング素子をすべて非導通に固定するゲートブロックによって、電圧のアンバランスが拡大することがある。
【0008】
それゆえに、本発明の目的は、直列接続された複数の単位変換器の直流コンデンサの電圧のアンバランスがゲートブロックによって拡大されるのを防止することができる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電力変換装置は、複数の単位変換器を直列接続して構成されたアームを備える電力変換器と、電力変換器を制御する制御装置とを備える。複数の単位変換器の各々は、複数のスイッチング素子、および第1の直流ラインと第2の直流ラインとの間に電気的に接続された第1のコンデンサを含む主回路と、制御装置から受信した制御信号に従って複数のスイッチング素子を制御するように構成された制御回路と、第1のコンデンサの電圧を降圧して電源電圧を生成し、電源電圧を制御回路へ供給する電源と、主回路と電源との間に配置され、抵抗値が可変の限流抵抗回路とを備える。電源は、第1の直流ラインと第2の直流ラインとの間に電気的に接続された第2のコンデンサと、第1の直流ラインと第2の直流ラインとの間に電気的に接続された過充電抑制回路と、第1の直流ラインと第2の直流ラインとの間に電気的に接続され、第2のコンデンサの電圧を電源電圧に変換するように構成された電源回路と、制御部とを備える。制御部は、第2のコンデンサの電圧の大きさに応じて、過充電抑制回路を制御する過充電抑制制御回路と、複数のスイッチング素子のすべてを非導通に固定するゲートブロック状態であるか否か、および第1のコンデンサの電圧の大きさに応じて、限流抵抗回路の抵抗値を切り替える抵抗切替回路とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のスイッチング素子のすべてを非導通に固定するゲートブロック状態であるか否か、および第1のコンデンサの電圧の大きさに応じて、限流抵抗回路の抵抗値を切り替えるので、直列接続された複数の単位変換器の直流コンデンサの電圧のアンバランスがゲートブロックによって拡大されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態の電力変換装置の構成図である。
図2】単位変換器5の構成を示す回路ブロック図である。
図3】参考例の単位変換器5−1,5−2の構成を表わす図である。
図4】参考例における単位変換器5−1の動作を説明するための図である。
図5】参考例におけるゲートブロック時におけるスイッチSW1,SW2の状態、限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値、および直流電圧Vdc1,Vdc2の時間変化の一例を表わす図である。
図6】参考例におけるゲートブロック時におけるスイッチSW1,SW2の状態、限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値、および直流電圧Vdc1,Vdc2の時間変化の別の例を表わす図である。
図7】実施の形態の単位変換器の回路ブロック図である。
図8】実施の形態1における電源50の動作を説明するための図である。
図9】実施の形態1において、直流電圧Vdcが増加するときの供給電力PINの変化を表わす図である。
図10】実施の形態1において、直流電圧Vdcが減少するときの供給電力PINの変化を表わす図である。
図11】実施の形態1におけるゲートブロック時におけるスイッチSW1,SW2の状態、限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値、および直流電圧Vdc1,Vdc2の時間変化の例を表わす図である。
図12】実施の形態2において、直流電圧Vdcが増加するときおよび減少するときの供給電力PINの変化を表わす図である。
図13】実施の形態3において、直流電圧Vdcが増加するときの供給電力PINの変化を表わす図である。
図14】実施の形態3において、直流電圧Vdcが減少するときの供給電力PINの変化を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態の電力変換装置の構成図である。
【0014】
この電力変換装置100は、電力系統1の無効電力を補償する無効電力補償装置として使用される。図1を参照して、電力変換装置100は、少なくとも1つの主回路給電方式の単位変換器5を直列接続して構成されたアームA1〜A3と、少なくとも1つの単位変換器5を制御する制御装置4とを備える。より詳細には、電力変換装置100は、スイッチS1〜S6、変圧器2,3、限流抵抗器R1〜R3、交流ラインUL,VL,WL、変流器C1〜C3、リアクトルL1〜L3、アームA1〜A3、および制御装置4を備える。
【0015】
スイッチS1,S2,S3の各々の一方端子はそれぞれ電力系統1の三相の送電線1u,1v,1wに接続され、他方端子はそれぞれ変圧器2の3つの一次巻線に接続される。スイッチS1,S2,S3は、通常は導通状態であり、たとえば電力変換装置100のメンテナンス時に非導通状態にされる。変圧器2は、3つの一次巻線と3つの二次巻線とを含み、三相交流電力を授受する。
【0016】
限流抵抗器R1〜R3の各々の一方端子はそれぞれ変圧器2の3つの二次巻線に接続され、他方端子はそれぞれ交流ラインUL,VL,WLに接続される。限流抵抗器R1〜R3は、電力変換装置100の起動時に電力系統1からアームA1〜A3にそれぞれ流れる電流を制限する。
【0017】
スイッチS4,S5,S6は、それぞれ限流抵抗器R1〜R3に並列接続される。スイッチS4,S5,S6は、電力変換装置100の起動時においてアームA1〜A3に流れる電流が安定した後に導通状態にされる。変圧器3は、交流ラインUL,VL,WLの交流電圧に応じた値の三相交流電圧Vu,Vv,Vwを制御装置4に出力する。
【0018】
リアクトルL1およびアームA1は、交流ラインULと交流ラインVLとの間に直列接続される。リアクトルL2およびアームA2は、交流ラインVLと交流ラインWLとの間に直列接続される。リアクトルL3およびアームA3は、交流ラインWLと交流ラインULとの間に直列接続される。すなわち、アームA1〜A3はデルタ接続されている。アームA1〜A3は、制御装置4によって制御され、三相交流電力を発生する。
【0019】
アームA1〜A3の各々は、カスケード接続された複数の単位変換器5を含む。複数の単位変換器5の各々は、制御装置4からの制御信号に従って交流電力を発生する。
【0020】
アームA1の初段の単位変換器5の第1端子5aは、リアクトルL1の一方端子に接続されている。アームA1において、最終段以外の単位変換器5の第2端子5bは、後段の単位変換器5の第1端子5aに接続されている。アームA1の最終段の単位変換器5の第2端子5bは、リアクトルL2の一方端子に接続されている。
【0021】
アームA2の初段の単位変換器5の第1端子5aは、リアクトルL2の一方端子に接続されている。アームA2において、最終段以外の単位変換器5の第2端子5bは、後段の単位変換器5の第1端子5aに接続されている。アームA2の最終段の単位変換器5の第2端子5bは、リアクトルL3の一方端子に接続されている。
【0022】
アームA3の初段の単位変換器5の第1端子5aは、リアクトルL3の一方端子に接続されている。アームA3において、最終段以外の単位変換器5の第2端子5bは、後段の単位変換器5の第1端子5aに接続されている。アームA3の最終段の単位変換器5の第2端子5bは、リアクトルL1の一方端子に接続されている。
【0023】
リアクトルL1〜L3は、アームA1〜A3に流れる循環電流をそれぞれ抑制する。リアクトルL1〜L3は、アームA1〜A3とは別に設けられていてもよいし、アームA1〜A3のインダクタンス成分であっても構わない。変流器C1〜C3は、アームA1〜A3に流れる交流電流Iuv,Ivw,Iwuをそれぞれ検出して、制御装置4に出力する。
【0024】
制御装置4は、無効電力指令値Qr、三相交流電圧Vu,Vv,Vw、交流電流Iuv,Ivw,Iwu、後述する直流電圧Vdcなどの入力を受け、後述する制御信号GC、ゲートブロック信号GB、ゲートデブロック信号DEB、導通指令Sonなどを出力することにより、3つのアームA1〜A3の各々(すなわち複数個の単位変換器5の各々)を制御する。無効電力指令値Qrは、たとえば電力系統1の中央指令室(図示せず)から与えられる。電力変換装置100は、無効電力指令値Qrに応じた値の無効電力を電力系統1に供給する。
【0025】
図2は、単位変換器5の構成を示す回路ブロック図である。図2を参照して、単位変換器5は、主回路30と、制御回路32と、限流抵抗回路80と、電源50とを含む。
【0026】
主回路30は、コンデンサを備えたフルブリッジ回路により構成される。具体的には、主回路30は、第1端子5aおよび第2端子5bを有する。主回路30は、スイッチング素子11〜14と、ダイオードD1〜D4と、第1のコンデンサ15とを含む。主回路30は、スイッチング素子11〜14の導通/非導通を制御することにより第1のコンデンサ15の電圧に応じた振幅の電圧パルスを第1端子5aおよび第2端子5b間に出力することで、電力変換を行なう。
【0027】
スイッチング素子11〜14は、自己消弧型電力用半導体素子であり、たとえばIGBTで構成されている。スイッチング素子11,13は第1の直流ラインPLおよび第2の直流ラインNLの間に直列に接続されている。スイッチング素子12,14は第1の直流ラインPLおよび第2の直流ラインNLの間に直列に接続されている。スイッチング素子11,12のコレクタはともに第1の直流ラインPLに接続され、スイッチング素子13,14のエミッタはともに第2の直流ラインNLに接続されている。スイッチング素子11のエミッタとスイッチング素子13のコレクタとの接続点は第1端子5aに接続されている。スイッチング素子12のエミッタとスイッチング素子14のコレクタとの接続点は第2端子5bに接続されている。
【0028】
ダイオードD1〜D4は、スイッチング素子11〜14にそれぞれ逆並列に接続されている。第1のコンデンサ15は、第1の直流ラインPLと第2の直流ラインNLとの間に電気的に接続され、直流電力を蓄える。
【0029】
単位変換器5において、スイッチング素子11〜14は制御回路32によって導通/非導通が制御される。スイッチング素子11,13はそれぞれ相補的に導通状態とされる。スイッチング素子12,14はそれぞれ相補的に導通状態とされる。図2に示されるように、第2端子5bを基準とした第1端子5aまでの電圧をセル電圧Vcellと定義すると、セル電圧Vcellは、スイッチング素子11〜14の導通/非導通によって制御される。
【0030】
具体的には、スイッチング素子11,14が共に導通状態であり、スイッチング素子12,13が共に非導通状態である場合、セル電圧Vcellは第1のコンデンサ15の直流電圧Vdcと略等しい。スイッチング素子11,12が共に導通状態であり、スイッチング素子13,14が共に非導通状態である場合、セル電圧Vcellは略零である。スイッチング素子11,12が共に非導通状態であり、スイッチング素子13,14が共に導通状態である場合、セル電圧Vcellは略零である。スイッチング素子11,14が共に非導通状態であり、スイッチング素子12,13が共に導通状態である場合、セル電圧Vcellは第1のコンデンサ15の直流電圧Vdcの極性を反転させた電圧に略等しい。
【0031】
アームA1〜A3各々の全体の電圧は、対応するアームA1〜A3に含まれる各単位変換器5のセル電圧Vcellの和で表される。したがって、アームA1〜A3各々の全体の電圧は、各単位変換器5を構成するスイッチング素子11〜14の導通/非導通によって制御することができる。
【0032】
主回路30は、スイッチS7をさらに含む。スイッチS7は、第1端子5aと第2端子5bとの間に接続されている。スイッチS7は、制御回路32からの導通指令Sonに応じて閉成することにより、第1端子5aおよび第2端子5bを短絡することが可能に構成されている。
【0033】
制御回路32は、駆動回路40,42と、スイッチ操作回路44と、I/F(インターフェイス)回路48とを含む。制御回路32は、制御装置4から受信した制御信号に従ってスイッチング素子11〜14の導通/非導通を制御するように構成される。
【0034】
I/F回路48は、図示しない有線または無線で制御装置4と通信する。I/F回路48は、制御装置4から、主回路30のフルブリッジ回路を制御するための制御信号GCを受信する。I/F回路48はさらに、制御装置4から、フルブリッジ回路を構成するスイッチング素子11〜14を全て非導通に固定するためのゲートブロック信号GBを受信する。より具体的には、スイッチング素子11〜14を全て非導通に固定するときには、ゲートブロック信号GBは、Hレベルに活性化される。ゲートブロック信号GBのHレベルの活性化に応じて、ゲートデブロック信号DEBは、Lレベルに非活性化される。IF回路48は、制御装置4から、フルブリッジ回路を構成するスイッチング素子11〜14の非導通固定を解除するためのゲートデブロック信号DEBを受信する。より具体的には、スイッチング素子11〜14の非導通固定を解除するときには、ゲートデブロック信号DEBは、Hレベルに活性化される。ゲートデブロック信号DEBのHレベルの活性化に応じて、ゲートブロック信号GBは、Lレベルに非活性化される。I/F回路48は、受信した制御信号GC、ゲートブロック信号GB、およびゲートデブロック信号DEBを駆動回路40,42へ出力する。
【0035】
駆動回路40は、制御信号GCに応答してスイッチング素子11,13の導通/非導通を制御する。駆動回路40は、ゲートブロック信号GBに応答して、スイッチング素子11,13を非導通状態に固定された状態(停止状態、またはゲートブロック状態)とする。駆動回路40は、ゲートデブロック信号DEBに応答して、スイッチング素子11,13の非導通固定状態が解除された状態(ゲートブロック状態ではない状態、またはゲートデブロック状態)とする。
【0036】
駆動回路42は、制御信号GCに応答してスイッチング素子12,14の導通/非導通を制御する。駆動回路42は、ゲートブロック信号GBに応答して、スイッチング素子12,14を非導通状態に固定された状態(停止状態、またはゲートブロック状態)とする。駆動回路42は、ゲートデブロック信号DEBに応答して、スイッチング素子12,14の非導通固定状態が解除された状態(ゲートブロック状態ではない状態、またはゲートデブロック状態)とする。
【0037】
言い換えると、ゲートブロック信号GBがHレベル、およびゲートデブロック信号DEBがLレベルのときに、スイッチング素子11〜14は、ゲートブロック状態となる。ゲートブロック信号GBがLレベル、およびゲートデブロック信号DEBがHレベルのときに、スイッチング素子11〜14は、ゲートブロック状態ではない状態となる。
【0038】
制御装置4は、アームA1内のすべての単位変換器5へのゲートブロック信号GBのレベルおよびゲートデブロック信号DEBのレベルを同時に制御する。これによって、アームA1内のすべての単位変換器5のスイッチング素子11〜14は、同時に非導通となるとともに、同時に非導通固定が解除される。アームA2、およびアームA3についても同様である。
【0039】
スイッチ操作回路44は、スイッチS7を操作するための回路である。スイッチ操作回路44は、励磁コイル18への通電を制御装置4からの指令に応じて制御する。通常動作時、励磁コイル18への電流供給が停止されているため、スイッチS7は非導通状態とされる。一方、制御装置4は、複数の単位変換器5のうちのいずれかの単位変換器5において、スイッチング素子の短絡故障等の異常を検知した場合には、この故障した単位変換器5に向けてスイッチS7の導通指令Sonを出力する。故障した単位変換器5では、I/F回路48が導通指令Sonを受信してスイッチ操作回路44へ出力する。導通指令Sonに応じてスイッチ操作回路44が励磁コイル18に電流を供給することにより、スイッチS7が導通状態にされる。これにより、故障した単位変換器5の出力が短絡される。
【0040】
限流抵抗回路80は、主回路30と電源50との間の第1の直流ラインPLに介挿される。限流抵抗回路80は、第1のコンデンサ15の直流電圧Vdcを降圧する。
【0041】
電源50は、入力端子501,502を含む。入力端子501は第1の直流ラインPLに接続される。入力端子502は第2の直流ラインNLに接続される。電源50は、第1のコンデンサ15に電気的に並列に接続される。電源50は、第1のコンデンサ15の電圧を降圧して電源電圧を生成し、電源電圧を制御回路32へ供給する。これにより、単位変換器5は、主回路30から制御回路32に電力を供給することができる自給式のセルを形成する。
【0042】
次に、電力変換装置100の通常動作の概要を説明する。
制御装置4は、変流器C1〜C3からの交流電流Iuv,Ivw,Iwuに基づいて、交流ラインUL,VL,WLに流れる交流電流に応じたレベルの三相交流電流Iu,Iv,Iwを求める。ただし、Iu=Iuv−Iwu、Iv=Ivw−Iuv、Iw=Iwu−Ivwである。
【0043】
制御装置4は、変圧器3からの三相交流電圧Vu,Vv,Vwと演算器31からの三相交流電流Iu,Iv,Iwとに基づいて無効電力Q0を求める。制御装置4は、無効電力指令値Qrと無効電力Q0との偏差ΔQ=Qr−Q0を求める。
【0044】
制御装置4は、変流器C1〜C3からの交流電流Iuv,Ivw,Iwu、変圧器3からの三相交流電圧Vu,Vv,Vwなどに基づいて、それぞれ複数個の単位変換器5に対応する60個の電圧指令値Vdcrを生成する。
【0045】
制御装置4は、電圧指令値Vdcrと直流電圧Vdcとの偏差ΔVdcを求める。制御装置4は、電圧偏差ΔVdcを0とし、かつ無効電力偏差ΔQを0とするための制御演算を実行することにより、三相交流電圧指令値Vuvr,Vvwr,Vwurを生成する。
【0046】
換言すると、制御装置4は、電圧偏差ΔVdcが0になるように各単位変換器5の有効電流制御を行なうとともに、無効電力偏差ΔQが0になるように各単位変換器5の無効電流制御を行なう。
【0047】
三相交流電圧指令値Vuvr,Vvwr,Vwurを基に、アームA1〜A3の各単位変換器5が運転され、直流電圧Vdcが電圧指令値Vdcrに一致するとともに、無効電力Q0が無効電力指令値Qrに一致する。具体的には、制御装置4は、たとえばPWM(Pulse Width Modulation)制御に従って、電力変換装置が三相交流電圧指令値Vuvr,Vvwr,Vwurに相当する電圧を出力するための、制御信号GCを生成する。制御装置4は、制御信号GCをアームA1〜A3の各単位変換器5の制御回路32に出力する。各制御回路32が、制御信号GCに従って、スイッチング素子11〜14の各々を所定のタイミングで導通状態にすることにより、直流電圧が交流電圧に変換される。
【0048】
(参考例)
以下では、アームA1が2つの単位変換器5−1,5−2を備えるものとして説明する。
【0049】
図3は、参考例の単位変換器5−1,5−2の構成を表わす図である。
交流ラインULと交流ラインVLとの間の交流電圧の振幅をVxとする。単位変換器5−1の第1のコンデンサ15の直流電圧をVdc1、単位変換器5−2の第1のコンデンサ15の直流電圧をVdc2とする。単位変換器5−1の限流抵抗回路80−1に含まれるスイッチをスイッチSW1とする。単位変換器5−2の限流抵抗回路80−2に含まれるスイッチをスイッチSW2とする。図3に示す単位変換器5−1は、以下のように動作する。単位変換器5−2も同様に動作する。
【0050】
第2のコンデンサ51には、第1のコンデンサ15からの電荷が限流抵抗回路80−1を通じて供給される。電源150から制御回路32に電力が供給される。ここで、制御回路32の負荷電力と電源150で発生する損失電力との和をPoと定義する。Poが必要電力である。限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値をRとすると、主回路30から電源150への供給電力PINは次式で表される。
【0051】
PIN=(Vdc-Vin)/R*Vin・・・(1)
制御回路32への電源供給を維持するためには、PIN≧Poの関係が成立する必要がある。PIN=Poの場合には、入力電圧Vinは一定値に保たれる。PIN>Poの場合には、余剰電力(PIN−Po)によって、第2のコンデンサ51は、過充電される。入力電圧Vinは、電源150の内部回路仕様によって制約があり、その平均値はほぼ一定にする必要がある。このため、第2のコンデンサ51と並列に設けられた過充電抑制回路54内の抵抗R5が、余剰電力を消費することによって、入力電圧Vinをほぼ一定値に維持している。PIN<Poの場合には、制御回路32には、制御回路32が必要する電力が供給されない。
【0052】
第1のコンデンサ15の直流電圧Vdcは、主回路30の運転状態に応じて所定の範囲で変動する。
【0053】
図4は、参考例における単位変換器5−1の動作を説明するための図である。単位変換器5−2の動作も同様である。
【0054】
図4には、直流電圧Vdc1に対する、スイッチSW1の状態、限流抵抗回路80−1の抵抗値、および供給電力PINが示されている。直線LAは、スイッチSW1がオンに設定されて限流抵抗回路80−1の抵抗値がRaとなる場合における直流電圧Vdcに対する供給電力PINの値を表わす。直線LBは、スイッチSW1がオフに設定されて限流抵抗回路80−1の抵抗値が(Ra+Rb)の場合における直流電圧Vdcに対する供給電力PINの値を表わす。
【0055】
抵抗切替回路188−1が、直流電圧Vdc1がVA未満のときに、スイッチSW1をオンに設定することによって、限流抵抗回路80−1の抵抗値は、Raとなる。このときには、供給電力PINは、直線LA上の値となる。仮に、直流電圧Vdc1がVA未満のときに、スイッチSW1がオフに設定されるとすると、供給電力PINが直線LB上の値となるので、供給電力PINが必要電力Poよりも小さくなる。その結果、制御回路32には、制御回路32が必要する電力が供給されない。
【0056】
抵抗切替回路188−1が、直流電圧Vdc1がVA以上のときに、スイッチSW1をオフに設定することによって、限流抵抗回路80−1の抵抗値は、(Ra+Rb)となる。このときには、供給電力PINは、直線LB上の値となる。仮に、直流電圧Vdc1がVA以上のときには、スイッチSW1がオンに設定されるとすると、供給電力PINが直線LA上の値となるので、供給電力PINと必要電力Poとの差が大きくなる。その結果、余剰電力が大きくなる。
【0057】
スイッチSW1を図4に示すように設定することによって、余剰電力を小さくするとともに、制御回路32に必要な電力を供給することができる。
【0058】
図5は、参考例におけるゲートブロック時におけるスイッチSW1,SW2の状態、限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値、および直流電圧Vdc1,Vdc2の時間変化の一例を表わす図である。
【0059】
図5には、ゲートブロック開始時に直流電圧Vdc1と直流電圧Vdc2との間にアンバランスがないときのVdc1,Vdc2の時間変化が示されている。
【0060】
時刻t1において、単位変換器5−1のゲートブロック信号GBおよび単位変換器5−2のゲートブロック信号がHレベルに活性化されると、単位変換器5−1のスイッチング素子11〜14および単位変換器5−1のスイッチング素子11〜14が全て非導通に固定される。このときには、スイッチSW1およびスイッチSW2がオフのため、単位変換器5−1の限流抵抗回路80−1の抵抗値、および単位変換器5−2の限流抵抗回路80−2の抵抗値は、(Ra+Rb)である。
【0061】
その後、限流抵抗回路80−1と限流抵抗回路80−2の抵抗値が等しいので、直流電圧Vdc1および直流電圧Vdc2は、時間とともに同じように低下する。
【0062】
時刻t2において、直流電圧Vdc1およびVdc2が、V2まで下降すると、抵抗切替回路188−1,188−2によって、スイッチSW1およびスイッチSW2がオンに切り替えられる。その結果、単位変換器5−1の限流抵抗回路80−1の抵抗値、および単位変換器5−2の限流抵抗回路80−2の抵抗値は、Raとなる。
【0063】
その後、2つの単位変換器5−1,5−2の限流抵抗回路80−1、80−2の抵抗値が等しいので、直流電圧Vdc1および直流電圧Vdc2は、時間とともに同じように低下する。
【0064】
時刻t3において、直流電圧Vdc1およびVdc1は、Vx/2となり、定常状態に達する。
【0065】
図6は、参考例におけるゲートブロック時におけるスイッチSW1,SW2の状態、限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値、および直流電圧Vdc1,Vdc2の時間変化の別の例を表わす図である。
【0066】
図6には、ゲートブロック開始時に直流電圧Vdc1と直流電圧Vdc2との間にアンバランスがあるときのVdc1,Vdc2の時間変化が示されている。
【0067】
時刻t1において、単位変換器5−1のゲートブロック信号GBおよび単位変換器5−2のゲートブロック信号が活性化されると、単位変換器5−1のスイッチング素子11〜14および単位変換器5−2のスイッチング素子11〜14が全て非導通に固定される。このときには、スイッチSW1およびスイッチSW2がオフのため、単位変換器5−1の限流抵抗回路80−1の抵抗値、および単位変換器5−2の限流抵抗回路80−2の抵抗値は、(Ra+Rb)である。
【0068】
その後、2つの単位変換器5−1,5−2の限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値が等しいので、直流電圧Vdc1および直流電圧Vdc2は、時間とともに同じように低下する。
【0069】
時刻t2において、直流電圧Vdc1がV2まで下降すると、抵抗切替回路188−1によって、スイッチSW1がオンに切り替えられる。その結果、単位変換器5−1の限流抵抗回路80−1の抵抗値は、Raとなる。単位変換器5−2の限流抵抗回路80−2の抵抗値は、(Ra+Rb)を維持する。
【0070】
その後、直流電圧Vdc1および直流電圧Vdc2は、時間とともに低下する。単位変換器5−1の限流抵抗回路80−1の抵抗値が単位変換器5−2の限流抵抗回路80−2の抵抗値よりも小さいので、直流電圧Vdc1の低下速度が、直流電圧Vdc2の低下速度よりも大きい。
【0071】
時刻t3において、Vdc1+Vdc2<Vxとなると、電力系統1から単位変換器5−2の第1のコンデンサ15への充電が開始される。
【0072】
その後、Vdc1+Vdc2=Vxを維持しながら、直流電圧Vdc1は、時間とともに減少し、直流電圧Vdc2は、時間とともに増加する。
【0073】
時刻t4において、Vdc1:Vdc2=(Ra+Rb):Raとなり、定常状態に達する。
【0074】
以上のように、ゲートブロック開始時に直流電圧Vdc1と直流電圧Vdc2との間にアンバランスがある場合には、ゲートブロックによって、そのアンバランスが拡大されてしまう。その結果、主回路30および電源50を構成する部品に耐圧を超える電圧が印可されることがある。また、直流電圧が低い方の単位変換器において、制御回路32に必要な電力を供給できないことがある。
【0075】
図7は、実施の形態の単位変換器の回路ブロック図である。図7を参照して、限流抵抗回路80は、抵抗Ra,Rbと、スイッチSWとを備える。電源50は、第2のコンデンサ51、電圧センサ46,52、過充電抑制回路54、制御部500、および電源回路56を備える。過充電抑制回路54は、スイッチS8と、抵抗R5とを含む。
【0076】
第1の直流ラインPL上に抵抗Raと抵抗Rbとが直列に接続される。抵抗RbとスイッチSWとが並列に接続される。スイッチSWは、制御部500によって制御される。抵抗Raの抵抗値をRa、抵抗Rbの抵抗値をRbとする。スイッチSWがオンのときには、限流抵抗回路80の抵抗は、Raとなる。スイッチSWがオフのときには、限流抵抗回路80の抵抗は、(Ra+Rb)となる。
【0077】
第2のコンデンサ51は、第1の直流ラインPL上の入力端子501と第2の直流ラインNL上の入力端子502との間に接続される。第2のコンデンサ51は、第1のコンデンサ15から限流抵抗回路80を介して与えられる電力により入力電圧Vinを生成するように構成される。
【0078】
電源回路56は、第1の直流ラインPLと第2の直流ラインNLとの間に電気的に接続され、第2のコンデンサ51の電圧を電源電圧に変換するように構成される。
【0079】
電圧センサ46は、第1のコンデンサ15の端子間の直流電圧Vdcを検出し、検出値を制御部500に出力する。電圧センサ52は、第2のコンデンサ51の端子間の電圧(以下、入力電圧)Vinを検出し、検出値を制御部500に出力する。
【0080】
スイッチS8および抵抗R5は、入力端子501と入力端子502との間に、電気的に直列に接続される。スイッチS8は、制御部500により導通/非導通が制御される。スイッチS8が導通状態であるときに、抵抗R5に第2のコンデンサ51の放電電流が流れ、第2のコンデンサ51の入力電圧Vinが低下する。すなわち、抵抗R5は第2のコンデンサ51の過充電抑制抵抗である。スイッチS8は、トランジスタ、リレー等によって構成される。
【0081】
制御電源90は、入力電圧VinがV7まで上昇すると、電源50を機能させるために起動される。制御電源90の起動に伴って、制御電源起動信号UCがHレベルとなる。
【0082】
制御部500は、電圧センサ52の検出値に基づいて、スイッチS8の導通/非導通および電源回路56の起動/停止を制御する。制御部500は、電圧センサ46の検出値に基づいて、限流抵抗回路80のスイッチSWを制御する。制御部500は、過充電抑制制御回路53と、起動/停止回路55と、抵抗切替回路88とを備える。抵抗切替回路88は、電圧検出回路83と、OR回路89と、AND回路82とを備える。
【0083】
過充電抑制制御回路53は、入力電圧Vinに基づいて、スイッチS8を導通/非導通させることにより、第2のコンデンサ51の過充電を抑制する。過充電抑制制御回路53からスイッチS8へ出力される信号は、入力電圧Vinの上昇時に入力電圧Vinの検出値が閾値V3以上となったときにL(論理ロー)レベルからH(論理ハイ)レベルに遷移する。一方、過充電抑制制御回路53からスイッチS8へ出力される信号は、入力電圧Vinの下降時に入力電圧Vinの検出値が閾値V4以下となったときにHレベルからLレベルに遷移する。ただし、V3>V4である。
【0084】
スイッチS8は、過充電抑制制御回路53から出力される信号がHレベルのときに導通状態にされ、Lレベルのときに非導通状態にされるように構成される。
【0085】
起動/停止回路55は、入力電圧Vinの検出値に基づいて、電源回路56の起動/停止を制御する。起動/停止回路55から電源回路56へ出力される信号は、入力電圧Vinの上昇時に入力電圧Vinの検出値が閾値V5以上となったときにLレベルからHレベルに遷移する。一方、起動/停止回路55から電源回路56へ出力される信号は、入力電圧Vinの下降時に入力電圧Vinの検出値が閾値V6以下となったときにHレベルからLレベルに遷移する。ただし、V5>V6である。
【0086】
電源回路56は、起動/停止回路55の出力信号がLレベルからHレベルに遷移したときに起動され、制御回路32に電源電圧を供給する。これによって、制御回路32が起動される。一方、電源回路56は、起動/停止回路55の出力信号がHレベルからLレベルに遷移したときに停止される。これによって、電源回路56から制御回路32への電源電圧の供給が停止され、制御回路32が停止される。
【0087】
抵抗切替回路88は、第1のコンデンサ15の電圧Vdc、制御電源起動信号UC、およびゲートブロック信号GBに基づいて、限流抵抗回路80の抵抗値を切り替える。
【0088】
電圧検出回路83から出力される信号は、直流電圧Vdcの上昇時に直流電圧Vdcの検出値が閾値V1(第1の閾値)以上となったときにHレベルからLレベルに遷移する。一方、電圧検出回路83からスイッチSWへ出力される信号は、直流電圧Vdcの下降時に直流電圧Vdcの検出値が閾値V2(第2の閾値)以下となったときにLレベルからHレベルに遷移する。ただし、V1>V2である。閾値V1は、直流電圧Vdcの上昇時のVAに相当する。閾値V2は、直流電圧Vdcの下降時のVAに相当する。閾値V1およびV2の大きさは、電力変換装置が起動後、複数のスイッチング素子11〜14がスイッチング動作する前において、第1のコンデンサ15の電圧が安定する電圧である初期安定電圧VSと、第1のコンデンサ15の制御目標電圧VRとの間である。
【0089】
OR回路89は、電圧検出回路83の出力信号とゲートブロック信号GBとの論理和を出力する。AND回路82は、OR回路89の出力信号と、制御電源起動信号UCとの論理積を表わす信号をスイッチSWへ出力する。
【0090】
スイッチSWは、制御電源起動信号UCがLレベルのときには、オフとなる。これによって、限流抵抗回路80の抵抗値は、(Ra+Rb)となる。つまり、制御電源起動信号UCがHレベルとなるのは、入力電圧VinがV7まで立ち上がった後であるから、スイッチSWは、電力変換装置100の起動後、入力電圧VinがV7以上となるまでは、オフとなる。
【0091】
スイッチSWは、制御電源起動信号UCがHレベルであり、抵抗切替回路88の出力信号がHレベルまたはゲートブロック信号GBがHレベルのときに、オンとなる。これによって、限流抵抗回路80の抵抗値は、Raとなる。スイッチSWは、抵抗切替回路88の出力信号がLレベルかつゲートブロック信号GBがLレベルのときに、オフとなる。これによって、限流抵抗回路80の抵抗値は、(Ra+Rb)となる。
【0092】
図8は、実施の形態1の電源50の動作を説明するための図である。直流電圧Vdcは、電力変換装置の運転範囲である下限電圧VLと上限電圧VHとの間で変化する。
【0093】
時刻t0において、制御装置4によって、スイッチS1,S2,S3が導通状態にされて、電力変換装置100が起動される。限流抵抗回路80内のスイッチSWは、ノーマリオフのため、限流抵抗回路80の抵抗値は、(Ra+Rb)である。単位変換器5では第1のコンデンサ15の初期充電が実行され、第1のコンデンサ15の直流電圧Vdcが上昇する。それに伴い、第2のコンデンサ51は、直列接続された抵抗Raおよび抵抗Rbを介して充電されて、第2のコンデンサ51の入力電圧Vinも上昇する。
【0094】
時刻t1において、入力電圧VinがV7まで上昇すると、電源50を機能させるための制御電源90が起動する。制御電源90の起動に伴って、制御電源起動信号UCがHレベルとなるとともに、電圧センサ46,52、過充電抑制制御回路53、起動/停止回路55、抵抗切替回路88が動作を開始する。電圧センサ46によって検出された第2のコンデンサ51の直流電圧Vdcは、V1以下であるため、抵抗切替回路88によって、スイッチSWへHレベルの信号(オン指令)が送られる。これによって、スイッチSWがオンとなり、限流抵抗回路80の抵抗値はRaに低減される。
【0095】
時刻t2において、入力電圧VinがV5まで上昇すると、起動/停止回路55によって、電源回路56へHレベルの信号が送られる。これによって、電源回路56が起動され、制御回路32に電源電圧が供給されて、制御回路32が起動される。
【0096】
その後、第1のコンデンサ15の電圧Vdcは、初期充電状態における安定点である初期安定電圧VSに到達する。初期安定電圧VSは、下限電圧VL以上に設定されている。このときには、PIN>Poとなるため、過充電抑制制御回路53によって、過充電抑制回路54が動作して、入力電圧VinはV3〜V4の範囲内となるように制御される。
【0097】
時刻t3において、制御装置4は、スイッチング素子11〜14の非導通固定を解除するためのゲートデブロック信号DEBをHレベルに活性化する。I/F回路48は、ゲートデブロック信号DEBを駆動回路40,42へ出力する。駆動回路40は、ゲートデブロック信号DEBに応答して、スイッチング素子11,13の非導通固定状態を解除する。駆動回路42は、ゲートデブロック信号DEBに応答して、スイッチング素子12,14の非導通固定状態を解除する。さらに、制御装置4は、直流電圧Vdcが制御目標電圧VRと一致するようにするために、スイッチング素子11〜14の導通/非導通を制御する制御信号GCを出力する。I/F回路48は、制御信号GCを駆動回路40,42へ出力する。駆動回路40は、制御信号GCに応答してスイッチング素子11,13の導通/非導通を制御する。駆動回路42は、制御信号GCに応答してスイッチング素子12,14の導通/非導通を制御する。これによって、第1のコンデンサ15の直流電圧Vdcは、制御目標電圧VRに向かって上昇する。
【0098】
時刻t4において、第2のコンデンサ51の直流電圧VdcがV1まで上昇すると、抵抗切替回路88によって、スイッチSWへLレベルの信号(オフ指令)が送られる。これによって、スイッチSWがオフとなり、限流抵抗回路80の抵抗値は(Ra+Rb)に増加する。その結果、供給電力PINが減少して余剰電力が抑えられる。その後も、第1のコンデンサ15の電圧Vdcは、制御目標電圧VRに向かって上昇し、制御目標電圧VRに達した後、制御目標電圧VRを維持する。
【0099】
時刻t5において、制御装置4は、スイッチング素子11〜14を非導通状態に固定するためのゲートブロック信号GBをハイレベルに活性化する。I/F回路48は、ゲートブロック信号GBを駆動回路40,42へ出力する。駆動回路40は、ゲートブロック信号GBに応答して、スイッチング素子11,13を非導通状態に固定する。駆動回路42は、ゲートブロック信号GBに応答して、スイッチング素子12,14を非導通状態に固定する。これによって、第1のコンデンサ15の直流電圧Vdcは、制御目標電圧VRから、初期安定電圧VSに向かって、減少する。
【0100】
さらに、ゲートブロック信号GBがHレベルとなると、抵抗切替回路88によって、スイッチSWへHレベルの信号(オン指令)が送られる。これによって、スイッチSWがオンとなり、限流抵抗回路80の抵抗値はRaに低減される。これによって、供給電力PINが増加する。
【0101】
時刻t6において、制御装置4によって、スイッチS1,S2,S3が非導通状態にされて、電力変換装置100が停止すると、第1のコンデンサ15の直流電圧Vdcおよび入力電圧Vinが減少する。
【0102】
時刻t7において、入力電圧VinがV6まで下降すると、起動/停止回路55によって、電源回路56へLレベルの信号が送られる。これによって、電源回路56が停止し、制御回路32への電源電圧の供給が停止する。
【0103】
時刻t8において、入力電圧VinがV7まで下降すると、制御電源起動信号UCがLレベルとなる。これによって、抵抗切替回路88によって、スイッチSWへLレベルの信号(オフ指令)が送られるとともに、制御電源90が停止する。制御電源90の停止によって、電源50の機能が停止する。
【0104】
図9は、実施の形態1において、直流電圧Vdcが増加するときの供給電力PINの変化を表わす図である。図10は、実施の形態1において、直流電圧Vdcが減少するときの供給電力PINの変化を表わす図である。図9および図10には、直流電圧Vdcが下限電圧VL以上のときの供給電力PINが示されている。
【0105】
直線LAは、スイッチSWがオンに設定されて限流抵抗回路80の抵抗値がRaとなる場合における直流電圧Vdcに対する供給電力PINの値を表わす。直線LBは、スイッチSWがオフに設定されて限流抵抗回路80の抵抗値が(Ra+Rb)の場合における直流電圧Vdcに対する供給電力PINの値を表わす。直線LB上の供給電力PINの値が必要電力Poの値と一致するときの直流電圧Vdcの値がV2である。すなわち、制御回路32が必要とする電力と電源50が消費する電力との和と、スイッチSWがオフの状態において、直流電圧VdcがV2のときの制御回路32への供給電力PINとが一致するV1は、V2よりも大きな値に設定されている。
【0106】
図9を参照して、直流電圧VdcがV1未満のときには、スイッチSWがオンのため、限流抵抗回路80の抵抗値はRaである。その結果、直流電圧Vdcの増加とともに、供給電力PINは、直線LA上を上昇する。
【0107】
直流電圧Vdcが増加してV1に達したときに、スイッチSWがオフとなるため、限流抵抗回路80の抵抗値は(Ra+Rb)に増加する。その結果、直流電圧Vdcの増加とともに、供給電力PINは、直線LB上を上昇する。仮に、直流電圧Vdcが増加してV1に達した後も、供給電力PINが直線LA上で変化する場合には、供給電力PINと必要電力Poとの差が増加するので、余剰電力が増加する。本実施の形態では、直流電圧Vdcが増加してV1に達したときに、供給電力PINを直線LB上で変化させることによって、余剰電力を抑制することができる。
【0108】
図10を参照して、直流電圧VdcがV2を超えるときには、スイッチSWがオフのため、限流抵抗回路80の抵抗値は(Ra+Rb)である。その結果、直流電圧Vdcの減少とともに、供給電力PINは、直線LB上を下降する。
【0109】
直流電圧Vdcが減少してV2に達したときに、スイッチSWがオンとなるため、限流抵抗回路80の抵抗値はRaに減少する。その結果、直流電圧Vdcの減少とともに、供給電力PINは、直線LA上を下降する。仮に、直流電圧Vdcが減少してV2に達した後も、供給電力PINが直線LB上で変化する場合には、供給電力PINが必要電力Poよりも小さくなり、制御回路32に必要な電力を供給することができない。本実施の形態では、直流電圧Vdcが減少してV2に達したときに、供給電力PINを直線LA上で変化させることによって、供給電力PINを必要電力Po以上にすることができる。
【0110】
以上のように、本実施の形態によれば、直流電圧Vdcの大きさに応じて、限流抵抗回路80の抵抗値を切り替えることによって、直流電圧Vdcが低電圧のときの電源供給の確保と、直流電圧Vdcが高電圧のときの電力損失の抑制とを両立させることができる。
【0111】
次に、実施の形態1による、複数の単位変換器5の間の直流電圧Vdcのバランスについて説明する。
【0112】
参考例と同様に、アームA1が2つの単位変換器5−1,5−2を備えるものとする。交流ラインULと交流ラインVLとの間の交流電圧の振幅をVxとする。単位変換器5−1,5−2の第1のコンデンサ15の直流電圧をVdc1,Vdc2とする。単位変換器5−1の限流抵抗回路80−1,単位変換器5−2の限流抵抗回路80−2に含まれるスイッチをSW1,SW2とする。単位変換器5−1,5−2の抵抗切替回路を88−1,88−2とする。
【0113】
図11は、実施の形態1におけるゲートブロック時におけるスイッチSW1,SW2の状態、限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値、および直流電圧Vdc1,Vdc2の時間変化の例を表わす図である。
【0114】
図11には、ゲートブロック開始時に直流電圧Vdc1と直流電圧Vdc2の間にアンバランスがあるときのVdc1,Vdc2の時間変化が示されている。
【0115】
時刻t1において、単位変換器5−1のゲートブロック信号GBおよび単位変換器5−2のゲートブロック信号が活性化されると、単位変換器5−1のスイッチング素子11〜14および単位変換器5−1のスイッチング素子11〜14が全て非導通に固定される。また、単位変換器5−1のゲートブロック信号GBおよび単位変換器5−2のゲートブロック信号が活性化されると、単位変換器5−1,5−2の抵抗切替回路88−1,88−2によって、スイッチSW1,SW2がオンに切り替えられる。その結果、単位変換器5−1,5−2の限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値は、Raとなる。
【0116】
その後、2つの単位変換器5−1,5−2の限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値が等しいので、直流電圧Vdc1および直流電圧Vdc2は、時間とともに同じように低下する。
【0117】
時刻t2において、Vdc1+Vdc2<Vxとなると、電力系統1から単位変換器5−1の第1のコンデンサ15への充電が開始される。
【0118】
その後、Vdc1+Vdc2=Vxを維持しながら、直流電圧Vdc1は、時間とともに増加し、直流電圧Vdc2は、時間とともに減少する。
【0119】
時刻t3において、Vdc1=Vdc2=Vx/2となり、定常状態に達する。
以上のように、本実施の形態によれば、ゲートブロックと同時に2つの単位変換器5−1,5−2の限流抵抗回路80のスイッチSWをオンに設定して、限流抵抗回路80−1,80−2の抵抗値をRaに揃える。これによって、ゲートブロック開始時に直流電圧Vdc1と直流電圧Vdc2との間にアンバランスがある場合でも、直流電圧Vdc1と直流電圧Vdc2との間のアンバランスを解消することができる。
【0120】
なお、説明の便宜上、アーム内の直列に接続された単位変換器の数が2つとしたが、これに限定されるものではない。アーム内の直列に接続された単位変換器の数がn個(n≧3)でも同様の制御によって、複数の単位変換器の直流電圧の間のアンバランスを解消することができる。
【0121】
実施の形態2.
本実施の形態では、直流電圧Vdcの増加するときと、直流電圧Vdcが下降するときとで、共通の電圧V2を閾値電圧として、スイッチSWを切り替える。
【0122】
図12は、実施の形態2において、直流電圧Vdcが増加するときおよび減少するときの供給電力PINの変化を表わす図である。図12には、直流電圧Vdcが下限電圧VL以上のときの供給電力PINが示されている。
【0123】
直流電圧VdcがV2未満のときには、スイッチSWがオンのため、限流抵抗回路80の抵抗値はRaである。その結果、直流電圧Vdcの増加とともに、供給電力PINは、直線LA上を上昇する。
【0124】
直流電圧Vdcが増加してV2に達したときに、スイッチSWがオフとなるため、限流抵抗回路80の抵抗値は(Ra+Rb)に増加する。その結果、直流電圧Vdcの増加とともに、供給電力PINは、直線LB上を上昇する。これによって、実施の形態1と同様に余剰電力を抑制することができる。
【0125】
直流電圧VdcがV2を超えるときには、スイッチSWがオフのため、限流抵抗回路80の抵抗値は(Ra+Rb)である。その結果、直流電圧Vdcの減少とともに、供給電力PINは、直線LB上を下降する。
【0126】
直流電圧Vdcが減少してV2に達したときに、スイッチSWがオンとなるため、限流抵抗回路80の抵抗値はRaに減少する。その結果、直流電圧Vdcの減少とともに、供給電力PINは、直線LA上を下降する。これによって、供給電力PINを必要電力Po以上にすることができる。
【0127】
以上のように、本実施の形態によれば、直流電圧Vdcの増加するときと、直流電圧Vdcが下降するときとで、共通の電圧V2をスイッチSWを切り替える閾値電圧とした場合でも、実施の形態1と同様に、直流電圧Vdcが低電圧のときの電源供給の確保と、直流電圧Vdcが高電圧のときの電力損失の抑制とを両立させることができる。
【0128】
実施の形態3.
実施の形態1では、直流電圧Vdcの減少時に、供給電力PINの値が必要電力Poの値と一致するときの直流電圧Vdcを、直流電圧Vdcの減少時のスイッチSWの切替ポイントである閾値V2とした。そして、ヒステリシスを持たせるために、直流電圧Vdcの増加時のスイッチSWの切替ポイントをV2よりも大きなV1とした。ヒステリシスによって、不要な切替えが頻繁に起こるのを防止することができる。
【0129】
本実施の形態では、直流電圧Vdcの減少時のスイッチSWの切替ポイントである閾値V2を直流電圧Vdcの減少時に、供給電力PINが必要電力Poと一致するときの直流電圧Vdcの値よりも大きな値に設定する。
【0130】
図13は、実施の形態3において、直流電圧Vdcが増加するときの供給電力PINの変化を表わす図である。図14は、実施の形態3において、直流電圧Vdcが減少するときの供給電力PINの変化を表わす図である。図13および図14には、直流電圧Vdcが下限電圧VL以上のときの供給電力PINが示されている。
【0131】
直線LAは、限流抵抗回路80の抵抗値がRaの場合における直流電圧Vdcに対する供給電力PINの値を表わす。直線LBは、限流抵抗回路80の抵抗値が(Ra+Rb)の場合における直流電圧Vdcに対する供給電力PINの値を表わす。直線LB上の供給電力PINの値が必要電力Poの値と一致するときの直流電圧Vdcの値は、切替ポイントであるV2よりも小さい。V1は、V2よりも大きな値に設定されている。
【0132】
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、直流電圧Vdcが低電圧のときの電源供給の確保と、直流電圧Vdcが高電圧のときの電力損失の抑制とを両立させることができる。
【0133】
なお、上記の実施の形態では、主回路が、フルブリッジ回路により構成されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。主回路が、ハーフブリッジ回路により構成されてもよい。
【0134】
また、上記の実施形態では、OR回路89にゲートブロック信号GBが入力されるものとしたが、OR回路89にインバータを介してゲートデブロック信号DEBが入力されるものとしてもよい。
【0135】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0136】
1 電力系統、1u,1v,1w 送電線、2,3 変圧器、4 制御装置、5 単位変換器、5a 第1端子、5b 第2端子、11〜14 スイッチング素子、15,51 コンデンサ、18 励磁コイル、30 主回路、32 制御回路、40,42 駆動回路、44 スイッチ操作回路、46,52 電圧センサ、48 I/F回路、50 電源、53 過充電抑制制御回路、54 過充電抑制回路、55 起動/停止回路、56 電源回路、500 制御部、501,502 入力端子、80,80−1,80−2 限流抵抗回路、82 AND回路、83 電圧検出回路、88,188−1,188−2 抵抗切替回路、89 OR回路、90 制御電源、A1〜A3 アーム、C1〜C3 変流器、D1〜D4 ダイオード、Iuv,Ivw,Iwu 交流電流、L1〜L3 リアクトル、NL,PL 直流ライン、R1〜R3 限流抵抗器、R5,Ra,Rb 抵抗、S1〜S8,SW,SW1,SW2 スイッチ、UL,VL,WL 交流ライン。
【要約】
複数の単位変換器の各々は、主回路(30)と、制御装置から受信した制御信号に従って複数のスイッチング素子(11〜14)を制御するように構成された制御回路(32)と、第1のコンデンサ(15)の電圧を降圧して電源電圧を生成し、電源電圧を制御回路(32)へ供給する電源(50)と、主回路(30)と電源(50)との間に配置され、抵抗値が可変の限流抵抗回路(80)とを備える。電源(50)は、第2のコンデンサ(51)と、過充電抑制回路(54)と、電源回路(56)と、制御部(500)とを備える。制御部(500)は、第2のコンデンサ(51)の電圧の大きさに応じて、過充電抑制回路(54)を制御する過充電抑制制御回路(53)と、複数のスイッチング素子(11〜14)のすべてを非導通に固定するゲートブロック状態であるか否か、および第1のコンデンサ(15)の電圧の大きさに応じて、限流抵抗回路(80)の抵抗値を切り替える抵抗切替回路(88)とを含む。
図1
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図10
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図12
図13
図14