特許第6886075号(P6886075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6886075管制局装置および管制局装置のアラーム発報方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886075
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】管制局装置および管制局装置のアラーム発報方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/04 20060101AFI20210603BHJP
   H04B 17/23 20150101ALI20210603BHJP
【FI】
   G08G5/04 A
   H04B17/23
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-508115(P2020-508115)
(86)(22)【出願日】2018年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2018010776
(87)【国際公開番号】WO2019180771
(87)【国際公開日】20190926
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 良太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 安彦
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−238061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
H04B 1/60
H04B 3/46 − 3/493
H04B 17/00 − 17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した信号に対して一つまたは複数の方式を用いてリアルタイムで混信の有無を判定する混信判定部を有する無線機と、
受信し混信した波形情報をメモリに保持させ、複数の信号が同時に終了したことを判定する複数波同時受信開始判定部と、
前記混信判定部からの情報および前記複数波同時受信開始判定部からの情報に基づいて混信状態を示す第一アラームおよび同時送信終了を示す第二アラームを発報するアラーム表示部と、
を備え
前記アラーム表示部は、同時送信の開始を検出し前記第一アラームの発報時、2波のうち1波が送信終了し混信終了が検出されなかった場合、2波の同時送信終了と見なし、前記第二アラームを発報する管制局装置。
【請求項2】
請求項の管制局装置において、
前記アラーム表示部は、周波数軸と電波レベル軸と時間軸とを有し、前記周波数軸と前記時間軸との象限に前記第一アラームと前記第二アラームを表示する管制局装置。
【請求項3】
(a)受信した信号に対して一つまたは複数の方式を用いてリアルタイムで混信の有無を判定するステップと、
(b)受信し混信した波形情報をメモリに保持させ、複数の信号が同時に終了したことを判定するステップと、
(c)前記ステップ(a)において判定した情報および前記ステップ(b)において判定した情報に基づいて混信状態を示す第一アラームおよび同時送信終了を示す第二アラームを発報するステップと、
を備え、
前記ステップ(c)は、同時送信の開始を検出し前記第一アラームの発報時、2波のうち1波が送信終了し混信終了が検出されなかった場合、2波の同時送信終了と見なし、前記第二アラームを発報する管制局装置のアラーム発報方法。
【請求項4】
請求項3の管制局装置のアラーム発報方法において、
前記ステップ(c)は、周波数軸と時間軸との象限に前記第一アラームと前記第二アラームを表示する管制局装置のアラーム発報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は管制局装置に関し、例えば混信検出を行う管制局装置に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
航空管制の無線通信において、混信によるトラブルがたびたび報告されている。複数の無線局が同時に同一周波数で電波を送信することで、受信側で混信する。従来の混信の有無の判定は、人間の耳で判断している。航空管制の無線通信方式はAM変調が採用されており、混信状態では受信側で音声のかぶりや異音が発生するため、それをもとに人間が混信の有無を識別し、重大インシデントを未然に防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8,385,449号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0149737号明細書
【特許文献3】特開平11−160422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、受信した複数の電波の受信レベルに例えば20dB以上のレベル差があると、混信による音声のかぶりや異音の影響が極端に小さいため、混信の有無を人間の耳で識別することはほぼ不可能である。さらに、混信を検出する従来の方法は、聴覚のみによる判定のため、検出見逃しが発生する。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
すなわち、管制局装置は、受信した信号に対して一つまたは複数の方式を用いてリアルタイムで混信の有無を判定する混信判定部を有する無線機と、受信し混信した波形情報をメモリに保持させ、複数の信号が同時に終了したことを判定する複数波同時受信開始判定部と、前記混信判定部からの情報および前記複数波同時受信開始判定部からの情報に基づいて混信状態を示す第一アラームおよび同時送信終了を示す第二アラームを発報するアラーム表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
上記管制局装置によれば、混信検出の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】航空管制システムの概要図
図2】A局とB局の送信開始タイミングが同じで送信終了タイミングが異なる場合を示す図
図3】A局とB局の送信開始タイミングが同じで送信終了タイミングも同じ場合を示す図
図4】管制局装置のブロック図
図5】アラーム表示部のイエローアラームおよびレッドアラームの表示例を示す図
図6図4の無線機のデジタル処理回路の系統図
図7図6のデジタル処理回路の動作を示す処理フロー図
図8】混信無し時のスペクトラムのシミュレーション波形図
図9】混信無し時の信号のシミュレーション波形図
図10】混信有り時のスペクトラムのシミュレーション波形図
図11】混信有り時の信号のシミュレーション波形図
図12】混信有無における位相と電力とそれらの変化量を示す図
図13】混信有無における音声ピッチ抽出波形図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。
【0009】
図1は航空管制システムの概要図である。航空管制システムは航空機であるA局、B局、管制局であるC局を備える。A局、B局が同時に送信を開始し、C局が受信し、受信した信号レベルはA局の送信信号より、B局の送信信号の方が20dB高いとする。C局は、送信レベルが高いB局の送信信号を受信し、同時に送信開始しているA局の信号を聴覚により確認することが難しい。
【0010】
これは後述する混信判定部により、同時に2波以上の信号を受信したときの混信と混信時以外の比較を行って検出することで、リアルタイムにアラームを発報し、ビート検出の見逃しを防ぐことができる。
【0011】
次に、A局の送信信号とB局の送信信号の混信について図2、3を用いて説明する。図2はA局とB局の送信開始タイミングが同じで送信終了タイミングが異なる場合を説明する図である。図3はA局とB局の送信開始タイミングおよび送信終了タイミングが同じ場合を説明する図である。
【0012】
図2に示す場合、B局はA局の音声が聞こえないためビートには気付かず、C局はB局のレベルがA局よりも20dB高いためA局が送信終了してもビートには気付かない。しかし、A局が送信終了したタイミングでB局の送信信号がA局に受信されるので、A局は自身の送信信号がC局に伝わっていないことが確認できる。よって、A局は再度交信を行い、事故を未然に防ぐことができる。
【0013】
しかし、図3に示す場合、B局はA局の音声が聞こえないためビートには気付かず、C局はB局のレベルがA局よりも20dB高いためA局が送信終了してもビートには気付かない。また、A局とB局が同時に送信終了するので、A局の送信信号がC局に伝わっていないことをA局が聴覚によって確認できないため、どの無線局もビートには気付かないので、上述の混信判定部によるビート検出システムのみが頼りとなり、ビート検出の信頼性に欠ける。
【0014】
次に、実施形態の管制局装置について図4を用いて説明する。図4は管制局装置のブロック図である。
【0015】
C局の管制局装置は無線機100とアラーム表示部200と複数波同時受信開始判定部300とを備える。
【0016】
無線機100は、2波以上の同時受信した場合、混信判定部30において同時受信開始タイミングt0からt1まで判定処理時間(約20ms)に混信を判定し、リアルタイムで判定情報をアラーム表示部200に送り、アラーム表示部200にイエローアラームを発報させる。
【0017】
図2に示すように、片方の局(A局)が送信を終了し、もう一方の局(B局)が送信継続の場合、受信している信号は混信している信号と波形が異なるため、混信判定部30は、受信信号を混信と判定せず、その判定情報を受けたアラーム表示部200はタイミングt2でイエローアラームの発報を止める。なお、複数波同時受信開始判定部300も同時受信判定を解除する。無線機100は、タイミングt2で混信が検出されなくなるが、送信信号は検出し続けている。なお、送信信号を検出しなくなるまで、メモリ310は波形情報を保持し続けている。よって、複数波同時受信開始判定部300は、同時送信開始をしているが、一方の局が送信を終了したことを認識することができる。
【0018】
図3に示すような同時送信終了の場合、同時送信終了タイミングt3のとき、複数波同時受信開始判定部300は、メモリ310に保持された混信状態の波形情報に基づいて送信信号の検出が同時にされなくなったことと示す更新情報を出力する。複数波同時受信開始判定部300の更新情報により、アラーム表示部200は混信状態の検出および送信信号の検出が同時にされなくなったとき、受信した複数波が同時に送信終了したというフラグを立て、イエローアラームの解除後、レッドアラームを発報する。
【0019】
混信判定部30からのリアルタイム判定情報と、複数波同時受信開始判定部300の更新情報により、2波の信号が同時に送信開始、送信終了したというそれぞれの状態によって、アラーム表示部200はイエローアラームまたはレッドアラームを発報する。
【0020】
複数波同時受信開始判定部300は、同時送信開始、同時送信終了を想定し、受信した波形情報を保持するメモリ310を備え、複数波同時受信開始を判定する。アラーム表示部200は2波の同時送信の開始を検出し「混信状態」を示すイエローアラームが発報時、2波のうち1波が送信終了し混信終了が検出されなかった場合「2波の同時送信終了」と見なし、レッドアラームを発報する。
【0021】
この「混信状態」のイエローアラームと「2波(複数波)の同時送信終了」のレッドアラームを用いることにより同時送信開始、同時送信終了された複数の信号の検出を行うことが可能になる。
【0022】
図5はアラーム表示部のイエローアラームおよびレッドアラームの表示例を示す図である。周波数軸(横軸)、時間軸(縦軸の下)、電波レベル(縦軸の上)の3軸で表示する。時間軸側は電波のレベルを色で表示している。イエローアラームYA、レッドアラームRAを時間軸上に表示する。
【0023】
図5では、時間軸上表示の1秒から4秒にイエローアラームYAが黄色で表示され、7秒前から13秒前にレッドアラーム相当のビートが発生した場合、時間軸上表示の7秒から13秒にレッドアラームRAが赤色で表示されている。
【0024】
次に、無線機について図6〜13を用いて説明する。図6図4の無線機のデジタル処理回路の系統図である。図7図6のデジタル処理回路の動作を示すフロー図である。
【0025】
無線機100の受信機は、アナログ信号1が入力されるアナログ・デジタル変換部(ADC)2と、周波数変換部(F_CONV)3と、第一レート変換部(R_CONV)4と、自動利得制御(Automatic Gain Control:AGC)部5と、復調部6と、音声信号7を出力するデジタル・アナログ変換部(DAC)26と、混信判定部30と、を備える。
【0026】
混信判定部30は、第一レート変換部4からの信号が入力される第二レート変換部8と、窓関数部9と、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)部10と、第一混信検出部11と、を備える
混信判定部30は、さらに、第一レート変換部4からの信号が入力される第三レート変換部12と、位相検出部13と、第一変化量算出部14と、検波部15と、第二変化量算出部16と、第二混信検出部17と、を備える。
【0027】
混信判定部30は、さらに、第四レート変換部18と、音声解析部19と、第三混信検出部20と、を備える。
【0028】
混信判定部30は、さらに、第一混信検出部11と第二混信検出部17と第三混信検出部20の各混信判定結果が入力される混信判定部21を備える。
【0029】
混信判定部30は、さらに、FFT部10や第一レート変換部4から出力される信号が入力される電力検出部24を備える。
【0030】
音声信号7、混信判定結果出力信号22および混信レベル出力は図4のリアルタイム判定情報に含まれる。
【0031】
次に、無線機100の受信機の動作について説明する。なお、図7のステップ番号(「S」に続く番号)と図6の構成要素の符号の番号は対応している。
ステップS2:ADC2はIF周波数のアナログ信号1または直交化されたベースバンド周波数のアナログ信号1をデジタル信号に変換する。
ステップS3:周波数変換部3はADC2から出力されたデジタル信号をIF周波数からベースバンド周波数に変換する。ただし、直交化されたベースバンド周波数のアナログ信号をADC2でデジタル信号に変換する場合、周波数変換部3(ステップS3)は省略できる。
ステップS4:第一レート変換部(R_CONV)4は周波数変換部3より出力された信号を復調処理に最適なサンプリングレートに変換する。
ステップS5:AGC部5は第一レート変換部4から出力された信号の振幅をAM復調に最適なレベルに増幅または減衰する。
ステップS5:復調部6はAGC部5より出力された信号を音声信号に復調する。
【0032】
ステップS26:DAC26は復調出力結果であるデジタル信号をアナログ信号である音声信号7に変換する。
【0033】
以上の動作は通常の受信機の動作である。次に、第一の混信検出動作について説明する。
ステップS8:第二レート変換部8は第一レート変換部4より出力された信号を、さらにレート変換する。
ステップS9:窓関数部9は第二レート変換部8より出力された信号に対して次処理のFFT結果を最適化するために窓処理をかける。
ステップS10:FFT部10は窓関数部9より出力された信号を周波数とレベルの関係に変換する。
ステップS11:第一混信検出部11はFFT部10より出力されたキャリアのピーク電力を検出し、検出したピークの数によって混信状態を判定する。
【0034】
FFTのサイズを固定とした場合、受信信号のサンプリング周波数を復調に必要な帯域よりもさらに狭めることで、FFTの周波数分解能を向上させることが可能である。これは送信機の周波数偏差により決定する。FFTの周波数分解能を無線機の送信周波数の揺らぎが識別できる程度にサンプリング周波数を調整し、FFT処理することで周波数と受信レベルの関係を算出する。FFT出力から変調信号のキャリア成分であるピーク電力の数を検出し、一定の閾値以上のピーク電力の数が2つ以上であれば混信と判定する。本処理では、ノイズフロアの微小なレベル増減をピーク電力として検出しないために、ある一定レベル以上のピーク電力のみ検出するように閾値を設ける。この閾値は電波の受信状況(電波状況)に応じ、外部信号23によって任意に設定変更可能である。
【0035】
図8は混信が無い場合のAM変調波のキャリア信号を拡大表示したスペクトラムのシミュレーション波形図である。図9は混信が無い場合のFFTのシミュレーション波形図である。サンプリング周波数を数百ヘルツまで下げることで、AM変調波のキャリア信号のみを抽出することができる。キャリア信号のピーク出力は1つである。
【0036】
図10は混信が有る場合のAM変調波のキャリア信号を拡大表示したスペクトラムのシミュレーション波形図である。図11は混信が有る場合のFFTのシミュレーション波形図である。混信が起こる場合は、送信側が同一周波数で送信していても、原振の揺れとドップラーシフトにより、受信側でAM変調波のキャリア信号が複数確認できる。本処理では、キャリア信号のピーク電力を検出し、一定の閾値よりも高いピーク電力が2つ以上であれば、混信の検出と判断する。ただし、AM変調波のキャリア周波数が極めて近接している場合、周波数軸上でAM変調波のキャリア信号がお互いに重なってしまうことで、ピーク電力の検出見逃しが発生する可能性がある。
【0037】
次に、第二の混信検出動作について説明する。
ステップS12:第三レート変換部12は第一レート変換部4より出力された信号をさらにレート変換する。
ステップS13:位相検出部13は第三レート変換部12より出力された信号の位相を算出する。
ステップS14:第一変化量算出部14は位相検出部13より出力された信号の変化量を求める。
ステップS15:検波部15は第三レート変換部12より出力された信号の電力を算出する。
ステップS16:第二変化量算出部16は検波部15より出力された信号の変化量を求める。
ステップS17:第二混信検出部17は第一変化量算出部14および第二変化量算出部16のそれぞれの変化量検出の結果から総合的に混信状態を判定する。
【0038】
第二混信検出部17は第一の混信検出動作と同様に受信信号のサンプリング周波数を調整し、そのキャリアの位相又は電力のどちらか、またはその両方を算出する。さらに算出したキャリアの位相及び電力の変化量を算出する。混信すると、それぞれの算出した変化量はどちらも、混信が無い場合に比べて、変化量のピーク値が大きくなるため、ピークが一定の閾値を超えることで混信と判断する。入力される複数の受信信号のレベル差や位相差により、混信有無における変化量が小さくなる可能性があるため、電力と位相の両方について検出することが望ましい。この閾値は電波の受信状況に応じ、外部信号23によって任意に設定変更可能である。
【0039】
図12は混信有無における受信電力量(A)と位相(B)と受信電力の変化量(C)と位相の変化量(D)を示す図である。第二混信検出部17は、第一の混信検出動作と同様に、サンプリング周波数を数百ヘルツオーダーまで下げることで、AM変調波のキャリア信号のみを抽出することができる。複数のAM変調波のキャリア周波数が、1Hz以下のように極めて近接している場合、図中の○で示すように、受信電力の変化量と位相の変化量にパルスが発生した後、受信電力の変化量と位相の変化量の各信号に差分の周波数が表れる。それらの信号の変動量(ぶれ)がある一定閾値より大きければ混信検出として混信判定ブロックに通知する。
【0040】
次に、第三の混信検出動作について説明する。
ステップS18:第四レート変換部18は復調部6より出力された復調結果をさらにレート変換する。
ステップS19:音声解析部19は第四レート変換部18より出力された信号を音声解析する。
ステップS20:第三混信検出部20は音声解析部19より出力された音声解析結果から混信の有無を検出する。
【0041】
第三混信検出部20は復調部6から出力された復調結果のサンプリング周波数を調整し、音声分析を実施し、話者が複数名いるかどうかを検出することにより、混信の有無を検出する。音声分析には波形処理や相関処理、スペクトル処理等、様々な手法があるが、無線機の構成や使用目的に応じて最適な手法を決定する。例えば、ピッチ抽出法により、特定の音声区間での自己相関演算の出力にあるピークの立ち方により、その音声に話者が複数名いるかどうか、すなわち、混信状態の有無を検出可能である。
【0042】
さらに、異なる音声分析の手法として、航空管制では決められたコールサインやフォネティックコードを使用した音声通信のため、すべてのコールサイン毎に異なる音声ピッチをもつ複数のマッチドフィルタを内部に持ち、復調された音声信号と畳み込み演算することで、混信時は複数のコールサインの相関ピークが立ち、それを検出することで混信の有無を判定することが可能となる。検出や判定のアルゴリズムは外部信号23によって設定変更可能である。
【0043】
図13は話者Aの音声信号(A)、話者Aの短区間音声信号のスペクトラム(B)、話者Bの音声信号(C)、話者Bの短区間音声信号のスペクトラム(D)、話者Aと話者Bを合成した音声信号(E)、および話者Aと話者Bを合成した音声信号の短区間音声信号のスペクトラム(F)を示す波形図である。話者Aの音声信号スペクトラム(B)と話者Bの音声信号スペクトラム(D)では、周波数軸上に一定間隔のピッチでピーク電力が立つ。これに対し、話者Aと話者Bの音声を合成させた音声信号スペクトラム(F)では、話者が複数いることにより、異なるピッチでピーク電力が立っており、ピッチずれが確認できる。ピッチずれを検出することにより、混信を検出し、混信判定ブロックに通知する。
【0044】
次に、第一混信検出部、第二混信検出部および第三混信検出部の混信検出の最終判定にいて説明する。
【0045】
ステップS21:混信判定部21は第一の混信検出動作、第二の混信検出動作および第三の混信検出動作の混信検出結果をもとに、混信検出の最終判定を実施し、その判定結果(混信判定結果出力信号22)を出力する。混信検出方法は処理方法や処理量の違いにより、その検出結果更新周期や確度、検出範囲が異なる。例えば、第一の混信検出動作のFFT出力の電力ピークを検出する方法は、それぞれの送信機の送信周波数の微妙なずれを検出することで、正確に混信の有無を検出可能だが、2波の周波数が近接していると、検出見逃しとなる可能性がある。また、サンプリング周波数とFFTポイント数の関係にもよるが、第一の混信検出動作のFFTポイントの電力ピークを検出する方法は、検出までに数秒程度かかってしまう可能性がある。それに対し、第二の混信検出動作の変化量検出が可能である。それら3つの方法の検出結果を総合して最終の混信判定出力とする。3つの方法の検出結果を総合して最終の混信判定をしているが、3つのうちのいずれか2つまたは1つの混信判定であってもよい。その場合、判定に用いない回路はなくてもよい。
【0046】
混信すると、それぞれの変調波の電力差にもよるが、ビート(波形の揺れ)が発生する。電力検出部24は、ビートの変動量から、2つの変調波の電力差を検出し、混信レベル出力25として通知する。その電力差から混信のレベルが判断できるため、ステップS21の混信判定結果と併せて、操作者(人間)が最終判定の結果に用いてもよい。最終判定に用いない場合は、電力検出部24はなくてもよい。
【0047】
無線通信において、複数の無線局が同時に同一周波数で電波を送信することで、受信側で混信する。無線機100は、受信した電波に対して一つまたは複数の方式で混信の有無を判定し、それを通知するものである。より具体的には、人間の聴覚では識別できないような微弱な受信信号をデジタル処理にて検出し、混信の有無を判定し、それを通知するものである。さらに、混信の検出方式を複数実装し、その結果を総合して判定することで、それぞれのデメリットを補いあい、誤検出や検出見逃しを低減させるものである。併せて、出力された音声や電力レベルの変動も混信有無の判断材料として用いる。
【0048】
実施形態の管制局装置は、受信した信号に対して一つまたは複数の方式を用いてリアルタイムで混信の有無を判定しアラームを発報し、また、受信し混信した波形情報をメモリに保持させ、複数の信号が同時に終了した時に別のアラームを発報する。これにより、ビート検出の信頼性を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0050】
例えば、実施形態では2波同時送信開始および同時送信終了の例について説明したが、3波以上の同時送信開始および同時送信終了にも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…アナログ信号、2…ADC、3…周波数変換部、4…第一レート変換部、5…AGC部、6…復調部、7…音声信号、8…第二レート変換部、9…窓関数部、10…FFT部、11…第一混信検出部、12…第三レート変換部、13…位相検出部、14…第一変化量算出部、15…検波部、16…第二変化量算出部、17…第二混信検出部、18…第四レート変換部、19…音声解析部、20…第三混信検出部、21…混信判定部、22…混信判定結果出力信号、23…外部信号、24…電力検出部、25…混信レベル出力、30…混信判定部、100…無線機、200…アラーム表示部、300…複数波同時受信開始判定部、310…メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13