特許第6886076号(P6886076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886076
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20210603BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20210603BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20210603BHJP
   H02J 1/10 20060101ALI20210603BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20210603BHJP
【FI】
   H02J9/06
   H02J3/32
   H02J3/38 110
   H02J1/10
   H02M7/48 N
   H02M7/48 M
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-508123(P2020-508123)
(86)(22)【出願日】2018年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2018010813
(87)【国際公開番号】WO2019180784
(87)【国際公開日】20190926
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 一輝
(72)【発明者】
【氏名】中野 俊秀
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−052134(JP,A)
【文献】 特開平8−033336(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/061917(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/106652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02J 1/10
H02J 3/32
H02J 3/38
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源から供給される第1の電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、
第2の電源から供給される第2の電力を直流電力に変換する第2の電力変換器と、
前記第1および第2の電力変換器のうちの少なくともいずれか一方から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する第3の電力変換器と、
前記第1および第3の電力変換器に共通に設けられ、それらで発生する熱を放散させる冷却器と、
前記第3の電力変換器の出力電力が上限値よりも小さい場合は、前記第1の電力変換器のみから前記第3の電力変換器に直流電力を供給させ、前記第3の電力変換器の出力電力が前記上限値を超えたことに応じて、前記第1および第2の電力変換器の両方から前記第3の電力変換器に直流電力を供給させ、前記第1および第2の電力変換器の入力電力の和を前記第3の電力変換器の出力電力に維持しながら、前記第1の電力変換器の入力電力を減少させるとともに前記第2の電力変換器の入力電力を増大させる制御装置とを備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記第1の電力変換器、前記第3の電力変換器、および前記冷却器は一体のユニットを構成している、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第3の電力変換器の出力電力が前記上限値を超えたことに応じて、前記第3の電力変換器の出力電力と前記上限値との差の電力だけ前記第1の電力変換器の入力電力を減少させるとともに、前記差の電力の2倍の電力だけ前記第2の電力変換器の入力電力を増大させる、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1および第2の電力変換器から前記第3の電力変換器に直流電力を供給するための直流ラインと、
前記第1の電力変換器の入力電流を検出する第1の電流検出器と、
前記第2の電力変換器の入力電流を検出する第2の電流検出器と、
前記第3の電力変換器の出力電流を検出する第3の電流検出器とを備え、
前記制御装置は、
前記負荷の入力電圧が参照交流電圧になるように第1の電流指令値を生成し、前記第3の電流検出器の検出値が前記第1の電流指令値になるように前記第3の電力変換器を制御する第1の制御回路と、
前記直流ラインの電圧が参照直流電圧になるように第2の電流指令値を生成し、前記第1および第2の電流指令値の和が予め定められた値を超えないように前記第2の電流指令値を制限して第3の電流指令値を生成し、前記第1の電流検出器の検出値が前記第3の電流指令値になるように前記第1の電力変換器を制御する第2の制御回路と、
前記直流ラインの電圧が前記参照直流電圧になるように第4の電流指令値を生成し、前記第2の電流検出器の検出値が前記第4の電流指令値になるように前記第2の電力変換器を制御する第3の制御回路とを含み、
前記第1および第2の電流指令値の和が前記予め定められた値である場合に、前記第1の電力変換器の入力電力と前記第3の電力変換器の出力電力との和が前記上限値の2倍の電力になるように、前記予め定められた値が設定されている、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1の電力変換器からの前記第1の電力の供給が停止された場合には、前記第2の電力変換器のみから前記第3の電力変換器に直流電力を供給させる、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1および第2の電源はそれぞれ交流電源および直流電源であり、
前記第1および第2の電力はそれぞれ交流電力および直流電力である、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1および第2の電源はそれぞれ第1および第2の直流電源であり、
前記第1および第2の電力はともに直流電力である、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1および第2の電源はそれぞれ第1および第2の交流電源であり、
前記第1および第2の電力はともに交流電力である、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電力変換装置に関し、特に、第1および第2の電力変換器のうちの少なくともいずれか一方から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する第3の電力変換器を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2001−186689号公報(特許文献1)には、交流電源からの交流電力を直流電力に変換して直流ラインに供給する整流器と、バッテリと直流ラインとの間に接続されたチョッパと、直流ラインからの直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータとを備えた無停電電源装置が開示されている。
【0003】
交流電源の健全時においてインバータの出力電力が上限値よりも小さい通常時は、整流器によって生成された直流電力が、インバータによって交流電力に変換されて負荷に供給される。また、交流電源の健全時においてインバータの出力電力が上限値を超える過負荷時には、整流器からインバータに上限値の直流電力が供給されるとともに、不足分の直流電力がバッテリからチョッパを介してインバータに供給される(図8参照)。したがって、整流器の入力電力を上限値以下に制限することができる。
【0004】
また、交流電源の停電時には、バッテリの直流電力がチョッパを介してインバータに供給され、交流電力に変換されて負荷に供給される。したがって、停電時でも負荷の運転を継続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−186689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に無停電電源装置では、整流器およびインバータで発生する熱を放散させる第1および第2の冷却器がそれぞれ設けられる。第1の冷却器は、整流器の入力電力が上限値になった場合に発生する熱を放散させる冷却能力(すなわちサイズ)を有する。第2の冷却器は、過負荷時にインバータで発生する熱を放散させる冷却能力(すなわちサイズ)を有する。このため従来の無停電電源装置では、第1および第2の冷却器が大型化し、装置寸法が大きくなるという問題があった。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、第1の電力変換器の入力電力を上限値以下に制限することが可能で小型の電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る電力変換装置は、第1の電源から供給される第1の電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、第2の電源から供給される第2の電力を直流電力に変換する第2の電力変換器と、第1および第2の電力変換器のうちの少なくともいずれか一方から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する第3の電力変換器と、第1および第3の電力変換器に共通に設けられ、それらで発生する熱を放散させる冷却器と、第3の電力変換器の出力電力が上限値よりも小さい場合は、第1の電力変換器のみから第3の電力変換器に直流電力を供給させ、第3の電力変換器の出力電力が上限値を超えたことに応じて、第1および第2の電力変換器の両方から第3の電力変換器に直流電力を供給させ、第1および第2の電力変換器の入力電力の和を第3の電力変換器の出力電力に維持しながら、第1の電力変換器の入力電力を減少させるとともに第2の電力変換器の入力電力を増大させる制御装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る電力変換装置では、第3の電力変換器の出力電力が上限値を超えた場合には、第1および第2の電力変換器の両方から第3の電力変換器に直流電力を供給させ、第1の電力変換器の入力電力を減少させるとともに第2の電力変換器の入力電力を増大させる。したがって、第1の電力変換器の入力電力を上限値以下に制限することができる。また、第1および第3の電力変換器に共通に冷却器を設け、第3の電力変換器の出力電力が上限値を超えたことに応じて第1の電力変換器の入力電力を減少させるので、冷却器のサイズを小さく抑えることができ、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態1による無停電電源装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に示した冷却器の構成を示す図である。
図3図1に示した制御装置のうちのインバータの制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。
図4図1に示した制御装置のうちのコンバータの制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。
図5図1に示した制御装置のうちの双方向チョッパの昇圧制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。
図6図1に示した制御装置のうちの双方向チョッパの降圧制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。
図7】実施の形態1の効果を説明するための図である。
図8】実施の形態1の比較例を説明するための図である。
図9】この発明の実施の形態2による無停電電源装置の構成を示すブロック図である。
図10】この発明の実施の形態3による無停電電源装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による無停電電源装置の構成を示すブロック図である。図1において、この無停電電源装置は、入力端子T1、バッテリ端子T2、出力端子T3、電流検出器CD1〜CD3、コンバータ1、直流ライン2、コンデンサ3、双方向チョッパ4、インバータ5、冷却器6,7、および制御装置8を備える。
【0012】
入力端子T1は、商用交流電源11(第1の電源)から商用周波数の交流電力を受ける。バッテリ端子T2は、バッテリ12(第2の電源)に接続される。バッテリ12は、直流電力を蓄える。バッテリ12の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。出力端子T3は、負荷13に接続される。負荷13は、無停電電源装置から供給される商用周波数の交流電力によって駆動される。
【0013】
コンバータ1、直流ライン2、およびインバータ5は、入力端子T1と出力端子T3の間に直列接続される。コンデンサ3は、直流ライン2に接続され、直流ライン2の直流電圧VDCを平滑化させる。双方向チョッパ4は、バッテリ端子T2と直流ラインとの間に接続される。
【0014】
なお、実際の無停電電源装置では、入力端子T1とコンバータ1の間に入力フィルタが設けられ、インバータ5と出力端子T3の間に出力フィルタが設けられるが、図面および説明の簡単化のため入力フィルタおよび出力フィルタの図示は省略されている。入力フィルタおよび出力フィルタの各々は、リアクトルおよびコンデンサを含む低域通過フィルタであり、商用周波数の電流を通過させ、スイッチング周波数の電流を遮断する。
【0015】
商用交流電源11から供給される交流入力電圧Viの瞬時値は、制御装置8によって検出される。負荷13に印加される交流出力電圧Voの瞬時値は、制御装置8によって検出される。直流ライン2の直流電圧VDCの瞬時値は、制御装置8によって検出される。バッテリ12の端子間電圧VBの瞬時値は、制御装置8によって検出される。
【0016】
電流検出器CD1(第1の電流検出器)は、商用交流電源11からコンバータ1に流れる交流入力電流Iiを検出し、その検出値を示す信号Iifを制御装置8に与える。電流検出器CD2(第2の電流検出器)は、バッテリ12と双方向チョッパ4との間に流れる直流電流Ibを検出し、その検出値を示す信号Ibfを制御装置8に与える。電流検出器CD3(第3の電流検出器)は、インバータ5から負荷13に流れる交流出力電流Ioを検出し、その検出値を示す信号Iofを制御装置8に与える。
【0017】
制御装置8は、交流入力電圧Vi、交流出力電圧Vo、直流電圧VDC、バッテリ電圧VB、交流入力電流Ii、直流電流Ib、交流出力電流Ioに基づいて、コンバータ1、双方向チョッパ4、およびインバータ5の各々を制御する。
【0018】
コンバータ1(第1の電力変換器)は、制御装置8によって制御され、商用交流電源11からの交流電力を直流電力に変換して直流ライン2に出力する。コンバータ1は、複数組のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)およびダイオードを含む周知のものである。コンバータ1の交流入力電流Iiは、制御可能になっている。
【0019】
商用交流電源11から交流電力が正常に供給されている場合(商用交流電源11の健全時)においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHよりも小さい通常時には、直流ライン2の直流電圧VDCが参照直流電圧VDCrになるように、コンバータ1の交流入力電流Iiが制御される。
【0020】
商用交流電源11の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた過負荷時には、インバータ5の出力電力Poと上限値PoHの差の電力ΔPo=Po−PoHだけコンバータ1の入力電力Piが減少するように、コンバータ1の交流入力電流Iiが減少される。商用交流電源11からの交流電力の供給が停止された場合(商用交流電源11の停電時)には、コンバータ1の運転は停止される。
【0021】
双方向チョッパ4(第2の電力変換器)は、制御装置8によって制御され、直流ライン2とバッテリ12との間で直流電力を授受する。双方向チョッパ4は、複数組のIGBTおよびダイオードと、リアクトルとを含む周知のものである。バッテリ12と双方向チョッパ4の間に流れる電流Ibは、制御可能になっている。双方向チョッパ4は、直流ライン2の直流電圧VDCを降圧してバッテリ12に与える降圧動作と、バッテリ12の端子間電圧VBを昇圧して直流ライン2に与える昇圧動作とのうちのいずれかの動作を選択的に行なう。
【0022】
商用交流電源11の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHよりも小さい通常時には、双方向チョッパ4は、バッテリ電圧VBが参照バッテリ電圧VBrになるように直流ライン2からバッテリ12に直流電流Ibを流す。
【0023】
商用交流電源11の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた過負荷時には、双方向チョッパ4は、直流ライン2の直流電圧VDCが参照直流電圧VDCrになるようにバッテリ12から直流ライン2に直流電流Ibを流す。これにより、インバータ5の出力電力Poと上限値PoHの差の電力ΔPo=Po−PoHの2倍の電力2×ΔPoだけバッテリ12からインバータ5に直流電力が供給される。
【0024】
すなわち、過負荷時には、コンバータ1からインバータ5にPoH−ΔPoの直流電力が供給されるとともに、バッテリ12から双方向チョッパ4を介してインバータ5に2ΔPoの直流電力が供給され、合計PoH+ΔPoの直流電力がインバータ5に供給される。インバータ5から負荷13にPoH+ΔPoの交流電力が供給される。
【0025】
商用交流電源11の停電時には、双方向チョッパ4は、直流ライン2の直流電圧VDCが参照直流電圧VDCrになるようにバッテリ12から直流ライン2に直流電流Ibを流す。これにより、インバータ5の出力電力Poに相当する直流電力がバッテリ12のみから供給される。
【0026】
インバータ5(第3の電力変換器)は、制御装置8によって制御され、コンバータ1および双方向チョッパ4から直流ライン2を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して負荷13に供給する。インバータ5は、複数組のIGBTおよびダイオードを含む周知のものである。インバータ5の交流出力電流Ioは、制御可能になっている。インバータ5は、交流出力電圧Voが参照交流電圧Vorになるように、負荷13に交流電流Ioを供給する。
【0027】
負荷13がたとえばモータである場合には、インバータ5から負荷13に流れる電流Ioが変動し、インバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超える場合がある。インバータ5は、所定時間内であれば、上限値PoHよりも大きな電力Po(たとえば、1.5×PoH)を出力できるように形成されている。
【0028】
冷却器6は、コンバータ1およびインバータ5に共通に設けられ、コンバータ1およびインバータ5で発生する熱を空気中に放散させ、コンバータ1およびインバータ5の温度が過度に上昇して破損されることを防止する。冷却器7は、双方向チョッパ4で発生する熱を空気中に放散させ、双方向チョッパ4の温度が過度に上昇して破損されることを防止する。
【0029】
図2(A),(B)は、冷却器6の構成を示す図である。特に、図2(A)は冷却器6の平面図であり、図2(B)は冷却器6の正面図である。図2(A),(B)において、冷却器6は、平板部6aと、多数の放熱フィン6bとを含む。冷却器6は、熱伝導率の高い金属(たとえばアルミニウム)で形成されている。
【0030】
平板部6aの表面には、コンバータ1およびインバータ5が形成された基板15が搭載されている。多数の放熱フィン6bは、平板部6aの裏面に形成されている。冷却器6および基板15は、一体のユニットを構成している。多数の放熱フィン6bには、ファン(図示せず)から風が送られる。
【0031】
コンバータ1およびインバータ5が駆動されると、コンバータ1およびインバータ5で熱が発生する。コンバータ1およびインバータ5で発生した熱は、平板部6aを介して各放熱フィン6bに伝導し、各放熱フィン6bの表面から空気中に放散される。これにより、コンバータ1およびインバータ5の温度上昇が抑制される。
【0032】
本実施の形態1では、過負荷時にはコンバータ1の入力電力Piおよびインバータ5の出力電力Poの和が上限値PoHになるので、Pi+PoがPoHになっても基板15の温度が上限温度THを超えないように、冷却器6の放熱能力、すなわち冷却器6のサイズが設定されている。冷却器7は、冷却器6と同じ構成であるので、その説明は繰り返さない。
【0033】
図3は、制御装置8のうちのインバータ5の制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。図3において、制御装置8は制御回路20(第1の制御回路)を含み、制御回路20は、参照電圧生成部21、電圧検出器22、減算器23,25、電流制御部24、電圧制御部26、およびPWM(Pulse Width Modulation)制御部27を有する。
【0034】
参照電圧生成部21は、負荷13の定格電圧である参照交流電圧Vorを生成する。電圧検出器22は、負荷13の入力電圧Voを検出し、検出値を示す信号Vofを生成する。減算器23は、参照交流電圧Vorと電圧検出器22の出力信号Vofとの偏差ΔVo=Vor−Vofを求める。電流制御部24は、偏差ΔVoに比例する値と、偏差ΔVoの積分値に比例する値とを加算して電流指令値Ior(第1の電流指令値)を求める。
【0035】
減算器25は、電流指令値Iorと電流検出器CD3の出力信号Iofとの偏差ΔIo=Ior−Iofを求める。電圧制御部26は、偏差ΔIoに比例する値と、偏差ΔIoの積分値に比例する値とを加算して電圧指令値Vocを生成する。PWM制御部27は、電圧指令値Vocと三角波信号とを比較してPWM制御信号φ27を生成し、インバータ5に与える。インバータ5は、PWM制御信号φ27に従って、直流電力を交流電力に変換する。
【0036】
すなわち、制御回路20は、負荷13の入力電圧Voが参照交流電圧Vorになるように電流指令値Iorを生成し、電流検出器CD3の検出値Ioが電流指令値Iorになるようにインバータ5を制御する。このため、インバータ5から負荷13に流れる電流Ioが変動した場合でも、負荷13の入力電圧Voは参照交流電圧Vorに維持される。
【0037】
図4は、制御装置8のうちのコンバータ1の制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。図4において、制御装置8は制御回路30(第2の制御回路)を含み、制御回路30は、参照電圧生成部31、電圧検出器32、減算器33,36、電流制御部34、リミッタ35、電圧制御部37、停電検出器38、およびPWM制御部39を有する。
【0038】
参照電圧生成部31は、直流ライン2の目標直流電圧である参照直流電圧VDCrを生成する。電圧検出器32は、直流ライン2の直流電圧VDCを検出し、検出値を示す信号VDCfを生成する。減算器33は、参照直流電圧VDCrと電圧検出器32の出力信号VDCfとの偏差ΔVDC=VDCr−VDCfを求める。電流制御部34は、偏差ΔVDCに比例する値と、偏差ΔVDCの積分値に比例する値とを加算して電流指令値Iir(第2の電流指令値)を求める。
【0039】
リミッタ35は、電流制御部34からの電流指令値Iirと電流制御部24(図3)からの電流指令値Iorとの和(Iir+Ior)が上限値Ihを超えないように電流指令値Iirを制限し、電流指令値IirL(第3の電流指令値)を生成する。Iir+Ior≦Ihである場合は、IirがそのままIirLとなる。Iir+Ior>Ihである場合は、Ih−IorがIirLとなる。
【0040】
Iir+Ior=Ihである場合に、コンバータ1の入力電力Piおよびインバータ5の出力電力Poの和(Pi+Po)が上限値PoHの2倍の電力2×PoHとなるように、Ihの値が設定されている。負荷13の消費電力PLが増大すると、IirおよびIorの各々が増大し、コンバータ1の入力電力Piおよびインバータ5の出力電力Poの各々が増大する。
【0041】
コンバータ1の入力電力Piおよびインバータ5の出力電力Poの和(Pi+Po)が上限値PoHの2倍の電力2×PoHに到達すると、Iir+IorがIhに到達する。負荷13の消費電力PLがさらに増大すると、Iorが増大してインバータ5の出力電力Poが増大する一方、Iir+IorがIhを超えないようにIirが低減され、コンバータ1の入力電力Piが減少する。したがって、Pi+Poは2×PoH以下に制限される。
【0042】
減算器36は、電流指令値IirLと電流検出器CD1の出力信号Iifとの偏差ΔIi=Iir−Iifを求める。電圧制御部37は、偏差ΔIiに比例する値と、偏差ΔIiの積分値に比例する値とを加算して電圧指令値Vicを生成する。
【0043】
停電検出器38は、商用交流電源11(図1)から供給される交流電圧Viに基づいて商用交流電源11が健全か否かを判定し、判定結果を示す信号φ38を出力する。交流電圧Viが下限値ViLよりも高い場合は、商用交流電源11が健全であると判定され、信号φ38は「H」レベルにされる。交流電圧Viが下限値ViLよりも低下した場合は、商用交流電源11の停電が発生したと判定され、信号φ38は「L」レベルにされる。
【0044】
PWM制御部39は、信号φ38が「H」レベルである場合は、電圧指令値Vicと三角波信号とを比較してPWM制御信号φ39を生成し、コンバータ1に与える。コンバータ1は、PWM制御信号φ39に従って、交流電力を直流電力に変換する。
【0045】
PWM制御部39は、信号φ38が「L」レベルである場合は、PWM制御信号φ39を非活性化レベルの「L」レベルに固定する。この場合は、コンバータ1の運転が停止される。
【0046】
すなわち、制御回路30は、直流ライン2の直流電圧VDCが参照直流電圧VDCrになるように電流指令値Iirを生成し、電流指令値Iir,Iorの和が上限値Ihを超えないように電流指令値Iirを制限して電流指令値IirLを生成し、電流検出器CD1の検出値Iiが電流指令値IirLになるようにコンバータ1を制御する。このため、コンバータ1の入力電力Piおよびインバータ5の出力電力Poの和が上限値PoHの2倍の電力2×PoH以下になるようにコンバータ1が制御される。
【0047】
図5は、制御装置8のうちの双方向チョッパ4の昇圧制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。図5において、制御装置8は制御回路40(第3の制御回路)を含み、制御回路40は、電流制御部41、減算器42、電圧制御部43、およびPWM制御部44を有する。
【0048】
電流制御部41、減算器33(図4)からの偏差ΔVDCに比例する値と、偏差ΔVDCの積分値に比例する値とを加算して電流指令値Ibr(第4の電流指令値)を求める。減算器42は、電流指令値Ibrと電流検出器CD2の出力信号Ibfとの偏差ΔIb=Ibr−Ibfを求める。電圧制御部43は、偏差ΔIbに比例する値と、偏差ΔIbの積分値に比例する値とを加算して電圧指令値VDCcを生成する。
【0049】
PWM制御部44は、電圧指令値VDCcと三角波信号とを比較してPWM制御信号φ44を生成し、双方向チョッパ4に与える。これにより、双方向チョッパ4の昇圧動作が実行され、バッテリ12から双方向チョッパ4を介して直流ライン2に電流が流れ、バッテリ12が放電される。
【0050】
すなわち、制御回路40は、直流ライン2の直流電圧VDCが参照直流電圧VDCrになるように電流指令値Ibrを生成し、電流検出器CD2の検出値Ibが電流指令値Ibrになるように双方向チョッパ4を制御する。このため、コンバータ1の入力電力Piと、バッテリ12から双方向チョッパ4を介して直流ライン2に供給される電力Pbとの和がインバータ5の出力電力Poとなる。
【0051】
図6は、制御装置8のうちの双方向チョッパ4の降圧制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。図6において、制御装置8は制御回路50を含み、制御回路50は、参照電圧生成部51、電圧検出器52、減算器53,55、電流制御部54、電圧制御部56、およびPWM制御部57を有する。
【0052】
参照電圧生成部51は、バッテリ12の定格電圧である参照バッテリ電圧VBrを生成する。電圧検出器52は、バッテリ12の端子間電圧VBを検出し、検出値を示す信号VBfを生成する。減算器53は、参照バッテリ電圧VBrと電圧検出器52の出力信号VBfとの偏差ΔVB=VBr−VBfを求める。電流制御部54は、偏差ΔVBに比例する値と、偏差ΔVBの積分値に比例する値とを加算して電流指令値Ibrを求める。
【0053】
減算器55は、電流指令値Ibrと電流検出器CD2の出力信号Ibfとの偏差ΔIb=Ibr−Ibfを求める。電圧制御部56は、偏差ΔIbに比例する電圧指令値VBcを生成する。PWM制御部57は、停電検出器38(図4)の出力信号φ38が「H」レベルである場合(商用交流電源11の健全時)に活性化され、電圧指令値VBcと三角波信号とを比較してPWM制御信号φ57を生成し、双方向チョッパ4に与える。
【0054】
これにより、双方向チョッパ4の降圧動作が実行され、直流ライン2から双方向チョッパ4を介してバッテリ12に電流Ibが流れ、バッテリ12が充電される。PWM制御部57は、停電検出器38(図4)の出力信号φ38が「L」レベルである場合(商用交流電源11の停電時)には非活性化され、PWM制御信号φ57を非活性化レベルの「L」レベルに固定する。
【0055】
次に、図1図6に示した無停電電源装置の動作について説明する。商用交流電源11の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHよりも小さい通常時には、商用交流電源11からの交流電力がコンバータ1によって直流電力に変換され、双方向チョッパ4を介してバッテリ12に蓄えられるとともに、インバータ5によって交流電力に変換されて負荷13に供給される。
【0056】
バッテリ12が定格電圧(参照バッテリ電圧VBr)に充電された後には、コンバータ1からバッテリ12に供給される直流電力は、コンバータ1からインバータ5に供給される直流電力と比べて十分に小さくなる。したがって、上記通常時には、コンバータ1の入力電力Piは、インバータ5の出力電力Poに略等しくなる。
【0057】
商用交流電源11の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた過負荷時には、コンバータ1からインバータ5に直流電力が供給されるとともに、バッテリ12の直流電力が双方向チョッパ4を介してインバータ5に供給される。コンバータ1および双方向チョッパ4からの直流電力はインバータ5によって交流電力に変換されて負荷13に供給される。
【0058】
このとき、上限値PoHとインバータ5の出力電力Poとの差の電力ΔPo=PoH−Poだけコンバータ1の入力電力Piが減少されるとともに、その差の電力ΔPoだけ双方向チョッパ4の入力電力Pbが増大される。したがって、過負荷時には、コンバータ1の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poとの和の電力(Pi+Po)は上限値PoHの2倍の電力2×PoHに維持される。このため冷却器6(図1図2)の冷却能力(すなわちサイズ)を小さく抑制することができる。
【0059】
商用交流電源11の停電時には、コンバータ1の運転が停止され、バッテリ12の直流電力が双方向チョッパ4を介してインバータ5に供給され、交流電力に変換されて負荷13に供給される。したがって、停電が発生した場合でも、バッテリ12の直流電力によって負荷13の運転を継続することができる。
【0060】
図7は、実施の形態1の効果を説明するための図である。図7では、負荷13の消費電力PLを横軸に示し、インバータ5の出力電力Po、コンバータ1の入力電力Pi、および双方向チョッパ4の入力電力(すなわちバッテリ12の出力電力)Pbの各々を縦軸に示している。また、インバータ5の出力電力Poの上限値PoHに相当する電力を100(%)としている。インバータ5は、150(%)の電力を出力する能力を有するものとする。
【0061】
インバータ5の出力電力Poは、負荷13の消費電力PLと等しい。負荷13の消費電力PLが0(%)から150(%)まで増大すると、インバータ5の出力電力Poは0(%)から150(%)まで増大する。
【0062】
負荷13の消費電力PLが0〜100(%)である場合には、コンバータ1の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poと負荷13の消費電力PLとは等しい。負荷13の消費電力Pが0(%)から100(%)まで増大すると、コンバータ1の入力電力Piおよびインバータ5の出力電力Poの各々は0(%)から100(%)まで増大する。
【0063】
負荷13の消費電力PLが100〜150(%)である場合には、インバータ5の出力電力Poの上限値PoHとインバータ5の出力電力Poとの差の電力ΔPo=PoH−Poだけコンバータ1の入力電力Piが減少されるとともに、その差の電力ΔPoの2倍の電力2×ΔPoだけ双方向チョッパ4の入力電力Pbが増大される。
【0064】
したがって、負荷13の消費電力PLが100(%)から150(%)まで増大しても、コンバータ1の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poとの和の電力(Pi+Po)は200(%)の電力2×PoHに維持される。このため、本実施の形態1では、Pi+Po=200(%)であるときにコンバータ1およびインバータ5で発生する熱を放散させるサイズの冷却器6を設ければよい。
【0065】
図8は、比較例を示す図であって、図7と対比される図である。図8を参照して、この比較例が実施の形態1と異なる点は、負荷13の消費電力PLが100〜150(%)である場合には、コンバータ1の入力電力Piが100(%)に維持され、不足分の電力Po−Piが双方向チョッパ4から供給される点である。
【0066】
したがって、負荷13の消費電力PLが100(%)から150(%)まで増大すると、コンバータ1の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poとの和の電力(Pi+Po)は200(%)から250(%)まで増大する。このため比較例では、Pi+Po=250(%)であるときにコンバータ1およびインバータ5で発生する熱を放散させるサイズの冷却器を設ける必要がある。したがって、比較例の冷却器のサイズは、本実施の形態1の冷却器6のサイズの250/200=5/4倍になる。
【0067】
以上のように、この実施の形態1では、インバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた場合には、インバータ5の出力電力Poの上限値PoHとインバータ5の出力電力Poとの差の電力ΔPo=PoH−Poだけコンバータ1の入力電力Piを減少させるとともに、その差の電力ΔPoの2倍の電力2×ΔPoだけ双方向チョッパ4の入力電力Pbを増大させる。したがって、コンバータ1の入力電力Pbを上限値PoH以下に制限することができる。また、過負荷時であっても、コンバータ1の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poとの和の電力(Pi+Po)を2×PoH以下に維持できるので、冷却器6の小型化を図ることができる。
【0068】
[実施の形態2]
図9は、この発明の実施の形態2による無停電電源装置の構成を示すブロック図であって、図1と対比される図である。図9を参照して、この無停電電源装置が図1の無停電電源装置と異なる点は、入力端子T1が直流電源61に接続され、コンバータ1がDC−DC変換器62で置換され、制御装置8が制御装置8Aで置換されている点である。
【0069】
直流電源61(第1の電源)は、たとえば燃料電池であって、直流電力を生成して入力端子T1に出力する。直流電源61から供給される直流電圧VIの瞬時値は制御装置8Aによって検出される。電流検出器CD1は、DC−DC変換器62の入力電流Iiを検出し、その検出値を示す信号Iifを制御装置8Aに出力する。
【0070】
制御装置8Aは、交流入力電圧、交流出力電圧Vo、直流電圧VDC、バッテリ電圧VB、直流入力電流Ii、直流電流Ib、交流電流Ioに基づいて、DC−DC変換器62、双方向チョッパ4、およびインバータ5の各々を制御する。
【0071】
DC−DC変換器62(第1の電力変換器)は、制御装置8Aによって制御され、直流電源61から供給される直流電圧VIの直流電力を参照直流電圧VDCrの直流電力に変換して直流ライン2に出力する。DC−DC変換器62は、複数組のIGBTおよびダイオードを含む周知のものである。DC−DC変換器62の直流入力電流Iiは、制御可能になっている。
【0072】
直流電源61から直流電力が正常に供給されている場合(直流電源61の健全時)においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHよりも小さい通常時には、直流ライン2の直流電圧VDCが参照直流電圧VDCrになるように、DC−DC変換器62の直流入力電流Iiが制御される。
【0073】
直流電源61の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた過負荷時には、インバータ5の出力電力Poと上限値PoHの差の電力ΔPo=Po−PoHだけDC−DC変換器62の入力電力Piが減少するように、DC−DC変換器62の直流入力電流Iiが減少される。直流電源61からの直流電力の供給が停止された場合(直流電源61の停電時)には、DC−DC変換器62の運転は停止される。
【0074】
冷却器6は、DC−DC変換器62およびインバータ5に共通に設けられ、DC−DC変換器62およびインバータ5で発生する熱を空気中に放散させる。冷却器6、DC−DC変換器62、およびインバータ5は、一体のユニットを構成している。
【0075】
次に、図9に示した無停電電源装置の動作について説明する。直流電源61の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHよりも小さい通常時には、直流電源61からの直流電力がDC−DC変換器62によって参照直流電圧VDCrの直流電力に変換され、双方向チョッパ4を介してバッテリ12に蓄えられるとともに、インバータ5によって交流電力に変換されて負荷13に供給される。
【0076】
バッテリ12が定格電圧(参照バッテリ電圧VBr)に充電された後には、DC−DC変換器62からバッテリ12に供給される直流電力は、DC−DC変換器62からインバータ5に供給される直流電力と比べて十分に小さくなる。したがって、上記通常時には、DC−DC変換器62の入力電力Piは、インバータ5の出力電力Poに略等しくなる。
【0077】
直流電源61の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた過負荷時には、DC−DC変換器62からインバータ5に直流電力が供給されるとともに、バッテリ12の直流電力が双方向チョッパ4を介してインバータ5に供給される。DC−DC変換器62および双方向チョッパ4からの直流電力はインバータ5によって交流電力に変換されて負荷13に供給される。
【0078】
このとき、上限値PoHとインバータ5の出力電力Poとの差の電力ΔPo=PoH−PoだけDC−DC変換器62の入力電力Piが減少されるとともに、その差の電力ΔPoの2倍の電力2×ΔPoだけ双方向チョッパ4の入力電力Pbが増大される。したがって、DC−DC変換器62の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poとの和の電力(Pi+Po)は上限値PoHの2倍の電力に維持される。このため冷却器6の冷却能力(すなわちサイズ)を小さく抑制することができる。
【0079】
直流電源61の停電時には、DC−DC変換器62の運転が停止され、バッテリ12の直流電力が双方向チョッパ4を介してインバータ5に供給され、交流電力に変換されて負荷13に供給される。したがって、停電が発生した場合でも、バッテリ12の直流電力によって負荷13の運転を継続することができる。
【0080】
以上のように、この実施の形態2では、インバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた場合には、インバータ5の出力電力Poの上限値PoHとインバータ5の出力電力Poとの差の電力ΔPo=PoH−PoだけDC−DC変換器62の入力電力Piを減少させるとともに、その差の電力ΔPoの2倍の電力2×ΔPoだけ双方向チョッパ4の入力電力Pbを増大させる。したがって、DC−DC変換器62の入力電力Piを上限値PoH以下に制限することができる。また、DC−DC変換器62の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poとの和の電力(Pi+Po)を2×PoH以下に維持できるので、冷却器6の小型化を図ることができる。
【0081】
[実施の形態3]
図10は、この発明の実施の形態3による無停電電源装置の構成を示すブロック図であって、図1と対比される図である。図10を参照して、この無停電電源装置が図1の無停電電源装置と異なる点は、バッテリ端子T2、双方向チョッパ4、および制御装置8がそれぞれ交流端子T4、コンバータ71、および制御装置8Bで置換され、交流端子T4が交流発電機72に接続されている点である。
【0082】
交流発電機72(第2の電源)は、交流電力を生成して交流端子T4に出力する。交流発電機72から出力される交流電圧Vaの瞬時値は制御装置8Bによって検出される。電流検出器CD2は、コンバータ71の入力電流Iaを検出し、その検出値を示す信号Iafを制御装置8Bに出力する。
【0083】
制御装置8Bは、交流入力電圧Vi、交流出力電圧Vo、直流電圧VDC、交流電圧Va、交流入力電流Ii、交流電流Ia、交流出力電流Ioに基づいて、コンバータ1,71およびインバータ5の各々を制御する。
【0084】
コンバータ71(第2の電力変換器)は、制御装置8Bによって制御され、交流発電機72からの交流電力を直流電力に変換して直流ライン2に出力する。コンバータ71は、複数組のIGBTおよびダイオードを含む周知のものである。コンバータ71の交流入力電流Iaは、制御可能になっている。冷却器7は、コンバータ71で発生する熱を放散させる。
【0085】
商用交流電源11から交流電力が正常に供給されている場合(商用交流電源11の健全時)においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHよりも小さい通常時には、直流ライン2の直流電圧VDCが参照直流電圧VDCrになるように、コンバータ1の交流入力電流Iiが制御される。この場合、コンバータ71の入力電流Iaが0になるようにコンバータ71が制御される。
【0086】
商用交流電源11の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた過負荷時には、インバータ5の出力電力Poと上限値PoHの差の電力ΔPo=Po−PoHだけコンバータ1の入力電力Piが減少するように、コンバータ1の交流入力電流Iiが減少されるとともに、その差の電力ΔPoの2倍の電力2×ΔPoだけコンバータ71の入力電力Paが増大するように、コンバータ71の交流入力電流Iaが増大される。
【0087】
商用交流電源11からの交流電力の供給が停止された場合(商用交流電源11の停電時)には、コンバータ1の運転が停止されるとともに、直流ライン2の直流電圧VDCが参照直流電圧VDCrになるように、コンバータ71の交流入力電流Iaが制御される。
【0088】
次に、図10に示した無停電電源装置の動作について説明する。商用交流電源11の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHよりも小さい通常時には、商用交流電源11からの交流電力がコンバータ1によって直流電力に変換され、インバータ5によって交流電力に変換されて負荷13に供給される。
【0089】
商用交流電源11の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた過負荷時には、コンバータ1,71の両方からインバータ5に直流電力が供給される。コンバータ1,71からの直流電力はインバータ5によって交流電力に変換されて負荷13に供給される。
【0090】
このとき、上限値PoHとインバータ5の出力電力Poとの差の電力ΔPo=PoH−Poだけコンバータ1の入力電力Piが減少されるとともに、その差の電力ΔPoの2倍の電力2×ΔPoだけコンバータ71の入力電力Paが増大される。したがって、コンバータ1の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poとの和の電力(Pi+Po)は上限値PoHの2倍の電力2×PoHに維持される。このため冷却器6の冷却能力(すなわちサイズ)を小さく抑制することができる。
【0091】
商用交流電源11の停電時には、コンバータ1の運転が停止され、コンバータ71によって生成された直流電力がインバータ5に供給され、交流電力に変換されて負荷13に供給される。したがって、停電が発生した場合でも、交流発電機72の交流電力によって負荷13の運転を継続することができる。
【0092】
以上のように、この実施の形態3では、インバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた場合には、インバータ5の出力電力Poの上限値PoHとインバータ5の出力電力Poとの差の電力ΔPo=PoH−Poだけコンバータ1の入力電力Piを減少させるとともに、その差の電力ΔPoの2倍の電力2×ΔPoだけコンバータ71の入力電力Paを増大させる。したがって、コンバータ1の入力電力Piを上限値PoH以下に制限することができる。また、コンバータ1の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poとの和の電力(Pi+Po)を2×PoH以下に維持できるので、冷却器6の小型化を図ることができる。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
T1 入力端子、T2 バッテリ端子、T3 出力端子、T4 交流端子、CD1〜CD3 電流検出器、1,71 コンバータ、2 直流ライン、3 コンデンサ、4 双方向チョッパ、5 インバータ、6,7 冷却器、6a 平板部、6b 放熱フィン、8,8A,8B 制御装置、15 基板、20,30,40,50 制御回路、21,31,51 参照電圧生成部、22,32,52 電圧検出器、23,25,33,36,42,53,55 減算器、24,34,41,54 電流制御部、26,37,43,56 電圧制御部、27,39,44,57 PWM制御部、35 リミッタ、38 停電検出器、61 直流電源、62 DC−DC変換器、72 交流発電機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10