【文献】
I. M. Brown and T. C. Sandreczki,Cross-Linking Reactions in Maleimide and Bis(maleimide) Polymers. An ESR Study,Macromolecules,1990年,23(1),94-100
【文献】
田栗有樹,紫外線硬化型水性塗料の UV-LED 硬化に対する適用検討,平成 29 年度 佐賀県工業技術センター研究報告書,2018年,69-74,URL,https://www.saga-itc.jp/var/rev0/0004/2854/10_sigaisen_koukagata_suisei_toryou.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マレイミド化合物(A)の含有量が、前記マレイミド化合物(A)及び前記光硬化開始剤(B)の合計100質量部に対して、50〜99.9質量部である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
なお、本明細書における「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」の両方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」の両方を意味し、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」の両方を意味する。「(メタ)アリル」とは「アリル」及びそれに対応する「メタアリル」の両方を意味する。また、本実施形態において、「樹脂固形分」又は「樹脂組成物中の樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、樹脂組成物における、光硬化開始剤(B)、添加剤、溶剤及び充填材を除いた成分をいい、「樹脂固形分100質量部」とは、樹脂組成物における、光硬化開始剤(B)、添加剤、溶剤及び充填材を除いた成分の合計が100質量部であることをいうものとする。
【0029】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、式(1)で表されるマレイミド化合物(A)と、波長405nm(h線)の吸光度が0.1以上である光硬化開始剤(B)と、を含む。
〔式(1)で表されるマレイミド化合物(A)〕
本実施形態に係るマレイミド化合物(A)(成分(A)とも称す)は、式(1)の構造を有する。
【0031】
式(1)中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は置換基を有してもよい、アルキル基若しくはアルコキシ基を示し、R
4は、置換基を有してもよい、アルキレン基、アルケニレン基、アルコキシレン基、又はアリーレン基を示し、R
5及びR
6は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。
【0032】
通常、マレイミド化合物は光透過性が悪いため、樹脂組成物がマレイミド化合物を含むと、樹脂組成物中に分散している光硬化開始剤まで十分に光が届かず、光硬化開始剤がラジカルを発生し難い。そのため、一般的にマレイミドの光ラジカル反応は進行し難く、仮にマレイミド単体のラジカル重合や二量化反応が進行しても、その反応性は非常に低い。しかし、マレイミド化合物(A)は、脂環骨格を有することから、光透過性に非常に優れる。そのため、光硬化開始剤まで十分に光が届き、マレイミドの光ラジカル反応が、後述の光硬化開始剤(B)と共に、効率的に起こる。マレイミド化合物(A)は、1質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、波長405nm(h線)の光線を用いて、このクロロホルム溶液の光線透過率を測定した場合に、その透過率が0.01%以上と、優れた光透過性を示す。それゆえ、例えば、直接描画露光法を用いて高密度で高精細な配線形成(パターン)を有するプリント配線板を製造するに際し、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いた場合でも、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起こる。なお、透過率の上限値は、通常99.99%以下である。
【0033】
一方、通常、光硬化開始剤は、長波長の光線を用いると吸光度が低くなる傾向にある。例えば、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線(光線)を用いる場合には、この波長の光は比較的長波長であるため、通常の光硬化開始剤では吸収せず、この光を好適に吸収してラジカルを発生できる光硬化開始剤を用いなければ、重合は進行しない。すなわち、仮に光透過性を有するマレイミド化合物を用いても、光硬化開始剤が、波長405nm(h線)の光を吸収してラジカルを発生しなければ、重合は進行しない。しかし、本実施形態に係る後述の光硬化開始剤は、波長405nm(h線)の吸光度が0.1以上と、波長405nm(h線)の光に対して非常に優れた吸収性を示す。
【0034】
マレイミド化合物(A)は、上述したように光透過性に優れるため、波長405nmの光を用いても、光が光硬化開始剤まで十分に届き、光硬化開始剤から発生したラジカルを用いたラジカル反応が進行し、マレイミド化合物(A)が多く配合されている組成物においても光硬化が可能となる。本実施形態によれば、マレイミド化合物(A)の単独重合も可能となる。
そして、本実施形態の樹脂組成物を含んで得られる硬化物は、好適に光硬化するため、耐熱性、絶縁信頼性、及び熱安定性に優れる。そのため、本実施形態によれば、多層プリント配線板及び半導体装置における、保護膜、及び絶縁層を好適に形成することができる。
【0035】
式(1)中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルキル基、又はアルコキシ基を示す。アルキル基又はアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。
【0036】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0037】
置換基を有してもよいアルキル基としては、置換基を有してもよい、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、及びヘプチル基等が挙げられる。アルキル基中の水素原子は、フッ素原子、及び塩素原子等のハロゲン原子、並びにシアノ基等で置換されていてもよい。これらのアルキル基の中でも、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性により優れ、溶剤に対する良好な溶解性、低融点、低吸水性、及び他の樹脂との良好な相溶性を発現する観点から、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基であることがより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0038】
置換基を有してもよいアルコキシ基としては、置換基を有してもよい、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert−ブトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基中の水素原子は、フッ素原子、及び塩素原子等のハロゲン原子、並びにシアノ基等で置換されていてもよい。これらのアルコキシ基の中でも、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性により優れ、溶剤に対する良好な溶解性、低融点、低吸水性、及び他の樹脂との良好な相溶性を発現する観点から、メトキシ基が好ましい。
【0039】
式(1)中、R
4は、アルキレン基、アルケニレン基、アルコキシレン基、又はアリーレン基を示す。これらの基については、置換基を有していてもよい。
【0040】
置換基を有してもよいアルキレン基としては、置換基を有してもよい、炭素数1〜8の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が挙げられる。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、1−エチルプロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、及びへキシレン基等が挙げられる。アルコキシ基中の水素原子は、フッ素原子、及び塩素原子等のハロゲン原子、並びにシアノ基等で置換されていてもよい。これらのアルキレン基の中でも、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性により優れ、溶剤に対する良好な溶解性、低融点、低吸水性、及び他の樹脂との良好な相溶性を発現する観点から、メチレン基が好ましい。
【0041】
置換基を有してもよいアルケニレン基としては、置換基を有してもよい、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基が挙げられる。例えば、ビニレン基、1−メチルビニレン基、アリレン基、プロペニレン基、イソプロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、イソペンテニレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基、及びジシクロペンタジエニレン基等が挙げられる。アルケニレン基中の水素原子は、フッ素原子、及び塩素原子等のハロゲン原子、並びにシアノ基等で置換されていてもよい。これらのアルケニレン基の中でも、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性により優れ、溶剤に対する良好な溶解性、低融点、低吸水性、及び他の樹脂との良好な相溶性を発現する観点から、ビニレン基が好ましい。
【0042】
置換基を有してもよいアルコキシレン基としては、置換基を有してもよい、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシレン基が挙げられる。例えば、メトキシレン基、エトキシレン基、プロポキシレン基、イソプロポキシレン基、ブトキシレン基、及びイソブトキシレン基等が挙げられる。アルコキシレン基中の水素原子は、フッ素原子、及び塩素原子等のハロゲン原子、並びにシアノ基等で置換されていてもよい。これらのアルコキシレン基の中でも、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性により優れ、溶剤に対する良好な溶解性、低融点、低吸水性、及び他の樹脂との良好な相溶性を発現する観点から、メトキシレン基が好ましい。
【0043】
置換基を有してもよいアリーレン基としては、置換基を有してもよい、炭素数6〜48のアリーレン基が挙げられる。例えば、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、及び1,2−フェニレン基等のフェニレン基;1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル、及び2,7−ナフタレンジイル基等のナフタレンジイル基;1,4−アントラセンジイル基、1,5−アントラセンジイル基、2,6−アントラセンジイル基、及び9,10−アントラセンジイル基等のアントラセンジイル基;2,7−フェナントレンジイル基等のフェナントレンジイル基;9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基等のジヒドロフェナントレンジイル基;1,7−ナフタセンジイル基、2,8−ナフタセンジイル基、及び5,12−ナフタセンジイル基等のナフタセンジイル基;2,7−フルオレンジイル基、及び3,6−フルオレンジイル基等のフルオレンジイル基;1,6−ピレンジイル基、1,8−ピレンジイル基、2,7−ピレンジイル基、及び4,9−ピレンジイル基等のピレンジイル基;3,8−ペリレンジイル基、3,9−ペリレンジイル基、及び3,10−ペリレンジイル基等のペリレンジイル基;9,9’−スピロフルオレン−2,7−ジイル基、9,9’−スピロフルオレン−3,6−ジイル基、及び9,9’−スピロフルオレン−2,2’−ジイル基等のスピロフルオレンジイル基等が挙げられる。アリーレン基中の水素原子は、フッ素原子、及び塩素原子等のハロゲン原子、並びにシアノ基等で置換されていてもよい。これらのアルコキシレン基の中でも、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性により優れ、溶剤に対する良好な溶解性、低融点、低吸水性、及び他の樹脂との良好な相溶性を発現する観点から、1,4−フェニレン基が好ましい。
【0044】
式(1)中、R
5及びR
6は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。R
5及びR
6は、全て同一であってもよく、異なっていてもよい。
ハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、前記のR
1の記載を参照できる。
炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、4−ペンテニル基、イソプロペニル基、及びイソペンテニル基が挙げられる。
R
5及びR
6としては、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性により優れ、溶剤に対する良好な溶解性、低融点、低吸水性、及び他の樹脂との良好な相溶性を発現する観点から、水素原子、及びメチル基が好ましく、R
5及びR
6の全てが、水素原子であることがより好ましい。
【0045】
マレイミド化合物(A)は、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性により優れ、溶剤に対する良好な溶解性、低融点、低吸水性、及び他の樹脂との良好な相溶性を発現する観点から、式(2)で表されることが好ましい。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物において、マレイミド化合物(A)の含有量は、マレイミド化合物を主成分とした硬化物を得ることが可能となり、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性を向上させるという観点から、マレイミド化合物(A)及び光硬化開始剤(B)の合計100質量部に対して、50〜99.9質量部であることが好ましく、60〜99.9質量部であることがより好ましく、70〜99.8質量部であることが更に好ましく、80〜99.7質量部であることが更により好ましく、85〜99質量部であることがより更により好ましく、90〜95質量部であることが特に好ましい。
【0048】
また、本実施形態の樹脂組成物におけるマレイミド化合物(A)の含有量は、マレイミド化合物を主成分とした硬化物を得ることが可能となり、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性を向上させるという観点から、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、5〜99.9質量部であることがより好ましく、10〜95質量部であることが更に好ましく、15〜85質量部であることが更により好ましく、20〜83質量部であることがより更により好ましく、55〜80質量部であることが特に好ましく、70〜80質量部であることがより特に好ましい。樹脂組成物におけるマレイミド化合物(A)の含有量が100質量部とは、樹脂分が、マレイミド化合物(A)のみであることを称する。
【0049】
マレイミド化合物(A)は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0050】
〔式(1)で表されるマレイミド化合物(A)の製造方法〕
マレイミド化合物(A)は、例えば、次の合成方法により得ることができる。すなわち、式(5)で表されるアミン化合物と、式(6)で表される酸無水物とを付加反応させることで、式(7)で表されるアミド酸化合物を得て、その後、得られたアミド酸化合物を脱水閉環反応させることで得ることができる。
【0052】
式(5)中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は置換基を有してもよい、アルキル基若しくはアルコキシ基を示し、R
4は、置換基を有してもよい、アルキレン基、アルケニレン基、アルコキシレン基、又はアリーレン基を示す。
R
1、R
2、R
3、及びR
4については、好ましい態様も含めて、式(1)と同じである。
【0054】
式(6)中、R
5及びR
6は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。
R
5及びR
6については、好ましい態様も含めて、式(1)と同じである。
【0056】
式(7)中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は置換基を有してもよい、アルキル基若しくはアルコキシ基を示し、R
4は、置換基を有してもよい、アルキレン基、アルケニレン基、アルコキシレン基、又はアリーレン基を示し、R
5及びR
6は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を示す。
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6については、好ましい態様も含めて、式(1)と同じである。
【0057】
(式(7)で表されるアミド酸化合物の合成方法)
式(7)で表されるアミド酸化合物は、例えば、次の合成方法により得ることができる。すなわち、式(5)で表されるアミン化合物と、式(6)で表される酸無水物とを付加反応させることで得ることができる。
【0058】
式(5)で表されるアミン化合物としては、例えば、5−アミノ−1,3,3−トリメチル−1−(4−アミノフェニル)−インダン、6−アミノ−1,3,3−トリメチル−1−(4−アミノフェニル)−インダン、5−アミノ−1−エチル−3,3−ジメチル−1−(4−アミノフェニル)−インダン、6−アミノ−1−エチル−3,3−ジメチル−1−(4−アミノフェニル)−インダン、5−アミノ−1,3−ジエチル−3−メチル−1−(4−アミノフェニル)−インダン、6−アミノ−1,3−ジエチル−3−メチル−1−(4−アミノフェニル)−インダン、5−アミノ−1,3,3−トリエチル−1−(4−アミノフェニル)−インダン、6−アミノ−1,3,3−トリエチル−1−(4−アミノフェニル)−インダン、5−アミノ−1,3,3−トリプロピル−1−(4−アミノフェニル)−インダン、6−アミノ−1,3,3−トリプロピル−1−(4−アミノフェニル)−インダン、5−アミノ−1,3,3−トリメチル−1−(3−アミノフェニル)−インダン、6−アミノ−1,3,3−トリメチル−1−(3−アミノフェニル)−インダン、5−アミノ−1,3,3−トリメチル−1−(2−アミノフェニル)−インダン、及び6−アミノ−1,3,3−トリメチル−1−(2−アミノフェニル)−インダン等が挙げられる。これらのアミン化合物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらのアミン化合物としては、市販品を利用することもできる。
【0059】
式(6)で表される酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、3−メチル無水マレイン酸、3−エチル無水マレイン酸、3,4−ジメチル無水マレイン酸、3,4−ジエチル無水マレイン酸、3−クロル無水マレイン酸、及び3,4−ジクロル無水マレイン酸が挙げられる。これらの酸無水物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
式(6)で表される酸無水物の量は、式(5)で表されるアミン化合物1モルに対して、通常1.5〜3.0倍モルであり、好ましくは1.8〜2.2倍モルである。
【0060】
付加反応は、アミン化合物と酸無水物とを最初から全量仕込んでもよいが、アミン化合物と酸無水物との反応は発熱反応であるため、どちらか一方を少量ずつ添加することで、過剰な発熱を抑制しながら反応させることが好ましい。より好ましくは、酸無水物を溶媒に溶解させておき、常圧(1atm)下にて、反応槽の内温が100℃以下、好ましくは30〜100℃の範囲に保たれるように攪拌しながら、アミン化合物を滴下させることである。このとき、滴下する原料のアミン化合物は、反応溶媒と同じ溶媒で溶解しておいてもよい。原料のアミン化合物の滴下時間は、5〜180分であることが好ましいが、より好ましくは、30〜120分の範囲で全量を滴下することである。また、付加反応は、窒素、ヘリウム、及びアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0061】
原料のアミン化合物の滴下終了後、直ちに、生成したアミド酸化合物の脱水閉環反応を行ってもよいが、アミド酸化合物を30〜120℃で0.5〜3.0時間程度熟成させることが好ましく、50〜100℃で1.0〜2.0時間程度熟成させてから、脱水閉環反応させることがより好ましい。
【0062】
付加反応は、有機溶媒中にて行うことが好ましい。有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びシクロヘキサンなどの飽和炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒロドフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、及びアニソールなどのエーテル類;フェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノ−ル、2,4−キシレノ−ル、2,5−キシレノ−ル、2,6−キシレノ−ル、3,4−キシレノ−ル、及び3,5−キシレノ−ルなどのフェノール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、及びヘキサメチルホスホルアミドなどのアミド類;N−メチルピロリドン(NMP)、及びN−メチルカプロラクタムなどのラクタム類;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、及びスルホランなどの含硫黄溶媒類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
また、これらの有機溶媒には、以下に示す溶媒を共存させてもよい。このような有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、o−クロロトルエン、m−クロロトルエン、p−クロロトルエン、o−ブロモトルエン、m−ブロモトルエン、p−ブロモトルエン、クロロベンゼン、及びブロモベンゼンなどが挙げられる。これらは、反応溶液に生成した水を除去する(脱水する)ための共沸溶媒として作用する。これらの有機溶媒は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
有機溶媒の使用量は、特に制限されず、用いる溶媒種や組成によって異なるが、原料のアミン化合物及び酸無水物の合計1質量部に対して、通常1〜1000質量部、好ましくは31〜100質量部である。反応溶媒は、原料を溶解して溶液とすることが好ましいが、スラリー状態で反応を行ってもよい。
【0065】
(式(1)で表されるマレイミド化合物の合成方法)
式(1)で表されるマレイミド化合物(A)は、例えば、次の合成方法により得ることができる。すなわち、前記の合成方法で得られた式(7)で表されるアミド酸化合物を脱水閉環反応させることで得ることができる。また、脱水閉環反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、前記の付加反応に用いる溶媒が参照でき、付加反応に用いる溶媒と同じであっても、異なっていてもよい。
【0066】
脱水閉環反応は、必要に応じて、有機塩基触媒、酸触媒、又はイミド化剤の存在下で行うことが好ましい。
【0067】
有機塩基触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、キノリン、及びイソキノリンが挙げられる。これらの有機塩基触媒は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
酸触媒としては、例えば、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、無水硫酸、硝酸、りん酸、亜りん酸、りんタングステン酸、及びりんモリブデン酸などの無機酸類;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類;酢酸、及びシュウ酸などのカルボン酸類;クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、及びトリフルオロ酢酸などのハロゲン化カルボン酸類;シリカ、アルミナ、及び活性白土などの固体酸類;カチオン型イオン交換樹脂などが挙げられる。また、これらの酸触媒は、ジアミン化合物との塩であってもよい。この中では、硫酸、りん酸、及びp−トルエンスルホン酸が好ましい。これらの酸溶媒は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
有機塩基触媒及び酸触媒の使用量は、脱水閉環反応の反応速度が実質的に向上すれば特に限定されないが、原料のアミン化合物に対して、通常0.001〜10倍モルであり、0.005〜5倍モルであることが好ましく、0.01〜1倍モルであることがより好ましい。
【0068】
イミド化剤としては、例えば、無水酢酸などを脱水剤として用い、反応を触媒及び塩基の存在下に有機溶媒中で行う公知の方法(例えば、特公昭46−23250号公報、特公昭49−40231号公報、及び特公昭59−52660号公報に記載の方法)を用いることができる。また、イミド化剤として、ポリリン酸、及びジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合剤を用いることもできる。
【0069】
イミド化剤として脱水剤(無水酢酸など)を用いる場合には、その使用量は、原料のアミン化合物1モルに対して、通常1.0〜10倍モルであることが好ましく、1.8〜6.0倍モルであることがより好ましい。
また、触媒としては、例えば、アルカリ土類金属の酸化物、鉄(II及びIII)、ニッケル(II)、マンガン(II及びIII)、銅(I及びII)またはコバルト(II及びIII)の炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩などが挙げられる。これらの触媒は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。触媒の使用量は、アミド酸化合物1モルに対して、通常5×10
−4〜0.1モルである。
塩基としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びトリブチルアミンなどが挙げられる。これらの塩基は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。塩基の使用量は、アミド酸化合物1モルに対して、通常0.05〜1.1モルである。
【0070】
脱水閉環反応における反応温度及び反応時間は、使用する原料の種類、溶剤の種類、触媒の種類、共沸脱水用溶媒の種類や量、及びイミド化剤の種類や量などにより異なるが、通常20〜180℃の範囲で、1〜24時間である。また、反応圧力は、通常、大気圧とすればよい。反応雰囲気は、通常、空気、窒素、ヘリウム、ネオン、又はアルゴン雰囲気下であり、不活性気体である窒素やアルゴン雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0071】
マレイミド化合物を含む反応混合物から、目的物であるマレイミド化合物を単離する方法は、特に限定されないが、目的物が反応溶媒から析出した場合には、ろ取もしくは遠心分離によって単離することができる。一方、目的物が反応溶媒に溶解している場合は、減圧下溶媒を留去したり、反応混合物中に適当な貧溶媒を加えたり、反応混合物を貧溶媒に排出するなどして析出させ、ろ取もしくは遠心分離によって単離することができる。
単離したマレイミド化合物を更に精製する必要がある場合には、公知方法を採用して精製すればよい。このような方法としては、例えば、蒸留精製法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー法、スラッジ処理、及び活性炭処理などが挙げられる。
【0072】
得られたマレイミド化合物は、NMR(核磁気共鳴分析)等の公知の方法により同定することができる。マレイミド化合物の純度は、例えば、液体クロマトグラフィー又はIRスペクトル法等で分析することができる。マレイミド化合物中の副生物及び残存溶媒等の揮発成分は、例えば、ガスクロマトグラフィーで定量分析することができる。マレイミド化合物中に残存するハロゲン化合物は、例えば、液体クロマトグラフ質量分析計で同定することができ、また、硝酸銀溶液を用いた電位差滴定又は燃焼法による分解後、イオンクロマトグラフィーで定量することができる。マレイミド化合物の重合反応性は、例えば、示差走査熱量測定による反応エンタルピー、及び熱板法又はトルク計測法によるゲル化時間で評価することができる。
【0073】
〔光硬化開始剤(B)〕
本実施形態に係る光硬化開始剤(B)(成分(B)とも称す)は、波長405nm(h線)の吸光度が0.1以上であれば特に限定されず、一般に光硬化性樹脂組成物で用いられる分野で公知のものを使用することができる。本実施形態において、光硬化開始剤(B)とは、波長405nm(h線)の吸光度が0.1以上であり、かつ、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を照射することにより、マレイミド化合物(A)のマレイミド基を重合させることができる活性物質(ラジカル)を放出する化合物を称す。また、波長405nm(h線)の吸光度が0.1以上であるとは、成分(B)が0.01質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、波長405nm(h線)の光線を用いてこのクロロホルム溶液の吸光度を測定した場合に、吸光度が0.1以上であることを意味する。このような光硬化開始剤(B)を用いると、例えば、直接描画露光法を用いて高密度で高精細な配線形成(パターン)を有するプリント配線板を製造するに際し、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いた場合でも、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起こる。吸光度は、0.15以上であることが好ましい。上限値は、例えば、99.9以下である。
【0074】
光硬化開始剤(B)としては、式(3)で表される化合物が好ましい。式(3)で表される化合物は、この化合物が0.01質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、波長405nm(h線)の光線を用いてこのクロロホルム溶液の吸光度を測定した場合に、吸光度が0.1以上と、波長405nm(h線)の光に対して非常に優れた吸収性を示す。そのため、この化合物は、波長405nm(h線)の光に対して好適にラジカルを発生する。吸光度は、光硬化性により優れる樹脂組成物を得ることができることから、0.15以上であることが好ましい。上限値は、例えば、2.0以下である。
【0076】
式(3)中、R
7は、各々独立に、式(4)で表される置換基又はフェニル基を表す。
【0078】
式(4)中、R
8は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。式(4)中、−*は、式(3)中のリン原子(P)との結合手を示す。
【0079】
式(2)中、R
7は、各々独立に、式(4)で表される置換基又はフェニル基を表す。R
7のうち、1つ以上が式(4)で表される置換基であることが好ましい。
式(4)中、R
8は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。R
8のうち、1つ以上がメチル基であることが好ましく、全てメチル基であることがより好ましい。
【0080】
式(3)で表される化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0081】
アシルフォスフィンオキサイド類は、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線に対して非常に優れた吸収性を示し、マレイミド化合物(A)を好適にラジカル重合させることができる。そのため、特に多層プリント配線板に用いた際に、光硬化性、耐熱性及び熱安定性に優れる樹脂組成物、支持体付き樹脂シート、それらを用いた多層プリント配線板、並びに半導体装置を好適に製造することが可能となる。
【0082】
本実施形態の樹脂組成物において、光硬化開始剤(B)の含有量は、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いてマレイミド化合物(A)を十分に硬化させ、耐熱性を向上させるという観点から、マレイミド化合物(A)及び光硬化開始剤(B)の合計100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、0.1〜40質量部であることがより好ましく、0.2〜30質量部であることが更に好ましく、0.3〜20質量部であることが更により好ましく、1〜15質量部であることがより更により好ましく、5〜10質量部であることが特に好ましい。
【0083】
光硬化開始剤(B)は、市販品を利用することもでき、例えば、IGM Resins B.V.製Omnirad(登録商標)819(商品名)、IGM Resins B.V.製Omnirad(登録商標)819DW(商品名)、及びIGM Resins B.V.製Omnirad(登録商標)TPO(商品名)等が挙げられる。
【0084】
〔樹脂又は化合物〕
本実施形態の樹脂組成物には、樹脂又は化合物として、マレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物(以下、「他のマレイミド化合物」ともいう。)、シアン酸エステル化合物、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、カルボジイミド化合物、及びエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群より選択される1種以上を更に含むことができる。マレイミド化合物(A)は、光透過性に非常に優れるため、これらの樹脂又は化合物を用いても、光硬化開始剤まで十分に光が届き、マレイミドの光ラジカル反応が効率的に起き、種々の活性エネルギー線を用いて光硬化させることができる。そのため、例えば、波長405nmを含む活性エネルギー線を用いても、光が光硬化開始剤まで十分に届き、光硬化開始剤から発生したラジカルを用いたラジカル反応が進行し、これらの樹脂又は化合物が配合されている組成物においても光硬化が可能となる。以下、これらの各成分について説明する。
【0085】
(他のマレイミド化合物)
樹脂組成物においては、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線で露光した場合に、樹脂組成物が感光して、光硬化する限り、マレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物を用いることができる。
【0086】
他のマレイミド化合物としては、マレイミド化合物(A)以外であり、分子中に一個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されない。その具体例としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−アニリノフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−(4−カルボキシ−3−ヒドロキシフェニル)マレイミド、フルオレセイン−5−マレイミド、6−マレイミドヘキサン酸、4−マレイミド酪酸、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル)プロパン、4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、フェニルメタンマレイミド、o−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、o−フェニレンビスシトラコンイミド、m−フェニレンビスシトラコンイミド、p−フェニレンビスシトラコンイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,2−ビスマレイミドエタン、1,4−ビスマレイミドブタン、1,5−ビスマレイミドペンタン、1,5−ビスマレイミド−2−メチルペンタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、1,8−ビスマレイミド−3,6−ジオキサオクタン、1,11−ビスマレイミド−3,6,9−トリオキサウンデカン、1,3−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、4,4−ジフェニルメタンビスシトラコンイミド、2,2−ビス[4−(4−シトラコンイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−シトラコンイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−シトラコンイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、式(8)で表されるマレイミド化合物、式(9)で表されるマレイミド化合物、式(10)で表されるマレイミド化合物、式(11)で表されるマレイミド化合物、式(19)で表されるマレイミド化合物等の式(12)で表されるマレイミド化合物、式(13)で表されるマレイミド化合物、式(14)で表されるマレイミド化合物、式(15)で表されるマレイミド化合物、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン(式(16)で表されるマレイミド化合物)、式(17)で表されるマレイミド化合物、及び式(18)で表されるマレイミド化合物、並びにこれらマレイミド化合物のプレポリマー、又はマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマー等が挙げられる。これらの中でも、より優れた光硬化性、耐熱性及び熱安定性を有することから、式(12)で表されるマレイミド化合物、及び式(18)で表されるマレイミド化合物が好ましく、式(18)で表されるマレイミド化合物がより好ましい。
【0088】
式(8)中、R
9は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
1は、1以上の整数を表し、好ましくは1〜10の整数を表し、より好ましくは1〜5の整数を表す。
【0090】
式(9)中、R
10は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
2は、1以上の整数を表し、好ましくは1〜5の整数を表す。
【0092】
式(10)中、n
3(平均)は1以上であり、好ましくは1〜21であり、より好ましくは、優れた光硬化性を示す観点から、1〜16である。
【0094】
式(11)中、xの数は、10〜35である。
式(11)中、yの数は、10〜35である。
【0096】
式(12)中、R
aは、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を表す。R
aとしては、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましく、優れた光硬化性を示すことから、直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
アルキル基の炭素数としては、優れた光硬化性を示すことから、4〜12が好ましい。
アルケニル基の炭素数としては、優れた光硬化性を示すことから、4〜12が好ましい。
【0097】
直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、式(1)におけるアルキル基を参照できる。これらの中でも、優れた光硬化性を示すことから、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基が好ましく、n−オクチル基がより好ましい。
直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基としては、式(1)におけるアルケニル基を参照できる。これらの中でも、優れた光硬化性を示すことから、2−ヘプテニル基、2−オクテニル基、2−ノネニル基が好ましく、2−オクテニル基がより好ましい。
【0098】
式(12)中、R
bは、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基を表す。R
bとしては、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましく、優れた光硬化性を示すことから、直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
アルキル基の炭素数としては、1〜16が好ましく、優れた光硬化性を示すことから、4〜12がより好ましい。
アルケニル基の炭素数としては、1〜16が好ましく、優れた光硬化性を示すことから、4〜12がより好ましい。
【0099】
アルキル基の具体例としては、前記のR
aにおけるアルキル基を参照できる。この中でも、優れた光硬化性を示すことから、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基が好ましく、n−オクチル基がより好ましい。
アルケニル基の具体例としては、前記のR
aにおけるアルケニル基を参照できる。この中でも、優れた光硬化性を示すことから、2−ヘプテニル基、2−オクテニル基、2−ノネニル基が好ましく、2−オクテニル基がより好ましい。
【0100】
式(12)中、n
aの数は1以上であり、好ましくは2〜16であり、より好ましくは、優れた光硬化性を示す観点から、3〜14である。
【0101】
式(12)中、n
bの数は1以上であり、好ましくは2〜16であり、より好ましくは、優れた光硬化性を示す観点から、3〜14である。
【0102】
n
aとn
bの数は同じであっても、異なっていてもよい。
【0104】
式(13)中、n
4(平均)は0.5以上であり、好ましくは0.8〜10であり、より好ましくは、優れた光硬化性を示す観点から、1〜8である。
【0106】
式(14)中、n
5は、1以上の整数を表し、好ましくは1〜10の整数を表す。
【0108】
式(15)中、n
6は、1以上の整数を表し、好ましくは1〜10の整数を表す。
【0111】
上記式(17)中、R
11は、各々独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R
12は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。
【0113】
式(18)中、n
7は、1〜10の整数を示す。n
7は、より好適な粘度が得られ、ワニスの粘度上昇がより制御できる点から、1〜6の整数であることが好ましい。
【0114】
他のマレイミド化合物は、市販品を利用することもできる。
式(8)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、BMI−2300(大和化成工業(株)製、商品名)が挙げられる。
式(9)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、MIR−3000(日本化薬(株)製、商品名)が挙げられる。
式(10)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、ケイ・アイ化成(株)製BMI−1000P(商品名、式(10)中のn
3=13.6(平均))、ケイ・アイ化成(株)製BMI−650P(商品名、式(10)中のn
3=8.8(平均))、ケイ・アイ化成(株)製BMI−250P(商品名、式(10)中のn
3=3〜8(平均))、ケイ・アイ化成(株)製CUA−4(商品名、式(10)中のn
3=1)等が挙げられる。
式(11)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−6100(商品名、式(11)中のx=18、y=18)等が挙げられる。
式(12)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−689(商品名、式(19)、官能基当量:346g/eq.)等が挙げられる。
【0116】
式(13)で表されるマレイミド化合物としては、例えば、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−1500(商品名、式(13)中のn
4=1.3、官能基当量:754g/eq.)等が挙げられる。
式(14)で表されるマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−1700(商品名)が挙げられる。
式(15)で表されるマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−3000(商品名)、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−3000J(商品名)、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−5000(商品名)、Designer Molecules Inc.(DMI)製BMI−9000(商品名)が挙げられる。
式(16)で表されるマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、大和化成(株)製BMI−TMH(商品名)が挙げられる。
式(17)で表されるマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、ケイ・アイ化成(株)製BMI−70(商品名)があげられる。
式(18)で表されるマレイミド化合物を含むマレイミド化合物としては、市販品を利用することもでき、例えば、日本化薬(株)製MIZ−001(商品名)が挙げられる。
【0117】
これらの他のマレイミド化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0118】
樹脂組成物において、他のマレイミド化合物の合計の含有量は、特に限定されないが、より優れた光硬化性、耐熱性及び熱安定性を得る観点から、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、0.01〜95質量部であることが好ましく、5〜90質量部であることがより好ましく、15〜85質量部であることが更に好ましく、17〜80質量部であることがより更に好ましく、20〜45質量部であることがより更により好ましく、20〜30質量部であることが特に好ましい。
【0119】
(シアン酸エステル化合物)
シアン酸エステル化合物としては、シアナト基(シアン酸エステル基)が少なくとも1個置換された芳香族部分を分子内に有する樹脂であれば特に限定されない。
【0120】
例えば、式(20)で表されるものが挙げられる。
【0122】
式(20)中、Ar
1は、ベンゼン環、ナフタレン環又は2つのベンゼン環が単結合したものを表す。複数ある場合は互いに同一であっても異なっていても良い。Raは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜12のアリール基とが結合された基を示す。Raにおける芳香環は置換基を有していてもよく、Ar
1及びRaにおける置換基は任意の位置を選択できる。pはAr
1に結合するシアナト基の数を示し、各々独立に1〜3の整数である。qはAr
1に結合するRaの数を示し、Ar
1がベンゼン環の時は4−p、ナフタレン環の時は6−p、2つのベンゼン環が単結合したものの時は8−pである。tは平均繰り返し数を示し、0〜50の整数であり、シアン酸エステル化合物は、tが異なる化合物の混合物であってもよい。Xは、複数ある場合は各々独立に、単結合、炭素数1〜50の2価の有機基(水素原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。)、窒素数1〜10の2価の有機基(例えば−N−R−N−(ここでRは有機基を示す。))、カルボニル基(−CO−)、カルボキシ基(−C(=O)O−)、カルボニルジオキサイド基(−OC(=O)O−)、スルホニル基(−SO
2−)、2価の硫黄原子又は2価の酸素原子のいずれかを示す。
【0123】
式(20)のRaにおけるアルキル基は、直鎖もしくは分枝の鎖状構造、及び、環状構造(例えばシクロアルキル基等)いずれを有していてもよい。
また、式(20)におけるアルキル基及びRaにおけるアリール基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、又はシアノ基等で置換されていてもよい。
【0124】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びトリフルオロメチル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、(メタ)アリル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、2−メチル−2−プロペニル、2−ペンテニル基、及び2−ヘキセニル基等が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o−,m−又はp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、及びo−,m−又はp−トリル基等が挙げられる。
アルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0125】
式(20)のXにおける炭素数1〜50の2価の有機基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビフェニルイルメチレン基、ジメチルメチレン−フェニレン−ジメチルメチレン基、フルオレンジイル基、及びフタリドジイル基等が挙げられる。前記2価の有機基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
式(20)のXにおける窒素数1〜10の2価の有機基としては、イミノ基、ポリイミド基等が挙げられる。
【0126】
また、式(20)中のXの有機基として、例えば、式(21)又は式(22)で表される構造であるものが挙げられる。
【0128】
式(21)中、Ar
2はベンゼンジイル基、ナフタレンジイル基又はビフェニルジイル基を示し、uが2以上の整数の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Rb、Rc、Rf、及びRgは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、トリフルオロメチル基、又はフェノール性ヒドロキシ基を少なくとも1個有するアリール基を示す。Rd及び、Reは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシル基、又はヒドロキシ基のいずれか一種から選択される。uは0〜5の整数を示す。
【0130】
式(22)中、Ar
3はベンゼンジイル基、ナフタレンジイル基又はビフェニルジイル基を示し、vが2以上の整数の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Ri、及びRjは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ベンジル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、又はシアナト基が少なくとも1個置換されたアリール基を示す。vは0〜5の整数を示すが、vが異なる化合物の混合物であってもよい。
【0131】
さらに、式(20)中のXとしては、下記式で表される2価の基が挙げられる。
【0133】
ここで式中、zは4〜7の整数を示す。Rkは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
式(21)のAr
2及び式(22)のAr
3の具体例としては、式(21)に示す2個の炭素原子、又は式(21)に示す2個の酸素原子が、1,4位又は1,3位に結合するベンゼンジイル基、前記2個の炭素原子又は2個の酸素原子が4,4’位、2,4’位、2,2’位、2,3’位、3,3’位、又は3,4’位に結合するビフェニルジイル基、及び、前記2個の炭素原子又は2個の酸素原子が、2,6位、1,5位、1,6位、1,8位、1,3位、1,4位、又は2,7位に結合するナフタレンジイル基が挙げられる。
式(21)のRb、Rc、Rd、Re、Rf及びRg、並びに式(22)のRi、Rjにおけるアルキル基及びアリール基は、式(20)におけるものと同義である。
【0134】
式(20)で表されるシアナト置換芳香族化合物の具体例としては、シアナトベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メチルベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メトキシベンゼン、1−シアナト−2,3−,1−シアナト−2,4−,1−シアナト−2,5−,1−シアナト−2,6−,1−シアナト−3,4−又は1−シアナト−3,5−ジメチルベンゼン、シアナトエチルベンゼン、シアナトブチルベンゼン、シアナトオクチルベンゼン、シアナトノニルベンゼン、2−(4−シアナフェニル)−2−フェニルプロパン(4−α−クミルフェノールのシアネート)、1−シアナト−4−シクロヘキシルベンゼン、1−シアナト−4−ビニルベンゼン、1−シアナト−2−又は1−シアナト−3−クロロベンゼン、1−シアナト−2,6−ジクロロベンゼン、1−シアナト−2−メチル−3−クロロベンゼン、シアナトニトロベンゼン、1−シアナト−4−ニトロ−2−エチルベンゼン、1−シアナト−2−メトキシ−4−アリルベンゼン(オイゲノールのシアネート)、メチル(4−シアナトフェニル)スルフィド、1−シアナト−3−トリフルオロメチルベンゼン、4−シアナトビフェニル、1−シアナト−2−又は1−シアナト−4−アセチルベンゼン、4−シアナトベンズアルデヒド、4−シアナト安息香酸メチルエステル、4−シアナト安息香酸フェニルエステル、1−シアナト−4−アセトアミノベンゼン、4−シアナトベンゾフェノン、1−シアナト−2,6−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,2−ジシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナト−2−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,4−ジメチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−5−メチルベンゼン、1−シアナト又は2−シアナトナフタレン、1−シアナト−4−メトキシナフタレン、2−シアナト−6−メトキシナフタレン、2−シアナト−7−メトキシナフタレン、2,2’−ジシアナト−1,1’−ビナフチル、1,3−,1,4−,1,5−,1,6−,1,7−,2,3−,2,6−又は2,7−ジシアナトシナフタレン、2,2’−又は4,4’−ジシアナトビフェニル、4,4’−ジシアナトオクタフルオロビフェニル、2,4’−又は4,4’−ジシアナトジフェニルメタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3−ジメチルブタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)オクタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルペンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルペンタン、4,4−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,4−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2,4−トリメチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−シアナトフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−シアナトフェニル)ビフェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−シアナト−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−シアナトフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジクロロエチレン、1,3−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4−[ビス(4−シアナトフェニル)メチル]ビフェニル、4,4−ジシアナトベンゾフェノン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−プロペン−1−オン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、4−シアナト安息香酸−4−シアナトフェニルエステル(4−シアナトフェニル−4−シアナトベンゾエート)、ビス−(4−シアナトフェニル)カーボネート、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(フェノールフタレインのシアネート)、3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(o−クレゾールフタレインのシアネート)、9,9’−ビス(4−シアナトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)フルオレン、トリス(4−シアナトフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1,3−トリス(4−シアナトフェニル)プロパン、α,α,α’−トリス(4−シアナトフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、1,1,2,2−テトラキス(4−シアナトフェニル)エタン、テトラキス(4−シアナトフェニル)メタン、2,4,6−トリス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−6−(N−メチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−3−シアナト−4−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナトフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド、トリス(3,5−ジメチル−4−シアナトベンジル)イソシアヌレート、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−(4−メチルフェニル)−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フタルイミジン、1−メチル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、及び、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オンが挙げられる。
【0135】
これらのシアン酸エステル化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0136】
式(20)で表されるシアン酸エステル化合物の別の具体例としては、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂(公知の方法により、フェノール、アルキル置換フェノール又はハロゲン置換フェノールと、ホルマリンやパラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド化合物とを、酸性溶液中で反応させたもの)、トリスフェノールノボラック樹脂(ヒドロキシベンズアルデヒドとフェノールとを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フルオレンノボラック樹脂(フルオレノン化合物と9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂及びビフェニルアラルキル樹脂(公知の方法により、Ar
4−(CH
2Y)
2(Ar
4はフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。以下、この段落において同様。)で表されるようなビスハロゲノメチル化合物とフェノール化合物とを酸性触媒若しくは無触媒で反応させたもの、Ar
4−(CH
2OR)
2(Rはアルキル基を示す。)で表されるようなビス(アルコキシメチル)化合物とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの、又は、Ar
4−(CH
2OH)
2で表されるようなビス(ヒドロキシメチル)化合物とフェノール化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの、あるいは、芳香族アルデヒド化合物とアラルキル化合物とフェノール化合物とを重縮合させたもの)、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とヒドロキシ置換芳香族化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノール変性ジシクロペンタジエン樹脂、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂(公知の方法により、フェノール性ヒドロキシ基を1分子中に2つ以上有する多価ヒドロキシナフタレン化合物を、塩基性触媒の存在下に脱水縮合させたもの)等のフェノール樹脂を、前記と同様の方法によりシアネート化したもの等、並びにこれらのプレポリマー等が挙げられる。これらのシアン酸エステル化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0137】
これらのシアン酸エステル化合物の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。かかる製法の例としては、所望の骨格を有するヒドロキシ基含有化合物を入手又は合成し、ヒドロキシ基を公知の手法により修飾してシアネート化する方法が挙げられる。ヒドロキシ基をシアネート化する手法としては、例えば、Ian Hamerton,“Chemistry and Technology of Cyanate Ester Resins,”Blackie Academic & Professionalに記載の手法が挙げられる。
【0138】
これらのシアン酸エステル化合物を用いた硬化物は、ガラス転移温度、低熱膨張性、及びめっき密着性等に優れた特性を有する。
【0139】
樹脂組成物において、シアン酸エステル化合物の合計の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは0.01〜40質量部である。
【0140】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有するフェノール樹脂であれば、一般に公知のものを使用できる。例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、重合性不飽和炭化水素基含有フェノール樹脂、及び水酸基含有シリコーン樹脂類等が挙げられる。これらのフェノール樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0141】
樹脂組成物において、フェノール樹脂の合計の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは0.01〜40質量部である。
【0142】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、一般に公知のものを使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、ブタジエン等の二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物、及びこれらのハロゲン化物が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0143】
エポキシ樹脂としては、市販品を利用することができ、例えば、式(23)で表されるエポキシ樹脂(日本化薬(株)製NC−3000FH(商品名)、式(23)中、n
8は約4である)、及び式(24)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製HP−4710(商品名)が挙げられる。
【0146】
これらのエポキシ樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0147】
樹脂組成物において、エポキシ樹脂の合計の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは0.01〜40質量部である。
【0148】
(オキセタン樹脂)
オキセタン樹脂としては、一般に公知のものを使用できる。例えば、オキセタン、2−メチルオキセタン、2,2−ジメチルオキセタン、3−メチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3,3−ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2−クロロメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT−101(東亞合成(株)製、商品名)、OXT−121(東亞合成(株)製、商品名)、及びOXT−221(東亞合成(株)製、商品名)等が挙げられる、特に制限されるものではない。これらのオキセタン樹脂は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0149】
樹脂組成物において、オキセタン樹脂の合計の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは0.01〜40質量部である。
【0150】
(ベンゾオキサジン化合物)
ベンゾオキサジン化合物としては、例えば、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であれば、一般に公知のものを用いることができる。例えば、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA−BXZ(小西化学工業(株)製、商品名)、ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF−BXZ(小西化学工業(株)製、商品名)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS−BXZ(小西化学工業(株)製、商品名)、及びフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン等が挙げられる。これらのベンゾオキサジン化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0151】
樹脂組成物において、ベンゾオキサジン化合物の合計の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは0.01〜40質量部である。
【0152】
(カルボジイミド化合物)
カルボジイミド化合物としては、少なくとも分子中に1個以上のカルボジイミド基を有していれば特に限定されず、一般に公知のものを使用できる。例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、環状カルボジイミド、カルボジライト(登録商標:日清紡ケミカル(株)製)、及びスタバクゾール(登録商標:LANXESS Deutschland GmbH製)等のポリカルボジイミド等が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0153】
樹脂組成物において、カルボジイミド化合物の合計の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは0.01〜40質量部である。
【0154】
(エチレン性不飽和基を有する化合物)
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であれば、特に限定されず、一般に公知のものを使用できる。例えば、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基等を有する化合物が挙げられる。
【0155】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキサイドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペングリコールジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0156】
また、この他にも、(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を同一分子内に併せ持つウレタン(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロイル基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステル(メタ)アクリレート類;エポキシ樹脂から誘導され、(メタ)アクリロイル基を併せ持つエポキシ(メタ)アクリレート類;これらの結合が複合的に用いられている反応性オリゴマー等も挙げられる。
【0157】
ウレタン(メタ)アクリレート類とは、水酸基含有(メタ)アクリレートとポリイソシアネート、必要に応じて用いられるその他アルコール類との反応物が挙げられる。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のグリセリン(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の糖アルコール(メタ)アクリレート類と、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキサンメチレンジイソシアネート、及びそれらのイソシアヌレート、ビュレット反応物等のポリイソシアネート等を反応させた、ウレタン(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0158】
ポリエステル(メタ)アクリレート類とは、例えば、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性フタル酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の単官能(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート等のジ(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパン又はグリセリン1モルに1モル以上のε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0159】
ペンタエリスリトール、ジメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、又はテトラメチロールプロパン1モルに、1モル以上のε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、ジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール1モルに1モル以上のε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状ラクトン化合物を付加して得たトリオールのモノ、又はポリ(メタ)アクリレートのトリオール、テトラオール、ペンタオール又はヘキサオール等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0160】
更に、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、(ポリ)ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール成分と、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸、セバチン酸、アゼライン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の多塩基酸、及びこれらの無水物との反応物であるポリエステルポリオールの(メタ)アクリレート;ジオール成分と多塩基酸及びこれらの無水物とε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等からなる環状ラクトン変性ポリエステルジオールの(メタ)アクリレート等の多官能(ポリ)エステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0161】
エポキシ(メタ)アクリレート類とは、エポキシ基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのカルボキシレート化合物である。例えば、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレート、グリオキサール型エポキシ(メタ)アクリレート、複素環式エポキシ(メタ)アクリレート等、及びこれらの酸無水物変性エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0162】
ビニル基を有する化合物としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル類が挙げられる。スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。その他ビニル化合物としてはトリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、ビスアリルナジイミド等が挙げられる。
【0163】
これらのエチレン性不飽和基を有する化合物は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0164】
樹脂組成物において、エチレン性不飽和基を有する化合物の合計の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部中に、好ましくは0.01〜40質量部である。
【0165】
〔充填材〕
樹脂組成物には、塗膜性や耐熱性等の諸特性を向上させるために、充填材を更に含むことができる。充填材としては、絶縁性を有し、波長405nm(h線)に対する透過性を阻害しないものであることが好ましい。充填材としては、例えば、シリカ(天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、及び中空シリカ等)、アルミニウム化合物(ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、及び窒化アルミニウム等)、ホウ素化合物(窒化ホウ素等)、マグネシウム化合物(酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウム等)、カルシウム化合物(炭酸カルシウム等)、モリブデン化合物(酸化モリブデン、及びモリブデン酸亜鉛等)、バリウム化合物(硫酸バリウム、及びケイ酸バリウム等)、タルク(天然タルク、及び焼成タルク等)、マイカ、ガラス(短繊維状ガラス、球状ガラス、微粉末ガラス、Eガラス、Tガラス、及びDガラス等)、シリコーンパウダー、フッ素樹脂系充填材、ウレタン樹脂系充填材、(メタ)アクリル樹脂系充填材、ポリエチレン系充填材、スチレン・ブタジエンゴム、並びにシリコーンゴム等が挙げられる。これらの充填材は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0166】
これらの中でも、シリカ、ベーマイト、硫酸バリウム、シリコーンパウダー、フッ素樹脂系充填材、ウレタン樹脂系充填材、(メタ)アクリル樹脂系充填材、ポリエチレン系充填材、スチレン・ブタジエンゴム、及びシリコーンゴムが好ましい。
これらの充填材は、後述のシランカップリング剤等で表面処理されていてもよい。
【0167】
硬化物の耐熱性を向上させ、また良好な塗膜性が得られるという観点から、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。シリカの具体例としては、デンカ(株)製のSFP−130MC(商品名)、(株)アドマテックス製のSC2050−MB(商品名)、SC1050−MLE(商品名)、YA010C−MFN(商品名)、及びYA050C−MJA(商品名)等が挙げられる。
【0168】
充填材の粒径は、樹脂組成物の紫外光透過性という観点から、通常0.005〜10μmであり、好ましくは0.01〜1.0μmである。
【0169】
樹脂組成物において、充填材の含有量は、樹脂組成物の紫外光透過性や、硬化物の耐熱性を良好にするという観点から、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、300質量部以下とすることが好ましく、200質量部以下とすることがより好ましく、100質量部以下とすることが更に好ましい。なお、充填材を含有する場合、下限値は、塗膜性や耐熱性等の諸特性を向上させる効果が得られる観点から、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、通常1質量部以上である。
【0170】
〔シランカップリング剤及び湿潤分散剤〕
樹脂組成物には、充填材の分散性、並びにポリマー及び/又は樹脂と、充填材との接着強度を向上させるために、シランカップリング剤及び/又は湿潤分散剤を併用することも可能である。
これらのシランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されない。具体例としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、[3−(6−アミノヘキシルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、及び[3−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピル]トリメトキシシランなどのアミノシラン系;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び[8−(グリシジルオキシ)−n−オクチル]トリメトキシシランなどのエポキシシラン系;ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリメトキシ(7−オクテン−1−イル)シラン、及びトリメトキシ(4−ビニルフェニル)シランなどのビニルシラン系;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシランなどのメタクリルシラン系、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのアクリルシラン系;3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、及び3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン系;トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレートシラン系;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどのメルカプトシラン系;3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイドシラン系;p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン系;N−[2−(N−ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系;[3−(トリメトキシシリル)プロピル]コハク酸無水物などの酸無水物系;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、及びp−トリルトリメトキシシランなどのフェニルシラン系;トリメトキシ(1−ナフチル)シランなどのアリールシラン系が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0171】
樹脂組成物において、シランカップリング剤の合計の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部である。
湿潤分散剤としては、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されない。具体例としては、例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDISPERBYK(登録商標)−110(商品名)、111(商品名)、118(商品名)、180(商品名)、161(商品名)、BYK(登録商標)−W996(商品名)、W9010(商品名)、及びW903(商品名)等の湿潤分散剤が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
樹脂組成物において、湿潤分散剤の合計の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部である。
【0172】
〔有機溶剤〕
樹脂組成物には、必要に応じて、有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤を用いると、樹脂組成物の調製時における粘度を調整することができる。有機溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂の一部又は全部を溶解可能なものであれば、特に限定されない。具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;シクロペンタノン、及びシクロヘキサノン等の脂環式ケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、及びγ―ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミド等のアミド類などの極性溶剤類;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素等の無極性溶剤が挙げられる。
これらの有機溶剤は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0173】
〔その他の成分〕
樹脂組成物には、本実施形態の特性が損なわれない範囲において、これまでに挙げられていない熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及びそのオリゴマー、並びにエラストマー類等の種々の高分子化合物;これまでに挙げられていない難燃性の化合物;添加剤等の併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されない。例えば、難燃性の化合物では、メラミン及びベンゾグアナミン等の窒素含有化合物、リン系化合物のホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、並びに含ハロゲン縮合リン酸エステル等が挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、表面調整剤、光沢剤、重合禁止剤、及び硬化促進剤等が挙げられる。これらの成分は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
樹脂組成物において、その他の成分の含有量は、通常、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、それぞれ0.1〜10質量部である。
【0174】
(樹脂組成物の製造方法)
樹脂組成物は、マレイミド化合物(A)、光硬化開始剤(B)と、必要に応じて、マレイミド化合物(A)以外の、樹脂又は化合物、充填材、その他の成分、及び添加剤等を適宜混合することにより調製される。樹脂組成物は、後述する本実施形態の樹脂シートを作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。なお、ワニスの調製に使用する有機溶媒は、特に限定されず、その具体例は、前記したとおりである。
【0175】
樹脂組成物の製造方法は、例えば、前記した各成分を順次溶剤に配合し、十分に攪拌する方法が挙げられる。
【0176】
樹脂組成物の製造時には、必要に応じて、各成分を均一に溶解又は分散させるための公知の処理(攪拌、混合、混練処理等)を行うことができる。具体的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことにより、樹脂組成物に対するビスマレイミド化合物(A)、及び充填材等の分散性を向上させることができる。攪拌、混合、混練処理は、例えば、超音波ホモジナイザー等の分散を目的とした攪拌装置、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、及びサンドミル等の混合を目的とした装置、並びに、公転又は自転型の混合装置等の公知の装置を用いて適宜行うことができる。また、樹脂組成物の調製時においては、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されず、その具体例は、前記したとおりである。
【0177】
樹脂組成物は、後述する本実施形態の樹脂シートを作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。ワニスは、公知の方法により得ることができる。例えば、ワニスは、本実施形態の樹脂組成物中の有機溶媒を除く成分100質量部に対して、有機溶剤を10〜900質量部加えて、前記の公知の混合処理(攪拌、混練処理等)を行うことで得ることができる。
【0178】
<用途>
樹脂組成物は、絶縁性の樹脂組成物が必要とされる用途に使用することができ、特に限定されない。例えば、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ、樹脂シート、回路基板(積層板用途、及び多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、及び部品埋め込み樹脂等の用途に使用することができる。それらの中でも、樹脂組成物は、光硬化性、耐熱性、及び熱安定性に優れるため、多層プリント配線板の絶縁層用として、及びソルダーレジスト用として好適に使用することができる。
【0179】
[硬化物]
本実施形態の硬化物は、樹脂組成物を硬化させてなる。硬化物は、例えば、樹脂組成物を溶融又は溶媒に溶解させた後、型内に流し込み、熱や光などを用いて通常の条件で硬化させることにより得ることができる。熱硬化の場合、硬化温度は、硬化が効率的に進み、かつ得られる硬化物の劣化を防止する観点から、120〜300℃の範囲内が好ましい。光硬化の場合、光の波長領域は、光硬化開始剤等により効率的に硬化が進む100〜500nmの範囲で硬化させることが好ましい。
【0180】
[樹脂シート]
本実施形態の樹脂シートは、支持体と、支持体の片面又は両面に配された樹脂層と、を有し、樹脂層が、樹脂組成物を含む、支持体付き樹脂シートである。樹脂シートは、樹脂組成物を支持体上に塗布、及び乾燥して製造することができる。樹脂シートにおける樹脂層は、優れた絶縁信頼性、耐熱性、及び熱安定性を有する。
【0181】
支持体は、公知のものを使用することができるが、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、及びトリアセチルアセテートフィルム等が挙げられる。それらの中でも、PETフィルムが好ましい。
【0182】
樹脂フィルムは、樹脂層からの剥離を容易にするため、剥離剤を表面に塗布してあることが好ましい。樹脂フィルムの厚さは、5〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜50μmの範囲であることがより好ましい。この厚さが5μm未満では、現像前に行う支持体剥離の際に支持体が破れやすくなる傾向があり、厚さが100μmを超えると、支持体上から露光する際の解像度が低下する傾向がある。
【0183】
また、露光時の光の散乱を低減するため、樹脂フィルムは透明性に優れるものが好ましい。
【0184】
さらに、樹脂シートにおいて、その樹脂層は、保護フィルムで保護されていてもよい。
樹脂層側を保護フィルムで保護することにより、樹脂層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては、樹脂フィルムと同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは、1〜50μmの範囲であることが好ましく、5〜40μmの範囲であることがより好ましい。厚さが1μm未満では、保護フィルムの取り扱い性が低下する傾向にあり、50μmを超えると廉価性に劣る傾向にある。なお、保護フィルムは、樹脂層と支持体との接着力に対して、樹脂層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
【0185】
樹脂シートの製造方法は、例えば、樹脂組成物をPETフィルム等の支持体に塗布して、乾燥することにより有機溶剤を除去することで、樹脂シートを製造する方法等が挙げられる。
塗布方法は、例えば、ロールコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ダイコーター、バーコーター、リップコーター、ナイフコーター、及びスクイズコーター等を用いた公知の方法で行うことができる。乾燥は、例えば、60〜200℃の乾燥機中で、1〜60分加熱させる方法等により行うことができる。
【0186】
樹脂層中に残存する有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する観点から、樹脂層の総質量に対して5質量%以下とすることが好ましい。樹脂層の厚さは、取り扱い性を向上させるという観点から、1〜50μmとすることが好ましい。
【0187】
樹脂シートは、多層プリント配線板の絶縁層の製造用として使用することができる。
【0188】
[多層プリント配線板]
本実施形態の多層プリント配線板は、絶縁層と、絶縁層の片面又は両面に形成された導体層と、を有し、絶縁層が、樹脂組成物を含む。絶縁層は、例えば、樹脂シートを1枚以上重ねて硬化して得ることもできる。絶縁層と導体層のそれぞれの積層数は、目的とする用途に応じて適宜積層数を設定することができる。また、絶縁層と導体層の順番も特に限定されない。導体層としては、各種プリント配線板材料に用いられる金属箔であってもよく、例えば、銅、及びアルミニウム等の金属箔が挙げられる。銅の金属箔としては、圧延銅箔、及び電解銅箔等の銅箔が挙げられる。導体層の厚みは、通常1〜100μmである。具体的には、以下の方法により製造することができる。
【0189】
(ラミネート工程)
ラミネート工程では、樹脂シートの樹脂層側を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、セラミック基板、シリコン基板、半導体封止樹脂基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、及び熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、回路基板とは、前記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また、導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も回路基板に含まれる。なお、この多層プリント配線板に積層されている絶縁層は、本実施形態の樹脂シートを1枚以上重ねて硬化して得られた絶縁層であってもよく、本実施形態の樹脂シートと、本実施形態の樹脂シートと異なる公知の樹脂シートとをそれぞれ1枚以上重ねて得られた絶縁層であってもよい。なお、本実施形態の樹脂シートと、本実施形態の樹脂シートと異なる公知の樹脂シートとの重ね方は、特に限定されない。導体層表面には、黒化処理、及び/又は銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。ラミネート工程において、樹脂シートが保護フィルムを有している場合には、保護フィルムを剥離除去した後、必要に応じて樹脂シート及び回路基板をプレヒートし、樹脂シートの樹脂層を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本実施形態においては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板に樹脂シートの樹脂層をラミネートする方法が好適に用いられる。
【0190】
ラミネート工程の条件は、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を50〜140℃とし、圧着圧力を1〜15kgf/cm
2とし、圧着時間を5〜300秒間とし、空気圧を20mmHg以下とする減圧下でラミネートすることが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ(株)製2ステージビルドアップラミネーター等を挙げることができる。
【0191】
(露光工程)
露光工程では、ラミネート工程により、回路基板上に樹脂層が設けられた後、樹脂層の所定部分に光源として、活性エネルギー線を照射し、照射部の樹脂層を硬化させる。
照射は、マスクパターンを通してもよいし、直接照射する直接描画法を用いてもよい。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、及びX線等が挙げられる。活性エネルギー線の波長としては、例えば、200〜600nmの範囲である。紫外線を用いる場合、その照射量はおおむね10〜1000mJ/cm
2である。また、直接描画露光法を用いて高密度で高精細な配線形成(パターン)を有するプリント配線板を製造するに際しては、活性エネルギー線として、例えば、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いることが好ましい。波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を用いた場合、その照射量は、おおむね10〜10,000mJ/cm
2である。
マスクパターンを通す露光方法には、マスクパターンを多層プリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、樹脂層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。
【0192】
(現像工程)
樹脂層上に支持体が存在していない場合には、露光工程後、ウエット現像にて光硬化されていない部分(未露光部)を除去し、現像することにより、絶縁層のパターンを形成することができる。
また、樹脂層上に支持体が存在している場合には、露光工程後、その支持体を除去した後に、ウエット現像にて光硬化されていない部分(未露光部)を除去し、現像することにより、絶縁層のパターンを形成することができる。
【0193】
ウエット現像の場合、現像液としては、未露光部分を選択的に溶出するものであれば、特に限定されない。例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、及びγ―ブチロラクトン等の有機溶媒;水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及び水酸化カリウム水溶液等のアルカリ現像液が用いられる。これらの現像液は、1種単独又は2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0194】
また、現像方法としては、例えば、ディップ、パドル、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法で行うことができる。パターン形成においては、必要に応じて、これらの現像方法を併用して用いてもよい。また、現像方法としては、高圧スプレーを用いることが、解像度がより向上するため、好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.02〜0.5MPaが好ましい。
【0195】
(ポストベーク工程)
本実施形態では、現像工程終了後、ポストベーク工程を行い、絶縁層(硬化物)を形成する。ポストベーク工程としては、高圧水銀ランプによる紫外線照射工程やクリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられ、これらを併用することも可能である。紫外線を照射する場合は、必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば、50〜10,000mJ/cm
2程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱の条件は、必要に応じて適宜選択できるが、好ましくは150〜220℃で20〜180分間の範囲、より好ましくは160〜200℃で30〜150分間の範囲で選択される。
【0196】
(導体層形成工程)
絶縁層(硬化物)を形成後、乾式めっきにより絶縁層表面に導体層を形成する。乾式めっきとしては、蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレーティング法等の公知の方法を使用することができる。蒸着法(真空蒸着法)は、例えば、多層プリント配線板を真空容器内に入れ、金属を加熱蒸発させることにより、絶縁層上に金属膜を形成することができる。スパッタリング法も、例えば、多層プリント配線板を真空容器内に入れ、アルゴン等の不活性ガスを導入し、直流電圧を印加して、イオン化した不活性ガスをターゲット金属に衝突させ、叩き出された金属により絶縁層上に金属膜を形成することができる。
【0197】
次いで、無電解めっきや電解めっきなどによって導体層を形成する。その後のパターン形成の方法としては、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等を用いることができる。
【0198】
[半導体装置]
本実施形態の半導体装置は、樹脂組成物を含む。具体的には、以下の方法により製造することができる。多層プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置を製造することができる。ここで、導通箇所とは、多層プリント配線板における電気信号を伝える箇所のことであって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもよい。また、半導体チップは、半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0199】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能すれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、及び非導電性フィルム(NCF)による実装方法等が挙げられる。
【0200】
また、半導体チップや半導体チップを搭載してある基板に樹脂組成物を含む絶縁層を形成することによっても、半導体装置を製造することができる。半導体チップを搭載してある基板の形状はウェハ状でもパネル状でも良い。形成後は前記の多層プリント配線板と同様の方法を用いて製造することができる。
【実施例】
【0201】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0202】
〔合成例1〕マレイミド化合物(以下、TMDMと略記する。)の合成
式(2)で表されるTMDMを次のようにして合成した。
【化30】
【0203】
<アミド酸化合物(以下、MA−TMDAと略記する。)の合成>
まず、式(25)で表されるMA−TMDAを下記の方法にて合成した。
【化31】
【0204】
アルゴンの吹込み口、ディーンスターク装置、ジムロート冷却管、及び温度計を備えた100mL四ツ口フラスコに、無水マレイン酸5.2g(53mmol)と、N-メチルピロリドン(NMP)20mLと、トルエン20mLとを加え、アルゴン気流下で室温にて攪拌して無水マレイン酸を完全に溶解させた。この溶液にTMDA(日本純良薬品(株)製、5−アミノ−1,3,3−トリメチル−1−(4−アミノフェニル)−インダンと、6−アミノ−1,3,3−トリメチル−1−(4−アミノフェニル)−インダンとの混合物)5.0g(19mmol)と、NMP10mLとを加え、室温で17時間攪拌した。
反応溶液を一部分取し、水と、酢酸エチルとを加えて振盪した。その後、有機層を取り出して、硫酸マグネシウムで乾燥した。上澄みを40℃で溶媒留去し、黄色オイルを得た。
1H−NMR測定を行い、式(25)で表されるMA−TMDAであることを確認した。
式(25)で表されるMA−TMDAの
1H−NMRの帰属を以下に示す。また、
1H−NMRチャートを
図1に示す。
【0205】
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6)δ(ppm):10.40(m、2H、−COOH)、7.30(m、7H、ArH)、6.33(m、4H、=CH−)、2.11(m、2H、−CH
2−)、1.48(d、3H、−CH
3)、1.21(d、3H、−CH
3)、0.92(d、3H、−CH
3)
【0206】
<TMDMの合成>
前記の反応溶液に、p−トルエンスルホン酸一水和物0.67g(3.5mmol)を加え、127℃で2.5時間加熱還流した。室温まで冷却した後、冷却後の反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mLと、酢酸エチル100mLとの混合溶液に攪拌しながら注いだ。更に、水100mLと、酢酸エチル100mLとを加えて撹拌し、5分間静置した。その後、分液し、水層を酢酸エチル50mLで3回抽出した。有機層を全て合わせて、水100mLで1回、飽和食塩水10mLで1回、飽和食塩水5mLで2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥して、固体分を濾別した後、40℃で溶媒留去し、黄色固体を得た。
得られた黄色固体をアセトン6.5mLに溶解させ、アセトン溶液を水300mLに注いだ。析出した固体をろ取し、少量のイソプロピルアルコール(IPA)で洗浄した後、50℃で20時間減圧乾燥して黄色固体5.71gを得た。
1H−NMR測定を行い、式(2)で表されるマレイミド化合物(TMDM)であること確認した。
式(2)で表されるTMDMの
1H−NMRの帰属を以下に示す。また、
1H−NMRチャートを
図2に示す。
【0207】
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6)δ(ppm):7.19(m、11H、ArH、−CH=CH−)、2.42(m、2H、−CH
2−)、1.66(d、3H、−CH
3)、1.32(d、3H、−CH
3)、1.00(d、3H、−CH
3)
【0208】
[原料の評価]
〔透過率及び吸光度〕
マレイミド化合物(A)として合成例1で得られたTMDMを用いて、このTMDMが1質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、UV-vis測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製、日立分光光度計 U−4100)を用いて、波長405nmにおける透過率の測定を行った。
同様に、他のマレイミド化合物として日本化薬(株)製MIZ−001(商品名、質量平均分子量(Mw):3000)を用いて、波長405nmにおける透過率の測定を行った。
同様に、マレイミド化合物(ケイ・アイ化成(株)社製BMI−80(商品名))を用いて、波長405nmにおける透過率の測定を行った。
【0209】
同様に、光硬化開始剤(B)としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM ResinsB.V.製、Omnirad(登録商標)819)が0.01質量%で含まれるクロロホルム溶液を調製し、紫外可視分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製、日立分光光度計 U−4100)を用いて、波長405nmにおける吸光度の測定を行った。
同様に、光硬化開始剤として、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(IGM ResinsB.V.製Omnirad(登録商標)369)、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IGM ResinsB.V.製Omnirad(登録商標)907)を用いて、0.01質量%クロロホルム溶液の波長405nmにおける吸光度の測定を行った。
結果を表1に示す。
【0210】
【表1】
【0211】
〔実施例1〕
(樹脂組成物及び樹脂シートの作製)
マレイミド化合物(A)として合成例1で得られたTMDM90質量部と、光硬化開始剤(B)としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.製、Omnirad(登録商標)819)10質量部とを混合し、メチルエチルケトン(出光興産(株)製)100質量部で希釈した後、超音波ホモジナイザーで攪拌してワニスを得た。このワニスを厚さ38μmのPETフィルム(ユニチカ(株)製、ユニピール(登録商標)TR1−38(商品名))上に自動塗工装置(テスター産業(株)製、PI−1210(商品名))を用いて塗布し、90℃で5分間加熱乾燥して、PETフィルムを支持体とし樹脂層の厚さが30μmである樹脂シートを得た。
【0212】
(評価用積層体の作製)
得られた樹脂シート2枚を樹脂面が向かい合うように積層し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ(株)製、CVP−600(商品名))を用いて、30秒間真空引き(到達圧力5.0kPa以下)を行った後、圧力10kgf/cm
2、温度70℃で30秒間の積層成形を行った。さらに圧力10kgf/cm
2、温度70℃で60秒間の積層成形を行うことで、両面に支持体を有する評価用積層体を得た。
【0213】
〔実施例2〕
マレイミド化合物(A)としてTMDM72質量部と、他のマレイミド化合物として日本化薬(株)製MIZ−001(商品名)18質量部と、光硬化開始剤(B)としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.製、Omnirad(登録商標)819)10質量部とを混合し、メチルエチルケトン(出光興産(株)製)100質量部で希釈した後、超音波ホモジナイザーで攪拌してワニスを得た。得られたワニスを用い、実施例1と同様にして、樹脂シート及び評価用積層体を得た。
【0214】
〔実施例3〕
マレイミド化合物(A)としてTMDM54質量部と、他のマレイミド化合物として日本化薬(株)製MIZ−001(商品名)36質量部と、光硬化開始剤(B)としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.製、Omnirad(登録商標)819)10質量部とを混合し、メチルエチルケトン(出光興産(株)製)100質量部で希釈した後、超音波ホモジナイザーで攪拌してワニスを得た。得られたワニスを用い、実施例1と同様にして、樹脂シート及び評価用積層体を得た。
【0215】
〔実施例4〕
マレイミド化合物(A)としてTMDM36質量部と、他のマレイミド化合物として日本化薬(株)製MIZ−001(商品名)54質量部と、光硬化開始剤(B)としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.製、Omnirad(登録商標)819)10質量部とを混合し、メチルエチルケトン(出光興産(株)製)100質量部で希釈した後、超音波ホモジナイザーで攪拌してワニスを得た。得られたワニスを用い、実施例1と同様にして、樹脂シート及び評価用積層体を得た。
【0216】
〔実施例5〕
マレイミド化合物(A)としてTMDM18質量部と、他のマレイミド化合物として日本化薬(株)製MIZ−001(商品名)72質量部と、光硬化開始剤(B)としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.製、Omnirad(登録商標)819)10質量部とを混合し、メチルエチルケトン(出光興産(株)製)100質量部で希釈した後、超音波ホモジナイザーで攪拌してワニスを得た。得られたワニスを用い、実施例1と同様にして、樹脂シート及び評価用積層体を得た。
【0217】
〔比較例1〕
光硬化開始剤として、Omnirad(登録商標)819の代わりに、Omnirad(登録商標)369を10質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂シート得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用積層体を得た。
【0218】
〔比較例2〕
光硬化開始剤として、Omnirad(登録商標)819の代わりに、Omnirad(登録商標)907を10質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂シート得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用積層体を得た。
【0219】
〔比較例3〕
マレイミド化合物(A)(合成例1で得られたTMDM)の代わりに、マレイミド化合物(ケイ・アイ化成(株)製BMI−80(商品名))を90質量部用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂シート得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用積層体を得た。
【0220】
〔比較例4〕
TrisP−PA型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標)ZCR−6007H、不揮発分65質量%、酸価:70mgKOH/g)116.9質量部(不揮発分換算で76質量部)と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標)DPHA)16質量部と、光硬化開始剤(B)としてOmnirad(登録商標)819を8質量部とを混合し、メチルエチルケトン(出光興産(株)製)100質量部で希釈した後、超音波ホモジナイザーで攪拌してワニスを得た。このワニスを厚さ38μmのPETフィルム(ユニチカ(株)製、ユニピール(登録商標)TR1−38(商品名))上に自動塗工装置(テスター産業(株)、PI−1210製)を用いて塗布し、80℃で7分間加熱乾燥して、PETフィルムを支持体とし樹脂層の厚さが30μmである樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用積層体を得た。
【0221】
〔比較例5〕
ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標)ZFR−1553H、不揮発分68質量%、酸価:70mgKOH/g)105.9質量部(不揮発分換算で72質量部)と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標)DPHA)19質量部と、光硬化開始剤(B)としてOmnirad(登録商標)819を9質量部とを混合し、メチルエチルケトン(出光興産(株)製)100質量部で希釈した後、超音波ホモジナイザーで攪拌してワニスを得た。このワニスを厚さ38μmのPETフィルム(ユニチカ(株)製、ユニピール(登録商標)TR1−38(商品名))上に自動塗工装置(テスター産業(株)、PI−1210製)を用いて塗布し、80℃で7分間加熱乾燥して、PETフィルムを支持体とし樹脂層の厚さが30μmである樹脂シートを得た。これを用いて、実施例1と同様にして、評価用積層体を得た。
【0222】
〔物性測定評価〕
上記方法で作製した評価用積層体を用いて、以下の方法により評価した。それらの結果を表2に示す。
【0223】
<光硬化性>
波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線を照射可能な光源(ユーヴィックス(株)製Omnicure(登録商標) S2000(商品名))を付属したフォトDSC(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製DSC−2500(商品名))を用い、得られた評価用積層体に照度30mW、露光時間3.5分間照射して、横軸が時間(sec)、及び縦軸がヒートフロー(mW)のグラフを得た。このグラフの終点から、水平に線を引いた際のピーク面積をエンタルピー(J/g)とした。光硬化性は、以下の基準に従って評価した。
「AA」:エンタルピーが1(J/g)以上であった。
「CC」:エンタルピーが1(J/g)未満であった。
【0224】
<熱安定性>
光硬化性試験にて光硬化した評価用積層体を180℃で120分間加熱処理し、その後、支持体であるPETフィルムを両面共に剥離して評価用硬化物を得た。
得られた評価用硬化物について、示差熱質量同時測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製、TG/DTA6200(商品名))を用い、測定開始温度20℃、終了温度500℃、及び昇温速度10℃/分の条件で、窒素雰囲気下にて質量を測定した。質量減少率が5%となった温度を熱安定性(℃)として評価した。
【0225】
【表2】
【0226】
表2から明らかなように、本実施形態の樹脂組成物は、波長405nm(h線)を含む活性エネルギー線で露光した場合に良好に感光し、光硬化が可能である。また、本実施形態の樹脂組成物から得られる硬化物は、アクリレート系樹脂と比較して、優れた耐熱性を示す。
【0227】
本出願は、2019月6月28日出願の日本特許出願(特願2019−122162)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。