(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
市販品の耐熱塗料で形成された耐熱塗膜の耐熱温度は、高くても400℃程度である。したがって、ロケットが打ち上げられた後の射点設備では、耐熱塗膜に膨れや焦げが発生する。このように損傷を受けた耐熱塗膜では、耐熱性が低下するため、射点設備が充分に保護されなくなる。
【0008】
このため、射点設備には、ロケットの打ち上げの度に補修を行う必要がある。具体的には、損傷を受けた耐熱塗膜を除去し、新たな耐熱塗膜を形成する必要がある。しかし、これらの作業には、多くの費用とともに労力や時間がかかる。このため、ロケットの打ち上げの際に損傷を受けにくい耐熱塗膜が求められる。
【0009】
以上の問題を解決するために、本発明の目的は、物品の表面に高い耐熱性を付与することが可能な耐熱塗料及びこれを用いた耐熱塗膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、
シリコーン系樹脂と、溶剤と、を含む液状成分と、
第1中空粉末と、第1中空粉末よりも小径の第2中空粉末と、を含む中空粉末成分と、
を含有する耐熱塗料を提供する。
中空粉末成分の比重は、液状成分の比重より小さいことが好ましい。
【0011】
この耐熱塗料を物品に塗布すると、液状成分中に分散する中空粉末成分が表面側に浮いてくる。このとき、粒径の大きい第1中空粉末の隙間を埋めるように粒径の小さい第2中空粉末が配置される。これにより、表面側に中空粉末が高密度で存在する耐熱塗膜が得られる。
【0012】
この耐熱塗膜では、表面側に高密度で存在する中空粉末が、耐熱塗膜の外部から内部への熱伝達を妨げる。したがって、この耐熱塗膜では、内部にあるシリコーン系樹脂に熱が加わりにくいため、高い耐熱性が得られる。また、この耐熱塗膜では、物品側に中空粉末が少ないため、物品に対する良好な付着性が得られる。
【0013】
中空粉末成分の量が、液状成分を100重量部として、3.0重量部以上10重量部以下であってもよい。
この耐熱塗料で形成された耐熱塗膜では、中空粉末が存在する表面側における断熱性が向上するため、特に高い耐熱性が得られる。
【0014】
耐熱塗料の比重は、1.0以上1.5以下であることが好ましい。
この耐熱塗料では、中空粉末成分を含有していることにより、比重を小さく抑えることが可能である。このような耐熱塗料は、軽量であるため、搬送性が向上させることができ、また塗布時における作業性を向上させることもできる。
【0015】
上記の耐熱塗料では、
第1中空粉末の平均粒径が80μm以上200μm以下であり、
第2中空粉末の平均粒径が20μm以上60μm以下であることが好ましい。
また、第1中空粉末及び第2中空粉末の少なくとも一方は、ケイ素を含む酸化物を主成分とすることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、
シリコーン系樹脂を主成分とし、物体を被覆する耐熱塗膜であって、
第1中空粉末と、第1中空粉末よりも小径の第2中空粉末と、を含み、耐熱塗膜の表面側に存在している中空粉末を有する耐熱塗膜を提供する。
【0017】
中空粉末は、相互に結合することにより、少なくとも部分的に一体化していることが好ましい。
これにより、耐熱塗膜の表面側における中空粉末の隙間が狭くなる。このため、この耐熱塗膜の外部から内部への熱伝達が更に抑制される。
【0018】
第1中空粉末及び第2中空粉末の少なくとも一方は、ケイ素を含む酸化物を主成分とすることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態によって限定的に解釈されるものではない。
【0021】
1.耐熱塗膜10
1.1 概略構成
図1は、本発明の一実施形態に係る耐熱塗膜10を模式的に示す部分断面図である。耐熱塗膜10は、物品Eの表面に沿って形成されている。物品Eとしては、主にロケットの射点設備が想定される。しかし、物品Eは、高温(例えば600℃以上)に対する高い耐熱性が要求されるものであれば、ロケットの射点設備に限定されない。
【0022】
耐熱塗膜10は、樹脂部11と、第1中空粉末12aと、第2中空粉末12bと、を含む。耐熱塗膜10は、表面側の表層領域10aと、物品E側の内部領域10bと、から構成されている。第1中空粉末12a及び第2中空粉末12bは、いずれも樹脂部11の中に配置されている。
【0023】
耐熱塗膜10では、表層領域10aにおける中空粉末12a,12bの量が多く、内部領域10bにおける中空粉末12a,12bの量が少ない。つまり、中空粉末12a,12bは、表層領域10aに偏って存在している。なお、表層領域10aと内部領域10bとにおける厚さの比率は、任意に設定可能である。
【0024】
図2A,2Bは、耐熱塗膜10の表層領域10aの断面の微細組織を撮影した一例を示す写真である。
図2Aは外部から耐熱塗膜10に熱が加わる前の状態を示し、
図2Bは外部から耐熱塗膜10に熱が加わった後の状態を示している。
図2Aに示す状態では空隙が全体に分布しているが、
図2Bに示す状態では表面に耐熱塗膜が形成され、空隙が減少し、接着面(下側)に空隙が偏在している。
【0025】
中空粉末12a,12bは、中空の球状粒子から構成される。つまり、中空粉末12a,12bを構成する各粒子は、その外形を形成する外壁と、外壁に覆われた内部空間と、を有する。各粒子の内部空間は、真空であっても、気体を収容していてもよい。更に、外壁に部分的に隙間が形成され、内部空間が大気に開放されていてもよい。
【0026】
中空粉末12a,12bでは、内部空間が断熱層として機能する。このため、中空粉末12a,12bの量が多い表層領域10aは、高い断熱性を有し、耐熱塗膜10の外部から内部領域10bへの熱伝達を抑制する。したがって、耐熱塗膜10では、外部から熱が加わっても、内部領域10bに熱が加わりにくい。
【0027】
したがって、耐熱塗膜10が形成された物品Eには、熱が加わりにくい。このため、耐熱塗膜10が形成された物品Eは、外部から加わる熱によって損傷を受けにくい。このように、物品Eに耐熱塗膜10を形成することによって、物品Eの表面に高い耐熱性を付与することができる。
【0028】
また、耐熱塗膜10では、物品Eに付着している内部領域10bに、外部から加わる熱による熱劣化や熱変形が生じにくい。更に、内部領域10bは、中空粉末12a,12bの量が少ないため、物品Eに対する樹脂部11の付着性が損なわれにくい。このため、耐熱塗膜10は、熱が加わっても物品Eから剥がれにくい。
【0029】
したがって、耐熱塗膜10では、補修の頻度を低減することができ、高いメンテナンス性を実現可能である。例えば、耐熱塗膜10が形成された射点設備では、ロケットの打ち上げ後にも、耐熱塗膜10による耐熱性が損なわれにくい。これにより、耐熱塗膜10を補修することなく、複数回のロケットの打ち上げが可能となる。
【0030】
なお、耐熱塗膜10の厚さは、特に限定されず、物品Eの使用時の温度環境などに応じて適宜決定可能である。耐熱塗膜10の厚さは、例えば、200〜300μm程度とすることができる。耐熱塗膜10の厚さは、例えば、耐熱塗膜10を形成するための後述の耐熱塗料100の塗布量などによって制御することができる。
【0031】
1.2 樹脂部11
樹脂部11は、耐熱性を有するシリコーン系樹脂を主成分とする。シリコーン系樹脂は、樹脂材料の中では高い耐熱性を有するため、耐熱塗膜10の耐熱性に寄与する。シリコーン系樹脂は、シロキサン結合を主骨格とする樹脂材料であればよく、置換基などの構成は適宜決定可能である。
【0032】
樹脂部11には、シリコーン系樹脂以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、顔料などが挙げられる。顔料には、耐熱性の高いものを用いることが好ましい。一例として、黒色の顔料としては酸化コバルトを用いることができ、白色の顔料としては酸化チタンを用いることができる。
【0033】
1.3 中空粉末12a,12b
第1中空粉末12aと第2中空粉末12bとでは粒径が異なる。より詳細には、第2中空粉末12bが第1中空粉末12aよりも小径である。これにより、表層領域10aでは、
図1に示すように、粒径の小さい第2中空粉末12bが、粒径の大きい第1中空粉末12aの隙間を埋めるように配置される。
【0034】
ここで、粒径の大きい第1中空粉末12aのみを用いる構成を想定する。この構成では、粒径の大きい第1中空粉末12aの間に広い隙間が形成される。このため、第1中空粉末12aの隙間において熱伝達が起こりやすくなる。したがって、この構成では、表層領域10aにおける高い断熱性が得られにくい。
【0035】
この一方で、粒径の小さい第2中空粉末12bでは、粒径の大きい第1中空粉末12aよりも、断熱層として機能する内部空間が小さくなるため断熱性が低くなる。したがって、第2中空粉末12bのみを用いる構成でも、表層領域10aにおける高い断熱性が得られにくい。
【0036】
これらに対し、本実施形態の耐熱塗膜10では、第1中空粉末12aと第2中空粉末12bとの相互作用によって高い断熱性が得られる。つまり、第1中空粉末12aの作用によって断熱性を確保しつつ、第2中空粉末12bの作用によって第1中空粉末12aの隙間における熱伝達を抑制することができる。
【0037】
耐熱塗膜10では、第1中空粉末12aの平均粒径が80μm以上200μm以下であり、第2中空粉末12bの平均粒径が20μm以上60μm以下であることが好ましい。また、耐熱塗膜10では、第1中空粉末12aの平均粒径が90μm以上110μm以下であり、第2中空粉末12bの平均粒径が30μm以上50μm以下であることがより好ましい。これらにより、耐熱塗膜10を形成するための後述の耐熱塗料100の塗布性を確保しつつ、表層領域10aにおける高い断熱性を得ることができる。
【0038】
中空粉末12a,12bは、公知のものから適宜選択可能である。具体的に、中空粉末12a,12bとしては、例えば、MHCB(微小中空真空セラミック球体(Microscopic Hollow Ceramic Beads))やSLBG(放射熱バリア粉末)を利用することができる。
【0039】
中空粉末12a,12bは、例えば、ホウ珪酸ナトリウムなどのケイ素を含む酸化物で形成することができる。しかし、中空粉末12a,12bを形成する材料は、シリコーン系樹脂よりも耐熱性が高い材料であればよく、耐熱塗膜10に求められる耐熱性などに応じて、各種セラミック材料、各種ガラス材料、各種樹脂材料などから適宜選択可能である。
【0040】
耐熱塗膜10は、物品Eの使用時における外部からの熱によって、中空粉末12a,12b同士が融着するように構成されていることが好ましい。例えば、射点設備に形成された耐熱塗膜10では、ロケットのエンジンから排出される高温かつ高圧の燃焼ガスによって中空粉末12a,12b同士が融着することが好ましい。
【0041】
図3A,3Bは、中空粉末12a,12b同士が融着した状態を模式的に示す部分断面図である。
図3Aは、表層領域10aにおける
図1の一点鎖線で囲んだ領域A1を拡大して示している。
図3Bは、表層領域10aにおける
図1の一点鎖線で囲んだ領域A2を拡大して示している。
【0042】
図3A,3Bに示す状態では、隣接する中空粉末12a,12bの外壁同士が融着して結合部Wを形成することにより、中空粉末12a,12bが少なくとも部分的に一体化している。これにより、中空粉末12a,12bが存在する表層領域10aの強度が高くなるため、耐熱塗膜10が更に損傷を受けにくくなり、好ましい形態である。
【0043】
また、中空粉末12a,12bが少なくとも部分的に一体化していると、表層領域10aにおける熱膨張及び熱収縮が抑制される。これにより、物品Eに付着している樹脂部11の熱膨張及び熱収縮も抑制されるため、耐熱塗膜10の昇温又は降温の際に耐熱塗膜10が物品Eから剥がれにくくなり、好ましい形態である。
【0044】
更に、隣接する中空粉末12a,12bの外壁同士が結合している表層領域10aでは、中空粉末12a,12bの隙間が狭くなる。これにより、表層領域10aにおける断熱性が向上する。また、表層領域10aに加わる熱によって蒸発しようとする樹脂部11の流路が制限されるため、樹脂部11が蒸発しにくくなり、好ましい形態である。
【0045】
このように、耐熱塗膜10では、物品Eの使用に伴って劣化しにくく、むしろ耐久性が向上する。
【0046】
上記のように中空粉末12a,12bが結合した構成は、中空粉末12a,12bの溶融点(融点やガラス転移点)や混合比率などを調整することにより得られる。具体的には、第2中空粉末12bの溶融点を第1中空粉末12aの溶融点より低くすることにより、中空粉末12a,12b同士の結合を促進させることができる。一例として、第1中空粉末12aの溶融点を1650〜1850℃の範囲内とすることができ、第2中空粉末12bの溶融点を1200℃程度とすることができる。
【0047】
また、耐熱塗膜10が塗布された物品Eの使用前に、耐熱塗膜10に熱処理を加えることによって、意図的に中空粉末12a,12b同士を融着させてもよい。これにより、耐熱塗膜10における高い耐久性をより確実に得ることができる。この場合の熱処理の温度は、中空粉末12a,12bの溶融点より高く設定することが有効である。
【0048】
2.耐熱塗料100
図4A,4Bは、本実施形態に係る耐熱塗料100を模式的に示す断面図である。
図4A,4Bは、耐熱塗料100が容器Cに収容された状態を示している。耐熱塗料100は、上記の耐熱塗膜10を形成可能に構成されている。耐熱塗料100は、液状成分111と、中空粉末12a,12bと、を含有する。
【0049】
液状成分111は、シリコーン系樹脂と、溶剤と、を含有する。溶剤は、典型的には有機溶剤であり、公知の真溶剤から適宜選択可能である。中空粉末12a,12bは、耐熱塗料100における中空粉末成分を構成し、上記の耐熱塗膜10の項目で説明した中空粉末12a,12bと同様のものである。
【0050】
耐熱塗膜10における中空粉末12a,12bの合計量は、液状成分111を100重量部として、3.0重量部以上10.0重量部以下であることが好ましく、4.0重量部以上10.0重量部以下であることがより好ましく、5.0重量部以上10.0重量部以下であることが更に好ましい。
【0051】
なお、耐熱塗料100は、液状成分111及び中空粉末12a,12b以外の成分(例えば顔料など)を含んでいてもよい。
【0052】
耐熱塗料100では、中空粉末12a,12bを用いることにより、比重を小さくすることができる。具体的に、耐熱塗料100の比重は、1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.4以下であることがより好ましく、1.0以上1.3以下であることが更に好ましい。このように、耐熱塗料100は、軽量であるため、搬送性を向上させることができ、また塗布時における作業性を向上させることもできる。
【0053】
保管時などの静置状態の耐熱塗料100では、
図4Aに示すように、液状成分111よりも比重の小さい中空粉末12a,12bが液状成分111の液面付近に浮いている。耐熱塗料100の使用時には、容器C内の耐熱塗料100を攪拌することにより中空粉末12a,12bを液状成分111中に分散させて
図4Bに示す攪拌状態にする。
【0054】
図5A,5Bは、攪拌状態の耐熱塗料100を物品Eに塗布することにより得られる未硬化膜110を模式的に示す部分断面図である。
図5Aは、耐熱塗料100を物品Eに塗布した直後の未硬化膜110を示している。
図5Bは、耐熱塗料100を物品Eに塗布して所定時間経過後の未硬化膜110を示している。
【0055】
図5Aに示す未硬化膜110では、液状成分111全体にわたって分散している。この状態の未硬化膜110を、液状成分111の表面を重力方向上方に向けた状態にしておくと、比重の小さい中空粉末12a,12bが次第に液状成分111の未硬化膜の表面側に浮いてくる。
【0056】
そして、所定時間経過すると、
図5Bに示すように、中空粉末12a,12bが表面側に偏って存在する未硬化膜110が得られる。その後、
図5Bに示す未硬化膜110の溶媒成分を除去することにより、未硬化膜110を硬化させる。これにより、
図1に示す耐熱塗膜10が得られる。
【0057】
3.耐熱塗料100及びこれを用いた耐熱塗膜10の構成例の検討
3.1 概要
上記のように、耐熱塗膜10は、中空粉末12a,12bが表面側に存在している構成により、樹脂部11のみで構成される場合に比べて高い耐熱性が得られる。したがって、樹脂部11及び中空粉末12a,12bの構成は、このような耐熱塗膜10が得られる範囲において変更可能である。
【0058】
以下は、物品Eとしてロケットの射点設備を想定し、射点設備に1000℃以上の高温に対する高い耐熱性を付与することが可能な耐熱塗料100及びこれを用いた耐熱塗膜10の構成例について検討する。しかし、耐熱塗料100の構成は、以下に示す構成例に限定されず、その用途などに応じて適宜決定可能である。
【0059】
3.2 耐熱塗膜10の作製
液状成分111は、メチル/フェニル系シリコンレジン(成分A)及び変性シリコーン中間体(成分B)を用いて構成した。第1中空粉末12aとしては、平均粒径が約100μmのMHCB(微小中空真空セラミック球体(Microscopic Hollow Ceramic Beads))を用いた。第2中空粉末12bとしては、平均粒径が約40μmのSLBG(放射熱バリア粉末)を用いた。
【0060】
第1中空粉末12aとして用いたMHCBは、二酸化ケイ素系の組成を有し、溶融点が約1650〜1850℃である。第2中空粉末12bとして用いたSLBGは、二酸化ケイ素系の組成を有し、溶融点が約1200℃である。MLBG及びSLBGはいずれも中空真空球体である。
【0061】
液状成分111の組成は、成分Aのみからなる第1組成、成分Bのみからなる第2組成、成分A,Bを等量ずつ含む第3組成、の3通りとした。中空粉末12a,12bの混合重量比を3通りの組み合わせとした。そして、中空粉末12a,12bの合計量を様々に変化させて、耐熱塗料100を作製した。
【0062】
具体的に、以下に示す方法で耐熱塗料100を作製した。
(1)変性シリコーン(2.7重量%〜3.3重量%)に顔料(13.5重量%〜16.5重量%)を添加し、攪拌機にて撹拌する。顔料が均一に分散出来た後、溶剤(5.4重量%〜6.6重量%)を添加し更に撹拌する。
(2)別の容器にメチル/フェニル系シリコンレジン(20.3重量%〜24.8重量%)を入れ、顔料(34.2重量%〜41.8重量%)を添加し、攪拌機にて撹拌する。続いて添加剤(0.6重量%〜0.8重量%)および溶剤(6.3重量%〜7.7重量%)を加えて撹拌する。
(3)上記(2)で得られたものに(1)で得られたものを混合させ十分に撹拌し、均一に混合したら、MHCB(0.9重量%〜1.1重量%)、SLBG(2.7重量%〜3.3重量%)、溶剤(3.4重量%〜4.2重量%)を添加し更に撹拌する。これにより、耐熱塗料100が得られる
【0063】
上記のように得られた耐熱塗料100の耐熱性能確認の為、バーナー試験用試験片を作製した。作製した試験片は、70mm×140mm×3.2mm厚さの鋼板(SS−400)に上記のように得られた耐熱塗料100をスプレーガンで0.15〜0.25kg/m
2で塗布することにより耐熱塗膜10を形成したものを用いた。
【0064】
3.3 耐熱塗膜10の評価
上記のように作製した試験片を用いて、都市ガスを供給したブンゼンバーナーを使用した燃焼試験を行った。試験は、試験片に塗布した耐熱塗料塗面に直接ブンゼンバーナーの火炎(約1300℃)を当てることにより、耐熱塗料塗面を加熱し、その後空冷を行うことを1サイクルとして以下の条件で行い、塗膜に割れ、膨れ、変色などがないことを確認した。
【0065】
耐熱性能の試験の条件は、次の通りである。
・サイクル数:10回
・燃焼時間:30秒
・冷却時間:室温になるまで
・耐熱塗料塗面とバーナー火口との間の距離:約37mm(ブンゼンバーナーの白点)
・供試体数:3個
【0066】
試験後の各耐熱塗膜10の表面観察を行った。表面観察において、試験前後で変化が見られなかった耐熱塗膜10を合格とし、試験後に浮きや割れなどの損傷が見られた耐熱塗膜10を不合格とした。この結果、中空粉末12a,12bの合計量が、液状成分111を100重量部として、3.0重量部以上10.0重量部以下である耐熱塗膜10はいずれも合格であった。
【0067】
なお、耐熱塗膜10の表面観察の結果では、液状成分111の組成や中空粉末12a,12bの混合重量比による大きな差は見られなかった。また、射点設備に用いられる従来の耐熱塗料(大信ペイント株式会社製 商品名「テレパスC−400」)で形成した耐熱塗膜に対して同様の試験を行ったところ、耐熱塗膜の表面に大きな損傷が見られた。
【0068】
上記の表面観察において合格となった耐熱塗膜10に対して、更にブンゼンバーナーによって10分間連続して加熱する試験を行った。ブンゼンバーナーによる加熱では、耐熱塗膜10の表面をブンゼンバーナーの火口から約37mmの位置に配置し、耐熱塗膜10の表面温度を1300℃程度とした。
【0069】
試験後の耐熱塗膜10の表面観察を行った。この結果、この試験を行ったいずれの耐熱塗膜10においても、変色が確認されたものの、浮きや割れなどの耐熱性の低下の原因になるような損傷は見られなかった。したがって、いずれの耐熱塗膜10においても試験前後で耐熱性が大きく変化していないものと考えられる。
【0070】
以上のように、中空粉末12a,12bの合計量が、液状成分111を100重量部として、3.0重量部以上10.0重量部以下である耐熱塗料100によって形成された耐熱塗膜10では、特に高い耐熱性が得られることが確認された。
【0071】
4.その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0072】
例えば、上記実施形態では平面に耐熱塗膜を形成する例について説明したが、本発明に係る耐熱塗料によれば曲面にも耐熱塗膜を形成することが可能である。また、本発明に係る耐熱塗料を重ね塗りすることにより、複数層の耐熱塗膜を積層して形成することが可能である。これにより、物品の耐熱性を更に向上させることが可能である。