(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886151
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】藁菰製造装置及び藁菰製造方法
(51)【国際特許分類】
D05B 25/00 20060101AFI20210603BHJP
D05B 23/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
D05B25/00
D05B23/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-113467(P2018-113467)
(22)【出願日】2018年6月14日
(65)【公開番号】特開2019-213766(P2019-213766A)
(43)【公開日】2019年12月19日
【審査請求日】2019年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】593029880
【氏名又は名称】ロンタイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518212012
【氏名又は名称】有限会社大和商店
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】皆川 司
(72)【発明者】
【氏名】野田 義明
【審査官】
▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−215851(JP,A)
【文献】
実開昭54−109320(JP,U)
【文献】
特開平07−100282(JP,A)
【文献】
実開昭50−097653(JP,U)
【文献】
米国特許第04642826(US,A)
【文献】
特開昭59−160412(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第03347143(DE,A1)
【文献】
特開平05−171565(JP,A)
【文献】
特開2014−173332(JP,A)
【文献】
特開2013−189730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 25/00
D05B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に搬送される藁(12)を縫い合わせて藁菰(52)を製造する藁菰製造装置であって、
中心軸を前記第1の方向に直交する第2の方向に向けて配置された一対のローラ(16,18)と、
前記一対のローラ(16,18)に掛け渡された複数の無端状搬送ベルト(28)と、
前記一対のローラ(16,18)を駆動させて、前記複数の無端状搬送ベルト(28)の上に配置された藁(12)を前記第1の方向に搬送するモータ(20)と、
前記第1の方向に関して前記一対のローラ(16,18)の間で、前記第2の方向に間隔をあけて配置された複数のミシン(42)を備えており、
前記無端状搬送ベルト(28)によって搬送される藁(12)に前記複数のミシン(42)で糸(56,58)が通されて縫い合わされることにより藁菰(52)が製造されることを特徴とする藁菰製造装置。
【請求項2】
前記無端状搬送ベルト(28)の内側には、前記複数のミシン(42)に対向するミシンベッド(24)が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の藁菰製造装置。
【請求項3】
前記無端状搬送ベルト(28)の外側には、前記第1の方向に関して前記複数のミシン(42)の上流側と下流側に一対の押さえローラ(30,32)が配置され、
前記一対の押さえローラ(30,32)には複数の無端状押さえベルト(34)が掛け渡され、
前記押さえローラ(30,32)は前記モータ(20)に駆動連結されており、
前記無端状押さえベルト(34)は、前記無端状搬送ベルト(28)と同じ速度で移動しながら、前記無端状搬送ベルト(28)によって搬送される藁(12)を、前記無端状搬送ベルト(28)と前記押さえベルト(34)で押さえるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の藁菰製造装置。
【請求項4】
前記一対のローラ(16,18)は、第1のローラ(16)と、前記第1の方向に関して前記第1のローラ(16)の上流側に配置された第2のローラ(18)を備えており、
前記第1の方向に関して前記第1のローラ(16)の下流側には、前記第2の方向に間隔をあけて配置された複数の別のミシン(44)と、前記複数の別のミシン(44)に対向する別のミシンベッド(36)を備えており、
前記第1のローラ(16)を通過した前記藁(12)が前記複数の別のミシン(44)により糸(56,58)が通されて縫い合わされることを特徴とする請求項2に記載の藁菰製造装置。
【請求項5】
第1の方向に搬送される藁(12)を縫い合わせて藁菰(52)を製造する藁菰製造方法であって、
第1の方向に間隔をあけて配置された一対のローラ(16,18)に掛け渡された複数の無端状搬送ベルト(28)を駆動し、
前記第1の方向に移動する前記複数の無端状搬送ベルト(28)のベルト部分に藁を載せ、
前記第1の方向に直交する第2の方向に関して前記複数の無端状搬送ベルト(28)の間に配置された複数のミシン(42)によって前記藁(12)に糸(56,58)を通して縫い合わせることを特徴とする藁菰製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,藁菰(わらこも)の製造装置
及び藁菰製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然素材である藁菰は,通気性や保水性に優れており,人工的な代替品に比べて優位な点が多い。特に,植物の緑化にとって,土壌に播種した種子の発芽やその後の生育を保護するうえで,藁菰は極めて有用な手段で,植生体の被覆材として用いられる。特許文献1,2を参照。
【0003】
ところが,日本国内における藁菰織機の製造はすでに15年以上前に中止されている。そのため,消耗部品の在庫も減少する中で藁菰織機の修理がおぼつかない状況に陥っている。同時に,藁菰織機を操作する作業者の数が高齢化と共に激減している。
【0004】
一方,従来の藁菰織機は,鉛直方向に配列した複数の縦糸の間に藁を水平方向に挿入し糸を交差させることによって連続的に藁菰を製造するものである。しかし,この藁菰織機は,(ア)藁を断続的に一本又は一束(2〜3本)ずつ縦糸の間に入れるために製造速度が遅い,(イ)途中で曲がっている藁は使用できない,(ウ)極端に太い藁や長い藁は使用できない,(エ)スグリ作業(余分な葉や穂を取り除くクリーニング作業)を必要とする,という種々の問題がある。
【0005】
また,植生体製造機では(オ)製造されていく藁菰のゆがみや蛇行を修正するために余分な人手を要する,(カ)植生体の長さを規定長にするための自動切断工程において縦糸を切断することとなるが,そのために藁が脱落して大量の藁屑を発生する,(キ)藁の目跳び部分や打ち込み本数の少ない箇所を目視観察し,そのような不良箇所を除去する必要がある,という種々の問題がある。
【0006】
さらに,藁菰を被覆材として製造された植生体を植生すべき法面に敷設する場合,(ク)法尻部の藁菰部分を切断して長さ調整すると,その部分の藁が解れて法尻部の保護が不十分になる,(ケ)藁菰が硬く柔軟性がないため,敷設中や敷設後に風をうまく逃すことができず,また目串による固定が不十分で支持強度が保てない為,飛散することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−240678号公報
【特許文献2】特開平10−14324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は,このような問題を解決するためになされたもので,新たな藁菰製造装置及び藁菰製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る藁菰製造装置は,
第1の方向に搬送される藁(12)を縫い合わせて藁菰(52)を製造するもので、
中心軸を前記第1の方向に直交する第2の方向に向けて配置された一対のローラ(16,18)と、
前記一対のローラ(16,18)に掛け渡された複数の無端状搬送ベルト(28)と、
前記一対のローラ(16,18)を駆動させて、前記複数の無端状搬送ベルト(28)の上に配置された藁(12)を前記第1の方向に搬送するモータ(20)と、
前記第1の方向に関して前記一対のローラ(16,18)の間で、前記第2の方向に間隔をあけて配置された複数のミシン(42)を備えており、
前記
無端状搬送ベルト(28)によって搬送される藁(12)に前記複数のミシン(42)で糸(56,58)が通されて縫い合わされることにより藁菰(52)が製造されることを特徴とする。
【0010】
また,本発明の実施形態に係る藁菰製造方法は,
第1の方向に搬送される藁(12)を縫い合わせて藁菰(52)を製造するもので、
第1の方向に間隔をあけて配置された一対のローラ(16,18)に掛け渡された複数の無端状搬送ベルト(28)を駆動し、
前記第1の方向に移動する前記複数の無端状搬送ベルト(28)のベルト部分に藁を載せ、
前記
第1の方向に直交する第2の方向に関して前記複数の無端状搬送ベルト(28)の間に配置された複数のミシン(42)によって前記藁(12)に糸(56,58)を通して縫い合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の藁菰製造装置及び藁菰製造方法によれば,途中で曲がっている藁,細い藁,長い藁であっても,これらを使って自動的に藁菰を製造できる。それぞれの藁は,単に縦糸に織られるのではなく,ミシン糸によって本縫いされるため,各藁が藁菰から容易に脱落することがない,万一ミシン糸が切断されても藁が解れることがない,という利点がある。
【0012】
また,製造された藁菰は,それぞれの藁がミシン糸によって保持されているので,長い藁菰を途中で切断しても,そこから藁が解れることがないし,切断部近くの藁を目串で安定的に保持することができるため,法尻部の保護が不十分になることもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)と
図1(b)を含み,
図1(a)は実施形態に係る藁菰製造装置を上から見た平面図,
図1(b)は
図1(a)の藁菰製造装置を横から見た側面図である。
【
図2】
図1の藁菰製造装置で製造された藁菰の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,添付図面を参照して本発明に係る藁菰製造装置及び藁菰製造方法の実施形態を説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る藁菰製造装置10を示す。図において,下段の
図1(a)は藁菰製造装置10をその上方から見た平面図,上段の
図1(b)は藁菰製造装置を横方向から見た図である。図示するように,藁菰製造装置10は,藁菰を製造するための原材料である藁12を図の右側(上流側)から左側(下流側)に向かって搬送する搬送機構14を有する。以下,必要に応じて,
図1(a)において右側から左側に向かう方向を「x方向」(請求項における「第1の方向」),
図1(a)において上下に向かう方向を「y方向」(請求項における「第2の方向」)という。
【0016】
図1(b)に示すように,搬送機構14は一対のローラ16,18を有する。ローラ16,18は,中心軸をy方向に向け,x方向に所定の間隔をあけて,同じ高さに平行に配置されている。実施形態では,2つのローラ16,18のうちの一方(ローラ16)が駆動ローラ,他方(ローラ18)が従動ローラとして機能するようにしてある。以下,下流側のローラ16を「駆動ローラ16」,上流側のローラ18を「従動ローラ18」という。実施形態では,名称が示すとおり,駆動ローラ16がモータ20に駆動連結されている。
【0017】
駆動ローラ16と従動ローラ18の間には,複数の中間ローラ22が,中心軸をy方向に向け,x方向に所定の間隔をあけて,平行に配置されている。駆動ローラ16とこれに隣接する中間ローラ22aの間にはミシンベッド(上流側ミシンベッド)24が配置されている。
【0018】
駆動ローラ16,従動ローラ18,及び中間ローラ22の下方には,テンションローラ26が配置されている。テンションローラ26は,中心軸をy方向に向け,駆動ローラ16,従動ローラ18,及び中間ローラ22と平行に配置されている。テンションローラ26は,上下方向に移動可能となっている。
【0019】
駆動ローラ16,従動ローラ18,中間ローラ22,及びテンションローラ26の周りには,これらを囲むように,複数の搬送ベルト28が掛け渡されている。実施形態では,5つの搬送ベルト28が,y方向に所定の間隔をあけて配置されている。搬送ベルト28に一定のテンションを掛けるために,テンションローラ26には下方に向かって所定の力が加えられている。この力は,例えば,テンションローラ26のシャフトにスプリング又はウェイトを連結することによって加えることができる。
【0020】
実施形態では,駆動ローラ16とそれに隣接する中間ローラ22(22a)の上に押さえローラ30,32が配置されている。押さえローラ30,32の周りには,これらの押さえローラ30,32を囲むように,複数の押さえベルト34が掛け渡されている。実施形態では,押さえベルト34は,搬送ベルト28に対応する位置に配置されている。実施形態では,駆動ローラ16の上に配置された押さえローラ30が,図示しない伝達機構を介してモータ20に駆動連結されており,モータ20の駆動に基づいて,搬送ベルト28と押さえベルト34が同じ周速度で逆方向(例えば,搬送ベルト28は反時計回り方向,押さえベルト34は時計回り方向)に移動するように構成されている。
【0021】
搬送機構14はまた,駆動ローラ16の下流側に別のミシンベッド(下流側ミシンベッド)36を備えている。
【0022】
上流側と下流側のミシンベッド24,36には,上下方向に貫通する開口38,40が形成されている。開口38はy方向に隣接する搬送ベルト28の中央に形成されており,ミシンベッド36の開口40は搬送ベルト28の延長上に形成されており,これによりy方向に関して開口38と40との間には一定の距離が設けられている。
【0023】
各開口38,40の近くにはそれぞれミシン42,44が配置されている。ミシン42,44は,一般的なミシンと同様に,ミシン針及びこのミシン針を上下に移動する上部機構と,ボビンとミシン針の上下動に合わせてボビンを回転する下部機構を備えており,上部機構が開口38,40の上に配置され,下部機構が開口38,40の下に配置されている。
【0024】
実施形態ではまた,y方向に関して,ミシンベッド36の外側にそれぞれカッター46が配置されている。
【0025】
上述した種々の構成要素(ローラ16,18,22,26,モータ20,ミシンベッド24,36,ミシン42,44,カッター46)は,図示しない架台に支持されている。
【0026】
このような構成を備えた藁菰製造装置10を使った藁菰の製造を説明する。例えば,藁菰の原材料となる藁12は,搬送ベルト28の上にほぼ一定の密度で配置される。このとき,図示するように,藁12は,その軸(長手方向)をy方向に向けることが好ましい。藁12をy方向に向けることは必要なことではなく,いずれの方向に向けてもよい。ただし,この場合も,出来上がった藁菰における藁の密度がほぼ一様となるように,藁を配置することが好ましい。
【0027】
搬送ベルト28の上に置かれた藁12は,モータ20の駆動に基づいて
図1(b)における反時計回り方向に移動する搬送ベルト28とともに,x方向に搬送される。このとき,人手によって藁の密度がほぼ一様になるように調整してもよい。
【0028】
x方向に関して最も下流側に位置する中間ローラ22(22a)の上を通過した藁12は,搬送ベルト28とこれと同じ速度で移動する押さえベルト34に挟まれた状態で搬送され,駆動ローラ16に到達する前に,上流側のミシン42によって縫われる。このとき,
図2に示すように,ほぼ一つ一つの藁12が上部構造と下部構造からそれぞれ供給される上糸56と下糸58によって縫い合わされ,x方向に隣接する藁12が一体化される。
【0029】
上流側のミシン42によって縫われた藁12は,駆動ローラ16との対向部を通過するとミシンベッド36の上に供給され,そこで下流側のミシン44によって再び縫われる。このとき,下流側のミシン44によって縫われる縫合箇所50は,上流側ミシン42で縫われた縫合箇所48の中間とその外側にある。したがって,x方向に隣接する縫合箇所48,50の距離は短い。そのため,縫われた藁が解れたり,脱落することがない。
【0030】
このようにして縫い合わされた藁12は,カッター46によって両端部12aが切り落とされ,これにより一定幅の藁菰52が完成する。
【0031】
このように,実施形態の藁菰製造装置10によれば,縫合作業は機械的に行われるため,藁菰を高速で製造できる。また,藁の太さ・長さ・曲がり・密度に関係なく,供給された藁はミシン糸によって確実に一体化される。さらに,本縫いの特徴であるが,一箇所でミシン糸が切断した場合でも,その切断箇所から糸が解れることがないため,藁屑の発生が最小限に抑えられる。
【0032】
そして,このようにして製造された藁菰52を植生に利用する場合,藁菰52の長さを植生法面の長さに応じて切断しても,その切断箇所から糸が解れて藁が飛散することはない。結果,法面全体を長期に亘って安定的に藁菰で覆うことができる。
【0033】
また,実施形態のように,複数のミシン42,44を上流側と下流側に分けて配置することで,y方向から見たときに,多くのミシンを高密度に(x方向の間隔を狭い状態で)配置できる。そのため,ほぼ一つ一つの藁にミシン糸を通して縫い合わせることができる。
【0034】
さらに,実施形態では,搬送機構には一組の搬送ベルトのみを設けたが,複数の搬送ベルトを搬送方向(x方向)を連結することによって,ミシンの上流側に長い搬送領域を形成してもよい。この場合,搬送される藁を揃える広い作業領域を確保できる。
【0035】
さらにまた、装置後方にニップロール54を設置することで、カッター46による切断や藁菰52の搬送及び送り出しを円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
10:藁菰製造装置
12:藁
14:搬送機構
16:ローラ(駆動ローラ)
18:ローラ(従動ローラ)
20:モータ
22:中間ローラ
24:ミシンベッド
26:テンションローラ
28:搬送ベルト
30,32:押さえローラ
34:押さえベルト
36:ミシンベッド
38,40:開口
42,44:ミシン
46:カッター
48,50:縫合箇所
52:藁菰
54:ニップロール